8割世界番外公演『欲の整理術』×『ガハハで顎を痛めた日』
8割世界【19日20日、愛媛公演!!】
ART THEATER かもめ座(東京都)
2010/07/07 (水) ~ 2010/07/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
「ガハハ~」2バージョン目
養成所時代からの大の宮澤ちさえさんファンとしては、彼女の2役はどちらも観たいので、今日も行って来ました。
まず、朝に、りいちろさんのレビューを拝読してから劇場に出向いたせいか、昨日はかなり、脚本にも構成にも、不満が多かった「欲の整理術」を、もう一度、新鮮な気持ちで観る事ができ、昨日の☆2が、今日は☆4になっていました。
「ガハハ~」は、今日は、二宮・嶋木チームが先生、宮澤・武井チームが生徒でしたが、キャストが交代するだけで、こんなに、舞台の雰囲気が変わるのかとビックリしました。どちらも、甲乙つけ難く、魅力的でしたが、今日の二宮さんの先生は、宮澤さんに比べ、ドライな感じを受けました。
何か問題に遭遇した時は、二宮さんの方が、無難に乗り越えて行けそうな感じ。(笑)
武井さんは、両方の役とも、大変魅力的に演じていらして、この女優さんの実力に感銘を受けました。
宮澤さんは、生徒も魅力的ながら、個人的見解では、先生の方が好みでした。
両バージョン拝見し、8割世界の底力は、かなり実証できたのではないかと感じました。
それだけに、今後の番外公演の演目は、既成の戯曲から選りすぐったものにトライされた方が、劇団員の実力発揮には効力があるのではと、改めて思いました。
たとえば、舘さんの「とまらずの国」を、8割世界で観てみたい気もします。
8割世界番外公演『欲の整理術』×『ガハハで顎を痛めた日』
8割世界【19日20日、愛媛公演!!】
ART THEATER かもめ座(東京都)
2010/07/07 (水) ~ 2010/07/11 (日)公演終了
満足度★★★★
明暗を分けた気がする2作の出来栄え
コメディの劇団が、コメディでない公演を打つという企画自体には大いに賛同し、試みの結果としてのみ観れば、大変意義のある公演になっていたと思うのですが、「欲の整理術」の方は、初演出の演出家には、如何にも任の重い作品でした。
今回は、舘さんに新作書下ろしを2作も依頼し、キャスト交渉の後に、台本が完成したようですが、こういった番外公演は、それでは危険性が伴う気もして、今後、この番外公演を続けるのなら、書き下ろしより、既製の作品の中から、作品選びをした方がリスクが少ないのではと感じました。
一方、「ガハハで顎を痛めた日」の方は、結果オーライで、かなり高レベルの作品に仕上がっていました。
「欲~」が、☆2、「ガハハ~」が、☆4、+この公演の企画と意欲に敬意を表し、トータルでは、☆4と言ったところでしょうか。
ただ、この公演を、本公演のコメディを更に進化させるための布石として捉えれば、この経験は、劇団員に実力を備えさせえる効力は充分あると思うので、その視点に立って評価するなら、☆5でも良いかなとも感じました。
座った席が、空調寄りだったせいか、ひそひそ声の台詞が不明瞭で、所々、聞き取れない箇所があったのは、残念でした。特に、「欲の~」の方は、終始、台詞が明瞭でない方が数人いて、余計、内容がわかり辛くなった気がします。
あ、題名の意味するところは、全く解りかねました。(笑)
心配したかもめ座の椅子、高齢者にも親切な形にして頂き、心からお礼申し上げます。
ひめゆり
ミュージカル座
THEATRE1010(東京都)
2010/07/08 (木) ~ 2010/07/13 (火)公演終了
満足度★★★★★
これこそ、戦争を語り継ぐべき名作舞台
何度観ても、胸が潰れる思いがします。何度も、同じ場面で、胸が苦しくなります。そして、いつも、ラストシーンで、心に、希望が湧き上がり、人間の逞しさと生きる力に、静謐な感動で、心が満ち溢れ、勇気が湧いて来ます。
もう、5回ぐらい観た舞台ですが、観る度に、これは、長く上演され続けて、未来の子供達にまで、戦争の愚かさや悲惨さや逆境を生き抜く人間の素晴らしさを語り継ぐ使命を全うしてほしい作品だと、強く感じます。
主役のキミちゃんは、亡き本田美奈子さん、島田歌穂さんの名演を拝見しましたが、今回の知念里奈さんも、素晴らしかったです。
客演のミュージカル俳優さんだけでなく、ミュージカル座の若い皆さんが、再演を重ねる毎に、実力ある方々ばかりになって、この劇団の進化にも目を見張りました。
もし、ミュージカル座、食わず嫌いの方がいらしたら、是非、この作品だけでも、一度、騙されたと思って、ご覧になってみて頂きたいと、思うくらいです。
女ともだち
劇団競泳水着
「劇」小劇場(東京都)
2010/06/30 (水) ~ 2010/07/06 (火)公演終了
満足度★★★★★
心の琴線に触れまくりで、終始ウルウル
前回のミステリーは、全ての謎が解けた時に、それまでの人物描写に、大いなる腑に落ちなさを感じ、劇後感がしっくりしなかったのですが、今回の作品は、競泳水着らしい仕上がりとの評判で、楽しみにしていました。
もう、これは、完敗です。本当に、観に行って良かった!!
上野さんが、男性だということが信じられません。
どうして、こんなに、女の子を活写できるの?
自分の女子学生時代や、家族、友人の家庭などに、見覚え、聞き覚えのある台詞や、シーンの連続で、最初から最後まで、ずっと、目に涙が溜まったままでした。
脚本が、実にリアルな女子の生活や心情を表出しているのが、何よりもスゴイことだけれど、これを演じる女優さん達が、また揃いも揃って、皆魅力的!
衣装も、音楽も、セットも演出も、一切の手抜きがないので、そんなに大事件が起こるわけでもない、この芝居が、ジワジワ胸に染み渡り、全然厭きる暇もありません。
如何にも、自然な会話の中に、それぞれの、他者に対する、愛や嫉妬や、苛立ちが沸き立つように匂って、何十年も前に女子学生だった私のような観客にさえ、友人との、愛おしい日々が、昨日の記憶のように、蘇り、目頭が熱くなってばかりでした。
小劇場の精鋭女優さんの揃い踏みで、本当に、同性の私でさえ、大興奮ものでした。皆、とっても、キャラクターと、その人物の成長振りを好演されていましたが、特に、大川さん、梅舟さん、甘粕さんと、誰よりも、歳月を実感させる名演技だった川村さんの好演振りは、長く記憶に残るだろうと思いました。
皆、すごくチャーミング!!ドキドキしました。
上野さん、脚本も、演出も、キャスティングも、とにかくテクニシャンで、感嘆します。
今日から、一気に、競泳水着ファンになったことを告白致します。
あー、一人で観に来ないで、劇部の40年来の親友4人で観たかったと、とても後悔しています。
元気で行こう絶望するな、では失敬。
パラドックス定数
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2010/06/25 (金) ~ 2010/07/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
野木さんの本音の読み解き方次第で…
たぶん、アンケートに書いたことと相当主旨の異なる感想になりそうです。
と、言うのは、【あそこまであんなに秀逸だったのだから、ここをもう少し工夫したら、完璧だったのでは】と思わされた点が、実は、野木さんは、百も承知の上で、あえてそういう手法を使われたのかも…と、帰る道すがら、考えたから。
野木さんて、観客よりも、更に、一枚も二枚も上手なのではないかと感じたのです。
この芝居、その点が、もし私の深読みなら、星4つ、読みが的中なら、星5つでも足りないと思います。
さて、どちらなんでしょう?
とにかく、どちらにしたところで、この作品、脚本、演出、キャスト、スタッフワーク、全てにおいて、ハイクオリティであることは、疑う余地なし。
本当に、スゴイ芝居を見せて頂いたことだけは、間違いありません。
20人の生徒が、実に、生き生きと、キャラクターまで、見事に、描き分けられているのですが、如何せん、すぐには、この人があれをした人とピンと来ない年齢になってしまったので、よりこの作品を深く感じるために、もう2~3回は、見直して、すぐに、これは誰と認識できるまでになりたいなあと思わされました。
良い本は何度も読み返したくなるように、この舞台は、何度も観て理解を深めたくなる魅力に満ちていました。
そういう意味でも、長く愛され読み続けられる、太宰をモチーフにした芝居の本領発揮を証明しているのかもしれません。
何となく、野木版「春のめざめ」と言うか「いまを生きる」と言うか、そんな風情の、青春時代の切ない思いが去来する、胸に痛いながら、どこか懐かしい香りのする作品でした。
1960年のメロス
unks
サイスタジオコモネAスタジオ(東京都)
2010/07/01 (木) ~ 2010/07/11 (日)公演終了
満足度★★★★
懐かしい演劇の香りがしました
とても気の利いた演出でした。
サイスタジオコモネの、稽古場のような舞台空間を、最大限に生かした、演出の工夫に舌を巻くと同時に、こういう劇構成、あまり観た記憶はないのに、何故か、懐かしさを覚えました。
高校演劇部が舞台だからなのか、自分の演劇部時代や、部室の香りを思い出し、胸がキュンとなる瞬間が幾度もありました。
ただ、この作品の舞台となるのが、1960年。私でさえ、まだ小学校に入学したばかりの頃、60年安保が題材になっているので、若い観客は、モデルになった事件や人物を、きっとあまりイメージできないでしょうから、そういう観客に、この作品がどう感じられるのかは、私には想像できないように思いました。
主役の亀田さんは、久しぶりに拝見しましたが、やはりとても役者力のある方だなと、再認識。上田桃子さんも、魅力的でした。
青年座の大家さんが、またいい所で、咬んじゃって、惜しいの何のって。咬まないと、すごく巧い役者さんなのに…。
夏宵漫百鬼夜行
リブレセン 劇団離風霊船
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2010/06/26 (土) ~ 2010/07/04 (日)公演終了
満足度★★★
身贔屓したいところですが…
我が演劇部の後輩、岡本蛍さんの作品なので、身贔屓したいのは、山々ですが、作家への直メールと同内容の感想をやはり正直に書くことにします。
どうなんでしょう?と思ったのが、本音です。
とにかく、長過ぎるのが一番の難点。
後半面白くなるまでに時間が掛かり過ぎた気がします。
後20分、短縮されていたら、もっとスピーデイでスッキリ失踪感が出た気がしました。
ダンサーの表情が素人っぽく、白けたので、あそこはいらなかったと思うし、冒頭の人物紹介もやや冗長で、眠くなりました。
後半、どんどん劇世界に引き込まれ、最後には、大方の登場人物に愛着を感じられただけに、もったいなさを感じました。
役者さんは、全く期待していなかったからか、逆に、皆さん、結構芸達者揃いで、驚きました。
特に、コビヤマ洋一さん、一度でファンになりました。
岡本さんは、幼少時より、歌舞伎などに精通していて、既に高校時代から、歌舞伎の生世話狂言のような時代劇を書くのが得意でしたから、若い劇作家に感じる不安は微塵もないし、歌舞伎の外題めいた題名に見合う、きちんとした、劇世界を構築する力があるので、安心して観てはいられるものの、やはり、この劇構成は、昔ながらの商業演劇的なスタイルなので、今の若い世代の観客には、しっくり来ないだろうなと危惧してしまいました。
明治座の狂言なら、何も文句なく、お客さん、楽しめる演目なんだけれど…。
壁の中の妖精
木山事務所
あうるすぽっと(東京都)
2010/06/30 (水) ~ 2010/07/03 (土)公演終了
満足度★★★★★
珠玉の至芸、ここにあり!!
再演の度に劣化する作品は数多観ましたが、こんなにも、回を重ねるごとに、舞台が完成度を増していく作品て、なかなかありません。
本当に、何もかもが、秀逸で、これをご覧になった方は、きっと全員、春風さんのファンになるに違いないとさえ思います。
史実に基づく作品の、崇高な家族愛が、巧みな舞台構成と、春風さんの信じられないような、素晴らしい表現力で観る者の心を射抜き、本当に、演劇ってこんな素敵な可能性に満ちた活動なんだと、きっと、感涙される方が、たくさんいると思います。
スペイン戦争の知識なんて全くなくても、大丈夫!これは、逆境を、家族一丸となって、乗り越えた、普遍の愛の物語です。
【1人ミュージカル】という、コピーが災いしているのかもしれません。
確かに、春風さんお一人が、語り、歌い、踊るのですが、ミュージカルというイメージとは異質な作品です。このコピー、ミュージカル嫌いの人の足を遠ざけてしまっているようで、以前から、気になります。
究極の一人芝居と言う方が、ピッタリだと思います。とにかく、休憩15分入れて、2時間20分、春風さんお一人で、何役も演じ、台詞に歌にダンスに、淀みなく、命を吹き込まれて行く様子に、心を動かされない方がいらしたら、お目に掛かりたいくらいです。
真実に基づく壮絶な家族の体験劇ですが、決して、深刻にならず、隋所にユーモアが散りばめられているので、常に笑顔で観ていられるのが、またこの作品の素晴らしいところ。
福田善之さんが、きっと丹念に史実を調査し、その長い一家の経験の中から、演劇的エピソードを絶妙にチョイスされた過程が、嬉しく想像できる、秀作中の秀作舞台。上田さんの楽曲も、とても胸に沁みる曲ばかり。
どうか、一人でも多くの、世界中の演劇ファンに、ご覧頂きたいと、切に思います。
こんな素敵な舞台が、そんなに知られていないなんて、本当にもったいなくて、もったいなくて…。
恋する剥製
クロムモリブデン
赤坂RED/THEATER(東京都)
2010/06/22 (火) ~ 2010/07/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
全てのセンスが、超一級の職人舞台!
頭脳明晰な脚本演出家と、胆の据わった演技者と、有能なるスタッフワークが、一丸となり、何日も掛けて周到に準備された、超極上サプライズ・パーティのような、実にエキサイティングな舞台でした。
今年初め、初見で一目惚れした劇団ですが、今回の作品は、更に、それを超えていました。
人間の本質に見事に照準を合わせ、笑いに塗した頃合の弾で、客席の心を的確に射抜く技量が並大抵ではありませんでした。
青木さんの、知識と笑いのセンスが絶妙にブレンドした芝居は、本当に観ていてワクワク嬉しさの連続で、気が付いたら、笑い過ぎで、涙が出ていました。
役者さんも、全員、つわもの揃い。特に、女優陣の、度胸満点の演技は、実に爽快そのもの。これだけ、美人でありながら、迷いのない演技ができるなんて、もう観ていて神々しささえ感じました。
一発芸のお笑いタレントさんに、必修にしてほしいような舞台でした。
スタア
劇団昴
俳優座劇場(東京都)
2010/06/26 (土) ~ 2010/07/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
ぶったまげた!!これが、あの昴??
チラシもろくろく目も通さず、誰の原作かも忘れて、観に行ったので、初めは、「えっ?私、昴を観に来たつもりだったけど、これって、NLTかテアトルエコー?」と思いました。
それから、今度は、「スター」という題名から、単なる芸能界ネタのライト・コメディかと想像しつつ、観ていたら、もう話はどんどんあらぬ世界に突き進み、終いには、チャリT企画か、先日のゴジゲンか?と思うような展開に…。
こういう不条理コメディ的な芝居って、ともすると、観ているのが気恥ずかしくなる時がありますが、昴の役者さんが、それはもう実力者揃いで、24人も登場人物がいるのに、遠目で観ても、役者さんの名前を知らない方でも、誰が誰だかすぐに見分けがつくのがスゴイ!!
スターはスターらしく、マネージャーはマネージャーらしく、雑誌記者は…、酒屋は…、科学者は…、その助手は…、etc.etc.と、
とにかく全員が役に成り切ると言うか、その役の職業人気質を、見事に現出されていて、新劇昴の底力を、思う存分、堪能させて頂きました。
スタインベックや、チェーホフや、いじめ問題を真っ向から扱った芝居等、シリアスで深刻な芝居の劇団だと思い込んでいた自分の不明を恥じました。
いやあ、ホントに御見逸れしました。
劇団昴の実力を知りたい方には、必見作間違いなし!!特に、コメディやってる小劇場の方には是非ともおススメ舞台です。
欅時代に初演で、昴としては初めての上演とか?
こんなスゴイ昴の実体が世に知られないのは、もったいない!
是非、早急に、再演を検討して頂きたいくらいでした。
それにしても、カトケン事務所の芝居でもいつも思うのですが、久世龍之介さんは、コメディの演出が巧いなあ!!
(私は、申し訳ないくらい格安チケットで行ったのですが、もしかしたら、これ、チラシのセンスが悪いからでは?
あのチラシで、こんな素敵な出来栄えのコメディは、到底想像できませんでした。)
ミュージカル「アトム」
わらび座
新宿文化センター(東京都)
2010/06/19 (土) ~ 2010/06/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
これは、多くの子供達に観てほしい!
小細工を弄しない、ストレートなメッセージがダイレクトに伝わる、とても清々しいミュージカルでした。
横内さんが、長年、スーパー歌舞伎などでもテーマとして来た、【復習の連鎖は断ち切ろう!、人間は、必ずとことん話し合えばお互いに理解できる筈だ】
というストレートで温かいメッセージが、何度も涙腺を緩ませました。
ラッキー池田さんの振付による、若いエネルギーに満ちたダンス、甲斐正人さんの美しい音楽が、そのテーマを、脇からがっちりサポートして、近年のオリジナル・ミュージカルの中では、出色の出来栄えではと思います。
主役トキオ役の良知さんも、役柄に合った、清々しい少年の心を表出して下さいましたが、群を抜いて圧倒的だったのは、アズリ役の役者さん(Wキャストですが、今日は柳瀬さん?四季のジーザスをなさった柳瀬さんでしょうか?)
またお1人、気になる役者さんが増えました。
群唱の時の歌詞がもう少し明瞭に聴こえたら、と、大変惜しまれました。
ネバーランド
少年社中
青山円形劇場(東京都)
2010/06/23 (水) ~ 2010/06/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
感動で、心がパンクしそうです
いつもなら、終演後、お茶を飲んだり、買い物したりして、帰宅しますが、今日は即効帰宅しました。
何故って、感動の涙が止まらないし、心が打ち震えて、正気の沙汰じゃないものだから…。
この芝居、脚本がどうのとか、誰の演技がどうのとか、そんな批評的な表現で語ることは不可能です。
ただ間違いなく、言えるのは、本物の演劇の真髄を見たという事実。青山円形劇場には、演劇の神様が間違いなく、降臨されていました。
こんな体験は、間違いなく、生まれて初めてです。
ストーリーも演出も、衣装も、音楽も、ダンスも殺陣も、役者さんの演技も身体能力も…、とにかく何から何までが、信じられないくらいの生の演劇の考え得る全ての要素を満たしていて、これで、感動されない方がいたら、お目に掛かりたいくらいの魅惑に溢れた、疾走感と哀愁の舞台!!
この少年社中という、素晴らしい劇団の存在を教え、この舞台に私の足を向かせて下さる、きっかけを作って下さった、コリッチユーザーの皆様に心より感謝致します。
もし、小劇場の役者さんで、演劇を続けることに、不安を抱えていたり、自信をなくしかけている方がいらしたら、心の処方箋として、今すぐ、青山円形にダッシュされることをおススメします。
できれば、今稽古中の、私が応援する劇団のメンバーに、半日お稽古休んでも、観てもらいたい、本当に、素敵な素敵な舞台でした。
青山円形だから、お客さんの反応もダイレクトに感じ、久しぶりに、舞台と客席が一体となり、演劇の真の姿を構築する瞬間に立ち会えた、この震えるような感動の共感体験は、演劇を代々愛する家系に生まれた私には、つぼが多すぎて、涙を堪えるのが大変でした。一生の宝物に思える嬉しい、経験となりました。
もちろん、生で観てほしいけれど、そうできない、私の家族や友人のために、このDVD,早速、予約することにします。
あー、一時間でも二時間でも、拍手を続けていたかった!!☆10でも足りないくらい。
ドライビング・ミス・デイジー
劇団民藝
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2009/03/11 (水) ~ 2009/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★
やっと観られました
この作品、映画があまりにも名作だったために、その印象を記憶に留めたくて、ずっと、観るのを躊躇っていました。
でも、仲代さんと奈良岡さんの共演は、とても興味ありましたし、あの名作を、舞台ではどう料理しているか気になり、やっと行って、観て来ました。
結果は、やはり、新劇を支えて来たお2人の演技には、卒がなく、きっちり人物の心情を表現されていて、お2人の演技で、この名作を観られたという点に関しては、満足でした。
でも、この作品の重みにそぐわない安っぽいセットが残念でした。
あの2人が、様々な逡巡の末に、共にドライブする車の表現形態が、とてもお粗末に思えて、残念でした。
この舞台を観て、改めて、あの名優2人の映画を無性にまた観たくなりました。映画に比べて、時代背景の描写が浅薄だった気がします。
THE SCARLET PIMPERNEL
宝塚歌劇団
東京宝塚劇場(東京都)
2010/06/04 (金) ~ 2010/07/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
大満足×50、御見逸れしました
初演の評判で、行こうと思った時は既に完売で、今回の再演、霧矢大夢さんのお名前以外、出演者誰一人存じ上げずに、作品に惹かれて、観に行きました。
正直、驚きました。
小学5年生で、宝塚ファンから足を洗った私が、45年振りに、すっかり霧矢さんと、月組ファンになって帰宅しました。
作品が、上出来なのはもちろんのこと、こんなに粒揃いの組を観たのは、一体いつ以来でしょう!
次々、実力の伴わないトップばかりが目に付き、そろそろ宝塚にも翳りが見えたかと思っていましたが、いつの間にか、こんな実力ある組が復活していたとは!心底、驚嘆しました。
霧矢さん、男役にしては、上背は足りないものの、とにかく、声良し、歌良し、演技良しで、申し分ないトップでした。
他の宝ジェンヌも、誰一人、遜色ない実力者揃い。
もし、宝塚歌劇、食わず嫌いの方がいらしたら、今の月組なら、初見チャンスかもしれません。
フツーの生活
44 Produce Unit
紀伊國屋ホール(東京都)
2010/06/18 (金) ~ 2010/06/23 (水)公演終了
沖縄の方の目には触れさせたくない舞台
これは、正真正銘、ただの普通のシバイに過ぎませんでした。
脚本、音響、セット、演技、全てが、芝居そのものでした。(虚構に過ぎないという意味です)
私の子供の頃、外国映画で描かれた、日本紛いの日本のような、戦時中の沖縄の描き方に唖然、慄然!!若い小劇場作品かと、目を疑いました。
生半可な知識しかない脚本家が、先人の名作家が書いた珠玉の台詞を、アレンジしてランダムに繋ぎ合わせ、まことしやかに舞台に乗せた、そんな浅薄な芝居としか、私の目には映りませんでした。
途中退場された男性がいましたが、私と同じ思いで、居た堪れなかったのではないかと、思いました。
ただ、知らずに芝居を観に行っただけの私でさえ、沖縄の方々に後ろめたさを感じてしまう、そんな絵空事の空疎な芝居でした。
これは、沖縄の抱えている重い歴史に対する冒涜とさえ、私には感じられました。
当パンを読むと、これは劇場側から持ち出された企画で、プロデューサーも作者も、ただの頼まれ仕事だった模様。製作側の、必然から生まれた公演でない、間に合わせ舞台なら、さもありなんと納得できる凡作。
「フツーの生活」という、この題名、戦時中の普通の生活を描くのではなく、どうやら、普通の生活をしている、現代製作陣が、戦時中の沖縄の実情なんて、度外視して、普通に作った、シ・バ・イでした。
今年、観劇したことを後悔した、最初の舞台となりました。
父、不在-15日(木)15時の回完売(当日券若干出します)19日(土)14時の回残席残り僅か-
play unit-fullfull
シアター711(東京都)
2010/06/17 (木) ~ 2010/06/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
ヒロセ姉妹の才気に益々惚れ込みました
前回公演で、一目でファンになった劇団ですが、今回の公演は更に進化して素敵でした。
まず、舞台設定が実に秀逸。始まる前は、こんな庭だけのシーンで、芝居が成り立つのかしら?
【また、私が嫌いな、場所は、パブリック・スペースで、全員が、その場所に出たり入ったり、人目を憚る内容の台詞や、行動を、全然人目を憚らずに、繰り広げられる芝居】なのではと、内心心配でしたが、全く取り越し苦労でした。
スゴイ!!ヒロセさんの才気。お見事でした。今回はキャストも全員、文句ない演技でしたし、これは、益々楽しみな劇団が、またひとつ増えたと、嬉しくなりました。
とても、気に入って、劇団員募集の文字に、本気で目が行ってしまいましたが、年齢制限に引っかかりました。残念!(笑)
いつも、腰痛持ちの私は、自由席の時には、開場前には赴き、一番座りやすい席を確保するのが常ですが、今日は、開場時間に間に合わず、本当なら、慌てるところでしたが、みささんの事前情報で、この劇団は、チケプレの招待客より、正規に代金を支払ったお客様を優先して下さるらしいと知っていたので、慌てずに劇場に向かうことができました。開場から10分過ぎていましたが、とても座りやすいソファのような椅子がまだ空いていてほっとしました。
後から、入っていらした方は、普通のパイプ椅子に座られたので、もし、関係者席や招待席のお客様が先に入場していたら、私は、あの座りやすそうな椅子を恨めしげに横目で見て、逆に、終演後、主宰に、「どうして、お金を払った客が、あんな座りにくい椅子で、無料の人が、良い席になるんでしょう?」と、抗議に行ったかもしれません。こういう、お客様第一の姿勢を取って下さる、主宰の適切な判断にも、嬉しくなりました。
よく、観やすい良いお席が、関係者席の紙が張ってあって、早く行っても座れずにいて、その内、その関係者とやらが来場せず、結局、後から入った当日券の方に座らせる劇団が多い中、毅然とした態度で、当然の配慮をなさったらしい、ヒロセさんの気概に、心から、お礼を申し上げたくなりました。
移動
劇団桃唄309
座・高円寺1(東京都)
2010/06/16 (水) ~ 2010/06/20 (日)公演終了
満足度★★★
意外なことに
別役作品なのに、物凄く直球ストレートな芝居で、全然不条理っぽくありませんでした。
電柱はいつもながら出て来ますが、その電柱への思いもストレートに語られ、どこも不可解な部分がないのが、意外でした。
へえ、別役さんてこういう芝居も書いてたんだ!とビックリしたのが、一番の感想。
わかりやすいので、逆についウトウトしてしまいましたが、決してつまらないわけではなく、全体的には面白く拝見できました。
ただ、あまりにも舞台空間にスペースがあって、劇世界に入れ込めない状況があり、残念でした。文学座の「わが町」同様、劇場の使い方にもっと工夫があったらなと思いました。
もう少し、台詞に緩急をつけるとかしないと、ストーリー自体にも起伏が感じられない気もしました。
でも、役者さんの演技は、前回の桃唄309の公演より、ずっと馴染み易く、最後まで、好意的に観ることができました。特に、脇役の皆さんが素敵な演技をされていたように思います。
組曲「空想」
空想組曲
OFF OFFシアター(東京都)
2010/06/16 (水) ~ 2010/06/22 (火)公演終了
満足度★★★★★
できれば全公演観たくなります
前回の公演で、新参ファンになったばかりですが、この公演を観て、早くも私の小劇場お気に入り劇団のベスト5にランクイン!!
どうして、こんなに全てにおいてセンス抜群なのかと、ただもう嬉しく、この年齢になって、また新たな恋心を感じられる劇団に出会えて幸せでした。
脚本、構成、演出、出演者、舞台セットに照明、音楽…この舞台を形成する全てが、秀逸極まりないトータル感で、コーデイネートされたとても素敵な作品でした。まるで、上等な翻訳物の小品集の趣。ほさかさんの才能と知的センスに完全ノックアウトされました。
初日の日替わり短編がとても面白かったので、これだけでも全日通って、制覇したくなってしまいます。今日のゲスト、狩野和馬さんの演技もとても素晴らしく、一目で好きな役者さんになりました。
キャストの皆さん、大好演の上、目の保養になるような美男、美女ばかり。おばさんでも、ずっとワクワクして見入ってしまいました。
愛死に【ご来場ありがとうございました。】
FUKAIPRODUCE羽衣
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2010/06/12 (土) ~ 2010/06/22 (火)公演終了
満足度★★
「あのひとたちのリサイタル」の方がずっと好き
「あのひとたちのリサイタル」はその名の通り、様々な人々の日常がスタイリッシュに、詩的に、ユーモラスに、表現されていて大好きな作品でした。
ですが、今回は「愛死に」…題名から、男女の情交の際の「あー、死ぬう」っていうのを連想していた私は、もしやという不安を抱きつつ、芸劇に向かいました。
最初は、やはりとってもスタイリッシュ、斬新、魅せる…、あー杞憂だったなと安心しかかったら、後がいけませんでした。
男性客は結構受けていたけれど、女性客は引いていた人多い気がしました。
何だか、あまりにもそればかりがこれでもかこれでもかと連射され、だんだん気持ちが冷めて行ってしまいました。女性陣は、皆さん好演だったけれど…
ちょっとくど過ぎな印象。歌も、歌詞がわからず、欲求不満が募りました。
新感線や、井上芝居の蜷川演出舞台のように、歌詞を字幕で見せたり、歌詞カードが配られたりすればよかったけれど。
あ、でも前回公演は、誰が誰やら解り辛かった配役が、今回は当パンにキャスト表が配置図的に載っていて、性別まで記されていたのは親切でした。
モリー先生との火曜日
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2010/06/03 (木) ~ 2010/06/15 (火)公演終了
満足度★★★★★
賞賛に値する真の感動作
かなり以前、「週間ブックレビュー」で紹介された時から、ずっと気になっていた作品の舞台化。もっと、朗読劇に近い雰囲気なのかと想像していましたが、さにあらず。私が過去に観た2人芝居の中でも、最高作の一つに数えられる、秀作舞台でした。
とにかくまず驚いたのは、高橋さんの役者としての進化の目覚しさ。過去にかなり高橋さんの舞台は観ていますが、こんなに硬くない彼の演技は初めて観たように思います。加藤さんも、ここ数年、幾度か台詞を咬むことが多々あったのに、この舞台では、そんな気配は微塵もなく、活舌も良く、本当に、お2人の演技表現が過剰にならず、シンプルだったので、自然に、このストーリー世界の住人になることができました。この年齢になっても尚、演技者としての進化を続けているお2人の表現者に、まずは、心底敬服の念を抱きました。
高瀬さんの演出も、作品の良さ、誠実さを損ねることのない、程の良さ。決して、過剰にならず、感動の押し売りもせず、ジワジワと胸に浸透する秀逸な感動の漣が心地良く感じられました。
モーリー先生の人柄と、その師に魅了されて行く生徒の心の交流が、実に自然に描かれて、間違っても、お涙頂戴ものの作りでないことが、何より嬉しく感じました。
良い作品があり、それを見事具現化した、キャスト、スタッフの、並々ならぬ力量の結集作。
モーリー先生の住居は、彼の心の内のようにシンプルで、清々しく、セット、照明、音楽、場転のスタッフの動き、全ての舞台表現が、この作品の良さを阻害することなく、テーマと一体化していました。
最後のカーテンコールの、観客から発せられる、本物の感動の拍手が、とても耳に心地良く、心の奥底までずっと響いていました。