KAEの観てきた!クチコミ一覧

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ちょぼくれ花咲男

ちょぼくれ花咲男

文月堂

座・高円寺1(東京都)

2015/06/10 (水) ~ 2015/06/14 (日)公演終了

満足度★★★

初演の方が濃密ながら、エンタメとしては進化
今回も、ご縁があって、ご招待で拝見させて頂きました。

初演より、登場人物も増え、熟練の役者さんも、加わったせいで、演劇としてのスケールは、大きくなり、キャストの質のばらつきもなくなって、エンタメとしての、舞台の見せ方は格段の進歩を遂げたとは思いますが、どうも、初演の濃密な人情劇のファンだった自分には、ストーリー構成的には、やや不満を感じる舞台でした。

登場人物それぞれの、抱える事情の、露呈シーンが、少なくなったせいで、観客が、それぞれの人物に感情移入する機会が薄れてしまった気がします。

ただ、あの扱いづらい高円寺の舞台機構をうまく使った、三谷さんの演出家としての才能には感心しました。役者さん達のパフォーマンスも楽しげで、大いに舞台鑑賞の喜びを感じさせて頂けました。

ネタバレBOX

花咲男の人情味が、初演の役者さんの方が、うまく体現されていた気がして、個人的には、初演の舞台の方が、人情劇としては成功していたように感じます。

ストーリー展開のスピード感が早まり、エンタメ作品としての楽しさは、加速したのですが、その分、各人の味付けが散漫になったように感じてしまい、その部分が、大変残念でした。

弟のために、西洋三味線を譲ってほしいと、花咲男が、馴染みの太夫に頼んで、二人がまだ退場しない内に、舞台上方で、弟が、その三味線を手にしているのは、あまりにも、舞台転換が早すぎたように、思いました。
戯作者銘々伝

戯作者銘々伝

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2015/05/24 (日) ~ 2015/06/14 (日)公演終了

満足度★★★

如何せん長過ぎる!
確かに、井上ひさし風味ながら、東色も出した、芝居の造りには、なかなか賛同できたのですが、何しろ、あまりにもエピソードがてんこ盛りで、気楽に観られる限度を超えていた気がします。

だいたい、私は一応国文科卒で、研究テーマが近世文学だったから、各戯作者の名前も、作品も、それなりに、理解できますが、こうした世界に暗い観客には、何が何やら、誰が誰やらの展開ではないかしらと憂いてしまいました。

そういう、前知識が必要な舞台作品は、よほど、構成を巧みにしないと、観客は眠くなってしまうばかりです。

人間ドラマとしては、二幕の方が面白かったので、1幕は、登場人物の紹介程度で、もう少し、サラッと流した方が楽しめたのかもしれません。

ただ、熟練のキャストの役者技は、充分楽しませて頂けて、大満足でした。

特に、新妻さんのハッチャけぶりには、同性ながら、魅せられっぱなしでした。本当に、拝見視る度、進化する、女優さんですね。

ネタバレBOX

並み居る熟練役者さんの中でも、一際光る、玉置さんの美声に度胆を抜かれました。

小劇場でも、何度か拝見していますが、今後は、大劇場でも、商業演劇でも、きっと引く手あまたになりそうですね。

それだけに、彼がメインになる2幕をもっと膨らませてほしかったような気もしています。
蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~

蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~

グループる・ばる

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2015/06/12 (金) ~ 2015/06/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

お見事な構成に唸る
大好きなる・ぱるが、才ある劇作家である長田さんの書く芝居を上演するということで、かなり期待して、劇場に向かいました。

ただ、恥ずかしながら、茨木のりこさんの詩に全く不案内でしたので、人間関係や、背景を理解できるかしらとやや不安でもあったのですが、それは全くの杞憂でした。

茨木のりこさんの経歴を全く知らない私でも、実にわかりやすい構成で、それでいながら、芝居の進行に従い、観客を、知らず知らずに、茨木のりこファンにしてしまう、長田脚本の手腕に、感服しました。

キャストも、皆さん、熟練の手業師ばかりで、久しぶりに、じっくりと、舞台を堪能させて頂けた気がしています。

ネタバレBOX

茨木さんの業績や作品を全く知らない人間にも、わかりやすいエピソードを散りばめて、芝居を通して、人間として、女性として、詩人としての茨木さんを、舞台上に再現する技術が、素晴らしく巧みだったと思いました。

茨木さん一人の人生を追うのではなく、輪廻転生で、何度も生まれ変わっている幽霊の、紀子(きいちゃん)と、典子(てんこ)を、成仏の水先案内人として登場させることで、より、茨木のり子という人間の、描写を鮮明にしています。

3人ののり子をる・ぱるの3女優が演じ分け、主人公の、女としての恋情、人間としての不条理と闘う姿勢、詩人としてのプライドなどの、細やかなエピソードを積み上げて、最後は、「気がかり」とあだ名されていたノリコが、無事成仏できるらしき、エンディングの見事さは、最近の芝居の中で、群を抜いた、素敵な幕引きでした。

何役も演じ分けた小林隆さんが、最後は、庭のミカンの木の精として、登場し、「気がかり」だったノリコも、「木がかり」に変身したのかもしれません。

るぱるのお三人はもちろんのこと、小林さんや木野花さんなどの、共演者の好演も手伝い、観劇中、ずっと、心がほのぼのとさせられ、終わっても、しばらく席を立ちたくない余韻が残りました。

照明の光の優しさも、終始、胸に残りました。
ミュージカル『レ・ミゼラブル』

ミュージカル『レ・ミゼラブル』

東宝

帝国劇場(東京都)

2015/04/13 (月) ~ 2015/06/01 (月)公演終了

満足度★★★★

新演出版初見
念願の海宝マリウスに会いたくて、新演出になってからの初観劇でした。

噂には聞いていましたが、これほどに変化しているとは、驚きでした。

何より、セットのリアル感に度胆を抜かれました。

まるで、ディズニーランドの、アトラクションセットのよう。

スタッフ技術も、並大抵ではなく、生の演劇だと忘れるぐらい、映画のような、リアルなシーンが続きました。

でも、これまででも、複雑な人間関係や歴史的背景が、スピーディに語られて、わかりにくかったのが、更に加速してストーリーが展開するので、初見の観客には、理解が難しいのではと感じました。

また、セットが、リアルになった分、奥行きがある舞台構造になって、席によっては、死角が発生しそうに思いました。
舞台も、常に暗いので、後ろの席だと、キャストを認識し辛そうにも、思います。
 
一番残念なのは、アンサンブルの方達の為所が極端に少なくなってしまった点。他のミュージカル作品と違って、「レミゼラブル」だけは、アンサンブルにも、各人の名前があって、役の人生を体現できるシーンが、随所にあったのに…。

でも、とにかく、この作品の持てる力には、やはり圧倒されます。
海宝マリウス、上山アンジョルラス、知念ファンテーヌ、笹本エポニーヌ、皆さん、溌剌と演じていらして、素敵でした。

ネタバレBOX

以前の演出だと、セットが、抽象的だったので、人物の居場所がどんな風なのか、当時のフランスに詳しくない自分には、想像すらできない世界が繰り広げられていて、実は、映画で初めて、バリケードはあんな風だったのだと理解できました。

今回の演出では、セットもリアルで、位置関係や、人物の導線が、大変理解しやすくなりました。

両側に店や建物が並ぶ、道の中央に、バリケードが築かれた様子もよくわかるし、工場や、バルジャンの住む家の造りも、見ての通りで、当時の様子が忠実に再現されている場面は、まるで、映画そのものの臨場感でした。
でも、そのリアルさが、逆に、人物の感情をつまびらかにしないきらいもあり、観客は、テンポアップした時系列のストーリー展開に付いて行くのがやっとで、感情移入まではできない気もしました。

だから、前のように、それぞれの人物の心の中に分け入って、気持ちを揺すぶられるまでの、感動は感じにくいのではと思います。

私は、昔の舞台を、脳内に呼び戻し、描かれない世界を穴埋めして観られましたが、高校生の団体客には、どうも、理解不能だったような印象がありました。ヤンさんの、囚人時代のバルジャンと、工場長になってからの風貌があまりに違うので、きっと、何のことやらだったようです。
嵐が丘

嵐が丘

松竹

日生劇場(東京都)

2015/05/06 (水) ~ 2015/05/26 (火)公演終了

満足度★★★

スピンオフ作品の態
「嵐が丘」は、私の少女時代の恋愛バイブルでした。

こんな壮絶な、恋愛に心底憧れていたもので、大学生になるまで、恋人はできず仕舞い。

だから、このキャスティングが発表された時、小躍りして、観劇日を楽しみにしていました。

でも、拝見したところ、この「嵐が丘」の世界は、私の中に構築されていた激しい恋愛事情は、軽くあしらわれ、むしろ、キャサリンとヒースクリフに翻弄される、周囲の哀れな人間達に主軸を置いた、スピンオフ作品のような雰囲気でした。

演劇手法としては、面白いし、各人の後半の長台詞の競演は、演劇としての醍醐味に満ちていましたが、「嵐が丘」ファンとしては、やや不満の多い劇後感だったかもしれません。

戸田恵子さんの好演が、舞台の出来映えにずいぶん貢献したように思います。

それにしても、いつも、さすがの演技のソニンさん、初舞台から、常に、輝いて舞台に立てる堀北真希さんの、映像畑の女優さんとは思えない、持って生まれた鬼才振りには、感嘆のため息が出てしまいました。

昔、劇団四季が、世界名作全集舞台化的な上演を頻発していた時期がありましたが、堀北さん主演で、また他の名作舞台も、是非拝見したいなと、期待に胸が膨らみました。

ネタバレBOX

たぶん、原作を知らない人には、この作品の主役が、キャサリンとヒースクリフとは受け取れないのではと思うほど、二人の存在感が希薄でした。

原作では、この二人の、言葉では説明できないような、激しい愛憎の顛末が、丁寧に描かれているので、二人の心の深淵を追体験できるのですが、G2さん演出脚本の本舞台は、二人の人生の顛末を、家政婦のネリーが、語る形を取るため、劇中で繰り広げられるストーリーは、常に、ネリーの回想劇の形で進行します。そして、更に、その中で、また別の登場人物達の心の吐露を、ネリーが聞き語りをする、二重構造、三重構造になっています。

たぶん、そのせいで、主役である筈の二人の心の対峙場面が、極端に少なくて、観客には、二人の心の変遷や、複雑な愛憎心理を理解させにくくしたのではと感じました。

むしろ、二人の娘と息子が、後年、心を通わせ、やがて結婚する件の、若い二人の心情変化の方が丁寧に描かれていた印象が残りました。

キャサリンとヒースクリフの、幼少時代の演技を、遠見で、子役が演じ、舞台前方で、堀北さんと山本さんが演じるという手法は、演劇としての斬新な演出として、成功していたと思います。

もう少し、ブラッシュアップしたら、奥が深いものになるような気がしました。
七人のふたり

七人のふたり

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2015/05/22 (金) ~ 2015/06/02 (火)公演終了

満足度★★★

何か淡白なクロムで、二味足りない感
折しも、ドローン少年が巷を賑わせている最中で、テーマとしては、時機を得ていたのですが、どうも、いつものような、心を鷲掴みにされるような、緊迫感は希薄な舞台でした。

いつもの疾走感もなくて、クロム独自の身体能力駆使した、あの癖になるような、ダンスの醍醐味も感じられず、何となく、限定何食の、そのお店の売り物メニューを食べそびれたような、消化不良な後味を感じてしまいました。

クロムの公演になくてはならない、役者さん達の不在が影響したのかもしれません。

もっと、毒気と、疾走感で、走り抜けるクロムが好きです。

ネタバレBOX

ストーリー展開でも、キャスト陣の顔ぶれでも、全てに、何か隠し味が不足し過ぎな印象が否めませんでした。

小林タクシーさんの則平のお面は、オウムの選挙を思い出しました。

いろいろなところに、現代社会の、不条理や闇を、隠し玉にして、独自の手法で、面白おかしく見せながら、観客の深層心理に、ドッキリを突き付ける、クロムならではの、エンタメ舞台を期待していたので、今回は、ややはぐらかさせた印象でした。

次回、もっと強力な布陣のクロムの舞台を期待しています。
聖地 X

聖地 X

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2015/05/10 (日) ~ 2015/05/31 (日)公演終了

満足度★★★

熱量が緩和した印象
事前情報をチェックしていなかったので、すっかり新作を観るつもりで、劇場に入りました。

しばらくして、あーこれは、「プランクトンの踊場」なんだと気づきました。

個人的には、ずっと初演舞台の方が好みです。

笑いは増えたけれど、役者さんの演技も、そつがなくなったけれど、何だか、イキウメが普通の劇団になってしまった印象。

伊勢さん演じる要と、浜田さん演じる滋に、以前の熱量が感じられないのがやや残念でした。

一方、森下さんの島には、役としての存在感が増しました。

演出や装置の工夫も、初演の舞台の方が、無機質感があり、この作品の世界観にはマッチしていたと思います。

ネタバレBOX

会社人間の滋と、妻との思い出だけしか記憶にない、第二の滋。

以前の舞台のセットは、簡易的で、スチールの壁か何かをスライドさせるだけで、居場所の具現化を成功させていましたが、今回の舞台では、結構リアルな小道具や家具を使用していて、二人の滋の居場所を、はっきりと分別させていました。

そのため、前川さんが創造した、SFのような世界観が希薄になった印象を受けました。

輝夫が常に通販で購入しているamazonの箱を裏返すと、野菜の段ボールになっているという、喜劇なら絶好の奇抜なアイデアも、この摩訶不思議な世界観の構築には、そぐわない印象でした。

ドッベルゲンガー現象の解決策として、故意に出現させた、第三の滋の処分を巡って、要と輝夫の兄妹が、対峙する場面、妻との再生に意欲を示す第二の滋の必死さの体現など、初演の舞台の方が、役者さんの役の心情を吐露する台詞に熱量があって、心を鷲掴みされた記憶があるので、今回の舞台の、全体的な「そつのなさ」が、イキウメファンの私にとっては、何だか薄味めいて感じられ、やや残念な食感でした。

第三の滋出現からの、浜田さんの早替りは、歌舞伎役者も顔負けの早業で、感心したのですが、どこまでも、不可思議な空気を醸し出すイキウメであってほしいと思うファン心理からすれば、ちょっと不安を感じる観劇体験となりました。
『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』

『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』

ロズギル上演委員会

OFF OFFシアター(東京都)

2015/05/04 (月) ~ 2015/05/31 (日)公演終了

満足度★★★★

変則二人芝居の成功作
観たい観たいと思いながら、これまで、ご縁がなかった「ロズギル」。なので、はなから二人芝居用の脚本かと思いましたが、違ったんですね。

いやあ、とても、気の利いた趣向で、見せ方として、とても斬新で、面白かった!というのが、第一印象でした。

でも、帰りの電車の中で、自衛隊員は、ロズギルと同じ運命を辿るのでは?と無性に不安を掻き立てられ、内容はかなり深い芝居なのではないかと、思い直した、昨日の夕刻でした。

ネタバレBOX

何しろ、お二人の芝居の熱量に圧倒されます。

演じることが大好きなお二人が、企画して、上演に漕ぎつけるまでの、熱量が、全て、舞台上に放出されているような、熱いのに、清涼感を感じるステージでした。

「ハムレット」の登場人物として、どっちがどっちか、出自も、不明な存在感の薄い二人を主役に据えたストーリー展開だけれど、この作品の中においてさえ、結局は脇役でしかない二人の儚い運命が、静かに悲劇性を物語ります。

ハムレットや、他の登場人物は、映像で、お二人が、あれこれ演じ、そのスクリーン内の人物と、生身のお二人が絡むという演劇スタイルが、趣向が効いて、斬新かつ愉快でした。

本当は、2時間半以上の大作だそうですが、この日の上演時間は、たった1時間半。それでも、中身はしっかりと詰まった充実感あるストーリー展開で、感心しました。

役者役の人形を操作した、黒子の、文学座の演出助手さんの、動きも、お二人の芝居を妨げない素晴らしさで、目を見張りました。

できれば、熟成された頃にもう一度拝見したくなる舞台でした。
ART

ART

松竹

サンシャイン劇場(東京都)

2015/04/28 (火) ~ 2015/05/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

更に熟練の初演トリオに敬服
16年前の初演ステージには狂喜乱舞して、通い詰めました。

何度観ても、こんなに、良くできた芝居にはなかなかお目にかかれないと、いつも感激しています。

ただ、少し、心配もありました。

平田イワンのあの名調子は、健在だろうかと…。

ほとんどの場合、初演より優る再演舞台にはあまり遭遇できないので、期待外れになったらどうしようかと…。

全ては、杞憂でした。

演劇を愛する全ての方に、是非観て頂きたい舞台です。

人間関係の全ての機微が絶妙に描かれた作品を、3人の熟練役者が、軽妙洒脱に演じていて、これほど、珠玉の人間コメディドラマは、他にないのではと思う程です。

この日、会場で配布されたチラシで、平田さんと風間さんが、あの「熱海殺人事件」にご出演の情報をゲットして、これで、まだしばらくは、この世に未練と希望を持って、生き延びられそうな喜びを頂きました。

これだから、演劇熱は、冷めないのです。

真のアーチスト達に、感謝の念でいっぱいです。

ネタバレBOX

友人と言える存在を有する全ての人間に、必見の舞台だと思います。

ヤスミナ・レザの、人間洞察力と、それを表現する作家力には、ひたすら瞠目するばかりです。

二人に少し上から目線で、からかわれながらも、丁寧に友人関係を構築しているイワンが、実は、一番、人間力に秀でているのではと、観る度に、感じます。

他のキャストで再演された舞台も観ましたが、やはり、この3人でなければ、この作品の醍醐味は味わえないと強く再認識しました。

平田さんの、家族関係の愚痴ばなしの長台詞は、16年経っても、更に磨きが掛かり、お見事でした。これぞ、至芸!
もちろん、今回も、自然に会場は、拍手の嵐でした。これを体感するだけでも、チケット代の元は取れた気分になること受け合います。
ミュージカル『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』

ミュージカル『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』

キューブ

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2015/04/26 (日) ~ 2015/05/10 (日)公演終了

満足度★★★

楽日の力の結晶に感動
初日翌日に観劇した時はどうなることかと感じた公演内容でしたが、スタッフとキャストのアイデアと努力で、かなり、楽しめるステージへとバージョンアップしていました。

小道具やアドリブに工夫を凝らし、客席を和やかな空気にしたのは、偏に、少しでも、この演目を観客に満足できるレベルにしようとする、真のエンタメ精神に満ち溢れた関係者の努力の賜物だと思いました。

別所さんの伸びやかな歌いっぷりに、また彼の演じるバルジャンが観たいななどと、芝居を離れた邪念も生まれてしまいました。

これだけのキャストが揃っているのに、演者としての持ち前の力を思う存分発揮できないような作品形態だったのは、とても残念でなりませんが、こうして、観客の視点に立って、作品に真摯に取り組むこのカンパニーの結束力には、大きな感動を頂きました。

もし、シリーズ3があるのなら、今度は、制作側にも、初心に立ち返って、芝居の本質として、もっと深みのあるミュージカル作品を制作して頂きたいと、切に思います。

ネタバレBOX

切り裂きジャックの犯罪手口や、推理の顛末を、全て歌詞に乗せて、語らせる手法には、どうしても納得が行きませんでした。

どんなにネガティブな内容のミュージカルであったとしても、楽曲に魅力がなく、台詞で語るべきストーリーを何でも歌詞にしてしまう安易な姿勢には疑問が残ります。

とにかくこの作品、出演者が大変そうでした。

もっと、人間を深く描いた、楽曲にも魅力のある作品で、このキャスト陣の熱演を拝見したかったと思います。
ミュージカル『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』

ミュージカル『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』

キューブ

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2015/04/26 (日) ~ 2015/05/10 (日)公演終了

満足度★★

かなり期待外れで、残念
前回の「アンダーソン家の秘密」が、浦井さんの好演もあり、素晴らしい舞台だったので、かなり期待して観に行ったのですが、今回の作品は、キャストは皆さん大熱演なのに、肝心の作品自体が、大変お粗末な作りで、楽曲、脚本構成、演出全てが、とても雑な仕上がりだという印象を受けました。

何といっても、ミュージカルなら、楽曲の良さが、舞台の良しあしを左右すると思うのに、どの曲も、耳に残るメロディラインではないし、ただ悍ましい歌詞が羅列されるだけの曲は、耳障りでさえありました。

前回作品のような、深い人間描写もなく、ただ、ストーリーだけを、都合よく繋げた感が否めませんでした。

でも、橋本さんと、別所さんの、お二人の存在感ある長身俳優さんの夢の共演は、見た目にも、観客心にも、嬉しい舞台作品ではありました。
たぶん、これまでは、同じ役での舞台出演ばかりで、同時に舞台で共演されるのは、初めてではないかなと思うのですが、またこのお二人の共演作を観たいと思いました。

エドガー役の小西さんの初日でした。今度は、良知さんの方を拝見する予定です。

ネタバレBOX

とにかく、楽曲がまるで美しくありません。

同じような単調なメロディラインで、長台詞が、そこに歌詞として盛り込まれているだけで、役者さんがとても歌い辛そうだし、観客も、歌われている歌詞をきちんと理解できない部分が大半でした。

1幕のストーリー運びが、特に、乱雑で、観ている側の私には、何の興味も高揚感もないまま、幕間になりました。

2幕は、謎解きになるので、少しは、舞台が弾む瞬間もありましたが、もう少し、脚本構成を整理して、人間を深く描写する物語にしない限り、観客の心は、置き去られると思いました。

何しろ、これでは、シャーロック・ホームズが、ひたすら馬鹿げた人物にしか見えず、せっかくの橋本さんの熱演が空振りして、お気の毒でさえありました。
正しい教室

正しい教室

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2015/04/02 (木) ~ 2015/04/19 (日)公演終了

満足度★★★

完璧に近い構成が逆に欠点かも
蓬莱さんの作品だから、ある程度のクオリティは期待していました。

だけど、気分が良くなる芝居でもないだろうとも、想像していました。

案の定、想像通りの作品でした。

セットも、登場人物の設定も、キャスト選びも、構成も、全てにおいて、ほとんど申し分がありません。

でも、どこかで、作者の頭脳作戦が見え隠れして、意外性がないし、あくまでも、これは芝居だという、俯瞰での観客体験しかできなくて、その点が不満でもありました。

たくさんの舞台を経験された井上さんの演技が、素晴らしく、ストレートプレイの役者としても、存在感を発揮されていて、初舞台から拝見している身としては、嬉しい思いがありました。

近藤さんも、今や押しも押されもせぬ舞台俳優さんになられて、これも「柔道一直線」から知っているフアンとして、嬉しい観劇となりました。

前田亜季さんも、いつもながら、素敵な女優さんでした。

ネタバレBOX

私も、未だに、毎年、小学校のクラス会があるので、小6の恋愛を引き摺る登場人物の心には、共感する部分が多々ありました。

ただ、いつも思うのですが、蓬莱さんの作品作りには、どこか、頭で考え過ぎな部分を感じてしまいます。

登場人物の造形に、どうも、生身の人間の血や肉を感じられないのです。

構成が巧みなだけに、その点がいつも惜しいなと感じています。
十二夜

十二夜

東宝

日生劇場(東京都)

2015/03/08 (日) ~ 2015/03/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

ちょっとビターな味わいの十二夜
ケアードさんの演出だから、きっと今までの「十二夜」とは趣が違うだろうと予想はしていましたが、まさかここまでとは!

この作品、あれこれ、今まで観ているし、高校時代、自分で脚色、演出した作品でもあるので、台詞の暗誦も、未だに可能な程の記憶もあるので、同じ台詞と物語展開でありながら、ここまで、異質な作品に変容できるケアードさんの才に、改めて敬意を表したい思いがします。

成河さん演じる、道化が主役のような芝居でもありました。もう、10年来のファンですが、彼が、こんなに、聴く者の心を捉える歌唱力を有していることを初めて知りました。
マライアの西牟田さんの素晴らしさも、言わずもがな。

最後のシーンが、成河さんの歌唱で、より色濃く、いつまでも印象に残りました。

東京は、千秋楽になりましたが、これから、公演が行われる地域の方には、是非是非ご覧頂きたい舞台です。

ウ゛ァイオラとセバスチャンの双子の兄妹を、演じる音月さんも、とてもキュートで、素敵でした。元宝ジェンヌにありがちな、あくの強い演技をしないので、大変好感が持てました。

ネタバレBOX

とにかく、皆さん、芸達者な方ばかりだし、安心して、舞台を楽しむことができました。

石川禅さんが、サー・アンドルーを演じたことで、この役に深みが出ました。アントーニオの馬木也さんには、悲壮感があり、ラストの憂愁を帯びた立ち姿に、涙さえ誘われるほどでした。

成河さんは、終始、舞台を活気づかせ、彼の一挙手一投足、歌唱の深みに、目も耳も虜に成りっ放しのステージでした。

普通なら、生き別れの兄妹が再会を果たし、カップルがWで誕生し、めでたしめでたしで、結婚式で終わるハッピーエンドが、一般的だと思うのですが、これは、皆に嘲笑のおもちゃにされた、哀れなマルウ゛ォーリオのうめきを筆頭に、カップルになれなかった、独り身の面々だけが、舞台に取り残されて終わります。

マルウ゛ォーリオは、自分に策略を嵌めた人々に、恨みを募らせ、それが憎しみの火種として、今後、どこかで、仕返しに発展しそうな佇まいで、舞台後方に去って行きます。
勘違いをしてはしゃいでいた橋本さんの演技がとても愉快だっただけに、この後姿が、切なく胸に迫ります。

普通なら、喜劇として、演じられることの多いこの作品を、たぶんケアードさんは、主役の陰で泣かされる側の登場人物に、視点を置いて、演出されたのだろうと思います。

恨みの連鎖の連続である、人間社会の愚かさを、皮肉っているかのようなラストシーンでした。
成河さんの哀調を帯びた歌声が、未だに、耳に残ります。
鑪―たたら (残席僅か)

鑪―たたら (残席僅か)

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2015/03/20 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

相性抜群、心に沁みる芝居に感謝
大好きな大好きな脚本家が、信頼する劇団の芝居を書きおろし、しかも、好きな役者さんが勢ぞろい。演出も、新進気鋭の才能ある方。

ずっと、拝見できる日を楽しみにしていました。

期待通り、早船作品は、今回も、裏切らない佳作。しかも、青年座の熟練役者さん揃い踏みで、笑って泣いて、演劇ファンでいることの喜びをたくさん頂きました。

生まれた時から、演劇世界の家庭で育ったので、あまりファン心理を表に出すことはなく、シャイに過ごして来ましたが、この日ばかりは、思わず、早船さんに、お声を掛けてしまいました。

本当に、長きに亘る演劇ファンとして、早船さんが、演劇に携わって下さったことには、感謝の気持ちで、いっぱいになりました。

また、早船さんと、青年座のタッグに期待したいと、心から思います。

ネタバレBOX

このところ、家族の思いのすれ違いに殊更、敏感なので、開幕すぐから、心が揺さぶられる瞬間が幾度もありました。

山路さんの青年座舞台も久々でしたし、演技派の石母田さんの、ニ役の演じ分けには、心から、賞賛の拍手を送りたい、素晴らしい演技でした。

お二人を始め、山本さん、麻生さん、横堀さん、山崎さん、高橋さん、全員の役者さんが、各々の役に命を吹き込み、舞台上で、生き生きと、存在してくださっていることに、どれほど、演劇ファンとして、喜びを感じたかわかりません。

そして、早船さんという、稀有な才能ある方が、芝居作りを誠実に続けて下さっていることに、ひたすら感謝したい気持ちになりました。

嫌なことだらけの世の中ですが、こうして、熱を持って、舞台を作って下さる、本物の演劇人がいる限り、私は、希望を捨てずに、生きて行けると思いました。

須藤さんの演出も、とてもお茶目で、大好きです。

漠然とした感想になってしまいましたが、それぞれの美点を挙げたら、切りがないので、こういう抽象的な表現になってしまうことをお許し下さい。

とにかく、全ての演劇を愛する方に、ご覧頂きたい秀作でした。
クリエ・ミュージカル・コレクション 2

クリエ・ミュージカル・コレクション 2

東宝

シアタークリエ(東京都)

2015/02/20 (金) ~ 2015/03/11 (水)公演終了

満足度★★★

高揚感を感じられないのが残念
初回の公演は、チケットが取れず、今回初クリエミュージカルコレクションでした。

楽しみにしていたのですが、楽曲が、クリエ公演作品中心で、東宝やホリプロ公演の楽曲に限られていたせいで、何となくマイナーな選曲に思えました。

たくさん歌って下さるのは嬉しいのですが、出演者同士のトークがないのは、やや淋しく感じました。

せっかくのコンサートなのだから、もう少し、和気藹々ムードが演出されていたらと高望みしました。

ネタバレBOX

最初に、大塚ちひろさんが、ご自身の思い出の楽曲についてコメントされたので、てっきり、歌い出しは、ちひろさんかと思いきや、彼女はあくまでもその日のMC担当だったらしく、説明のあった歌を実際歌うのは、ずいぶん後になってからで、この点、演出にやや疑問を感じました。

MCは、公演ごとに、日替わりなのだとしたら、常に、その人が語った曲の解説と、歌唱は切り離されてしまって、観客としては、肩透かしを食らった気分になりそうです。

タイトルからして、クリエのミュージカル楽曲が中心だろうとは思いましたが、もう少し、コンサートを魅惑的にするアイデアがあればと思いました。

有名な楽曲があまり歌われないので、コアなミュージカルファンでないと、やや満足できないかもしれないなと感じました。

中川さんの「モーツアルト!」の楽曲聴けたのは、嬉しく思いました。
今さん、田代さん、吉野さん、中川さんの4人が、「モンテクリスト伯」の主人公を策略に嵌める時の楽曲を歌ったのが、一番見応え、聴き応えがあった気がします。

山口さんが、とても若返られていて、何度も、吉野さんと観間違えてしまいました。(笑い)
父との旅

父との旅

劇団銅鑼

俳優座劇場(東京都)

2015/03/18 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了

満足度★★★★

清々しいラストに好感
青木豪脚本のファンであることと、息子の友人が出演しているという二つの理由で、初銅鑼でした。

青年座の演出家ということで、舞台装置が、青年座風で、始まる前から、結構安心して観劇できる予感がしました。

青木さんは、いつも思うのですが、本当に群像劇がお上手!

脇役に至るまで、必ず登場人物全員に命を吹き込む脚本で、嬉しくなります。

初見の劇団でしたが、役者さんの演技に、変な癖もなく、皆さん芸達者で、終始、身を委ねて観劇できて、幸せでした。

特別の事件が起こるわけでもない、ある家族の日常の一コマの、丁寧な描写が、大変心地よい舞台でした。

ネタバレBOX

ベテランの役者さんと、若手の役者さんに、それ程、力量の差がなくて、ストーリー世界に、自然に溶け込めました。

脚本にも、演技にも、痣とさがないのが、何より嬉しく思えました。

ステージ2の癌になって、これから治療をするらしい父親が、もしもの時のために、相続問題について話し合いたいと、家族を、昔馴染みの旅館に呼び出しての、家族旅行での、一日を切り取ったストーリー。
それほどの、事件が起こるわけでもないのに、飽きずに観られるのは、各人の台詞にリアリティがあるからに、他ならず、それは、青木さんの脚本と、役者さんの演技と、奇をてらわない演出の力の成せる業だと思いました。

銅鑼の舞台、また是非拝見したく思います。
ミュージカル『タイタニック』

ミュージカル『タイタニック』

梅田芸術劇場

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2015/03/14 (土) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

濃密な人間劇へと昇華していた
何年か前に、初演版も観ていますが、その時の公演内容とは、似て非なる作品になっていました。

初演版は、ワサワサと気忙しく、人間描写も、底が浅い感じを受けたのですが、今作品は、全体的に、落ち着いて、それぞれの登場人物の精神描写も、機目細やかでした。

戸井さんが、思いの外、ご活躍で、個人的に、大変嬉しく拝見しました。

韓国のセオール号の事件や、先日発見された武蔵の船体など、船への想いが、現実的な昨今の事情もあり、卑近な出来事として、胸に迫るものがありました。

拝見したのが、初日なので、できれば、もう一度、舞台が熟成した頃に、再度観劇したい気もします。

ネタバレBOX

以前の騒々しさとは対極の、とてもシックで、落ち着いた舞台進行でした。

衣装も、上品だし、全てにおいてセンスアップした印象を受けました。

若手のキャスト陣も、皆さん、実力派揃いで、それぞれの歌唱表現に、力がありました。

ただ、やや残念なのは、肝心の主役の加藤さんが、一番、影薄く感じた点。初日で、緊張されていたのもあったのでしょうか?もう少し、舞台上で、存在感を示し、役として、存在して頂けるようになるといいなあと思いました。

綜馬さんが、ひたすら、憎たらしくて、「相棒」のご出演の時と言い、この方、悪役や、憎まれ役も、相当イケるなあと感心しました。
セオール号の船長とダブって見えました。

この演出で、松岡さんと宝田さんで拝見したかった気もします。
六本木歌舞伎『地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)』

六本木歌舞伎『地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)』

松竹

EX THEATER ROPPONGI(東京都)

2015/02/03 (火) ~ 2015/02/18 (水)公演終了

満足度★★

かなり期待外れ
以前、歌舞伎ファンには至って評判悪かったクドカン歌舞伎も、私はとても気に入っていたので、今回も楽しみにしていたのですが、かなり拍子抜けの作品でした。

内容は、俳優祭でやるお遊びパロディ芝居の域を出ないし、劇場の音響は悪いし、獅童さんの台詞は、はっきり聞こえても、肝心の海老蔵さんの台詞は不明瞭。お二人より、むしろ、加藤清史郎君の活躍が目立ち、加藤清史郎オンステージにお二人の歌舞伎役者が華を添えた感のある舞台になっていました。

亡き勘三郎さんのアイデアを取り入れたストーリーのようでしたが、何だか、後半尻つぼみだし、あくまでも、余興の域を出ない演目だったように感じます。

とは、言え、相変わらず、クドカンさんの歌詞は愉快。囃子方の下座音楽の歌詞は、「あまちゃん」の挿入歌や、「ごめんね、青春」の校歌に引けを取らない、面白さでした。

ネタバレBOX

狂言回しの清史郎君が、八面六臂の大活躍で、彼が出演することを知らずに観劇した私は、終演まで、彼は、海老蔵さんの部屋子の、鯛蔵君だと信じ込んでいました。(笑い)

この芝居の企画が持ち上がった、演舞場の楽屋という設定の、前段階のシーンが無駄に長く、2幕後半で、団九郎が団十一郎に進化して、駄足米太夫退治に乗り出す佳境になった頃には、ウトウトしてしまいました。

「スターウオーズ」のパロディのような内容でしたが、最後は、駄足米太夫を退治するわけでもなく、ただ、地球を強力で投げ飛ばすだけなので、歌舞伎ファンの観客は、一様に、訝しく感じていたようでした。
歌舞伎の場合は、大詰めは、やはり、白黒はっきりつけて、悪人は、成敗される方が、客席は納得するように思います。

まあ、一応愉快で、楽しく観劇しましたが、あの内容には見合わない料金設定だとは思うので、総合的には、かなり、期待外れの出来映えでしょうか。
少なくても、クドカン色が感じられず、残念でした。
ミュージカル『メンフィス』

ミュージカル『メンフィス』

ホリプロ

赤坂ACTシアター(東京都)

2015/01/30 (金) ~ 2015/02/10 (火)公演終了

満足度★★★★

歌の力が圧倒するステージ
以前、トニー賞の授賞式のパフォーマンスで、この作品を目にした時から、観たいと思っていたので、念願叶ってラッキーでした。

しかも、30年来、ファンでいる、山本耕史さんの主演舞台で、やっと彼に見合う実力の相手役を得てのミュージカルですから、観る前から、大満足のステージでした。

圧倒的な歌唱力のキャストが集結して、音楽の力を、感じる作品でした。

血なまぐさい、紛争や、人種差別や、宗教戦争の絶えない世の中ですが、こうして、音楽や芸術や文化の面で、少しでも、世界中の人々が、心を通わせることができたらと、痛切に感じてしまいました。

ネタバレBOX

一幕最後のJAY‘EDさんの熱唱が胸に沁みました。

黒人シンガーと、白人DJの、差別の激しいメンフィスでの恋愛事情の描き方は、やや通り一遍な気もしましたが、各人の圧倒的な歌唱力が光り、音楽のステージとして、クオリティの高い作品に仕上がっていました。

根岸さんの、母親の移り行く気持ちの体現と、ソロナンバーの迫力に、感銘を受けました。

ジェロさん、健闘されていましたが、もう少し、複雑な兄の心情表現と、台詞の喋り方を工夫して頂けたらと思います。

ラジオ局の掃除係の吉原さんも、いい味を出されていて、愉快でした。

濱田さんのフェリシアは、何もかも最高でした。

是非、また再演をして頂けたらと、切望します。
蛍の頃

蛍の頃

ペテカン

あうるすぽっと(東京都)

2015/02/06 (金) ~ 2015/02/11 (水)公演終了

満足度★★★

今年初芝居でした
生まれてこの方、1か月、芝居を一度も観ないことはなかったのですが、何故か今年は、2月になるまで、劇場に行っていませんでした。

だからか、ずっと、体調が悪かったのですが、久しぶりの、私の特効薬の効き目があって、観劇後の足取りが軽くなりました。

ぺテカンのお芝居はいつも安定していて、観ていて、心地よい思いになります。

今回の作品も、愛情に溢れた素敵な舞台でした。

ただ、少し、残念なのは、現在の絹子と、若かりし絹子が、あまりにも、容姿や体型がかけ離れていたこと。
元々は、他の劇団への書下ろし作品とのことで、無理からぬという気もしますが、お二人が、あまりにも似ていないせいで、どうしても、これは芝居なんだという感覚が抜けず、今一つ、劇世界にのめり込めないところがありました。

客演の宮原さん、いつ拝見しても、とても小劇場の俳優さんとは思えないイケメンぶりに、ビックリさせられます。

ネガティブステッカーが、たった2枚で、2000円以上もして高すぎると一瞬思いましたが、おまけが、ある公演のDVDだったからなんですね。「そうか、あれがあるから大人の事情でね」とすぐに納得しましたが、でも事情を知らない人は、単にステッカーにあの金額は出しません。せっかくの苦肉の策でしたが、たぶん売れ残ったのではと、ちょっとお気の毒に思ったりもしました。

ネタバレBOX

やはり、会場が、ぺテカンの芝居には馴染まない印象は否めませんでした。

会場に入った途端、私が人生で最初に好きになった流行歌「おーい、中村君」が流れていて、嬉しかったのですが…。

戦後、間もなくの、宮崎延岡の実在のキャバレーが舞台。本田さんのお父上とお祖母様が、モデルだそうで、チラシには、そのお祖母様がママをしていたキャバレーの集合写真が写っていました。芝居を観た後、その写真を見たら、泣けて来ました。女給さん達と、本田さんのお祖父様、お祖母様、そして少年時代の本田さんのお父様が、和やかな表情で写っています。経営者も、従業員も一体となって、素敵な職場としてのキャバレーの実態がそこにありました。
そのキャバレーシスターの温かさが、伝わる、素敵な舞台でした。

父役の俳優さんに、もう少し、人間の機微を表出できるだけの表現力があれば、尚素敵だったのにと思います。

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