latticeの観てきた!クチコミ一覧

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おとぎ裁判

おとぎ裁判

CLIE

俳優座劇場(東京都)

2018/09/27 (木) ~ 2018/10/07 (日)公演終了

満足度

場違いなところに迷い込んだなあと己の選劇眼の無さにあきれてしまった。

「少年とおじさん向けの美少女もの」の正反対の「少女とおばさん向けの美少年もの」だったのだ。下手ではないが上手くもない歌と踊り、どうでも良いストーリー。

始まって10分で絶望的な気分になり、120分もいたら気が狂うよと思っていたら60分で休憩になった。これは助かったとありがたく会場を後にした。

これをわざわざ「観たい!」に書いたのは末代までの恥だ。

追記)「少女とおばさん」の皆さんは楽しそうにレンタルのロウソク型ペンライトを振っていました。彼女らにとっては星4つ以上でしょう。

傭兵ども!砂漠を走れ!

傭兵ども!砂漠を走れ!

劇団6番シード

新宿村LIVE(東京都)

2018/09/20 (木) ~ 2018/09/30 (日)公演終了

満足度★★★

「サバンナ編」を観劇

大口径銃の発射音は心臓に悪いくらい響いていたし、スローモーションはがっちり決まっていた。
しかし、そこまでで精力を使い果たしたのか、ストーリーは薄っぺらで甘々なものだった。

兵士の物語2018

兵士の物語2018

まつもと市民芸術館

スパイラルホール(東京都)

2018/09/27 (木) ~ 2018/10/01 (月)公演終了

満足度★★★★

内容をサイトから引用します。
~ここから~
ストラヴィンスキーの生んだ傑作といわれるこの作品は、第一次世界大戦とロシア革命の時代、1918年に発表された語りと演劇、バレエの総合舞台作品です。7人の小オーケストラと、語り手、兵士、悪魔が登場し、「演劇と音楽が出会う」最もふさわしい作品とも評されます。
~ここまで~

演劇としては兵士の首藤康之さんと悪魔の串田和美さんとのからみが骨子となっていて、前半では兵士が悪魔に騙され、後半では死に瀕した王女を巡っての二人の争いが起こります。後半では首藤さんと王女の渡辺理恵さんとの優雅なバレエから全員による陽気なダンスが楽しめます。石丸幹二さんの語りはト書きと登場人物のセリフの一部を担当し、かつ煽ります。音楽劇ですがミュージカルではなく、ボロボロになった悪魔が歌のように恨み言を吐くだけで、石丸さんも全く歌いません。

(現代的な)クラシック音楽にはなじみの薄い私はストラヴィンスキーを演奏会で聴くのは初めてです。会場が小さいせいもあって生演奏がダイレクトに体に沁みてきます。ストラヴィンスキーが少しだけ分かった気がしました。

開演10分前くらいからホールで楽団の紹介があります。ここで気分を盛り上げておきましょう。

いつもながらこういう演目の拍手のタイミングが分かりません。クラシック演奏会としては指揮者がいませんし、それじゃ自由にと思っても曲の終わりが微妙で困ります。おそらく終盤の盛大に終わるところの1回で良いのでしょう。おっと、最初に石丸さんが舞台中央から顔を出すところは拍手ですね。もちろんカーテンコールも。

12人の怒れる男

12人の怒れる男

ナイスコンプレックス

サンモールスタジオ(東京都)

2018/09/20 (木) ~ 2018/09/24 (月)公演終了

満足度★★★★

役者さんは中堅の比較的若い方が多いように見えました。皆さん熱演ですが、元々がかなり年齢の高い設定なので、無理をしている感が否めません。さらに先々週、ベテラン俳優さんによる同じ演目を観たのでそれと比べると軽量級な感じがしたのはアンラッキーでした。
悪役の3号と10号は演技は十分良いのですが、やはり根本的に若くて良い人感が滲み出て、パワハラ偏見親父には見えませんでした。主役の8号は誠実感はあるもののちょっと地味ですね。7号はこのくらい若い方がむしろ合っている気がしました。12号は元々軽い人物の設定ですがちょっと今風な味をつけ加えてあって良いアクセントになっていました。

いくつか勢いあまって言ってはいけないことを言ってしまう場面がありますが、気合が先走って早口になって何を言っているのか聞きにくいことがありました。舞台も客席も「やっちまったなあ」という雰囲気になるはずが、もやもや感が漂っていました。

舞台が狭いので定番のトイレがありませんでした。鍵をかけられて長時間缶詰めになるのにどうなのよという気はしますが、元々気分を変える以上の意味はないので大した問題ではありません。ただ逆に言うと気分転換が難しいということにはなります。客席の関係から全方位に向けて芝居をすることもあって円形のギリギリ12人が座れるテーブルになりました。ちょっとせせこましい感じがしたかも。
(追記)トイレ休憩の雑談も結構重要な気がしてきました。

舞台上にお土産付き1万円の席を設けていました。壁があってはっきり見えないのですが結構埋まっているようでした。会場が小さいので大きな声は前方席ではかなりうるさく聞こえたことでしょう。そういう点では1万円席は良席ではなかったかもしれません。

雨のため前説を長めにやっていましたが、ネタを用意してきてほしいものです。

カーテンコールは最低でした。舞台の灯りが消えて、再点灯したら、終了のアナウンスなんか流さずに、さっさと出てくれば良いのに。何をもったいつけているのでしょうか。

ネタバレBOX

関連する主な作品の個人的メモ

(1)「12人の怒れる男」(1957)
 映画、レジナルド・ローズ原作、シドニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ主演
 白人、先住民、移民の中高老齢男性のみ。アジア系や黒人はいない。
 1954年のTV生放送作品がオリジナルだが、実質的な原点はこの映画である。

(2)「12人の怒れる男~評決の行方」(1997)
 TV映画、レジナルド・ローズ原作、ウィリアム・フリードキン監督、ジャック・レモン主演
 (1)のリメイク。中高老齢男性のみだが、黒人が4人いて陪審員長が黒人である。また10番が黒人で3番の白人と悪役を分け合っている。アジア系はいない。

(3)筒井康隆「12人の浮かれる男」(1978)
 戯曲(最初は小説)、何度か上演された。(1)のパロディー。
明らかな無罪を有罪にしてしまうというブラックなコメディ。全員男性。まともなのは教頭先生のみ。難攻不落に思えた彼も汚職を突かれて陥落してしまう。

(4)「12人の優しい日本人」(1991)
 映画、三谷幸喜原作、中原俊監督、とくに主演はいない。(1)のパロディー。
コメディである。時代が新しいので陪審員の年齢も若く、女性が3人いる。最初は全員が無罪に手を挙げて決まりかけるが、陪審員2番(相島一之)が「議論をしよう」と言って有罪に翻意する。有罪が増えて行くが、やがて無罪に戻って行く。しかし2番は有罪に固執してしまう。(1)で言えば8番が最後は3番になってしまうことになる。固執する理由も(1)に倣っている。絶対的なヒーローを置かない点が現代的。

(5)「ジャッジノット!!評議編」(2018)
 大関雄一作・演出、「演劇企画アクタージュ」による舞台。
マイルドなコメディである。
・現代の日本に場所を移し
・2009年から始まった裁判員制度
に状況を変えている。
裁判員制度が一般人と裁判官の合議で評決を行うため、上記作品のような派手なストーリー展開にはできず、比較的穏やかな作品になっている。法廷での審理を描いた「ジャッジノット!!審理編」も同時に上演された。

(おまけ)
(3)の裁判員版をどこかでやってくれないだろうか。裁判官も一緒になって馬鹿をやることになるので陪審員版より面白いかも。しかし3人の裁判官を屈服させるのは難しい。一人は汚職で脅し、そいつにもう一人を説得させたとして、3人目をどうするか?
イリスの十字架

イリスの十字架

ミステリー専門劇団 回路R

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2018/09/21 (金) ~ 2018/09/24 (月)公演終了

満足度★★

チラシの表には
・本格ミステリー
裏には
・ホラーサスペンス
とあります。
確かにどちらの要素もありましたが少なくとも本格ミステリーファンの私にはまったくの期待外れでした。

キャッツ【7月22日~7月30日、12月8日、2月24日昼公演中止】

キャッツ【7月22日~7月30日、12月8日、2月24日昼公演中止】

劇団四季

キャッツ・シアター大井町(東京都)

2018/08/11 (土) ~ 2022/04/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

2012年11月に千秋楽を迎えた横浜公演から久しぶりの東京圏公演は新設なった大井町のキャッツ・シアターで行われています。この建物はグーグル・マップではまだ見ることはできませんが四季劇場「夏」の西隣にあって、大井町駅を出てゆるい坂道を下って右手のガードをくぐると目の前にひろがっています。

ネットで調べると「キャッツ」にはストーリーがないのでお話の流れを追う人には向いていないと書かれていて、私もまったくその通りだと思いました。その分、歌と踊りが素晴らしいので短編集とでも思ってそれぞれを楽しみましょう。とくに踊りは均整が取れ、体の大きさの揃ったダンサー達がキレの良い動きで見せ場をしっかり決めるのが快感です。しかし、この皆さんは一体いくつの関門をくぐってきたのでしょうか。

前半12曲、後半10曲が歌い踊られますが、鉄板の「メモリー」は前半の最後と後半の8曲目にあります。前半はテンポの良い曲が続いたので一旦冷却して休憩に導くためのものですが、後半は天に召されるグリザベラ(江畑晶慧さん)が朗々と歌い上げるもので、歌はここが絶対の一押しです。ただし短いデュエットをする若い人は江畑さんを引き立てるためにわざとやっているのかと思うくらい平板な歌い方でした。不思議なのはグリザベラが歌った後で拍手が少ないことです。これはYouTubeで観ることのできるアメリカ版もそうなので理由があるのでしょうが私には謎です(後日記:YouTubeにあるのはDVDからの抜粋で観客を入れない撮影なので拍手はない。実際の舞台では当然拍手があってしかるべき)。
踊りの一押しは前半4曲目おばさん猫ジェニエニドッツのところのゴキブリの集団タップダンスです。やっぱりタップは良いですね。後半にもほしいところです。*2回目(10/30 18:00)はタップがバラバラでがっかりしました(観る側の私の体調も関係したでしょう)。
残念だったのは、私の観た回(9/19 18:00)では魅力的な声質の若い女性の歌が聞けなかったことです。松田聖子や薬師丸ひろ子みたいな艶のある声が聴けるなら毎日通うのですが。

今回、私は初「キャッツ」ですが、原作は子供向けということで「ライオンキング」みたいだと嫌なので外れでも良いようにお試し席(?)のC席(3,240円)のサイド側にしました。円形舞台を横から観ることになるのでちょっと疎外感があるのと舞台の奥が見えないのは難点ですが、キャストが近くを通って、最後には握手もできるのはどこでも同じです。握手が男性キャストだったのが残念ですが、お目当てのキャストと握手できるように席を選ぶ人もいるくらいなので、そこに文句を言ってはいかんですね。「ライオンキング」と違って大人に(も)超お勧めです。

すでに今年の分のチケットは完売で当日券頼みですが、来年6月末までの分が発売になっていますので確実に入手するにはそちらをどうぞ。しかし、かぶりつきのS回転席は6月末まで完売です。まあ集団の踊りには広がりがあるので少し離れた方が良いようにも思えます。C席は「劇団四季」でも「ぴあ」でもずっと売り切れですが、「カンフェティ」では10月分でもほんの少しだけですが売っています。「カンフェティ」で売り切れでも実店舗のTicketsTodayにはあったりするようです。

星の王子さま

星の王子さま

Project Nyx

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2018/09/16 (日) ~ 2018/09/21 (金)公演終了

満足度★★★

「奴碑訓」に続き2回目のProject Nyx観劇。
今回は「星の王子さま」の枠組みを借りた音楽劇です。

音楽隊は前回に引き続き「黒色すみれ」のお二人です。最初はボーカルの音量が大きすぎましたが後半ではこちらの耳が慣れたのかPAが修正したのか気にならなくなっていました。

王子が訪れた小惑星の話の代わりに、昔のアングラ界のスターのパフォーマンスを置いています。
・若林美保さん
・ヴィヴィアン佐藤さん
・エロチカ・バンブーさん
・フラワー・メグさん
・中山ラビさん
これがお一人10分で合計50分くらいあります。ここが楽しめれば最高なのですが、私はどの方もなじみがないのでお義理の拍手をしていただけでした。

ポスターが売っていました。B2版(515x728)でまさかの1,500円。宇野亞喜良原画ということで強気の設定ですね。厚くて良い紙を使っているのも100円分くらいあるのでしょう。

チルドレン

チルドレン

パルコ・プロデュース

世田谷パブリックシアター(東京都)

2018/09/12 (水) ~ 2018/09/26 (水)公演終了

満足度★★★

イギリスの女性若手作家による3.11大震災と原発事故の後の話です。ただし場所をイギリスに移しています。

事故後しばらく安定していた原発に不具合が起こり、これ以上若い作業員が被爆するのを見過ごせないと、かつてそこで働いていた初老の3人の物理学者がためらいつつも使命に突き動かされて原発に向かって出発する。…大略そんなところです。

英米では好評ということですが本場(?)の日本ではその程度の覚悟は7年半前にできているので、何を今更です。また「戦慄とサスペンス」とはどこのことを指すのか分かりませんでした。

というわけで豪華な俳優さんを楽しむことにするのが吉でしょう。高畑淳子さんの衰えを知らない肉体と全能感には圧倒されます。若村麻由美さんを生で拝見するのは初めてなのに老け役で残念です。あの輝くような美しさは次回に期待しましょう。鶴見辰吾さんは実年齢で10才年上の高畑さんの旦那さんというちょっと損な(?)役回りですが、若いころは二人と付き合っていたという設定なのでプラマイゼロでしょうか。

高畑・鶴見夫妻の家のリビングで行われる1幕の舞台です。チラシにあるような防護服を着たシーンはありません。ちょっと騙された感がしました。

ポスターが売っていました。B2版(515x728)が500円、B1版(728x1030)が1,000円です。

寒花

寒花

ハツビロコウ

シアターシャイン(東京都)

2018/09/11 (火) ~ 2018/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★

1997年の鐘下辰男作、文学座初演の名作。
安重根の収監から処刑までの刑務所内の人間模様を描いている。暗殺から裁判までの状況は回想すらされない。
場所が旅順にある日本の刑務所というだけでしばらく頭が混乱してしまう(お恥ずかしい)。

彼が刑務所員と良好な関係にあったことは事実らしいが、収監直後の厳しい扱いがどういう理由でどのように軟化して行ったのかがもう一つ分からなかった。

ネタバレBOX

外務省の役人黒木鉄吉を女性の設定にしている(木村伝兵衛か!)。斜に構えてわかったようなことを言っている飲んだくれ医師に、彼女が「お前のような奴が一番の卑怯者だ」と言うところは痛快だった。そこは女性であることの効果を感じた。

→紹介されるときに名前に違和感がなかったので当日パンフレットの間違いかも。
ジャージー・ボーイズ

ジャージー・ボーイズ

東宝

シアタークリエ(東京都)

2018/09/07 (金) ~ 2018/10/03 (水)公演終了

満足度★★★★★

チームWHITE「中川晃教、中河内雅貴、海宝直人、福井晶一」を観劇
2016年の再演で、チームWHITEは不変ですがチームREDは二人が変わってチームBLUEとなっています。途中休憩20分をはさんで180分です。

フォー・シーズンズ(The four seasons)の結成から殿堂入りするまでを描く物語でヒット曲をふんだんに散りばめています。このグループは1961年に結成され、翌年の「シェリー(Sherry)」の大ヒットでスターの仲間入りをしました。裏声で歌われる”シェーリー、シェリベイビィー”のフレーズは少し年配の方の耳には必ず張り付いているものでしょう。すぐ後にビートルズやサイモン&ガーファンクルがデビューして一昔前の音楽という印象になってしまいましたが、その分理屈抜きに楽しめるものです。

リードボーカルのフランキー・バリに匹敵する個性の強さの日本人と言うと中川晃教さん以外には考えられません。彼あっての日本語版です。中川ファンには堪えられないでしょう。フォー・シーズンズを青春時代にリアルタイムに楽しんだという人はもう70歳を超えているわけで会場にはほとんどいません。それでも迫力のある歌で会場のボルテージはどんどん上がって行き、カーテンコールのメドレーで最高潮に達します。10-20%の人が会場で売っている1,500円のサインライトを振っていたのでびっくり。そういう人は比較的若い女性なのでフォー・シーズンスのファンというより中川、中河内、海宝さんのファンなのでしょう。総立ちで拍手をしているとそこだけで元をとった気分になります。

前述の「シェリー」の他にはフランキーのソロである「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」も記憶に残っています。また、作曲担当のボブ・ゴーディオがフォー・シーズンズに入る前に所属していたザ・ロイヤル・ティーンズは1958年に「Short Shorts」で全米2位になっています。これはタモリ倶楽部のテーマ曲として有名ですね。グループの共作なので彼も作詞作曲の一人で、この舞台でも少しBGM的に流れるのはそういうわけです。

2014年にはクリント・イーストウッド監督で映画化されています。そちらを見た人も多いでしょう。

上手い演出だと思ったのは拍手の要不要がわかりやすいことです。短い曲では終わるか終わらないうちに次のセリフを強くかぶせて拍手が不要であることを告げてくれます。必要なときは大きく盛り上げたあとに無音でポーズとなります。中川さんのソロの後では目でもっともっとと催促していました。他のミュージカルもこれくらいはっきりとした演出にしてほしいものです。

十二人の怒れる男たち

十二人の怒れる男たち

俳優座劇場

俳優座劇場(東京都)

2018/09/07 (金) ~ 2018/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

名作古典をベテラン俳優が演じているのですから素晴らしいのは当たり前でどなたにも勧められるものです。
しかし、何の新しい工夫もないので普段は星4つですが、日曜に観た「ジャッジノット!!審理編&評議編」のもやもやを吹き飛ばしてくれたので星5つにします。
当日パンフレットは厚手の紙でB5版8ページのものでしたが中身が俳優のヨイショばかりで読むところがありません。

映画ではヘンリー・フォンダのいかにも正義の味方という立ち居振る舞いに辟易しましたが本作の原康義さんは自然な演技ですっきりと楽しむことができました(時代の流れもあるのでしょう)。しかし、本作の主役は悪役(?)の青木和宣さんと米山実さんでしょう。おいしい役を思いっきり演じ切っています。

ネタバレBOX

このところ「12人の怒れる男」関連がいくつも続いているのでこの作品について少し考えてみました。暇な方はお付き合いください。

「12人の怒れる男」は形式的には陪審員の評議の場を描写したものですが、実質的には法廷の審理をも含んだ完全な裁判劇なのです。登場人物が断片的に審理の様子を述べますが、重大な証拠、証言はまるで吟味していません。これは本来はありえないことなので、登場人物に次のように弁解させています。

弁護士が反対尋問もまともにしなかったのは
(1)若い国選弁護人であった。
(2)被告人がスラム育ちの前科持ちであった。
などの理由で有罪を覆すのは無理だと思ったのだろう。

そういうわけで法廷での審理の部分をもし作るとすると
(A)証言や証拠を詳しく吟味しないで提出する警察・検察
(B)反対尋問もしない弁護士
といったいくら昔のアメリカだとしてもありえないものになるでしょう。

またDVDの解説では
・このような偏見だらけの陪審員は事前の審査で検察官からも弁護人からも拒否されるだろう。
・似たナイフを持ち込むというのは新規の証拠を採用してはいけないという陪審規則に違反する。
と言っています。かなり反則だらけの名作ではあります。

<2週間後のナイスコンプレックス版の観てきた!に続く>
『川辺市子のために』『川辺月子のために』

『川辺市子のために』『川辺月子のために』

チーズtheater

サンモールスタジオ(東京都)

2018/08/22 (水) ~ 2018/09/02 (日)公演終了

満足度★★★

以下では「川辺市子のために」を「市子」、「川辺月子のために」を「月子」と略記します。

「市子」→「月子」と観劇

公演が終わりましたが「観てきた!」がさっぱり増えなかったのは皆さんわけがわからなくなっているのではないかと思います。そこで byassist さんの既述を参考にして主に「月子」のあらすじを書いてみます。もう誰も興味がないかもしれませんが誤りがあればご指摘ください。実はもう記憶が薄れているので冷や冷やものです。完全版を独自に書いてくださる人が出てくることを期待します。

ネタバレBOX

「市子」ではモロ師岡さん演じる刑事が小泉正雄の殺人について疑問点が沢山あると追及していたので、当然「月子」ではその解決がなされると思いきやモロさんは出演せず、「真昼間に死体を布団にくるんで誰にも見られずに線路に捨ててくるなんてできない」という疑問は放置されたままでした。

「月子」では「市子」では触れられていなかったもう一人の「つき」子が登場します。
実は「つき」子には川辺月子と小泉ツキ子という同い年の二人がいたのでした。小泉ツキ子は小泉正雄の子で、重い病気で幼いころに川辺月子と交換したので、「市子」での川辺月子は実は小泉ツキ子です。小泉ツキ子という名前は「市子」には登場しませんが、川辺月子(本当は小泉ツキ子)を(誤って?)死に至らしめたのは小泉ツキ子(本当は川辺月子)なのです。しかし実の姉の市子がかばって自分がやったと主張していたのでした。

*「市子」で小泉ツキ子の存在に触れなかったのはやはり変ですよね。

「月子」の初めのあたりでは川辺なつみの本当の子供の市子と月子はそれぞれ川辺月子と小泉ツキ子という戸籍を持っているのでした。しかし、死んだ月子の遺体が見つかったので戸籍としては川辺月子が死亡したということになり、そこで市子はまた無戸籍に戻るのでした。

表題の「川辺月子のために」の川辺月子は本来の川辺月子、つまり現在の小泉ツキ子のことを指します。以下では月子と書きます。

「月子」では「無戸籍者支援の会・証(アカシ)」がクローズアップされます。ここに市子と月子が市子の戸籍を取得しようとして参加します。月子は歌とギターのうまい熊田百子(ももこ)と仲良くなります。そして百子は戸籍取得に成功します。戸籍取得には育ったところでの証人などが必要ですが悪事の発覚を恐れる市子にはそれが不可能でした。そこで市子は百子を殺して戸籍を奪うこと(背乗り)を密かに企みます。そこにおなじみのストーカー北も加わり4人は温泉旅行に出かけます。しかし、市子の計画を知った月子はようやく幸せになった仲良しの百子を殺そうとするという鬼畜となり果てた市子を許せずビール瓶で殴って殺します。北は市子の亡骸を車に乗せて台風の中、海に消えて行くのでした。<終わり>
ジャッジノット!!審理編&評議編

ジャッジノット!!審理編&評議編

演劇企画アクタージュ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2018/08/30 (木) ~ 2018/09/02 (日)公演終了

満足度★★

「審理編」→「評議編」を観劇

ミステリーファンで高血圧の私は怒りで脳卒中を起こしそうになるくらい(推定血圧200超え)ミステリー要素はありませんでした。法廷を舞台にした単なるコメディです。確かにチラシの内側上には「リーガルコメディ」とあり、さらにチラシのイラストもふざけたものなので勘違いした私にも責任があります(チラシは事前に手に入らなかったのだよ)。しかし、「説明」にもコメディであることをひとこと断っておくべきでしょう。それによってレジナルド・ローズの「12人の怒れる男」風ではなくて三谷幸喜の「12人の優しい日本人」風だと判断できたと思います。いろいろ書こうとするとふつふつと怒りが湧いてくるのでここまでとします。

10/1 追記)1か月が経って冷静になったので怒りの理由を書いておきます。

ネタバレBOX

俳優座劇場版「十二人の怒れる男たち」のネタバレBOXとかなり重複します。

基本的に本作の「評議編」は「12人の怒れる男」(「怒れる」と略記)と同様の構造です。
「怒れる」では法廷での審理が手抜きであったことに対して、
(1)弁護士が若い国選弁護人であった。
(2)被告人がスラム育ちの前科持ちであった。
ことが原因であったのではないかと登場人物に言わせています。人権意識が薄い1950年代のアメリカであることも背景にあります。
しかし、本作では状況は全く異なります。
(1)弁護士は私選の優秀な人物です。
(2)被告人はそれまでは犯罪とは無縁の普通の中年の女性です。
また、現在の日本であることも忘れてはいけません。
ということなので法廷での審理がぞんざいに行われる理由は何もないのです。

したがって「怒れる」をこのような状況に持ってくることはできないのです。
それなのに、さらに「審理編」まで作ってしまいました。そうすると法廷での審理は
(A)証言や証拠を詳しく吟味しないで提出する警察・検察
(B)反対尋問もしない弁護士
といったものにならざるを得ません。

当然、作者は困ったことでしょう。そこで「審理編」では

・法廷での証人や証拠調べのところをカットして、余った時間潰しに法廷で歌の練習をするなどという、最低の手抜きをしてしまいました。

そこを上手く作れないのなら最初からこういう作品を作ってはいけないというのが私の考えです。

なお「12人の優しい日本人」からいくつかネタをもらってきてはいますが、まったく似てはいません。
キメラの聖櫃

キメラの聖櫃

劇団ショウダウン

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2018/09/01 (土) ~ 2018/09/02 (日)公演終了

満足度★★★

「マナナン・マクリルの羅針盤 2018」から流れてきた私としてはお疲れ気味だった林遊眠さんが大活躍している姿を見ることはうれしいのですが、その前の「ドラゴンカルト」を観ていなかったので後半のヒカルちゃんの行動が理解できなかったのは残念でした。他にも理解できない部分が多数あって、おどろおどろしさを楽しむ以上のものではありませんでした。基本的にホラーものは嫌いなので私の選択ミスなのですが。

あの動物の造作はもう少しなんとかならないでしょうか。笑いをとるところではないと思うのですが。

*中央奥にテロップが写されますが端に座ったので半分しか見えません。またそこで何かが行われているときに役者さんに遮られて見えないこともありました。

おしり筋肉痛~めっちゃまわるよ 運動した後だし~

おしり筋肉痛~めっちゃまわるよ 運動した後だし~

大人の麦茶

ザ・スズナリ(東京都)

2018/08/22 (水) ~ 2018/08/27 (月)公演終了

満足度★★★★

十数年振りに集まった人たちが青春時代の出来事を振り返る物語です。再演はしないのがこの劇団の方針ですが脚本・演出の主宰が大怪我で入院中ということで止む無く再演となりました。確かにスタップ細胞やペッパー君のパロディが出てくるのは違和感がありますね。

そこそこ笑い、少し泣き、癒されます。役者さんも安定した演技で何の不安もありません。それがこの劇団の持ち味でその安定感・安心感が支持されているのでしょう。千秋楽も大入り満員で補助席が出るほどの盛況でした。

しかし、この劇団はCoRichの常連には少し刺激が足りないのか、あまり言及されていません。私も楽しく観させてはもらったものの、書くことがなくて困ってしまいました。

出口なし

出口なし

シス・カンパニー

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2018/08/25 (土) ~ 2018/09/24 (月)公演終了

満足度★★★★

テーマは簡単で普遍的なものです。予備知識がない方が状況が徐々に明らかになるところを楽しめますし、後で余韻に浸ることもできるでしょう。

時間は90分にやや欠けるくらいの短いもので、途中休憩かと思っていると終わりでした(笑)。なんかちょっと物足りないなあ。

リア王2018

リア王2018

三越劇場

三越劇場(東京都)

2018/08/22 (水) ~ 2018/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

横内正さん渾身の「リア王」は今年で3年目、会場の三越劇場は三越本館6階にある512席の劇場です。今回は下手に舞台を増設したため座席がかなり減らされています。少ない下手前方席はすぐそばで戦闘シーンがあったりするのでお勧めです。この戦闘シーンは人数も多く、時間も長く、この舞台の売りの一つです。ちなみに原作では数行のト書きのところです。

高橋かおり、渚あきの悪女の姉も正直者の妹役の棚橋幸代さんも見事でした。特に棚橋さんは堂々としてベテラン二人に一歩も引けをとりません。忠臣ケント伯を演じる加藤頼さんは常に舞台上で動き回って王を守る姿が印象的でした。

リア王では二つの家族が描かれます。一つはリア王と3人の娘であり、もう一つはグロスター伯と2人の息子です。志村朋春さん演ずる弟の悪役エドマンドは強いセリフ回しが響きまくって、存在を強く印象付けます。中島尊望さん演じるエドガーは、最初は弟に騙される愚鈍な兄ですが、後半になって父を助ける優しい息子として見せ場を作り、最後は対決シーンで盛り上げます。リア王の主役はこの兄弟だったのかと思ってしまいました。

皆さんシェイクスピアの世界にとっぷり浸かっている中で田村亮さんは一歩引いているような気がしました。それが持ち味かもしれませんが、もう少し強めの「芝居がかった」演技がほしいと思いました。(後日追記)しかし、長女の夫がしっかりした人ならリア王は3分割なんて考えなかったわけで、もともとこういう設定なのかもしれませんね。

海援隊のギタリスト千葉和臣さんが何で出ているのと不思議に思っていましたが、その落ち着いた声が回りを安心させる医者の役にぴったりで納得しました。

ポスターが売っていました。厚手の紙で少し大きめなB2版(515x728)が500円です。

白雪姫という女

白雪姫という女

ライオン・パーマ

駅前劇場(東京都)

2018/08/23 (木) ~ 2018/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

最近どうも小劇場の演劇に満足できないでいましたが、それには
・単調な展開に私が正気に返って白けてしまう
・スピードが早すぎて私がついて行けない
・提示された謎が回収されないまま終わる(が何の深みもなく書き散らしただけ)
というパターンがあったと私は認識しています(あくまで私の感想です)。

この舞台は童話の後日譚というナンセンスな喜劇ですが、ストーリーがしっかり書かれていて、進行の早さも適切で、常に話の先を期待する要素があって白けることがありません。最後はすべて回収後の大団円ですっきりとした後味です。

会場は本当に満席で年代も広く分布していました。

ところでアダムの妻役の絹川麗さん、私はずっと白石まるみさんだと思っていました。同年代の方はうなずいてくれるでしょう。

雪華、一片に舞う

雪華、一片に舞う

Dangerous Box

上野ストアハウス(東京都)

2018/08/16 (木) ~ 2018/08/21 (火)公演終了

満足度★★

いろいろな場所からリズミカルに大声で言葉を交換する劇とでもいうのでしょうか。全編を通じてリズムが崩れることはなく、練習は大変だっただろうと感心しました。

しかしながら私は普通の探偵ものと早合点していたこともあって、話に乗り遅れ、そのスピードにどんどん取り残されて行きました。そのため、作品の良し悪しではなく、純粋に私の満足度としては星2つです。

浅草アリス IN WONDERLAND

浅草アリス IN WONDERLAND

劇団ドガドガプラス

浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)

2018/08/18 (土) ~ 2018/08/27 (月)公演終了

満足度★★★

入り口に派手な格好の女優さんが待っていて、一気に雰囲気を高めてくれます。そのことから分かるように観客の6割から7割は男性です。

内容は「不思議の国のアリス」に白雪姫やシンデレラ、ジャンヌダルクにロビンフッドまで登場し、他の童話からもエピソードを借用したドタバタの連続です。かなりの美女やそれなりの美女で舞台は一杯になり、そして王様や王子様、社長に部長もどんどん出てきて大騒ぎです。

客席の雰囲気は中高年の常連さんが作ってくれているので、新参者は真似をして拍手や声をかけていれば楽しめるでしょう。贔屓の女優さんがいれば大満足でリピーターになることは容易に想像できます。しかし、私は女優さんを見ていると、もっと美しく見せる衣装、髪、表情、役柄があるんじゃないかなあと気になってもう一つ乗ることができませんでした。

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