YUBOの観てきた!クチコミ一覧

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バカのカベ~フランス風~

バカのカベ~フランス風~

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2012/11/15 (木) ~ 2012/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

カトケン、満喫っっ
すごいなー、もう冒頭から引き込まれて、ただただ笑って、そして観劇後に見事に何も残さない。満足感と幸福感だけを胸に帰路につける。長年演劇に携わり、劇団公演を重ねてきた貫禄と安心感。普遍的でさりげないし、ありえない様な設定のはずなのに、何でこんなに面白いのか。人間って情けなくて愛らしくて良いなって思える上質なコメディ。ようは、すげー舞台だった。

お母さんの十八番

お母さんの十八番

アジア舞台芸術祭制作オフィス

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2012/12/01 (土) ~ 2012/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

日常が崩れる瞬間を
誰しもに起こりうる、当たり前な風景。でも情感あふれ、時にコミカルに、でも要所でものすごく激しく描かれる風景にとても共感しました。「母がいる」というあたりまえの日常が、突然無くなった時の感情。受け入れがたいその生々しさ。韓国の演出家の描く日本の物語ということで、言葉や国籍を超えて、人としての普遍的な感情を共有出きるんだな、という当たり前の発見を改めて感じて、ラストはジーンとしてしまいました。ロビートーク聞いてから観劇したので、見所も広がったように思いました。これを無料で見れるのだからありがたすぎる。

全事経験恋歌(ゼンジ.ケイケン.エレジー)

全事経験恋歌(ゼンジ.ケイケン.エレジー)

アジア舞台芸術祭制作オフィス

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2012/12/01 (土) ~ 2012/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

圧倒っっ
アジア舞台芸術祭2012の3作品を拝見して、最も強い衝撃を受けた…のだがどうして、こんなに強く自分が心引かれるのか全く説明が出来ないのが悔しい。ロビートークで「間」についてや「現実と物語の並行」について言及されていて、理解が深まったような、そうでないような。3人芝居なのに、こんなに激情して爆発的な表現が出来るんだなぁと圧倒されました。これが無料で見れるんだからありがたすぎる。

『サンタクロース会議』『サンタクロース会議 アダルト編』

『サンタクロース会議』『サンタクロース会議 アダルト編』

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/12/14 (金) ~ 2012/12/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

すごく近しい問題意識
子供参加型は子供も大人も楽しめる作品。もちろん演出の巧みに計算され尽くした自然さはありつつもコミカルなキャラクターや、わかりやすい笑いも多くて、青年団はこういう物語も作れるんだなぁと思いました。子供参加型もアダルト版も両方観劇しましたが、個人的好みとしては子供参加型です、サンタクロースについて精微に調べて書き上げた物語も、子供の感性には追いつかないんだなぁと思ったし、役者さんのタジタジ具合も、子供の生の反応も楽しい。でも可能な限りの現実に即したサンタクロース会議への反証をアダルト版で消化していて納得もさせられました。基本の物語は同じなのに、見え方の違う2バージョンを是非多くの人に満喫してほしいなと思いました。

完全版・人間失格

完全版・人間失格

DULL-COLORED POP

青山円形劇場(東京都)

2012/11/01 (木) ~ 2012/11/07 (水)公演終了

満足度★★★★★

人間とは
11月1日に「女版」・2日に「男版」観劇。チラシに観客は観るリンチの共犯者と煽っているが、実際は役者のレベルが高く隙なんてないので2時間圧倒されっぱなし。見とれて時間を忘れるような、歪んで見える心象風景の視覚的聴覚的な演出はもう美しすぎる。ぞくぞくする様なラストシーン、全体通して見える突き放しているようで愛している人間への視点。俺も人間失格だって共感も、ここに描かれてるのは全部自分勝手な甘えだって批判も飛び越えて、新しい境地にたどり着いている。普遍的な価値観と闘ってるなぁ、劇団のこれからの活躍にも目が離せない。女版のコロさんの葉蔵は吹けば飛んでしまうのではと思うほどの寄る辺ない存在感で物悲しい、男版の原西さんの葉蔵には影がつきまとっていてその逃れられない苦しさが伝わってくる。男女版どちらも楽しいし、円形舞台だから見る場所で風景が変わって面白い。両方とも甲乙つけがたく完成度高いです。人間とは何か、じっと考えさせられます。

若手演出家サミット2011

若手演出家サミット2011

アトリエ春風舎

アトリエ春風舎(東京都)

2011/12/15 (木) ~ 2011/12/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

唯一無二
普段見ることの出来ない演出家ワールドを堪能っっ。演出家の方達の思いを片鱗でも垣間見れる機会、物語以前の役者さん達の躍動、繰り広げられるアフタートークのモロモロ。あぁ、とっても覗き見てる感じで甘美な時間だった。

おかえりなさいII

おかえりなさいII

うさぎストライプ

アトリエ春風舎(東京都)

2012/05/04 (金) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

その100%が
「星の王子さま」を感じつつも、当たり前の日常が当たり前じゃなくなる現実への葛藤を、おもいっきり動いて見せてもらいました。創り手が稽古して100%に近づけた感情を全力でぶつけても、観客の自分がそのまま受け取る事が出来ないなんて、人間って面倒くさいなと思いつつ、とても共感しました。

ネタバレBOX

原作「星の王子さま」。地球に降り立った王子はキツネに「仲良くなる(飼い慣らす)」ことを教わる。10万人の内の1人である王子と10万匹の内の1匹のキツネではお互いにとって必要な存在ではない。でも、仲良くなれば、お互いにとってこの世でたった一人(1匹)の存在になる。

本作では、かけがえのないたった一人の存在への思いは、学校や職場からの帰り道でのエピソードから生まれる。そして、各々のかけがえのない一人が乗ったフランス行きの飛行機が墜落して帰ってこないことがわかる。会場で配られる公演パンフレットには物語への最たるメッセージ「当たり前に明日もその人に会えると思っているから、ほんとに好きな人にはほんとに言いたい事は言えないけど、でも当たり前に明日も会える保障とかどこにもないよなぁ」とある。

そして、飛行機事故の前と後のそれぞれの思いは「汗と涙でぐしゃぐしゃになる」体に過度に負荷が掛かる(スクワット・劇場の壁を押す動作・他の俳優を持ち上げるなど)、もしくはシアターゲームをやりながら台詞を言う形で表現される。それらの演出は普通に喋るだけでは抑制されてしまう、自分の気持ちや感情を100%発露するための作業だと思う。自分の思いを自分が思ったとおりに伝えることの不可能であること、でももっと伝えたいしわかってほしいこと、その普遍性を体現しているなと思う。何より、その全力な動きは見ていてコミカルで楽しい(役者にとっては相当の負荷だと思うけれど)

物語の冒頭と最後。事故で亡くなった者と残された者が「ただいま」「おかえりなさい」という台詞のやりとりをする。「ただいま」も「おかえりなさい」も相手に向けて発する言葉なんだな、という自明の理を再認識して、その大切さを噛みしめながら、普通に電車に乗って、普通の生活に戻るのだ。

初日乾杯も行われて、ビールまでいただいて。良い芝居観た後に、飲むビールは格別だなぁと思いました。
東京アレルギー

東京アレルギー

劇団野の上

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/11/23 (金) ~ 2012/11/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

すごく楽しい
青森弁が心地よい。わからなそうでわかるのが楽しいし、耳なじみの無い言葉が新鮮で楽しい。でもその武器を使って繰り広げられる物語がとても楽しい。全編に笑いがふんだんに盛り込まれて、美術や演出も豪快で、今回は開演前の試みから楽しんでワクワクしました。もう視覚的にウワアアアって圧倒されるシーンも何度もあるし、上演時間の1時間50分もあっという間。終盤の死生観や人生観もスッと胸に入っていく、良質で上質なエンタメ作品だなぁと思いました。劇団員の役者さん達の個性的なキャラクターも相変わらず楽しいし、ナベゲンの三上さんは本当に上手くて魅力的だし、KUNIOの杉原さんもイキイキされてて、良いキャスト陣だと思いました。

バナナ学園大大大大大卒業式

バナナ学園大大大大大卒業式

バナナ学園純情乙女組

王子小劇場(東京都)

2012/12/28 (金) ~ 2012/12/31 (月)公演終了

満足度★★★★★

バナナらぶ
B列5番で観戦、たくさん役者さんに絡んでいただいて嬉しかった、でも客観視は出来なかった、解散だから。見て体感して大満足、でも最後だと思うと寂しい。同時多発パフォーマンス、爆音と映像、統制されたダンス&シャウト、オタ芸、降りしきる液体と小道具と食べ物、差し出される役者の手、見ることに集中させないような雑音と雑事、それらに思考停止して身を委ねるだけで楽しかった。過去公演でも使われていたテーマやモチーフや小道具が繰り返されるのは、二階堂さんが大事にしてるメッセージなのかなと推測して、その意図を必死に汲み取ろうとして、やっぱりうまくいかない体験は今回も新鮮だった。(もしくは解散公演ということで総集編的な意味合いでの構成だったのかな)高度に情報化された現実を、こんなに楽しく体感出来る空間なんてこの先無いだろうと思う。劇場中を独自世界に変えてしまうこの圧倒的な攻撃なコミュニケーションに、個人的にどれだけ救われたか。自分が世界に存在する意味なんて考えるだけでぼんやりしてしまうけれど、このバナナ観劇中は無条件に受け入れられてる錯覚を感じられた。だから、今回もつい手渡されたずぶぬれのわかめおにぎりも食べてしまったのだけど。何とかこの空間とこの瞬間と1ミリでも近くに肉薄したいと感じてしまうのだ。おはぎライブに底知れぬパワーをもらった人はたくさんいると思う。真冬にずぶぬれで全力で31日まで爆走する出演者の方達が最後まで体調を崩さずに駆け抜けられるよう祈りたい。もう1回、というか年末の年越しイベント行きたかったなぁ。残念。

Waiting for Something

Waiting for Something

アジア舞台芸術祭制作オフィス

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2012/12/01 (土) ~ 2012/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

伝わらなさ
言葉の壁も、ひょうひょうとすり抜けてみせるナカフラ演劇、素晴らしい。お互いに伝わらない感じがとってもコミカル。肩肘張らずに楽しめて、観劇後も味わい深い。これもゴド待ちなのか、と思う位異色なんだけれど、その誤意訳の魅力が十分に発揮されて、何度も何度も見たくなるような作品。これで無料なんて、ありがたすぎる。

幻戯【改訂版】

幻戯【改訂版】

鵺的(ぬえてき)

「劇」小劇場(東京都)

2013/02/20 (水) ~ 2013/02/26 (火)公演終了

満足度★★★★★

男の性(さが)
粘りついて絡みついて逃れられない男の性(さが)を見せ付けられた、圧巻の舞台でした。5年前の作品を再構成されたとのことで余計なものをそぎ落とした物語はギュッと濃縮されており、時間を忘れてただただ見惚れて楽しみました。こんなに居心地が悪いような内容なのに、何でこんなに惹きつけられるのか。じっくり溜めのある間の演出がヒリヒリと緊張感を高めていました。そしてその緊張感に耐えうる適役のキャスティングでどの役者さんもとても魅力的でした。

ネタバレBOX

劇中に(売春する行為に対して)「割り切っても割り切れなくても(不特定多数の男に体を許すことが)辛いならばどうやって折り合いをつけるのか」。相手を尊重して大事にしたい気持ちとは別物として、肉体的な快楽を求めたいのは男の性なのだろうか。自分自身を省みても、この性(さが)から逃れられてないなと実感し、身につまされる作品でした。

黒崎(男)は新進の小説家・板倉(男)を馴染みの売春旅館に連れてくる。板倉は30代後半でも童貞で、「行為をすることで自分が大事にしていたものを失うのが怖い」と性交を拒んできた。板倉は自分の相手をしようとする玖美子(女)の誘いを断り、その場に居合わせる形となった口の利けない布見繪(女)と付き合いだす。次の機会に再度、旅館を訪れた板倉は「気持ちと体を一緒に考えていたから良くなかった。別々に考えればうまくいく」と玖美子を純粋に性欲のはけ口として交わる。交わった事を想起させるシーンで暗転し、フェードインした照明に浮かんでくるのは、先程まで玖美子の着ていた衣装を着た布見繪の姿だった。徐々に精神的に追い詰められていく玖美子は自殺し、板倉は夜な夜な遊び歩いて売春していることが提示され終幕する。

「幻戯」という公演タイトルに思いを馳せてみました。売春する仕事を迷いながらも10年以上続けてきた布見繪を「彼女がこれ以上汚れないように、僕は彼女には触れない」と言い家に囲い込む板倉は、一方で性欲の発散のために売春を続けます。口の利けない女に自分の思うとおりの理想像を押し付けて、理想像=幻想と戯れて生きる男の自分勝手さ、傲慢さが浮かんでくるように思います。実際、玖美子を抱く時の板倉のおぞましい存在感、こんな表情を人が見せるのかというような迫真の演技でした。そして、それでも客だからと受け入れる玖美子の姿は買われる側に選択肢のない悲哀を強く感じます。

ここから、勝手に観劇後に自分なりに物語を妄想してみました。布見繪は本当はいないんじゃないかという説です。その姿を見た者が板倉以外いない事(あの子とか口の利けないお姉さんと別の呼び方で存在が提示はされますが)や、そもそも板倉と布見繪を結びつけた日記を書いたのが玖美子なのではというシーンが提示されます。そうだとすると、板倉は玖美子と付き合っていたのか、だとすると玖美子との精神的なつながりを家に置きながら、旅館で玖美子と肉体的に交わっていたのか?物語の冒頭、玖美子の死を悼むシーンで「ある部分では死んでいるが、ある部分では生きている」というセリフが投げかけられました。もし死後も布見繪という名を借りた板倉の幻想の中で玖美子が生き続けるんだとすると、その狂気は一層深化するなと思いました。物語終盤に、暗い部屋の中で一筋の強い光の中で独白する玖美子の姿をした布見繪の姿、その光と影は同一人物の中に同在する2人の人格なのかなと思いました。

玖美子と布見繪の関係は、はっきりしませんでしたが、いずれにしろ強く印象にこびりつくような濃密な空間を楽しめて、色々考えさせられました。
霊感少女ヒドミ

霊感少女ヒドミ

ハイバイ

アトリエ春風舎(東京都)

2012/11/06 (火) ~ 2012/11/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

見とれる
映像と演劇の見事なコラボ。自分の内側の心性と、自分の外側の世界。または劇中世界と、メタ演劇。その行き来が楽しくてあっという間に見終わってしまいました。

あくしゃもん

あくしゃもん

田上パル

こまばアゴラ劇場(東京都)

2013/02/06 (水) ~ 2013/02/13 (水)公演終了

満足度★★★★★

ヘンでいい!
あくしゃん達の愛らしさ、人間は変でいいじゃないかと思わせる良質のコメディでした。突拍子もないシチュエーションにクスクス笑いながら見入り、ラストでジーンとなってすごく幸せな気持ちになりました。ここまで勘違いするのっっっって展開も、見事にハモっている合唱も、個々のキャラクターの人間臭さもとても良かったです。以前に2人芝居の「タイトな車」も拝見していますが、登場人物が増えて格段に物語に厚みが増して、笑いも感動も深まった物語になったなぁと思いました。

ネタバレBOX

大地讃頌もモルダウも、これから聞くたびに「あくしゃもん」思い出しそうです。開場してすぐに入場出来たので、迷い続ける牧師とシスター達の風景と伏線が見れてお得な感じがしました。
ラ・マンチャの男

ラ・マンチャの男

東宝

帝国劇場(東京都)

2012/08/03 (金) ~ 2012/08/25 (土)公演終了

満足度★★★★★

退屈の先
役者の表情がオペラグラス使わず見える、ゼイタクな席で観劇っっ!!でも予備知識全く無しで観劇したので、前半1時間は退屈で。この退屈さはとても重要だと思いました。そしてこの退屈さが反転したときに、作品の主題がありありと浮かび上がるなと思いました。松本幸四郎と松たか子の共演は本当に豪華で、それだけでも大満足です。

ネタバレBOX

劇中「最も憎むことはありのままの人生に折り合いをつけて、あるべき姿のために戦わないことだ」という台詞が出てくるが、これが主題かな、という実感を持ちました。

観客が主観的に見ると、寂れたハタゴ(宿)に集まった、食い詰めた男女はどう見てもみすぼらしい姿。それを劇中のドンキホーテは、素晴らしい城と、紳士淑女だと言い、ハタゴで働く女アルドンサを姫だといい続ける。この一貫したギャップに観客は笑うし、戸惑う。何しろずーーーっと、言い続けるのでドンキホーテは本当に頭がおかしいのかなと思う。退屈だ。でも、徐々に世界が反転していく。ドンキホーテの周囲の人達が戦ってないだけで、この世界は見方を変えると素晴らしく映るのかもしれない、と。アルドンサの置かれた境遇や社会的な立場は悲惨だ。そして彼女自身「最大の罪は生まれてきたことだ」と言い放つほど、自己肯定感を損なっている。暴行を受けて、ボロボロの彼女が「私の本当の姿を見て」と迫っても、ドンキホーテは「姫」と言い続ける。誰にも承認されてこなったアルドンサはそこで世界を反転したのではないか。

その世界の反転は、「21世紀の日本で3次元ではうだつが挙がらない(非正規雇用で異性にモテず自分に自信を持てない)が2次元の世界(ネトゲとか)では神なんだ」みたいな現実逃避ではないと思う。そうではなく、自分の置かれた境遇や立場と、自分自身の尊厳は独立した別々のもので、アルドンサは世界と自分を肯定的に捉えなおしたんだと思う。人間はどんなに過酷な環境や境遇でもそこに希望を見出して生きれば、幸福を追求し続けられる。でもその戦いは、あまりに孤独で、あまりに過酷だ。サンチョも劇中に「ゾウがネズミをかじっても、ネズミがゾウをかじっても、どちらも痛いのはネズミだ。」みたいな台詞があったが、大きなものと闘う個人は勝ち目がない。それでもそんな戦いをし続けるドンキホーテは、何だかとても神々しく見えるのだ。そして観劇していて物語の序盤にドンキホーテに感じていた退屈さは、そのまま自分の生き方へと跳ね返ってきて、自分の人生の退屈さを思い知らされる。ありのままの人生に折り合いとつけてるなぁ、と。

いつの時代もこの世界は不平等で不完全なものだという指摘は正しいかもしれないが、指摘したあなたはその事実をどう変えるのか?ドンキホーテは、その問いにドンキホーテは1つの答えを示しているなと思う。
Still on a roll

Still on a roll

FUKAIPRODUCE羽衣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2013/07/11 (木) ~ 2013/07/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

幸せ過ぎる劇空間
とにかくすごく良かった。生で観るのは2回目だけど(「サロメvsヨカナーン」を
Ustream放送してくれたので、3回も見てしまった。生で見れなかったのが残念すぎるっっ)、目の前で繰り広げられる風景が全身全力のパフォーマンスなのに妙すぎて、内容が全然頭に入って来ない。でも、観劇後も、ずっと残り続ける余韻と、頭から離れないメロディーで、あぁ僕は完全にこの公演にやられてるなと多幸感に包まれます。

東京ノート

東京ノート

青年団

東京都美術館 講堂ロビー(東京都)

2012/07/15 (日) ~ 2012/07/25 (水)公演終了

満足度★★★★★

美術館で
劇場でない場所での観劇は初めての体験でしたが、作品に「空間」という様相を添えて一層楽しめるなぁと思いました。当然、劇場ではない訳で上演にあたっては様々な試行があっての事だと思いますが素晴らしい出来栄えで、観劇出来て本当に良かったと思います。個人の葛藤と世界のつながりが、観客として俯瞰で見てジワジワ伝わってくる素敵な作品でした。所作や表情など、台詞以外の部分もとても繊細で自然で、ずっとずっと見ていたかったです。

アンドロイド版『三人姉妹』

アンドロイド版『三人姉妹』

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2012/10/20 (土) ~ 2012/11/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

さびしさ
大切なものが過ぎ去ってしまった世界で私たちはどうやって生きていくのだろう。感情がないはずのロボットやアンドロイドに、いつしか観客が感情を見出だしてしまった時に、不完全にしか生きられない人間の圧倒的な寂しさが浮かび上がる。一度見るだけじゃもの足りない。何度も見て味わいたい傑作。でも、こうしてロボットが高性能になっていけばいくほど、役者さんの立場も危ぶまれたりして…。公開中の映画「演劇1・2」と合わせて見るとより味わい深いです。

韓国現代戯曲連続上演

韓国現代戯曲連続上演

韓国現代戯曲連続上演実行委員会

こまばアゴラ劇場(東京都)

2013/11/06 (水) ~ 2013/11/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

味わい深い!
精微に演出されて美しい空間。でも物語は3つ共に、どこか荒々しい。寂しくて苦しくて、哀しい。胸がザワザワして、久しぶりに味わう新鮮な感覚でした。韓国の気鋭の若手の中短編を日本語でまとめて堪能出来る贅沢な時間でした。全部で二時間弱位。

劇団ハタンセ『タイタス・アンドロニカス』

劇団ハタンセ『タイタス・アンドロニカス』

こまばアゴラ劇場

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/08/17 (金) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

최고예요(最高っ!)
イス席もありましたが、当然立って観劇しました、素晴らしかったっっ。舞台上にいる事への興奮がすごかったです。もう本当に目の前で役者が演じて、要所で観客が小道具の準備したり、舞台装置動かしたりして見てて楽しい、手伝えてなお楽しい。予習して行ったので物語に置いていかれること無く(台詞の機微はわかりませんでしたが)見れました。身体を張ったアクロバットなパフォーマンスも多いし、体の使い方も日本と違うなという印象でした。何より俳優の皆さんが、サービス精神旺盛で、言語の壁なんて関係ないんだなと実感しました。

非実在少女のるてちゃん

非実在少女のるてちゃん

笑の内閣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/08/03 (金) ~ 2012/08/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

ちょーぜつバカバカ
会場入って、前説(コント)が始まった辺りから、何だかいつもと客席の雰囲気が違うなという感じがしました。反応が良いというか、役者への笑いや拍手や時々相槌まで入って、場内の人たちノッテるなぁと感じました。演劇好き、というより笑の内閣好きが集まってるのかなという印象です。僕は初見でしたが、開演して5秒で心もってかれました。馬鹿馬鹿しくてヤバイ、超ヤバイです。役者が男女共に格好つけてなくて、自然体で、かつ体当たりなのも好印象。元ネタを全部わかる人いるんだろうかってくらい、メジャーなものからマニアックなものまで色々なパロディーや風刺がありました。(物販で売ってるパンフレットに細かい文字でびっしりネタバレ書いてありました。)でも、笑わせるだけで終わらせない物語が心地よい。押し付けがましくない、等身大の作者のメッセージに僕はとても共感しました。「非実在青少年」を巡る青少年育成条例の問題が整理されて、当時(2010年)の様子もよくわかりました。日替わりゲストもアフタートークのゲストも豪華っっ。非常に楽しかったです。

ネタバレBOX

初日だったのか、それが持ち味なのか台詞はカミカミな場面も。小道具が落ちっぱなしのシーンもあったし、歌もダンスもグダグダな場面も。でも、別にそんなの気にならない位勢いがあって、ウケようがウケまいが全力で演技してる感じが良かったです。

ベタなお約束やそれに突っ込みを入れるドタバタ劇を多用しつつ、キレイな格好したPTA評議会会長が床を転がったり、日替わり刑事をゼイタクに使ったり(金八先生の往年の名シーンのパロディですが、今の若い子は知らないのでは)と体張ってるなというシーンも多くて楽しめました。ラストのエヴァのシーンも爆笑でした。(こっちは逆に年配の観客の方がポカンとして見てました…。)

悪の都知事と、それに対抗する正義のヒロインというわかりやすい勧善懲悪ものに仕上げつつ、警察OBの天下りの話や違憲逮捕につながりかねない問題があるなど、管理社会への批判と表現の自由の重要性をしっかり訴えて、訴えるシーンが続くと、それをまた茶化して。ヴォルテールやマルチン・ニーメラの有名な言葉も、この公演見て初めて知りました。全体通して笑いとマジメとバランスが取れてると思います。また、是非東京に来て欲しいです。

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