Takashi Kitamuraの観てきた!クチコミ一覧

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血は立ったまま眠っている

血は立ったまま眠っている

文化庁・日本劇団協議会

Space早稲田(東京都)

2023/02/01 (水) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

時代と寝た作家・寺山修司の処女作。当時は時代の雰囲気とマッチしたのだろうが、今やると猥雑さが空回りして、古臭さは否めない。自衛隊の看板を盗むちんけなテロ二人組が、党の使者を名乗るジャーナリストにけしかけられて、爆破テロと仲間殺しにのめりこんでいく。それと並行して、大量のリンゴを闇で売りさばいて大儲けしようというチンピラと女たちの冒険。トイレの便器や、首を吊った死体(マネキン人形のつぎはぎ)も登場する。

テロは浅沼稲次郎刺殺事件があった時代の空気なのか、あるいは連合赤軍事件を予見していたのか。闇のリンゴの方は、60年代に闇もないし、リンゴはなおさらなので、最初から冗談のバカ話に違いない。テロも闇も言っていることはわかるが、猥雑さやばかばかしさが気まじめでストレートすぎて、余裕をもって面白がれない。

翌日見た「初級革命講座飛龍伝」は、歌あり、コントあり、立ち回りありでスペクタクルなエンターテインメントに仕上げて見事に現代化していた。つかこうへいのセリフの美学も時代を超える面がある。それとはかなりの差があることは否めない。

初級革命講座 飛龍伝

初級革命講座 飛龍伝

Project Nyx

ザ・スズナリ(東京都)

2023/02/02 (木) ~ 2023/02/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

理想(使命)に燃えた過去を美しく飾りながら、理想だけではない人間の切なさ弱さを肯定し、そこに帰っていくロマンと癒しの物語。60年代に命を張って対峙した 第4機動隊の山崎一平(近藤弐吉)と学生運動闘志熊田留吉(ラサール石井)。67年11・26で山崎の思い人にして熊田の愛妻(ここがややこしい)サヨコが死んで13回忌を迎える年、二人が語り合う。理想(使命)に燃えて熱く行動し、それゆえに深く傷ついた過去と、消えそうな情熱を必死に保ち続ける今を、言葉だけで立ち上げる。見事な前期つかこうへいワールドである。

客席は頭が白くなりだした男性客が多い。「1979年に京都〇〇会館で見て以来」と話している男性客もいた。

現代の観客にこの熱いロマンの劇を届けるため、構成・演出をかなり工夫している。
まずダンディーな4人のフォークソングで幕開け。この4人がガイド役になり、闘争用語(安保、日和る等)・闘争史を解説し、全学連と機動隊のファッションを解説。東大闘争の安田講堂攻防戦の映像に中島みゆき「世情」を重ねて、観客も70年代になじんでいく。

第一部は山崎一平が全学連のバラ・サヨコを自宅にかくまうロマンスから。しあk氏初戦対立する者同士。、1967年11月26日、サヨ子はデモで山崎の警棒に滅多打ちされて死んでいく…。その学生デモ隊と山崎の殺陣のバックに流れるのは、ベルディ「レクイエム」の「怒りの日」。ぴったりだった。

次の幕間は「ワルシャワ労働歌」久しぶりに聞いた。今はとても歌えない血なまぐさいゴリゴリの歌。びっくりした。

第二部はその12年後、熊田留吉が家で投石を磨いている。冒頭の、暗転の暗闇でグラインダーの火花が飛ぶシーンは圧巻。留吉はかつてジュラルミンの盾も打ち破る名石・飛龍の使い手だった。三里塚闘争(11・26という山崎と食い違いがある)の中で妻サヨコを失い、自らは恐怖に駆られて何度も逃げ、今は磨いた投石を、娘・アイ子に売らせている 。熊田・ラサール石井の ダメ男ながら可愛げのある辺りが見どころ。 膨大なセリフを来なしているのはさすが。ここに、かつて熊田のせいで肋骨を一本失った山崎が訪ねてくる。「初級革命講座」では熊田と山崎の 互いに競い合い、ぶつかり合いつつ、認め合う関係が軸になる。、90年代以降の「飛龍電」は熊田がいなくなり、全学連の女委員長神林美智子と山崎一平の純愛を歌う全く別の物語になった。

とにかく顔で怒って背中で泣く歌舞伎的つか美学と、「モア・パッション、モア・エモーション」の情念とユーモアを、構成もセリフも音楽も照明も駆使してよみがえらせた。70年代の挫折の美を、現代に合わせて見事にバージョンアップさせた舞台だった。

ネタバレBOX

幕間は病院を抜け出した松葉杖の元機動隊隊員たちと看護師。これも笑わせる。

第三部は、サヨコの13回忌の11・26当日。アイ子が熊吉に託されたサヨコの形見のアイビー・シャツを着て、山崎一平に石を売る。山崎は次々と名石の銘をそらんじながら、かつての闘士たちをよみがえらせ、機動隊として対峙する。そして熊田留吉と最後の一線を交え、赤い花吹雪が舞台下からどーっと吹き上がる中を消えていく。

最後は中島みゆきの「時代」。「世情」に始まり、「時代」に終わる。中島みゆきの歌に流れるものと、つかこうへいのこの芝居と、相通じるものを感じた。
美女と野獣【2024年9月4日夜公演中止】

美女と野獣【2024年9月4日夜公演中止】

劇団四季

舞浜アンフィシアター(千葉県)

2022/10/23 (日) ~ 2025/04/30 (水)上演中

実演鑑賞

満足度★★★★★

野獣が結構、奥手で不器用なところが、姿格好とは違ってかわいげがある。主人の野獣を応援して背中を押す執事、女中たちも楽しい。コーヒーカップの男の子は、中が空っぽとわかるワゴンの上に首だけ載っていた。あれはどうやっていたのだろうか。

前半最後の、手に持ったコップを打ち付け合って踊る「ガストンの歌」が一糸乱れぬアンサンブルで見事(音はうるさいけど)。後半の見せ場の、食器、スプーン、フォークが踊る「おもてなし」の歌もよかった。

2時間半。なんと最前列だった。舞台が高くて、椅子の上に追加座面ブロックを置いて観劇

ネタバレBOX

ベルが野獣に心惹かれるようになるのは、逃げ出した森でオオカミに襲われ、助けてくれた野獣が傷を負ったから。その介護でまず近づく。野獣が弱りベルが看病した時に野獣の優しさを知るという展開だろうと思っていたら、これは半分予想通りだった。

予想と違ったのは、城の図書館が二人の心をつなぐカギになるところ。本好き・物語好きのベルという設定がここで生きるとは。図書館があることは前半、時計の執事長が言っていた。伏線になっている。野獣も始めて読み聞かせてもらい、物語のとりこになる。

野獣が城に住んでいると知った村人が、偏見だけで野獣を殺せと襲ってくるのは、朝鮮人差別、黒人差別、あらゆるヘイトと民族差別、異端排除ををほうふつとさせる展開。その先頭に、ベルに振られた怒りに燃えるガストンが立つ。ガストンに重傷を負わされた野獣が、ベルの腕に抱かれるのは、オオカミに襲われた時と同じ構図の再現。

最後に王子に変身する場面は、あっという間の早変わりでミラクルだった。傷ついて瀕死の野獣が、ベルの愛の言葉に、宙に浮いてくるくるくるくる回り出したかと思うと、パッと王子に戻る。
おやすみ、お母さん

おやすみ、お母さん

風姿花伝プロデュース

シアター風姿花伝(東京都)

2023/01/18 (水) ~ 2023/02/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

なんとも後味のすっきりしない芝居。娘ジェシー(那須凛)が、母に「2時間後に自殺する」と告げる。そこから2時間弱の二人の対話劇。亡き父を、母は愛さなかったことにこだわるジェシー。ジェシーの離婚した夫のこと、ぐれて行方不明の息子のこと、病気のてんかんのこと…。

ジェシーは、家事をしない母のために、自分が死んだ後も不便がないよう、キャンディーの詰め替えや、鍋の整理などをこまごまやり続ける。手を休めることなく、しゃべり続けるジェシーに、母は「生きていてくれるだけでいい」「私が死ぬまで数年待って」と頼み込み、病気のことでは悪かったと謝るが。

ネタバレBOX

なぜ自殺するのかがどうしてもぴんと来ない。「目的のないバスに乗って、どこで降りても同じなの」など、自分の人生にうんざりしたことをちらちらいうが、膨大なセリフがあるのでそれが埋もれてしまう。離婚や、病気や、田舎で埋もれているからと自殺していたら、みんな死ななければならないではないか。しかも、こんなにしっかり自分の人生を語れる人が死ぬだろうか。那須凛が若すぎてキラキラしているから、自殺するとは思えないからかもしれない。

観劇した友人は「ダメ母親の面倒を見なければならず、家に縛り付けられているのが嫌になったからだよ」と言っていたが、そんなに嫌な母親だろうか。娘はそんなに母との生活を苦にしているだろうか。これも那須佐代子がもつ気品のせいで、ダメ母親に見えないのかもしれない。
2度ほど、何の脈絡もなく「中国共産党」のことばが出てくる。なぜかわからない。

どこかで自殺をやめるのだろう思っていたら、結局ジェシーの気持ちは変わらず、寝室に引っ込んで銃声がする。考えてみたら、必然の結末なのだが、どうもすっきりしない。田中泣いて止めた母親も、最終版は諦めて、娘の用意した別れのプレゼントをおとなしく受け取るようになる。でも、本当にもう死ぬ段になると、縋り付いて止め、振り払われて泣き崩れる。身も世もない姿は哀れであった。それでも、銃声の後、気丈に息子に電話をかけるのだが。
ジョン王【1月3日夜~1月8日昼、1月22日昼公演中止】

ジョン王【1月3日夜~1月8日昼、1月22日昼公演中止】

彩の国さいたま芸術劇場

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2022/12/26 (月) ~ 2023/01/22 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

フランスとイギリスの兄弟国同士の戦争と和平の駆け引きを見ながら、まさにいまのロシアとウクライナの戦争が思い浮かぶ。ジョン王(吉原光夫)は最初、領土を一部割譲しても、フランス王(吉田鋼太郎)と和平を結んだ。「みにくい妥協の和平」の方が、「潔い栄光の戦争」より数倍もいいのではないか。シェイクスピア劇の中でもなじみのないものだが、予想以上に面白かった。終盤、「時代の病はあまりにも重い」という言葉をジョン王とソールズベリー伯が、それぞれの思いで口にする。耳に残るセリフだった。

感情も言葉もすべてが現実の何倍にも密度濃く演じられる、スペクタクルでエンターテインメントの舞台。原作にはないだろう俳優たちの歌もよかった。戦争と平和、残虐と良心、死と安らぎ、怒りと恐れ、運命と自由。様々な感情、人生の岐路がたっぷりと演じられる。名舞台だったと思う。見どころがたくさんある。とくに後半の最初、幼いアーサー王子と従者ヒューバート(高橋務)の葛藤は特に迫力あった。助けたアーサーが、逃げようとして墜落して死ぬ。運命の皮肉に唖然とさせられた。

シェイクスピアの比喩の豊かな豪華なセリフも聞きごたえがあった。森羅万象を内包するような、飛躍と変化にとんだセリフ。滑舌、感情の込め方、毅然としたせりふ回しや時には見境をなくした狂乱ぶりなども見事で、セリフが生きていた。

時をちぎれ

時をちぎれ

劇団青年座

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2023/01/20 (金) ~ 2023/01/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

健康サプリ「減量丸(がん)」が主力商品の「嶺岡(みねおか)幕府商事」。現代のパワハラ、派閥抗争を、室町幕府の意匠をまとわせて展開する。副社長(鎌倉公方=くぼう、元社長夫人=野々村のん)の専横を軸に、パワハラ上司は関東管領(石井淳)や侍所長官(麻生侑里)。地方からの新人(小暮智美)は参勤交代(江戸時代だけど)とよばれ、謀反に失敗した社員は「奉公人」に格下げなど。ワンマン会社のパワハラ構造をどう改革するかという現代的テーマを、大人のごっこ遊びのごとく、楽しく笑いとともに見せてくれた。(時に、友情のひびや、挫折の苦みもこめて)

元・現不倫相手、片思いなど社内の隠れた人間関係や、夫婦(今回はないが親族)関係を隠し味とするのはさすがの土田英生流。女性にだらしない問注所長官(人事部長)の青山(綱島郷太郎)が、自分を「だらしない人間だ。反省している」と言いながら、「でも反省も疑わしい」と自分で自分に突っ込みを入れるシーンは爆笑だった。
そしてなにより社長=将軍役の山路和弘が抜群だった。実にひょうひょうとして自然体で、何をやってもかわいげがあり、ほれぼれした。

1時間55分。逆転に次ぐ逆転の展開を2時間以内に収め、ぜい肉を絞った舞台もよかった。セリフ量も抑えられて間合いや繰り返しを生かす余裕があり、ぜい肉を絞った楽しめる舞台だった。

ネタバレBOX

大きく6部構成。1新人御目通り式での社長と新人の出会い(全員会議)。2公方派の警戒と社長派の画策、3対決と公方派の陰謀の勝利(全員会議)、4臥薪嘗胆、5逆転勝利(全員会議)、6夫婦の和解、社員たちのそれぞれ新しい出発。

工場のあるマヌキ島出身の若手社員たちの、かつての小女子漁が工場がきてダメになったことが最初の思い出話に出てきた。それが最後の告発に結び付く伏線もよかった。
マヌエラ

マヌエラ

パルコ・プロデュース

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2023/01/15 (日) ~ 2023/01/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ダンスがいい。5人のダンサーは踊るだけでなく、コロスのように舞台上で、人々の愛と悲しみ、夢と挫折を見つめている。珠城りょうのダンスは、パックンに「踊るな!」と止められて、再びしっとりと感情をこめて踊りなおす場面が一番良かった。ただ、ストーリーや人物像は意外性に欠ける。パックン演じるユダヤ人振付師パストラが同性愛者なのが、わずかにある変化球。生のピアノ演奏が、舞台と音楽が一体になってよかった。2時間30分

ネタバレBOX

パストラが愛したチェン(宮崎秋人)は共産党の刺客で、国民党によって処刑される。マヌエラの妹分のリューバ(齋藤かなこ)は陸軍諜報部員の村岡部長(実はマフィアと結ぶ悪人=宮川浩)に殺され、恋人で、暗黒街のボスの用心棒のボリス(松谷嵐)も敵をとろうとして逆に殺される。頭に血の上った和田海軍中尉(渡辺大)が村岡部長を射殺する。多くの血が流された後、それでも人は「ダンス、ダンス、ダンス」。現実を逃れ、悲しみを忘れるためのように、踊り続ける…。
宝飾時計

宝飾時計

ホリプロ

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2023/01/09 (月) ~ 2023/01/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

それぞれの場面が弾けて笑いも多い。何より人物(俳優のみなさん)のキャラが立っていておもしろい。大人の演じる子役二人もいい。無難な優等生の子役からママタレントになった小池栄子、ステージママに仕込まれて歪んだ自信過剰を抱えた伊藤万理華。ほかにも、空気の読めない間抜けで一途なマッチョの付き人(後藤剛範)は、小池との掛け合いでいつも笑いをよんでいた。ステージママ(池津祥子)も、愛ゆえに子どもをだめにする母親を嫌味のないデフォルメで好演していた。20年前の子役時代と30歳過ぎた現在を、同じ俳優が自在に行き来するのも見事だ。

セリフのセンスも思わず感心する。「おいしいと言ってくれる関係にありがとう」(成田凌)「言い方が変。…おいしいと言ってくれることが…どうなの?」(高畑充希)「…いい!」「どうして評価口調になるんだよ! すきだよだろ」「そう」等々。子役からの女優、誕生日のサプライズ、崎陽軒のシューマイ弁当など、小ネタの使い方もうまい。しかし全体を通すと「?」が残る。ずしんと心にのこるテーマが立ち現われずに終わってしまう。

舞台を亡霊のようにバイオリンをもって闊歩する椙山さと美。ピアノとバイオリン、ビオラ、チェロという豪華な生演奏も聞きごたえある。主題歌を歌う高畑の澄んだ高音がいい。2時間半(15分休憩)

ネタバレBOX

2幕は高畑充希は心の中の勇大(小日向星一)に自分の心を打ち明けつつ、恋人の大小路(成田陵=本当の勇大)との距離はなかなか縮められない。「大きな安心のないまま、明日の小さな約束(夕飯メニュー)を繰り返す関係にはもう疲れた」。その切なさが、メリハリ聞いた演技でよく出ていた。あえてテーマをでいえば、高畑充希演じる子役女優の純愛と言おうか。その愛は片思いではないが、結局届かない。背が伸びるのを拒否した20年間同様、愛も成熟することなく、中学生の初恋のような、心とは裏腹な行動と後悔、失うことを恐れた逡巡が続く。

その届かない愛の相手=勇大の、失踪や別人になりすますという行動の理由がわかりにくい。「一番好きなショートケーキを素直に好きと言えない性格だから」だけでは、もやもやして未消化感が残る。

心の中の勇大が形を持って現れる事情は長セリフによる説明しすぎ。幻の勇大当人も「僕は君が望んだことしか言わないから」など繰り返しすぎ。わかりにくさを警戒した作者の不安の表れだろう。
12人のおかしな大阪人2023

12人のおかしな大阪人2023

「12人のおかしな大阪人」製作委員会

紀伊國屋ホール(東京都)

2023/01/07 (土) ~ 2023/01/17 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ボケと突っ込みでしょうもない話をしながら、最後は人間の高尚な精神を語ってびしっと決める。「12人の怒れる男たち」のよくできたオマージュ作品だった。こちらの期待が大きすぎたのか、俳優が東京の水になじめなかったのか、笑いがはじけ切れなかったのがちょっと残念。

4人掛けの長机が3、横に3つ並んだ細長い舞台。一人、また一人と陪審員がやってくる。ぼろぼろ傘にやけに執着したり、遅刻して「地図が間違ってる」と言い訳をしたり、それぞれ一つか二つ頭のねじが外れた大阪人。議題は殺人事件の評決。急性ベネディクト病で余命一週間だった牛丼屋の店長(40歳くらい)が容体が急変して亡くなった。元恋人の女性研修医が薬殺した疑いがある。その薬は治験中の特効薬だったが、副作用が強くて失敗とわかった。果たして女性は無罪か有罪か……。最初6対6で真っ二つの陪審員は、はたして全員一致の評決にたどり着くことができるのか。

全員出ずっぱりの議論劇でサブプロットはないので、実はそれほど長くない。1時間40分。

ネタバレBOX

途中、牛丼屋の回想シーンを演じる。女性が牛丼屋の捨て台詞「死んでまえ。……」が、実は「〇〇、新田前。せっかく来たのに」だったのは笑えた。作家(ボブ・マーサム)のそもそも当事者でもない人間が、真実を見つけるなど不可能という(陪審員)裁判のアポリアを論じて「意見の不一致」でおわりそうになった。それを議長役(木内義一)が、自殺したピューリツァー賞カメラマンのはなしをひいて、「できることは他にはなかった。それを精一杯やったのではないでしょうか」と切々と訴えてひっくり返す。長セリフにはバックに静かなクラシックを流して感情を補っていた。
ミュージカル「洪水の前」

ミュージカル「洪水の前」

ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2022/12/22 (木) ~ 2022/12/28 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

とにかく楽曲が素晴らしい。ダンスホールの「タンゴ」のレビュー、ヒロイン茉莉が初めて登場する「顔を見ないで」のロマンチシズム、「わが青春の茉莉(僕は書く)」の親しみやすいメロディーなどなど。ダンサーたちの露出度の高い黒い衣装でのダンスがいい。歌もうまい。

ラサール石井の歌もなかなかだった。セリフと歌では声質が違っていて、奥深い歌を響かせていた。ヒロイン茉莉(宮田佳奈)は演技はそれほどでもないが、歌が素晴らしい。浅野雅博は貧乏インテリ青年に手堅い存在感を与えて、このイリュージョンのような芝居に生活感を与えていた。西川大貴の「山は高く、谷は深い」もよかった。音楽を大事にして、セリフ量をかなり少なく抑えているのも印象的だった。ほかのミュージカルと比べてもセリフ部分はかなり少ないと思う

難点は、1幕最後の「われは行く」。40年前にはバックで歌っていたダンサーたちの「メイファーズ」のコーラスが、今回は舞台上で一緒に歌うため、音量が大きすぎる。ラサール演じる男たちの「われは行く」の歌詞がほとんど聞き取れなくなってしまった。戦争も辞さない満州国建設の野望の歌がよく聞こえないために、この時代の恐ろしさが伝わりにくくなってしまった。

老いた蛙は海を目指す

老いた蛙は海を目指す

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/12/15 (木) ~ 2022/12/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

桟敷童子版「どん底」。名無しの婆(鈴木めぐみ)が、知恵遅れの青年に「あんたにも勉強できる学校が、どこかに必ずある」と語るあたりで、「これはルカだ!」とわかった。宿の女主人(藤吉久美子)が、若い男(三村晃弘)に、「夫を殺しておくれ」と迫るところや、女主人が妹を男のことでいびるところなど「損底」を踏まえている。

ただ似ているのはそこまで。乞食商会を立ち上げるやくざの一家、用心棒の退役軍人たち、宿とやくざにかくまってもらう過激派青年たち、というのはオリジナル。過激派の女性・葦乃(板垣桃子)が炭坑の事故の後遺症で、次第に体が不自由になっていく様は、痛々しかった。酔っぱらいの貧乏医者を演じた客演の佐藤誓は、桟敷童子の熱血集団の中では、きわだってクールに見える。佐藤は特別な演技は何もしていないのに(板垣桃子とは対照的)、いるだけで存在感があるのはさすがである。ただ、全体としては今一つ。最近はラストで魅せる美術のために、演技できる奥行きを狭く使っているのが窮屈に感じる。

幽霊はここにいる

幽霊はここにいる

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2022/12/08 (木) ~ 2022/12/26 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

戦争で自分だけ生き残ったというサバイバーズギルトと、戦後日本の道義なき儲け主義を、巧みな趣向で描いた。前者のテーマを、幽霊が見える深川(神山智洋)がにない、後者を詐欺師の大庭三吉(八嶋智人)がになう。非常に構造がしっかりしているので、安定して面白い芝居。そこに、死者も金に換えるドライな庶民と、幽霊商売に乗っかって地位と財産を守ろうとする有力者たちがからんで、「死者と生者のカーニバル」がくり広げられる。

線が細く幽霊を頼って生きる深川を神山が好演、深川をゆうれいとわかれさせようとする大場ミサ子(秋田汐梨)も、若々しく、周囲のゆがんだ大人たちとは違った純粋さが際立った。しかし何よりの功労者は八嶋。独特の愛嬌を存分に生かし、口八丁の憎めない詐欺師ぶりを熱演。舞台を引っ張った。

深川が戦友を見殺しにしたという過去を、ミサ子からきいた新聞記者の箱山(木村了)は、「そういうことは戦争に行った人はだれしも体験しているのでは?」と冷めた答えを返す。私はこのセリフが印象に残った。サバイバーズギルトのもととなる体験でさえ、その特権化を拒否するとともに、逆に誰もがそうした思い体験を持っているのだと、心の傷の未曽有の拡がりを示唆する。幽霊を背沿っているのは一人ではない、と。

1958年、まだ戦争の記憶が生々しかったころの、そして高度経済成長が始まったころの戯曲。85分+休憩20分+75分=3時間

ネタバレBOX

深川の語る幽霊が「市長になりたい」「結婚する、相手はミサ子」と、大場たちの思惑を超えて、暴走し始めるのが面白い。それに振り回される有力者連中。本物の深川(山口翔悟)が現れ、深川(実は吉田)のつきものが落ちる。この有無を言わせぬ解決は見事。本物の深川(弁護士)の颯爽としたスマートぶりが、解決役としてピッタリ。

有力者たちが幽霊にあてがおうとしたモデル嬢(まりゑ)が、逆に有力者たちを手玉に取って、新しい幽霊使いになる変身、幽霊商売は深川なしでも続くラストには、皮肉がきいていた。
安倍公房は、死者を忘れて儲けに励むことを肯定したと、パンフで木村陽子氏は書いていた。おしそうなら、新しい面影を宿す未亡人を肯定した坂口安吾のように、となるだろう。でもどうだろうか。死者を忘れることはそうだとしても、豊かさを追う日本人の方は、それをリアルに描いただけで、肯定したとは言えないのではないか。続く幽霊商売については、かなり戯画的にシニカルに描いている。

最後は再び爆撃と銃撃の死者たちの場面をイメージさせて終わる。ウクライナの事態を踏まえての演出だろう。でも劇構造としてサバイバーズギルトを解決したラストとマッチしない。蛇足であり、いらぬ現代化だったと思う。

客席は若い女性客でぎっしり。ジャニーズおそるべし、は相変わらずだ。
凪げ、いきのこりら

凪げ、いきのこりら

安住の地

シアタートラム(東京都)

2022/12/16 (金) ~ 2022/12/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

7人の白い男女の群舞のような幕開け、「ヘイワ」を合図に、争いが始まり、その後の世界へ。本編は遠い未来の話のようだが、字幕には「1000年前」と繰り返される。遠い未来の出来事を、さらに未来の客が1000年前のこととして見るという構図だろうか。

わずかに残った陸地で暮らす、生き残った生物たち(人間とは言わないが、演じるのが人間で言葉も発するから生物一般とは見にくい)。二度と再び繰り返さないように、「過ちはくりかえませんから」と空虚な誓いを繰り返す。しかし暴力、喧嘩、争いは再び盛り上がり、止められない。差別をタブー視する政治的正しさをホルスタイン差別で戯画化するのはコント。そうした偽善への冷笑はあちこちに。

言葉だけの反差別、平和、共生を揶揄しているが、抽象的なので嫌味はない。そこが取り柄。いくさ批判、闘争が続くことへの嫌悪と、平和や良識の形をした偽善への批判・嫌悪が併立する。目一杯肉体と声を酷使した演技(パフォーマンス)なのだが、抽象的で面白みに欠け、直接的すぎて微苦笑と食傷が抑えられない。最大の嵐の予感、異なる種族らしい足跡など、回収されないままの伏線も多い。1時間50分

ネタバレBOX

赤いヒラヒラの女が卵を産み、育てるという男と、こんなひどい世界に生まれさせない、殺すという女の対立が起きる。女は「穴」に食われ、他にもふたりが食われ、皆恐慌に陥る。指導者のウブメが、「あなたのことは新しい世代が覚えていてくれるから大丈夫」と励まして、生き残ったものらは「穴」と戦うため、皆飛び込む。ナナシ(日下七海)が卵に希望を託して。
最後に地上について聞いたことを懐かしむ二人は、子孫だろうか。
夏の砂の上

夏の砂の上

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2022/11/03 (木) ~ 2022/11/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

松田正隆は「静かな演劇」の代表者の一人とされる。去年見た「紙屋悦子の青春」は、大声やコミカルさもある意外と普通の会話劇だったが(もちろん傑作であることは前提)、本作はまさに「静かな」劇だった。初演は平田オリザが演出したというのもうなずける。今回は栗山民也の演出。平田演出は見ていないが、アフタ-トークによると、今回の方がかなりゆっくりと、間(ま)を大きくとって演じたらしい。確かに豊かな間があった。これほど間の引き立つ芝居は珍しい

主人公の治(田中圭)の科白が「ああ」「うん」とか「何や」と、ほとんど合いの手のようなものなのに、そこに非常に豊かなニュアンスがある。ほかの人もだが、特に治に目立つ。これにも大いに感心した。仕事を失い妻にも出て行かれた鬱屈を抱えて、感情を表に出さない、言葉数も少ない人物を好演していた。

チェーホフ劇は到着から始まり、出発に終わる、とだれか言っていた。本作も妹(松岡逸見依都美=好演)が高校中退の娘優子(山田杏奈)をつれてきて、治と同居が始まる。真面目そうに見える優子が、隠れてバイトの先輩を誘惑したりじらしたり、小悪魔的要素があって面白い。治が見てないようできちんと見ていて、先輩の大学生に「早よ帰れ」と繰り返すあたりも。

造船所がつぶれ寂れていく坂の町(長崎らしいが明らかではない)の、無駄に暑いさびれた空気感が漂う。クレーンの赤錆にも通じる。その町で暮らす男、出ていく女、それぞれ確かにそこに生きている手ごたえが感じられた。傑作舞台である。

文、分、異聞

文、分、異聞

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2022/12/03 (土) ~ 2022/12/15 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

もはや50年前になったが、三島由紀夫の左翼批判戯曲の上演をめぐって文学座が大揺れした事件を描く。どう料理するのかと思っていたが、なかなか趣向とたくらみにとんでいた。
舞台はたくさんの椅子が並んだ雑然とした空間。ズバリ文学座のアトリエ(けいこ場)である。そこで、三島戯曲を上演するかどうかの議論が始まる。上演に反対する制作部。三島との関係を壊したくない演出部。杉村春子が「これをやったら文学座はおしまい」と断固反対する…。あれ、杉村にしてはやけに若い女優を使うな。それにしても結論の見えている議論を延々続けるのだろうか?と思っていると「お疲れ~」とかいって、みんなばらける。じつはさっきまで8時間続いた劇団総会のエッセンスを若い研究生たちが物まねしていたとわかる。

ここからがこの芝居の本編。研究所1期生、2期生たちが「三島を守れ、上演賛成」とまとまるが、演技が下手でくすぶっているキョウコ(梅村綾子)が一人、杉村崇拝から、反対する。皆はキョウコをなじってヒートアップ。マユミ(=小川真由美!、鈴木結里)の侮蔑の言葉がキョウコをおいつめる。キョウコが泣き出し、みなあまりにやりすぎたと反省するが、今度はキョウコが許さない。そんな中、研究生たちはアトリエの外から鍵をかけられ、閉じ込められる。マユミはこれからテレビの撮影があるから、どうしてもすぐ出たい。自信のないタダヒコ(奥田一平)は劇団の幹部陣に眼をつけられると将来がないと恐慌をきたす。キョウコが「何とかする代わりにみんなに上演反対派になれ」と交換条件を出す…。

文学座研究所の1期生、2期生はその後有名になった俳優がずらり。小川真由美のほかトオル(武田知久)は江守徹、シン(松浦慎太郎)は岸田森(岸田國士の甥)とわかる。ほかは後で調べるとお調子者のミノリ(川合耀祐)は寺田農、杉村春子をやったキリッとしたチホ(渡邊真砂珠)は(悠木千帆=樹木希林)、主役に抜擢されたタイゴ(小谷俊輔)は草野大吾等々。キョウコも大塚京子というモデルがいる。そうした実在のモデル人物たちの中に、普段はおとなしくて声もほとんど聞き取れない架空の人物(ケイスケ=相川春樹)を加えて、役者の卵たちの夢と不安、羨望と嫉妬、恋と打算の群像劇に仕立てた。
面白い芝居だった。これから文学座をしょっていくであろう若手俳優たちのシャープでエネルギッシュな姿がよい。1時間55分。

君に贈るゲーム

君に贈るゲーム

ラッパ屋

紀伊國屋ホール(東京都)

2022/12/04 (日) ~ 2022/12/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ボードゲームカフェの常連7人が、もう一人の常連「会長」の頼みで、「人生を込めた」ゲームを作る。教師だったが、世知辛い若者に幻滅して株屋に転身し、金がすべてと語るスーツ(中野順一朗)。水商売を渡り歩いてきたマダム(岩橋道子)。テレビ局のバリキャラからライター兼弁当屋に脱サラ?した、アイデア豊富なお局(椎名慧都)。そして平凡な主婦で、嫁姑関係に人生をすり減らしたと嘆くエコバ(大草理乙子)等々。一番平凡で、選択らしいものもしてこなかった課長(熊川隆一)が語り手をつとめる。

スーツの現実主義や、金だけが人生じゃないと「夢を信じる力」と「可能性」を訴える人々のやり取りがおもしろい。各人の人生経験のエピソードをもう少し肉付けできれば、さらによかった。ラストは、ほろ苦い真実も。
1時間半とコンパクト。じゃんけんチーム観劇。感染対策も含めて2チーム体制で公演しているそうだ。大変な苦労と思うが、頑張ってほしい

わが町しんゆり

わが町しんゆり

川崎市アートセンター

川崎市アートセンター アルテリオ小劇場(神奈川県)

2022/12/02 (金) ~ 2022/12/04 (日)公演終了

実演鑑賞

舞台は奥に二つのリヴィングルーム、その手前に二つの居間に区切られる。奥ではワイルダーの描いた架空の町グローヴァーズ・コーナーズの、1901年から06年の二家族の話が演じられ、手前では新百合ヶ丘の1929年から38年ごろの二家族を演じる。筋はワイルダーの原作に従うが、アメリカと日本の家族は節々でバトンタッチして、一つの場面はどちらかで演じられ、同じ話を重ねることはない。(のりしろのように互いに重ねる部分が多少はあるけど)

3,4年前に原作を読んだが、隣家の子どもたちが結婚するようになるという以外、忘れていた。前半は今一つだが、休憩後の婚礼と、エミリー(えみこ)死後の墓場の場面で、主題が立ちあがってきて、よくなった。
結婚式前の「結婚はいいものだ」と疑いなく語る、古き良き結婚賛歌が、今だからこそ新鮮に響く。いまは通用しないかもしれないが、これは過渡期の模索。再び男女の結婚が素直に祝われる日が来ることを願いたい。エミリーとジョージが思いを確認する喫茶店のシーンがよかった。

そして3幕。二人目のお産で死んだエミリー(恵美子)が、12歳の頃の幸せな家庭を見つめなおし、つらくなってやめてしまう。「生きている人は何もわかっていないのね」と。死者の目から人生のかけがえのなさを再認識させるのは、井上ひさしの「ムサシ」のようだ。生の幸せをともに味わうことのできない死者の孤独、悲しみが胸に迫る場面だった。

ジョージの家は医者、エミリーの家ははっきりしないが、穏やかな市民の生活。貧困や生活苦は視野の外においた芝居を、原作の初演時、左翼評論家は「醜悪」と批判した。ただ「しんゆり」版では、タブノキの精を登場させて、見事な枝ぶりを空襲の目標になるからと切ってしまった狂気、戦争による空襲(5月24日か25日、10数件の被害と小さいが)を語らせる。

夜明けの寄り鯨

夜明けの寄り鯨

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/12/01 (木) ~ 2022/12/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

気鋭の劇作家・横山拓也が新国立劇場初登場。演出は初めて見る人だが、いつもの横山作品と比べると、過去と現在をシームレスに語る作劇術が目新しい。その両側を一人だけ行き来する三桑(みく、小島聖)の、はかなげな、思いつめた風情が、何か不穏で謎めいた空気を醸す。過去の、アウティングを含む、互いを意図せずに傷つけてしまう場面を、元鯨トレーナーの相野(池岡亮介)が見つめている。この存在が、客観性を担保し、冷静さを保たてさせる。

床には鯨の泳ぐ海原が描かれ、それを、舞台上に斜めにかかった鏡を通してみることができる。

ネタバレBOX

ヤマモト(小久保寿人)への告白が、その後の展開の発火点になるが、ミクがなぜヤマモトにひかれたのかがよくわからない。ヤマモトはおとなしい友達もいないタイプなのに、なぜ?と。「他に好きな人がいる」と振られたミクが、なぜヤマモトが好きな相手は男では、と邪推に走っていくのか? その辺も少々強引な気がした。小島聖の落ち着いた雰囲気とのギャップもあって、ちょっと乗りづらかった。

これが、軽薄なほどおしゃべりな景子(森川由樹)なら、笑いとともに乗っていける気がする。実際、拡散するのは景子なのだが。

鯨肉を知らずに食べさせられたことから、アンチ捕鯨のボルテージを上げていく紗里(岡崎さつき)の、いかにも思い込みの強い、吊り上がった目つきも怖かった。
戦争で死ねなかったお父さんのために

戦争で死ねなかったお父さんのために

一般社団法人深海洋燈

中野スタジオあくとれ(東京都)

2022/12/01 (木) ~ 2022/12/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

戦後30年、戦争に行けなかった父親(いわいのふ鍵)に、突然赤紙が届く。そこから始まる、歌とお色気たっぷりのノンストップショウ。地下の狭い劇場を歌ったりすごんだり。つかこうへい美学の「男のロマン」的長セリフが彩る。

戦争にいけなくて差別されいじめられた悔しさを土台に、戦地でのアバンチュールの妄想や、軍隊ごっこ、出征ごっこがナンセンスの限りに繰り広げられる。女優陣の早替わりに次ぐ早替わりのパフォーマンスが見事。腰巻き姿の現地女、曲線の見事なレオタード姿、中国服の香港、満州の馬賊等々。少尉の警察官(荻野貴継)のキリッとした将校然とした姿も良かった。

ネタバレBOX

ラスト、舞台背後の日の丸の旗が落ちると、後から荻野の操る戦闘機が登場する。骨組だけとはいえ、プロペラも回って、見事な出来だった。
ジュリオ・チェーザレ<新制作>

ジュリオ・チェーザレ<新制作>

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2022/10/02 (日) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

カストラートが活躍した時代のバロック・オペラ。博物館のバックヤードを舞台に、チェーザレ(シーザー)とクレオパトラの話がうたわれる。チェザーレを女声ソプラノ歌手が歌った。少し線が細いが、まあよかった。クレオパトラ(森谷真理)が絵の額縁の中に入り込んで、魅惑的に演じるシーンが印象に残った。

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