実演鑑賞
北村想は前回のシスカンパニーの「風博士」は、具体的な日本軍の慰安所をバックに、歌もふんだんに使ったわかりやすい芝居だった。このように難解な前衛劇だけではないのだけれど、今回は抽象度の高い詩的演劇ど真ん中。疲れていたこともあって、かなりうとうとしてしまった。残念。
石原莞爾(山崎一)がトシ(黒木華)に賢治のことを聞き、それをランニング姿の屈強な青年ホサカ(田中俊介)が記録する。変な設定である。賢治(中村倫也)は、ダービーハットと外套の得意の姿でうろうろする。
ケンジとトシの関係は恋愛関係ではないか、という疑問に、トシが「兄は大人の恋ができません。アドレッセンスの人なのです」「アドレッセンスとは思春期……」という解釈が、妙に納得できた。ケンジの一風変わった童話も大人になり切れない魂が書いたと思えばわかる気がする。
ケンジとトシが楽しく過ごす時間はすぎ、トシの死を嘆くケンジの慟哭は見事な感情表現だった(らしい)
カニのような手をした河内大和はじめ、ムシのようなシカのような恰好をした3人のコロス。楽器はバイオリンかと思ったらヴィオラだった。道理で少し低い音が出ていると思った。冒頭は「セロ弾きのゴーシュ」のようだった。
隣の40代くらいの男性客は、終わると、とりわけ目立つ大きな拍手をいつまでもしていた。熱心な宮沢賢治ファンなのだろうか。1時間35分。