誰もいない国
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/11/08 (木) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★
観ているうちに、昔モダンジャズの良さが全く分からなかった時のことを思い出した。
モダンジャズの肝は「各人が交代でアドリブ演奏をする」ことにある。昔、ジャズ好きの友人に「そんなにアドリブ・フレーズが魅力的ならそこだけ抜き出せばヒット曲を連発できるじゃないか」と言って困らせたことがある。今では、一般の曲とは違った独特のフレーズの魅力にどっぷりと浸かっているが昔の自分を説得できる言葉は残念ながら持っていない。
この戯曲の場合、4人の登場人物が長短の違いはあれ、ソロをとる。一つのソロはある程度のまとまりを持っているが通常の劇としては美しくもなく明確な意味があるわけでもない。さらには前後のソロとの共通性などない。そんな劇なのである。そう考えるとソロが変わるたびに明後日の方向へ進んで行くのも理解できる。したがって、戯曲の各部分を統一するような意味を探しても無駄なのである。なすがままに翻弄されてみよう。おっと、各ソロに共通性はないと書いたがもちろん登場人物は同じだし、舞台セットも同じである。それはジャズではリズムやコード進行が同じであることに対応する。
ではこのような戯曲を楽しむにはどうしたら良いのだろうか。ジャズと同じならば繰り返し聞く(観る)しかないということになる。身もふたもない結論で申し訳ない。
ジャズとは違ってアドリブ・フレーズを作るのは原作者であり、時空を超えて楽器である役者を操っていると考えられる。マイルスやコルトレーンの決定的な演奏がいくつものバリエーションで聴けるようなものであり、舞台の大きな魅力である。
…などと無理筋の考察をしてみた。私自身はまだ全然楽しめていないが楽しめるようになるのではないかという光は見えた気がする。
おまけ:以上の解釈からは題名の「誰もいない国」というのは最後のソロのアドリブフレーズの中の印象的な1小節を取り出しただけで、意味はないということになる。
ロミオとジュリエット
森崎事務所M&Oplays
本多劇場(東京都)
2018/11/20 (火) ~ 2018/12/16 (日)公演終了
満足度★★★
宮藤官九郎さんの演出で三宅弘城さんのロミオとなると何かとんでもないものを期待してしまうが、ふんだんにギャグが散りばめられてはいるもののストーリーはいたって普通のR&Jであった。お嬢さん方の笑い声が絶えなかったが私は逆にちょっと白け気味。三宅さんの「とんでもない」姿には注目。
森川葵さんのたどたどしいセリフ回しは段々と初々しく感じられ、14歳の少女としてはこれが正統的だなあと納得してしまった。勝地涼さんは普通の演出なら当然ロミオなのだが、今回はイケメンがギャグをかますというやり難い仕事をしっかりこなしていた。今野浩喜さん、田口トモロヲさんなどのベテラン勢もいつもの味を出していた。
B2版紙厚手のポスターが500円は良心的。
舞台「鉄コン筋クリート」
2018舞台「鉄コン筋クリート」製作委員会
天王洲 銀河劇場(東京都)
2018/11/18 (日) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★
松本大洋のマンガの舞台化である。原作は1993-4年に「ビッグコミックスピリッツ」に連載されたものだが2006年には劇場アニメになっている。コミックはたった3巻なので簡単に読み通せたが、ヤクザ映画に子供が紛れ込んだようなもので、私はまったく興味が持てなかった。この舞台もマンガの忠実な舞台化で印象は変わらない。逆に言うと原作のファンは大いに楽しめるだろう。
それならなぜ観に行ったのかというと、乃木坂46ではツートップの次に私が推す若月佑美さんが主演だからである。そして彼女は今月一杯で乃木坂を卒業するのである。若月さんは女性らしさが際立つ乃木坂メンバーの中ではボーイッシュな魅力で存在感を示している。また二科展のデザイン部門で連続入選しており、舞台経験も5年を数えることもあってアイドルというよりアーチスト志向の人である。
今回のクロ役は不良やヤクザを半殺しにするという、アイドル卒業に合わせたような振り切った役である。これまでの舞台経験からか演技は不安なところの全くない手慣れたものであった。身体能力もなかなかのものである。原作の飛ぶように跳ねまわるところはどうするのかと思っていたら、舞台の見えないところに飛び降りるだけだった。まあ仕方がないか。
シロ役の三戸なつめさんは独特なオーラを放っていた。脇役陣も良い味を出している。特にTVでもお馴染みの中西良太さんは上手すぎて周りから浮いている気がするくらいだった。舞台装置も原作の雰囲気を良く表していた。
ストーリーを除けば満足度は星4つなのだが、そうもいかないので星3つとなる。
ポスタ-はB2版(728x515)で1,000円。ちょっと高いが厚手の紙なのでまあ許容範囲。
四つの理由
よしもとクリエイティブ・エージェンシー
あうるすぽっと(東京都)
2018/11/16 (金) ~ 2018/11/17 (土)公演終了
満足度★★★★
吉本のお笑いはちょっと苦手なのですが、共演の石丸謙二郎さん、大路恵美さんは関東の出身ではないものの関西の人というイメージもない方々なので、まあ大丈夫かなと行ってみました。
「血液型ごとのいかれた性格の人々」という趣の4つの短編を内場勝則さんが主役で演じ分け、そこに共演者が絡むという作りになっています。作者の後藤ひろひとさんは主に場つなぎの解説を担当します。
お笑いなのでネタをまったく書くことができませんが、オープニングのA型の泥棒の話は内場さんのソロで、一瞬にして心を持って行かれました。時間のない人にはこれだけでも観ていただきたいものです。一話が20分で全部で1時間20分、土曜の午後を軽く笑って過ごすのも悪くないと思います。
*
秘書「主人の3回忌です」
社長「あれから3年になるのか」
は駄目でしょう。3回忌は葬式を1回目と数えての3回目なので丸2年しか経っていません。
The Silver Tassie 銀杯
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2018/11/09 (金) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★
「サッカーのヒーローが戦争に行って、下半身不随になり、離れて行った恋人に執着してしまう」という救いのないお話。
開幕すると舞台はアパートの一室で下手から上手に向かって緩い勾配の上り坂になっている。観客には違和感による期待を持たせ、役者には緊張感を強いるための演出なのだろう。と前半終了時点では思っていた。しかし後半になって車いすに乗った主人公ハリーが何度も下手と上手を往復するに及んで、彼の苦悩を際立たせるための仕掛けだったのだと気がついた。
サッカーの試合を舞台で行うことは不可能なのでハリーの栄光を描くことができない。その代わりに共に戦地に赴く友人テディに大暴れさせている。そして彼は盲目になり静かな男として帰ってくる。それはハリーと並行した栄光と挫折的な話になっている。もっともこちらは救われているのだが。
戦場の場面では直接の戦闘はなく、等身大だが3等身にデフォルメされた人形を俳優が前に抱えての演技となり、こういう作品だったのかとあっけにとられる。単純に観客に喜んでもらおうとしたのか、神についてのやりとりが固くならないようにしたのか、そのあたりのセリフがすべて私の頭を素通りしてしまったので何とも言えない。この舞台ではオープニングでも状況が分からずセリフがまったく理解できなかった。私の脳の情報処理能力が急低下しているのも確かなのだが、そうさせる作者の意地悪な魔術があるような気もする。
斜めの舞台や人形劇風の演出もそうだが繰り返される無意味な(?)セリフなど、いろいろと演劇的な仕掛けの多い舞台だった。私の能力では消化不良だったが目新しい工夫があったので満足度は星4つである。
光より前に〜夜明けの走者たち〜
ゴーチ・ブラザーズ
紀伊國屋ホール(東京都)
2018/11/14 (水) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★
東京オリンピックを見たのは中学生のときだった。白黒テレビの前に家族揃って見ていたのだろう。今走り出したように元気なヒートリーがどんどん近づいて来るのを見て悲鳴を上げていた気がする。
私が持っている円谷のイメージは朴訥な田舎のおじさんなのだが舞台上の円谷は元気な今風の若者である。君原も何か違うなとは思うものの私の記憶も消えかかっている。もっとも東京オリンピックの時点では円谷24歳、君原23歳であったので現代の若者に置き換えればこんなものなのかもしれない。円谷のゆったりとした走り、君原の苦しそうに頭を傾げる走りを真似る様子はまったくなかったし、人物像も似せる気はないのだろう。しかし苦悩という言葉とは縁の薄い人々にしか見えなかったのがちょっと残念ではあった。
ストーリーは時系列に沿って淡々と進んで行く。東京オリンピックのときの君原への期待は大きかっただけに彼の円谷への嫉妬羨望も激しいものがあっただろう。そこだけで一編の栄光と挫折の物語なのであるがあっさりと流されてしまった。円谷の苦悩も表面的なことを並べているだけでどこかよそよそしい。
元になった話があまりに劇的であるおかげでこの芝居も十分に感動的である。しかし演劇としてはそれ以上の掘り下げが欲しいと思った。
アフタートークに登場した青山学院の原晋監督は表情、身のこなし、トーク力、どれをとってもベテラン俳優のそれであった。マラソンに限らず昔の日本人選手は本当にプレッシャーに弱かった。しかし今では心臓に毛が生えたような選手も珍しくない。それにはこういう新しいタイプの指導者の影響も大きいのだろう。
舞台「暁のヨナ~緋色の宿命編~」
舞台『暁のヨナ』製作委員会
EX THEATER ROPPONGI(東京都)
2018/11/15 (木) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★
元乃木坂46の顔である生駒里奈さん(生駒ちゃん)とイケメン若手男優多数による時所不明の冒険アクション劇である。会場は90%の若い女の子と9%の男の子そして残り1%のおじさんおばさんで満員である。話は里見八犬伝風にお姫様の危機に龍の化身が集まって悪を倒すというものなのだが、どうもこの「悪」が悪でないことを匂わせて続きを期待させながら幕となる作りになっている。これはコミックの7巻までに対応しているとのことだが龍の化身を探すエピソードは全て割愛されている。
主要人物も敵の雑兵も身体能力に優れた方々ばかりで、全体の半分以上を占めるアクションシーンはまったく飽きさせない素晴らしいものだった。生駒ちゃんも無難に主役をつとめていた。惜しむらくは立ち姿にもうひとつお姫様らしい凛としたところが欠けているように感じた。親しみやすさが彼女の持ち味だがここぞというときにはファンをハッとさせる裏切りのオーラも必要なのだよ。
若い女性でなくても理屈抜きに楽しめるもので私の満足度は星4つ。
花喰い少女と神の村
立教大学演劇研究会
立教大学 池袋キャンパス・ウィリアムズホール(東京都)
2018/10/31 (水) ~ 2018/11/05 (月)公演終了
満足度★★★
橋本環奈さん騒動ですっかり有名になった立教大学学園祭の最終日にやってきました。混乱の痕跡を探してみましたが人が一杯で良く分からず諦めて大学の一番奥にあるウイリアムズホールへ向かいました。
受付で渡された当日パンフレットはしっかり作り込んであって、今まで観たどの小劇場公演よりも力が入っていました。平日だというのに開演のころにはほぼ満席になってびっくりです。
毎日顔を合わせているだけあって皆さんの身のこなし、声の調子が揃っていて好印象です。演技は落ち着いていて、セリフを噛むこともなく、トラブル無しでカーテンコールへ。拍手が続いていたのにダブルコールは無しということでちょっと残念。千秋楽くらい出て来ても良いのに。
話の展開のスピードが遅いと感じました。一つ一つのセリフや所作を確認するようなところがあってちょっと丁寧すぎるかなと思います。脚本も説明しすぎではないでしょうか。
「イチョウ」への怒りは良く表現されていましたが、対する悲しみ、哀しみがもう一つ感じられませんでした。誰も死なない、大怪我すらしないことの限界でしょうか。「モクセイ」もあれだけ「イチョウ」に逆らっていてもずっと側近のままというのも解せません。そして主役(?)の「スミレ」の印象が希薄です。おそらく「ヒガン」との淡いラブストーリーが主題の一つで最後の別れがクライマックスだったのかなあとは推察しますが、ただの友達にしか見えないのが苦しいところです。それと「ヒガン」が以前にどんな悪行をしたのか最後まで説明がなかったのがもやもやとして残りました。
こういうファンタジー物では世界観が重要です。多くの事柄は日本昔話風ですが「ヒガン」の衣装は中国王朝風でした。すべて中国風で統一するのが王道ですが、それは安易だと嫌ったのでしょうか。お金もかかりますからね。
ライク・ア・ファーザー
自転車キンクリーツカンパニー
OFF OFFシアター(東京都)
2018/10/24 (水) ~ 2018/10/31 (水)公演終了
満足度★★★★★
信頼している'CoRicher'の方々が満足されているので千秋楽に行ってきました。これが大当たりで皆さんに感謝。
いやあ、うまいものです。役者さんも脚本も。うますぎて嫌味なくらいです。結構笑わされ、泣かされますが大笑いが止まらないほどではなく、涙を絞り尽くされることもありません。この辺の匙加減は絶妙ですね。
内田亜希子さんのキリリとした美しさに脱帽しました。若いころの真行寺君枝かジェニファー・コネリーですね。酒屋の息子をまるっきり相手にしないのは冷たくもありますが、「なまじかけるな薄情け」が正解なのでしょう。
考えてみると歌川椎子さん演じる女性ゴーストは一番元気だったけれど、もらい事故の被害者で人物描写もなくちょっと可哀そうでしたね。
それにしても、チラシのイラストや文章とお芝居の内容が全く異なるのは全く不思議。これはやっぱりまずいでしょう。
帝都探偵奇譚ジゴマ
ACTOR’S TRASH ASSH
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2018/10/24 (水) ~ 2018/10/29 (月)公演終了
満足度★★★★
探偵サイドを観劇
怪盗サイドも観劇
どちらも90%以上の時間は同じ俳優さんによる全く同じ演技です。作る側は細部まで精通しているので10%以下の違いが大きく感じられるのでしょうが、観る側にはほとんと同じとしか感じられません。したがって普通の人は一方を観れば十分でしょう。以下の感想も両者共通です。
大正時代(1912-1926)には短い間に第一次世界大戦(1914-1918)と関東大震災(1923)という大事件が起こりました。物語は大戦特需が無くなり不景気になった世の中に暗躍する政治家を攻撃する怪盗ジゴマとそれを阻止せんとする探偵三笠夢乃介の激闘を描くアクション・エンターテインメントです(本当はちょっと違うのですが…)。小劇場にしては衣装が結構作りこまれたもので「帝都」という言葉と共に大正時代に我々を連れて行ってくれます。また殺陣がかなりスリリングで最前列の人は大丈夫かと心配してしまいました。もっとも殺陣以外はかなり緩い風味のお芝居で捻ったところは全くありません。何も考えず気楽に楽しむことができます。まあしかし乱歩風を匂わせるならもっとおどろおどろしいところがあっても良かったのではないかとは思いました。
役者さんはしっかりしていて変化に富み、男性陣は硬派から軟派まで、女性陣は可愛い系、綺麗系、個性系までかなりのレベルで取り揃えられています。どなたにもピンとくる方が見つかると思います。私は「ちょい悪綺麗」な蜥蜴役の安達優菜さんが一推しです。
*twitter で無断キャンセルを嘆いていますが、連絡先(電話番号、メールアドレスなど)を誰でもわかるところに書いていないのが原因の一つでしょう。逆に、開演前の忙しい時に無駄な手間を避けるためにわざと連絡先を書かない団体もあると思います。「当日精算」という曖昧模糊とした方式が生む必然的な弊害と割り切るのが良いような気がします。もちろん犯罪的な大量キャンセルはまた別の話です。
みどり色の水泡にキス
オフィス上の空
あうるすぽっと(東京都)
2018/10/17 (水) ~ 2018/10/24 (水)公演終了
満足度★★
こういうのを輪廻と呼んでいいのかという疑問は終盤になってメカニズム(?)の説明があって「そう来たか」と納得した。しかしそれだけ。お芝居全体は、若い人が大勢で騒いでいるだけで、泣かされもせず、癒されもせず、怒りも喜びも湧いてこないものだった。
みんなのへや・改
Aga-risk Entertainment
CHARA DE asagaya(東京都)
2018/10/17 (水) ~ 2018/10/21 (日)公演終了
満足度★★★★
商店街の空き店舗のような7メートル四方の部屋の3辺に客席を配置し、残りの4メートル四方をアパートの1室とする設定である。内容は冨坂流、説明無用のドタバタ劇である。
江益凛さんがまさかのストーカー役である(される側でなく、する側)。江益さんと言えば浅草の「ナイゲン」ではアイスクリーム店企画のクラス代表で可憐な一年生3148役が記憶に新しい。津和野諒さんに散々いじめられて泣きそうになったときは全男性観客が「おのれ津和野め許さん!」と怒りに震えたものだが、あれは何だったのかというくらいあっけらかんとした変貌ぶりである。この津和野さんはもちろんアガリスクメンバーがどなたも出演しない番外編である。今回の男性陣の多くはアガリスクにぴったりの精神的に危険な香りがしたが、あと二人の女性陣は正統派の女優さんでアガリスク的には癖が足りない印象を受けた。もっとも大家さん役はそもそも出番が少なく、作者がエピソードを考えているうちに時間切れになったように感じた。
となりの事件
シアターノーチラス
OFF OFFシアター(東京都)
2018/10/10 (水) ~ 2018/10/14 (日)公演終了
満足度★★★★
気まずい会話のオンパレード。見るのも嫌な状況ですが皆さん何とか会話を続けて先に進めてしまうので、いつも逃げている私は「ありがとう」と言いたくなりました。
となりの娘さんの事件当日の行動が暴かれるところは、見え見えだけどツボを突かれたなあと白旗です。
色々な意味でチープ感漂う舞台ですが奇妙な味わいがストライクゾーンをかすめて行きました。
恭しき娼婦2018
新宿梁山泊
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2018/10/10 (水) ~ 2018/10/14 (日)公演終了
満足度★★★
GREAT CHIBAさんの「観てきた!(ネタバレ含む)」のお蔭で最初から意味が良く分かりました。観る前に一読をお勧めします。ただし私はサヘル・ローズさんにはそれほど魅力を感じませんでした(微笑)。席が遠かったせいかもしれません。
ミュージカル『アラジン』
劇団四季
電通四季劇場[海](東京都)
2015/05/24 (日) ~ 2023/01/09 (月)公演終了
満足度★★★★★
ストーリーはディズニー・アニメのオリジナルです。「アラビアン・ナイト」の「アラジンと魔法のランプ」とはまるで違います。基本は古典的なラブ・ストーリーですが、全体としては自由を勝ち取ることがテーマの現代劇でもあります。現代的なところとして、たとえば、求婚する王子に王女が家事の分担を求めるところなどは苦笑させられます。そして最大の自由はランプの精ジーニーに与えられます。
基本となる音楽はビッグバンドによるスイングジャズ風のものです。たとえば映画「スイング・ガールズ」で使われた「Sing,sing,sing」が似た感じです。この種の音楽には手拍子が良く合うのですが1曲が長いので始めたのは良いが途中で疲れて止めてしまうこともあって手拍子をするかどうかは難しいところです。長期公演なので音のセッティングが完璧に決まっていて音楽はもちろん歌詞やセリフも明瞭に聞こえます。
直近の空席で公式に買えるのは3,240円+手数料の二階最奥のC席のみです。これを書いている時点で10月は売り切れですが11月は3日間、12月は5日間が「残席わずか」になっています。二階席の利点は舞台の全体が丸見えなことです。とくにジーニーが出入りする床の仕掛けは実にうまくできていると感心させられます。これは上からしか見えません。
2回目に行ったときは高校生の団体が入っていました。途中休憩で2人の女子高生がディズニー・アニメとこの舞台について熱く語っていて、そのトークを文字に起こしてここに書けば行きたくなる人が続出するのではと思いました。
金魚鉢のなかの少女
地人会新社
赤坂RED/THEATER(東京都)
2018/10/06 (土) ~ 2018/10/14 (日)公演終了
満足度★★★
会場に着くとママ友仲間と談笑中の岡田美里さんの姿が目に入った。調べてみると主役アイリスを演じる堺小春さんのお母さんだったのだ。ああそれで「堺」さんなのかと合点した。
その小春さん、自信に溢れていて不安なところは何もなかった。贅沢を言うと、こちらが思わず助けたくなるような弱々しさも見せてほしかった気がする。
金魚の生まれ変わりのローレンスと登場人物との会話はローレンスが(元が金魚なので)言葉が不自由でしばしば噛み合わない。そこだけを取り出すと禅問答か不条理劇となるのだが、全体のストーリーは明確で理解は難しくない。話の始まりは「突然やってきた金魚の精ローレンスはアイリスの両親の危機を救うことができるのだろうか…」となってまるでメリー・ポピンズだがローレンスは超能力どころか会話も満足にできないので結果はまるで違ってしまう。
しかし、こういう演劇はどう楽しんだら良いのだろうか。全体のストーリーには特に見るところはないので部分的な味わいとなるのだろう。単純な言葉遊びやコミカルな動きもあったが、そんなに面白いものではなかった。何度も気を取り直してポイントを探ったが「噛み合わない会話の不思議感」以外には特筆するところが見つからなかった。
それから、キューバ危機は1962年のことであり、ほとんどの観客は名前くらいしか知らないだろうし、登場人物が何か関係しているわけでもない。今となっては思わせぶりに劇中で扱う意味はないと思われる(といっても勝手に削るわけにはいかないだろうが)。
クォンタム メモリーズ
アリスインプロジェクト
新宿村LIVE(東京都)
2018/10/03 (水) ~ 2018/10/08 (月)公演終了
満足度★★★
先日間違って美少年物を観てしまったので中和のために美少女物の聖地「新宿村LIVE」へやって来ました。想像通りの展開に不満はありませんが、自分がお呼びでない客であることがよく分かりました(笑)。
真島なおみさんの美しさはピカイチで、もう美少女でなく美女の領域です。背の高さもこのメンバーの中にはライバルがおらず、実にもったいないことです。ご本人はやる気十分のようなので余計なお世話なのですが、もっと長所を生かせる場所がないものでしょうか。
ミスリード
ぱすてるからっと
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2018/10/04 (木) ~ 2018/10/08 (月)公演終了
満足度★★★
こういうドラマを観ていると、ジジイとしては「嘘か真かなんて紙一重。何が本音かなんて本人にも分からない。鈍感力をつけましょう」と言いたくなります。お話だから仕方がないけど、クラスの中に彼や彼女(の候補)や友人、それに姉妹や幼馴染までいるなんて、かなりの鈍感力がないと心を病みそうです。もっとバラバラでクールなクラスが良いなあ。
私の回はパパ先生のアドリブ授業がすべっていたのが残念。
ミステリーではなくてギリギリでサスペンスかな。
誤解
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/10/04 (木) ~ 2018/10/21 (日)公演終了
空っぽフラレーター
制作「山口ちはる」プロデュース
シアター711(東京都)
2018/10/03 (水) ~ 2018/10/08 (月)公演終了
満足度★★★
三宅里沙さん演じる少しドジで性格美人の女の子が主役の恋愛コメディです。まったく王道のストーリーで意外性はありませんが安心して観ていられます。若者向けで私のようなジジイは対象外ですが深く考えずに笑いに徹していたのでそれなりに楽しめました。
大道具も小道具もまるでない素の舞台は声が反響しまくって私の鼓膜は悲鳴を上げていました。初回のせいか多くの役者さんが勢いを付けすぎて早口になり聞き取れないところがたくさんありました。まあ聞き取れなくても予想はつくんですけどね(笑)。
→大声に弱い人は、後方の席なら緩和されるかもしれません。
小劇場に限らず美男美女の設定と実際の配役に納得できないことが時々ありますが、本公演の安楽信顕さんと橋本美憂(みゅう)さんは掛け値なしの良い男と良い女でした。特に橋本さんの美しさは別世界でした。今回はマイルドな設定でしたが、次のお芝居では菜々緒の乙姫の「開けちゃダメっつってんだろうが!」のようにドスの効いた声で怒鳴るお姿を観たいものです。
→安楽さんの「くねくね踊り」はでたらめなようで完成度が高く美しいものでした。有名な手本があるのでしょうか。
→橋本さんの歌は短く遠慮気味でした。演出の方針なのでしょうが全体からは浮いてしまうくらいの派手なものも聴きたいと感じました。
絵理子さんの何とも言えない雰囲気が素敵です。出てくるたびに笑ってしまいました。
小林愛里さんの「おばちゃん」の表情と所作は実に良い味を出していました。何て自然なんだ!
大西一希さんのギターは簡単なコードのストロークですがリズムが良く、音の大きさも揃っていました。バンドでもやっていたのでしょうか。
佐藤千夏さんは言葉よりも身体よりも顔で表現する人だと感じました。キャッチコピーは氷上ならぬ「表情のアスリート」なんてのはいかが?
三宅里沙さんは最近「山口ちはる」プロデュースものに連続して出演していますがその理由が良く分かる熱演ぶりでした。この作品も三宅さんまずありきのような感じがしました。
「山口ちはる」プロデュース作品の最大の問題点は宣伝にまったく力が入っていないことです。チラシができるのが遅く、その結果として配布もほとんどされません。そしてホームページへ行ってもあらすじすら分かりません。