満足度★★★
古典は現代にも通じるのか?
アルトウロ・ウイというシカゴの鼻つまみ者が1930年代の世界恐慌が吹き荒れるシカゴを舞台に、暴力を背景に、近隣の街々をも牛耳る大物ギャングに成り上がるまでを描いた、1941年に発表されたベルトルト・ブレヒトの原作を忠実に、かつ、ずいぶんとコンパクトに上演。
アルトウロ・ウイというギャングは、1930年代にブレヒトの母国、ドイツで急速に力をつけ、人々を恐怖のどん底に突き落としたヒトラーに重ねて描かれる。
物語が作られた当時の時代背景を踏まえれば、原作がどれほどの説得力を持ったかは想像に難くないが、本上演でも、原作が描いた暴力の連鎖は時代を乗り越えて、生き生きとよみがえるのだろうか。
それを表現しようとした劇団の意図は十分に感じることができたが、平和ボケした私の頭では、本作の中でそれほどのリアリティを見出すことはできなかった。
古典作品の上演の難しさといわざるを得ない。
本年秋には、新作による本公演があるとこのこと。
昨年の「イヌ物語」で見せた劇団合同のメリットを生かした現代劇を期待したい。