ニッキーの観てきた!クチコミ一覧

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ミツバチか、ワニ

ミツバチか、ワニ

あひるなんちゃら

駅前劇場(東京都)

2010/03/04 (木) ~ 2010/03/08 (月)公演終了

満足度★★★★

ゆるキャラ満載
登場人物全員がどこかねじが一本抜けた感じのゆるキャラで統一される。

ネタバレBOX

今までの人生すべてを流されるまま生きてきたであろう占い好きの青年が、ひとりの占い師に前世を告げられることから物語ははじまる。
あなたの前世は「ミツバチか、ワニ」。
その言葉が気になって仕方ない青年は何度となく、再度、その占い師に見てもらうとするが、すれ違いが続く。
なんとか占い師に再会し、前世を占ってもらったところ、今度は「消防車」といわれ、唖然とする。
三度目の正直とばかり、エンディングで見てもらうものの結論は「ミツバチか、ワニ」か「消防車」。

舞台で交わされる会話は、ゆるキャラの発する何か意味深でありそうで、そうでもなさそうで。
独自の世界観を持つ舞台であった。
俳優では、乞局所属の墨井鯨子が出色。乞局とはまた違った雰囲気をかもし出し、コメディが彼女のホームグランドではないかと思わせた。
【公演中止】ソニックユース

【公演中止】ソニックユース

かもめマシーン

小劇場 楽園(東京都)

2010/03/04 (木) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

お詫び公演?
本公演「ソニックユース」が公演中止となっていることを知らずに、来場。

ネタバレBOX

受付でもあまり説明がなく、着席。
座席においてあった綴じ込みのチラシを見て初めて、公演中止に気づく。

お詫び公演ということなのだろうか?
次回公演になるのだろうか?ハイナーミュラー作「ハムレットマシーン」の公開稽古としてリーディング形式で30分ほどで上演。
リーディングではあったものの「ハムレットマシーン」の雰囲気を味わうには十分。
次回公演に向けて期待を持つことができた。

公開稽古終了後、主宰が挨拶を行うも、なぜ公演中止にいたったのか詳しい経過の説明はなかった。
せめて来場予定者には、公演中止であることを伝えるべきではなかろうか。
アルペンループ

アルペンループ

サイバー∴サイコロジック

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2010/02/19 (金) ~ 2010/02/22 (月)公演終了

満足度★★★

立山にある地獄とは
立山山腹にある地獄アミューズメントパークで繰り広げられる会話劇。
地獄を体感するアミューズメントパークという発想は面白く、当然、そこに集まる人々は心に傷持つ人々。

ネタバレBOX

登場人物は、なにやら魂胆のありそうな、坊主でかつパークの経営者である人物、パークの運営に協力している守銭奴の立山市役所の職員、自分の体を痛めつけることで何かから逃れようとする女、地獄の苦痛を楽しむ女、スリをやめることができずに苦悩する男、物見遊山にパークにくるも、その魅力に取り付かれ抜け出すことができなくなる若者二人、そして、本物の地獄からときどき様子を見に来る雪女。
アミューズメントパークであるがゆえに、個人が希望すれば、当然、地獄から抜け出すことはできるが、多くはそのまま、延々と地獄に留まる。

もっと、登場人物個々人に焦点を当て、なぜ、地獄に留まり続けるのか内心に迫るなどの描き方がされれば、SFの設定が生きてきたのではないか。
早稲田どらま館という狭い空間に、工夫を凝らしたセットを組んだことには敬意を表する。
当劇団の今後に期待したい。
踊るワン‐パラグラフ2010

踊るワン‐パラグラフ2010

ニットキャップシアター

ザ・スズナリ(東京都)

2010/02/18 (木) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★

摩訶不思議な雰囲気
京都の人気劇団の第4回東京公演。
当劇団、初見。
自殺した新興宗教の教祖の命日、ネット上では、その日、奇跡が起こるとささやかれ、やがてやじうまが集まり。。。

ネタバレBOX

地域住民による立ち退き運動のさなかに自殺をした新興宗教の教祖。15年後の命日。教祖が亡くなった17:32に、教祖が亡くなった、マンションの一室で何か「奇跡」が起こるのか。
命日が近づいたある日、「象復活」というたて看板が発見される。たて看板は取り除いても何度となく立て替えられる。その姿を発見した近隣住民がネット上で騒ぎ立てた結果、命日には、多くのやじうまが自殺の舞台となったマンションに集合する。
果たして、「奇跡」は実際に起こるのか、それとも、立て看板を含めて単なるいたずらで終わるのか。
登場人物は、住民運動の先頭に立ち、教祖を自殺に追いやったマンションのオーナー、同マンションに住む引きこもりの青年(ネット上で騒ぎ立てる)、新聞記者を名乗るなぞの女性(教祖の愛人で側近だった女性)、音信不通だったオーナーの息子(不動産会社員で、マンションを取り壊すために、騒ぎを大きくする男)、戦後日本教育のゆがみに原因を探ろうとする右翼的思想の青年、などなど、どこか一般社会になじめない人物ばかり。
ストーリーは、前半、説明的な要素が多いが、それは結末へ向けた伏線のため。最後には、伏線が一気に解き明かされていく。
コメディ的要素をふんだんに織り込むが、ところどころで不発。京都と東京の笑いポイントは違うのか?などと改めて感じた。
音楽、ダンスを含めて、感覚の合う、合わないが大きく分かれると頃ではないか。
スズナリは満員御礼であったが、終演後の拍手には、そのことがはっきりと現れていたように思う。
ピローマン

ピローマン

劇団ロズノワール

千本桜ホール(東京都)

2010/02/16 (火) ~ 2010/02/18 (木)公演終了

満足度★★★★

あまりに切なく、あまりに暖かい
原作の「ピローマン」は2004年にイギリスで最も権威のあるオリヴィエ賞の最優秀戯曲賞を受賞した衝撃作。

比較的原作に忠実に上演された様子。
2幕ものであるが、第1幕だけで終了してもいいような巧妙なストーリー展開。

子どもの虐待という際めて重いテーマでありながら、いくつかの偶然が重なって、真っ暗闇の先に一筋の光が見えるラストがすばらしい。
見終わった後に、色々なことが次から次へと頭に浮かぶような余韻を残して終了。

若手役者での上演となったが、同じ脚本、演出で、もっと老獪な役者人の舞台を見てみたいと思った。

当劇団の今後に大いに期待の持てるそんな舞台だった。

作品No.7

作品No.7

OM-2

日暮里サニーホール(東京都)

2010/02/12 (金) ~ 2010/02/13 (土)公演終了

根源への問い
言語に頼らない身体表現、ダンス、音楽を駆使し、人間の根源へと観客をいざなおうという趣向は今までに経験がなかったため、どのように理解すべきか一晩悩んだが、現段階でも結論を出すことができない。
佐々木敦氏の演技、およびドラムパフォーマンスは(パフォーマンスアート上級者には)一見に値しよう。

アルトゥロ・ウイの興隆―それは抑えることもできる―

アルトゥロ・ウイの興隆―それは抑えることもできる―

ピーチャム・カンパニー

シアターPOO(東京都)

2010/02/05 (金) ~ 2010/02/08 (月)公演終了

満足度★★★

古典は現代にも通じるのか?
アルトウロ・ウイというシカゴの鼻つまみ者が1930年代の世界恐慌が吹き荒れるシカゴを舞台に、暴力を背景に、近隣の街々をも牛耳る大物ギャングに成り上がるまでを描いた、1941年に発表されたベルトルト・ブレヒトの原作を忠実に、かつ、ずいぶんとコンパクトに上演。

アルトウロ・ウイというギャングは、1930年代にブレヒトの母国、ドイツで急速に力をつけ、人々を恐怖のどん底に突き落としたヒトラーに重ねて描かれる。

物語が作られた当時の時代背景を踏まえれば、原作がどれほどの説得力を持ったかは想像に難くないが、本上演でも、原作が描いた暴力の連鎖は時代を乗り越えて、生き生きとよみがえるのだろうか。

それを表現しようとした劇団の意図は十分に感じることができたが、平和ボケした私の頭では、本作の中でそれほどのリアリティを見出すことはできなかった。
古典作品の上演の難しさといわざるを得ない。

本年秋には、新作による本公演があるとこのこと。
昨年の「イヌ物語」で見せた劇団合同のメリットを生かした現代劇を期待したい。

幸せの歌をうたう犬ども【ご来場ありがとうございました!】

幸せの歌をうたう犬ども【ご来場ありがとうございました!】

DULL-COLORED POP

タイニイアリス(東京都)

2010/02/02 (火) ~ 2010/02/04 (木)公演終了

満足度★★★

しあわせのかたち
話題の谷賢一の舞台を一度、見たいと思っての観劇。
劇団外の公演だったからだろう、劇評等で知る人物の舞台とは思えぬ作風であった。
正直にいうと肩すかしをくらった感じであった。

「不幸」という感覚を理解できない宇宙人が、人間の不幸を宇宙人が考える幸せに書き換えたら、そこには真の幸せはあるのかといったことが主題として描かれる。しあわせのかたちとは何か。宇宙人にはもちろんできないが、同じ人間同士でも理解しあうことが困難であるなどと。
SFの設定を用いて、前半のお祭り騒ぎを思わせるハイテンション・ナンセンスな筋書きで進行し、後半はぐっと引き締まり、テーマを浮かび上がらせる。
全体としてはナンセンスコメディーなのか、シリアスなのかどちらか一方の路線をより協調してもよかったのではないか。


「当てられ書き」という極めて窮屈な環境の下での、劇作であることを考慮すれば、よくぞ、このようにまとめたと評価することもできよう。
各劇団の主役級を集め、役者個々人の持ち味を十二分に引き出した演出はたいへんおもしろかったが、ストーリー重視派には少々つらい展開ではなかったか。
谷の次回公演に大いに期待したい。


 『F』

『F』

青年団リンク 二騎の会

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/01/29 (金) ~ 2010/02/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

味わい深き、かなしみ
近未来を舞台に繰り広げられる出会いはずの無い少女とアンドロイドの悲しい物語。


それにしても、青年団リンクのクオリティーの高さに、昨年から驚かされてばかりである。

ネタバレBOX

自然が破壊しつくされ、特殊な温室のなかでしか桜が咲かないような荒廃した近未来。
弱者と勝者の地位が圧倒的に固定化され、弱者は勝者の世界を夢見ることさえ、許されないような世界。
毎日、食べるものにさえ事欠く生活を送っていた少女は自らの命と引き換えに、一瞬の「生」を手に入れる。
少女は、新薬開発の人体実験に自らの体を差し出す。健康体に、不治の病のウィルスを宿し、そのウィルスへの新薬飲むことでつかの間、命を長らえる。
新薬は開発段階のもので、効き目は定かではない。というより、効果は期待できず、死んだ後の検体に製薬会社の目は向かられている。

少女は貧困のただなかにある生活に意味なないと考え、人体実験に身をささげることで、お金を得、初めて「人間」らしい生活を手に入れる。
少女は確実に死ぬことを自覚しながら、一瞬の生に感謝し、後悔は一切ないと言い切る。

少女は命と引き換えにつかんだ大金で、アンドロイドを購入する。
その人型をし、感情以外はすべて人間と同じにプログラミングされたアンドロイドは「彼女の利益を守るためにプログラミングされている」という。

今まで、誰からも人間扱いされたことがなかったであろう少女は、アンドロイドの振る舞いにと毎度ながらも次第にアンドロイドにひかれていく。
死を自覚すればするほど、アンドロイドへの思いは募り。。。
当然のことながら、彼女を思うをアンドロイドは受け止めることができない。
彼女とアンドロイドの思いがすれ違うさまは何とも物悲しい。

舞台(彼女の命)の終焉に近づき、彼女はアンドロイドに、アンドロイド自身のために生きるよう諭す。
それはまるで、自分の死を受けう入れながらも、自分の分身として、生きていくことを願うかのように。
この一瞬の彼女の生が凝縮されているかのように。

終幕、アンドロイドは何を彼女に囁いたのであろうか。
また、アンドロイドは彼女を抱え、どこにつれさったのであろうか。

見終わった後も、想像力をかきたてらる秀作であった。



パンク・ドンキホーテ

パンク・ドンキホーテ

パパ・タラフマラ

あうるすぽっと(東京都)

2009/12/11 (金) ~ 2009/12/20 (日)公演終了

満足度★★★★

エログロな妄想に果ては?
当劇団初見。
パンドンという妄想に取り付かれた男の物語。
さて、パンドンの妄想とはいかに?


ネタバレBOX

パンドンは自らを将軍と名乗り、(想像上の)家族を軍隊であると思い込み、ある作戦を決行するが、その結果、未知の化け物(半人半獣)の餌食となり、家族をことごとく失う。
描かれるのは、妄想であるだけに、支離滅裂で、悪意に満ちたエログロな世界観。
せりふは少なく、視角に訴える舞台であり、舞踏・ケチャなどなど、あらゆる手法のダンスが取り入れられており、前衛感たっぷり。
前衛的な作品がお好みの方にはオススメである。

「パンクドンキホーテ」というタイトルから想像するに、セルバンテスのドンキホーテよろしく、妄想に陥った者の話であろうと想像できたが、そのことを理解せずに本作を見ると、明快なストーリーがないだけに、本作の面白みを理解できない可能性があるので、注意が必要。
ロミオの代わりはいくらだっているし、ジュリエットの代わりだって腐るほどいる

ロミオの代わりはいくらだっているし、ジュリエットの代わりだって腐るほどいる

掘出者

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/12/15 (火) ~ 2009/12/20 (日)公演終了

満足度★★★★

追い求める相手は誰?
少し(もしくはかなり)世間の常識とはかけ離れた人々が織り成す緻密な会話劇。
60分のショートストーリーではあったが、見ごたえは十分あった。

ネタバレBOX

妄想癖のある男、自臭症が原因で引きこもる女、価値のないものを売りつけられる男、シャブ中の男、赤の他人を自らの子どもと思い込む女性などなど、登場人物はどこか精神に以上をきたしたものばかり。
彼らに共通するのは自分本位でありながらも他者に依存してしか生きることができないことである。
シェークスピアの「ロミオとジュリエット」は唯一無二の存在としてお互いに相手を追い求めるが、本作で描かれる登場人物は、お互いに依存しなければ自分を保つことができない者ばかりではあるが、相手は必ずしも唯一無二の相手であるこまでは求めない。
つまり、相手は(極論するば)誰でもよいのであろう。
この点を「ロミオとジュリエット」の物語と比較させる構図はたいへんおもしろい。

当劇団の今後に大いに期待したい。
午后は、すっかり雪

午后は、すっかり雪

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2009/12/03 (木) ~ 2009/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★

向田作品の世界観を吉田流の優しさで風味付け
向田邦子をリスペクトすると言う作家・吉田が、向田作品からいくつかのキーワードを拾い出し、向田邦子の世界観を、吉田流の味付けで、見事に再構築。

ネタバレBOX

「性別役割分業」の考え方が残る、昭和30年代後半を中心に、邦子と、その家族、恋人のやり取りを昭和テイストをふんだんに織り込みながら、物語は進行する。

なんともやわらかく・やさしさで包まれた台詞の質感は、向田作品に通ずる部分があり、向田・吉田の共通性を感じさせるものであった。
男尊女卑の考え方が染み付いていた「昭和」の男性を描くにしても、邦子の父、妹の主人、姪の主人と少しずつ、その考え方が弱まっていく様子がわかるつくりになっており、なんとも、深い味わいを感じさせる群像劇であった。

前作「花とアスファルト」がたいへんな秀作であった分、今回の作品に物足りなさを感じたのは事実であるが、前作のようなSFの手法を使えない分、表現できることに限りがあったのは仕方なかったのであろう。

それにしても、なぜ、彼女の作品を見ると、これほど、ほんわかとした気持ちに慣れるのであろうか。この空気感は他の劇作とは異質のものである。
ライク ア ローリングストーンズ

ライク ア ローリングストーンズ

enji

ザ・ポケット(東京都)

2009/12/02 (水) ~ 2009/12/06 (日)公演終了

満足度★★★★

和洋折衷の人間賛歌
『ローリングストーンズ命』の19歳のロッカーが死ぬところから物語ははじまる。
当劇団初見だったが、寺とロック、仏教とキリスト教など、対極にあるテーマを見事にひとつにする力量を持つ。
笑いを誘うシーンが不発に終わるなど、空振るシーンもいくつかあったものの、見事な出来栄えであった。

ネタバレBOX

主人公は、現世で伝説を打ち立てることが人生の目標だといい、現世に残された人々に憑依しながら、伝説を打ちたてようと画策する。
主人公が「世界を変える」ことの意味を最後に悟るなど、作者は観客に人間賛歌を明るく語りかける。
仏教で語られえる悟りと、ローリングストーンの歌詞にこめられた意味がシンクロするところなど、聞いていてぞくぞくするほどだった。
欲望貴族

欲望貴族

角角ストロガのフ

王子小劇場(東京都)

2009/11/26 (木) ~ 2009/11/30 (月)公演終了

満足度★★★★

同時進行の妙
未成年が犯した罪は、犯罪から15年間はその保護者が責任を取る、というNB法が成立した世界を描くSFストーリー。
舞台セットのおもしろさと、最大6箇所で同時進行する物語の構造に驚かされた。
さらに、それぞれの登場人物に背景があり、それを描き分けようとする作家の力量に脱帽。
また、難しい舞台にもかかわらず、作家の意図を汲み取り演じた各役者にも拍手を送りたい。
ストーリー自体は荒削りで、主題・メッセージ性を磨くなど、改善の余地はあるものの、それを上回る舞台構造の見事さがあった。
次回は是非、鋭いメッセージ性のある作品を見たい。

占いホテル

占いホテル

劇団あおきりみかん

新宿シアターモリエール(東京都)

2009/11/28 (土) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

占いの「おもて」と「うら」
当劇団、2作目の観劇。
前作「箱を持っている」と比べ、かなりライトに仕上げられた喜劇。
よく当たると評判の占い師が何人も滞在しており、評判のホテルで、繰り広げられる、占いの「おもて」と「うら」。
『果たして占いは「いんちき」なのか?』を、占い師とお客の攻防を通じて面白おかしく描いていく。
前作は色々なことを考えさせるものであったが、本作は前作ほどのメッセージ性を有しておらず、気軽に見るのにはちょうど良い。

ばっちり組まれたホテルのセットが物語は進むにしたがって、だんだんと解体される様は、「うら」を見せる演出の一環なのだろうか?

次回は是非また、前作のようなメッセージ性の強い作品を見てみたい。


BOOKEND

BOOKEND

INUTOKUSHI

早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ(東京都)

2009/11/26 (木) ~ 2009/12/01 (火)公演終了

満足度★★★★

「笑い」は「(感動の)涙」に勝つことができるのだろうか?
当劇団、本公演初見。
人間界をよりよい方向に導くために、「笑いの神」と「感動の神」が覇権を争う神の国。
劣勢に立たせされた「笑いの神」は、人間界に救世主を求め、一人の男に白羽の矢を立てる。
「笑いの神」は、その男を自陣に引き込むことができるのだろうか?

本作は、作・演出のモラルの自伝的作品とのこと。
つまり、「笑いは涙に勝つことができるのだろうか」ということへの彼の戦いの歴史でもあり、「負けまい」という今後への意気込みを表現した、というところであろう。

感動を廃し、全編笑いでつなごうとする作風は面白く、まさに”ニューウェーブ”というにふさわしい。
一方で、不必要に繰り返される下ネタ表現も多く、どれだけの観客が本作を受容できるのだろうか。
評価が真っ二つに分かれる作品であろう(私は許容派)。

乾かせないもの【御来場有難うございました】

乾かせないもの【御来場有難うございました】

机上風景

タイニイアリス(東京都)

2009/11/26 (木) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

残された者たちの戦争
夫もしくは親族が戦地に赴き、残された30歳前後の女性7人を描いた作品。
戦争をしているのは、戦地に赴任した男ばかりではなく、内地に取り残された女性たちも必死に戦っている様が見事に描かれている。
男を戦地に取られ、連帯していたはずの7人が、ちょっとしたきっかけで、パワーバランスを失い、7人の中で、敵と味方に分かてしまうシーンなどは、人間のもろさをうまく表現していた。
戦地の描かれない戦争物であったが、十分に戦争のむごさ、不寛容さを表現した秀作である。

華々しき一族/お婿さんの学校

華々しき一族/お婿さんの学校

ハイリンド

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/11/18 (水) ~ 2009/11/23 (月)公演終了

満足度★★★★

役者、演出の力量
森本薫、モリエールのいわば古典を、見事に、現代でも通じる舞台に昇華させた演出家および、演出家の意図を汲み取り演じた俳優の好演に拍手。
おかしみを全編に湛えたモリエール作品もおもしろいが、一瞬も気の抜けない、せりふの応酬が続く森本作品が秀逸。両作とも、「行き違い」を見事に活かしきった舞台であった。

ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】

ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】

elePHANTMoon

サンモールスタジオ(東京都)

2009/11/18 (水) ~ 2009/11/23 (月)公演終了

満足度★★★★

歯車の狂いは次第に大きく。。。
ある事件に遭遇した被害者・加害者の人生の歯車は狂い、その狂いは次第に大きく、とめどなくなくなっていく様を描いた作品。

ネタバレBOX

猟奇的な幼児連続殺傷事件を引き起こした加害者の青年とその家族、および被害者遺族を中心にストーリーが展開。遺族は、賠償金を支払えない加害者に対して、ある男性からの提案によって、加害者に対して殴る・蹴る・凶器で傷つけるといった加害行為を行うことで、賠償金の代償にしている。そこに、加害者の青年の妹の彼氏で、本件を題材に、ドキュメンタリーを撮影したいと申し出る男とその後輩、また、本スキームを活用し、体で代償を支払おうとする同級生を殺害してしまった女子高生とその母親がからみ、進行される。

事件をきっかけに、登場人物の人生の歯車は狂い始め、その歯車の狂いはとめどなく大きくなっていく。

ごく一部の登場人物を除き、ほとんどの人物は次第に人格がゆがみ、善悪の判断さえつかなくなっていく。まるで、サイコパスの集団でもあるかのように


当劇団は所見であったが、最初から最後まで気持ち悪さ・居心地の悪さを感じさせる舞台であった。その感覚こそがこの劇団の持ち味なのであろう。終演後、一切の拍手がない舞台がそのことを強く印象つけた。
出演者が、それぞれの不気味な役をそつなくこなし、常に緊張感のある舞台であったし、設定も大変興味深いものであった。
脚本に一つだけちゅうもんをつけるとすれば、なぜ、自殺した人物の遺体を切り刻まなければならなかったのか、また、そのことに快感を覚えた人物たちが次から次へと「仲間」を殺害しなければならなかったのだろうか。
自殺した人物の遺体を「仲間」全員で解体する以降のストーリーは不要であったように思う。こうした筋書きとしたことで、物語が安易な方向に流されてしまったのではないかと悔やまれる。
被害者が加害者になるという設定を突き詰め、かれらの苦悩を中心に再構成した舞台を是非、観たい。

汚い月

汚い月

乞局

笹塚ファクトリー(東京都)

2009/11/06 (金) ~ 2009/11/12 (木)公演終了

満足度★★★★

胸糞の悪さが
当劇団、初見。
登場人物全員がどこか心を病んでおり、誰一人として常識的な振る舞いの出来る者はいない。
そのような登場人物のなかで、航空機により騒音問題、臓器移植問題、自殺願望等々、日常とも、非日常とも、とれない課題の中で物語が進行する。
一言でいえば、なんとも胸糞の悪い芝居であるが、徹底して、そのことを追及しており、それがこの劇団の持ち味なのであろう。終演後のまばらな拍手がそのことを強烈に印象付けていた。
騒音問題、臓器移植問題、自殺願望等々、見る者の視点により、強調される点は異なるであろう点も面白みの一つである。

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