KAEの観てきた!クチコミ一覧

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三文オペラ

三文オペラ

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2014/09/10 (水) ~ 2014/09/28 (日)公演終了

満足度★★★

楽しいけれど、深みに欠ける
「三文オペラ」は過去に何回か拝見している作品ですが、今回のキャストが一番好みでした。

ただ、主役のメッキース役の池内さんは、見栄えはバッチリですが、まだ男の色気が足りないと思いました。

山路、あめくみちこコンビのピーチャム夫妻は最高!そのまま、レミゼのテナルディエ夫妻や、「オリバー」のスリの元締め役などもおつとめ頂きたい雰囲気でした。

いつも、拝見する度、うまいなあ!とため息が出るソニンさんは、今回も、大活躍で、舞台を活気づかせます。大塚ちひろさんとの丁々発止のやりとりは愉快でした。

当時の社会情勢の不条理さなどを、暗く感じさせる舞台運びではなく、実力派の舞台俳優陣の競演を単に楽しむという観点からなら、大満足の舞台でした。

ネタバレBOX

おかやまはじめさん、原慎一郎さん、亀田さんなど、脇にうまい役者さんが大勢いらして、それだけで、胸のすく思いがしました。

期待の伊藤さんは、警官役で、目立たなかったのが残念。娼婦役の小見さん、美しく見栄えが良くて、存在感がありました。枝元さんも、いい味!

宮田さんの演出は、ちょっとお行儀が良すぎたかも。もう少し、猥雑な退廃感があれば、時代の空気が色濃く漂った気がします。

東宝の王道ミュージカルと違って、登場人物の肉声の伝わる歌唱は、作品とマッチして、楽しめました。
君となら

君となら

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2014/08/09 (土) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★

草刈さん好演なれど
以前から、知り合いや家族から面白いと聞かされていた「君となら」をやっと拝見できたのですが、どうも、嘘から端を発するというストーリー展開が、性に合わない上、これだけの高額チケットに見合う内容でもないので、テレビ中継があるのなら、それで充分だったかもしれないと思いました。

初演当時、素敵な俳優さんの代表格だった草刈さんも、年月を経て、ベテラン中年役者に仲間入りされ、草刈機のCMでもわかるように、コメディ演技に向いていらっしゃるので、草刈さんの飄々とした演技は、この舞台の要になっていました。

心配された、竹内さんの初舞台も、昔観た高橋英樹さんの初舞台などより、よっぽど堂に入っていて、安心しました。

妹役のイモトさんのご活躍と、主役の恋人の息子役の長谷川さんの好演も光りました。(ちょうどこの日観た「相棒」の再放送の犯人役の方だったので、驚きました。)

ネタバレBOX

ちょうど、パルコ劇場に上がる階段で、サクラを使ったイベントの長蛇の列に呆れながら、会場に到着。

そうしたら、芝居の内容も、主人公の嘘に振り回させる家族のドタバタ劇なので、ちょっと辟易。最近、プライべートでも、日夜周囲の嘘に翻弄される生活を送っているので、せめて、虚構の芝居の世界でぐらい、気持ちよく笑えるストーリーを期待してしまいます。


まだ、携帯のないポケベルが流行っていた頃のお話で、主人公の彼氏の息子が、ポケットの中のポケベルに反応して、自分が、振動する仕草は、とても愉快でした。

母親が、娘の恋人を青年実業家だと思い込み、勝手に、草刈正雄のイメージで想像しているという設定は、オリジナル脚本通りなのでしょうが、たぶん、多くの観客は、父親役が草刈さんなので、舞台趣向として、そういう台詞になったと誤解されたのではないでしょうか?
そのため、せっかく、舞台上で、うだつの上がらない床屋の主人を、草刈色を消して好演されていた、草刈さんの役者力に、水を差してしまう結果になってしまったのではと、ちょっと残念な気もしました。

先日観た、「ショーガール」のセットとほぼ同じでしたが、洗濯物だけは、全く違っていて、三谷さんの遊び心にまた感心したり、おまけの観て得気分を味わえたのは、ラッキーでした。
こわくないこわくない

こわくないこわくない

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2014/08/30 (土) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★

いつもほどの疾走感がなくて
やや物足りなさを覚えました。

相変わらず、時流に乗った題材をうまく調理して、クロム流の独自手法で、観客に社会問題を提示する術はお見事だと思うのですが、キャストが多かったことと、数人のクロム主砲キャストが不在だったこと、役者の演技力にバラツキがあったことが、マイナス要因だったのではと感じました。

でも、期待の幸田さんは、期待以上に魅力全開!あのダンスには、打ちのめされました。

最初のシーンは、クロムのベテランキャストの登場からにして頂けたら、もう少し、舞台に気持ちを持って行かれたのかもしれません。

武子さんととかげさんの神崎夫妻の登場から、一気に、世界観が広がりました。

ネタバレBOX

最初に登場される若い警官役のお二人の演技が、できの悪いコント芝居のようで、ゲンナリ。一気に、期待値が下がってしまいました。

ストーリー展開も、いつもほど、先が読めない、奇想天外な空気感が少なく、ネグレクトの親から拉致されて、持田に育てられていた子供達も、キララ役の川村さん以外は、どうも、クロムには不釣り合いな演技で、精彩を欠き、キャストの力量の差も、いつものクロムの疾走感に待ったを掛けた要因かもしれないと感じます。

たじたじが、何故、あーいう行動に出ていたかの、謎が解けた終盤の告白には、うるっとする瞬間があったのですが…。

クロムの芝居は、劇団員と、クロム色を体現できる確かな技量のあるキャストのみで、是非公演して頂けたらなあと切に思いました。
KOKI MITANI'S SHOW GIRL

KOKI MITANI'S SHOW GIRL

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2014/08/21 (木) ~ 2014/09/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

三谷流「ショーガール」の、素敵な時間
まず、舞台セットにビックリ!なるほど、三谷さんらしいなとニンマリ。

続いて、舞台設定に大笑い。「ショー・ガール」なのに、舞台設定の場所はそこか!と吹き出しました。

シルビアさんの魅力全開の舞台で、絶対、これシリーズ化してほしいと思いました。

遅い開演時刻ということもあり、本当にこのステージを楽しみたい観客だけの客席は、本当に居心地の良い空間で、その環境の良さも、満足度をアップさせました。

福田陽一郎さんの「ショー・ガール」は、昔、全公演を、招待券で拝見させて頂きましたが、自分でチケットを買ってまでは、観たいとは当時思いませんでした。

でも、こちらの「ショー・ガール」なら、続く限り、自腹で拝見したいと思います。

ネタバレBOX

たぶん、「君となら」のセットをそのまま再利用されているのでしょう。ところが、ステージ進行と共に、徐々に、そのセットが、ショー向けに改変されていく、アイデアに、まず笑みが零れてしまいます。

川平さんの歌う「ここは、ニューヨーク…じゃない、三鷹市下連雀…」という、愉快な歌詞にも、吹き出します。

ピアニストを、ハンガーラックに見立てたり、シルビアさんの演じる、派手な女と、地味な女の演じ分けも、痛快で、全てのステージングが、機知に富んでいました。

やっぱり、三谷さんって、鬼才だなあと安心させて頂けて、、その点でも満足。

ストーリー自体は、純和風でしたが、最後のレビューシーンは、お二人の面目躍如の好演を思う存分堪能できて、たった1時間とは思えない、充実した至福の観劇タイムでした。

一人ではなく、気の置けない友人と二人で、観られて幸せでした。
Lost Memory Theatre

Lost Memory Theatre

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2014/08/21 (木) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★

感覚的過ぎて理解も共感も不能でした
親戚同様の長いお付き合いの江波さん始め、10代からの耕史さんファンであり、白井さん演出も大好きで、楽しみなメンバーが結集した舞台、浮き浮きと神奈川まで、足を運びましたが、残念ながら、期待外れでした。

確かに、三宅純さんの音楽は執拗に心にも、耳にも残るのですが、芝居とダンスがそれと融合せず、終始混とんとしたステージ進行になっていました。

どこかに、心の琴線に触れる部分はないものかと、目も耳も研ぎ澄まして、注視していたのですが、一度も、感覚的にも共鳴できる瞬間はありませんでした。

ただ、美波さんは、美しかったし、江波さんは、可愛かったし、耕史さんは、存在感があり、その部分では、満足しました。

だけど、私、演出家白井さんのファンではあっても、どうやら、役者白井さんのファンではなさそうだなと、今回改めて、認識してしまいました。

ネタバレBOX

千秋楽で、皆さん、スタンディングで、何度も拍手されていましたが、私としては、ここまで共感できない舞台に、腰を上げる気持ちにはなれず、キャストには申し訳ないことですが、座ったままで、拍手しました。

言わば、白井さんの実験劇的な公演なのではと、周囲のお客さんの声に、同感です。

森山さんのダンスも、いつもほど、心に深く響かず、その点もやや残念でした。

わからないながらも、どこかで、こういうことかな?と推理するまでの余地もなく、私は、このステージの観客には向かない人間だと、思い知らされて、帰宅しました。(副都心線で、1本で帰れて良かった!(笑)
VAMP ~魔性のダンサー ローラ・モンテス~

VAMP ~魔性のダンサー ローラ・モンテス~

ネルケプランニング

EX THEATER ROPPONGI(東京都)

2014/08/24 (日) ~ 2014/09/08 (月)公演終了

満足度★★★★★

岸谷さんのステージワークに陶酔します
昨日の不満を一気に解消してくれる素晴らしい舞台芸術作品でした。

とにかく、視覚的な美しさに、開幕から一気に引き込まれました。

ローラ・モンテスのメイサさんは、同性から観ても、クラクラするほどのセクシーさで、観客を魅了するし、相手役の5人の男優さんと、闇の精役の早乙女さんは、それぞれが、個性的なので、ローラが、様々な男性と恋に落ちたという経緯が、具体的なイメージと共に、追体験できて、目が離せない陶酔感に浸りました。

ローラが、一番愛したというフランツ役の中川さんの歌唱は、もはや魔法のようだし、この二人の絡むシーンは、視覚的、聴覚的、官能シーンとして、長く記憶に残りそうです。

ネタバレBOX

ローラと、5人の男性との恋愛模様を、花と、ローラの衣装で、色分けして見せる、ステージワークの巧みさに、開幕から、唸りました。

何てお洒落で,魅惑的な演出でしょう!

それぞれの男性との恋愛事情を描く場面では、他のキャストが、小道具係などを務めて、常にほとんどのキャストが、舞台上にいるのですが、メインの役でない時の、彼らの居住まいが、これまたプロフェッショナル。

それぞれ、個性的な5人の役者さんが、各々のやり方で、ローラを愛する場面をこよなく体現してくださって、実際に交わるシーンなどはないのにも関わらず、正視できないような官能表現に、心がざわつきました。

女は、いつでも、ここではないどこかを模索し、一人の男に満足はしないのだろうし、男は、常に、女を自分好みに育てようとして、結局は、別離を誘発してしまうものなのかもしれません。

男女は、お互いを求め合いながら、終生、理解し得ない関係なのかもしれないと、感じながら、この素敵な夢の世界で、しばし、現実逃避をできたことは幸いでした。
舞台「炎立つ」

舞台「炎立つ」

サンライズプロモーション東京

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2014/08/09 (土) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度

この演出家舞台は、二度と観ない!
以前から、この演出家の舞台では、何度となくガッカリさせられた経験があるのですが、それでも、これだけ高名な演出家なのだし、演劇賞もたくさん受賞されているのだし、良い舞台を拝見できる日もあるかもと、微かな期待で、好きな役者さんが出演される舞台は、時々、懲りずに観に行っていました。

でも、今度と言う今度は、さすがに、決心しました。金輪際この方の演出舞台は観ないと誓います。

ダンスミュージカル的な舞台なら、少しは、象徴的なストーリー展開でも納得が行きますが、台詞劇の場合は、登場人物間の会話が不可欠だと思います。この舞台では、人物同士のキャッチボールのような会話がほとんどありませんでした。

皆が、勝手に一方通行の台詞を喋っているだけ。これでは、単なる説明劇だと思います。

ですから、ひたすら眠くなるばかりでした。

唯一特筆すべきは、新妻聖子さんの存在感が、圧巻でした。語りから、歌に移行するところの自然さは言うに及ばず、その声の二重性にも驚かされました。

舞台『ガラスの仮面』

舞台『ガラスの仮面』

松竹

青山劇場(東京都)

2014/08/15 (金) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★★

舞台の出来映えでは蜷川版が圧勝なれど
「ガラスの仮面」は、私を稀代の演劇ファンと知る友人から、何度も読破を勧められた作品ですが、どうも、第一線の演劇評論家の娘として生まれた身として、日本の演劇事情とかけ離れた設定に鼻白む思いがして、未だに一度も原作を読んだことはありません。

ですが、以前、さいたまで上演された、蜷川演出、青木豪さん脚本の舞台は、圧巻でした。

今回の舞台は、G2さんの脚本、演出なので、良くも悪くも、一般大衆向けな作品に仕上がっていて、そのため、原作ファンにとっても、原作を知らない観客にとっても、薄味の舞台になっていた気がします。

特に、1幕前半は、これまでの解説に終始し、舞台作品としての醍醐味が希薄でした。
2幕は、舞台セットの不具合点検により、何と1時間近く開幕が遅れ、逆に開幕の期待感が高まったせいか、ストーリー展開にのめり込む部分もありましたが、どうも出来の良い学生演劇レベルの舞台だったという印象は拭えませんでした。

でも、貫地谷さんのマヤは期待通りでしたし、原作ファンの感想を小耳に挟んだところによれば、マイコさんの亜弓と、一路さんの月影先生も、イメージ通りだったようで、評判上々でした。

このキャストで、蜷川演出、青木豪脚本の舞台なら、さぞかし良かったのではと感じました。

二幕の開演遅れを、最初、場内アナウンスのみで、3回も待ったを掛けたせいで、怒号を発する男性客がいましたが、ようやく、松竹の方が、壇上で説明したところ、最後には、観客全員が温かい拍手で、それに応じて、我慢の足りない男性客を無言で諌める形となり、改めて、演劇ファンというのは、ありがたいものだと、感嘆しました。

そんな事情もあって、演劇を題材にした、この作品、内容的な満足度は、低かったものの、+〆作用で、満足度はアップしました。

ネタバレBOX

マヤに取り入り、演技を盗む新人女優役の内田さん、マヤを苛める先輩女優役始め、随所で活躍する松永さんの演技が、愉快でした。

紫の花の人、小西さんは、原作を知らない自分には、とても適役と映りました。

昔から、注目している小林大介さんも、渋みが加わり、更に素敵な役者さんに成長されたなあと、感慨深い思いがしました。

一路さんの月影先生の風貌が、「エリザベート」のトートと重なり、往年の宝塚ファンの方にとっても、思わぬプレゼント効果があったのではと思いました。
若かりし日の月影先生の「紅天女」の劇中劇は、まるで、昔の松竹映画を彷彿とさせ、さすが松竹作品と、一人、受けてしまいました。

劇中劇の「ふたりの王女」って、内容が、まるで、アナ雪のようで、こちらにもビックリでした。
If I Were You~こっちの身にもなってよ!~

If I Were You~こっちの身にもなってよ!~

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2014/08/09 (土) ~ 2014/08/24 (日)公演終了

満足度★★★

コメディにしては、1幕が冗長
アラン・エイクボーン原作だし、カトケン事務所だし、キャストもいいしで、久しぶりに、大いに笑わせて頂きたいと、期待度マックスで、劇場に向かったものですから、1幕の、家族状況説明に終始する舞台進行には、ちょっと肩透かしを食った感が否めませんでした。

2幕になると、ようやく展開が楽しくなって、楽しめます。

コメディの中に、少し、娘夫婦のビターな問題も織り込み、所詮、男と女は、立場を代える経験でもしない限り、永遠に解り合えない関係だということを、作者が少しの皮肉と、ユーモアで、提示した作品のように、受け止めました。

役者さん達は、皆さん好演されていますが、演出が、杓子定規で、もう少し、遊び心に満ちていたら、さぞかし、面白くなったでしょうにと、残念に思います。

ネタバレBOX

開幕直後、妻のジルが、夫の入った後のトイレの状況に悲鳴を上げる気持ち、とても共感してしまいます。

どうして、男って、家族に女がいるのに、便座を下すことをしないんでしょう?
こういう日々の男の配慮のなさに、女は、常にイライラするんだけど、男の方は、女が常にイライラしているのは、全く自分には無関係なこととしか捉えられないんでしょうね。

今でも、ダブルベットで、寝起きしているマルとジルの中年夫婦は、世間から見れば、非常に仲睦まじいカップルで、何の問題も抱えていないように見えますが、お互いの心の中では、相手へのこうした些細な不満が蓄積して、日常生活に疲弊している現状。

1幕は、この二人の夫婦と、高校生の息子と、夫の部下と結婚した娘の家庭事情が、ある1日の日常スケッチで、詳細に観客に提示されます。

1幕ラストで、共に感情を共感できないまま、背中を向けて、眠りに入った夫婦が、翌朝起きてみると、何と互いの体が入れ替わっていて、ビックリ仰天というところで、休憩へ。

2幕は、その場面から、翌朝の展開に導入され、ようやく、コメディ舞台の楽しさに溢れた空気に一転しました。

二人は、仕方なく、夫は、家で慣れない家事や、息子の芝居稽古の相手などをして、一方、妻は、夫の振りをして、久々に外に働きに出かけて、自分の采配の才に気付いたりします。

こうして、体が1日だけ、チェンジしたことをきっかけにして、お互いに相手の身になって考えることができて、ジルとマル夫婦に関してはめでたしめでたしなのですが、若い娘夫婦の方には、徐々に暗雲が垂れ込め始めています。

どこの家庭でも、多かれ少なかれ、こういう男女の生まれながらの性差から生じる不幸な出来事は、枚挙にいとまがないもの。世の中に男女がいる限り、永遠の命題なのかもしれません。

この芝居のように、お互いの体を交換するなんて、無理なんだから、家族が仲良く生活を営むためには、お互いの身になって、相手の気持ちを想像する努力を続けるしか、家族崩壊のシナリオから、身を守る手立てはないのでしょうね。
最近の自分の心情から、そんなことばかり考えて観ていたので、余計、舞台を呑気に楽しむ気分にはなれなかったような気もしなくはありません。

平均すれば、実に楽しい舞台でしたが、ただ、夫の振りをして、部下を接待した妻が、飲酒運転を平気でするというストーリー設定には、不快な思いを禁じ得ませんでした。

これだけ、無謀運転のせいで、いたいけな命が奪われている世の中、たとえ、あり得ないコメディ作品であっても、そういう人間の常識を逸脱する設定は、翻訳の段階で、変更する良識が必要だと感じます。
ミュージカル「ミス・サイゴン」

ミュージカル「ミス・サイゴン」

東宝

帝国劇場(東京都)

2014/07/21 (月) ~ 2014/08/26 (火)公演終了

満足度★★★

駒田エンジニア初見
「ミス・サイゴン」は初演の時から、何度も観ているミュージカルですが、駒田さんのエンジニアが観たくて行ってきました。

駒田さんに対する期待が大きすぎたせいか、想像以上のエンジニアではなかったのはちょっと肩透かし。

昨年から、演出や舞台セットがずいぶん変わりましたが、今度の舞台では、更に演出がまた変容し、訳も若干変わっていたようでした。

クリスが、キムとのことをジョンに有頂天で報告する箇所で、昔は「彼女はまるで蓮の花」と言っていたのが、今回は、「まるで月」でした。
でも、これって、何だかそれこそ月並みな表現で、私は、「蓮の花」の方が好みでした。

昨年の新演出は、衝撃的でしたが、今回は、その衝撃が少し薄れ、全体的に舞台の運びが、計算され尽している感じが、舞台の醍醐味を軽減していた感じを受けました。

ネタバレBOX

原田さんのクリス、木村さんのエレンは、とても良かったと思います。

笹本さんのキムには、まだ母親の心情が足りない気がします。

俳優の立ち位置などがかなり変わりましたが、あまり効果的には感じられませんでした。
舞台『カッコーの巣の上で』

舞台『カッコーの巣の上で』

ホリプロ

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2014/07/05 (土) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★

演出に妙味がないのが残念
この作品は、昔、好きだった人と映画を観て、映画館から出てから衝撃で、しばらく会話不能に陥った思い出があり、息子が、かつてビリー役を演じたことでも、忘れ難い舞台でした。

待ってましたの神野さんの婦長役を初め、楽しみな役者さんが集結していた割には、面白みに欠け、これはひとえに、演出の工夫の足りなさ故ではないかなと感じました。

神野さんの婦長は期待通りで、彼女の「ボーイズ!」のイントネーションに、支配側の圧力を感じ、その声を聞く度に、悍ましさを感じました。

小栗さん、大東さん、共に健闘されていました。

チーフ役の山内さんは、最初気づかず、後半で、ようやく、あ、山内さんだとわかりましたが、だから、かなり、いつもの山内色を消して好演されていたのですが、最後のシーンは、ちょっとお気の毒な演出で、役作りに苦慮されたのではと感じてしまいました。

今の世の中は、社会全体が、この精神病院さながらで、あの頃は、他山の石としてしか作品を感じていなかった、自分の甘さを痛感する思いでした。

死んでからしか解放されない世界なんて、悲しい現実ですね。

ネタバレBOX

映画では、配電盤を持ち上げて、病室の窓を壊したチーフが、、死んだマクマーフィーの肉体と魂と共に、自由な外界に飛んで行くといったエンディングが、涙なしには観られない感動を呼んだのですが、この舞台は、ラストで、暗転となり、マクマーフィーの眠るベットの横で、自由の身になったチーフが、前を向いて、走り続けるカットで終わりました。

チーフ役の山内さんは、自分の表情一つで、作品の出来映えを左右するような役どころで、責務を感じて演じざるを得ないご様子が、ちょっとお気の毒に思えました。もう少し、舞台ならではの余韻の残る演出工夫があればと残念に思います。
ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる

ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる

風姿花伝プロデュース

シアター風姿花伝(東京都)

2014/07/15 (火) ~ 2014/07/30 (水)公演終了

満足度★★★★★

逃れられない小宇宙である家族という形態
日頃から大ファンの3人の役者さんが結集する舞台で、しかも壮絶な家族劇が展開されるとの事前情報もあり、興味津々で劇場に向かいました。

観終えてみたら、私からすれば、それほど壮絶でも過激なバトルでもなく、我が家も含めて、大変卑近感のある家族形態で、「何だ!普通じゃん!」と、その点ではちょっと拍子抜け。(笑い)

まあ、それは少し大袈裟だとしても、増子さん演じる母親グンネルの言動が、相当自分に似通っていて、あるある感いっぱいで、観ていました。

家族というのは、一度形成されてしまえば、どんなに自分の理想とかけ離れた状況になろうと、絶対死ぬまで逃れられない、小宇宙。

親と子、夫婦は、時間の経過と共に、お互いの理想が相反し、ギクシャクしてしまうのが世の常。でも、気持ちはどこかで繋がっているので、結局は、そこに帰結して行く形態なのだと思います。

そんなことを、近くの教会の鐘の音や、犬の遠吠えや、家族があまり利用しないのに、手放せない別荘などの、象徴的な事象で、ジワジワと観客の大脳に感じさせられる秀逸な舞台作品でした。

最後のエレンの選択に、解釈が二通りできそうな印象を持ち、アフタートークの際、那須さんに「ご自身はどういう解釈で演じられたのか?」と伺ってみたところ、私の解釈と一致していたので、安心し、そう観客の私に、解釈どおりのエレンを体現して見せて下さった那須さんの演技力にも感服致しました。

だいたい、増子さんと那須さんは、実際にはそれ程年齢が離れていないでしょうに、舞台上では、母子だということに全く違和感がなく、お二人の女優力にも、改めて感嘆ものでした。

目に見える結末は、決して、ハッピーエンドではありませんが、でも私には、エレンは、家族の一員として、それを選択し、魂が安らいで行く穏やかな幸せを手に入れたのではないかと感じられて、悲劇的な作品とは捉えませんでした。
本当に、アフタートークのゲストの鷲尾さんがおっしゃったように、観劇後、ジワジワと胸に迫る作品でした。

本当の演劇ファンには、かなりおススメしたい舞台です。

ネタバレBOX

精神障害を持っている息子トーマスは、普通に会話している時は、とても柔和な表情で、他の芝居のように、あまり過剰な言動をしない演技を前田さんが、自然に見せていました。この点に関しても、アフタートークで、演出家の上村さんに伺いましたが、決して特異な存在として彼を登場させないという演出意図があったというご回答を頂いて、腑に落ちました。

トーマスは、マザコン。エレンはファザコンのような、描かれ方だと解釈しました。

もっと特異な家族形態のストーリーかと思いましたが、私の周辺には、もっと壮絶極まりない家族がたくさん存在しているので、那須さんと増子さんは、しきりに、日本ではあまりないと発言されていましたが、むしろ、自分には、とても普遍性を感じる家族の有様に映りました。

演劇的に、大袈裟なバトル劇が繰り広げられるかと思いきや、むしろ大変写実的な脚本です。

アル中のエレンも、母親も、父親も、どんなに気持ちが高揚しても、どこかで、最低限のルールを、自分の中で決めていて、相手を打ちのめすまでの攻撃的な発言は控えている伏がありました。

かなり破綻した家族でも、内心お互いに親や子や、配偶者に対して、自然と滲み出る愛情や、憐憫の情を有しているのです。
傷つけあいながらも、庇っている。それが、家族という、逃れられない運命共同体の姿なのでしょう。

我が家は、普通の家庭じゃない、実に異常な家族だと悩んでいる方には、必見の舞台なのかもしれません。

最後に、エレンは、たった2歳で亡くなった、生きていれば6歳の娘の母親として死を選ぶのではなく、このどうしようもない家族の一員として、離れていた自宅を死に場所と定め、、カールとグンネルの娘として、人生の幕を閉じようと、薬を持って、シャワールームへと足を進めます。
このラストシーンに、「欲望という名の電車」の主人公を重ね合わせてしまいました。きっとエレンの魂は、浄化され、落ち着いていたのだと感じます。

母親の愛情をトーマスに独り占めされ、孤独感にさいなまれていたエレンが、最後の日に、何度も、母親に対して、「ありがとう」と口にします。
一方、母親のグンネルも娘に対して、頬を打ったことを素直に詫びます。
母と娘が、最後の最後で、ようやく理解し得た、秀逸なシーンに、目頭が熱くなりました。

どんなに、家庭に居場所がなくても、自分のできる範囲で、懸命に、良き父親でり、夫であろうとするカールの居住まいにも胸打たれました。

この家族、私にとっては、相当、愛情溢れる素敵な関係性に思えます。
拝見できて、幸いでした。
ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』

ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』

日本テレビ

世田谷パブリックシアター(東京都)

2014/07/05 (土) ~ 2014/07/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

胸を抉る真実
やはり、鈴木裕美さんの演出は圧巻でした。

親御さんが、演劇の世界で生きようとした裕美さんの選択に反対された時、私の叔母が背中を押したのだそうですが、叔母よよくやってくれた!と裕美さんが演劇の世界に身を投じて下さったことを心から感謝してしまいました。

予備知識が全くなかったので、ストーリーが進行して行くに連れて、驚愕の連続で、背筋が凍る思いがしました。

キャストが、全員好演。

まさか!と思うような内容の芝居ですが、下手なサスペンスドラマよりも、現実社会の出来事の方がセンセーショナルな昨今の現状を思うと、こういう研究は実は行われているのではと戦慄が走りました。

初女性役デビューの音月さんが、大活躍される舞台で、彼女が演じる妹の悲劇が明かされてからは、涙を禁じえませんでした。

観ていて、辛くなりますが、是非多くの方に体験して頂きたい、濃縮の舞台作品でした。

ネタバレBOX

焼死した心理学博士の残された子供達が、事件の真相を、大人になってから、探り出すことをきっかけに、隠された驚愕の真実が明白になる。

小西さん、上山さん、良知さんが演じる男の子3人と、音月さん演じる女の子の4人兄弟は、孤児院から引き取られた養子で、実際は血縁関係のない兄弟です。

研究に勤しむ父親は、育児係として、一路さん演じるメリーを雇って、子供達の養育を任せていました。

4人の子供達は、メリーを実の母親のように慕って、兄弟仲も睦まじく成長していましたが、彼らは、思春期に差し掛かった頃、何故か水曜日だけ、自分たちの記憶が失われていることに気づき、ある水曜日に、いつもメリーに飲まされる薬を飲んだ振りをして、父親の研究の正体を探ろうとします。

そこで、4人が知ってしまう驚愕の事実に、観客も息を呑んで、胸が苦しくなる経験を余儀なくされてしまいました。

こういうシーンの裕美さんの演出は、圧巻としか言いようがありません。

実にやるせないストーリーでしたが、最後に4人が選ぶこれからの生き方に、少しだけ希望が見えたのは救いでした。

人道的に許すことのできない、人体実験。その犠牲になった4人の子供達の連帯感と、お互いを思いやる心に、胸を打たれました。

大人と子供時代の演じ分けを一瞬にして体現された4人の演技力に感服。
実は博士の共同研究者だった催眠術師のメリーが、子供達への愛情に目覚め、彼らの究極の選択に力を貸すラストの展開には、深く胸を揺すぶられました。
永遠の一瞬 -Time Stands Still-

永遠の一瞬 -Time Stands Still-

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2014/07/08 (火) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★

切ないラブストーリーとして観るべき芝居
主人公が、戦場のフォトジャーナリストということで、かなり身構えて観てしまいましたが、観終えてみれば、これは男女の切ない恋愛模様を描いた芝居なのだと気づきました。

主人公の職業はあくまでも芝居のお膳立てで、これが他のどんな職業であれ、作者の描きたかったテーマは、同じだったような気がします。

宮田さんの演出は、いつも丁寧なのですが、そのせいで、いつもどこか、作為的な感が否めません。どうしても、登場人物を俯瞰して観てしまって、結局これは芝居なのだと、常に意識させられます。だから、観ていて、究極的に登場人物の意識にのめり込むことができません。良く練られたお芝居だとは思いますが、満足度がマックスにならないのはそのせいだと思いました。

中越さんは、たぶん、初舞台からかなり拝見している女優さんですが、観る度、舞台女優としての劇的な進化を感じて、嬉しくなります。
一方、相手役の瀬川さんは、良くも悪くも、いつも一定の役者力を発揮される男優さんだと認識します。台詞回しが、ある意味自然なのですが、台詞の一部が観客に伝わらないのは、舞台俳優としては、致命的な気がしてしまいます。特に、こういう、一字一句の台詞が重要な芝居においては。

ネタバレBOX

戦場のフォトジャーナリストの女性と、彼女に常に同行していた、恋人のノンフィクションライターの恋愛模様。

一幕では、サラは、取材先で負傷して、命からがら、帰国して来るところから、始まります。恋人のジェィムスは、サラほどには神経が図太くなくて、戦場の悲惨さに耐えられず、先に帰国して、オカルト映画の脚本作りに勤しんでいるようです。そんな彼を観るサラの目は時に批判的ですが、長い間、コンビを組んで来た彼に対して、サラは複雑な女心を覗かせたりもします。

一幕ラストでは、怪我をしたサラを慈しむように、二人が再び、心も体も結ばれるシーン。ここで、私は、この芝居は、恋愛ものなのだと、ようやく気づかされました。

二幕冒頭は、ジェイムスが、戦場ものの芝居を観劇しての感想を述べる場面から始まります。この彼の痛烈な感想が一々耳に痛かったのは私だけでしょうか?戦場ものの芝居を観て、疑似体験をした気になって悦に入って帰宅する観客の一人が、まさに、今の自分に重なって、心が重くなりました。

連日、終わることのない戦闘が、どこかで繰り返されて、幼気な子供達や、非力な人間の命が露と消えて行くのに、何もできない自分。ジェィムスの無力感は、私にとっても他人事ではなく、だから、登場人物の中で、彼の意識に一番共感してしまう自分を疎ましく感じてしまいそうでした。

戦場で、悲惨な民衆にカメラを向けることに、時として、迷いや、逡巡を感じることもあるサラは、でも、自分の持ち場は、戦場のジャーナリストのみという自負に支えられて生きています。

二人は、お互いに、相手への愛情を自覚しながらも、一緒に生きられないと悟る時を迎えます。二人の間の隙間風の理由として、サラの通訳だった現地男性との情事も、色濃く反映していました。
その男性タリクは、既に亡くなっているのですが、ジェイムスにとっては、未だに彼は心の中で存在していて、だからこそ、取材ルポに、タリクの存在を消し去ってしまいます。サラには、逆にこのことが、ジェイムスとの別離を決意させるきっかけになるようです。

別れを決意した二人は、今後、親友として、関係を続けて行くのでしょう。
一度は存在を消したタリクを、出版に漕ぎつけた写真集で、再び復活させるのは、ジェイムスのサラへの精いっぱいのはなむけだったのだと思います。

相手を嫌いになったわけではないのに、止む無く別れを選択したことがある経験から、二人が最後に固く抱擁するシーンは、胸に応えました。
個人的好みから言えば、ここで幕にしてほしかったと思います。

せっかく、積み上げて来た芝居が、最後の最後のわざとらしいサラの所作を見せることで台無しにしてしまった気がしました。中越さんが、戦場のフォトジャーナリストがカメラを構える演技を体現できるまでには残念ながら、まだ無理がありましたから。
ミュージカル「天才執事ジーヴス」

ミュージカル「天才執事ジーヴス」

ホリプロ

日生劇場(東京都)

2014/07/04 (金) ~ 2014/07/13 (日)公演終了

満足度★★★★

ノスタルジックで和めるミュージカル
楽日だったからか、客席の拍手が、絶大な効果を上げていて、ウエンツさんのファンjの質の良さを感じました。

古き良き、ノスタルジックな雰囲気のミュージカルで、「キスミーケイト」とかを彷彿とさせます。

ウエンツさんは、昔昔、四季の「美女と野獣」で、子役として出演されているのを観て以来、初めて舞台で拝見しましたが、意外と歌も上手で、動きも機敏。観客を味方につける才があるので、これから、舞台人としても楽しみな俳優さんだと思いました。

里見さんとのコンビネーションも、しっくりとしていました。執事の役は、北大路欣也さんでも観てみたい気がします。

男優さんは、里見さん以外は、お笑い系の方が多いので、執事を他と色分けするという意味では、キャスティング的に成功だったと思います。
ただ、エハラさんとつぶやきシローさんが、風貌や体型が似通っていて、遠目で観ると、見分けがつきにくく、バセットの家でのシーンでは、どちらが登場されたのか、混同してしまうことが多々あったのは、ちょっと残念。

女優さんも、それぞれ、芸達者で、舞台を弾ませていました。

あまり期待していなかっただけに、思いの外楽しくて、ウキウキしてしまいました。

無害な楽しさに満ちているので、これなら、お子さんでも安心して観られそうです。ファミリーミュージカルとして、定着しないかしら?

ネタバレBOX

劇中劇と言うか、教会での時間稼ぎの即興劇として、バーティが友人の恋愛成就に手を貸した体験を、その場の小道具を駆使して、演じて見せる趣向が、気が利いていて、心和むステージでした。

ウエンツさんで観てしまうと、他の俳優さんが思い浮かばない程、バーディ役がピッタリ。ウエンツさんと、この作品、運命的な出会いではと感じてしまいました。

私の後ろの席の女性が、終始楽しげに笑って観ていらしたのも、心がほっこりする要因の一つだったかも。

現実世界は、憂えることばかりなので、たまには、こういう、ただ笑って観られる舞台作品は、宝もの感がありました。拝見できたことに感謝!
白紙委任状

白紙委任状

サスペンデッズ

OFF OFFシアター(東京都)

2014/07/08 (火) ~ 2014/07/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

台風到来をものともせず、行った甲斐あり
帰りの電車が心配で、他の劇団なら、たとえチケットを買っていても、観劇は断念していたかもしれません。

でも、大好きな劇団、見逃したくない劇団、その上、今回は、理想の劇団員のみの公演。これを見逃したら、一生後悔するだろうと、神に祈りつつ、下北に向かいました。

行って良かった。ニューヨークで、父上の遺志を継いで、奮闘公演中の中村屋兄弟にも引けを取らない、サスペンデッズのメンバーの八面六臂のご活躍に、目頭が熱くなりました。

あの野々村議員に見せて、感想を聞きたくなる作品でした。

ネタバレBOX

今回の舞台は、劇団員のみという事前情報は承知していましたが、いきなり佐藤さんが、女性役で登場された時には、してやられた感で、喝采を叫びました。

何役も早替りで、演じられるということを想定していなかったので、かなり、この劇団のファンである私にとっても、新鮮な構成劇でした。

コントとかならいざ知らず、こんなシリアスな芝居で、一瞬にして、他者に見せる演技力が、筆舌に尽くし難い完璧さ。特に、伊藤さんは、8役をこなされましたが、全員別人に見えました。

佐藤さんと佐野さんは、服装や、性別や年齢、鬘などで、差を出せるからまだ演じ分けも容易いと思いますが、伊藤さんが演じた役は、皆、男性で、年齢的には同世代ばかり。これを瞬時に、別人だと観客に納得させられるなんて、本当に凄い技術だと感無量でした。

早船さんの脚本も、相変わらず、秀逸。
人間は、誰でも、心に闇を抱えて、吊り橋を渡るような危うさの中で生きています。
脱法ドラックに手を染めないでも、いつどこで、箍がはずれるかわからない。
普通の人間が、何かの弾みで、犯罪者になったり、他者を傷つけてしまったりの連続。
被害者と加害者が立場を入れ替えることも、日常茶飯事。
そういう、人間の未完成な部分を、たった1時間15分の芝居に集約して、見せた、早船さんと3人の役者さんの技量に、心から敬服致しました。
あまり、人となりが描かれなかった、文句屋の小山にも、彼をそういう人間にしてしまった闇があるのだと、手短な場面で、印象づける、早船さんの作者力にも脱帽します。
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

東宝

シアタークリエ(東京都)

2014/06/21 (土) ~ 2014/07/03 (木)公演終了

満足度★★★

松岡さん、適任
当初観ない方向で、意思決定しかかっていたのですが、福井さんが降板され、戸井さんの役が昇格したので、行って来ました。

事件そのものも知らないし、映画も存在自体知らなかったので、実際の出来事だと聞かされても、どうしても、虚構の世界の出来事のように感じて観てしまいましたが、主人公の境遇に、共感する部分が多く、最後はもらい泣きしてしまいました。

何しろ、主役の松岡さんの、年齢が、設定通り、16歳~18歳に見えてしまうのが凄い!

今井さんが、刑事になり、戸井さんが、主人公の父親役になったために、新たに参加されることになった、治田さんの存在感が光りました。

刑事の手下の3人組は、楽しい雰囲気を作るのに、貢献していましたが、先日の「シスターズアクト」に比べると、トリオのインパクトはやや精彩に欠けたきらいを感じました。もう少し、オーバーアクションでも良かったかも。

人情味ある刑事役を今井さんが好演。人は好いのに、生活力のない父親役を戸井さんが丁寧に演じていらしたのにも、好感が持てる舞台でした。

個人的には、もう少し、耳に残るメロディの楽曲があれば、更に良かったのにと思いました。

ネタバレBOX

両親の離婚に、心を痛め、何とか自分が、仲裁に入って、もう一度、二人の親の気持ちを一つにしたいと、苦慮する子供目線の芝居って、かなりあって、、そういう作品は、昔から、心の琴線に触れやすく、ある意味苦手な場合もあるのですが、この作品は、あまり暗くならずに、フランク少年が、悠々自適に、詐欺を楽しんでいる様子を明るく描いている場面が多く、救われました。

松岡さんが、変幻自在なフランクを、楽しげに好演されて、歌唱も安定していたので、自然と、舞台に引き込まれてしまいました。

ステージセットが、ミュージカルというよりは、むしろコンサート的だったのも、エンタメ作品として成功していたように感じます。

トムハンクスとブラビの映画も、良さそうなので、いつか観てみたいと思います。
ミュージカル「オーシャンズ11」

ミュージカル「オーシャンズ11」

梅田芸術劇場

東急シアターオーブ(東京都)

2014/06/09 (月) ~ 2014/07/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

3回目、楽日マチネ
今日の観劇は、3回目でしたが、初回観た日から俄然進化した舞台に目を見張りました。

ぎこちなかった観月さんの所作も、自然になっていたし、日替わりアドリブもどんどん増え、キャストのチームワークの良さも、観る度、顕著になりました。

いつの間にか、コメディミュージカルの様相が濃くなりましたが、客席の空気も和み、舞台と観客が一体化した空気感が大変心地よいステージワークになっていた気がします。

山本耕史ファンとしては、彼の活躍場面が増えたのは、大変嬉しい限りでした。

叶うことなら、いつかまた再演してほしいなあ!

「新撰組」で、意気投合した香取さんと山本さんのコンビのミュージカルが、実現するなんて、夢だと思っていたので、これは本当に、個人的には、奇跡的なステージでした。

ネタバレBOX

先日も書きましたが、適材適所なキャスティングが絶妙の極みでした。

台詞もほとんどないような端役に至るまで、演出の心配りが行き届き、手作り感溢れる素敵なエンタメ作品であり、ミュージカルでした。

橋本さん扮する、、テリーのカジノ王にのし上がるまでの、経緯を歌うソロナンバーは、歌詞も、曲調も、かつて橋本さんが演じた「ミス・サイゴン」のエンジニアの歌を彷彿とさせ、「歌え、私のために」などの台詞には、「オペラ座の怪人」のパロディかと思わせるような箇所もあり、全体に遊び心満載の、心和む作品でした。

山本さんのお笑ネタのような偽医者から、一転、衣装をはぎ取って、カッコよい偽ガードマンに変身して歌うソロナンバーが素敵過ぎ!
先日の「トニー賞」を受賞した、一人何役も早替りのミュージカル、もしかしたら、山本さんなら演じられるかもと夢想してしまいました。

今日は、ラスト公演目前だったからか、日替わりアドリブで、坂元さんが、ラストシーンのネタバレをしてしまいましたが、それを知らない観客は、予言通りのストーリー展開に、大喜びして、ヤンヤの拍手喝さいをしていました。
これまでは知らなかった2階席で繰り広げられるアクロバティックなキャストの演技も堪能できて、1階と2階で、観劇できたことはラッキーでした。

舞台は、生ものだということを久々実感できて、演劇ファンとして、多くの喜びを頂けたことに、感謝します。
シスター・アクト~天使にラブソングを~

シスター・アクト~天使にラブソングを~

東宝

帝国劇場(東京都)

2014/06/01 (日) ~ 2014/07/08 (火)公演終了

満足度★★★★★

シスター陣が絶品、特に春風さん!!
昔映画で観て、大好きだったストーリー。

アラン・メンケンの音楽がとにかく楽しい!

修道院にデロリスが紛れ込むまでは、テンポがイマイチでしたが、鳳蘭さんの修道院長の登場からは、俄然舞台が弾み、楽しさ満載。

実際、修道院に見学に行ったりしただけのことはあり、シスター達の居住まいが、実にリアル。そのシスター達が、徐々に、デロリスに感化されて行く様子が、最高のステージングで、終始気持ちがワクワクしました。

森公美さんのデロリスは、歌は最高にパワフルでしたが、もう少し、動きが機敏だったら、更に良かったのに…。

汗かきエディを、実際汗かきで有名な石井さんが演じているのも、一興。

シスター達は、全員が演技賞もののご活躍ですが、相変わらず、芸達者な春風さんの名演ぶりには、一々感動しきりでした。

ケンタロウさん、藤岡さん、上口さんの、ギャングの子分3人組の愛嬌ある演技も愉快だし、浦嶋りんこさんと宮澤エマさんも、役にドンピシャのはまり役で、本当に、久々、気持ちの良い心底楽しめるミュージカルでした。

最後のシーンの修道院のステンドグラスの美しさに目を奪われました。

ネタバレBOX

本当に、春風さんのシスター振りは、動画永久保存したいくらい、愉快痛快演技で、目の保養になりました。

宮澤エマさんのメアリー・ロバートも、映画のイメージを壊さない可憐な雰囲気で、歌声も澄み渡って美しく、また若い素敵な女優さんを知って嬉しくなりました。(この時は、初見の女優さんだと思っていましたが、以前、小池徹平さんの初ミュージカルで、拝見していたんですね。あの時は、アル中の中年女性の役で、さすがに無理がありましたが、今回は、本当に素敵でした。宮澤喜一さんのお孫さんと知って、更にビックリしました)

山田和也さんには、コメディミュージカルでは右に出る演出家は誰もいないなあと思わせられました。ローマ法王を、オケピの指揮者の塩田さんに演じさせるところの遊び心とか、ニクイ!

「いつも、こういうクオリティのキャストで、ミュージカル観たいよね」と友人と、満足感いっぱいで、帰路につきました。
ミュージカル「オーシャンズ11」

ミュージカル「オーシャンズ11」

梅田芸術劇場

東急シアターオーブ(東京都)

2014/06/09 (月) ~ 2014/07/06 (日)公演終了

満足度★★★★

香取さんの生歌体験は、大収穫
思えば、一度もジャニーズファンになったためしのない私にとって、こんなに、至近距離で、あのスマップの香取さんの生歌を聴けるチャンスなんて滅多にないから、それだけで、何だか得した気分になってしまいました。

それぐらい、香取さんのソロナンバーがふんだんにあって、心底ビックリしました。

たぶん、映画を観た方には、消化不良の舞台なのかもしれないとは、思いますが、私は映画未見なので、想像以上に、楽しい舞台で、日頃の心労が癒される素敵な作品でした。

山本さん、霧矢さん、橋本さん、坂元さん、ラッキー池田さん、芋洗坂係長、斎藤さん…、それぞれ適材適所な役柄で、キャスティングに、センスある遊び心を感じました。

楽曲も、意外にも、なかなかな佳曲が多く、オリジナルミュージカルで、これだけの作品を創作できるスタッフの力量にも感じ入りました。

小池さんの演出は、やはりエンタメの演出家として手慣れた技で、それぞれの出自の違うキャストのファンサービスの見せ場も随所に用意して、これなら、誰のファンも、皆満足されるであろうと、改めて、小池さんのまとめる力に才気を感じ、敬服の至りでした。

ネタバレBOX

観月ありささんは、ドラマでは良くお見かけしますが、もしかしたら、これが初舞台でしょうか?

台詞は、完璧なのに、どうも、所作が、マリオネットのようで、この手慣れたキャスト陣の中にあっては、一人だけちょっとお気の毒な気さえしました。

橋本さんのべネディクトは、極悪非道な男という設定ですが、さとしファンの欲目も手伝ってか、どうしても、悪人には見えず、私がテスなら、やっぱりダニーより、テリーを選んじゃうかもなんて思いました。

「オペラ座の怪人」のカルロッタ的な役柄のダイアナ役はどなたかと思ったら、宝塚の霧矢大夢さんだったんですね。
彼女の掴みは凄い!また退団されてから、ファンになってしまった
元宝ジェンヌさんが一人増えました。

中国雑技団のイエン役の坂元さんは、元体操選手だそうだし、それぞれのキャストの持ち技を披露できるシーンが豊富で、ストーリー展開と別のところで、各人の本領発揮が楽しめる舞台構成が、洒落ていました。
山本さんの独特のダンスも、やっぱり好き!

知らない若い俳優さんは、ジャニーズのタレントさんが多いのかしら?わかりませんが、やはりそれぞれの役を爽やかに演じていらして、好感が持てる方ばかりでした。

欲を言えば、1幕ラストで、オーシャンズ11の面々が揃い踏みをするシーン、もう少し、高揚感を感じさせて頂けたら、最高だったのですが…。

開幕前に、ラスベガスシートのお客様達がステージ上で、コーチを受けていたので、後刻観客参加型になるのかなと想像したのですが、最後まで観客参加はなく、あれが、あのシート席の方への特典だったのかしら?ここは、一般観客には、何だか腑に落ちない演出に映りました。

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