ラフカット2009 公演情報 プラチナ・ペーパーズ「ラフカット2009」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    知らない役者ばかり41名
    久しぶりに見るラフカット。プラチナ・ペーパーズのホームページで過去公演の記録をちょっと覗いてみた。私が見たのは1995、1996、2000、2003年の4回。出演者の中には当時は全然知らなかったが、今なら知っているという名前がそこそこある。ハイバイの岩井秀人とヨーロッパ企画の土佐和成がG2の作品で共演していたり、ケラの作品に親族代表の竹井亮介が出ていたりする。もっとも竹井の場合は今も親族代表の公演でケラに脚本を書いてもらっている。私が見ていない回でも、あひるなんちゃらの黒岩三佳とかグリングの青木豪が役者で出ていたり。
    どういうわけか私の場合、ラフカットの舞台で見た役者のことがほとんど記憶に残っていない。とくにスペースゼロのような大きな会場で座席が後方だったりすると、単純に役者の顔がよく見えないのだ。その意味では、東京芸術劇場の小ホールでやった1995年の第1回目は、舞台が近かったこともあり、印象に残った役者が二人いる。ラッパ屋の鈴木聡作品に出ていた佐藤奈美と堤泰之の一人芝居に出演したかないまりこ。残念ながら二人とも最近は消息を聞かない。

    最初のころはケラやじんのひろあきも脚本を提供していて、当然ながら無名の役者よりは脚本家を目当てに出かけていた。
    今回もひさしぶりに見る気になったのは、4本立てのうちの1本が青年団演出部の工藤千夏の作演出だったから。

    ネタバレBOX

    感想を上演順に。4本とも時間は30分ほど。

    「職員会議」は作:G2、演出:堤泰之。
    生徒の代表を交えて行う職員会議で、女子生徒が弁護士を連れて現われ、一人の男性教師をセクハラ容疑で追及しはじめる。教師が生徒によって追い詰められる話といえば、デビッド・マメットの「オレアナ」やリリアン・ヘルマンの「子供の時間」があるが、生徒の年齢はちょうど両者の中間あたり。時間が短いなりに話は楽しめた。男子生徒がやたらドモってしゃべるのが、緊張を表現する演技なのか、それとも本当にドモリの役なのかがわかりにくかった。私が子供のころはドモリというのはそれほど珍しくなかったが、最近はドモリというものにまったくお目にかからない。今は学校にドモリの子供がいたら、いじめにあうんじゃないだろうか。催眠術とかで簡単に治療ができるのだろうか。最近のドモリ事情というものがちょっと気になる。
    芝居とは関係のない話になってしまった。

    「真夜中の太陽」は原案・音楽:谷川浩子、作・演出:工藤千夏。
    登場人物は82歳になる老女と、太平洋戦争時、女学校の生徒だった11名と女教師、それに同じく女学校で英語を教えていたアメリカ人の男性教師。この3組は同じ舞台に現われて会話も交わすのだが、実はそれぞれが生きている時間は異なっている。アメリカ人教師は戦争が始まった後、国外へ強制退去させられている。女学校の生徒と女教師は空襲で防空壕に避難した際、爆弾が運悪く防空壕に落ちて全員が死亡している。そして老女は同じ女学校の生徒だったが、一人逃げ遅れたために命拾いをして、戦後も60年あまり生きて平成21年のいま現在82歳になっている。

    空襲のあった日、彼女らは歌の稽古をしていた。モンペ姿の若い女性に混じって、老女も同じように席についている。老女のとまどいをよそに、娘たちは彼女を自分達の一員として親しげに話しかけてくる。このあたりから劇中の虚実が揺らぎ始める。そこへアメリカ人教師も顔を出す。空襲の場面では、女学生たちが後方へ下がると、赤い照明がともって防空壕に爆弾が落ちる。必死に止めようとする老女、過去は変えられないと諭す男性教師。そのとき老女とアメリカ人教師のいる場所は、もはや戦時下の学校ではない。アメリカ人教師は国外退去のあと、老女が82歳を迎えた平成21年にはすでに故人になっている。現在も生きている老女が死者達と出会う場所、それは彼女の回想の世界なのだ。

    彼女には自分だけが生き残ったことに対する後ろめたさがあった。しかしその回想とも幻想ともつかぬ場所に現われた昔の仲間たちは、彼女が長生きしたことをうらむどころかむしろ喜んでくれる。そして途中で何度か唄いかけて中断した歌がようやく最後まで唄われる。芝居は、いつものお気に入りの椅子に座って眠るように息を引き取った老女を孫が発見するところで終わる。

    ファンタジーの名手が送る感動作品。ひねくれた中年のオッサンの心にもぐっと来る。「ビルマの竪琴」や「二十四の瞳」のように、音楽も効果的に使われている。ただ、若手の力試しというラフカットの主旨からすると、女学生たちは一まとめの集団という感じもあって、それぞれが個性豊かに、というところまではいっていなかったのはないか、とも思う。

    「アンデスの混乱」は作:鴻上尚史、演出:堤泰之
    飛行機の墜落事故現場を舞台にした生存者達のドラマ。「アンデスの奇蹟」と呼ばれた実話がモチーフになっているらしい。この日はちょっと疲れ気味で、そのピークがこの3本目に襲ってきたので、実はあまり内容を覚えていない。墜落事故から3日目、7日目というふうに、時間を飛ばしながら場面を区切って描いていたが、せいぜい30分ほどの芝居なのだからそんなに細かく分けなくてもいいじゃないかと思った。

    「父を叩く」は作・演出ともに堤泰之。
    これも感動を誘う作品といえるかもしれないが、公演を控えた役者の主人公が重病の父親を見舞うという設定は、ちょっとずるいというか反則ワザに近い気もする。ラフカットではたいがい堤泰之の脚本が一つ上演されるが、ささやかなエロを入れるのも特徴的だ。役者では長身でスタイルのいい安藤彩華が気になった。

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    2009/11/12 00:19

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