鯉之滝登の観てきた!クチコミ一覧

121-140件 / 168件中
The leg line

The leg line

仮想定規

中野スタジオあくとれ(東京都)

2022/02/10 (木) ~ 2022/02/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/02/11 (金) 19:00

 劇場の楽屋が舞台で、歌のショーを演るために開演前の劇場の楽屋に、ベテランシャンソン歌手のサラさん、劇場支配人、女性アイドルのマネージャーなどが入ってきて、さらに、存在感が薄くて挙動不審な中年女性、外から雷雨がものすごくて、劇場の楽屋に避難させてもらうことになるUbereatsの態度がでかく、図々しくて、社会をなめている感じで、自信過剰な青年、方言の訛り具合がひどすぎる劇場の制作の梅田さん、雨のなか倒れているところを助けられて、劇場の楽屋に居る国籍不明で、あだ名が腹ペコ、変に達観し過ぎていて、見た目は怪しい和尚と、個性豊かなキャラクターが出揃うドタバタスピード喜劇で、先が読めない破天荒で、トラブルや偶然が相次ぐが、それを登場人物たちの機転やユーモア、出たとこ勝負で解決していくノリに圧倒され、殆ど劇の間じゅう可笑しくて笑いっぱなしだった。

 特に、シャンソン歌手のサラさんと女性アイドルマネージャーの男性とのあけすけ過ぎる嫌味合戦や、どんなことが起こっても動じずにスマホをいじり続けるUber eatsの青年、いきなり停電になった時の登場人物たちが必要以上に右往左往することによる笑い、和尚の達観し過ぎていることによるズレの笑い、東北弁の訛りがひどすぎる劇場制作の梅田さんのもはや何言ってるか分かりづらく、会話にならない笑いなどが、ツボにはまって、何もかも忘れて、徹底的に笑えて、飽きることなく面白かった。また、役者によるアドリブや、Uber eatsの青年役の役者が客を引きつけて巻き込む話術とラップ、歌もダンスも卒なくこなしていて、多彩な才能を感じた。シャンソン歌手のサラさん役の役者は、シャンソンを歌う場面で、雰囲気を醸し出していて、歌い方も本当のシャンソン歌手な感じが出ていて良かった。劇場支配人役の役者は、一人で歌うシーンで声もよく通り、非常に上手く、思わず聴き入ってしまった。

 劇場がまるで生きてるかのように描かれ、劇場の奈落に人格を与えられていて、そういう幻想怪奇な要素と、ドタバタ喜劇なところが上手くミックスされ、活かされていて、非常に面白くて、退屈することがなく、演じる役者も演出も戯曲も全てがお互いに相乗効果を出していると感じ、全体的に優れており、観客が一人でもいるならば舞台に立たなければならない、劇場は身分を問わず、役職を問わず、どんな立場の人であっても、ここ(劇場)では、役職や社会的地位を忘れ、みんな平等でいることができるというようなことを役者が言い、その劇場の理念を何気なく聞いて、深く感動した。

チェーホフも鳥の名前

チェーホフも鳥の名前

ニットキャップシアター

座・高円寺1(東京都)

2022/01/26 (水) ~ 2022/01/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2022/01/29 (土) 18:00

 全体を通して、そして、明治時代にサハリン島/樺太に刑務所長とポチョムキンの娘ナターシャの結婚披露宴に招待されてやってきたチェーホフ、大正時代に塩川家にやってくる宮沢賢治など、小さな誇るべき事柄も加わりつつ、昭和初期から第二次世界大戦に日本が突入していく過程、そして戦後から昭和の後期までを、一つの家族とそれに関わる人たち、そこから派生した家族や子孫を中心に、サハリン島/樺太におけるロシアと日本の交流や歴史を描いていて面白く、且つ、最後には感動していた。
 日本とロシアのサハリン島/樺太における交流や、サハリン島/樺太の明治以降の全体的な歴史の流れはしっかりと描けていたし、時々スライドも使うことで、リアル味を補強もしていた。また、戦争の悲惨さも描ききっていて、共感や悲痛を感じれた。
 登場人物が異常なほど多いのは良かったが、それを何人かの俳優で何役も演じていて、何人かの俳優を除いて、ほとんどの俳優が何役やってもおんなじような縁起をして見えたので、それはどうかと思う。確かにこの劇は、サハリン島/樺太における、ロシア人と日本人との交流や歴史を伝えることがメインなのはわかる。しかし、登場人物一人ひとりの印象が薄い完全なドキュメンタリー劇なら、何も劇じゃなくても、映画やドキュメンタリーTVドラマ、または、新聞の特集記事や、雑誌の記事、もしくはノンフィクション本にでもすればよいのであって、劇という表現媒体にこだわる必要はないんじゃないかと思った。劇として面白くするためには、魅力的な登場人物や個性的な登場人物が今回の劇では少なかったので、そこらへんを演る役者も含めてもっと深く検討すべきだと思う。
 途中度中、コミカルな笑いや、ドタバタな笑いがあって、時々緊張を解きほぐせて良かった。

中二階のある家 ある画家の話

中二階のある家 ある画家の話

三輪舎

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2022/01/28 (金) ~ 2022/01/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2022/01/30 (日) 17:00

 『中二階のある家 ある画家の話』という劇を観ましたが、時代遅れの閉鎖的な所在が定かでないコミューン(村)があり、村全体が家族であるという信念のもとにその村で生まれた子供は血の繋がらない男女のもとに割り振られ、成人した男女は、村から決められた人と結婚し、これは5年おきに更新されるシステムとなっている村のある一家族に焦点が当てられた、なんとも不条理なことがまかり通っている世界が舞台の劇にに圧倒された。
 実の息子と娘、実の母と父でない兄妹と、その両親が登場人物で、一見喧嘩やイザコザもなく、トラブルもなく、怒られることもない幸せな家族だが、義理の兄がこの村の外に行っていて、何年かぶりに家に帰ってみて、その家族間における幸福性の違和感やこの村の理想的な平和で豊かで楽しそうな雰囲気に対する違和感を覚え、義理の妹を説得して、この村を家を出ていこうとする。しかし、義理の妹は外の世界に対して憧れはあるが、この村やこの家の現状に不満はないし、出ていく正当な理由がないと、義理の兄の説得を突っぱねる。それに、それはお前の考えをただ妹に押し付けているだけじゃないのかという父の台詞や、過去の苦い現実から逃れて、自己意思でこの村にやってきた1世で、この村は平和で、争いや喧騒がなく、治安もよく、犯罪もないこの村を理想的だと思い住んでいる母などから、価値観の違いがあることからむやみに人に自分の正義感を押し付けてしまうことが良くないことであること、だからといってみんな騙されているんだ、偽りの平和を維持するために知らず知らずのうちに無気力にされ、反発する意思やおかしいと思うこと、意見することがくだらなく思え、何も考えずに日々の生活が楽しければ良い、自分たちが脅かされなければ良いという事なかれ主義で、生ぬるく、生きてる実感も沸かず、娯楽もなければ、刺激もないそんな生活で、果たしてそれが本当に幸福かと問い続け迫る兄の考えも正しく、心揺さぶられ、ときに緊迫し、ときに笑い、今のはっきりとした形象はないが、流行に流され、あまり深く考えず、社会がどう変わろうと自分たちが幸せであれば良いという管理されていても気付かない現代の人々とこの架空の場所を舞台にした劇とあまりにも似通った共通点をいくつも見つけることができ、震撼し、深く考えさせられた。
 ただ、劇のラストは、少し不満に感じた。主人公の兄が、義理の妹を刺殺し、その血を吸いながら、片手で自分の首筋を掻っ切って息絶えるとか同じ悲劇的な展開でも、もっと、これは演劇なのであるから、劇的なラストになっていて欲しかった。

ガラテアの審判

ガラテアの審判

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2022/01/20 (木) ~ 2022/01/26 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/01/22 (土) 19:00

 私が今回観劇した『ガラテアの審判』という作品は、裁判劇だが、ロボットにも人権があり、アンドロイドと人間が共存する近未来を舞台に、ココノエアンナ(7)を殺害した容疑で、隣家の家庭用アンドロイド俗称ジャックを拘束し、それを裁く裁判が繰り広げられる内容となっております、アンドロイドを人間が裁くという発想自体が新鮮で面白かった。

 劇に出てくる登場人物も、経験は浅いが正義感に燃える若手の女性検事、日和見主義で事なかれで無責任な女性判事、うだつの上がらないが実は確こたる信念と情熱に燃える国選弁護人、証人として立つロボットメーカーの責任者は、ロボットのこととなると、我が子をみるようにしっかり面倒を見て、愛情を注ぐ、変わっている人など、一癖も二癖もある登場人物たちとそれを演じる役者がクロスして見え、役者の迫真の肉体全身を使い、5感全体を張り巡らせた演技と登場人物双方に魅力を感じました。

 途中に分かってくる若手女性検事の主張がそれらしいことを言ってはいるが、実はほとんど偽善的な味方に過ぎなかったことをうだつが上がらないように見えた国選弁護人に完破されたり、容疑者のアンドロイドが実は犯行に及ぶ前まで、持ち主による虐待疑惑が持ち上がったり、法廷中に発砲事件が起き、アンドロイドは中身だけになったりと、予想外の出来事や偶然、意外な事実などが連続して起こり、途中多少の証人台に立つ人のキャラなどによって笑いを引き起こしたりしつつ、全体的には、緊張に次ぐ緊張を強いられ、この裁判の結果はどうなるんだろうと、息を呑み、手に汗握りながら、作品世界にのめり込んだ。

マンホールのUFOにのって

マンホールのUFOにのって

マチルダアパルトマン

OFF OFFシアター(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/12/25 (土) 14:00

 タイトルからして興味をそそられる作品だったが、マンホールからタイムワープ出来たり、人間の言葉を理解し、人間の言葉を喋ることができる野良猫がいたり、行きつけの喫茶店の主人が実は宇宙人だったり、月日がだいぶ立ったあとのはるかちゃんが、かつての恋人への思いを断ち切ることができない寂しさを埋めるものとして、恋人の瘡蓋と猿を組み合わせて喫茶店の主人に作らせた生き物をペットのように連れ歩いていたりと、そういう不可思議で奇想天外なことが何気ない日常の延長線上に描かれているのが、ギャップがあって不条理で笑えて、面白かった。

眠れぬ姫は夢を見る

眠れぬ姫は夢を見る

サヨナラワーク

劇場HOPE(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/12/25 (土) 19:00

 自分を変えようと女性アイドルグループに入り、その中のとある女性に恋愛感情を抱くが、ある時急に暴行事件の被害者になり、そのアイドルグループも解散する。そして、暴行事件の被害者で主人公の女性は病院のベットにおり、ある時から暴行事件受けたショックと自信喪失、現実逃避感情から自分をTVで見たアナウンサーだと思い込み、かつての女性アイドルグループのメンバーに自分が受けた暴行事件に至る経緯について話を聴き、最終的には暴行事件のショックを乗り越え、かつてのメンバーたちと舞台に立つまでが描かれた、タイトルからは想像もつかないショッキングで社会派な内容の劇に、驚き深く考えさせられた。
 
 ショッキングで社会派な劇なのに、主人公の女性の現実逃避や寂しさの空想から生まれた男の子の友達を作り出し、劇中にかなり重要な役として出てきたりと、不可思議な要素が、日常の延長線上に何気なく展開される話の持っていきかたが、ギャップがあって面白かった。

 暴行を受けて、その前には憧れ恋してもいた自分が所属するアイドルグループの女性には、ある言動から気持ち悪がられ、それら両方のショックから心身共に傷付き、なかなか立ち上がれない。更に、自分は女子アナウンサーだと思いこむようにまでなるが、何とか最終的には壮絶なショックから立ち直るまでを不思議な要素も混ぜつつ、コメディ要素も入りつつだったので、深刻になり過ぎず、時に緊張しつつも肩の力を入れ過ぎず、バランス良く楽しめた。また、すぐに立ち直れなくても良い。人は、孤独に耐えられなくなって、目標を見失って、自分を見失って、自分の殻に閉じこもって、ある時何もすることが出来なくなるときだってある。それでも良い。どんなに時間がかかったとしても、気持ちの整理がついて、本当に落ち着いたら殻を抜け出そう。完全に元のようには戻れないかもしれない。そうだとしても、少しずつでも、一歩一歩踏み出してゆく勇気を持とうというメッセージに心打たれ、いきなりショックから立ち直れと言っていないことにリアリティーを感じ、共感した。

 主人公のキャラも相当アクが強かったが、他のアイドルグループのキャラも、それぞれが個性的で、役者のオーバーリアクションがキャラと程よくリンクしていて印象に残った。特に、主人公が想像で作り出した人物の狂言回し的であり、時に的確なアドバイスをしてくれたり、慰めてくれたりするキャラがユニークで記憶に残った。

 プロジェクターをいくつか置かれた白い箱などに投影して、劇の世界観とマッチしていて、劇に没入しやすかった。

夏への扉 2021

夏への扉 2021

enji

現代座会館(東京都)

2021/12/10 (金) ~ 2021/12/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/12/10 (金) 18:30

 過去に囚われて、なかなか現実を見つめようとせず、付き合っている男性ともやや溝が出来ている、親から継いだ喫茶店経営者の女性が、お香を売る怪しげな中年会社員からお香をつい買ってしまい、その匂いを嗅ぐと眠って、1960年代の同じ喫茶店で気が付き、そこに出入りする個性的な人たちとの交流、自分がかつて大好きだったおじさんの若い頃との交流などを通して、少しずつ打ち解け、最終的には自分の亡くなってしまった家族やおじさんとの記憶は、時々思い出そうとすると蘇ってくるものだから、現実には会えないとしても悲嘆にくれて、現実から目を背けなくても良いんだと悟り、現実に戻っていくまでの主人公の心の揺れ動きや、小さな成長を丁寧に描いていて、最後は自然と感動してしまっていた。
 
 お香で主人公の女性が眠って過去に行くという、今まで誰もあんまり考えていそうでなかったタイムスリップのきっかけが、奇想天外で面白かった。

 一人ひとりの人物が非常に個性的で、魅力的で感情移入できた。また、人物とそれを演じる役者が重なって見えて、演技があまりにもさり気なく、自然な雰囲気で、それでいて誇張すべきところは誇張していて、そこらへんのバランスが不自然に見えず、感心してしまった。

 現実から香りを通して意識が過去に行った主人公の女性が、1960年代の喫茶店で出会う人たちとのカルチャーギャップにおける笑い、若い頃のおじさんや若い頃のお父さんなどの誤魔化し合戦によるあけすけで無理くりな言い訳による笑い、主人公の女性が、若い頃のおじさんや両親などに対する勘違い笑いなど、多岐に渡るコメディ要素がそこかしこに散りばめられており、退屈せず、大いに笑って、肩の力を抜いて楽しめた。

 喫茶店のセットに4つの扉があり、物語と大きく関わり、1960年代喫茶店になった時に、4つの扉から入れ代わり立ち代わり登場人物がせわしなく出たり入ったりするのに使う、その使い方が見ていて飽きなかった。

隠密お麟に出来ぬ事なし。

隠密お麟に出来ぬ事なし。

OG-3works

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2021/12/09 (木) ~ 2021/12/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/12/13 (月) 12:00

 笑える要素や、恋愛要素、ミステリー要素に、割と本格的な殺陣あり、感動あり、アドリブもふんだんに交わされ、さらに絶妙なタイミングで効果音や音楽が使われていて、1つの作品に対して詰め込めるだけいろんな要素を詰め込んだ、痛快エンターテイメント時代劇で、大いに楽しめた。
 
 パロディ笑いに、厳格に見える商人の父親のギャップ笑い、小吉とその奥さんお貞とのドタバタコメディな笑い、市太郎とお佳しと小吉による話があまり噛み合わないまま進む掛け合いによる笑い、さらに、麒一郎こと中性的ななかなかの美男に見えるボーイッシュな隠密の女性で、正義感が強く、実直で、何事も卒なく、着実にこなす、エリートタイプだが、部下の隠密お麟の特別な香を使った幻術の効き目の強さによって見せた普段見せない姿など、面白い場面が目白押しで、大いに爆笑し、それによってストレス解消にも繋がったので二重の意味で良かった。また、キャラクターがすごい立っていて、キャラと演じている俳優とのシンクロ度合いがあまりにも自然で、演技というよりも、身からでた感じの迫真の演技に、いつのまにか心奪われていた。

 不法に駿府の町で南蛮渡来の賭場キャジノの実の経営者を巡って、千太郎であるとも、その親父であるとも言われ、嫌疑によって勘定奉行にしょっ引かれるが、実は、本当の黒幕は最も意外な人物でと、犯人探しが、謎が謎を呼ぶという感じで、次はどう物語が展開するのだろうという、時に胸踊らせ、時に緊迫しながら、観ている私自身も犯人が誰なのかを推理したりしながら、劇世界にのめり込んだ。

 中性的な美男だが、ボーイッシュな女性が、時々発するさり気ないが格好良い台詞が印象的だった。

AI懲戒師・クシナダ

AI懲戒師・クシナダ

株式会社CREST

CBGKシブゲキ!!(東京都)

2021/12/01 (水) ~ 2021/12/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/12/04 (土) 19:00

 笑いあり、ラブ???要素も多少あり、シリアスあり、殺陣あり、感動ありのSFクライムサスペンスで、息もつかせぬ展開で、先が読めず、ドキドキハラハラし、思わず食い入るように見てしまうほど、劇世界にのめり込み、気がつくと、感動していた。

 物語のそれぞれのキャラクターが個性的で印象に残りやすく、特に主人公の天才ハッカーの女の子櫛名田サホと物語の中心人物たちはアクが強く、それらを演じている俳優たちの迫真の演技と相まって、魅了された。

 また、主人公の女の子櫛名田サホの過去が劇中で段々と明かされてゆく展開、サホが自身の過去に向き合うこと、ICMAになることで大好きなAIを駆逐する側になることを思い悩み葛藤し、自問自答し、自分と向き合い、途中諦めそうにもなるが、挫けず、前へ進もうとする非常に泥臭い人間らしさにグッときて、共感し、感情移入した。そして、サホの過去とペンダントの秘密の関係性や、事件の黒幕とサホの意外な関係性、テロ事件に直接関係していた凶悪暴走AIなど、複数の話が複雑に絡み合い、サホの仲間をも巻き込み、物語は謎が謎を呼ぶ複雑で緊迫していて、サホの出自さえもわかってくる壮大なSFクライムサスペンスで、手に汗握る展開に、どんでん返しの連続に振り回され、その事件やその真犯人、街の仕組み自体の伏線の回収の周到さのあまりの鮮やかさに目を見張った。

わが町 高円寺 子ども食堂

わが町 高円寺 子ども食堂

演劇なかま高円寺

座・高円寺2(東京都)

2021/11/20 (土) ~ 2021/11/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/11/20 (土) 19:05

 高円寺の町を昔から最近に至るまでをずっと冷静に第三者の目線で見つめる巨木の精を中心に話が進み、そこに高円寺の住民たちが幾人か登場し、最終的に子ども食堂が高円寺の町にできて今に至るまでを、一人ひとりにスポットを当てつつ、全体の歴史の流れもすんなりと伝わってきてわかりやすかった。
 一人親家庭の大変さや、その子どもの孤独、離婚問題、一般家庭における親と子どもとの感覚のズレ、世代間の違いなどを丁寧に、それでいてさり気なく描いていて、そういった社会問題について、改めて真剣に考えさせられた。
 また、料理人だった男がかつて少女に出会ったときに、少女を助けてやれなかったことがきっかけで料理人を辞めているが、その少女が親になり、家が貧困なこともあり、その娘が居場所がなく、孤独に耐えて、イジメに耐えていることを知り、子ども食堂を始めるにあたっての料理人を申し出るに至るまでの物語が印象的で、感動した。

シャンデリヤvol.2

シャンデリヤvol.2

U-33project

高田馬場ラビネスト(東京都)

2021/10/20 (水) ~ 2021/10/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2021/10/23 (土) 18:00

 『シャンデリヤvol.2』という短編集の劇を観ました。
 最初オフィスでの、女性上司と、あからさまにお互い、何かと仕事を奪い合おうとしている2人の女性社員が出てくるドタバタコメディな話から始まる。
 後に分かってくることなのだが、椅子や衝立をしきりに2人の女性社員が動かしているのは、舞台転換をしていて、その作業自体をドタバタコメディな芝居にすることで、芝居と芝居のツナギを退屈にせず、観客を一旦現実に引き戻させずにする効果になっていることに、途中の演者の台詞によって気付かされ、無名な劇団がこんな高度なことをさり気なくやってのけている事を知って、感心してしまった。
 また、女性上司から仕事をもらうために2人の女性社員がそれぞれしゃしゃり出て、あけすけにお互いをライバル視して、しかし、それでいて、時々協力し合うドタバタコメディで、大いに笑えた。
 
 コンビニが舞台の短編では、どっかズレていて、距離感もなく話しかけ、人の話をあんまり聞いていない男性店員と、ツンと澄まして隙がなさそうで、常識人っぽい女性店員との言葉のキャッチボールが全然成立していないやり取りが個人的にかなり受けた。
 また、コンビニの男性店員を演じる俳優が、隣の女性店員に一方的に思いを寄せていて、アパートのシーンにおいて、女性店員のいる隣の部屋から壁に耳をそばだてて盗聴したり、女性店員がいない間で、たまたま入り口のドアが空いていたときに、勝手に入って、女性店員が所持しているものの匂いを嗅いだり、小型デジカメで写真を撮ったり、部屋を撮ったりといった異常行動を、その肉体全身と、目つき、声色を使って、ストーカー行為のそこ知れない気持ち悪さと、おぞましさを体現していて、存在感があった。
 しかし、女性店員がガラス製の灰皿で彼氏の後頭部を何度も何度も叩きつつ、叫び続けて、殺すシーンにおいて、それを演じる女優が、眼が血走り、静かだけれども相当以上で狂気に満ちたサイコパスな雰囲気を肉体から漂わせていて、真に迫っている感じが出ております、思わず見ているこちらも緊張し、脂汗が流れた。
 
 最後の劇では、殺人事件の話と、実際にその劇の稽古や本番、機材トラブル、脚本家が劇本番の最後の方になって降りるなどの劇団の現実問題とがシンクロしていく劇的展開、シリアスなようでいて、張り詰めたシーンでいきなり笑える内容になったりとコンセプトとしては、とても面白かった。
 ただ、クライマックスシーンにおいて、せっかく今まで観客を物語世界に引き込んでいたのに、収集のつかない、相当無理な素人芝居レベルか、それ以下の終わり方には心底落胆したが、そこさえ何とかすればより良くなると感じた。


「PUZZLE~HUGALIVE2021~」「天穹の雫」

「PUZZLE~HUGALIVE2021~」「天穹の雫」

ハグハグ共和国

萬劇場(東京都)

2021/10/07 (木) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/10/10 (日) 13:00

 『破片』という劇を観た。その劇では、かつて虐待を受けていて、現在は学校の先生をしている女性、虐待を受けている子どもたちや、かつて受けていて心の傷が癒えきっていない大人たちなどに向けて、無償で食事を提供しながら、気軽に相談に乗る、虐待被害者を支援しているオバサン、現在虐待を受けており、今日自殺しようと決意している女子学生と、何とか自殺は思い留まるようにさせたい友達、かつて虐待被害者で、現在は弁護士をしている女性などが中心人物として出てくる。
 虐待をテーマにしているが、それぞれの立場や価値観などによって、一方的な善悪論や単なる主観論に留まらず、多角的な視点で虐待問題を扱っていて、所謂新劇みたいに説教臭かったり、観客を教化することが露骨に表れていたりと言った感じがなく、劇を見終わった後に、社会問題としてだけではなく、もっと身近な問題として虐待の加害者、被害者、について深く考えてしまった。

カムカムバイバイ

カムカムバイバイ

U-33project

アトリエファンファーレ東池袋(東京都)

2021/09/08 (水) ~ 2021/09/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/09/10 (金) 18:00

 僕は『カムカムバイバイ』という劇を観ました。
 群像劇で、社会派劇であり、不条理劇であり、少しサイコ·ホラーであり、劇を見終わる頃には、見につまされるような、他人事には思えないような気持ちにさせる作品である。
 女性の上司に付き合ったことで、キャバクラの女の子入れあげた挙げ句、ストーカー行為に走る男性会社員、少し謎めいたところがあり、キャバクラ通いのかなり強引で、何かにハマると、それを人にも強引に押し付ける女性上司、それまではおバカで天真爛漫で、常に明るく元気だったが、女性上司にキレイになる香水を強引に勧められてからは、それがないと段々正常な状態でいられなくなっていくキャバクラ嬢、詐欺師で捕まった男は牢屋内で不思議で変わった女に救われ、それ以来その女性を探しつつ、透明人間のように殆どの人間の視覚から消える術を得て、逃げ続ける。また、それまで警戒心がなかったが、ある事がきっかけで警戒心を持つようになり、そして時を近くして自分が人から構ってもらいたい、優しくされたいんだと気付く女子アナウンサー、子どもっぽくて人を疑わず、いつかお金持ちになりたくて、そのためにはどういうことをすれば良いのだろうと悩んでいる女子アナウンサーと同居している女性、そして全てを見守っているが、物語の最後の方でとうとう感情が爆発してしまう、何とも人間的な神様など、相当個性的な人たちが出てきて、噛み合ってるようで噛み合ってないような会話が面白く、さり気なく繰り広げられる会話のなかにも、ユーモア、ブラックユーモア、皮肉が込められており、大いに笑えた。
 キレイになりたい、人に構ってほしい、優しくされたい、お金持ちになりたいと素朴な願いから壮大な願い、欲望などを持つ人たちが、騙され、騙し、失敗し、挫けそうになっても何とか立ち直り、前に向かって進もうとする。しかし、物語の終わりのほうでみんなの願いを今まで一心に聞いてくれていた神様が爆発して、ハッキリとものを申す。
 そうすると、今まで神様を頼り、お互いの幸せを称え合っていたのが崩れ去り、信頼、信じ合う心、自分よりも他人の幸福を祈っていたなんて真っ赤な嘘で、お互いを激しく罵り合い、人を疑い、SNSにはあることないこと書かれ、一気に拡散されるといった現代の噂に当たるSNSの負の部分も暴きだされ、人間の醜い部分があぶり出され、本性丸出しの、しかも神さえ救えない、そのどうしようもない終わり方に、他人事とは思えなく、自分にもそういう嫌な部分が多少なりともあるんじゃないかと思うと、背筋が凍りつき、嫌な余韻が尾を引いた。
 あと、話は少し変わるが、この劇で、TVディレクターの役をやっていた俳優が、『お疲れちゃ〜ん』『もしもし〜○○ちゃぁ〜ん、今日この後予定ある〜』みたいな感じの、いわゆるTVディレクターの一般的なイメージを、さり気なく、でも相当誇張して表現していて、役者が演じてるというより、目の前にTVディレクターがいるという感じで、役と演者の区別がつかないくらい肉体から自然発生的に演じられていて、すごかった。出てきてちょっと喋っただけで、相当笑えた。

Who’s it? 〜ニューヨークの日本人〜

Who’s it? 〜ニューヨークの日本人〜

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2021/08/05 (木) ~ 2021/08/10 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/08/08 (日) 14:05

 febLaboプロデュース「Who's it?~ニューヨークの日本人〜」を観ました。天真爛漫で、相当ハイな日系人女性、テンションが異様に高く、人の話を聞かないニューヨークのアパートの管理人の女性、売れない画家の男性、小さなギャラリーを営む信用ならない男性、ダンサーの女性、そして、アパートの一室に何時間前からいるのか見当がつかない、銃を手にして座っている日本語しか話せないヤクザの男など、一癖もふた癖もある登場人物たちが、それぞれ存在感を発揮していて面白かった。
 そして、役者と劇の登場人物たちが絶妙にマッチしており、且つ、役者の熱演ぶり、さり気ない所作から全身を使ってリアクションをしたりしていて、観ていて気持ちが良かった。
 ヤクザが銃を持っていて、英語禁止で、スマホは机の上に置かなければいけない危機的状況なのに、最初のうちはヤクザにビビっているが、途中から、思い出話や何で自分がニューヨークで暮らしているのかという理由を話し出したり、日本人がアメリカにおいて、差別される話、そして、ヤクザが金品目的や命を取る目的ではないことが途中からわかってきたり、アパートの住人の男性の一人が、大麻を大量に所持しております、それを元手に新たな事業を展開してカリフォルニアに移ろうと考えていたことが物語中盤でわかったりと、先の展開が読めず、それぞれの思惑が絡まり、勘違いや空回りによる笑いがあり、見る者を飽きさせず、先が読めないものだから、次はどうドラマが展開していくんだろうとドキドキハラハラしながら観ていて、次第に気持ち的に目の前で起こっていることが演劇なのか、現実なのか、その境界が曖昧になるくらい劇世界に引き込まれた。

超ではない能力

超ではない能力

24/7lavo

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2021/05/13 (木) ~ 2021/05/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/05/16 (日) 14:00

 『超ではない能力』を観劇しました。
 タイトル通り、社会に役立つでもなく、
たいして脅威ともならない中途半端な超能力を持った人々が集まり、そのような繋がりから、Youtubeの配信でそれぞれの能力を披露することにつながる。しかし、何回目かの配信で、注目を集める為にちょっとしたインチキをした人がいる。それでネットが炎上したりというようなドラマがある。なので途中どうなる事かとハラハラしたが、最後のほうでたいして役にも立たないどうでも良い能力を持った人々が向かってくる電車に飛び込み自殺をしようとしている女子高生を救う展開を観て、世の中に役に立たない、必要とされない能力であるとしても、力を合わせれば本当に追い詰められた人を救える。つまり、この世の中に役に立たない、どうでも良い存在なんて誰一人としていないんだということをしみじみと考えさせられた。
 作品内のそれぞれの個性的で面白いキャラや過去が非常に暗いキャラを、俳優が迫真の演技だったり、熱い感じだったり、時にコミカルに表現されていて、俳優とキャラがシンクロして見えた。
 ただ、最後の終わり方が結構強引に感じられたので、そこがまとまっていたらより良かったと思う。

共生

共生

さんらん

アトリエ第Q藝術(東京都)

2021/03/17 (水) ~ 2021/03/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/03/19 (金) 19:00

 『共生』という劇において、上野の動物園で働く祖父は戦争で、自分が育てている子象までも、飢え死にさせなければならない、そのどうしようもできない現状に苦しんだ。父は戦後、松屋デパートの屋上で子象のショーをやっているが、あることをきっかけに公務員と仲良くなり、一緒に小象を屋上から連れ出して上野の動物園に運ぶ為に思案し、行動し、最後はその血の滲むような努力が実を結ぶ。そして現在の娘は、女獣医としてアフリカに行き、動物自然保護区に象牙などを求めて侵入してくる密猟者達から子象を含む動物を護るため、体を張って闘い続けている。
 という、それぞれ立場は違えど、動物に関わる仕事をしている1つの家族を取り上げて、その家族と動物の在り方を通して、動物との共生とはどういうことなのかを考えさせてくれた。
 そして、象牙を欲しがらない、密猟業者から象牙を買わない、そういうことの積み重ねが動物と共に生きていくということなんだということを骨身に沁みて感じた。

羽化する朱い糸

羽化する朱い糸

劇団Pin to Hint

阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)

2021/03/12 (金) ~ 2021/03/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/03/14 (日) 16:00

 『羽化する朱い糸』という劇において、主役の真弓と、生みの親の朱音とを、俳優の望月ミキさんが、性格や雰囲気、声色を変えながら、見事に演じ分けていて、演技力があると感じた。また、最後のシーンで、主人公の真弓を演じるミキさんが、赤い蚕の赤い糸に絡め取られていきながら、妖艶さや、相手を引きずり込みかねない危険さ、それとともに春馬に対する純情さをも肉体や言葉を使っての迫真の演技が、思わず観ている僕に緊迫した状況を強いて、迫真に迫っていた。
 
 春馬、先生、祖母役を演じた俳優の尼子亮平は、特に、頑固で、村のしきたりに異常なまでに固執する祖母役において、静かな言葉の端々に、急に何者かに取り憑かれたかのような狂気の演技に魅入った。また、最後のほうのシーンでの、今まで物静かで気が弱かった会社の後輩春馬役の亮平さんが、絶望や苛立ちから人が変わってしまう演技が、実に怪演で見事だった。

『布団漂流記』

『布団漂流記』

尾米タケル之一座

Geki地下Liberty(東京都)

2021/02/24 (水) ~ 2021/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

 『布団漂流記』において、政府による不正事件をあからさまに嘲笑して皮肉った笑いや、何度か同じ様な動作や言動を繰り返し続ける笑い、体を張ったスラップスティックコメディの要素、騎士が自身の過去を語るシーンで映像で文字が浮かぶはずが浮かばず、肝心のことを言わずに終わったので、そのことに対して周りが突っ込んだりすることによって起きるその場限りの笑いなど、とにかく終始笑わせてくれたが、主人公の竹広が引きこもりだったり、非常に人間味溢れたラブドールが出てきたり、暗い過去を持つシングルマザーフミ江に敵とも味方ともつかぬ騎士などが出てきて、物語の中に、出てくるキャラの過去や引きずっているものに現代の社会問題を内包させていて、終わる頃にはグッとくるものがあった。
 主人公の竹広役の人が、本当の引きこもりってこんな感じだよなぁと感じさせるほど、演技から引きこもりの雰囲気を自然と醸し出していた。ほぼ主役と言って良いラブドール役の人は、劇中最後の方の竹広との○○○の場面で、手慣れた雰囲気と生々しさ、色気が際立った腰の振り方であったりの演技が目が離せない迫力があった。
 竹広が劇中後半で言う「次元の王が部屋から出られずに引きこもっているのは、皆の特にユキさんの、王様は責任を持って国を治め、政治を行い、命令を出さなければならず、まずは部屋から外に出てもらわないと、という大きな期待や価値観の押しつけ、次元の王を心配していろいろなことをする、そのことが王にとってむしろ大きなプレッシャーとなり、結果、10年、15年、いやもしかしたらそれ以上部屋から出ない引きこもり生活が続くんだよ!!分かるか!?ユキさんが良かれと思ってやること、皆が呼び掛けに来ることそれ自体が逆効果なんだよっ!!!!」的な台詞を聞いてなるほどなぁと引きこもりの心理が少し分かったような気がした。「そうだとして、だとしたら、どうすれば良いってのよ」という皆の意見に、竹広は「2、3日といわず、最低でも3ヶ月はユキさんはお暇でも頂いて、城の外に出て、長旅でもし、皆んなは執拗に次元の王に声をかけず、そっとしておいてあげようじゃないか」というような台詞を言っていて、必ずしも引きこもりの人を支援しようとしたり、応援しようとしたりして、何とか外に出て普通の生活ができて、仕事をすることが本人のためにも幸せであり、引きこもり当人の生きがいにもなっていくという考え方事態が間違いなんだなぁと深く考えさせられた😓引きこもりの人が立ち直るように応援したり、支援することで立ち直ることよりも、返って当人のプレッシャーになることの方が多いということをこの劇で知って、距離を置くことも大切なのだと痛感した😔

『虔十公園林』 『双子の星』

『虔十公園林』 『双子の星』

J-Theater

「劇」小劇場(東京都)

2020/10/17 (土) ~ 2020/10/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/10/18 (日) 13:00

「虔十公園林」において主人公の虔十は、近くの森林に入っては笑ったりしているので、子どもからも周りの大人からも馬鹿にされ、蔑まれていた。ある時、親に頼んで苗木をたくさん買ってきてもらい、それを田畑の近くの草がたくさん茂っている土地に植え、伸びるのを待つが、やがて病気で亡くなる。この話を朗読と俳優の動きや表情で表現していて、俳優の演技も役柄にはまって、まるでそこに本当に虔十がいるような感覚に陥った。
 また、その虔十という知的障害を持った青年後の血の滲むような努力によって、虔十が植えた苗木が本人が亡くなった後に、大きな雑木林の空き地となっており、本人の名を取って公園林としてその林が公的な遊び場として市が認めるようになったと言う事において、障害を持っていようが、そんなのは関係ない、その人のしたい事を極めれば、みんなもそのうち認めてくれるというようなことが伝わってきて、感動したし、何か自分の中で勇気が湧いてきた。

農園ぱらだいす

農園ぱらだいす

劇団匂組

駅前劇場(東京都)

2020/10/14 (水) ~ 2020/10/18 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/10/16 (金) 19:00

 笑いあり、恋愛要素あり、ドラマあり、急に歌い始めたりと、次に起こる事がすぐには予想できず、面白可笑しかった。
 何気ない日常会話の中に、不倫や浮気、急逝、受験問題、通学問題、離婚問題、それにジェンダー論、人生観、少子化問題など、深刻な問題がさり気なく織り込まれていて感心した。
 物語の中心的な構成要素となる2人の恋愛も、なかなか素直になれなかったり、鈍感であったりと、もどかしさもありつつ、リアルな恋愛って案外こんなものなのかもなぁと思えた。

このページのQRコードです。

拡大