KAEの観てきた!クチコミ一覧

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プランクトンの踊り場

プランクトンの踊り場

イキウメ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/05/08 (土) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

心的観客参加型演劇のお手本ですね
もう、何!!イキウメって、何から何まで、最高!!…と、終始、気持ちワクワク観劇しました。
今まで観た中で、最高に好きな舞台でした。
スゴイ!前川さんもイキウメもどんどん進化し続けています。
今まであったような、腑に落ちない部分がどんどんなくなり、演劇という形態の可能性を、自ら具象化して見せて、客を魅了する劇団!
本当に、お見事です。
皆さん、書いているように、安井順平さんあっての成功作でもありました。
安井さんと伊勢さんの兄妹シーン、まるで、コントのように愉快でした。
随所に笑いのセンスが散りばめられ、まさか、イキウメの芝居を観に行って、こんなに大笑いすることになろうとは、予想だにしませんでした。
緊張と笑いのバランスが絶妙で、今までにない、緩急のタイミングの良さに、歓喜してしまった程。 

役者さんも、皆さん、舞台の度に、役者力がアップしています。
もう、イキウメ、観客として、安心して身を委ねられる、ダントツトップの劇団だと思いました。

ネタバレBOX

何もない舞台が、観客がそう思えば、オフィスにも、喫茶店にも、どんな場所にも早替わり。役者が役を演じているとわかっていながら、客は、舞台上の人物に共感したり、反発したり…。そもそも演劇は、虚構を、思い込みによって、形ある存在に見せるもの。
今回の作品は、まさに、そんな演劇という媒体を地で行くようなストーリーであり、舞台構成でした。
誰かの思い込みや、心の中の希望が、形ある実体を生み出してしまう事態に起因する、人間ストーリー。この、前川さんの手腕がとにかく、お見事で、舞台を見守る私も、心の中で、積極的に、この筋の運びに一喜一憂し、気付くとアイデアを一緒に考えていました。言ってみれば、心的観客参加型!!

いつも、どうなるんだろう?と、観てるこちらも、緊張しまくるのですが、今回の舞台は、どうやらハッピーエンドで終わりそうと予測できる冒頭シーンのお陰
で、どんなにハラハラしそうな場面でも、安心して観ていることができました。
それでいて、どういう決着になるかは、最後の最後まで、推測はできないので、気持ちは終始前のめり。
前川さん、しょっちゅう、いろんな劇場でお見かけするだけあって、他の芝居の良いエキスをたくさん吸収されていると見え、脚本と演出技術が、また数段レベルアップされたように思いました。

最後のシーン、伊勢さん演じる要の思いに感情移入して、おばさんなのに、胸キュンとなってしまいました。
ホント、最高!!観られてシアワセでした。
高橋さんの作り方

高橋さんの作り方

グループる・ばる

あうるすぽっと(東京都)

2010/05/14 (金) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★

化学変化が吉か凶か?
たぶん、かなり評価の分かれる芝居だと思います。
チラシからイメージする舞台を求めた人は肩透かしを食うかも…。
私的には、鐘下さんだと、何でもサスペンスタッチだなと、何だか、ストーリーそのものより、ミスマッチに見えて意外とマッチしているかもしれない、鐘下演出に、専ら興味が行ってしまいましたが…。

それにしても、いつも思うのは、松金よね子さんの絶品演技!!
これは、芝居の後立ち寄ったお店で、お隣で飲食されていた、ある有名人母子さんも、盛んにおっしゃっていました。
る・ぱるのお三人の演技はいつもながら、絶品ですが、どうも今回は、一部共演者選びを間違った気もします。
脚本も、趣向に懲りすぎ、せっかくの人物描写が途中から宙に浮いた感じが残念でした。特に、終盤近くの、小細工を弄した感のある脚本が、やや愉快ではありませんでした。
伊藤毅さん、初見の男優さんですが、目を奪われました。眼力がスゴイ!イケ面だけど、フラフラしていない!楽しみな俳優さんをまた一人、みつけてしまったかな。

それにしても、あうるすぽっとの舞台は高すぎて、前方の席だと、終始、役者さんを下から見上げる形になり、観劇に集中できないのが、困り者。
その上、開演前、お隣の方が席を立ったら、何と、椅子が壊れました。
あり得ない!まだ新しい劇場なのに…。
名作舞台はあまりあうるすぽっとでは観たくないなと思いました。  

ネタバレBOX

る・ぱるの三人の女優さんの演技に感嘆しつつ、笑っていると、どうも性に合わない演技をされるお2人の男優さんに、気持ちが白けて、とても残念でした。
鐘下さんの演出は、演出次第では相当コメディになりそうな部分もあるのに、音楽も舞台構成も、サスペンスタッチで、ガジラっぽくもあり、不思議な不協和音の芝居でした。私自身は、この演出、嫌いではありません。
ただ、もっと笑いを取れる部分での、演出の不得手は感じました。

最後の場面の、意外などんでん返しは不要だった気がするし、そうとわかって思い返すと、何故、千葉があの場所にやって来たのか、理解に苦しむところがありました。
ネットカフェ難民の割には、皆さん、すごく高価そうな衣服や、スーツケースを所持しているのも不可解でした。

土屋さん、構成力のある作家だとお見受けしたので、別の作品も観てみたくなりました。
どこまでもゆける

どこまでもゆける

水写

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2010/05/20 (木) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★

情感を紡ぐ芝居が心地良い
オムニバス形式の3部構成の舞台。
最初の場面では、素人っぽい演技の方が多く、付いて行けるか心配でしたが、3部まで観たら、結果オーライ。
かえって、その素人っぽさが、この芝居向きなのかもしれないと思えました。
どこにでもいる普通の人間生活の日常が、胸にスーっと染み渡ったラストシーンは、演技過剰な役者さん達では、紡ぎ得ない世界でした。
昔、私が子供達に読み聞かせた絵本の世界のような情感劇。
最後のシーンはスーラの点描画のようでした。
よく外国語映画賞の対象になるようなドキュメンタリータッチの映画では、撮影場所でオーディションで選ばれた素人さんがよく新人賞を受賞してしまったりすることがありますが、この舞台の役者さん達にも、そんな不思議な自然の魅力がありました。

ネタバレBOX

3部構成の1場は尾崎さんの作演、2場は森谷さん、そして3場は、お2人の共作のようでした。
3つの話は、独立形態を取りながら、関連づいていて、もたついた1場、2場より、圧倒的に3場が秀逸でした。
3場の、ハラハラと時折舞い散る青い葉っぱの美しかったこと!
粗筋で語れるタイプの芝居ではありませんが、どこか情感に伝わる、素敵なエンディングで、人間は、浅く広く誰かと関わりながら、また後世の人間にバトンを渡して、連関しながら、一生を終えるのだなあと感じられる、何だか、現代版「徒然草」や「方丈記」風の趣ある舞台でした。

ただ、見せ方では、やや疑問も感じました。1場の、テレビの報道番組場面は、後方の枠を使って見せた方が白けなかったのではと思いました。
でもでも、これ、旗揚げ公演の初日だということを想起すると、感嘆物です。
だって、誰も噛んだりしなかったもの。(お知り合いが、4人も御出演で、どうしても好意的になってしまいますが、でも、旗揚げでここまでできる劇団なんて、そうそうないですよね。)
ザ・パワー・オブ・イエス

ザ・パワー・オブ・イエス

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2010/05/10 (月) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★

翻訳常田さんの功績大
金融関係の知識には疎い私が、眠くなりはしないかと不安で、行きましたが、そんな心配は無用で、大変興味深く拝見できました。
これって、たぶん、常田さんの翻訳がお上手だからなのでは?
専門用語の飛び交う台詞を、役者さん達が、皆さん、自分のものにして、役として舞台上にいて下さったので、厭きることがなかったのですが、もしこれが金融関係に明るい専門家の直訳のような翻訳だったら、こうは行かなかっただろうと思うのです。 
常田さんは、元々演劇人でしたから、演劇の生きた台詞として翻訳して下さるので、どんなジャンルの芝居でも、役者さんの口から発せられる言葉が生き生きとしたものになるのだと、いつも感嘆しています。

ドキュメンタリー色が強いと聞いて、「ハシムラ東郷」のようだったらどうしようかと思いましたが、これは、きっちり、演劇として成功している舞台でした。

ネタバレBOX

内容自体は、それ程目から鱗のようなものはなく、かつてNHKのドキュメンタリーで、私でも知っているような類の知識しか得られず、肩透かしを食った気もしましたが、最初に、作者役の俳優が「これは芝居ではありません」という台詞とは真逆で、これは、ドキュメンタリーに見せた、実はれっきとした芝居なのではと思いました。
作者のインタビューに答える、金融関係者が、きっちり、それぞれ、キャラクターを付与した役割を与えられて、登場するから、実に、面白くてなりませんでした。
だから、時折最近の燐光群芝居に危惧する、役者さんのモチベーションの心配をせずに、済みました。皆さん、生き生きと役を演じていましたもの。
だけど、やはり、御自分の日常にない台詞が多いせいか、多くの役者さんが、かむ事が多く、終盤は、御自身の台詞が飛んでしまった役者さんんもいて、それはちょっと残念ではありました。

考えてみれば、大昔の経済機構は、物々交換で成り立っていたけれど、お金がただの紙になってしまったところから、いずれは、こういう情況がやって来るのは、あたりまえだったのかもなどど、詳しくない分、短絡的に思ったりしました。そういう意味では、破綻した会社で、クレジットで交換できる、食堂の食材を、社員が皆、ダンボールに入れて持ち帰ったという件には大ウケしました。
イソップ物語の、牛の真似をして、爆死する蛙の話を思い出してしまいました。
奇ッ怪

奇ッ怪

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2009/07/03 (金) ~ 2009/07/20 (月)公演終了

満足度★★★★

読書のイメージ通り
子供の頃、夜寝られなくなるのをわかっていながら、夢中で読みふけった小泉八雲の怪談話。
自分が昔からイメージ世界を膨らませていたから、すんなり受け容れられるかと不安でしたが、さすが前川さん、お見事でした。
まさに、幼い頃、読書の後に見た悪夢の世界そのものが、舞台上に現出していて、驚きました。
いつもは、そのアクの強さが出すぎるところもある池田さんが、この舞台では、重要なキーパーソンの役割でした。池田さんが出演されていなかったら、ここまで面白くならなかったかも。小松さんとのコンビネーションも抜群でした。芸達者な、脇役陣に助けられ、仲村さんも、小泉八雲と前川さんの世界感を精一杯演じていて好感が持てました。
ただ、仲村さん、粘着質な恋心の受け手としての演技が、今ひとつ表層的だったのが残念でした。
セット、照明、音響等、スタッフ技術が群を抜いていて、物語以上に、視覚と聴覚に訴える、迫真の舞台でした。

しとやかな獣

しとやかな獣

オリガト・プラスティコ

紀伊國屋ホール(東京都)

2009/01/29 (木) ~ 2009/02/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

何もかも見応えあり過ぎな力作でした
この映画は、全く知らず、何の先入観も予備知識もなく観に行ったので、最初から、浅野さんの名演技に釘づけとなり、最後まで、一瞬たりとも目が離せない、なかなかない観劇体験でした。
ストーリーを知らなかったのが余計幸いだった気もしますが、それにしても、こんな面白い映画があったなんて!それをまた、この時代に舞台化するなんて、関わった全てのスタッフの着眼点に瞠目しました。
近藤公園さんもとても魅力的でした。
緒川たまきさん、すごく同性から観ても、魅力的だと思っていたら、ケラさん、御結婚されましたね。

ネタバレBOX

冒頭で、芝居を打つために、黙々と椅子を隠したり、高額な絵を閉まったりを繰り返す、浅野さんと広岡さんの演技が、既に大ウケしました。
どうして、浅野さんて、こんなに無言劇がお上手なんだろうと、感嘆しまくり。
ケラさん、オリジナルは長すぎて、時々お尻が痛くなりますが、既成作品の脚色と演出の手腕にはいつも感嘆ものです。
全然期待していなかったので、満足度120%の舞台でした。
ロックミュージカル『スーザンを探して』

ロックミュージカル『スーザンを探して』

東宝

シアタークリエ(東京都)

2009/01/06 (火) ~ 2009/03/05 (木)公演終了

満足度★★★★★

吉野さんと香寿さんの新たな魅力を満喫
もっと深刻なムードなのかと思いきや、すごく楽しいミュージカルでした。
ミュージカルには珍しい場面展開の速さに、ロック調の曲がピッタリで、内容以前に、観る者を引き付ける舞台でした。
四季を退団されて初の保坂さんも、生き甲斐のない淋しい主婦役を好演されていましたが、脇役陣の弾けた演技が、とにかく魅力的でした。
特に、ハスッパなスーザン役の香寿さん、その恋人のロックミュージシャン役の吉野さんの弾けっぷりが最高!
心配だった、狩人の加藤さんも意外な役者さんぶりで、ほっとしました。
ベテラン、山路さんや杜けあきさんも脇を締め、シアタークリエにはこの手の公演がおあつらえ向きではと思えました。
カーテンコールでの、会場一体となる熱気も貴重な体験でした。
是非またバージョンアップして再演してほしいなあと思います。

ネタバレBOX

ミュージカルなのに、サスペンス風でもあり、シチュエーション・コメディ風でもあり、いろいろなタイプの演劇の楽しさが混ざり合った、魅力的な作品でした。
吉野ファンとしては、とても満足の舞台でした。何しろ、吉野さん、可愛かった!
抜け穴の会議室

抜け穴の会議室

Team申

赤坂RED/THEATER(東京都)

2007/11/10 (土) ~ 2007/11/24 (土)公演終了

満足度★★★★★

前川作品初見舞台でした
佐々木さんのファンなので、行きましたが、テレビでしか知らなかった中村さんの意外な舞台俳優としての資質を初観劇し、思ってもみない収穫でした。
そして、この脚本を書いたイキウメの前川作品との出会いでもありました。
前川さん、一目惚れでした。
星新一や清水義範の小説の愛読者でしたから、こういう世界感の芝居は大好きです。
ただのSFものに終わらず、きちんと人間と人間の絆が描かれていて、胸打たれました。
是非、いつか再演して頂けないかなと、期待しています。

2人の夫とわたしの事情

2人の夫とわたしの事情

シス・カンパニー

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2010/04/17 (土) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

シス・カンパニーには珍しく、上出来!
とても楽しく拝見しました。
松さん、段田さん、渡辺さんの主役3人はもちろんのこと、脇を固める皆さんが、揃って芸達者!

1919年の作品とは思えない、万国共通、時代を超越した、普遍の男女の駆け引きが、シチュエーションコメディの趣で、見事に、現代にも通じる、痛快ストーリーとして、成り立っていました。
たぶん、これ、随所に遊び心ある、ケラさんの名演出による功績大だとお見受けしました。

招待券でいらしたお客さんが、「買ってもいいくらい、面白かった!」とのたまっていらっしゃいました。

3幕の、それぞれ、趣の全く違う、舞台セットを見るだけでも、愉快でした。
万人におススメしたい舞台です。

ネタバレBOX

主役3人の描き方も絶妙なら、少しの登場場面しかない脇役までもが、実に生き生きと描かれた脚本の秀逸さに、感嘆しました。
新橋さん、池谷さん、猪岐さんが、特に、魅力的!

最後の場面で、段田さんが読んでいたのは、最近、松さんが演じた「ジェーン・エア」かな?とか、ミス・モンモラシーとラーハム氏のキスシーンは、ケラさんのお遊びでは?とか、観ていて、楽しい想像もたくさんできて、とっても楽しい!!

最後の、離婚に持ち込むための、ラーハム氏のアイデアは、結局、使用人が一人もいなくなったあの家庭では、証人皆無で、成立しないだろうから、2人の夫の安堵も、ホンの一時だろうと思われ、舞台が終わった後の顛末までが楽しめる、実に芸の細かいコメディでした。
モジョ ミキボー

モジョ ミキボー

モジョミキボー上演委員会

OFF OFFシアター(東京都)

2010/05/04 (火) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

切ないごっこ遊びの二重構造が見事!
文学座の名演出家鵜山さんと、所属俳優の浅野さん、石橋さんのタッグマッチ。そうです!!私は、文学座にはこういう名舞台をどんどんやってほしいと切に思いました。(文学座の公演ではないけれど…)

演劇というごっこ遊びを2人の俳優で代わる代わる演じ、楽しそう。
でも、2人が主に演じるのは、モジョとミキボーという、同じアイルランドのベルファルトに住みながら、カトリックとプロテスタントといういがみ合う異なる宗教の家庭に育った少年達。この2人が、橋を渡って出会うところからの切ない物語。
その2人が一緒に観て夢中になった映画の主人公を気取って、このストーリー世界の中で、映画のごっこ遊びに興じる二重構造が、実に見事な演出でした。
お2人の実力も互角でと言いたいところですが、やや浅野さんが上を行っていたかも…。
お2人の演技がまさしく互角になったら、この舞台、もっともっと昇華する筈。

それにしても、鵜山さんの演出は本当に大好きだとまた思わされました。
何も背景のない舞台が、瞬時に、アイルランドのあれこれの場所に見えてくる素晴らしさ!!照明や映像の使い方のセンスも抜群でした。

ただ、私のような世代には郷愁を覚える舞台ですが、若い世代の方々には、どう映るだろうかと、やや心配にもなりました。
アイルランドの悲しい歴史や、映画「明日に向かって撃て!」を観て、予備知識を蓄えてから、観劇した方が、万全かもしれません。

ネタバレBOX

お2人が、瞬時に役を替えつつ、モジョとミキボー以外にも、何役も演じて、その様子が楽しげで、全般的には笑って楽しく観られます。
でも、描かれている世界の実話が想起され、最後は、胸が切なく疼きます。
「ブラッド・ブラザーズ」にも似た、劇世界。
2人が、「明日に向かって撃て!」のブッチとサンダンスを気取って、楽しげに遊び興じる程、最後の2人の別れが切なくてなりません。
殊更、説明なく、2人の家庭の事情もうまく見せる脚本がまた見事!
何となく、舞台を観ながら、本場の俳優が演じる、欧州の映画を想像しました。まだ映画になっていないなら、誰か映画化してくれないかと、期待します。
それにしても、浅野と名の付く役者さんは、名優ばかりですね。
パラデソ

パラデソ

タカハ劇団

小劇場 楽園(東京都)

2010/05/02 (日) ~ 2010/05/11 (火)公演終了

満足度★★★

嫌煙者には辛い決断…
タカハ劇団初見。
とても、面白かったのですが、その前に…
当パンに「劇中でかなりの喫煙シーンがあります。嫌煙家の方で、座席後方を御希望の方は…」と注意書きがあり、確かに、私の最前列の席は、開幕前からタバコ臭いので、席を変えて頂けるよう、お願いしました。
「それでは、悪いお席になりますが…」と言われ、了承したものの、変えて頂いたのは、一番後方の当座の席。背もたれもなく、足は宙ぶらりんとなり、やはりタバコの煙を我慢すべきだったかと、激後悔!!
きちんと早々入場料を払った客にこんな余計なストレスを与えるのは、できれば避けて頂きたかったと強く思いました。
そうまでして、喫煙シーンを作らなければならない程の、必然性を感じませんでしたから、尚更。

さて、舞台自体は
まず、リアルな舞台セットに大感激!!こういうの観るとワクワクします。
できれば、最初の特等席で観たかったですよ、本当に。
役者さんも芸達者揃いで、文句なし。特に、内田さんと瓜生さんの素晴らしいこと!!
ストーリーも、自然で、楽しめましたが、でも、リアルそうで、意外とリアルに感じられないキャラクター揃いで、誰かに感情移入するとかではなく、覗き見させて頂いたといった軽い気分の観劇体験でした。

ネタバレBOX

とあるカルト教団の集団生活の中で、育った若者達のストーリーでしたが、どうしたって、そんな特異な環境で育った人達の再会劇の趣ではありませんでした。それが、どうにもリアルに感じられない点で、感情移入とかもできにくい要因だと思います。
この登場人物の中で、ただ一人、教団とは無関係の、居酒屋の女の子の視点に立てばいいのかも…。
でも、無理に、誰かに感情移入しなくても、劇構成はしっかりしているから、問題なく楽しめはします。
旅、旅旅

旅、旅旅

ロロ

王子小劇場(東京都)

2010/05/06 (木) ~ 2010/05/09 (日)公演終了

ごめんなさい、全くダメでした
期待していたのですが、個人的志向から、大きく外れる劇団でした。
でも、たくさんの若い観客の方の笑い声に満ちていたので、私の肌には合わなかったに過ぎないのでしょうが…。

正直、始まって2分ぐらいで帰りたくなりました。個人的には、不快指数度が、かなり高く、それでも、せっかく王子まで観に来たのだからと、何か一つでも、観てよかったと思える要素を探り当てようと躍起になりましたが、気持ちは空回りするばかり。
何もかも、一定レベルに達していないように、私には思えてしまいました。
せめて、お一人でも、役者力で、見せ切って下さるキャストがいたらよかったのに…

ネタバレBOX

途中からは、舞台上のテレビに映る「野生の王国」だか何かの既成映像を眺めて過ごしました。この既成映像とBGMで掛かる既成音楽に救われました。
あまり、普段は好みでない、青年団系舞台特有の、開幕前から、登場人物が舞台上で、何やら行動しているシーンが一番普通に観られました。

言葉遊びも、野田秀樹さん程洗練されず、たぶん、こんな風にしたいとモデルにしているのではと推察される、幾つかの劇団に、似ているようではあっても、その質がまるで違っていて、それらの劇団の足元にも及ばない感じがして、ひどくがっかりしてしまいました。
化粧 二幕

化粧 二幕

座・高円寺

座・高円寺1(東京都)

2010/04/30 (金) ~ 2010/05/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

やっと観られました
やはり演劇ファンの渡辺さんと同世代の母と2人、最前席で、拝見することができ、感無量です。
以前、テレビ中継したのを録画してありましたが、生で観るまではと封印していました。
これだけ上演されながら、ネタバレになるような予備知識なしに、生の舞台を初見できて、本当に正解でした。

渡辺さん、スゴイ!!やはり長い間、たくさんの場数を踏んで、この作品を熟成させて来た、本物の味が素晴らしく、それだけで、圧倒されます。
これぞ、至芸!!

ただ、私の個人的好みから言えば、当初のように、1幕で完結してもらった方が、より心に沁みた気はします。
長谷川伸の芝居が大好きなので、1幕ラストの終わり方の方が好みだという、あくまでも、自分勝手な嗜好ではありますが…。

一人芝居は、ちょっと経験を積んだ役者さんが、ともすると、軽々しくチャレンジなさいますが、一人芝居には、優れた脚本と役者人生を真っ当に生きてきた、熟練役者さんがいて初めて形になるものだと思います。(そこに名演出が加わればパーフェクト)
その点、この「化粧」は、そのお手本のような、素晴らしい舞台芸術でした。
これで、ファイナルというのは残念な気もしますが、正直、あの時やめておけばよかったのにと思う公演も数多くあるので、ここで終わりにしようと決められた渡辺さんの英断には、潔く賛同したいと思います。
本当に、滑り込みセーフ!生で拝見できて、感無量です。

ネタバレBOX

座・高円寺は、かなり横広い劇場ですが、それでも、客席に座っていると、自然に、旅一座の芝居小屋に観劇に行ったような気分になれて、驚きました。
さすが、井上さんの脚本は、その場に、他に登場人物がいるかのように、巧く、一人きりの台詞を工夫して、説明や鸚鵡返しではなく、舞台上の様子を、客の脳裏に焼き付けて行きます。
新劇出身の渡辺さんが、見事、旅一座の女座長になりきって、「そんな演技じゃ新劇に行くしかない」というような台詞を言うところは、大ウケしていました。
ゴキブリを客席まで追いかける様も、愛嬌があって、素敵!!
いくら、何度も演じて、体に落ちているとは言え、あれだけの台詞をよどみなく言いながら、所狭しと動き回る、渡辺さんの女優魂には、ただただ驚嘆し、尊敬の念でいっぱいでした。

母親に、孤児院に預けられた井上さんの御経験から生み出された作品だけあって、この芝居の主人公の思いは、ダイレクトに、観る者の心に響きます。
大好きな長谷川伸の時代物に共通する、生き別れた母子の情が描かれ、日本的な人情物の系譜の芝居でした。
後から付け加えられたという2幕は、一転、オチや引っ掛けなど、他ジャンルの芝居のようなテイストが加わるので、個人的には、一幕最後の、楽屋から、舞台に登場して行くという、主人公が、舞台から引っ込む形での幕切れのままであってほしかった気もしますが、でも、そうは言っても、きちんと辻褄が合って、意外な完結をする2幕を書かれた井上さんの手腕はさすがだと、感嘆しました。
歌舞伎によくある、幼い時に生き別れた肉親が、お互い、肌身離さず持っていたお守りによって、まさかの再会を果たすという、お決まりのシチュエーションを逆手に取った筋立てが、気がきいていました。でも、再度、息子が確かめてから、「これは違う」と言うまでに、時間が掛かりすぎの気はしましたが…。
四角関係

四角関係

劇団NLT

博品館劇場(東京都)

2009/06/10 (水) ~ 2009/06/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

馬木也さんの初コメディ
シリアスな役柄の多い、山口馬木也さんの初コメディで、ファンとしては、恐る恐る観に行きましたが、なかなか頑張って、体当たりコメディを演じて下さって、素直に楽しめました。
馬木也さんを支える他のキャストが全員、ベテランなので、翻訳コメディの、こそばゆい感じもなく、NLTのコメディの中では、かなり上位のランキングに入る公演でした。
何と言っても、木村有里さんのとぼけた雰囲気が最高!!
最後は、ちょっとほろっとさせられる、上質な素敵な香りのコメディでした。
是非、同じキャストでの再演希望します。

ネタバレBOX

実際、プロの絵描きを目指して、留学されていた馬木也さんなので、舞台上で、実際に絵を描く場面があるに違いないと期待していました。当てが外れて、それだけはちょっと残念でした。
だんだんに、主人公に惹かれて行くメイドさん役の真堂藍さんの、それはそれは可愛らしかったこと!!同性なのに、恋してしまいそうでした。
最前列で、2人のハッピーエンドのキスシーンを観て、久々、若き日の恋のときめきを思い出して、気持ちがほっこりしてしまいました。
ドタバタコメディでも、こういう素敵な終わり方だと、得した気分になるものですね。
TOKYOが始まる

TOKYOが始まる

TOKYO PLAYERS COLLECTION

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2010/04/29 (木) ~ 2010/05/02 (日)公演終了

満足度★★★

他とは異質な雰囲気が素敵でした
何も知らずに観劇し、何となく、他の団体と異質なストーリー展開に興味を持ち、よくよく当パンを確認したら、競泳水着の上野さんの新ユニットとわかり、納得!!
独特の視点で、東京の風景をスケッチしたようなエッセイ風の芝居で、着眼点には、感心しました。
役者さんが、演技がまだこなれていない感じで、稽古不足だったのではと感じました。
もっと、熟した状態で、この芝居を観られたら、☆5つになったのではと、残念でした。

ネタバレBOX

「東京」を演じる女優さんの衣装が気がきいていました。何となく、スクランブル交差点の雰囲気で…。
主役を演じた男優さんは、「とりあえず寝る女」の時は好演されていましたが、この芝居では、まだ演技がこなれていない感じで、惜しいなという印象でした。この男性の同僚女性役の女優さんの演技が秀逸で、後半、彼女にばかり目が行ってしまいました。
上野さんの作劇センスを体現するまでに、稽古を積まれたら、もっとバージョンアップする可能性大の公演。次回公演に期待します。
アメリカン家族

アメリカン家族

ゴジゲン

吉祥寺シアター(東京都)

2010/04/29 (木) ~ 2010/05/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

リアルクローン(私の勝手な造語)な家庭劇
「たぶん犯人は父」から、ずっと見続けているゴジゲン。観る度、劇団カラーや作風が変遷、進化していて、その度、衝撃を受けます。
今回の作品は、健全な家庭に育った方には絵空事に映るかもしれません。
ですが、我が家は、松居家程ではないにしろ、似たり寄ったりのシチュエーションは経験済みなので、何だか無性に親近感を持って、この常識ハズレの家庭劇を目撃させて頂きました。
今回、キャストが全員、役にはまって素晴らしかったのも、特筆ものでした。
どんなよくできた芝居でも、1人や2人、この役者さんがなあ…と思うものですが、今回のキャステイングには全く文句なし!!
芝居の内容に合ったセットもお見事でした。

ゴジゲン、一体どこまで行くんでしょう?ずっと追いかけたい劇団の筆頭株です。

ネタバレBOX

リアリティある家族キャラと、デフォルメされた他人キャラ、その二つの集団が繰り広げる、突き抜けた家庭劇が、秀逸の極みでした。
突飛な家族のようだけれど、どこかに、我が家でもあったような光景が眼前にさらされる度に、心がむず痒くなる感じになって、苦笑したり、共感したり。
芝居を観ている感覚ではなく、その場で体感するような感覚でいました。
キャストの皆さんの台詞が、本当にその場から発したような雰囲気で、稽古風景が想像できない感じだと思っていたら、アフタートークで、ヨーロッパ企画の上田さんが、しきりに「稽古場はどんなだったの?」と聞いていらしたので、もしかしたら、同業者でも、そう感じられたのかも。 

上田さんも言っていましたが、家族が暴れるシーンで、各自が武器として手にする小道具が、妙にリアルで、笑えました。
父が、息子のお祝いに歌う歌も、愉快でした。
松居さんの実体験に基づいた作劇だけあって、非現実的なストーリー展開でも、どこか、芯がしっかりしていて、全てがリアルに感じられたのが、自分でも驚きでした。ケラさんの芝居だと、芝居として認識できるのに、この家族に、連帯感めいたものを感じてしまいました。
家族がリアルなので、他人チームのキャラクターが突飛な感じもするのですが、これも、松居さんの計算なのでしょう。
ただ、私としては、母のストーカーのような藤田の人物設定だけは、やや否定的なのですが…。あそこまでしない方が、芝居がぶれなかったように思うので。

結局は、他人を排斥して、家族だけで、食卓を囲み、でも、この期に及んで自分勝手な発言ばかりのシーンは、我が家にも、身に覚えがあり、唸りました。
個人的には、あそこで、終わってほしかった気もします。

半分家族、半分他人の、伊原の「まだ家族になれない?」という最後の台詞が、一番胸に堪えました。この芝居に、伊原というこのどっちつかずの人間を登場させた、松居さんの作家としてのセンスに感服しました。
歪な家庭は、大作家を生み出す土壌なのかもしれないですね。

アンポテンツ

アンポテンツ

劇団チャリT企画

王子小劇場(東京都)

2010/04/28 (水) ~ 2010/05/02 (日)公演終了

満足度

今回は、あまり面白くない(泣く)
もっと発想豊かな、突き抜けた茶番劇を期待していたので、正直かなりがっかりしました。
もっと、楢原さんならではの、お見事な手腕を存分に拝見したかった!!
次回に期待します。

キャストでは、相変わらずの芸達者、内山奈々さんに、笑わせて頂き、岩崎さんの、前回公演とは打って変わった普通のおばさん振りの演技に心酔。長岡さん、小杉さんも、共にいい感じ。客演陣では、リュックの男役の岡田さんに大注目しましたが、いつもより精彩のないチャリTキャストもいて、そのバランスの悪さが残念に思えました。

ネタバレBOX

たぶん、「ゴドーを待ちながら」を下敷きにしているのでしょうが、もう少し、楢原色の出た作品を期待していたので、あまり面白く感じませんでした。
楢原さんの、門番役は、なかなか板についていて、さすがでしたが…。

ホームレスと、鈴木さん、買い物袋を下げた女、カレー屋と、宿屋の絡みは結構面白かったのに、3人の「アンポテンツ」軍団が登場する度、一気にシラケムードになる気がして、残念でした。
客演の岡田さんの不思議な雰囲気には、魅了されるものがありましたが、何となく、作劇のセンスがイマひとつだったのが、せっかくのキャストを生かしきれない要因だったのではと思います。
R.F.D

R.F.D

PLAT-formance

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2010/04/29 (木) ~ 2010/05/02 (日)公演終了

満足度★★★★

初見でファンになりました
名前すら聞いたことのないユニットでしたが、安藤さんは、以前、こゆび侍の「はちみつ」で拝見していました。
その時も、この役者さんはいいなと思っていましたが、実はこんな面白いコントユニットの方だったとは!!
芝居と言うよりは、コントのテイストですが、とにかく、たった2人なのに、何人も役者さんが登場していたのではと錯覚するぐらい、瞬時の役作りが抜群でした。それに、お2人とも、役者さんとしての華がある。作・演出のオカヨウヘイさんと共に、磨けば光る、原石の魅力をたくさん感じました。
ただのコントに終わらず、ここにちょっとでもいいから、演劇としての表現力が加味されたら、もっと素敵なユニットになるだろうと、非常に楽しみに思える団体でした。

15 Minutes Made Volume8

15 Minutes Made Volume8

Mrs.fictions

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2010/04/29 (木) ~ 2010/05/02 (日)公演終了

満足度★★

企画自体には今回も敬服
前回から観始めた、15Minutes 、興味ある劇団を一挙に知ることのできる良い機会です。今回は、いつも見逃してばかりいる国道五十八号線に興味があって、行きました。
ところが、残念ながら、そちらにはあまり好感が持てず、逆に、あまり興味なかった劇団を追いかけたくなりました。
時間堂の演目は、ある仕掛けが施されていたらしいのですが、出演者から、そのネタバレを聞かされた息子から話を聞くまでは、私には全く気付けなかった仕掛けでした。何故気付けなかったかは、ネタバレにて。

たとえ15分でも、その劇団の色やエキスは伝わるので、この企画、本当にありがたく思います。
できる限り、続けて頂きたいと思いました。

ネタバレBOX

国道五十八号線…脚本も特に目新しさはなく、役者力は不足していて、一番楽しみにしていただけに、かなり肩透かしを食いました。本公演に行ってみたい意欲がかなり削がれてしまいました。

芋屋…こういうテイスト、大好きです。役者さんも、総じて皆いい!!特に、美香役の桑原さんの酔っ払い振りと、気の小さい草食系男子、斉藤役の磯矢さんの人の良さそうな雰囲気が、申し分ない役作りで、感心。コント的雰囲気作りに一役買う京ちゃん役の鈴木さんの軽妙な演技も魅力でした。是非、本公演にも行ってみたいと思います。

時間堂…「月並みなはなし」の時にも、違和感を覚えましたが、今回はもっと受付ませんでした。脚本も、演出も、役者も、何をどう見せたいのかが、私には不明。ただただダラダラ続く会話にイライラするばかり。そんな中、競泳水着の大川さんだけは素敵な雰囲気のある女優さんで、彼女が出演して下さったことが、最後まで、目を背けずに観られた要因だった気がします。
後で、聞いたところでは、登場する二組のカップルは、同一カップルの過去と現在の姿だったとか!!私には、全く気付けない仕掛けでした。男性二人はルームシェアしている同士だとばかり思っていました。
そう言われてみれば、確かに、女性は、お菓子作りの話をしていたし、2人の男性は、女性に聞いたおまじないの言葉「マカロン…」を口にしていました。でも、それでも尚、この二組を同一人物なんて思いようがありませんでした。
何故なら、二組のキャストがあまりにも似ても似つかないから…。そういうことを客に気付かせるには、仕草を同じにするとか、雰囲気だけでも似たキャステイングにするとか、もう少し工夫が必要な気がします。その上、この日は、そのネタバレになる台詞を黒澤世莉さんがお忘れになったらしく、残念ながら、作者の趣向には気付けずじまいでした。それに気付けたら、もう少しだけ、好印象だったのかもしれません。

Mrs.fictions…こんな素敵な企画を実行に移して下さる、ありがたい劇団なので、正直な感想を書き辛いものの、ここの芝居は、評価対象外でした。前回も、よくわからなかったけれど、今回はそれ以上。Dさんが、なかなか味のある演技をされる方だということだけは、わかりました。

PLAT-formance…名前も知らなかったこの劇団、個人的には、一番注目したい団体でした。芝居ではなく、コントの部類だけれど、脚本も演者も、もっと成長する可能性をたくさん持っている感じがして、今はまだ未完成だけれど、磨けば光る原石のような、楽しみを感じました。安藤さんと吉田さん、瞬時に何役も変わるけれど、登場人物の数だけ、役者さんがいるかのように、見事に錯覚をさせて下さいました。お2人とも、役者さんとしての華もあるし、本公演を観てみたくなりました。

TOKYO PLAYERS COLLECTION…ここも知りませんでしたが、競泳水着の上野さんが始められた新ユニットなんですね。可もなく不可もなくの印象。中西役の富永さんの演技が秀逸で、彼女ばかり目で追いかけてしまいました。劇作家としての上野さんの着眼点には、今回も敬服。楽しみな作家さんであることは確かです。
夏の砂の上

夏の砂の上

Pカンパニー

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2010/04/28 (水) ~ 2010/05/03 (月)公演終了

満足度★★★

人間関係の静かな漣
松田正隆さんの芝居は、結構観ていますが、最近の作品より、昔の作風の方が好みです。
この作品は、1999年の文学賞受賞作ですから、もう10年ぐらい前の作品なのでしょう。
ですから、結構、好みでした。
面白いかと聞かれたら、ちょっと即答には迷いますが、でも、決してつまらなくはない舞台です。
磯貝さんが、とても、松田作品の波長と合う演技をなさるので、何だか作品世界にすんなり誘われてしまうのです。
客演の尾崎愛さんもとても良かった!!私が男性客なら、彼女の虜になってしまうのではと感じました。

ネタバレBOX

別役作品に、電柱と死体がつき物みたいに、松田作品には、雨や子供の死、うまく行かない夫婦関係などが、必ずついて来るようです。
セットには、必ずと言って良いほど、長机が出てきます。
そんな松田作品の静かな時間の流れにピッタリのキャストと演出だった気がします。
後で事故死してしまう、主人公の同僚が、「眠くなった」と居眠りを始めた時、私も何故か睡魔に襲われたものの、それ以外は、結構単調な流れにも拘らず、ずっと舞台に集中できました。
特に台詞で説明せずとも、登場人物の心の内が如実にわかる作劇は、さすがだと感じます。

陣野の妻が、主人公の治の許に、泣き言を言いに来るシーンには、ちょっともらい泣きしてしまいました。このシーン、全体の単調な流れの中で、良いアクセントになっていました。
治と姪の優子が、雨水を飲むシーンは、如何にも松田作品らしさに溢れ、秀逸な場面でした。
最後、治が職場の事故で、指を失うという設定は、必要悪だった気がします。それがない方が、リアルな家族劇、人間劇として、洗練された空気に満ちていたように思うのですが…。

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