
第73回「a・la・ALA・Live」
a・la・ALA・Live
座・高円寺2(東京都)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/07 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/04/07 (木) 19:00
4月7日(木)19:00開演のa·la ♪ALA ♪ Live あ·ら ♪ あら ♪ らいぶ 第七十三回 2022年という、言うなれば、現代版の寄席を座·高円寺2というところで観てきました。
ボヤき芸に、どう見ても若くはないのにキャピっとした感じを全面に押し出したイタさ全開の笑い、ネガティブで生真面目だが、どこかズレている女性と、ポジティブでハイテンションな女性という、全く性格が違う人物を一人で演じ分け、二人のキャラのあまりの違いを誇張しての笑いなど、休む間もなく笑えて、お腹がよじれるぐらい笑えて、日々のストレスも吹っ飛ぶぐらい面白く、飽きなかった。また、二人の全然性格の違うキャラクターを見事に演じ分けていて、感心してしまった。
第1部途中や、2部の最初や途中にところどころ出てくる《オペラ座の道化師》みまなる人物による、しつこい笑いや自虐ネタなどによる笑いで、徹底的に笑わせられつつ、いざオペラを歌い始めると、それが格段に上手過ぎて、心底聞き入ってしまい、その音階の使い方などの超絶技巧に感心してしまった。
第1部のトリを飾ったパントマイムと朗読を組み合わせたバーバラ村田と、それに音楽で協力する出演者3人とが見事に息があっていて、そのジャンルの違う人たちが共演すること、パントマイムと朗読、そしてダンスに音楽という組み合わせが次第にシンクロしていくことで、舞台上に現代アートパフォーマンスと言って良いものが出現し、思わず目を見張り、ただ、ただ、感嘆した。また、朗読しつつ、踊るバーバラ村田が、その踊りもさることながら、太宰治作『女生徒』の少女の悩みや葛藤、大胆な部分や儚さ、太宰作品特有の自分探し的なところや淡々とした独白、耽美な雰囲気などを声質に強弱をつけたり、表情や手足や肉体全体をダイナミックに動かしたりして、太宰独特な世界観を醸し出していて、思わず、魅入ってしまった。
第2部最初の講談も、女性の講談師だったが、マクラで、現代の仮想現実の話を導入したりしながら、明るく、面白く、話をしていて、講談を普段ほとんど観に行かない私でも講談の世界に入って行きやすく、親しみやすかった。本題の講談も、赤穂浪士のうちの一人に焦点を当てており、一見堅苦しい話になるかと思いきや、舟渡したちが女形の歌舞伎役者と勘違いして本物の赤穂浪士の侍にいちゃもん付けて、詫び証文まで書かせるという、肩の力を抜いて楽しめ、更に廻船問屋親方の娘で、荒くれな船頭衆を取りまとめるお市といい、腕っぷしも強く、歯に衣着せぬ物言いという女性がキャラが立っているうえ、格好良く、女性講談師のこ気味の良い江戸弁も癖になり、物語に自然と引き込まれた。

ちろうに検診
Peachboys
サンモールスタジオ(東京都)
2022/03/30 (水) ~ 2022/04/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/04/01 (金) 19:00
タイトルからして大人気を博し、映画も大ヒットを飛ばした漫画『るろうに剣心』からあからさまにパロっていて、且つ、シモネタ臭がプンプンする雰囲気に興味をそそられ、何とも胡散臭く、怪しく、しかしそれでいてしょうもない雰囲気のチラシに思わず魅入り、興味本位でいつの間にか劇場に足を運んでいた。
前説で出てきた際の第一印象は、生真面目そうに見えた役者が、前説を話だしとたんにぼやき節で、のらりくらりと脈絡なく話しながら、さり気なく客いじりを徹底的にしつつ、急に自分たちの劇団を卑下したり、態度がデカくなったり、図々しくなったりと目まぐるしい変化に飛んでいて、そのギャップに脱帽し、気付いたら私自身も大笑いしていた。この俳優、絶対に人を笑わせる際に長けていると直感した。
本編が始まっても、いきなり過激な下ネタ笑いが連続して起きたり、実在人物の尾身茂がただの変態スケベオヤジに描かれ、内閣府コロナウィルス対策課を略すとチンコロになるだとか、菅義偉前首相のいかにもやる気のなさそうな、それでいて人を苛立たせる特徴的な棒読み音声を途中で流して、すぐにもう良いと言ってドアを閉める動作を役者がしたり、石破茂が権力と金を傘に来て、女を侍らすセクハラ野郎として描かれたり、ひろゆきがフォロワー数で稼ぐことを極端に誇張してやゆり倒す笑いなど、政治ネタや社会問題、芸能人の不倫ネタなどを徹底的にイジり倒し、皮肉り、乾いたブラックな笑い、おミクロン株をも笑いのネタにし、余りにくだらなく、しょうもなく、意味もない笑い、下世話で品のない笑い、佐藤健主演のドラマや藤原竜也主演の映画『24時間』などのドラマや映画のパロディ、アニメ『ワンピース』、『ドラゴンボール』、ゲーム『マリオ』などのタイミングのズレた笑いや下世話な展開含めた笑い、自分の劇団をこき下ろす過剰な自虐笑い、まじめで感動的なふうに見える場面や緊迫したアクション場面で、急に下ネタや現実の劇団の苦境、上演時間を持ち出したりでの赤裸々で現実問題を突きつけるハードでシビアな自虐笑い、可愛らしい女の子が急に豹変しキャラが変わることによるギャップ笑い、さらに2部のレビューも含めて、昔から今のなにわ男子やMATURI NAINなどのアイドル、山下達郎などのアーティストの曲さえも下卑て、くだらないノリになっていて、笑いが連鎖し、飽きることなく抱腹絶倒、お腹がよじれ、胸が張り裂け、眼玉が飛び出、顎が外れ、耳が聴こえなくなるんじゃないかというぐらい大笑いし、笑い転げ、全篇笑いっぱなしで、日々のストレスやもやもやしたものも吹き飛んでスッキリした。笑うことは健康に良いというが、こんなにも楽しく気持ちの良いことなのか改めて実感した。それにしても、コメディと銘打った劇とはいってもここまで観客をさり気なく巻き込み、全篇に渡って笑わせてくれる劇なんて未だかつて、あんまり出会ったことがなかったので、貴重な体験ができ、役者と観客との距離感が完全に取っ払われていて安心し、これぞ演劇だと感じた。
木村拓哉や佐藤健、ミュージシャンの布袋寅泰に似た役者が主役や主演級で出ていたが、徹底的に見た目の第一印象と実際とにかなりの落差を出し、下世話な笑いやくだらない笑い、ドタバタギャグと立て続けにギャグを連発して、キャラを完全に崩壊させていて、人を笑わせるセンスを感じ、女優の人たちもそれに引けを取らず、下ネタを、男性の役者に負けず落とらずで、1ミリの恥じらいも見せず、やりきる辺り、プロの役者だと感じ、更にアドリブをいきなりぶっこんでも、男女問わずの役者ともブレずに、コミカルな掛け合いをしたり、歌のシーンでも上手い役者が結構いたりというのを観て、瞠目し、感心してしまった。

ながいながいアマビエのはなし
劇団 枕返し
小劇場メルシアーク神楽坂(東京都)
2022/03/31 (木) ~ 2022/04/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
鑑賞日2022/03/31 (木) 18:00
タイトルは謎めいた雰囲気で、
イラストも劇の展開が読めない感じに惹かれて、多少期待して観に行った。
しかし実際には、非常に残念なことに、劇の内容も展開も、あらすじとほとんど変わらず、単調で、捻りがなく、それぞれのキャラクターが一部を除いて、それを演じる役者も含めて際立たず、私の予想を良い意味で裏切ることをせず、想定内どころか、想定内以下過ぎて、がっかりだった。
また、役者の演技も、2、3、4人の役者を除いて、演技が上手だとか、下手だとかいう以前のレベルで、学生演劇以下に見え、失望した。
ただ、2、3、4人の役者に関しては、役によって、しっかりと演じ分け、時に豹変した演技に魅入ってしまうぐらい、申し分なく、素晴らしく、これからも期待できる逸材に思えた。
演出の都合だか、それともコロナの自粛期間のあたりがメインテーマになっているからか知らないが、劇全篇のほとんどを、途中の一瞬の例外を除き、演者がマスクを付けたまま演技をしているのは、いかがなものかと思った。周りの状況がどうとか、そういうことではなく、演劇というのは観客に虚構を観せせるものであるので、それに役者は身体の動きとともに表情の変化も大事なので、マスクをするぶん表情が読み取りづらく、笑える場面でも、付けずに演じるときほど素直に笑いづらいし、観客側が反応しづらくなるので、絶対にマスクはなしで演じたほうが良いともう。それに行政も演劇を行うことにおいて、絶対にマスクを付けて公演してくださいと入ってないはず。演劇を演る人間が世の中の流れに過剰反応するのはどうかと感じた。
演出も全然なっていないし、一部を除いて、役者も見込みゼロだと感じたが、そもそも、脚本が一人一人の役者の個性と向き合ってあて書きすることをしていないと感じ、脚本内容と脚本家が一番言いたいことがあまりにもあけすけに出過ぎていて白けてしまい、かなり落胆した。
アマビエ役の人たちの格好が奇抜で、特に劇中でお兄ちゃんと言われたほうのアマビエ役の俳優は濃く、見た目はかなり不気味で怖さを感じさせるメイクをしていて、人目を引くが、実際に話をしだしてからとの演じているキャラクターのギャップに意外性を感じ、驚いた。

石を投げる女がいて
ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2022/03/23 (水) ~ 2022/03/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/03/25 (金) 19:00
タイトルからしても、チラシのイラストからしても、謎が多く、相当興味を惹かれましたが、実際観に行ってみると、こちらが期待していた以上に、想定外で、意外な展開の連続に、そしてその終わり方に良い意味で期待を超えていき、衝撃を受けた。
ストーンハウスという名のアクセサリー工房を舞台に、個性的な創立メンバーのやり取りがくだらないが面白く、飽きさせず、笑えた。その後、DVの問題が絡んできたり、途中から、ストーンハウスを軌道に乗せるためビアンカの姉のヴァレンティナが協力するが、この姉妹が実はとんでもない小悪党で、次第に野心がむき出しになっていき、創立メンバーが矢継ぎ早に辞退していったりと、スピーディで、ハラハラドキドキする展開が続くが、ストーンハウスに第1次加入組の1人である生真面目で愛想がないが職人気質の美月が正義感を発揮したことで、ヴァレンティナグループの乗っ取りは失敗に終わったりと、ドラマは二転三転し、先が見えない展開の仕方に振り回され、先が気になり、緊迫しながら、舞台を思わず食い入るように魅入っていた。
石を投げたのが実は、生真面目で愛想がないが、職人気質の女性だったというのはかなり以外で、意表を突かれた展開に驚愕した。しかも、石を投げたのがきっかけで、地元の村人たちと対立し、その内、噂話などが肥大化し、ストーンハウスのメンバーを追い出しにかかろうとする村特有の閉鎖性、猜疑心の問題、ストーンハウスのメンバーの一部が新興宗教的に全体をしていく両方における怖さを克明に描ききっていて、そう現代において、完全な虚構話とも言えないと感じ、一つの小さなトラブルをきっかけにして、ここ迄事柄が肥大化し、収拾のつかない事態にまで発展していくのを観て、ゾッとした。

「震災演劇短編集」宮城・東京ツアー
Whiteプロジェクト
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/03/18 (金) ~ 2022/03/21 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/03/18 (金) 19:05
『被災地の想いを演劇で世界へ/Whiteプロジェクト SHINSAI 10th 震災演劇短編集 宮城·東京ツアー』といういくつかの小編の劇を連続して、東京のこまばアゴラ劇場で観て来ました。
私は、4つの小編、中編の劇を観ましたが、そのどれもが、劇的な展開はないものの、地味だけれども、こじんまりとして、多少笑いもありつつ、飽きさせず、東日本大震災という重い題材を扱いつつ、観客に極度な緊張を強いさせず、知らず知らずの内に津波や未だ遺骨が見つからない問題などについて想いを馳せ、深く考えさせられていて、劇の作りが非常に上手くできていると感じた。
「イーハトーブの雪」という作品では、震災直後の遺体安置所で番号を付けられ床にモノのように置かれたご遺体に、妹の遺体を探しに来たおじさんが、赤の他人の遺体に親しげに話しかけるところから物語は始まるが、最初はちょっと風変わりなおじさんなのかなと思ったが、劇が進行していくうちに、妹の生前の思い出話を語ったりして、遺体に対して、コーヒーを生きている人に渡すかのように渡してみたりするところから、遺体が途中から起き上がって喋り始めるという幻想的で妖しい展開になるのかとも思ったが、終始遺体は動かない上に、最後の方で主人公の東北弁で喋るおじさんが、震災が起こったために、避難して妹と別れることになった話をして、後悔や自責の念から、感情が昂ぶり、声を荒げてしまう辺りから、幻想の要素はあんまりないと思いつつ、今まで静かに、親しげに遺体に対して話していたおじさんの東日本大震災で失くした妹に対する葛藤や整理しきれずにいる現実、大災害が不意に襲ってきた時に、科学技術がいくら進化しても対処しきれず、慌てふためく、人間の無力さなどが生々しく伝わってきて、東日本大震災が起こったことによって大事な人を失ったり、眼の前で津波に呑まれるのを目撃した傷はそう簡単には癒えることはないし、その衝撃は消えることはないだろうと実感し、終わったことと捉えるのではなく、東日本大震災の記憶を頭に焼き付け、私達は日々考えていくことが大事だと感じた。
「第二章」という作品では、震災後、新しくできたバス停で夫を迎えに行くためにバスを待つ地味だが、よく見ると貴婦人風な気品のある老女が主人公だが、回想する台詞の中で、夫が津波に呑み込まれ2度と帰らぬ人となっている現実は認めつつも、せめて魂だけでも帰ってきてくれるのではないだろうかとか、夫は津波に呑まれたが、今は南の島に流れ着いて幸せに楽しくやっているんだとか、考えれば考えるほど虚しくなるはずなのに、それでも微かな希望を、自分の心を支えていくために、自分を励まし、奮い立たせ、明日も生きていくために、そのような想像をするというところに深く考えさせられ、思わずグッときてしまった。
「Prelude -天使が生まれた日-」 という震災とは直接関係のない作品では、病院の分娩室隣のロビーでもうすぐ父親になる男がビデオメッセージを録画しているところから始まる。ビデオメッセージの録画を慣れていないのか、何度も撮り直したり、動きが挙動不審であったりと、ドタバタして笑える場面も結構あるが、期日前診断で、これから産まれてくる赤ちゃんが男の子でダウン症の可能性が高いことを知らされ、中絶するか、産むかの判断をなるべく早くしてくれと言われたこと、正直迷ったことなど、不安や恐怖、焦りや喜び、迷いなどが入り混じり、まとまりがない形でビデオメッセージを録画しているのが、人間らしさや悩みが垣間見える共感できた。しかし最後は、赤ちゃんの泣き声を聞いて喜び勇んで、いても立ってもいられなくてすっ飛んでいく、もうすぐ父親になる男を見て、無性に感動してしまい、涙が出た。人間とは、赤ちゃんが産まれると、今までの悩みや怖れ、不安などはすべて吹っ飛ぶものなのだなぁと感心した。
「桜ひとひら」という作品では、震災で家族を失った人々のために依り代として仏像を彫り続けている住職が主役だが、依り代としての仏像を頼んだ小さなこどもを震災で失くした女性の依頼人の女性とのやり取りにおける、住職の良い意味でちょっとずれた思考や糖質を控えていると言いながら、饅頭を女性に勧められると、一つだけならと言って食べるあたりの図々しいが憎めない感じなど、住職の人間臭い感じなどに共感し、大いに笑えた。しかし、依頼人の女性がハキハキと押しが強い感じで話しているが小さなこどもを失くしたことを未だに気にしていて、傷が癒えてはいないが、最後のほうで完成した木彫りの地蔵を住職から渡されて、まるで震災で失くした我が子を抱くように、優しく抱き、慈しむ様子に、複雑な気持ちになり、感慨深くなった。

一枚のハガキ
劇団昴
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2022/03/16 (水) ~ 2022/03/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/03/19 (土) 19:00
第二次世界大戦末期、松山啓太ら百名の中年兵士が招集され、兵士たちは上官のくじ引きで赴任先が決まる。その結果、行先がフィリピンと知った森川定造は生きて帰れないと悟り、妻にハガキを読んだことを伝えてほしいと一枚のハガキを戦友啓太に託す。過酷な戦況の中なんとか生き残った六人のなかに啓太はいて、やっとのおもいで故郷に帰ってみると、叔父から、お前はもう戦死したと思ったお前の妻は、親父とお前の妻ができていて、今はお前の妻はキャバレーで働いていると聞いて、逆上した啓太は、妻がいるキャバレーを訪ねるが、やがて意気消沈し、何もかも嫌になり、自身もなくし、叔父のところにしばらくの間居候しているが、心機一転、急に思いつきでブラジルに移住すると言い出すまでの流れやスピード感、啓太の感情の起伏や心の迷い、焦り、不安や恐怖、ショックからなかなか立ち直れない人間像などを丁寧に掘り下げ、深堀しながら時に感情的に、時に人間の弱さを見せつつ、啓太という人間をとことんまで突き詰めて、中西陽介という俳優が演じ切っていて演技派としての素質を垣間見せてくれて、とても良かった。ただし、もちろんこれは、脚色にも問題があるかもしれないが、休憩挟んだあとの劇の後半での中西陽介演じる啓太が戦争で夫を失くし、その後、小さな畑を守るためその弟と結婚するが、その弟も戦争で失くし、心臓発作で森川家の父は死に、その後を追うように森川家の母は自殺し、とうとう身寄りがなく一人になってしまった服部幸子演じる森川友子のところを訪ね、そこで友子の夫から託された伝言を言う場面までは良かったが、そこで身の上話をする場面や友子の連続して起こった悲劇、今は亡き、戦争で死んだ友子の夫の話、お互いの苦労話などを語る場面において、全然その悲惨さや、やるせなさ、悔やんでも悔やみきれないことなどが、あまりに森川友子(森川友子を演じる服部幸子に関しては、悲劇が折り重なっても強く生きようとする芯の強い女性をあまりに意識しすぎてから、劇の最初の方から基本的に感情の揺れ動きが分かりにくく、淡々とした口調で喋るきらいがある)と松山啓太を演じる俳優が割と、時々感情的な高ぶりを見せながら、基本的には淡々とした口調で、食事をしたり、水を飲んだりしながら戦争の悲惨さについて語るので、はっきり言って全然緊迫した空気が作れていないし、お互いに戦争を経験していろいろ思うところもあるはずなのに、言葉に詰まったりといったところがなく、流れるようにそれを演じる俳優が喋っていっているのには、リアリティに欠けるし、そんなことで戦争の悲惨さなんて伝わるはずがないと感じた。
あと、泉谷吉五郎を演じる宮島岳史と松山啓太を演じる中西陽介の格闘シーンが、そんなにふざけた劇でもないのに、ドタバタコメディ風にやり合うのもどうかと思った。それに、泉谷吉五郎という人物は戦中は鬼畜米英お国のために、天皇陛下バンザイとかいって率先して街を仕切っていたのに、戦後は民主主義だとか言って完全に転向する浅はかだけども憎めないコミカルな人物として描かれるが、転向するにあたっては、戦争中と戦後では価値観に大きく隔たりがあるはずで、その本人の内心での焦りや葛藤など複雑な心情があるはずなのにも関わらず、泉谷を単なる道化キャラにしか見えなくさせているのには、脚色にも問題があるだろうし、泉谷吉五郎を演じる宮島岳史のこの人物に対するアプローチの仕方にも問題があると感じた。
森川勇吉と森川チヨを演じた俳優は、はっきり言って演技が棒だったが、森川チヨを演じる林佳代子の自殺前のやや鬼気迫る演技は良かった。
劇全体としてまず、兵士たちの上官が訓練の場では厳しいが、そうでない通常時は、途端に優しくなって酒を振る舞ったり、歌を歌うようせがんだりする、根は陽気で人の良い人物として描かれるが、それは絶対に違うと感じた。そもそも第二次世界大戦中における日本軍の上官というのは仲間のことを思いやったりする気さくな人間である可能性はほぼゼロだったと推測する。だからといって上官が怒鳴り散らし、蹴飛ばすだけが能のステレオタイプが横行していたかというと、それも違うと思うが、実際には上官というものは、中央から派遣されてくるわけで、そうするとその現地軍の事情など知る由もないので威圧的で、自分のほうが優秀だと考えている人の率が高いので、自然と態度がでかくなり、自分の気分次第で部下に言いがかりをつけたり、仲間同士で拷問させたりといった、非人間的で、計算高い人物だったのではないかと思われる。そういう意味で、今回の軍の上官の描きかたは相当に生ぬるく、見れたものではなかった。
また、夫である森川定造がフィリピンに行く途中の戦艦が攻撃されて死んだというが、その辺りの描きかたが曖昧で良くないと感じた。写真や映像を多用するのは良いが、それも原爆やフィリピンでの戦闘、B-29戦闘機による東京大空襲などを上から俯瞰して撮っているものが多く、市街地に原爆が落ちた瞬間を蟻の目線で細かく見ていったりしないので、これをもし戦争を確実に経験した世代が見たら、どう思うんだろうと考えると、中途半端な映像を見せるのはどうかと思う。
劇の構成として、途中度中、戦中と戦後を同時進行的に見せていくやり方は、非常に良かった。
そして、劇の最後の方で、松山啓太が未亡人友子と仲良くなり、一枚のハガキと啓太が森川定造の伝言や定造との思い出がきっかけで互いに愛し、そしてこれからずっと2人で一から畑を耕し、生きられる限り行き続けよう、それが今まで、戦死した夫や夫の弟のため、亡くなったお父さんやお母さんのためにではない。死者は生き返らないんだから、せめて僕らが生きることが大事なことなんだ。戦争が2度と起こらない為にも、生きてゆくことこそが何よりも大事で、希望を持って歩んでいくことが大事なんだというようなことを言うが、そもそも戦友で森川定造のことを誰よりも知っているということ、そしてハガキを持っていたことがきっかけで恋仲に急接近し、発展するというのはいくらなんでも荒療治だし、無理がありすぎ、最後にこの劇の一番伝えたいことを啓太にあまりにもど直球に熱く語らせて終わるというのは、いくらなんでもこじつけ感があからさますぎて酷かった。
劇の中で出てくる広島県有田神楽の演舞シーンと、フィナーレで賑やかな祭り囃子を出し、締めるやり方は上手いし、臨場感も、迫力もあって感動した。ただし、劇よりも神楽や囃子のほうが際立ってしまったのは、非常に残念だ。
第二次世界大戦によってもたらされる惨劇やその後を描いた作品の筈だが、天皇の戦争責任や一般市民のお互いがお互いを監視しあう窮屈な関係、情報統制がなされ、不安を煽られ、他人を疑う険悪で生きづらく、軍隊の横暴、物資の不足等々制限が掛かり、毎日ビクつき、それでいて表にはそれを出さない重苦しい空気感が全然作品から滲み出てきていなかった。

リムーバリスト―引っ越し屋―
劇団俳小
萬劇場(東京都)
2022/03/12 (土) ~ 2022/03/20 (日)公演終了
実演鑑賞
鑑賞日2022/03/17 (木) 18:35
『リムーバリスト 引っ越し屋』という劇のタイトルと、あらすじから、もちろん、DVやパワハラ、セクハラなどを扱っていることは知ってはいたが、それらの社会的な問題を扱いつつも、主人公が個性的だったり、アクが強かったりする登場人物のペースや勘違いに巻き込まれていくシチュエーションコメディかと思って観に行ったら、良い意味で私の予想を裏切ってくれて、実際は、笑いなんて一切ないどころか、不条理でバイオレンスなスピード感がありつつ、重厚なサスペンスで息もつかせぬほどに切迫して、観ている側の観客をその世界の渦の中に巻き込ませ、没入させていく新たな体験に、私がまるで起き上がれないぐらいの強烈なカウンターパンチを受けた時のように全身にとてつもない衝撃が走り、眼の前で起こっていることに戦慄し、終わってもしばらくは呆然としていて、今日に至るまでそのショックは、観た直後ほどではないが、持続しており、何かとてつもないものを観たという感じがしている。
現代にまで続くパワハラやセクハラ、DVの問題、格差や貧富、権力の側にいる人間の、それを利用しての横暴の限りを尽くすことの問題を実際よりも相当誇張して表現してはいたが、DV夫による言葉や暴力によって妻を威圧し、怖がらせるリアルさや、いざ妻が自分のところを離れていきそうになるときの不安や惨めさ、巡査の上司であるダン·シモンズ巡査部長は警察という公の立場を利用してのセクハラ、DV夫が自分や訴えてきた女性の姉や女性に歯向かおうとしたことや、罵詈雑言を浴びせてきたのを、実際よりも大いに拡大解釈してこじつけ、殴る蹴るの暴行を加え続けたり、今までおとなしかったネヴィル·ロス巡査がDV夫の挑発にブチ切れ、(これは観客には観せないが)猛烈に殴る蹴る音が聞こえ続け、それが終わったと思ったら、暫くしてネヴィル·ロス巡査が顔にも手にもやけにリアルに見える血を滴らせて出てきて、オロオロして、狂気と正気の間を彷徨っている場面、最後の方で意識が朦朧として、アザや、顔面が血だらけになり、眼球がやや浮き出て、顎が外れている感じで、全身の感覚がないように見えるDV夫が、若干動き喋ったのを見て、束の間巡査部長と巡査は安心するが、数分話した後、DV夫が今度こそ息絶えたのを観て、ロス巡査はやけくそになって狂気に陥り、自分だけでなく巡査部長も巻き込もうとし、巡査部長は共犯者になりたくない保身から、何とか責任逃れをしようとし、最終的に殴り合いになり、最後に巡査部長がケリをつけるため拳銃を抜き巡査に狙いを定め、ゆっくりと引き金をひいてゆくところで暗転という、なんとも救いようがない話の上に、人間のエゴや醜い部分などが洗いざらい眼の前に暴き出され、まるで本気で殴り合い、相手を蹴飛ばしているように観ている側に感じさせるほど、白熱し、緊迫して、とてつもない臨場感と、役者が本気で言い合ったりするかのようなリアルさに満ちていて、まるでその中にいるかのように錯覚させられ、引き込まれた。
この劇を観て、パワハラやセクハラ、DVの問題、格差社会や貧富の問題、権力の側の横暴さの問題など未だに完全には解決されていない問題について、改めて深く考えさせられ、失くしていかなければいけないと感じた。ただし、まずは私達一人ひとりがそういう問題について考えていくところからスタートしていくのではないかと思った。

EZO
きのこの木
CAFE ENZO(埼玉県)
2022/03/14 (月) ~ 2022/03/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/03/17 (木) 14:00
『CAFE ENZO』を舞台に、個性的な女性3人が謎のアーティスト『EZO』の話を中心に、取り留めもなく、時々お互いの認識のズレによる笑いや勘違いや思い込み、視点のズレによる笑いなどもありつつ、話が展開していき、劇の終盤で観客にだけCAFEの店員自身が実はという展開になっていて、その種明かしまでの持って行き方が非常に見事で、観ていて飽きないと感じた。
また、演劇の会場がCAFEの2階と、今まで観てきた劇の中でも、客席との距離が非常に近く、さらに飲食しながら観れるということで、劇世界に入りやすい上に、気軽に肩の力を抜いて観ることができたこの体験は、なかなか経験することが出来ない上、私にとって非常に新鮮だった。
ただ、強いて言うなら、4人の役者のうち、2人の役者が表情やリアクションに乏しいので、そこをもっと掘り下げてくれるとありがたいのと、観る側がマスクするのは良いとして、演じる役者の方は演じる際に、マスクを完全に外してやったほうが絶対に良いと思った。実生活の延長線上ではなく、演劇は嘘をさも本当のように見せるのが仕事の筈ですし、そういう信念を持ってやらないと、絶対にいけないと思います。

サヨナフーピストル連続射殺魔ノリオの青春
オフィスコットーネ
シアター711(東京都)
2022/03/11 (金) ~ 2022/03/21 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/03/11 (金) 19:00
始まってすぐ、主人公の永山則夫の東北にある実家の家に、面識のないはずの、ある招待状が送られてきたことが共通していて、何か勘違いしている4人の男性とのやり取りになるので、これはてっきり不条理劇かと思いきや、劇の途中からだんだんと分かってくるのだが、実はこの4人の男性、主人公の永山が射殺して殺された人物たちで、毎年事件当日になると、永山の前に現れ続ける、永山の後悔や自責の念との葛藤、不安や怖れから生み出した幻影だということが分かってくるという、劇のどんでん返しに目を見張る思いがした。
そのかつて射殺した4人の幻たちとの対話を通じて事件を起こすに至る経緯や動機などが語られていき、少年から青年時代の永山則夫がいかに網走で生まれたことで、戸籍差別を受け、職場でも東北弁の訛りがないことで、先輩から目を付けられといったように苦労の連続であったというようなことから、もし、私自身が永山則夫の立場だったらどうしていただろうと思うと、居たたまれなくなった。このような事件は他人事ではなく、誰にでも似たような状況は起こりえるのではないかと考えると、深く考えさせられてしまった。
しかも、4人の男性を射殺したあと、大一審は逮捕から10年に渡り1979年7月に死刑判決が言い渡されるが、弁護団が控訴したことで1981年8月に一旦は死刑判決は破棄され、無期懲役判決となったが、その後1982年に小説を書いて文学賞を受賞したりもするが、しかし安心するのも束の間で、1987年3月に再び死刑判決となり、本人が上告するも、棄却され、1990年5月に死刑が確定、1997年8月1日に東京拘置所で死刑が執行されるという、その間、永山則夫は、喜んだり、希望に燃えたり、ほっとしたり、不安になったり、後悔したり、自責の念に駆られたり、といったように運命にイタズラに翻弄されていく一人の無力な人間として描かれていて、共感する部分も多くあった。
確かに4人殺すのは良くないというのは分かるものの、そうは言っても、30年弱も牢屋に入れておいて、勉学の機会まで与えておいて、でもやはり最終的に死刑という在り方自体に疑問を禁じ得ないし、日本の死刑制度の必要性に疑問が残った。
また、劇のあとに姉の回というのがあって、それでは、永山則夫の長女にフォーカスが当てられた一人芝居だったが、彼氏らしき検事志望の学生に勉強を教えてもらっているところから始まるが、最後には、長女セツは、その学生にとって遊び程度の関係としか思われていないことを知り、発狂して狂うまでが丹念に描かれ、長女役の俳優が、健気で明るく元気でしっかりしていて、純情なところから、終盤で狂気に取り憑かれていくまでをしっかりと表情豊かに、声にも波長をつけ、肉体も駆使しながら、身体全体を使って表現していて、何か迫ってくるものがあり、思わず魅入ってしまった。

ナマリの銅像
劇団身体ゲンゴロウ
ひつじ座(東京都)
2022/03/09 (水) ~ 2022/03/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/03/12 (土) 18:00
江戸時代において、新代官による圧制が強まる島原で、一気の噂が流れ出し、口先達者だが意気地なしの臆病者のパチンコ屋でアルバイトをする益田が、いつの間にやら天草四郎として一揆軍のリーダーに祀り上げられ、破滅していく様を、天草四郎の銅像を彫る彫刻家の通称ナマリや益田の幼馴染のタツを通して物語は展開されていく。
江戸時代を舞台にしながら、パチンコ屋が平然と、さも当然のように、さり気なくあったり、軍艦マーチが聞こえたり、最終的に島原城に籠城した筈が、実は巨大な空母であったりと、江戸時代の島原の乱と第二次世界大戦を彷彿とさせるシーンが交錯していっていて、明らかに江戸時代にパチンコ屋など無い筈だが、それらがその時代にあることが何ら不思議ではなく感じられてきてしまう俳優たちの熱演と、脚本の妙な説得力に説き伏せられ、気付くと、私自身劇世界に魅入られ、没入していた。
口先達者だが意気地なしで臆病者のパチ屋でアルバイトをしていた益田が、ある落ちぶれた士族にそそのかされ、口達者なのが功を奏し、圧制強まる島原で、一揆軍のリーダーにいつの間にやらなり、天草四郎となっていくさまをみて、あぁ、戦争とは言葉の力やカリスマ性、一人の人物を過剰に狂信的なまでに信じることで、みんなの期待や希望を失うわけにはいかないと、心のなかではこのまま勝てないかもしれない戦をいつまで続けても意味があるのだろうか、仲間をも疑いの目で見る疑心暗鬼に陥り、不安と恐怖に打ちひしがれ、孤独に引き裂かれながら、引くに引けなくなり、より長期の戦争に発展していてしまう、戦争が独裁者を生み出し、戦争が普通の人々を狂気へと駆り立ててゆく過程を今回の劇に垣間見えて、戦慄し、改めて戦争のヤバさを痛感した。この作品の益田は、口達者だが臆病者で意気地なしの少年だが、そのしがない少年がかつての恩人でもあるパチンコ屋の店長を幼馴染のタツに殺させ、天草四郎となり、祀り上げられ、一揆軍のリーダーになっていく過程は、今まさにウクライナ侵攻を実施中のロシアのプーチン大統領にも当てはまりますし、かつて日本が第二次世界大戦に本格突入していくに当たっての天皇の異様な祀り上げられ方、ヒトラーの支持のされ方に共通するものがあると思い至り、震撼させられた。また、彫刻家のナマリに対して、権威ある人物がこれからは平和な時代だから、天草四郎の銅像やそれに殉教した人物の銅像なんか取り壊せという指令を出して、皆が右に習え的にその意見を迎合するというシーンも、何か不穏な空気感を漂わせていて、今の日本の社会にも通底する感覚を覚え、深く考えさせられ、最後には感動して、思わず涙が出た。
演出効果や材木や木団だけを使った質素だが剛直な舞台、客席に緊張を強いながら、迫真の身体から溢れ出る狂気や不安や孤独に猜疑心などを肉体を持って最大限に出し切った俳優たちも含め、最高に素晴らしい劇だった。

おとし屋 -SEDUCTRESSES- EPISODE2
SMASH ENTERTAINMENT
上野ストアハウス(東京都)
2022/03/04 (金) ~ 2022/03/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/03/05 (土) 19:00
劇の始まりが、秋葉原のアイドルカフェのアイドルライブのシーンから始まり、その後OL二人の他愛もない会話や、ヤケになって新宿?のショッピングビルで買いまくって手荷物が多い女性と、それを怜悧に眺め、冷たく突き放す友達らしき女性との会話、グルメレポーターをしている姉と、最近看護師を始めた世間知らずで、人を疑うことを知らない無邪気でマイペースな妹との会話など、他愛もない日常のシーンを最初の方で続けざまに、それでいて丁寧に細かく描いていて、その後の実はそれまでのたわいもなく見えたシーンが、おとし屋に所属する女性たちの普段の姿だと言うことが明らかにされる展開が、お見事だと感じた。
あと、落とすターゲットの篠山ファンド社長を演じる俳優が、いかにも裏がある感じの雰囲気と偽物感のある怪しい雰囲気を漂わしていて適役だと感じた。ただし、俳優だけじゃなく、これは脚本にも問題があるのかも知れないが、表の顔よりも裏の顔の雰囲気が目立ちすぎて、人当たりが良い好青年な感じが全然出ていないのには強く不満が残った。
敵役が裏表がある設定の割には、部下との信頼関係がかなり危ういところを強調しすぎ、女垂らしであることもあまりにも分かりやすく描いている上に、おとし屋のメンバーの葛藤も多少は描かれるが、全体としてはおとし屋の側を完全に正しい絶対正義として描き、篠山ファンド社長の側を典型的な女の大敵として描く脚本の単純さが目立ち、キャラクター個人としては魅力あるキャラもいるものの、脚本全体としては、単純明快過ぎて、これでいいのかという相当な不満が残った。学生演劇ではあるまいし、もっと深みのある脚本にしなくては駄目だと思うし、脚本が駄目ならば役者と演出家で脚本の欠点の部分を補強しないと駄目だろうと思う。また、役者も全員ではないが、主役と主役級の役者3、4人が台詞を何度も噛んだり、噛むレベルどころか、台詞を忘れて思い出すために何分か無駄な時間が過ぎていったり、ある役者などは台詞が思い出せない空白の時間を埋めるために急遽アドリブを入れて誤魔化そうとしたが、そのアドリブが上手いどころか、取ってつけたようで、あまりに下手なアドリブ過ぎて、場が持たなかったりといったことが何回となくあり、それでも、それが新人の役者だったらまだしも、20代後半〜30代ぐらいの男性や女性だったりするものだから、余計に見れたものではなかった。
最後のマツケンサンバの曲に合わせて盛り上がり、役者は歌って踊り狂い、観客は手拍子をして上野ストアハウスという小さな会場が一体となり、熱気が溢れたのは良かったと思う。色々、改善点は上げれば切がないが。

The leg line
仮想定規
中野スタジオあくとれ(東京都)
2022/02/10 (木) ~ 2022/02/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/02/11 (金) 19:00
劇場の楽屋が舞台で、歌のショーを演るために開演前の劇場の楽屋に、ベテランシャンソン歌手のサラさん、劇場支配人、女性アイドルのマネージャーなどが入ってきて、さらに、存在感が薄くて挙動不審な中年女性、外から雷雨がものすごくて、劇場の楽屋に避難させてもらうことになるUbereatsの態度がでかく、図々しくて、社会をなめている感じで、自信過剰な青年、方言の訛り具合がひどすぎる劇場の制作の梅田さん、雨のなか倒れているところを助けられて、劇場の楽屋に居る国籍不明で、あだ名が腹ペコ、変に達観し過ぎていて、見た目は怪しい和尚と、個性豊かなキャラクターが出揃うドタバタスピード喜劇で、先が読めない破天荒で、トラブルや偶然が相次ぐが、それを登場人物たちの機転やユーモア、出たとこ勝負で解決していくノリに圧倒され、殆ど劇の間じゅう可笑しくて笑いっぱなしだった。
特に、シャンソン歌手のサラさんと女性アイドルマネージャーの男性とのあけすけ過ぎる嫌味合戦や、どんなことが起こっても動じずにスマホをいじり続けるUber eatsの青年、いきなり停電になった時の登場人物たちが必要以上に右往左往することによる笑い、和尚の達観し過ぎていることによるズレの笑い、東北弁の訛りがひどすぎる劇場制作の梅田さんのもはや何言ってるか分かりづらく、会話にならない笑いなどが、ツボにはまって、何もかも忘れて、徹底的に笑えて、飽きることなく面白かった。また、役者によるアドリブや、Uber eatsの青年役の役者が客を引きつけて巻き込む話術とラップ、歌もダンスも卒なくこなしていて、多彩な才能を感じた。シャンソン歌手のサラさん役の役者は、シャンソンを歌う場面で、雰囲気を醸し出していて、歌い方も本当のシャンソン歌手な感じが出ていて良かった。劇場支配人役の役者は、一人で歌うシーンで声もよく通り、非常に上手く、思わず聴き入ってしまった。
劇場がまるで生きてるかのように描かれ、劇場の奈落に人格を与えられていて、そういう幻想怪奇な要素と、ドタバタ喜劇なところが上手くミックスされ、活かされていて、非常に面白くて、退屈することがなく、演じる役者も演出も戯曲も全てがお互いに相乗効果を出していると感じ、全体的に優れており、観客が一人でもいるならば舞台に立たなければならない、劇場は身分を問わず、役職を問わず、どんな立場の人であっても、ここ(劇場)では、役職や社会的地位を忘れ、みんな平等でいることができるというようなことを役者が言い、その劇場の理念を何気なく聞いて、深く感動した。

チェーホフも鳥の名前
ニットキャップシアター
座・高円寺1(東京都)
2022/01/26 (水) ~ 2022/01/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/01/29 (土) 18:00
全体を通して、そして、明治時代にサハリン島/樺太に刑務所長とポチョムキンの娘ナターシャの結婚披露宴に招待されてやってきたチェーホフ、大正時代に塩川家にやってくる宮沢賢治など、小さな誇るべき事柄も加わりつつ、昭和初期から第二次世界大戦に日本が突入していく過程、そして戦後から昭和の後期までを、一つの家族とそれに関わる人たち、そこから派生した家族や子孫を中心に、サハリン島/樺太におけるロシアと日本の交流や歴史を描いていて面白く、且つ、最後には感動していた。
日本とロシアのサハリン島/樺太における交流や、サハリン島/樺太の明治以降の全体的な歴史の流れはしっかりと描けていたし、時々スライドも使うことで、リアル味を補強もしていた。また、戦争の悲惨さも描ききっていて、共感や悲痛を感じれた。
登場人物が異常なほど多いのは良かったが、それを何人かの俳優で何役も演じていて、何人かの俳優を除いて、ほとんどの俳優が何役やってもおんなじような縁起をして見えたので、それはどうかと思う。確かにこの劇は、サハリン島/樺太における、ロシア人と日本人との交流や歴史を伝えることがメインなのはわかる。しかし、登場人物一人ひとりの印象が薄い完全なドキュメンタリー劇なら、何も劇じゃなくても、映画やドキュメンタリーTVドラマ、または、新聞の特集記事や、雑誌の記事、もしくはノンフィクション本にでもすればよいのであって、劇という表現媒体にこだわる必要はないんじゃないかと思った。劇として面白くするためには、魅力的な登場人物や個性的な登場人物が今回の劇では少なかったので、そこらへんを演る役者も含めてもっと深く検討すべきだと思う。
途中度中、コミカルな笑いや、ドタバタな笑いがあって、時々緊張を解きほぐせて良かった。

中二階のある家 ある画家の話
三輪舎
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2022/01/28 (金) ~ 2022/01/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/01/30 (日) 17:00
『中二階のある家 ある画家の話』という劇を観ましたが、時代遅れの閉鎖的な所在が定かでないコミューン(村)があり、村全体が家族であるという信念のもとにその村で生まれた子供は血の繋がらない男女のもとに割り振られ、成人した男女は、村から決められた人と結婚し、これは5年おきに更新されるシステムとなっている村のある一家族に焦点が当てられた、なんとも不条理なことがまかり通っている世界が舞台の劇にに圧倒された。
実の息子と娘、実の母と父でない兄妹と、その両親が登場人物で、一見喧嘩やイザコザもなく、トラブルもなく、怒られることもない幸せな家族だが、義理の兄がこの村の外に行っていて、何年かぶりに家に帰ってみて、その家族間における幸福性の違和感やこの村の理想的な平和で豊かで楽しそうな雰囲気に対する違和感を覚え、義理の妹を説得して、この村を家を出ていこうとする。しかし、義理の妹は外の世界に対して憧れはあるが、この村やこの家の現状に不満はないし、出ていく正当な理由がないと、義理の兄の説得を突っぱねる。それに、それはお前の考えをただ妹に押し付けているだけじゃないのかという父の台詞や、過去の苦い現実から逃れて、自己意思でこの村にやってきた1世で、この村は平和で、争いや喧騒がなく、治安もよく、犯罪もないこの村を理想的だと思い住んでいる母などから、価値観の違いがあることからむやみに人に自分の正義感を押し付けてしまうことが良くないことであること、だからといってみんな騙されているんだ、偽りの平和を維持するために知らず知らずのうちに無気力にされ、反発する意思やおかしいと思うこと、意見することがくだらなく思え、何も考えずに日々の生活が楽しければ良い、自分たちが脅かされなければ良いという事なかれ主義で、生ぬるく、生きてる実感も沸かず、娯楽もなければ、刺激もないそんな生活で、果たしてそれが本当に幸福かと問い続け迫る兄の考えも正しく、心揺さぶられ、ときに緊迫し、ときに笑い、今のはっきりとした形象はないが、流行に流され、あまり深く考えず、社会がどう変わろうと自分たちが幸せであれば良いという管理されていても気付かない現代の人々とこの架空の場所を舞台にした劇とあまりにも似通った共通点をいくつも見つけることができ、震撼し、深く考えさせられた。
ただ、劇のラストは、少し不満に感じた。主人公の兄が、義理の妹を刺殺し、その血を吸いながら、片手で自分の首筋を掻っ切って息絶えるとか同じ悲劇的な展開でも、もっと、これは演劇なのであるから、劇的なラストになっていて欲しかった。

ガラテアの審判
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2022/01/20 (木) ~ 2022/01/26 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/01/22 (土) 19:00
私が今回観劇した『ガラテアの審判』という作品は、裁判劇だが、ロボットにも人権があり、アンドロイドと人間が共存する近未来を舞台に、ココノエアンナ(7)を殺害した容疑で、隣家の家庭用アンドロイド俗称ジャックを拘束し、それを裁く裁判が繰り広げられる内容となっております、アンドロイドを人間が裁くという発想自体が新鮮で面白かった。
劇に出てくる登場人物も、経験は浅いが正義感に燃える若手の女性検事、日和見主義で事なかれで無責任な女性判事、うだつの上がらないが実は確こたる信念と情熱に燃える国選弁護人、証人として立つロボットメーカーの責任者は、ロボットのこととなると、我が子をみるようにしっかり面倒を見て、愛情を注ぐ、変わっている人など、一癖も二癖もある登場人物たちとそれを演じる役者がクロスして見え、役者の迫真の肉体全身を使い、5感全体を張り巡らせた演技と登場人物双方に魅力を感じました。
途中に分かってくる若手女性検事の主張がそれらしいことを言ってはいるが、実はほとんど偽善的な味方に過ぎなかったことをうだつが上がらないように見えた国選弁護人に完破されたり、容疑者のアンドロイドが実は犯行に及ぶ前まで、持ち主による虐待疑惑が持ち上がったり、法廷中に発砲事件が起き、アンドロイドは中身だけになったりと、予想外の出来事や偶然、意外な事実などが連続して起こり、途中多少の証人台に立つ人のキャラなどによって笑いを引き起こしたりしつつ、全体的には、緊張に次ぐ緊張を強いられ、この裁判の結果はどうなるんだろうと、息を呑み、手に汗握りながら、作品世界にのめり込んだ。

マンホールのUFOにのって
マチルダアパルトマン
OFF OFFシアター(東京都)
2021/12/22 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/25 (土) 14:00
タイトルからして興味をそそられる作品だったが、マンホールからタイムワープ出来たり、人間の言葉を理解し、人間の言葉を喋ることができる野良猫がいたり、行きつけの喫茶店の主人が実は宇宙人だったり、月日がだいぶ立ったあとのはるかちゃんが、かつての恋人への思いを断ち切ることができない寂しさを埋めるものとして、恋人の瘡蓋と猿を組み合わせて喫茶店の主人に作らせた生き物をペットのように連れ歩いていたりと、そういう不可思議で奇想天外なことが何気ない日常の延長線上に描かれているのが、ギャップがあって不条理で笑えて、面白かった。

眠れぬ姫は夢を見る
サヨナラワーク
劇場HOPE(東京都)
2021/12/15 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/12/25 (土) 19:00
自分を変えようと女性アイドルグループに入り、その中のとある女性に恋愛感情を抱くが、ある時急に暴行事件の被害者になり、そのアイドルグループも解散する。そして、暴行事件の被害者で主人公の女性は病院のベットにおり、ある時から暴行事件受けたショックと自信喪失、現実逃避感情から自分をTVで見たアナウンサーだと思い込み、かつての女性アイドルグループのメンバーに自分が受けた暴行事件に至る経緯について話を聴き、最終的には暴行事件のショックを乗り越え、かつてのメンバーたちと舞台に立つまでが描かれた、タイトルからは想像もつかないショッキングで社会派な内容の劇に、驚き深く考えさせられた。
ショッキングで社会派な劇なのに、主人公の女性の現実逃避や寂しさの空想から生まれた男の子の友達を作り出し、劇中にかなり重要な役として出てきたりと、不可思議な要素が、日常の延長線上に何気なく展開される話の持っていきかたが、ギャップがあって面白かった。
暴行を受けて、その前には憧れ恋してもいた自分が所属するアイドルグループの女性には、ある言動から気持ち悪がられ、それら両方のショックから心身共に傷付き、なかなか立ち上がれない。更に、自分は女子アナウンサーだと思いこむようにまでなるが、何とか最終的には壮絶なショックから立ち直るまでを不思議な要素も混ぜつつ、コメディ要素も入りつつだったので、深刻になり過ぎず、時に緊張しつつも肩の力を入れ過ぎず、バランス良く楽しめた。また、すぐに立ち直れなくても良い。人は、孤独に耐えられなくなって、目標を見失って、自分を見失って、自分の殻に閉じこもって、ある時何もすることが出来なくなるときだってある。それでも良い。どんなに時間がかかったとしても、気持ちの整理がついて、本当に落ち着いたら殻を抜け出そう。完全に元のようには戻れないかもしれない。そうだとしても、少しずつでも、一歩一歩踏み出してゆく勇気を持とうというメッセージに心打たれ、いきなりショックから立ち直れと言っていないことにリアリティーを感じ、共感した。
主人公のキャラも相当アクが強かったが、他のアイドルグループのキャラも、それぞれが個性的で、役者のオーバーリアクションがキャラと程よくリンクしていて印象に残った。特に、主人公が想像で作り出した人物の狂言回し的であり、時に的確なアドバイスをしてくれたり、慰めてくれたりするキャラがユニークで記憶に残った。
プロジェクターをいくつか置かれた白い箱などに投影して、劇の世界観とマッチしていて、劇に没入しやすかった。

夏への扉 2021
enji
現代座会館(東京都)
2021/12/10 (金) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/12/10 (金) 18:30
過去に囚われて、なかなか現実を見つめようとせず、付き合っている男性ともやや溝が出来ている、親から継いだ喫茶店経営者の女性が、お香を売る怪しげな中年会社員からお香をつい買ってしまい、その匂いを嗅ぐと眠って、1960年代の同じ喫茶店で気が付き、そこに出入りする個性的な人たちとの交流、自分がかつて大好きだったおじさんの若い頃との交流などを通して、少しずつ打ち解け、最終的には自分の亡くなってしまった家族やおじさんとの記憶は、時々思い出そうとすると蘇ってくるものだから、現実には会えないとしても悲嘆にくれて、現実から目を背けなくても良いんだと悟り、現実に戻っていくまでの主人公の心の揺れ動きや、小さな成長を丁寧に描いていて、最後は自然と感動してしまっていた。
お香で主人公の女性が眠って過去に行くという、今まで誰もあんまり考えていそうでなかったタイムスリップのきっかけが、奇想天外で面白かった。
一人ひとりの人物が非常に個性的で、魅力的で感情移入できた。また、人物とそれを演じる役者が重なって見えて、演技があまりにもさり気なく、自然な雰囲気で、それでいて誇張すべきところは誇張していて、そこらへんのバランスが不自然に見えず、感心してしまった。
現実から香りを通して意識が過去に行った主人公の女性が、1960年代の喫茶店で出会う人たちとのカルチャーギャップにおける笑い、若い頃のおじさんや若い頃のお父さんなどの誤魔化し合戦によるあけすけで無理くりな言い訳による笑い、主人公の女性が、若い頃のおじさんや両親などに対する勘違い笑いなど、多岐に渡るコメディ要素がそこかしこに散りばめられており、退屈せず、大いに笑って、肩の力を抜いて楽しめた。
喫茶店のセットに4つの扉があり、物語と大きく関わり、1960年代喫茶店になった時に、4つの扉から入れ代わり立ち代わり登場人物がせわしなく出たり入ったりするのに使う、その使い方が見ていて飽きなかった。

隠密お麟に出来ぬ事なし。
OG-3works
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2021/12/09 (木) ~ 2021/12/13 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/13 (月) 12:00
笑える要素や、恋愛要素、ミステリー要素に、割と本格的な殺陣あり、感動あり、アドリブもふんだんに交わされ、さらに絶妙なタイミングで効果音や音楽が使われていて、1つの作品に対して詰め込めるだけいろんな要素を詰め込んだ、痛快エンターテイメント時代劇で、大いに楽しめた。
パロディ笑いに、厳格に見える商人の父親のギャップ笑い、小吉とその奥さんお貞とのドタバタコメディな笑い、市太郎とお佳しと小吉による話があまり噛み合わないまま進む掛け合いによる笑い、さらに、麒一郎こと中性的ななかなかの美男に見えるボーイッシュな隠密の女性で、正義感が強く、実直で、何事も卒なく、着実にこなす、エリートタイプだが、部下の隠密お麟の特別な香を使った幻術の効き目の強さによって見せた普段見せない姿など、面白い場面が目白押しで、大いに爆笑し、それによってストレス解消にも繋がったので二重の意味で良かった。また、キャラクターがすごい立っていて、キャラと演じている俳優とのシンクロ度合いがあまりにも自然で、演技というよりも、身からでた感じの迫真の演技に、いつのまにか心奪われていた。
不法に駿府の町で南蛮渡来の賭場キャジノの実の経営者を巡って、千太郎であるとも、その親父であるとも言われ、嫌疑によって勘定奉行にしょっ引かれるが、実は、本当の黒幕は最も意外な人物でと、犯人探しが、謎が謎を呼ぶという感じで、次はどう物語が展開するのだろうという、時に胸踊らせ、時に緊迫しながら、観ている私自身も犯人が誰なのかを推理したりしながら、劇世界にのめり込んだ。
中性的な美男だが、ボーイッシュな女性が、時々発するさり気ないが格好良い台詞が印象的だった。

AI懲戒師・クシナダ
株式会社CREST
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2021/12/01 (水) ~ 2021/12/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/12/04 (土) 19:00
笑いあり、ラブ???要素も多少あり、シリアスあり、殺陣あり、感動ありのSFクライムサスペンスで、息もつかせぬ展開で、先が読めず、ドキドキハラハラし、思わず食い入るように見てしまうほど、劇世界にのめり込み、気がつくと、感動していた。
物語のそれぞれのキャラクターが個性的で印象に残りやすく、特に主人公の天才ハッカーの女の子櫛名田サホと物語の中心人物たちはアクが強く、それらを演じている俳優たちの迫真の演技と相まって、魅了された。
また、主人公の女の子櫛名田サホの過去が劇中で段々と明かされてゆく展開、サホが自身の過去に向き合うこと、ICMAになることで大好きなAIを駆逐する側になることを思い悩み葛藤し、自問自答し、自分と向き合い、途中諦めそうにもなるが、挫けず、前へ進もうとする非常に泥臭い人間らしさにグッときて、共感し、感情移入した。そして、サホの過去とペンダントの秘密の関係性や、事件の黒幕とサホの意外な関係性、テロ事件に直接関係していた凶悪暴走AIなど、複数の話が複雑に絡み合い、サホの仲間をも巻き込み、物語は謎が謎を呼ぶ複雑で緊迫していて、サホの出自さえもわかってくる壮大なSFクライムサスペンスで、手に汗握る展開に、どんでん返しの連続に振り回され、その事件やその真犯人、街の仕組み自体の伏線の回収の周到さのあまりの鮮やかさに目を見張った。