マリンバの観てきた!クチコミ一覧

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熱海殺人事件

熱海殺人事件

一徳会/鎌ヶ谷アルトギルド

atelier SENTIO(東京都)

2009/06/11 (木) ~ 2009/06/14 (日)公演終了

満足度★★★

殺人を解剖する
ここでの評判につられてノコノコと。前日まではその存在さえ知らなかった劇団を、口コミに頼って見に行くのもたまにはいい。
千葉県がベースで、視覚面で飛躍した演出をする・・・といえば三条会が思い浮かぶが、この劇団も同系列といっていい。

ネタバレBOX

脚本はつかこうへいの有名な作品。装置や衣裳は話の内容から相当かけはなれている。こういう飛躍が苦手な人には向かない芝居だし、こういう飛躍が好きな人からすれば、どれくらい驚かせてくれるかが面白いかどうかの別れ目になる。
「熱海殺人事件」はたしか4人芝居だったと記憶しているが、ここでは5人。場所は取調室だったはずだがここではちょっと様子がちがう。中央の机には水が張ってあり、ときどき溢れて下に落ちる。魚かなにかを解体する作業台のようにも見える。男たちは白いビニールの防水を羽織っている。上手にサンドバッグが吊るしてあるのも意味不明。
女性二人は婦人警官と被害者。婦警は途中で被害者にもなる。二人とも裾の短い薄水色の薄手のワンピース。水に濡れると変に色っぽかったりもする。
ストーリーは原作通り。脚本はさまざまなバージョンがあるなかでいちばん古いものを使用した、とチラシで演出家が解説している。

感想としてはおおむね面白かった。役者の演技も悪くなかったが、ただ若手刑事の役だけはちょっと演技が深刻すぎた。声のボリュームもアンサンブルが壊れるくらいときどき飛びぬけて大きい。まあ、不満があるとすればそれくらい。
空耳タワー

空耳タワー

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/06/16 (火) ~ 2009/06/21 (日)公演終了

満足度★★★

いつものクロムなモリブデン
「次回は静かな演劇をやる」と聞こえたのはどうやら私の空耳で、本当は「次回も長台詞がいっぱいの、終盤でわっと来て一気呵成にカタルシスを迎える、役者の個性でぐいぐい押していく、いつも通りのクロムの芝居をやる」と言っていたのを私が聞きまちがえたらしい。

ネタバレBOX

演劇についての演劇といえば、過去に「なかよしSHOW」という作品で劇団を取り上げたことがある。今回は殺人事件や被疑者のアリバイ証明に絡めながら、JR神田駅の裏手で芝居を上演する小劇場の劇団が出てくる。
地上デジタル放送の開始が迫る昨今、演劇界の、そのなかでもとりわけ演技力の未来について、考えようとしているのかいないのかどうなのか。

いつものように楽しく見たので、とりたてて感想というのもないのだが、劇中に出てきた「オシビー」という小道具について、ふと浮かんだことをどうしても書いておきたい。

オシビーとは実はO・C・B(オー・シー・ビー)が転化したもので、正確には

Ossorosiku (おっそろしく)
Chinkena (チンケな)
Buttai (物体)

の、頭文字を並べたものだ。

というのはもちろん冗談です。(芝居を見た人にしかわかりません)
みなさんも詐欺にはどうかご用心ください。
寛容のオルギア Orgy of Tolerance

寛容のオルギア Orgy of Tolerance

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2009/06/26 (金) ~ 2009/06/28 (日)公演終了

満足度★★★

挑発的な悪趣味
刺激的なパフォーマンスを繰りひろげるベルギーの作家ヤン・ファーブル。さいたま芸術劇場で見るのはこれが4回目。
楽しいことや面白いことよりも、頭に来ることや苛立たしいことを表現するときに活気付くという意味で、今回はパンクなスピリットが漲っている。
(なぜかしら関西弁でいうと)
ファーブルのおっちゃん、今回は相当怒ってまっせ。ほいで何に怒ってるかっちゅうたら、ほれはもう世界の現状に対してやね。

ネタバレBOX

下着姿の4人がいきなりオナニーを始めるという衝撃の出だし。ゲリラというか見た目はパルチザンと呼びたくなる別な4人が、付き添うようにそれを見守る。長々と続くオナニーシーンのあと、終わった4人が啜り泣きを始めるところで、彼らがどうやらゲリラあるいはテロリストの人質で、オナニーを無理強いされたらしいことがわかる。
性と暴力。消費と物欲。それらをモチーフにして、いろんなものが槍玉に上がる。タバコをふかし、飲み物をこぼし、イエス・キリストをおちょくり、股を開き、服を脱ぐ。人種も国民も、日本も埼玉も、観客も批評家も、作者も作品も、あらゆるものに噛み付いていく。
ダンス作品だと思って見たら大間違い。終盤でそれなりの動きがあるとはいえ、これまでに見たヤン・ファーブルの作品のなかではいちばん演劇的。そしてこの過激さはかなり賛否両論というか、否定的な意見を生みそうな気配。
遠ざかるネバーランド

遠ざかるネバーランド

空想組曲

ザ・ポケット(東京都)

2010/02/10 (水) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★

青少年の自殺防止委員会制作(嘘)
ここでの評判がよさそうなのでふらっと観劇。劇団の名前は聞いたことがあるが、芝居を見るのはこれが初めて。

ネタバレBOX

ピーターパンの話を読み替えたような内容。大王こと後藤ひろひとの作品とも通じるものがある。
「本当は残酷なグリム童話」とか、裏サザエさんとか、かわいい物語のダークサイドを描いたともいえる。
ピーターパン・シンドロームにシンデレラ・コンプレックス。メルヘンと社会心理学は結びつきやすいのかもしれない。
空を飛びたがらない、すなわち子供のままでいたがらない者たちを、ピーターパンが次々と抹殺していくところがちょっとこわい。
ストーリー自体がそれほど好みではないので、脚本の印象は面白さよりも巧みさが上回るけれど、どのキャラクターも魅力的に描かれているし、演じられている。
舞台版の「ピーターパン」は見たことがないが、西洋ふうミュージカルのノリのいい演技を役者たちは達者にこなしている。出演者は13人。知っている顔はクロムモリブデンの奥田ワレタだけ。
それにしても役者たちのキャラクターがどれも光っていた。あえて男女一人ずつを挙げるとすれば、フック船長の中田顕史郎、タイガーリリーの小玉久仁子かな。
終盤で、話全体が、ピーターパンへの憧れと自殺願望の入り混じった悩める女子高生の心象風景だということが明らかになる。
ラフカット2009

ラフカット2009

プラチナ・ペーパーズ

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2009/11/04 (水) ~ 2009/11/08 (日)公演終了

満足度★★★

知らない役者ばかり41名
久しぶりに見るラフカット。プラチナ・ペーパーズのホームページで過去公演の記録をちょっと覗いてみた。私が見たのは1995、1996、2000、2003年の4回。出演者の中には当時は全然知らなかったが、今なら知っているという名前がそこそこある。ハイバイの岩井秀人とヨーロッパ企画の土佐和成がG2の作品で共演していたり、ケラの作品に親族代表の竹井亮介が出ていたりする。もっとも竹井の場合は今も親族代表の公演でケラに脚本を書いてもらっている。私が見ていない回でも、あひるなんちゃらの黒岩三佳とかグリングの青木豪が役者で出ていたり。
どういうわけか私の場合、ラフカットの舞台で見た役者のことがほとんど記憶に残っていない。とくにスペースゼロのような大きな会場で座席が後方だったりすると、単純に役者の顔がよく見えないのだ。その意味では、東京芸術劇場の小ホールでやった1995年の第1回目は、舞台が近かったこともあり、印象に残った役者が二人いる。ラッパ屋の鈴木聡作品に出ていた佐藤奈美と堤泰之の一人芝居に出演したかないまりこ。残念ながら二人とも最近は消息を聞かない。

最初のころはケラやじんのひろあきも脚本を提供していて、当然ながら無名の役者よりは脚本家を目当てに出かけていた。
今回もひさしぶりに見る気になったのは、4本立てのうちの1本が青年団演出部の工藤千夏の作演出だったから。

ネタバレBOX

感想を上演順に。4本とも時間は30分ほど。

「職員会議」は作:G2、演出:堤泰之。
生徒の代表を交えて行う職員会議で、女子生徒が弁護士を連れて現われ、一人の男性教師をセクハラ容疑で追及しはじめる。教師が生徒によって追い詰められる話といえば、デビッド・マメットの「オレアナ」やリリアン・ヘルマンの「子供の時間」があるが、生徒の年齢はちょうど両者の中間あたり。時間が短いなりに話は楽しめた。男子生徒がやたらドモってしゃべるのが、緊張を表現する演技なのか、それとも本当にドモリの役なのかがわかりにくかった。私が子供のころはドモリというのはそれほど珍しくなかったが、最近はドモリというものにまったくお目にかからない。今は学校にドモリの子供がいたら、いじめにあうんじゃないだろうか。催眠術とかで簡単に治療ができるのだろうか。最近のドモリ事情というものがちょっと気になる。
芝居とは関係のない話になってしまった。

「真夜中の太陽」は原案・音楽:谷川浩子、作・演出:工藤千夏。
登場人物は82歳になる老女と、太平洋戦争時、女学校の生徒だった11名と女教師、それに同じく女学校で英語を教えていたアメリカ人の男性教師。この3組は同じ舞台に現われて会話も交わすのだが、実はそれぞれが生きている時間は異なっている。アメリカ人教師は戦争が始まった後、国外へ強制退去させられている。女学校の生徒と女教師は空襲で防空壕に避難した際、爆弾が運悪く防空壕に落ちて全員が死亡している。そして老女は同じ女学校の生徒だったが、一人逃げ遅れたために命拾いをして、戦後も60年あまり生きて平成21年のいま現在82歳になっている。

空襲のあった日、彼女らは歌の稽古をしていた。モンペ姿の若い女性に混じって、老女も同じように席についている。老女のとまどいをよそに、娘たちは彼女を自分達の一員として親しげに話しかけてくる。このあたりから劇中の虚実が揺らぎ始める。そこへアメリカ人教師も顔を出す。空襲の場面では、女学生たちが後方へ下がると、赤い照明がともって防空壕に爆弾が落ちる。必死に止めようとする老女、過去は変えられないと諭す男性教師。そのとき老女とアメリカ人教師のいる場所は、もはや戦時下の学校ではない。アメリカ人教師は国外退去のあと、老女が82歳を迎えた平成21年にはすでに故人になっている。現在も生きている老女が死者達と出会う場所、それは彼女の回想の世界なのだ。

彼女には自分だけが生き残ったことに対する後ろめたさがあった。しかしその回想とも幻想ともつかぬ場所に現われた昔の仲間たちは、彼女が長生きしたことをうらむどころかむしろ喜んでくれる。そして途中で何度か唄いかけて中断した歌がようやく最後まで唄われる。芝居は、いつものお気に入りの椅子に座って眠るように息を引き取った老女を孫が発見するところで終わる。

ファンタジーの名手が送る感動作品。ひねくれた中年のオッサンの心にもぐっと来る。「ビルマの竪琴」や「二十四の瞳」のように、音楽も効果的に使われている。ただ、若手の力試しというラフカットの主旨からすると、女学生たちは一まとめの集団という感じもあって、それぞれが個性豊かに、というところまではいっていなかったのはないか、とも思う。

「アンデスの混乱」は作:鴻上尚史、演出:堤泰之
飛行機の墜落事故現場を舞台にした生存者達のドラマ。「アンデスの奇蹟」と呼ばれた実話がモチーフになっているらしい。この日はちょっと疲れ気味で、そのピークがこの3本目に襲ってきたので、実はあまり内容を覚えていない。墜落事故から3日目、7日目というふうに、時間を飛ばしながら場面を区切って描いていたが、せいぜい30分ほどの芝居なのだからそんなに細かく分けなくてもいいじゃないかと思った。

「父を叩く」は作・演出ともに堤泰之。
これも感動を誘う作品といえるかもしれないが、公演を控えた役者の主人公が重病の父親を見舞うという設定は、ちょっとずるいというか反則ワザに近い気もする。ラフカットではたいがい堤泰之の脚本が一つ上演されるが、ささやかなエロを入れるのも特徴的だ。役者では長身でスタイルのいい安藤彩華が気になった。
いつだっておかしいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校

いつだっておかしいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校

ロロ

新宿眼科画廊(東京都)

2009/07/18 (土) ~ 2009/07/22 (水)公演終了

満足度★★★

前売り/当日¥1500
ネットでの口コミ評価につられての初観劇。新宿眼科画廊というヘンな名前の場所にも惹かれたし、上演時間が約60分というのもふらっと立ち寄るには手頃だった。
若手の劇団で、内容はシュールというかナンセンス系のコメディだった。

終演後の挨拶で、今回は宣伝が遅れて客の入りがよくないので、気に入った方はコリッチやブログで宣伝してくださいと言っていたので、宣伝します。

けっこう面白いですよ、他愛のない内容だけど。

ネタバレBOX

卒業を控えた小学生たちの物語。一人だけテンションの高い女教師と、体から8×4(エイトフォー)を噴霧する謎のペットも登場する。
ギター好きの主人公を演じた役者は亀島一徳だろうか。配役表がないのではっきりしないが、窮地に立たされて焦るまくるというキャラは、ちょっぴり三浦俊輔に似た演技だった。主役だけあっていちばん上手い。
衣裳担当の藤谷香子が快快のスタッフだからというわけではないが、場面転換に踊りを入れたり、照明を極端に変化させたり、衣裳に台詞めいた文字を漫画の吹き出しっぽくあしらってあるところなどがちょっと快快っぽいかなと思ったりもした。
玉響(たまゆら)に… <能「班女」を原作として>

玉響(たまゆら)に… <能「班女」を原作として>

香瑠鼓

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2009/08/06 (木) ~ 2009/08/09 (日)公演終了

満足度★★★

ポッキー
香瑠鼓(かおるこ)というダンス振付家によるプロデュース公演。彼女のことを知ったのは、テレビで見た江崎グリコのお菓子ポッキーのCMで、忽那汐里(くつなしおり)というタレントの踊りがすごく気に入って、ネットのホームページをチェックしたのがきっかけ。

CMや映画など商業ベースで活躍しているという。コンテンポラリーダンスに比べると、この手の振付家の作品をステージで見ることは少ない。過去に思い浮かぶのは、劇団☆新感線で振付を担当している川崎悦子の公演くらい。たしか「LOVE CHAIN」というタイトルだった。

で、今回はポッキーのCMみたいなダンスを期待して見に行ったのだが、内容はそれとは相当かけはなれていた。多面性を感じさせる盛りだくさんな3部構成。

第一部は能の「班女」をベースにした、香瑠鼓の主演による、あくまでも和風テイストの舞踊劇。後半のトークでの解説によると、即興の部分もけっこうあったとのこと。

第二部は日本舞踊と現代舞踊のコラボレーションと題して、TheStylez(すたいるず)というデュオが出演した。花柳輔蔵は日舞、古賀崚暉はHIPHOP。日舞の振りはそれぞれが意味を帯びているし、ヒップホップにもマイムの要素があるので、意外とシンクロしやすいのかもしれない。初めて見たけど、これはかなり可笑しかった。

第三部は日替わりゲストを交えての即興ライブ。振付のほか、香瑠鼓は障害者を積極的に受け入れるバリアフリーワークショップというものにも力を入れていて、その独特のメソッドの一端がうかがえた。

商業ベースで活躍している賜物なのか、客席には小堺一機とウド鈴木の姿があり、第一部の終了後、二人は香瑠鼓に感想を求められ、苦しげに答えていた(笑)。

五人の執事

五人の執事

パラドックス定数

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2009/07/31 (金) ~ 2009/08/09 (日)公演終了

満足度★★★

シツジが1匹、シツジが2匹・・・
執事というものを実際に見たことのある日本人はかなり少数派だろう。映画や小説から、イギリスのお屋敷で働く男性の使用人というのをイメージするのがせいぜいではないだろうか。
私自身は、カズオ・イシグロの小説を原作にした映画「日の名残り」で、アンソニー・ホプキンズの演じた執事がいちばん印象に残っている。
映画を見て感じたのは、執事というのが単に屋敷の使用人の一人ではなく、何人かいる使用人を監督する、いわゆる召使い頭だということだった。
そう考えると、この芝居のタイトルが示すような、一つの屋敷に執事が5人もいるという状況はそもそもありえないのではないか。
序盤からそういう状況設定への疑問を感じたので、なかなか話の内容にすんなりと入っていけなかった。
ただ、話が進むにつれて、執事が5人いるということの疑問は解けていく。
しかし、執事とは何かということに前半で神経を使ったために、込み入ったストーリーを充分に消化できないまま終盤を迎えてしまった、というのが正直なところ。
終演後、作者の野木萌葱が言っていたように、脚本を読めばストーリーの疑問点はそれなりに解消するのかもしれない。しかし、いまいち脚本を買おうという衝動は起きなかった。

ネタバレBOX

結局、最後に残った二人は何だったのだろう。主人と執事の亡霊なのか。それとも一人の執事の記憶なのか。あるいは歴代の執事の残留思念か?
さっぱり!親子丼

さっぱり!親子丼

動物電気

駅前劇場(東京都)

2010/06/05 (土) ~ 2010/06/13 (日)公演終了

満足度★★★

毎度おなじみの
結成されたのが1993年というからずいぶん古い劇団。私が見だしたのは2003年ごろから。とはいってもそれほど熱心な観客ではない。
私の知っている範囲では、小劇場の劇団でいちばん吉本新喜劇に近いのではないだろうか。
一つは芝居の設定が日常的なこと。旅館とか食堂というのはあっても、宇宙ステーションとかスパイというのはあまり出てこない。
もう一つは毎回おなじみの、定番のギャグがあること。これはわかっていてもつい笑ってしまう。森戸宏明のゴムパッチン、高橋拓自のハイキック、辻修の柔軟な体と八墓村の狂気、小林健一の鈍磨した痛覚と即興まじりのフンドシパフォーマンス。

座席は前の2列が自由席で、あとは指定席だった。小林健一の傍若無人なパフォーマンスを楽しみたい人には自由席がオススメかも。

[リゾーム的]なM

[リゾーム的]なM

Dance Company BABY-Q

吉祥寺シアター(東京都)

2009/08/07 (金) ~ 2009/08/09 (日)公演終了

満足度★★★

早出の余禄
開場してすぐに入ったら、開演までまだ30分近くあるというのに、カジワラトシオともう一人、JON(犬)という人の演奏で、東野祥子がすでに踊っていて、結局それは開演間際まで続いた。あとでわかったのだが、今回、東野は本編には出演しておらず、開演前のこのパフォーマンスは、一種のファンサービスだったようだ。6月にやったソロ公演「メス」の続きを見ているようで、これだけでもけっこうおなかが膨れた。

おなかが膨れるといえば、本編では妊婦たちのダンスがあり、風船のような巨乳の女性も登場した。どちらも実際は詰め物。それから後半になると男性3人が女装で現われ、女性陣の激しい群舞とは対照的に優雅な振るまいを見せる。映像では昆虫の交尾シーンが舞台奥に大写しされたが、これはなかなかグロテスクだった。

このへんの表現は、ジェンダーとかフェミニズムを扱ったものだと、パンフに載っている文章の中で、作者がわざわざ解説している。今回はたぶん作り手に徹したせいだろう、批評家的な言説というか、けっこうむずかしい理屈が並んでいるのが意外だった。タイトルに使われているリゾームなんて言葉は、恥ずかしながら拙者、今回の公演で初めて知ったでござる。

面白い場面、いまいちな場面とあれこれあったが、以前、東野のインタビューの中で、寺山修司が好きだといっていたことを、今回の作品を見ているうちに思い出した。彼女の作品に感じるある種の不気味さ、特に異形のものへのこだわりが、寺山作品と繋がっているような気がしたのだ。



サマーゴーサマー

サマーゴーサマー

あひるなんちゃら

OFF OFFシアター(東京都)

2009/08/19 (水) ~ 2009/08/24 (月)公演終了

満足度★★★

サマータイム
劇団の芝居を長く見ていると、脚本や役者の演技にはそれなりに波があるけれど、惚れた弱みというか、一作ごとの出来不出来にはあまり一喜一憂しなくなる。
そんなことを書くと今回は不出来だったのかといわれそうだが、まあ出来としては並の部類ではないでしょうか。

ネタバレBOX

女優が二人しか出ていないというのは珍しいケース。黒岩三佳はほぼヒロインで、場末の映画館の支配人を演じる。もう一人はそんな映画館に唯一熱心に通う映画好きの篠本美帆。

あひるなんちゃらの芝居では、エキセントリックな人が大勢いて、まともな人は少数派、しかも劣勢に立たされるというのが基本的なパターン。今回、男優が8人出ているけれど、まとも派の黒岩を翻弄するような強烈なヘンテコさを持ったキャラが比較的少ないように感じた。黒岩自身が翻弄されるよりも翻弄するほうのキャラだから、翻弄しにくいという面もある。

永山智啓は映画を見ないくせにヒマが出来るとやってきて黒岩とおしゃべりをする人。江見昭嘉は映画といえば英語でしゃべるものだと思い込んでいる勘違い男。澤唯は映画館の入ったビルの再開発を勧める人。佐藤達は映画館へアダルトビデオを借りにくる勘違い学生。小林タクシーは自主制作の映画を上映してくれと頼みに来る人。根津茂尚と関村俊介は学習意欲に目覚めた江見の教育係。石田順一郎は黒岩に子供の宿題を催促する彼女の兄。

芝居の設定としてヘンテコなのは、黒岩が甥や姪の夏休みの宿題を懸命に片付けようとしていること。それが彼女の家の代々の伝統だという。彼女がこのまま夏が終わらなければいいのに、とつぶやいたのが原因かどうかはともかく、そのあと夏がずっと定着して、彼女の宿題も延々と続くという、不条理劇のような、あるいはシュールなファンタジーのような状況になる。



悪趣味

悪趣味

柿喰う客

シアタートラム(東京都)

2009/09/04 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了

満足度★★★

いちばん怖いのは場内アナウンスかも
9月5日の本編と、9月7日のスクランブルキャスト(配役総入れ替え)を見てきた。

本編ではどういうわけかいつもの魅力がいまひとつ感じられず、どうしてだろうとあれこれ考えたが結論は出なかった。続いて配役総入れ替えの公演を見たのだが、これが予想外に面白くて、どうやら本編での不満は配役によるところが大きかったようだ。

大部分の役者が入替によって本編よりも良くなっていると感じた。入替はちょっとどうかと思ったのは高見靖二のメイド役ぐらい(笑)。片桐はずきはどちらの役でも光っていた。中屋敷法仁の家庭教師役がなくなっていたのも正解かも。本編ではかなり滑舌が悪かったから。

ただし、本編を見たのは公演開始の2日目だし、スクランブルキャストの公演でもすでに内容の一部が修正されていたので、公演が進むにつれて本編もどんどん良くなっていく可能性がある。

ネタバレBOX

参考までに両方の配役を書いておきます。
本編(役)スクランブルキャストの順で、

永島敬三(大学教授)須貝英
七味まゆ味(女子大生)片桐はずき
村上誠基(自殺未遂女)渡邊安理

コロ(綾町家・母)深谷由梨香
深谷由梨香(綾町家・長女)玉置玲央
本郷剛史(綾町家・長男)國重直也
國重直也(綾町家・次男)本郷剛史

梨澤慧以子(メイド)高見靖二
須貝英(河童)永島敬三
片桐はずき(子供・キュリー夫人)高木エルム
中屋敷法仁(家庭教師) ・・・・

齊藤陽介(不良・金属バット)コロ
佐野功(不良・猟銃 ほか)浅見臣樹
瀬尾卓也(不良・斧 ほか)出来本泰史
佐賀モトキ(不良・鎌 ほか)熊谷有芳

高見靖二(霜田村青年団長)齊藤陽介
野元準也(青年団員)柳沢尚美

渡邊安理(車椅子ババア)梨澤慧以子
高木エルム(ゾンビ村長)七味まゆ味

伊藤淳二(警部)野元準也
浅見臣樹(巡査)伊藤淳二

川口聡(不良・鎌の母 ほか)佐賀モトキ
柳沢尚美(看護婦 ほか)佐野功
熊谷有芳(駄犬 ほか)川口聡
出来本泰史(マスクの男)瀬尾卓也

玉置玲央(町医者)村上誠基
リフラブレイン

リフラブレイン

MCR

駅前劇場(東京都)

2009/10/29 (木) ~ 2009/11/03 (火)公演終了

満足度★★★

あねおとうと
ここでの評判がよさそうなので、ふらっと観劇。MCRの作品は前に一度だけ、新宿村という空き地のそばの会場で見たことがある。あのときはたしか小椋あずきと劇団あひるなんちゃらの黒岩三佳が出ていた。今回も印象としてはあのときとそれほど変わらない。
作・演出・出演をこなす主宰の櫻井智也の才気が突出している。その意味では、劇団FICTIONの山下澄人に似ている。どちらも主宰が役者としても目立っていて、ワンマン色の濃い劇団だと思う。

ネタバレBOX

客席を二手に分けて、その中間が舞台になっていたが、こういう形を駅前劇場で見たのはたぶん初めてだ。
ただ、演技スペースはかなり細長くなっているので、役者は横向きで演じることが多く、客席を向くことは比較的少なかったように思う。
場内の壁に貼ってある座席の列の表示がA、C、D、Eとなっていて、B列が抜けていたのが謎だった。

話の内容は両親に見捨てられた姉と弟の貧乏物語。ちょっと前に話題になった田村裕の「ホームレス中学生」を彷彿とさせる設定だった。あちらの主人公には姉と兄がいたが、こちらにはたくましい姉が登場する。演じる石澤美和は弟役の櫻井に引けを取らない堂々たる演技だった。

人情劇というドラマの部分に対して、笑いの部分はかなりコントっぽかった。中川智明の演じる借金取りがやたらと人生哲学めいた台詞を吐くところでは、作者のナマの声が聞こえてくるようで、キャラクター的にはあまりリアリティが感じられなかった。

この間、あひるなんちゃらの芝居に出ていた江見昭嘉は、ヨーロッパ企画の土佐和成に似た飄々とした雰囲気がある。


ミツバチか、ワニ

ミツバチか、ワニ

あひるなんちゃら

駅前劇場(東京都)

2010/03/04 (木) ~ 2010/03/08 (月)公演終了

満足度★★★

クジラもいたか!
動物臭の濃厚な今回の公演だとは思ったが、まさか墨井鯨子という4文字のなかにも動物が隠れているとは思わなかった。ところで彼女の名前は「くじらこ」という読みでいいのだろうか?

ネタバレBOX

観劇した人の評価がいつになく高かったので、期待と不安が半々の状態で見に行ったが、個人的な評価としては、いつも通りかそれよりもちょっと下くらいの内容だった。

黒岩三佳、異儀田夏葉、篠本美帆、墨井、これに劇団クロムモリブデンの女優を加えた顔ぶれは、以前にやった「フェブリー」を思い出させる。(前回クロムから出たのは金沢涼恵で、今回は渡邉とかげ〉。あのときの女優陣は劇団史上最強といってもいいくらい全員がツボにはまっていたが、今回は同じような顔ぶれながらも「フェブリー」ほどの面白さが感じられなかったのは、たぶん脚本のせいだろう。

舞台の左右にそれぞれテーブルと椅子が置いてあり、下手は占いの館の一室で、上手は客としてやって来た青年(根津茂尚〉の住まいという設定。照明を交互に当てて場面転換をしていた。
途中、墨井の演じる占い師が、時空を越えて一気に隣の場面に移動しようとするのを、共演者が制止するというちょっとメタなギャグがあった。また、青年のガールフレンドの兄という役柄で作演出の関村俊介が登場したときに、異儀田演じるキャラクターを役名ではなく、いきなり役者の本名で呼んでビールを要求したのも、これまでの「あひる」にはないメタなギャグだった。

占いの館には3人の占い師(墨井、黒岩、渡邉〉と従業員(日栄洋祐〉と無能な社長(登米裕一〉がいる。いっぽう青年の部屋には友人やその知り合い(三瓶大介、中野加奈、澤唯、関村〉、そしてほとんど無関係な二人組(異儀田、篠本)が登場する。
異儀田と篠本の扱いは、「フェブリー」で演じた幽霊コンビに近く、漫才めいた二人の掛け合いは放し飼いでもOKなくらいの絶妙さ。実際、芝居が進むにつれて二人はだんだん動物化していった。
青年の知り合いがペットショップの店員で、逃げ出した(実際には店員のガールフレンドが逃がしてしまうのだが〉ペットの行方を占いで当ててもらおうとする。
逃げ出したペットのうち、一部は人間に化けて小劇場の劇団に紛れ込んだというのが、今回の公演のメタな解釈として妥当ではないだろうか。
世田谷カフカ 

世田谷カフカ 

ナイロン100℃

本多劇場(東京都)

2009/09/28 (月) ~ 2009/10/12 (月)公演終了

満足度★★★

正月気分
千秋楽に見てきた。ケラの芝居は劇団健康がナイロン100℃に変身してまもないころから見出したので、エチュードをやりながら作ったという今回の作品は、なんとなく昔のやり方にもどった感じがする。最近の作品から入った人は戸惑ったりするのでは?

ネタバレBOX

基本的にはカフカをメインにしたコント集っ感じ。はじめと終わりに劇団員3人が登場して、一応メタフィクションのような体裁になっている。冒頭では村岡希美、廣川三憲とともに、若手の水野顕子が自分の不条理体験を椅子に腰掛け、客席に向かって、世間話ふうに語った。廣川が語る稲荷の本尊、キツネかタヌキかのエピソードなどはその後もネタとしてまた出てきた。
若手の水野は抜擢という感じで使われていたが、彼女の鼻にかかった声が誰かに似ているとしばらく考えているうちに、12月にこの本多劇場に出演する麻生久美子の声だと気づいて、ようやくモヤモヤがすっきりした。
中盤、彼女がこの芝居の台本を持って自分の部屋で稽古するうち、デブの彼氏と喧嘩別れする場面が面白かった。
そこへ友人の植木夏十がやってきて、人形芝居を始めるようすをなぜかカメラが捉えて、下手のスクリーンに大写しする。
舞台の様子をライブでスクリーンに映すというのはときたま見かけるけど、ケラの作品ではひょっとしたら初めてかもしれない。
映像といえば、序盤のダンスとの合成が凄かった。個人的にはあそこがこの作品のハイライトといってもいいくらい。後半も楽器を奏でる人間に直に映像を重ねて面白い効果を出していた。この部分だけを切り取って、コンテンポラリーダンスのショーケースである「吾妻橋ダンスクロッシング」に出してもきっとウケルだろうと思う。

今回はカフカの長編を題材にしているということで、小説の内容を舞台に再現する場面もあったし、中村靖日の演じるカフカ本人も登場した。しかしそうした場面は雰囲気が暗めで、衣裳も黒っぽく、肝心のカフカの小説の面白さが充分に伝わっているとは思えなかった。
ちなみに、私のカフカ体験は、小説は虫だけのクチ。「城」と「審判」は舞台や映画を見て大筋は知っている。ウチにカフカの短編全集というのが積読の状態で置いてあるので、この芝居を機にできれば読み始めたいと思う。

この日の座席はN列だった。本多劇場はD列とE列の間が通路になっているが、ここと客席後方へ延びる二つの通路が、演技スペースとしてたびたび使われた。通路に展開した役者たちが少年王者舘の芝居を思わせる群唱で、宮沢賢治の詩「雨にもマケズ」のパロディをやったのが可笑しかった。食べた野菜はたしか4キロだっけ?
本多劇場で芝居を見る場合、経験的にE列以降を選ぶようにしているのだが、(A~D列は段差がないし、そもそも舞台に近すぎる)、今回の芝居ではそれが大いに幸いして、むりやり体と首をひねって見るという苦労をせずにすんだ。あれも一種の不条理だと思う。

以上、思いつくままに感想をだらだらと。

最後にひとつ、客演の横町慶子は何年ぶりかで見たが、そのナイスバディは健在だった。



『ROMEO & JULIET』

『ROMEO & JULIET』

東京デスロック

富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ(埼玉県)

2009/10/24 (土) ~ 2009/10/28 (水)公演終了

満足度★★★

アジアのロミジュリ
個人的な事情から、岡崎藝術座するべきか、東京デスロックにするべきか、というハムレットなみの苦しい決断を迫られて、結局選んだのがこちら。

ネタバレBOX

東京デスロックの「ROMEO &JULIET」は去年、キラリ☆ふじみで上演された「大恋愛」のワンパートと基本的には同じだろうと思っていたから、当初はパスするつもりだったのだが、韓国バージョンを見た人の強力なプッシュもあったので改めて見てみることにした。

序盤に演じられたやりとりは、2年前にリトルモア地下で上演された「演劇LOVE~愛の3本立て~」のひとつ、「LOVE」を彷彿とさせる。
舞台上の人物が一人ずつ増えていき、その過程で他者が内輪に受け入れられていく様子を無言のパフォーマンスで表現したものだった。これはのちに東京デスロックとは別の公演、Castaya Projectでも見たことがある。

意外なことに、韓国の役者が演じることで、日本の役者が演じた他のバージョンとはずいぶん違うインパクトがあった。本編である「ロミオとジュリエット」に入ってからも決して悪くはないのだが、どういうわけか序盤のこのパフォーマンスを見ているうちに何度も涙腺が緩んできた。言葉の通じない役者たちが演じているにもかかわらず、作品の意図するところがビンビン伝わってくる、たぶんそのことが予想外に感動的だったのだろうと思う。

本編のロミジュリでは、序盤で示された群れの力学みたいなものが役者たちの動きによってそのまま引き継がれ、一方、台詞の面では従来通りのシェイクスピアのドラマが演じられる。相反する役者たちの言葉と動きが、愛し合う二人と憎みあう両家の愛憎関係にうまくマッチしているように思えた。

出演した韓国の女優のうち、踊りっぷりのいい一人が特に印象に残った。体つきは華奢で小柄だが、顔立ちは日本の女優の洞口依子にちょっと似ている。名前はわからない。

韓国バージョンを見ていてふと思ったこと。
日本の場合は黒いスーツに黒いネクタイといえば喪服のイメージだけど、韓国ではどうなのだろう。中国では喪服は黒ではなく白だという話を聞いたことがあり、韓国も儒教の影響が大きいから、ひょっとしたら日本スタイルの衣裳を喪服とは感じていないのではないだろうか?




生きてるものか【新作】

生きてるものか【新作】

五反田団

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2009/10/17 (土) ~ 2009/11/01 (日)公演終了

満足度★★★

かのもるてき生
旧作は前に見たので私は新作しか見なかったけれど、両方見る人はやっぱり旧作のほうから見るのが正解だろうと思う。どちらもワン・アイデアを作品全体に膨らませたものだが、ディテールが充実しているので、設定がわかってからでも退屈することはない。

これから見る人はネタバレBOXを開かないほうがいいと思う。念のため、阿佐ヶ谷スパイダースの次回公演を見る予定の人も。

ネタバレBOX

今はそうでもないけど、以前はSF小説が好きでよく読んでいた。今回の芝居と同じアイデアはフリッツ・ライバー、J・G・バラードの短編、フィリップ・K・ディックの長編小説でも使われている。未読だけどボルヘスの作品にもある。
ただ、舞台劇や映画では見たことがない。クリストファー・ノーラン監督の映画「メメント」が比較的似ているかもしれない。
物語の時間を逆行させて描くというアイデアだけど、単純にフィルムを逆回しするのとはだいぶ違う。だいいち、フィルムを逆に回したら音声は聞き取れなくなってしまう。また、台本の会話を時系列的に、ただ逆に並べただけでもない。ちゃんと状況がわかるように、ある程度まとまったやりとりを一単位にして、その順番を並べ替えてあるのだ。

久しぶりに、終演後に上演台本を買って帰りにちらっとのぞいてみたが、舞台の場面を思い返しながらでないと、ただ台本を読んだだけでは内容がかなりわかりにくかった。舞台で見てこその作品、ということだろう。

死体が息を吹き返すとき、役者たちがあれこれと面白い動きを見せてくれる。ダンス好きにとっては、これもけっこう楽しかった。暗黒舞踏というのも、いってみれば死体が踊っているようなものだし、西洋には「死の舞踏」という言葉もある。

ところで、阿佐ヶ谷スパイダースの次回公演は「アンチクロックワイズ・ワンダーランド」というタイトルらしいが、内容的にこの作品とかぶるのではないか、とちょっと気になる。
jam 【活動休止公演】

jam 【活動休止公演】

グリング

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2009/12/09 (水) ~ 2009/12/23 (水)公演終了

満足度★★★

いつかまた
初演の会場はザ・スズナリで、座席はごく普通の形だったが、今回はベニサンピットとかでよくやっていた「客席・舞台・客席」のサンドイッチ形式。その最前列に座ったものだから、身近すぎる役者の緊張ぶりが、芝居内容を上回る感じで伝わってきた。できればもっと後ろの席で見たかった。

ネタバレBOX

初演は6年前。案の定、内容はかなりの部分を忘れていた。覚えていたのは、舞台がペンションだということ、歳の離れたカップルの存在、あとはとりあえず良い芝居だったという全体的な印象。
夫婦で経営していたペンション。妻の妹も手伝っていたらしい。妻は何年か前に事故で亡くなっている。その後、夫と妹で経営を続けてきた。夫が婿養子だということを姉が問題視する。もし彼が再婚すればペンションの経営が妻の血縁者の手からまったく離れてしまうというのだが、それってそれほど重要なことだろうか。そもそもペンションの所有は誰の名義になっているのだろう。
夫と妹が結婚すればうまく収まりそうな気もするが、人の気持ちはそう簡単には片付かない。好きな人には思いを伝えられず、好きな相手は別の誰かに気があって。
混線気味の恋愛模様を描いた群像劇ってところか。地元の音楽グループにベートーヴェンの第九を指導する音楽家がいて、彼の送別会が開かれようとしている。永滝元太郎が演じるその音楽家先生の胡散臭さは、テレビ版「のだめカンタービレ」で竹中直人が演じた音楽家と対決させてみたくなる。彼が絡む場面は恋愛劇の中でもラブコメのパートといっていい。
合唱の伴奏係を務めるピアノ弾きの女性は、育ちのよさと、異性関係にルーズな雰囲気が同居していて、配役的に松本紀保は合っている気がする。
夫と妹を演じるのはグリングのメンバーである中野英樹と萩原利映。妹が思いを寄せる近所の男を演じる小松和重は初演からの続投。あくまでも脇の人物で、大麻や眠剤を持ち歩くちょっとやばそうな青年役は遠藤隆太。本来はグリングのメンバーである杉山文雄が演じるはずだったが、病気による降板で急遽の代役。風貌はたしかに誰かが指摘していたようにナイロン100℃の大倉孝ニに似ている。一方、台詞をしゃべるその口調は杉山にかなり似ていた。今回でグリングは活動休止ということなので、せっかくだからほかの配役も書いておく。姉役の佐藤直子も初演からの続投。歳の離れたカップルは澁谷佳世と廣川三憲。初演では山脇唯と鈴木歩己が演じていたが、それに比べると今回のほうがありえなさ加減がアップしている。

これまでに見たグリング作品9本の中では、「海賊」がベストだと思う。
モグラの性態

モグラの性態

ぬいぐるみハンター

参宮橋TRANCE MISSION(東京都)

2010/03/25 (木) ~ 2010/03/31 (水)公演終了

満足度★★★

無料で観劇、略して観無料
初見の劇団。コリッチのチケットプレゼントに応募したら当たってしまった(しまったってこともないが)ので、早速見てきた。クジ運の悪い私が当たるくらいだから、席にはだいぶ余裕がある模様。ストーリーに勢いがあるし、役者も悪くないので、ただで見させてもらった御礼もかねて、オススメしときます。

内容は小劇場に若手劇団が存在するかぎり永遠になくならないんじゃないかと思う、いわゆる童貞コメディ。

ネタバレBOX

壁をおおいつくすポスターやチラシ。ゴミが散らかり、古びた家具が置いてある、そこは学校の部活の部室。なんの部活かは部員たちにもわからなくなっている。いきなりフォアグラだかフェラチオだかの場面から始まるあたりは、ポツドール的な内容かと思ったが、舞台下手の盛り土からモグラの着ぐるみを着たキャクラターが現れたので、最初の予想は裏切られた。
童貞部員4人(安藤理樹、川口聡、平舘宏大、猪俣和磨)の熱くて愚かしいやりとりを軸にしつつも、話の設定にはちょっとSF的というか荒唐無稽なところがある。学校には援助交際をする女子グループが校長の許可を得て部活に昇進したり、フロリダではコンドームの開発チームが男女関係のもつれから全世界にエイズを広めてしまったり。

周りの役者の反応から判断して、一部にはアドリブで台詞をしゃべっている役者もいるようだった。演技のスタイルも話の展開も、いろんな要素が混じっていてちょっとつかみ所がないのだが、役者陣の好演もあって、最後まで面白く見られた。
H3(グルーポ・ヂ・フーア)

H3(グルーポ・ヂ・フーア)

フェスティバル/トーキョー実行委員会

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2009/11/07 (土) ~ 2009/11/11 (水)公演終了

満足度★★★

疾走ストリート
ブラジルから来たヒップホップ系のダンスグループ。出演は男ばかり8名。ヒップホップ、ストリートダンス、ブレイクダンス、こういう言葉の定義もよくわかっていないうえに、実際にナマで見るのも映像で見るのに比べたらずっと少ない。なので、このグループのダンスがヒップホップの中でどういう位置を占めていて、どういうタイプに分類されるのか、そういったことはよくわからない。身体能力の高さ、迫力のある動きはそれだけで充分に楽しめる。

とりあえず見て感じたことを書いておくと、

もっと音楽に乗って踊るのかと思ったら、意外とそうでもなかった。序盤は舞台前方、最前列の客の目の前を横に移動する感じで1~3人が交互にパフォーマンス。バックには街の騒音がスピーカーからのどかな感じで響いていた。ダンサーたちは自分の体の中にあるリズムで動いていて、ノイズは動きを合わせるときのきっかけ程度という感じ。流動的なエネルギーが体の中をかけめぐっていて、その流れが体の動きになって現れているという、ヒップホップらしいダンス。それに加えて2人が絡み合うときの、互いに体の接触を寸止めしながら動いている感じは武術的でもあった。男たちのすばしっこくて喧嘩慣れした雰囲気は、この間「吾妻橋ダンスクロッシング」で初めて見たcontact Gonzoのようなガラの悪い不良っぽさも感じさせる。序盤のこのパフォーマンスを間近で味わうという意味では、座席は最前列がオススメ。

中盤からは後方の広いスペースが使われる。バスケットボールを投げ込みたくなるくらいのスピードでダンサーたちが走り回るところは、私のヒップホップのイメージにはなかったもの。頭の上下動が少ない摺り足で、ブーメランふうというか、U字を描いてかけだし、かけもどる。また、スクワットふうに腰をかがめた状態で、かなりのスピードで体を回転させながら弧を描くように移動するというのもあった。

上演時間は50分ほど。ヒップホップのダンス映像を見ると、あまり長い時間踊るというものは少ない。この作品では照明や美術や音楽で変化をつけたりして最後まで退屈することはなかったが、それでも序盤に比べると印象度は弱まってくる。途中で、首を前後に動かして鳥の動きを模していたのが唯一、コミカルな息抜きだった。

ときどきダンサーが上体をのけぞらせ、喉仏を空に向ける感じで何度も反り返っていた。あれは単に振りの一つなのか、それともああすることで呼吸が楽になったりするのか、そんなことも見ながら考えた。

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