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8割世界番外公演『欲の整理術』×『ガハハで顎を痛めた日』

8割世界番外公演『欲の整理術』×『ガハハで顎を痛めた日』

8割世界【19日20日、愛媛公演!!】

ART THEATER かもめ座(東京都)

2010/07/07 (水) ~ 2010/07/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

「ガハハ~」2バージョン目
養成所時代からの大の宮澤ちさえさんファンとしては、彼女の2役はどちらも観たいので、今日も行って来ました。

まず、朝に、りいちろさんのレビューを拝読してから劇場に出向いたせいか、昨日はかなり、脚本にも構成にも、不満が多かった「欲の整理術」を、もう一度、新鮮な気持ちで観る事ができ、昨日の☆2が、今日は☆4になっていました。

「ガハハ~」は、今日は、二宮・嶋木チームが先生、宮澤・武井チームが生徒でしたが、キャストが交代するだけで、こんなに、舞台の雰囲気が変わるのかとビックリしました。どちらも、甲乙つけ難く、魅力的でしたが、今日の二宮さんの先生は、宮澤さんに比べ、ドライな感じを受けました。
何か問題に遭遇した時は、二宮さんの方が、無難に乗り越えて行けそうな感じ。(笑)
武井さんは、両方の役とも、大変魅力的に演じていらして、この女優さんの実力に感銘を受けました。
宮澤さんは、生徒も魅力的ながら、個人的見解では、先生の方が好みでした。

両バージョン拝見し、8割世界の底力は、かなり実証できたのではないかと感じました。
それだけに、今後の番外公演の演目は、既成の戯曲から選りすぐったものにトライされた方が、劇団員の実力発揮には効力があるのではと、改めて思いました。
たとえば、舘さんの「とまらずの国」を、8割世界で観てみたい気もします。

ネタバレBOX

昨日にも増して、体育教師役の宇高さんが魅力的でした。70代の母も、50代の私も、即効ファンになってしまいました。
雄太さんのキャステイングの才にはいつも感服します。
8割世界番外公演『欲の整理術』×『ガハハで顎を痛めた日』

8割世界番外公演『欲の整理術』×『ガハハで顎を痛めた日』

8割世界【19日20日、愛媛公演!!】

ART THEATER かもめ座(東京都)

2010/07/07 (水) ~ 2010/07/11 (日)公演終了

満足度★★★★

明暗を分けた気がする2作の出来栄え
コメディの劇団が、コメディでない公演を打つという企画自体には大いに賛同し、試みの結果としてのみ観れば、大変意義のある公演になっていたと思うのですが、「欲の整理術」の方は、初演出の演出家には、如何にも任の重い作品でした。

今回は、舘さんに新作書下ろしを2作も依頼し、キャスト交渉の後に、台本が完成したようですが、こういった番外公演は、それでは危険性が伴う気もして、今後、この番外公演を続けるのなら、書き下ろしより、既製の作品の中から、作品選びをした方がリスクが少ないのではと感じました。

一方、「ガハハで顎を痛めた日」の方は、結果オーライで、かなり高レベルの作品に仕上がっていました。

「欲~」が、☆2、「ガハハ~」が、☆4、+この公演の企画と意欲に敬意を表し、トータルでは、☆4と言ったところでしょうか。
ただ、この公演を、本公演のコメディを更に進化させるための布石として捉えれば、この経験は、劇団員に実力を備えさせえる効力は充分あると思うので、その視点に立って評価するなら、☆5でも良いかなとも感じました。

座った席が、空調寄りだったせいか、ひそひそ声の台詞が不明瞭で、所々、聞き取れない箇所があったのは、残念でした。特に、「欲の~」の方は、終始、台詞が明瞭でない方が数人いて、余計、内容がわかり辛くなった気がします。

あ、題名の意味するところは、全く解りかねました。(笑)

心配したかもめ座の椅子、高齢者にも親切な形にして頂き、心からお礼申し上げます。

ネタバレBOX

欲の整理術」…脚本も、演出も、どうも中途半端な印象でした。キャストは、相当掴みどころがなく、役作りに苦労されたのではと感じました。演出が、本の性質を読み違えた気もします。もっと、勇気を持って居直って、シュールさで、徹頭徹尾押し切っていたら、もっと、【面白い気がする】作品になったのかもしれません。シュールで、突き進めたら、あの中途半端な印象のラストも、もっと違った意味合いに成り得た気がします。
この作品は、もっと大胆な発想と切り口で描くべき作品でした。人物に、不思議さがもっと必要でした。カッコ役とカントク役は、逆のキャスティングの方が、成功した気がします。れんたろうの存在が全く謎でした。
外の世界を支配した豚の声を、演出家自ら担当していましたが、声と台詞回しに、実存感があり過ぎました。あれは、外の得体の知れない存在を想起させるためには、もっと、意味のない雰囲気の言い回しにすべきだったように思います。しゃべっている内容も、センテンスがおかしいのだから、言い方もそれに準じる方が適切だったのではと思いました。
途中の音楽の挿入も、違和感があり、むしろ逆効果でした。
小道具も、紙で表すのなら、ビデオカメラも、実体のないモノに統一した方が良かったのでは?

「ガハハで顎を痛めた日」…こちらは、とても良く書けた脚本と、演出の目の確かさで、上質な人間ドラマになっていました。劇団員の宮澤さんが、今回も素敵な好演。客演の、宇高さん、武井さん、二宮さんも、それぞれ、任に合った役を好演されましたが、村松さんの演技には、一番心を鷲づかみにされました。神原さんと、今日は女子中学生を演じた嶋木さんの演技は、安心して観ていられました。
ラストの落とし方も、とても自分好み。ただ、残念だったのは、面白そうだった女子中学生のダベリが、半分も聞き取れなかった点。これが、もっと明瞭に聴こえて来たら、この作品は、☆5つだったと思います。
ひめゆり

ひめゆり

ミュージカル座

THEATRE1010(東京都)

2010/07/08 (木) ~ 2010/07/13 (火)公演終了

満足度★★★★★

これこそ、戦争を語り継ぐべき名作舞台
何度観ても、胸が潰れる思いがします。何度も、同じ場面で、胸が苦しくなります。そして、いつも、ラストシーンで、心に、希望が湧き上がり、人間の逞しさと生きる力に、静謐な感動で、心が満ち溢れ、勇気が湧いて来ます。

もう、5回ぐらい観た舞台ですが、観る度に、これは、長く上演され続けて、未来の子供達にまで、戦争の愚かさや悲惨さや逆境を生き抜く人間の素晴らしさを語り継ぐ使命を全うしてほしい作品だと、強く感じます。

主役のキミちゃんは、亡き本田美奈子さん、島田歌穂さんの名演を拝見しましたが、今回の知念里奈さんも、素晴らしかったです。

客演のミュージカル俳優さんだけでなく、ミュージカル座の若い皆さんが、再演を重ねる毎に、実力ある方々ばかりになって、この劇団の進化にも目を見張りました。

もし、ミュージカル座、食わず嫌いの方がいらしたら、是非、この作品だけでも、一度、騙されたと思って、ご覧になってみて頂きたいと、思うくらいです。

ネタバレBOX

いつも感心するのですが、冒頭から、短いシーンで、沖縄に迫り来る戦禍の嵐を的確に、観る者に伝える演出が見事です。
ほとんど会話のない、ミュージカルで、歌で、登場人物の思いを表現しながら、沖縄戦の様々な事実や悲劇が、たくさんの情報量で、観る者の心に響きます。戦争に教え子を引き込んでしまった教師の苦悩と後悔までもが、きちんと描かれていて、感心します。
説明台詞ではなく、各登場人物の心情表現の中で、それらが表出されて行くので、沖縄の歴史を知らない人間にも、それらの悲しい事実が、実体験の如く、胸に響いて来ます。
この作品を書くに当たって、作者のハマナカさんがどれだけ、歴史を調べられたかは存じませんが、相当の志を持って、取り組まれたことは、この舞台を観れば、感じられます。
知り合いの多いらしい客席の誰もが、息を呑んで見入っているのが、わかりました。
こういう作品こそ、多くの学校などで、是非上演してほしいと痛切に思いました。

ただ、いつも腑に落ちないことが一つだけ。檜山上等兵が、どうして、病院にいるのかが、疑問です。とても元気そうだし、別に怪我とかもしていないように見えるので…。

今回のキャストは、皆さん、ほぼ良かったのですが、婦長役だけは、やや不満がありました。元在籍劇団の癖がまだ抜けず、お一人だけ、歌に感情がこもらず、芝居染みてしまって、残念でした。以前の、鈴木ほのかさんや土居裕子さんの名演が記憶に残っているので、これだけは、とても惜しいと感じられてなりませんでした。
女ともだち

女ともだち

劇団競泳水着

「劇」小劇場(東京都)

2010/06/30 (水) ~ 2010/07/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

心の琴線に触れまくりで、終始ウルウル
前回のミステリーは、全ての謎が解けた時に、それまでの人物描写に、大いなる腑に落ちなさを感じ、劇後感がしっくりしなかったのですが、今回の作品は、競泳水着らしい仕上がりとの評判で、楽しみにしていました。

もう、これは、完敗です。本当に、観に行って良かった!!
上野さんが、男性だということが信じられません。
どうして、こんなに、女の子を活写できるの?

自分の女子学生時代や、家族、友人の家庭などに、見覚え、聞き覚えのある台詞や、シーンの連続で、最初から最後まで、ずっと、目に涙が溜まったままでした。

脚本が、実にリアルな女子の生活や心情を表出しているのが、何よりもスゴイことだけれど、これを演じる女優さん達が、また揃いも揃って、皆魅力的!
衣装も、音楽も、セットも演出も、一切の手抜きがないので、そんなに大事件が起こるわけでもない、この芝居が、ジワジワ胸に染み渡り、全然厭きる暇もありません。
如何にも、自然な会話の中に、それぞれの、他者に対する、愛や嫉妬や、苛立ちが沸き立つように匂って、何十年も前に女子学生だった私のような観客にさえ、友人との、愛おしい日々が、昨日の記憶のように、蘇り、目頭が熱くなってばかりでした。

小劇場の精鋭女優さんの揃い踏みで、本当に、同性の私でさえ、大興奮ものでした。皆、とっても、キャラクターと、その人物の成長振りを好演されていましたが、特に、大川さん、梅舟さん、甘粕さんと、誰よりも、歳月を実感させる名演技だった川村さんの好演振りは、長く記憶に残るだろうと思いました。
皆、すごくチャーミング!!ドキドキしました。

上野さん、脚本も、演出も、キャスティングも、とにかくテクニシャンで、感嘆します。

今日から、一気に、競泳水着ファンになったことを告白致します。

あー、一人で観に来ないで、劇部の40年来の親友4人で観たかったと、とても後悔しています。

ネタバレBOX

登場人物の、心の襞が、全員、とても丁寧に書かれているので、誰一人、脇役と言う感じがしません。
よく考えてみたら、取り立てて、何がどうしたという程の事件が起こるわけでもないのに、構成が巧みなので、観客の興味を次に引っ張り、一度も退屈だと感じる場面がありませんでした。
特に、笑いを取ることが目的の台詞やシーンはなくても、会場からは、常にクスクス笑いが聞こえました。
私も、何度も笑いました。きっと、うん、あるあると、思い当たるリアルな人物活写が、自然な笑いを誘発したのでしょう。

私は、小学校時代から、大人になるまで、親しかった友人と疎遠になった経験は一度もないので、わかりませんが、もしも、そういう存在の友達がいる人なら、この芝居を観た後に、絶対、その昔の友達に連絡してみたくなるのではないでしょうか?
とにかく、登場人物全員、とても愛おしく感じる芝居でした。

美月の生徒が妊娠を打ち明けた後、学生の彼は逃げてしまうのかなと心配になりましたが、無事結婚したようで、ほっと一息。
目立たないけれど、八重子役の甘粕さんも、美月とすみれに抱く複雑な女心を、さり気ない演技で、命あるものにして、凄く魅力的な女優さんと感心しました。

でも、ダントツ、圧巻なのは、唱世役の川村さん。彼女は、私が今まで観た小劇場の女優さんの中で、最高です。たった2時間弱の芝居の中で、こんなにも、見事に10年の人生模様を表出できる演技力があるなんて、奇跡的だと思いました。私が、彼女と同世代の男子なら、絶対追っかけファンになってしまいます。
元気で行こう絶望するな、では失敬。

元気で行こう絶望するな、では失敬。

パラドックス定数

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2010/06/25 (金) ~ 2010/07/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

野木さんの本音の読み解き方次第で…
たぶん、アンケートに書いたことと相当主旨の異なる感想になりそうです。
と、言うのは、【あそこまであんなに秀逸だったのだから、ここをもう少し工夫したら、完璧だったのでは】と思わされた点が、実は、野木さんは、百も承知の上で、あえてそういう手法を使われたのかも…と、帰る道すがら、考えたから。
野木さんて、観客よりも、更に、一枚も二枚も上手なのではないかと感じたのです。

この芝居、その点が、もし私の深読みなら、星4つ、読みが的中なら、星5つでも足りないと思います。

さて、どちらなんでしょう?

とにかく、どちらにしたところで、この作品、脚本、演出、キャスト、スタッフワーク、全てにおいて、ハイクオリティであることは、疑う余地なし。
本当に、スゴイ芝居を見せて頂いたことだけは、間違いありません。

20人の生徒が、実に、生き生きと、キャラクターまで、見事に、描き分けられているのですが、如何せん、すぐには、この人があれをした人とピンと来ない年齢になってしまったので、よりこの作品を深く感じるために、もう2~3回は、見直して、すぐに、これは誰と認識できるまでになりたいなあと思わされました。
良い本は何度も読み返したくなるように、この舞台は、何度も観て理解を深めたくなる魅力に満ちていました。
そういう意味でも、長く愛され読み続けられる、太宰をモチーフにした芝居の本領発揮を証明しているのかもしれません。

何となく、野木版「春のめざめ」と言うか「いまを生きる」と言うか、そんな風情の、青春時代の切ない思いが去来する、胸に痛いながら、どこか懐かしい香りのする作品でした。

ネタバレBOX

20人の高校生がせり上がりで、勢揃いで登場する幕開けから、教室の並びが、前、横、後ろと瞬時に変化して行く様まで、目に鮮やかな演出で、冒頭から、演劇の醍醐味を思う存分、感じさせられ、ワクワクします。
その全てが演劇的様式に満ち溢れています。

20人の高校生の会話は鮮明に聞こえたり、逆に、よく聞こえなかったり、と、これも、現実の教室の風景そのもの。
20人全員の思いや性格が、少ない会話や行動描写で、的確に露呈されて行く、手法も鮮やかなら、織り込まれるエピソードやストーリーの流れも、観る人の心の襞にジワジワ食い込み、皆、どこかに感情移入して、その場の生徒の誰かに、自分を投影してしまいそう。
こうして、高校時代は、演劇であることを忘れて、見入っている内、今度は、登場人物は、18年後の36歳になって、それぞれの、それまでの人生を漂わせながら、再登場します。
このあたりから、だんだん腑に落ちない思いが湧き上がって来たのです。
同窓会に出席する服装が皆一律なこと。終幕には、作者の押しがやや強すぎないかと、感じ、そのため、野木さんならではの作劇手法が色あせ、何だか、これじゃ普通のありきたりな芝居っぽくないか?と、そんな思いが浮上して来ました。

それで、アンケートには、もう少し出し惜しみぐらいで、ラストに持って行った方が、より、心に深く刻まれる芝居になった気がするということを書きました。

だけど、岐路の道すがら、ふと思ったのです。待てよ、あんなに周到で、頭脳明晰な舞台作品を生み出す方が、そんなヘマをするだろうかと…。
そうしたら、「東京裁判」の、あの当時にあり得ない眼鏡と、靴を思い出しました。あの舞台を観た時も、これだけ、徹頭徹尾、当時の資料を調べ尽くしてこんな高レベルの作品を書く方が、そんな考証ミスをされるだろうかと、腑に落ちなかったのを、思い出したのです。

あっ、これって、もしや、野木さんは、「これはフィクションですよ、演劇ですよ、現実ではないんですよ」、と、あえて観客に提示しているのではと思いました。
そのヒントとして、この舞台は、劇作家と役者をやっている2人の登場人物の創作なのだと匂わせる台詞があり、「学ランだと、黒ずくめで、舞台向きでない」という、演劇の衣装だからという見解を、台詞に織り込んだのかな?と。

そうだとしたら、この芝居に登場する男子高校生は全員が太宰だというのも、これが芝居だからなんだと納得します。
だって、普通の男性って、そんなに皆太宰のようではないもの。太宰のような人は、作家になったり、役者になったりするけれど、大方の一般男性は、高校時代の友人との交流を、いつまでも覚えていたりしないし、苛めたことすら忘れてしまう、もしくは、最初からそんな自覚さえない人がほとんどではないかと思うのです。男性って、とかく、加害者意識は希薄で、被害者意識が強い人、多くありません?
この20人の登場人物は、一見リアルな男性に見えますが、よくよく考えると、野木さんによって、生み出された精巧な舞台上のキャラクターなんだと、合点が行った気がするのです。

「真夏の夜の夢」のように、芝居が終わる時、「これは夢です」と提示されて終幕となるように、野木さんは、あえて、【この舞台は現実ではなく、芝居です。だから、現実社会は、なかなかこの芝居のように、スッキリは終われないけれど、私達は、こうして、演劇という、仮想世界で、お客さんに少しでも、元気を分けて差し上げますよ。辛い時は、芝居を観て、現実の憂さを忘れて、また明日から元気に過ごして下さいね】という、メッセージだったのではと、思いました。

もし、この私の読みが思い過ごしでないとしたら、あの如何にも蛇足じみて感じられた、死んだ高校生の長い叫びも、野木さんのメッセージの代弁と思えて、一挙に腑に落ちるように感じたのでした。
だから、たぶん、この芝居、星5つでも足りない方だと思っています。

だって、あの20人の息の合ったパフォーマンスは、心底気持ち良くて、明日への勇気と元気が湧き上がり、その瞬間だけでも、間違いなく、痛烈に心を刺激してくれましたから。これは、演劇作品として、大成功!!たとえ、超現実的では、なかったとしても…。
1960年のメロス

1960年のメロス

unks

サイスタジオコモネAスタジオ(東京都)

2010/07/01 (木) ~ 2010/07/11 (日)公演終了

満足度★★★★

懐かしい演劇の香りがしました
とても気の利いた演出でした。
サイスタジオコモネの、稽古場のような舞台空間を、最大限に生かした、演出の工夫に舌を巻くと同時に、こういう劇構成、あまり観た記憶はないのに、何故か、懐かしさを覚えました。
高校演劇部が舞台だからなのか、自分の演劇部時代や、部室の香りを思い出し、胸がキュンとなる瞬間が幾度もありました。

ただ、この作品の舞台となるのが、1960年。私でさえ、まだ小学校に入学したばかりの頃、60年安保が題材になっているので、若い観客は、モデルになった事件や人物を、きっとあまりイメージできないでしょうから、そういう観客に、この作品がどう感じられるのかは、私には想像できないように思いました。

主役の亀田さんは、久しぶりに拝見しましたが、やはりとても役者力のある方だなと、再認識。上田桃子さんも、魅力的でした。
青年座の大家さんが、またいい所で、咬んじゃって、惜しいの何のって。咬まないと、すごく巧い役者さんなのに…。

ネタバレBOX

金内喜久夫さん演じる赤木俊は、私の幼少時の不思議なおじさん、赤尾敏さんがモデルでしょうが、とても、お上手なので、一気に当時のニュースや選挙演説で観た、光景が、まざまざと蘇りました。
浅沼委員長を刺した少年のことは、不勉強ですが、この芝居、かなり、史実に近いのか、興味を感じたので、調べてみようと思いました。

「走れメロス」の芝居と、川瀬達の現実の体験が、微妙に交錯してストーリーが進むので、描かれている世界が、現実なのか、妄想なのか、イマイチ理解できないものの、わからない芝居を観たという感覚はなくて、肌で楽しめた気がする類の劇後感でした。
最後の場面で、亀田さんが、介護施設のヘルパーさんとして登場するのですが、今までの右翼青年とは全く趣の違う雰囲気で、見事、ヘルパーさんらしい風情なのに、甚く感心しました。それだけに、受ける細貝さんの演技に不足が見え、二人の役者さんの力量の違いが目立ってしまったのが、惜しいなと感じました。
夏宵漫百鬼夜行

夏宵漫百鬼夜行

リブレセン 劇団離風霊船

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2010/06/26 (土) ~ 2010/07/04 (日)公演終了

満足度★★★

身贔屓したいところですが…
我が演劇部の後輩、岡本蛍さんの作品なので、身贔屓したいのは、山々ですが、作家への直メールと同内容の感想をやはり正直に書くことにします。

どうなんでしょう?と思ったのが、本音です。
とにかく、長過ぎるのが一番の難点。
後半面白くなるまでに時間が掛かり過ぎた気がします。
後20分、短縮されていたら、もっとスピーデイでスッキリ失踪感が出た気がしました。
ダンサーの表情が素人っぽく、白けたので、あそこはいらなかったと思うし、冒頭の人物紹介もやや冗長で、眠くなりました。
後半、どんどん劇世界に引き込まれ、最後には、大方の登場人物に愛着を感じられただけに、もったいなさを感じました。

役者さんは、全く期待していなかったからか、逆に、皆さん、結構芸達者揃いで、驚きました。
特に、コビヤマ洋一さん、一度でファンになりました。

岡本さんは、幼少時より、歌舞伎などに精通していて、既に高校時代から、歌舞伎の生世話狂言のような時代劇を書くのが得意でしたから、若い劇作家に感じる不安は微塵もないし、歌舞伎の外題めいた題名に見合う、きちんとした、劇世界を構築する力があるので、安心して観てはいられるものの、やはり、この劇構成は、昔ながらの商業演劇的なスタイルなので、今の若い世代の観客には、しっくり来ないだろうなと危惧してしまいました。
明治座の狂言なら、何も文句なく、お客さん、楽しめる演目なんだけれど…。

ネタバレBOX

らっぱ屋の大草さん演じる、番町皿屋敷のお菊が、信川さん演じる、花梨に、幽霊修行の猛特訓をする場面が、とにかく愉快でした。
ただ、これ、若い観客は、お菊って、どこの何の幽霊か、わからないのでは?一般には、四谷怪談程、知られていないから…。話の中に、牡丹燈篭のお露さんも出て来るけれど、これも同様。当パンに、語句解説とか付けると、親切なのかも。

阿片に狂って、通り魔になる男のエピソードが、話の本筋と逸れていたので、この人物を登場させなければ、もっとストーリーが、まとまって、時間も短縮できたのではと思います。

最後の場面も、終わるまでに、やや引っ張り過ぎの感があり、残念でした。
壁の中の妖精

壁の中の妖精

木山事務所

あうるすぽっと(東京都)

2010/06/30 (水) ~ 2010/07/03 (土)公演終了

満足度★★★★★

珠玉の至芸、ここにあり!!
再演の度に劣化する作品は数多観ましたが、こんなにも、回を重ねるごとに、舞台が完成度を増していく作品て、なかなかありません。
本当に、何もかもが、秀逸で、これをご覧になった方は、きっと全員、春風さんのファンになるに違いないとさえ思います。
史実に基づく作品の、崇高な家族愛が、巧みな舞台構成と、春風さんの信じられないような、素晴らしい表現力で観る者の心を射抜き、本当に、演劇ってこんな素敵な可能性に満ちた活動なんだと、きっと、感涙される方が、たくさんいると思います。

スペイン戦争の知識なんて全くなくても、大丈夫!これは、逆境を、家族一丸となって、乗り越えた、普遍の愛の物語です。

【1人ミュージカル】という、コピーが災いしているのかもしれません。
確かに、春風さんお一人が、語り、歌い、踊るのですが、ミュージカルというイメージとは異質な作品です。このコピー、ミュージカル嫌いの人の足を遠ざけてしまっているようで、以前から、気になります。
究極の一人芝居と言う方が、ピッタリだと思います。とにかく、休憩15分入れて、2時間20分、春風さんお一人で、何役も演じ、台詞に歌にダンスに、淀みなく、命を吹き込まれて行く様子に、心を動かされない方がいらしたら、お目に掛かりたいくらいです。
真実に基づく壮絶な家族の体験劇ですが、決して、深刻にならず、隋所にユーモアが散りばめられているので、常に笑顔で観ていられるのが、またこの作品の素晴らしいところ。

福田善之さんが、きっと丹念に史実を調査し、その長い一家の経験の中から、演劇的エピソードを絶妙にチョイスされた過程が、嬉しく想像できる、秀作中の秀作舞台。上田さんの楽曲も、とても胸に沁みる曲ばかり。

どうか、一人でも多くの、世界中の演劇ファンに、ご覧頂きたいと、切に思います。
こんな素敵な舞台が、そんなに知られていないなんて、本当にもったいなくて、もったいなくて…。

ネタバレBOX

一人舞台と言っても、一人のキャラクターが、語り続ける芝居ではありません。
幼少時のマリア、マリアの母親、少女のマリア、成熟したマリア、老年期の母親、母親になったマリア…と、主体で語る人物が場面ごとに変化し、春風さんは、その役の衣装に身を包み、他の役は、声色等で、演じ分けて行きます。

まだ宝塚退団直後は、あの劇団特有の大袈裟な演技が、ともすると過剰に見える部分があり、特に、冒頭の幼女の場面は、わざとらしい感じがありましたが、最近は、春風さんの演技が、朗読に近くなり、男役の声も変に作り過ぎないので、余計、真実の物語の気高さが、ストレートに耳に入るようになりました。

もう7回ぐらい、観ましたが、いつも驚くのは、幼いマリアがベットに眠って、何秒もしない内に、母親の衣装の春風さんが、客席ドアから登場すること!
最初観た時は、「あれ、一人芝居と思ったけど、他にも出演者いたんだ!」と、すっかり勘違いしました。歌舞伎の早替わり以上の驚きです。

他の場面転換も、実にお見事で、一人芝居の陥りやすい単調さを回避する技術が素晴らしく、いつも感心します。
語り部を場面ごとに替える手法も巧みなら、間に、妖精が語る御伽噺を、影絵で見せ、語ったり、場面も状況も変化に富むので、全く厭きることがありません。

いつも、客席を巻き込んでの、楽しい卵売りのシーンは、客席の嬉しげな笑顔を見るだけでも、幸せな充足感を感じてしまいます。

劇中で、何度も歌われる「生きているって素晴らしい」という、歌詞そのままに、この舞台を観ると、辛くても、生きて行こうと思えます。
社会主義の夫を30年も、愛情に満ちて、匿い続けた崇高な家族愛の物語りですが、どんな民族にも、どんな教義の方にも、万人に理解されるであろう、究極の愛の物語だと確信します。
恋する剥製

恋する剥製

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/06/22 (火) ~ 2010/07/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

全てのセンスが、超一級の職人舞台!
頭脳明晰な脚本演出家と、胆の据わった演技者と、有能なるスタッフワークが、一丸となり、何日も掛けて周到に準備された、超極上サプライズ・パーティのような、実にエキサイティングな舞台でした。

今年初め、初見で一目惚れした劇団ですが、今回の作品は、更に、それを超えていました。

人間の本質に見事に照準を合わせ、笑いに塗した頃合の弾で、客席の心を的確に射抜く技量が並大抵ではありませんでした。
青木さんの、知識と笑いのセンスが絶妙にブレンドした芝居は、本当に観ていてワクワク嬉しさの連続で、気が付いたら、笑い過ぎで、涙が出ていました。
役者さんも、全員、つわもの揃い。特に、女優陣の、度胸満点の演技は、実に爽快そのもの。これだけ、美人でありながら、迷いのない演技ができるなんて、もう観ていて神々しささえ感じました。

一発芸のお笑いタレントさんに、必修にしてほしいような舞台でした。

ネタバレBOX

お笑いの演劇を書く場合、そんなに、世間常識や、社会知識がなくても、大丈夫と思い込んでいるような作家もたまにお目にかかりますが、この劇団の芝居は、青木さんの、豊富な知識と教養に裏打ちされて、現実の人間社会の歪みを、笑いという、センスある衣で綴じた、実に絶妙な味わいの極上舞台になっていました。

ストーリー展開も、役者の動きも、セットの転換も、とにかく、全てに目利きが効いた職人芸の集大成!
隅々まで、行き届いた采配の舞台に、終始、小気味良い感動を覚えました。

役者さん、皆いいけれど、特に、驚嘆なのは、マリエ役の幸田尚子さん。アンジェラ・アキさんにそっくりと思っていたら、そんな小ネタで、「手紙」を歌うシーンがあり、大ウケしました。彼女の迷いのない、演技は、賞賛モノです。
他にも、花戸さん、森下さん、奥田ワレタさん、中川さん、とかげさん、金沢さんに、客演の小林タクシーさん…
まさに、まさに、【役者が揃った舞台】の見本市のよう。

最後の、終わり方まで、全てが、お気に入り!満足度100%のウキウキ舞台でした。
スタア

スタア

劇団昴

俳優座劇場(東京都)

2010/06/26 (土) ~ 2010/07/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

ぶったまげた!!これが、あの昴??
チラシもろくろく目も通さず、誰の原作かも忘れて、観に行ったので、初めは、「えっ?私、昴を観に来たつもりだったけど、これって、NLTかテアトルエコー?」と思いました。
それから、今度は、「スター」という題名から、単なる芸能界ネタのライト・コメディかと想像しつつ、観ていたら、もう話はどんどんあらぬ世界に突き進み、終いには、チャリT企画か、先日のゴジゲンか?と思うような展開に…。

こういう不条理コメディ的な芝居って、ともすると、観ているのが気恥ずかしくなる時がありますが、昴の役者さんが、それはもう実力者揃いで、24人も登場人物がいるのに、遠目で観ても、役者さんの名前を知らない方でも、誰が誰だかすぐに見分けがつくのがスゴイ!!
スターはスターらしく、マネージャーはマネージャーらしく、雑誌記者は…、酒屋は…、科学者は…、その助手は…、etc.etc.と、

とにかく全員が役に成り切ると言うか、その役の職業人気質を、見事に現出されていて、新劇昴の底力を、思う存分、堪能させて頂きました。

スタインベックや、チェーホフや、いじめ問題を真っ向から扱った芝居等、シリアスで深刻な芝居の劇団だと思い込んでいた自分の不明を恥じました。

いやあ、ホントに御見逸れしました。
劇団昴の実力を知りたい方には、必見作間違いなし!!特に、コメディやってる小劇場の方には是非ともおススメ舞台です。

欅時代に初演で、昴としては初めての上演とか?
こんなスゴイ昴の実体が世に知られないのは、もったいない!
是非、早急に、再演を検討して頂きたいくらいでした。

それにしても、カトケン事務所の芝居でもいつも思うのですが、久世龍之介さんは、コメディの演出が巧いなあ!!

(私は、申し訳ないくらい格安チケットで行ったのですが、もしかしたら、これ、チラシのセンスが悪いからでは?
あのチラシで、こんな素敵な出来栄えのコメディは、到底想像できませんでした。)

ネタバレBOX

単なるシチュエーションライトコメディというよりは、デフォルメ不条理ブラックコメディって感じでしょうか?

あり得ないストーリー展開の中に、放送禁止用語がポンポン飛び交ったり、その職業人特有のキャラクターをズームして見せたり、至る所に散りばめられた、アイロニーが、昴の役者さん達の力量で、的確に表出されるせいか、観ている内に、一見リアルそうな芝居以上に、真実をつている感じが小気味良くて、心で、喝采を叫びました。

シリアスな芝居がお上手だと前々からファンだった宮本さんが、こんなにコメディも達者な方とは思いませんでした。
それに、人気歌手の梢役の松谷彼哉さんは、何と、以前私が企画したCDで、「サンセット・ブールバード」の訳詞を手掛けて下さった方。今回の舞台で初めて拝見しましたが、歌えて、演技もコメディもできて、その上、訳詞の才能もあってと、驚いてしまいました。

他の役者さんも、全員、これが普段はシリアスな芝居の多い劇団の方とは信じられない、名コメディ俳優さん揃い。
特に、ちょっとしかない出番の方までが、ブラボー演技の名手揃いで、本当に嬉しくなってしまいました。

文学座や民芸のように、ベテランと若手の実力の差が甚だしい新劇が多い中、こんなにベテランと互角の演技表現のできる若手がワンサカいる新劇には初めてお目に掛かりました。

特に、科学者の助手役の方、何があっても動じず、黙々と研究調査に余念のない感じが絶妙でした。

あ、だけど、ひとつだけ、ちょっとなと思ったことが…。人気歌手と実は不倫している彼女のマネージャーが、2人だけのイチャイチャシーンで、言う口調が、何だか、悪徳政治家かやくざみたいに「…だわな」とか言うのが、やや違和感がありました。人の目のあるところとの違いをわざと出したかったのでしょうけれど、さすがに、そんな言い方はしないでしょう。一応マネージャーには違いないんだから。(笑)
ミュージカル「アトム」

ミュージカル「アトム」

わらび座

新宿文化センター(東京都)

2010/06/19 (土) ~ 2010/06/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

これは、多くの子供達に観てほしい!
小細工を弄しない、ストレートなメッセージがダイレクトに伝わる、とても清々しいミュージカルでした。

横内さんが、長年、スーパー歌舞伎などでもテーマとして来た、【復習の連鎖は断ち切ろう!、人間は、必ずとことん話し合えばお互いに理解できる筈だ】
というストレートで温かいメッセージが、何度も涙腺を緩ませました。

ラッキー池田さんの振付による、若いエネルギーに満ちたダンス、甲斐正人さんの美しい音楽が、そのテーマを、脇からがっちりサポートして、近年のオリジナル・ミュージカルの中では、出色の出来栄えではと思います。

主役トキオ役の良知さんも、役柄に合った、清々しい少年の心を表出して下さいましたが、群を抜いて圧倒的だったのは、アズリ役の役者さん(Wキャストですが、今日は柳瀬さん?四季のジーザスをなさった柳瀬さんでしょうか?)
またお1人、気になる役者さんが増えました。

群唱の時の歌詞がもう少し明瞭に聴こえたら、と、大変惜しまれました。

ネタバレBOX

まず最初に残念だったのは、開演前に、置き引き注意のアナウンスがあり、その直後すぐに開幕して、客席から、キャストが登場したこと。もう一息、間を置かないと、唐突な感じを受けた。

と、書こうとして、もしやこれは既に芝居の導入部分だったのかもと思いました。でも、そうだとしたら、紛らわしい!どちらにしろ、かなり違和感がありました。


「ダンゴ3兄妹」でお馴染みの、元「歌のお兄さん」、速水けんたろうさんの悪役ぶりが、なかなかで、如何にも憎憎しげなのにも、ビックリ!!
役者さんとして、一皮剥けた感じでした。

しかし、横内さん、アトムをこういう形で登場させるなんて、心憎いこと!!
だんだん、トキオがアトムのイメージに重なって行く過程の表現が、絶妙なタイミングで、、自然に涙が流れてしまいました。
ネバーランド

ネバーランド

少年社中

青山円形劇場(東京都)

2010/06/23 (水) ~ 2010/06/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

感動で、心がパンクしそうです
いつもなら、終演後、お茶を飲んだり、買い物したりして、帰宅しますが、今日は即効帰宅しました。
何故って、感動の涙が止まらないし、心が打ち震えて、正気の沙汰じゃないものだから…。

この芝居、脚本がどうのとか、誰の演技がどうのとか、そんな批評的な表現で語ることは不可能です。

ただ間違いなく、言えるのは、本物の演劇の真髄を見たという事実。青山円形劇場には、演劇の神様が間違いなく、降臨されていました。

こんな体験は、間違いなく、生まれて初めてです。
ストーリーも演出も、衣装も、音楽も、ダンスも殺陣も、役者さんの演技も身体能力も…、とにかく何から何までが、信じられないくらいの生の演劇の考え得る全ての要素を満たしていて、これで、感動されない方がいたら、お目に掛かりたいくらいの魅惑に溢れた、疾走感と哀愁の舞台!!

この少年社中という、素晴らしい劇団の存在を教え、この舞台に私の足を向かせて下さる、きっかけを作って下さった、コリッチユーザーの皆様に心より感謝致します。

もし、小劇場の役者さんで、演劇を続けることに、不安を抱えていたり、自信をなくしかけている方がいらしたら、心の処方箋として、今すぐ、青山円形にダッシュされることをおススメします。

できれば、今稽古中の、私が応援する劇団のメンバーに、半日お稽古休んでも、観てもらいたい、本当に、素敵な素敵な舞台でした。

青山円形だから、お客さんの反応もダイレクトに感じ、久しぶりに、舞台と客席が一体となり、演劇の真の姿を構築する瞬間に立ち会えた、この震えるような感動の共感体験は、演劇を代々愛する家系に生まれた私には、つぼが多すぎて、涙を堪えるのが大変でした。一生の宝物に思える嬉しい、経験となりました。

もちろん、生で観てほしいけれど、そうできない、私の家族や友人のために、このDVD,早速、予約することにします。

あー、一時間でも二時間でも、拍手を続けていたかった!!☆10でも足りないくらい。

ネタバレBOX

最後に登場する、ワニ神様は、私には、演劇の神様の化身に思えました。
マイケルが、役者の道を突き進もうと、呪文のように唱えるあたりから、もう涙で舞台が見えなくなりました。


笑って、泣いて、清々しく、微笑ましい、素敵な舞台、ただもう、感謝感激!!
ドライビング・ミス・デイジー

ドライビング・ミス・デイジー

劇団民藝

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2009/03/11 (水) ~ 2009/03/22 (日)公演終了

満足度★★★★

やっと観られました
この作品、映画があまりにも名作だったために、その印象を記憶に留めたくて、ずっと、観るのを躊躇っていました。
でも、仲代さんと奈良岡さんの共演は、とても興味ありましたし、あの名作を、舞台ではどう料理しているか気になり、やっと行って、観て来ました。

結果は、やはり、新劇を支えて来たお2人の演技には、卒がなく、きっちり人物の心情を表現されていて、お2人の演技で、この名作を観られたという点に関しては、満足でした。

でも、この作品の重みにそぐわない安っぽいセットが残念でした。
あの2人が、様々な逡巡の末に、共にドライブする車の表現形態が、とてもお粗末に思えて、残念でした。
この舞台を観て、改めて、あの名優2人の映画を無性にまた観たくなりました。映画に比べて、時代背景の描写が浅薄だった気がします。

THE SCARLET PIMPERNEL

THE SCARLET PIMPERNEL

宝塚歌劇団

東京宝塚劇場(東京都)

2010/06/04 (金) ~ 2010/07/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

大満足×50、御見逸れしました
初演の評判で、行こうと思った時は既に完売で、今回の再演、霧矢大夢さんのお名前以外、出演者誰一人存じ上げずに、作品に惹かれて、観に行きました。
正直、驚きました。
小学5年生で、宝塚ファンから足を洗った私が、45年振りに、すっかり霧矢さんと、月組ファンになって帰宅しました。

作品が、上出来なのはもちろんのこと、こんなに粒揃いの組を観たのは、一体いつ以来でしょう!
次々、実力の伴わないトップばかりが目に付き、そろそろ宝塚にも翳りが見えたかと思っていましたが、いつの間にか、こんな実力ある組が復活していたとは!心底、驚嘆しました。

霧矢さん、男役にしては、上背は足りないものの、とにかく、声良し、歌良し、演技良しで、申し分ないトップでした。
他の宝ジェンヌも、誰一人、遜色ない実力者揃い。

もし、宝塚歌劇、食わず嫌いの方がいらしたら、今の月組なら、初見チャンスかもしれません。

ネタバレBOX

さすが小池さんの演出だけあり、無駄なシーンがありませんでした。スピーデイな展開、しっかりとした人物描写で、宝塚ファンでなくても、充分満足できる、高水準の作品でした。
変に、ラブストーリー重視じゃないので、女性同士のラブシーンに難色を示す方でも、受け容れられる作品だと思います。

とにかく、霧矢さん、歌がお上手。演技もお上手。特に、変装したキャラクターの創り上げの巧さには目を見張りました。台詞の言い回しも、風体も、とてもスカーレット・ピンパーネルと同一人物とは思えず、だから、その場で、正体を現すシーンは、思わず、掛け声掛けたくなるほどでした。
他のキャストも、皆さん、歌も、演技も、ダンスも、高水準の方ばかり。
王太子役の方は、本当に、王子にしか見えず、彼が、夫の愛を疑うマルグリットに、幼いながら、夫を信じてと諭し、訴えるシーンでは思わず、涙が出てしまいました。

後半のレビューショーも、シンプルな演出で、衣装のセンスも良く、本当に、久しぶりに、夢を見させて頂きました。

宝塚は、やっぱり永遠に不滅だなと、思いを新たにして、幸せな気持ちで、岐路につくことができました。

本当に、行って良かった!!

フツーの生活

フツーの生活

44 Produce Unit

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/06/18 (金) ~ 2010/06/23 (水)公演終了

沖縄の方の目には触れさせたくない舞台
これは、正真正銘、ただの普通のシバイに過ぎませんでした。
脚本、音響、セット、演技、全てが、芝居そのものでした。(虚構に過ぎないという意味です)
私の子供の頃、外国映画で描かれた、日本紛いの日本のような、戦時中の沖縄の描き方に唖然、慄然!!若い小劇場作品かと、目を疑いました。

生半可な知識しかない脚本家が、先人の名作家が書いた珠玉の台詞を、アレンジしてランダムに繋ぎ合わせ、まことしやかに舞台に乗せた、そんな浅薄な芝居としか、私の目には映りませんでした。
途中退場された男性がいましたが、私と同じ思いで、居た堪れなかったのではないかと、思いました。
ただ、知らずに芝居を観に行っただけの私でさえ、沖縄の方々に後ろめたさを感じてしまう、そんな絵空事の空疎な芝居でした。
これは、沖縄の抱えている重い歴史に対する冒涜とさえ、私には感じられました。

当パンを読むと、これは劇場側から持ち出された企画で、プロデューサーも作者も、ただの頼まれ仕事だった模様。製作側の、必然から生まれた公演でない、間に合わせ舞台なら、さもありなんと納得できる凡作。
「フツーの生活」という、この題名、戦時中の普通の生活を描くのではなく、どうやら、普通の生活をしている、現代製作陣が、戦時中の沖縄の実情なんて、度外視して、普通に作った、シ・バ・イでした。

今年、観劇したことを後悔した、最初の舞台となりました。

ネタバレBOX

具体的な例を論って、難癖つける意欲さえなく、すごい虚脱感ですが、一言だけ。

隠れているガマ(沖縄にある、自然の洞窟)で、敵兵にみつからないように、赤ちゃんの鳴き声に文句をつける人物の罵声が、その赤ちゃんの鳴き声より、100倍ぐらい大きい。
方言を使うと非難されると忠告する人物が、平気で、「ステージ」なんて、言葉を吐く。
ナレーションと、あまりにも矛盾する、劇世界の構築…。一事が万事。呆れてしまいました。そんな浅い脚本と演出だから、役者さんの熱演は空しく空回りするばかり。

紀伊国屋さん、新国の、井上、東京裁判三部作の向こうを張ったつもりでしょうか?
紀伊国屋には、身の丈に合った作品上演を切望してやみません。
父、不在-15日(木)15時の回完売(当日券若干出します)19日(土)14時の回残席残り僅か-

父、不在-15日(木)15時の回完売(当日券若干出します)19日(土)14時の回残席残り僅か-

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シアター711(東京都)

2010/06/17 (木) ~ 2010/06/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

ヒロセ姉妹の才気に益々惚れ込みました
前回公演で、一目でファンになった劇団ですが、今回の公演は更に進化して素敵でした。

まず、舞台設定が実に秀逸。始まる前は、こんな庭だけのシーンで、芝居が成り立つのかしら?
【また、私が嫌いな、場所は、パブリック・スペースで、全員が、その場所に出たり入ったり、人目を憚る内容の台詞や、行動を、全然人目を憚らずに、繰り広げられる芝居】なのではと、内心心配でしたが、全く取り越し苦労でした。

スゴイ!!ヒロセさんの才気。お見事でした。今回はキャストも全員、文句ない演技でしたし、これは、益々楽しみな劇団が、またひとつ増えたと、嬉しくなりました。

とても、気に入って、劇団員募集の文字に、本気で目が行ってしまいましたが、年齢制限に引っかかりました。残念!(笑)

いつも、腰痛持ちの私は、自由席の時には、開場前には赴き、一番座りやすい席を確保するのが常ですが、今日は、開場時間に間に合わず、本当なら、慌てるところでしたが、みささんの事前情報で、この劇団は、チケプレの招待客より、正規に代金を支払ったお客様を優先して下さるらしいと知っていたので、慌てずに劇場に向かうことができました。開場から10分過ぎていましたが、とても座りやすいソファのような椅子がまだ空いていてほっとしました。
後から、入っていらした方は、普通のパイプ椅子に座られたので、もし、関係者席や招待席のお客様が先に入場していたら、私は、あの座りやすそうな椅子を恨めしげに横目で見て、逆に、終演後、主宰に、「どうして、お金を払った客が、あんな座りにくい椅子で、無料の人が、良い席になるんでしょう?」と、抗議に行ったかもしれません。こういう、お客様第一の姿勢を取って下さる、主宰の適切な判断にも、嬉しくなりました。
よく、観やすい良いお席が、関係者席の紙が張ってあって、早く行っても座れずにいて、その内、その関係者とやらが来場せず、結局、後から入った当日券の方に座らせる劇団が多い中、毅然とした態度で、当然の配慮をなさったらしい、ヒロセさんの気概に、心から、お礼を申し上げたくなりました。

ネタバレBOX

葬式後の父の遺品整理の場所だから、舞台が庭だったのだと、開幕してすぐに、感嘆!
遺品整理のための、4姉妹だけでなく、全ての登場人物が、この庭で会話をすることに、何の矛盾も御都合主義もなく、この作劇技術の妙に、まず嬉しさがこみ上げました。
謎の人物、平野さんの、如何にも好人物そうなキャラクター設定に、これなら、次女が惚れ込むのも道理と、観る者を納得させるリアリテイ。
あー、こういう芝居、大好きです。
普通に、どこにでも転がっていそうなストーリーを、だけど、少し、ハラハラさせたり、どうなるのかと興味を引っ張ったり、その匙加減が素晴らしい!!
主宰ヒロセさんの御姉妹の次女役、広瀬喜実子さんは、今回もまた素敵な女性を演じて下さいました。
前回公演で、噛みまくりだった鹿野さんの演技も今回はばっちり。

本当に、気持ちのホッコリと温かくなる、上質な佳作舞台でした。
移動

移動

劇団桃唄309

座・高円寺1(東京都)

2010/06/16 (水) ~ 2010/06/20 (日)公演終了

満足度★★★

意外なことに
別役作品なのに、物凄く直球ストレートな芝居で、全然不条理っぽくありませんでした。
電柱はいつもながら出て来ますが、その電柱への思いもストレートに語られ、どこも不可解な部分がないのが、意外でした。
へえ、別役さんてこういう芝居も書いてたんだ!とビックリしたのが、一番の感想。

わかりやすいので、逆についウトウトしてしまいましたが、決してつまらないわけではなく、全体的には面白く拝見できました。
ただ、あまりにも舞台空間にスペースがあって、劇世界に入れ込めない状況があり、残念でした。文学座の「わが町」同様、劇場の使い方にもっと工夫があったらなと思いました。

もう少し、台詞に緩急をつけるとかしないと、ストーリー自体にも起伏が感じられない気もしました。

でも、役者さんの演技は、前回の桃唄309の公演より、ずっと馴染み易く、最後まで、好意的に観ることができました。特に、脇役の皆さんが素敵な演技をされていたように思います。

ネタバレBOX

何となく、「ゴドーを待ちながら」の舞台を思い出すような雰囲気の舞台でしたが、描かれている世界は、実にわかりやすく、気軽に観られた反面、理解しようと客を前のめりにさせる空気が足りませんでした。
何となく、気の抜けたビール風な、やや気迫に欠ける舞台でした。
でも、役者さん達、皆さん、味わいがあり、登場人物に存在感がありました。
だから、いつもの別役作品に比べて、とても登場人物に親近感を覚えました。

場転は、暗転にせず、キャストが出てきて小道具やセットを片付けて、皆で電柱を愛着を持って、見上げてから、退場して行くのですが、この皆の電柱見上げる笑顔が、何かほっとさせるものがあり、「サザエさん」でも観ているような錯覚を覚えました。ここは、長谷さんの演出の好きな部分でした。
組曲「空想」

組曲「空想」

空想組曲

OFF OFFシアター(東京都)

2010/06/16 (水) ~ 2010/06/22 (火)公演終了

満足度★★★★★

できれば全公演観たくなります
前回の公演で、新参ファンになったばかりですが、この公演を観て、早くも私の小劇場お気に入り劇団のベスト5にランクイン!!

どうして、こんなに全てにおいてセンス抜群なのかと、ただもう嬉しく、この年齢になって、また新たな恋心を感じられる劇団に出会えて幸せでした。

脚本、構成、演出、出演者、舞台セットに照明、音楽…この舞台を形成する全てが、秀逸極まりないトータル感で、コーデイネートされたとても素敵な作品でした。まるで、上等な翻訳物の小品集の趣。ほさかさんの才能と知的センスに完全ノックアウトされました。

初日の日替わり短編がとても面白かったので、これだけでも全日通って、制覇したくなってしまいます。今日のゲスト、狩野和馬さんの演技もとても素晴らしく、一目で好きな役者さんになりました。
キャストの皆さん、大好演の上、目の保養になるような美男、美女ばかり。おばさんでも、ずっとワクワクして見入ってしまいました。

ネタバレBOX

とにかくオープニングから、洒落ています。ワクワクします。
この間の青☆組がアラカルト料理なら、こちらは一見すると多国籍料理のようなのに、実は、すごくコーデイネートされたフルコース的な感じ。

中田さんの演じるレストランのウェィターがとても雰囲気があって、まるで、翻訳劇でも観るよう。初々しいカップルの食事風景の後は、一転、星新一張りのSFチックな作品。その後、奇想天外な日替わり短編があって、次は、オーバーアクションのカップル登場…
てな具合に、短編の色合いはバリエーション豊なのに、決して、ランダムに並べた感じは微塵もなく、流れるテーストは1本筋が通っている。この綿密な一貫性ある構成がお見事でした。

ニール・サイモン風味あり、オー・ヘンリー風味あり、そして、ファミレス・ランデブーの意外な3カップルは、思い切り笑わせられるコント風味。
ほさかさんて、どんな作風でも、どんと来いなスゴイ作家らしいと感嘆しきりのワクワク観劇体験。役者さん達も、皆さん、八面六臂の大活躍で、演出意図を見事に体現されて、どなたも演技賞ものでした。

オープニングも素敵なら、またエンディングが更に素敵、絶妙!!まさにこれぞ組曲。こういうエンディングが最高に好きです。

いやあ、ホントにいい物見せて頂きました。興奮して、眠れなくなりそうな程、素敵な時間を頂きました。
愛死に【ご来場ありがとうございました。】

愛死に【ご来場ありがとうございました。】

FUKAIPRODUCE羽衣

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2010/06/12 (土) ~ 2010/06/22 (火)公演終了

満足度★★

「あのひとたちのリサイタル」の方がずっと好き
「あのひとたちのリサイタル」はその名の通り、様々な人々の日常がスタイリッシュに、詩的に、ユーモラスに、表現されていて大好きな作品でした。
ですが、今回は「愛死に」…題名から、男女の情交の際の「あー、死ぬう」っていうのを連想していた私は、もしやという不安を抱きつつ、芸劇に向かいました。
最初は、やはりとってもスタイリッシュ、斬新、魅せる…、あー杞憂だったなと安心しかかったら、後がいけませんでした。
男性客は結構受けていたけれど、女性客は引いていた人多い気がしました。
何だか、あまりにもそればかりがこれでもかこれでもかと連射され、だんだん気持ちが冷めて行ってしまいました。女性陣は、皆さん好演だったけれど…

ちょっとくど過ぎな印象。歌も、歌詞がわからず、欲求不満が募りました。
新感線や、井上芝居の蜷川演出舞台のように、歌詞を字幕で見せたり、歌詞カードが配られたりすればよかったけれど。

あ、でも前回公演は、誰が誰やら解り辛かった配役が、今回は当パンにキャスト表が配置図的に載っていて、性別まで記されていたのは親切でした。

ネタバレBOX

冒頭シーン、同じ台詞を、一音一音、区切って、意味を感じさせない喋り方をしたり、逆に意味を持たせて語らせたり、ダンスで情交場面をうまくユーモラスに表現したり、とにかく、目を離せないくらい舞台に集中させて下さって、あー、いいなあと思って観ていましたが、各カップルの情交場面が果てしなく、これでもかと連射され始めてから、ややうんざりしてしまいました。
特に、中央で、くんずほぐれつする深井さんの演技が艶かし過ぎて、おばさん、卒倒しそうになり、途中からは、深井さんはなるべく観ないようにしていました。(笑)
女性陣が、それぞれ個性的な情交場面を演じる反面、男性陣は、演技に工夫が足りない気もしました。誰が演じても大差ない感じで、残念でした。

あんな時に、お互いの親との付き合い方なんかを話題にする場面は、そうそう、日本人ならあり得そうと、かなり受けてしまいましたが…。

糸井さんの体に馴染む音楽が好きなので、今回はあまり歌われなかったのも残念でした。客席から登場する、道化的な2人も、あまり生かされていないように感じました。「あのひとたち~」の画家のように、もっとアクセントになればよかったのですが…。

でも、あれだけの動きを難なく見せてしまう、役者さん達の稽古からの頑張りを思うと、ただもう頭が下がります。そのキャスト陣の熱演奮闘には、心からの賞賛を惜しみません。

こういう限定されたテーマでない時に、またもう一度観てみたくなりました。
モリー先生との火曜日

モリー先生との火曜日

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2010/06/03 (木) ~ 2010/06/15 (火)公演終了

満足度★★★★★

賞賛に値する真の感動作
かなり以前、「週間ブックレビュー」で紹介された時から、ずっと気になっていた作品の舞台化。もっと、朗読劇に近い雰囲気なのかと想像していましたが、さにあらず。私が過去に観た2人芝居の中でも、最高作の一つに数えられる、秀作舞台でした。
とにかくまず驚いたのは、高橋さんの役者としての進化の目覚しさ。過去にかなり高橋さんの舞台は観ていますが、こんなに硬くない彼の演技は初めて観たように思います。加藤さんも、ここ数年、幾度か台詞を咬むことが多々あったのに、この舞台では、そんな気配は微塵もなく、活舌も良く、本当に、お2人の演技表現が過剰にならず、シンプルだったので、自然に、このストーリー世界の住人になることができました。この年齢になっても尚、演技者としての進化を続けているお2人の表現者に、まずは、心底敬服の念を抱きました。

高瀬さんの演出も、作品の良さ、誠実さを損ねることのない、程の良さ。決して、過剰にならず、感動の押し売りもせず、ジワジワと胸に浸透する秀逸な感動の漣が心地良く感じられました。
モーリー先生の人柄と、その師に魅了されて行く生徒の心の交流が、実に自然に描かれて、間違っても、お涙頂戴ものの作りでないことが、何より嬉しく感じました。
良い作品があり、それを見事具現化した、キャスト、スタッフの、並々ならぬ力量の結集作。
モーリー先生の住居は、彼の心の内のようにシンプルで、清々しく、セット、照明、音楽、場転のスタッフの動き、全ての舞台表現が、この作品の良さを阻害することなく、テーマと一体化していました。

最後のカーテンコールの、観客から発せられる、本物の感動の拍手が、とても耳に心地良く、心の奥底までずっと響いていました。

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