サヨナフーピストル連続射殺魔ノリオの青春 公演情報 オフィスコットーネ「サヨナフーピストル連続射殺魔ノリオの青春」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2022/03/11 (金) 19:00

     始まってすぐ、主人公の永山則夫の東北にある実家の家に、面識のないはずの、ある招待状が送られてきたことが共通していて、何か勘違いしている4人の男性とのやり取りになるので、これはてっきり不条理劇かと思いきや、劇の途中からだんだんと分かってくるのだが、実はこの4人の男性、主人公の永山が射殺して殺された人物たちで、毎年事件当日になると、永山の前に現れ続ける、永山の後悔や自責の念との葛藤、不安や怖れから生み出した幻影だということが分かってくるという、劇のどんでん返しに目を見張る思いがした。
     そのかつて射殺した4人の幻たちとの対話を通じて事件を起こすに至る経緯や動機などが語られていき、少年から青年時代の永山則夫がいかに網走で生まれたことで、戸籍差別を受け、職場でも東北弁の訛りがないことで、先輩から目を付けられといったように苦労の連続であったというようなことから、もし、私自身が永山則夫の立場だったらどうしていただろうと思うと、居たたまれなくなった。このような事件は他人事ではなく、誰にでも似たような状況は起こりえるのではないかと考えると、深く考えさせられてしまった。
     しかも、4人の男性を射殺したあと、大一審は逮捕から10年に渡り1979年7月に死刑判決が言い渡されるが、弁護団が控訴したことで1981年8月に一旦は死刑判決は破棄され、無期懲役判決となったが、その後1982年に小説を書いて文学賞を受賞したりもするが、しかし安心するのも束の間で、1987年3月に再び死刑判決となり、本人が上告するも、棄却され、1990年5月に死刑が確定、1997年8月1日に東京拘置所で死刑が執行されるという、その間、永山則夫は、喜んだり、希望に燃えたり、ほっとしたり、不安になったり、後悔したり、自責の念に駆られたり、といったように運命にイタズラに翻弄されていく一人の無力な人間として描かれていて、共感する部分も多くあった。
    確かに4人殺すのは良くないというのは分かるものの、そうは言っても、30年弱も牢屋に入れておいて、勉学の機会まで与えておいて、でもやはり最終的に死刑という在り方自体に疑問を禁じ得ないし、日本の死刑制度の必要性に疑問が残った。

    また、劇のあとに姉の回というのがあって、それでは、永山則夫の長女にフォーカスが当てられた一人芝居だったが、彼氏らしき検事志望の学生に勉強を教えてもらっているところから始まるが、最後には、長女セツは、その学生にとって遊び程度の関係としか思われていないことを知り、発狂して狂うまでが丹念に描かれ、長女役の俳優が、健気で明るく元気でしっかりしていて、純情なところから、終盤で狂気に取り憑かれていくまでをしっかりと表情豊かに、声にも波長をつけ、肉体も駆使しながら、身体全体を使って表現していて、何か迫ってくるものがあり、思わず魅入ってしまった。

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    2022/03/17 00:02

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