リムーバリスト―引っ越し屋― 公演情報 劇団俳小「リムーバリスト―引っ越し屋―」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    鑑賞日2022/03/17 (木) 18:35

     『リムーバリスト 引っ越し屋』という劇のタイトルと、あらすじから、もちろん、DVやパワハラ、セクハラなどを扱っていることは知ってはいたが、それらの社会的な問題を扱いつつも、主人公が個性的だったり、アクが強かったりする登場人物のペースや勘違いに巻き込まれていくシチュエーションコメディかと思って観に行ったら、良い意味で私の予想を裏切ってくれて、実際は、笑いなんて一切ないどころか、不条理でバイオレンスなスピード感がありつつ、重厚なサスペンスで息もつかせぬほどに切迫して、観ている側の観客をその世界の渦の中に巻き込ませ、没入させていく新たな体験に、私がまるで起き上がれないぐらいの強烈なカウンターパンチを受けた時のように全身にとてつもない衝撃が走り、眼の前で起こっていることに戦慄し、終わってもしばらくは呆然としていて、今日に至るまでそのショックは、観た直後ほどではないが、持続しており、何かとてつもないものを観たという感じがしている。
     現代にまで続くパワハラやセクハラ、DVの問題、格差や貧富、権力の側にいる人間の、それを利用しての横暴の限りを尽くすことの問題を実際よりも相当誇張して表現してはいたが、DV夫による言葉や暴力によって妻を威圧し、怖がらせるリアルさや、いざ妻が自分のところを離れていきそうになるときの不安や惨めさ、巡査の上司であるダン·シモンズ巡査部長は警察という公の立場を利用してのセクハラ、DV夫が自分や訴えてきた女性の姉や女性に歯向かおうとしたことや、罵詈雑言を浴びせてきたのを、実際よりも大いに拡大解釈してこじつけ、殴る蹴るの暴行を加え続けたり、今までおとなしかったネヴィル·ロス巡査がDV夫の挑発にブチ切れ、(これは観客には観せないが)猛烈に殴る蹴る音が聞こえ続け、それが終わったと思ったら、暫くしてネヴィル·ロス巡査が顔にも手にもやけにリアルに見える血を滴らせて出てきて、オロオロして、狂気と正気の間を彷徨っている場面、最後の方で意識が朦朧として、アザや、顔面が血だらけになり、眼球がやや浮き出て、顎が外れている感じで、全身の感覚がないように見えるDV夫が、若干動き喋ったのを見て、束の間巡査部長と巡査は安心するが、数分話した後、DV夫が今度こそ息絶えたのを観て、ロス巡査はやけくそになって狂気に陥り、自分だけでなく巡査部長も巻き込もうとし、巡査部長は共犯者になりたくない保身から、何とか責任逃れをしようとし、最終的に殴り合いになり、最後に巡査部長がケリをつけるため拳銃を抜き巡査に狙いを定め、ゆっくりと引き金をひいてゆくところで暗転という、なんとも救いようがない話の上に、人間のエゴや醜い部分などが洗いざらい眼の前に暴き出され、まるで本気で殴り合い、相手を蹴飛ばしているように観ている側に感じさせるほど、白熱し、緊迫して、とてつもない臨場感と、役者が本気で言い合ったりするかのようなリアルさに満ちていて、まるでその中にいるかのように錯覚させられ、引き込まれた。

     この劇を観て、パワハラやセクハラ、DVの問題、格差社会や貧富の問題、権力の側の横暴さの問題など未だに完全には解決されていない問題について、改めて深く考えさせられ、失くしていかなければいけないと感じた。ただし、まずは私達一人ひとりがそういう問題について考えていくところからスタートしていくのではないかと思った。

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    2022/03/18 15:01

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