鯉之滝登の観てきた!クチコミ一覧

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8人の女たち

8人の女たち

T-PROJECT

あうるすぽっと(東京都)

2019/11/13 (水) ~ 2019/11/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/11/15 (金) 19:05

 お屋敷の主人であるマルセルが、7人の女性達の主人に対する秘密を暴くため、主人の奥さんの子供の姉妹のうち、道化的役割を担っている中性的で弁舌が立ち、妙に大人を客観視することに長けている妹に頼んで、主人人が殺されたと言う芝居を打ってもらう。そして7人の女性が誰が犯人かを言い当てるため、相手の隠し事を暴露し合うが、それを聞いていた主人は、最終的にその膨大な7人の女性達の秘密に耐え切れず、自害してしまうという、とてつもなく悲劇的な結末に自分の身体に衝撃が走り、暫くの間動けず、思わず身震いした。
 この密室推理劇はコミカルなキャラや何事にも大袈裟なキャラ、狂言回しに道化キャラと面白くて魅力的な人物がたくさんいるので、それぞれの特徴や個性が引き立ち、最初は誰が誰だかわからなくても、段々とそのキャラたちの世界に入り込んだかのような錯覚に陥っていく。また、コメディ的要素と緊迫感がある密室推理劇のシリアスな要素が合わさっていて見事だった。
 私は休憩前の前半で4人まで絞り込む事ができたが、後半の種明かしシーンの少し前にその4人では確実にないことが分かり、もっと意外で身近な人物であることを発見し、今まであまりに堂々としていたので犯人から除害していたので、つくづく灯台もとぐらしだと感じた。










汚れた世界

汚れた世界

無頼組合

シアターKASSAI(東京都)

2019/12/06 (金) ~ 2019/12/09 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/12/06 (金) 19:00

 主人公のグンが、怪我をしたことによって徴兵されない代わりに、映画ではなくて記録映画をとるよう政府から強いられている友人のため、恋人のため、自由を束縛して実質の監視社会を創設して徴兵を強要する政府を欺くため、政府に支配され、監視社会になり、自由を束縛されているのに、どうせ変わらないと諦め、見てみぬふりをする人たちを変えるため、自分が最終的に犠牲になる可能性も十分わかった上で、一世一代の芝居を打ち、友人に記録させることにより、自分の存在意義を見出し、自分のやりたい事をやろうとすることで、自分なりの自由を勝ち得ようとする、逆境にも負けない不屈の精神に感銘を受けた。
 グンの芝居に途中まで私は騙されたが、中からグンが本当にやろうとしていることがだんだんわかってきた。また、自分のやろうとすることを相手が何を言おうがお構いなしに断行しきろうとする、自分の考えを貫く不屈の精神、現代人にはほとんど失われている、自分に出来る限りのことで自由の権利を保持するために努力すことが大事なことで、諦めたり政治に関心を示さなかったり、メディアから顔を背けることがどんなに恐ろしく、政府が指摘するより前に自粛する事の怖さ、政府による管理社会、自由を束縛する社会の危険性がこの作品を通じて示唆されているように感じられ、自由の権利を勝ち得る為には、常に矛盾している世の中の事柄に疑問の目を向け、無関心にならず、他人に流されず、諦めず、自分なりの確固たる信念を持ち、現状に満足せず、常に自分なりの自由を追及していくことが大事だと改めて実感した。

鬼〜贋大江山奇譚

鬼〜贋大江山奇譚

むさしの芝居塾

現代座会館(東京都)

2019/08/09 (金) ~ 2019/08/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/08/12 (月) 18:00

人は他人を鬼として見て生きているが、相手を貶め、思いやりのかけらもあらず、自分が幸せになる為なら、平気で人を裏切り、罵り、他人の人生を崩壊させ、自分が得をしていれば、他人がどうであれ無関心で良いのか、と私自身にこれらのどれか1つでも当てはまるものがあるか、あったとしてこれからそれにどう向き合っていけば良いのかと言うことを、この劇を通して、考える良い機会になった。

YEAR END MUSIC PARTY vol.2

YEAR END MUSIC PARTY vol.2

MPinK(ミュージカルプロジェクトin神奈川)

ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)

2022/12/27 (火) ~ 2022/12/28 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/28 (水) 17:00

 MPinKというミュージカルの子役養成所による生バンドミュージカルコンサート。
子役時代から有名ミュージカルに出演していたメンバーが有名ミュージカルソング、MPinKオリジナルソング、マッシュアップ、邦楽などあらゆるジャンルを踊り歌いハモリ続けるナマバンドによるミュージックレビューショーと盛り沢山な内容で、思っていた以上に、その辺の市民ミュージカルよりよっぽどクオリティ、レベル共に高く、歌ももちろんのことながら、ダンスに、身体が尋常じゃないくらい柔らかい運動神経抜群で、床に比較的近いところでの空中バク転やブリッジなどのアクロバットを歌いながらこともなげに見せてくれる現役女子高生や女子大学生もいて、その天賦の才に脱帽した。

 また、特に、女性陣のアイドル顔負けの派手で可愛かったり、美人さんだったりの見た目もさることながら、ソロパートやデュエット、マッシュアップにラップ、ハモり、アカペラ、ソロさえも卒なくこなしているのには、さすがに驚き、眼を見張った。

 大根田岳さんによるソロでミュージカル曲を英語で前編歌うのは、その何個か前の曲紹介の際に、構成·演出、そしてMCも担当している笹浦さんが大根田さんが英語が苦手なことを暴露していただけに、一時は大丈夫かと心配になったが、いざ歌が始まると英語も勿論のことながら、段々と上げていく曲調や曲の雰囲気も壊さずに力強く歌い上げていて、感動した。

 田中杏佳さんや遊佐夏巴さん、永利優妃さん、富田明里さんがプロデュース曲として、マカロニえんぴつさんの曲やLittle Glee Monsterさんの曲、YOASOBIさんの『怪物』など選曲も良く、ダンスや歌の指導はもちろんのことながら、照明などにも支持を出していたことなどのエピソードをいろいろと、構成·演出、MCも担当している笹浦さんから聞かされて、将来有望に感じた。

 構成·演出の笹浦さんがMCも卒なくこなし、自虐や楽屋ネタ、裏話、練習時の話、MPinKにいる子どもたちを褒めそやしてみたり、カルチャーギャップネタなど、観客の注意を引きつつ、面白可笑しく、飽きさせないというのも、MCが向いてるタイプに見えなかっただけに、驚き、関心した。
 しかしそれ以上か、それに近いかぐらいにMCで話を回したり、話題を振ったり、相槌を打ったりというのが自然に子どもたちは、男性陣、女性陣問わず出来ていて驚き感じ入った。

 川崎のアイドルグループの曲をグループの許可を取ってアレンジも加えたバージョンでやってみたり、ディズニーメドレーにジャニーズメドレー、モーニング娘時代の石川梨華さんが参加した『ピース』という曲など、私でも聞き覚えのある曲もたくさんあって、アドレナリンを上げやすかった。
 

 

人魚姫の庭

人魚姫の庭

マルチリンガル演劇実行委員会

あうるすぽっと(東京都)

2022/12/12 (月) ~ 2022/12/12 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/12 (月) 19:15

 アンデルセン童話の『人魚姫』を下敷きにした劇が始まる前に、あうるすぽっとという劇場のホワイエに入った瞬間から、劇のタイトル『人魚姫の庭』のイメージに沿った心地良くもなんだか妖しく幻想的で、美しい音楽が流れ、目の前には人魚の住まう世界を想起させるアートマーケットが広がっていて、その一種の美しき世界観に心を洗われる思いがした。
 また、劇が始まる前のオープニングアクトでは、一人の背の高い女性が踊っている間に、もう一人の女性が巨大な白紙に大きな筆でダイナミック且つ繊細に「夢」という字と今回の劇世界に多少寄せた絵を描いていて、その二つのパフォーマンスがあまりにもさり気なく淡々と、ごく普通に行われているのに、シュール且つ、凄いと感じた。

 アンデルセン童話『人魚姫』から大きく内容は変わらないものの、今回の本編の劇『人魚姫の庭』では、王子の住む人間の国、人魚姫のいる海底王国とは別に、新たに弱小の湖の国に住まう王女様を描き、さらに人魚姫の一連の悲恋の物語を旅芸人がその仲間たちに語って聞かせている場面を導入することで、この物語が多角的、客観的に見える視点を持ち得てきているように感じ、感傷的、自己犠牲的にイメージしがちであり、そういうふうに描かれがちなところを、新しい少し距離を取った視点を取り入れることで、新鮮に感じた。
 また、弱小の湖の国の王女が陸の人間の国の王子と結婚しないと、陸の国の人間の好奇心や欲望、野望のために戦争を仕掛けられて、王国を滅ぼされ、新たな支配地にされるのは時間の問題というようなことが劇中の台詞であったり、人魚姫のいる人魚の海底王国において、人間にこの美しくて平和な海の世界が見つかったら、きっと放ってはおかないだろう。私たちの世界を手に入れる為だったら、どんな手を使ってくるか分かったものじゃないというような台詞から、支配する側、される側、植民地主義や現在のアメリカ資本主義、格差社会、多様性やSDGSといいながら、とてもじゃないが色んな価値観や人種、生まれや性差などに対して社会が寛容になったとは到底言えないし、もちろん、だから不寛容を象徴するかのような戦争や紛争、デモ弾圧が行われ、年々それらが激化し、人間同士だってそういう感じなのだから、人類が自然に対して、人類の生活をより良くするために行ってきた自然破壊も一部では、極端で露骨になってきていることを痛烈に批判しているように感じ、深く考えさせられた。
 
劇場に入った瞬間、劇の本編など全体を通して、幻想怪奇、特に本編が始まってからのエロティックな描写、少しのグロ描写、それらを包み込むような美しい世界観に気付くと、没入し、海底にいると錯覚させる照明や独特な音楽によって、しばらくは現実に引き戻されることなく、体感した。
 劇中本編の終わりの10分前頃から写真撮影OKというのも、却って海底や人魚が住まう世界観に溶け込めた。

演劇×オペラ「マクベス」

演劇×オペラ「マクベス」

若い演奏家の為のプロジェクト

渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール(東京都)

2019/11/21 (木) ~ 2019/11/22 (金)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/11/22 (金) 17:00

 オペラの場面と会話劇の場面、交互に入れ替えているのと、オペラと会話劇が複合している場面もあったりと画期的な演出がされていて、斬新だと感じた。
 オペラと会話劇で、笑える場面や、舞台会場を題材にした自虐の笑いと歌を題材にした自虐に 、差がつけられていて面白かった。




幻想のリチェルカーレ

幻想のリチェルカーレ

フリスティエンターテインメント

キーノートシアター(東京都)

2019/07/25 (木) ~ 2019/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/07/26 (金) 19:00

16世紀ぐらいの話、21世紀中盤の学校の話、21世紀のオリンピックの架空競技を巡るドラマ、そしてそれらの話に大きく関与する未来の話と複雑な重曹構造で、そこに過去の人物や某アニメキャラのパロディなどの笑いの要素も盛り込まれていて、そして今までの4つのリンクする話が実は21世紀に生きる少女が仲の良い友達に自分が構想中の小説のプロットを話して聞かせていたという作りになっており、ここまで若手の小劇団で劇の構造が複雑で考えさせられる話を上演したと言うことに驚き、意外に感じた。最初ビジュアル的にライトノベルなどを下敷きにした2.5次元舞台のようなものかと思ったが、いざ見てみて中身もしっかりしていて見直した。老若男女誰が見ても、鑑賞に耐えうる、教養や知識があり複雑で自分が見ているものが本当か疑いたくなり、ダンスなどのシーンは非常に前衛的かつ実験的作品だと考える。

Xmas fool

Xmas fool

ROUND TREE プロデュース

千本桜ホール(東京都)

2022/12/07 (水) ~ 2022/12/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/08 (木) 19:00

 がん宣告され、100日後に死ぬと医者に言われた喫茶店の店長。SNSで配信する。
ただ、これ… 真っ赤な嘘!その嘘が拡散し、閑古鳥が鳴くぐらいいつ潰れてもおかしくないぐらい客の来ない喫茶店存続の為、マスターの知り合いの思い付きで始まったことだったはずなのに、尾ひれに尾ひれが付きまくって、もう後戻りできなくなるところまで追い詰められていく主人公の喫茶店の店長や、あくまで嘘を最後までバレずに医師の診断書まで用意して、用意周到に押し切ろうとする知り合いの半田など癖が強く個性的な登場人物が次々に登場し、それらの人間模様や騙し合いを徹底的にコミカルに馬鹿馬鹿しく描いていて、さらにノンストップで次から次へと息を吐く暇もないほどジェットコースター級に場面が展開され、ウクライナ侵攻の話題をネタにしたり、医師の不正ネタなど大いに笑えて、面白く、時々鋭く痛いところを風刺しているところにハッとさせられた。

 喫茶店の経営のためとはいえ、嘘を突き通して、隠し切ることに不器用で、妙に人間味があって小心者の店長の性格に共感した。
 また、小心者で大掛かりな嘘を付いたり、仮に小さな嘘でも付くことが難しく、物腰からして小物感が半端ない喫茶店の店長役の俳優のタカギマコトさんは、うだつが上がらず小心者だが、どこか憎めない感じが全体の雰囲気や喋り方などから滲み出ていて、良い味を醸し出していた。
 広告代理店に勤める喫茶店店長の知り合いの半田役のKいちさんも、思い付いたら後先考えず行動し、呑気で軽〜い業界染まりした男を、雰囲気や大袈裟な所作や口ぶりなどから表していて、良い意味でアクが出て目立っていて印象に残った。
 サツキ役の森崎りなさんの、情緒の振り幅の激しい感じも眼に焼き付いた。
中学生の梨花役の塚田光虹さんの少しひねくれて頑固なところがあって、思ったことを正直にズバズバ言う役どころをサラリと自然な演技でやっており、大人が制服着て演じているにも関わらず、全然違和感が不思議なくらい一切なかった。

『ダークダンス』

『ダークダンス』

尾米タケル之一座

ウッディシアター中目黒(東京都)

2022/12/07 (水) ~ 2022/12/14 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/14 (水) 13:00

 ある日、怪人ダークダンスとの激闘の際、突如起こった事故で死の淵をさまよい、気付くとボディネーションこと田代大人と怪人ダークダンスの中身が入れ替わっていた。
 そして時を経ること二十数年。
 かつてヒーローに憧れたものの、今ではすっかりダメ人間として自堕落な生活を送る中年男、大楠義治。突然の来客によって人生をあきらめた男が新ボディネーションになる。
 そして、廃墟に住まう謎の少女、ボディネーションこと田代大人の担当看護師、それに剣の達人で生真面目すぎて融通が聞きづらい安岡という女性など、個性豊かでアクの強い人物たちが数多く登場し、それぞれの正義感や使命感が存在し、善悪二元論で押し切るには無理があり、自分の正義感や価値観を相手に押し付けようとすると争いになるなることを導き出し、体はダークダンスだが、中身はボディネーションの田代大人は常に最後まで対話しようとするあり方に、自分の正義感や勝手な使命感、価値観を相手に押し付けたり、相手を憎悪したりするのではなく、たとえどんなに時間がかかろうとも、相手と対話をして解決していこうとすることが平和への一歩であり、戦争や紛争、核戦争を食い止めるためにもじっくり話し合うことの重要性を痛感した。
 
 また、廃墟に住まう少女がかつてお母さんがDV受けていたのを眼の前で見てきてトラウマになってたり、怪人ダークダンスの中身がボディネーションの田代大人がかつて731舞台に所属していた博士が平和利用のために生み出したのがボディネーションというヒーローだった経緯が語られたりと、社会問題や日本の歴史の闇に葬り去られた戦争犯罪の記憶、同調圧力などをさり気なくそれでいて鋭く描いて、炙り出して、浮き彫りにしていて、終始何を持って悪と言えるのか、何を持って善なのか、答えの出ない問いに考えさせられた。そもそも完全な善人や悪人というのはいなくて、大抵は知ってか知らずか二面性を持った人間が多いんじゃないかと感じ、損得で人は動くかも知れないが、時と場合によっては後悔もするし、少しの良心があったりするから、人は生涯思い悩むのではないかと感じた。

 劇中に小池百合子都知事の音声を流してきたのには、痛烈な批判精神が込められていると感じ、大変良かった。
 
 メイン舞台とは別に脇にも舞台があって、そこも同時進行で有効に使っていて、映画のような臨場感、没入感があった。

「PUZZLE~HUGALIVE2021~」「天穹の雫」

「PUZZLE~HUGALIVE2021~」「天穹の雫」

ハグハグ共和国

萬劇場(東京都)

2021/10/07 (木) ~ 2021/10/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/10/10 (日) 13:00

 『破片』という劇を観た。その劇では、かつて虐待を受けていて、現在は学校の先生をしている女性、虐待を受けている子どもたちや、かつて受けていて心の傷が癒えきっていない大人たちなどに向けて、無償で食事を提供しながら、気軽に相談に乗る、虐待被害者を支援しているオバサン、現在虐待を受けており、今日自殺しようと決意している女子学生と、何とか自殺は思い留まるようにさせたい友達、かつて虐待被害者で、現在は弁護士をしている女性などが中心人物として出てくる。
 虐待をテーマにしているが、それぞれの立場や価値観などによって、一方的な善悪論や単なる主観論に留まらず、多角的な視点で虐待問題を扱っていて、所謂新劇みたいに説教臭かったり、観客を教化することが露骨に表れていたりと言った感じがなく、劇を見終わった後に、社会問題としてだけではなく、もっと身近な問題として虐待の加害者、被害者、について深く考えてしまった。

獄中蛮歌

獄中蛮歌

生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した

四谷OUTBREAK!(東京都)

2022/12/28 (水) ~ 2022/12/29 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/12/29 (木) 19:00

 檻の中にいる方が楽だろう?別に何不自由なく生きられる。だから何?お前らはそれで良いのか!?そうやって自分とちゃんと向き合わず、自分の殻に閉じこもったままで良いのか!?実際の監獄は勿論のことながら、心の檻からも脱獄しないと本当の自由は得られないという二重の意味を脱獄という行為に込め、教訓的じゃなく、押し付けがましくなく、ハイスピード、パンク・ロックあり、激しい社会批判や過激な言葉やえげつない言葉、大麻などを連発するラップを取り込んだ、ダンスあり、アクションあり歌ありの一風変わったミュージカルで、音楽も含めて、気付くと、その独特な世界観にのめり込み、自分も迷える囚人の一人と錯覚させられるほどに没入していた。

 囚人を演じているのは全員男優だったが、男優たちの実際の実生活やアルバイト、ホームレスなどの真実、男優たちの性格や感情の機微を個性的でアクの強い囚人たちの性格やその囚人たちの今までの生い立ちに、ところどころさり気なく混ぜられていて、抱腹絶倒したり、悲しくなったり、感動したりと感情移入し、あまりに俳優が演じる囚人に俳優が寄せてきている感があって、男優が囚人を演じているのか、それとも、囚人が男優を演じているのかの見境がつかないほど、肉体全身を使って全身全霊で表現していて、眼を見張る程見事だった。

 ロックやラップに乗せて2.5次元俳優を猛烈に批判したり、自虐があったり、社会、政治批判に、戦争批判、現状批判、常識に対して鋭く疑問を叩きつけたり、ディズニー批判に、しまいにゃ著作権問題に対して辛辣に批判、さらには個人的な恨み辛みもねじ込んでくるその無神経さ、図太さ、言いたいことを言う感じに、共感し、大いに笑い、時にハッとさせられた。
 『獄中蛮歌』というパンク・ロックな曲が劇の終盤とアンコールでも再び流される頃には私も、ノリに乗って、体中のアドレナリンが爆発し、公演が終わってもしばらくは興奮が覚めやらなかった。

プロパガンダ・コクピット

プロパガンダ・コクピット

ミュージカル座

光が丘IMAホール(東京都)

2019/04/18 (木) ~ 2019/04/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/04/18 (木) 18:30

座席1階H列6番

この作品は、平和や自由、本当の幸せとは、真実とはについて考えさせられました。

ネタバレBOX

東と西に分断された世界の中間地点に位置するプロパガンダ・コックピットが舞台で、トリオと先輩、準主役のユズが中心に、この演劇は展開する。
Otogi ~bis dann~

Otogi ~bis dann~

FAM

上野ストアハウス(東京都)

2019/05/22 (水) ~ 2019/05/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/05/26 (日) 16:00

主人公の男を中心に話が展開し、命や仲間との友情、何の目的で生きるのかについて考えさせられる。

ネタバレBOX

主人公の男が持病を持っていて、その持病によって自分の命が侵され始めていることを、仲間には物語の終盤に差し掛かるまで、内緒にしている。
自由を我らに

自由を我らに

カプセル兵団

ワーサルシアター(東京都)

2019/05/28 (火) ~ 2019/06/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/06/01 (土) 13:00

 現代まで続く、日本国憲法を口語訳していく作業において、疑問が飛び交うなか、最終的に元々書いてあった文章のままでいいことになり、近年日本のA,S首相が改憲を訴えているご時世と考えると感慨深く感じた。

ネタバレBOX

 戦後の新たな日本国憲法の発布にあたり、言葉のプロを集めて文語で書かれた憲法を口語訳させる作業を依頼し、それを2時間で終わらせる事を何とか承諾させ、開始させる。
立ちバック・トゥ・ザ・ティーチャー

立ちバック・トゥ・ザ・ティーチャー

Peachboys

ザ・ポケット(東京都)

2023/04/19 (水) ~ 2023/04/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/04/21 (金) 19:00

 劇が始まる前のMCの俳優が、自虐あり、ぼやき芸あり、ツッコミあり、客いじりありと、観客を飽きさせず、自分の話術に観客をいつの間にか参加させていく、その巧みさ、可笑しさは前回を飛び越えていて、大いに楽しめた。

 ケン・ヨーヘイ・ハヤオの3人は仲良し童貞3人組。
「絶対に好きになった人としかヤッてはいけない」鉄の掟で結ばれた彼らだったのだが、今回、それどころではない事態に直面する!!!
3人の前に現れる、よく知らないおじさんの科学者「毒(どく)」。彼は突如、自身の作ったタイムマシン「ペロリアン」を彼らに見せびらかし、前日に性欲を異様に増大させるクスリを飲んでいたハヤオが暴走し、「毒」の腹を自らの股間で貫いて殺してしまう!逮捕され、連行されていくハヤオ。ケンとヨーヘイは「ペロリアン」に乗ってハヤオが暴走を止めようと思い、暴走前の時間に戻ろうとするのだが、辿り着いたのは、30年前の1993年!
令和5年と平成5年!2つの時代を行き来あいながら、童貞3人組は「今からそいつを殴りに」行って、ヨーヘイの父の童貞を捨てさせ、歴史を変えることが出来るのか!?
あと、多分尺的に無理そうだけど、3人組は童貞を捨てられるのか!?
あと、Peachboysは、本当に、ザ・ポケットの広さを使い切れるのか!?といった疑問も持ったが、前作を良くも悪くも凌駕し、今回かの有名な映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を下敷きにしつつ、あまりにもしょうもなく度を越したレベルの露骨な下ネタ満載、時事ネタ、政治話題を徹底的に揶揄り、これでもかというほど市井の目線で下らなく、面白おかしく、それでいて鋭く斬り込んでいて、そのあまりの自由っぷりと、何でもありなうえ、今流行のものから昔懐かしいものまで詰め込めるだけ詰め込みすぎて、大体の予定時間を大幅に過ぎてもやり続け、収集がつかないと思いきや、意外と最後は上手く締めくくっているあり方に、演劇として、一表現としての無限の可能性を感じた。

 令和5年の現代の場面において、フワちゃんはそんなにイメージを崩しては来なかったものの、ユッキーナこと木下優樹菜が極端に誇張されたギャルキャラなうえスシローの店長をやっているという無茶苦茶な設定のうえ、Breaking dawnの朝倉未来が主催するYouTubeで生配信される公開オーディションに何故か、かつて一斉を風靡したドラマ『家なき子』の家なき子がヤバ過ぎる情緒不安定なサイコパス少女として登場したり、今話題筆頭中のアドちゃんが毒(博士)の元ダッチワイフ人形で現在は毒の改造によりアンドロイドという奇想天外で支離滅裂、こじつけがましく、あまりに本人に対して失礼すぎるが、さらに主人公の一人ハヤオに対してアドちゃんが○○○しよっと抱きついてみたり、何かというとアドちゃんが過去に行っている時でも「新世界だっ」と言っていたりと、呆れを通り越して大いに笑えた。
 令和5年の現代の場面で、ガーシーがドバイから謝罪動画を配信しているのだが、謝る気ゼロどころか、つらつらと文句を並べ立て、ところどころ苦しい言い訳をするあたりが妙に生々しく、それでいて馬鹿らしく大いに笑えた。

 30年前の1993年(平成5年)の場面では、意味もなく漫画でアニメ化もされた『ドラゴンボール』の曲に合わせておそらく初代〜現代のドラゴンボールのアニメの戦闘シーンや飛ぶ場面を、かなりチープに作り込んでいたり、漫画でアニメ化もされた『ワンピース』の主人公が現実にいることになっていたり、喫茶店で漫画『タッチ』のヒロイン朝倉南が働いており、さらに病院でも働いていることになっており、さらにはSTEP細胞の開発にまで携わっていたと、歴史の整合性以前に、あまりに荒唐無稽な設定すぎて唖然とした。
 家なき子がこの時代では令嬢で、漫画『白鳥麗子でございます!』の主人公白鳥だったといういくら何でも苦し紛れ過ぎる設定、シンスケ(紳助)が、後に漫画『タッチ』の朝倉南と結婚して、その子どもがBreaking dawnの朝倉未来だという、誰がどう考えたって突飛で無理矢理過ぎて、あまりにあり得ない設定の連続で面白すぎて、気がつくと爆笑していた。
 最後のほうで、メガヒット映画『シン·ゴジラ』をパロってシン·平成は出てくるし、一大ブームを巻き起こしたRPGゲーム『ドラゴンクエスト』を再現した場面でかなり尺を取るわ、敵役ピーチ姫をの妨害をかわし、シン·平成を倒すため大ヒットゲーム『マリオカート』で勝負したり、最終的にシン·平成にドラゴンボールを投げつけるとシン·平成が爆発し、かつて流行ったゲーム『ポケットモンスター』に出てくるポケモンボールが開き、シン·令和が出てくるというファンにとっては嬉しい限りかもしれないが、盛り込み過ぎて、玉石混交で、何でもありで、色々同時多発的に起こり過ぎて、前作以上にお腹がよじれるほど連続して大笑いしていた。

 途中の場面で、WBCの栗山監督の2刀流と言っているところの音声が変な意味で無駄に使われていたり、ジュリアナ東京は出てくるわ、大谷翔平選手が、主人公のケンに対してヌートバーを静的な意味として使われたりとイメージダウンもいいろところなうえ、最後の場面であのちゃんはイメージ通りででてくるわ、喫茶店のマスターとして出てきた藤井風に至っては、主人公の一人ハヤオの背後から立ちバックするオジサンとして描かれるという扱いが雑なうえ、最悪な描き方に、現実とはあまりにかけ離れ過ぎていて、吹き出した。

 第2部のレビューショーでは1970~80年代くらいのアメリカンポップスをあまりにしょーもない下ネタが露骨に歌詞に入った替え歌になっていて、馬鹿馬鹿しくて大いに笑いつつも、役者人に歌が上手い人も多くて、ノリつつ、感動した。
 レビューショーの最後のほうで、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公が最後のほうで言う有名なセリフをオマージュしたセリフをヨーヘイ役の俳優がいっていたのに胸を打たれた。

玉響ノイズ〜空蝉に、風光る〜

玉響ノイズ〜空蝉に、風光る〜

えび

シアター風姿花伝(東京都)

2019/06/05 (水) ~ 2019/06/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/06/07 (金) 19:30

お父さんが亡くなったことへのショックから立ち直れないで、感情が無いような放心状態でいる少年が、少し変わった人たちに合うことで変わっていき、自分とは何者なのか、自分の個性とは何なのか、ということを考え、成長していったことに感動した。

暁の帝〜朱鳥の乱編〜

暁の帝〜朱鳥の乱編〜

Nemeton

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2019/06/13 (木) ~ 2019/06/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/06/14 (金) 19:00

飛鳥時代、壬申の乱後の世界を舞台に繰り広げられる、愛憎陰謀渦巻く物語。兄弟同士でどちらが天皇になるかで争わなければならなくなり、最終的に兄のほうは、クーデターを起こすことを勧めた蘇我氏に利用された挙句、斬殺され、弟は蘇我氏と相討ちになってなくなった。この一連の悲劇を見た皇后は7日の間引き籠るが、その悲しみを乗り越え、天皇になる姿に凛々しさを感じ、今の政治にも通じる所を見て、深く考えさせられ、母としての子を思う気持ちに感動した。

想い出の鐘が鳴る街/想い出はコンビーフに乗せて

想い出の鐘が鳴る街/想い出はコンビーフに乗せて

ねこのしま

APOCシアター(東京都)

2019/06/18 (火) ~ 2019/06/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/06/22 (土) 15:30

「思い出はコンビーフと共に」では、男の子が今は亡き猫やお父さんの面影を求め、最終的に、もと飼っていた猫にそっくりな猫の飼い主探しに、お母さんもそれを手伝い、ある写真館の前に着き、ふとお父さんが1年前に撮った写真を見つけ、お母さんが今まで息子に辛く当たり、亡き夫を忘れようとしても忘れられない所から、それを一生懸命に克服し、乗り越えようとする姿に感動した。

「思い出の鐘が鳴る街」では、実は○○な孤児院出身の少年と、実は△△な戦士で頑張り屋な少女が出会い魔王を倒しに行くのだが、最終的に自分たちの記憶が蘇り、悲劇的な結末に突き進んでいき、記憶を消すに至り、果たしてそれが不幸か、それとも幸福なのか!?なんとも言えない気分になった。







小さな音楽劇 星の王子さま

小さな音楽劇 星の王子さま

千夜一夜座

プーク人形劇場(東京都)

2019/06/28 (金) ~ 2019/06/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/06/29 (土) 17:00

ほぼ原作を比較的忠実に再現していて、「大切なものは目に見えない。ものは心で見る」ということが、1輪のバラがいろいろ注文をつけるのに嫌気が差して、小さな星を出るが、違う星で色々な人に出会い、そして最終的に飛行士と出会い、成長し、バラと結ばれる。このことは、人は成長し、変わる事ができるんだと、この舞台は感じさせてくれました。

天使よりも綺麗な私たち

天使よりも綺麗な私たち

劇団「やぶ~ぶ~」

ひつじ座(東京都)

2020/02/06 (木) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/07 (金) 19:00

 主人公の青年が抱えるコンプレックス、主人公の恋人の秘密、主人公が小学生の時に出会った変わっている少女、主人公があるときから見えるようになる不思議な雰囲気で、幻影のように現れたり、消えたりする女性、奇妙で謎めいた掃除婦、天候が相当悪い為に泊まったホテルの浴槽で偶然のように発見した女性の遺体、そして自分たちが犯人だと誤解されないために謎を解き、犯人を突き止めようとすることなどの要素が折り重なって、先が読めない展開と、唐突に来るコメディ要素、いきなり主人公の夢のシーンになったり、夢から冷めたあとの痙攣であったりの次々と展開されるシーンと観ていて飽きなかった。また、ミステリー要素にサイコ·ホラー要素、幻想的な場面に前衛的でありながらもアグレッシブなダンスシーン、そして不条理な物語展開と従来の密室殺人ミステリー劇のイメージをことごとくぶち壊していて、誰が犯人なのか考えつつも、いつの間にか作品の世界の中にのめり込んでいけたので、新しいミステリー劇が誕生したという感じがして、観終わった後に自分の中ではとても感慨深く、満足感があった。そして、余韻を残しつつ、曖昧な終わり方に、安易にハッピーエンドやバットエンドに持っていくよりも観客の想像の余地を残していて、良いと感じた。

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