GREAT CHIBAの観てきた!クチコミ一覧

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ドキュメンタリー

ドキュメンタリー

劇団チョコレートケーキ

小劇場 楽園(東京都)

2018/09/26 (水) ~ 2018/09/30 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/09/27 (木) 17:00

濃ーい、純チョコレートケーキの舞台でした。
当時の情報を詳しく覚えていなかったので、エイズの非加熱製剤問題が、731号舞台に飛び火したことにちょっと意外な感じがしたのですが、ある程度、事実に基づいた話だったのですね。寡聞にして失礼。

ただ、製薬会社社員と老医師の告白に、あまり葛藤がなかったのが気になりました。
もう少し論争劇になるかと思っていたので。フリーライターは、ただのまじめな人、まとめ役でしたね。

ネタバレBOX

ラスト、製薬会社社員が告発を取り下げます。老医師は、厚労省(元厚生省)や巨大資本(この場合、グリーン製薬)の権力は戦中と何ら変わっていないことを指摘します。
しかし、せっかく暗転して3日目の話になったのに、ちょっと味付けが薄い気がしました。1日目、2日目の衝撃が強かったので、短くとも(いや、短い場がゆえに)もっと強いメッセージ性が欲しかった気がします。あまりにも、すっきりと終わりすぎて、ちょっと拍子抜けでした。
『US/THEM わたしたちと彼ら』『踊るよ鳥ト少し短く』

『US/THEM わたしたちと彼ら』『踊るよ鳥ト少し短く』

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2018/09/20 (木) ~ 2018/09/27 (木)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/09/22 (土) 14:00

『US/THEM わたしたちと彼ら』
傑作。これも2人芝居で、テロリストに占拠された学校の2人の男女生徒が主人公。
舞台に2面ある壁に、白墨と映像で、その日の学校の状況の変化を描き切る。
舞台に張り巡らされたテープは、交錯した立体感で、緊迫感のボルテージを上げる。
このあたりの演出や、舞台説明はどのようになっているのか、とても興味深い。

また、人質となった人数が、少しずつ減っていくことが、2人によって言葉で発せられ、壁の人数を書き直していくのだが、これも時間の経過と、死体が出ている体育館の状況を想像させて、観客を息苦しくさせる。

ネタバレBOX

ラストは、ちょっと陰惨な感があるが、それも全て観客の想像力に委ねる演出は、何とも切なく、やりきれなさを観客と共有させることに長けたものだと思う。

観劇後には、「出口なし」千秋楽を観に行く友人に、この舞台の観劇を勧めておりました。
『US/THEM わたしたちと彼ら』『踊るよ鳥ト少し短く』

『US/THEM わたしたちと彼ら』『踊るよ鳥ト少し短く』

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2018/09/20 (木) ~ 2018/09/27 (木)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/09/22 (土) 14:00

『踊るよ鳥ト少し短く』
扇風機に髪が挟まった女と、それをほぐして助けようとする男。
下の世話まで申し出る男と、それを任せる女。そして女が携帯電話でしばしば相談をもちかける林先輩。
この物語の中では、実際にはどれくらいの時間が経っているのだろう。不条理極まりない舞台で、時はどのように刻まれているのか、とても気になった。(この2日後に、また時間の観念のない不条理劇「出口なし」を観たので、今となっては余計気になる。)

それと1つだけ注文を、途中の舞台変更のための休憩だけれど、はっきり何分間の休憩と言って欲しかった。トイレにしても、飲食にしても、時間があやふやだと安心して行けないし。

ネタバレBOX

男と女は、キスをするが、これは恋愛の暗示?
ラスト、結局扇風機の羽を取り外して、林先輩からのいじめと自らの孤独を悲惨な叫びで訴える女の、何とも滑稽で哀れな事か。ラストでは、助けようとする男が、携帯電話を持ち出して林先輩の声役になるのだが、これは2人芝居が故の代役なのか、それとも何かの暗示、この不条理劇特有の、男=林先輩といった、女にひたすら関わろうとする同一人物としての比喩なのかな。
飛翔将軍

飛翔将軍

ガラ劇

萬劇場(東京都)

2018/09/19 (水) ~ 2018/09/23 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/09/23 (日) 16:00

「天動虫」のジョニーさんと木崎さんが出演するということで観劇。
あまり、この手の剣劇ものは観ないのだけれど、贔屓の女優さんたちが別の舞台に立っているのを観るのは楽しい。
「天動虫」でも、帆足さん以外の方が演出することもあるのだけれど、やはり劇団それぞれに文化があるので、別の色に染まるというか、
新たな魅力が引き出されるのが楽しみ。

今回は特に、ジョニーさんが香り立つような妖しさを見せて、曹操や呂布を懐柔していく様は、新たな魅力発見といったところ。

ネタバレBOX

呂布が負けない3つの条件
1.女から生まれた人間には負けない。
2.森が動かなければ負けない。
3.虎にならなければ負けない。
結果、呂布は負け、死に追いやられるのだけれど、2と3は舞台で説明されたものの、1はどいういうことだったのでしょうか?
誰か教えてください。
出口なし

出口なし

シス・カンパニー

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2018/08/25 (土) ~ 2018/09/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/09/24 (月) 14:00

座席1階D4列5番

新国立劇場の新芸術監督に就任した小川さんが、本番の新国立劇場主催公演に先立って、シス・カンパニーの公演で手腕を発揮。

東京公演の千秋楽を拝見しました。
80分と短めの芝居だったが、お互いの死の背景の自白から、人間関係の当てこすり合い、そして眠らずに、永遠に時を過ごさねばならない3人。
彼らがいるところがどこか、ということが徐々に判るということでしたが、案外、序盤で判明するのは、演出なのか、台本なのか、そもそも元脚本がそんな感じなのか。

3人3様にリズムよく、感情をむき出しにするかのようにセリフを応酬する。
いやあ、皆さん芸達者ですね。80分という時間が、とてもテンポよく流れていく。

でも、一方では、1分100円という割高感はある。満席であることを鑑みれば文句を言うべきではないのだろうけれど、素晴らしい舞台でより多くの人に見てもらいたいことを考えると、もう少し価格を抑えることはできなかったのかなとも思う。

多部ちゃんの水色のワンピースがかわいかったな。

1つだけ注文を。翻訳で、若い女性役のセリフの語尾を「・・・だわ」とする表現が多いのだけれど(この芝居で言うと多部未華子役)、時代がかった芝居ならともかく、現代劇ではどうも違和感が。

ネタバレBOX

出口はない、ということだけれど、外に出ようと悪戦苦闘したガルタンが、唐突に開いたドアの先に観たものは何だったのか。彼が部屋を出ることを辞めた理由は何なのか。イネスをドアの外に行かせないものは何なのか。

召使は、ドアの向こうには廊下があるだけと言っていたし、彼ら3人もドアの向かうから入ってきたわけなのだが。

固定された椅子と、召使はやすやすと動かしたにもかかわらずガルタンには、その重さからびくともしない銅像。ペーパーナイフは死ねないことを確認するための装置?

ラスト、これから永遠の話し合いに入ろうと呼びかけるガルタンの諦観が籠ったセリフ。
「他者は地獄である」鏡がなく自らを確認できない3人は、永遠に他社の眼に晒され続ける。彼らは目をつむることはできても、眠ることがないのだから、他者を意識から外すことはできない。これがやはり地獄なのか。


イリスの十字架

イリスの十字架

ミステリー専門劇団 回路R

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2018/09/21 (金) ~ 2018/09/24 (月)公演終了

満足度

鑑賞日2018/09/22 (土) 18:00

前回拝見した「恐怖王」は、自虐的に江戸川乱歩で最も人気のない作品とおっしゃっていたけれど、どうしてどうして怪物譚として、面白く見させていただきました。今回は本格推理ということだったのですが、、、、
何をどう推理するの???

「恐怖王」の時は、一向に気にならなかったのだけれど、役者さんにもうちょっと華があってもよいと思う。
下手とかということではなく、ミステリーに若い美女は、やはり必要です。

ネタバレBOX

悪魔崇拝の邪教集団が登場、彼らの目的は、魔女の復活。
そのための生贄を求めて、ってこれスリラーだよね。と思い、狂信者による無差別殺人か、と思わせて終了かと思いきや、
ラストはサイコパスの犯人登場。って、確かに、シャム兄弟の件は画像語られているけれど、どうしたって唐突すぎやしないかな。
星の王子さま

星の王子さま

Project Nyx

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2018/09/16 (日) ~ 2018/09/21 (金)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/09/18 (火) 19:00

座席1階I列19番

私も美女劇を拝見するのは「奴婢訓」に続いて2回目。
「奴婢訓」は、寺山修司作品の見世物小屋的な要素をふんだんに盛り込みながらも、あくまでも芝居としての体裁を整えていたのに対して、「星の王子さま」はエンターティメントに大きく舵を切っていて、ちょっと取っ散らかり感が大きいかな。

70年代ノスタルジー満載なのは構いませんが(私は小中学生かな、フラワー・メグと中山ラビは知っていた)、ラストを現代風に合わせるために、本来の「星の王子さま」のままにしたということですが、そことこの懐古趣味との咬み合わせはどうなんだろう。

閉演後のロビーのお祭り騒ぎも、ちょっと苦手だし。
(楽しんでいる方々がいることはよいのですよ。あくまで、私個人の嗜好なだけです。)

次の演目がどうなるかはありますが、やはり次回も観るのだろうなあ。

死旗

死旗

鵺的(ぬえてき)

ザ・スズナリ(東京都)

2018/09/12 (水) ~ 2018/09/18 (火)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/09/15 (土) 14:00

「鵺的」そして寺十吾さんということで観に行ったので、配役とかまったく気にしていなかった。と、若松武史さんが出てきて、びっくりしました。
食人から始まり、犯し、受胎したら食べるといった発想は、すごいな。
鵺的の舞台が凄いと思わせるのは、こうした脚本を、ちゃんと視覚化してしまうところ。グロと言えば、そうなんだけれど、何とも潔さが傑出していて、けして後味が悪いというわけではない。潔いよいよね。

ストーリーは、習俗の話から、新たな人類の在り方にまで捻って、土俗ホラーと思いきや、きちんとSFしている感じで、まあ、途中からどこ行っちゃうんだろう、って面白さがたまりませんでした。

私は大好きなテイストですが、万人にはお勧めできませんね。

寒花

寒花

ハツビロコウ

シアターシャイン(東京都)

2018/09/11 (火) ~ 2018/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/09/13 (木) 19:00

座席1階1列

パンフレットには、今回この作品を公演するにあたり、安重根のことを念入に調べたことが書いてある。
確かに、ここで描かれる安重根は魅力的な人物であり、謎の多い人物でもある。

だが、おそらく鐘下辰男脚本は、安重根に強い興味を持って作られたのだろうが、それは日韓併合という政治問題や、朝鮮半島の歴史や、帝国主義という思想や、伊藤博文暗殺という事件に絡めた興味ではなく、おそらく純粋に安重根という人物に対する興味だったのだろうと思う。よって、松本光生が安重根について調べたのも、脚本を肉体化する過程として、彼を理解しようとする行為ではなかったのかな。

この作品の主人公は、1人は安重根であり、また1人は通訳の楠木であり、もう1人は模範囚の高木である。そこで、物語りのテーマを提示する意味合いで(安重根はその背景が判っているから、楠木と高木という人物を描く必要ようがあった。)他の外務官、監獄医、所長、看守長、若い看守達は、この3人の状況を作り出す舞台装置であり、狂言回しだ。

主人公3人が耳にする音、彼らはこの音を欲していた。
安重根は悔恨があった(彼は家族を捨て、家族に捨てられた)、楠木は母親に認められたかった、高木は自らの裏切りに恐れおののいていた、それらを包んでくれるのが、あの音だったのだと思う。

1人は死を肯定的に受け入れ、1人は自らを無と認め、1人は死を求める。
あの音を聞くために。

おそらく、次の主人公は、佐々木という若い看守なのだろう。
彼も、あの音をいずれ聞くように思う。いや、登場人物全員にその可能性があるかな。

1つ1つの状況に無駄がない。

ちなみに。
安重根がタバコを吸うときや酒を飲むときに、顔を横に向ける。
朝鮮での儒教教育を見事に表現した、細かい演出だと思う。

パンフレットに席が狭いことのお詫びが書いてあった。心遣いがうれしい。

LIMIT

LIMIT

劇団ベイビーベイビーベイベー

シアター風姿花伝(東京都)

2018/09/12 (水) ~ 2018/09/17 (月)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/09/12 (水) 19:00

座席1階1列

タイトル通り時間制限有の中での犯人と刑事の交渉劇。
ただし、テイストと人物設定に難あり。

まず、交渉劇になっていない。
娘を人質に取られた父親を介した犯人との交渉を交渉人が行う、というのが本筋なのだけれど、
心理劇的なサスペンスになっていない。
交渉劇では、裏で奔走する警察という図式が必須で、
そこについてはかなり描き込んでいるものの、肝心の交渉人が犯人の言質を取るとか、犯人が交渉人を翻弄するとかのかけひきがない。(私が気付かなかっただけ?)ただただ、交渉人がやっていることは、ある第三者から提供される情報を咀嚼することと、同僚から提供される情報を待つだけだ。

もう1つは主人公マリの人物設定、彼女は同僚からはゴリラ扱いされる猛女
(スタイルはよいし、とてもチャーミングではあるけれども)で、すぐに犯人に手を挙げるし、声を荒げる。交渉の依頼が来ても、刑事にも関わらず気乗りがしないとのらくらとする。
直情径行的で、どうしても冷静沈着な交渉人に適している人物には見えない。
冒頭に、銀行強盗を捕獲するシーンで、いきなり部屋に踏み込んで達者なアクションを見せてくれるのだけれど、これ必要?(掴みとしているのだろうけれど)
犯人は人質を取っているわけではないので、逮捕ということではこれでよいのだけれど、これでは交渉人という設定が生きてこない。
プロファイリングを教育された刑事とかだったら、ありかもしれないけれど。

マリと同僚の元夫との子供の自殺という悲しい過去や、
犯人のパラノイア的かつ残忍、狡猾な人物像を描く過去の事件など、それぞれの背景をきちんと設けていることから、もっとサスペンスフルな心理戦が期待されたのだけれど。

ちなみに、マリの子供自殺。吃音で発達障害の子供の前で、あんなに夫婦でいがみあったり、大声出したりしたら子供まいっちゃうよ。子供可哀そう。

ネタバレBOX

この話の肝は
①観客にミスリーディングをさせること
②実は2人の別件での犯人がいたということ
にある。

①については、会場で配られた配役表とフライヤーを照らし合わせるとなるほどと思わ せる趣向が上手い。なぜ、「彼」には名前がないか?
②は双方が無関係な存在であるにも拘らず、双方の意図に気づいているということに面 白みがある。(ここでは爆弾犯と暴行犯といっておく)
 暴行犯は巧妙に細工を施しながら爆弾犯の提起したゲームに参加して楽しんでいる。 彼には爆弾犯が捕まろうが、計画を成功させようがどちらでも構わない。
 計画が成功した場合により悲惨な結果がまねかれるように、巧妙に爆弾の位置(この 設定はうまい)を操作する。ついでに、爆弾犯の陰で自分の暴力的欲望を発散する。
 爆弾犯は、途中から暴行犯の介入に気づき始め、最後の取調室では暴行犯の存在を確 信し、暴行犯の存在に気付いていない刑事に示唆的な言葉を発する。2人の共通性、お そらく、意図のない悪意というものについて。
 
 よくできているなあ、と感心するけれど、爆弾犯が暴行犯の介入に気づき始めた時、 そして存在を確信した時の微妙な心理的な動揺が描かれていればよかったかな。(私 が気付いていなかっただけかも)

 時限爆弾の解除オチは面白かったけれど、爆発しないことはストーリ的に自明なので
少々中途半端な感じもする。せっかく、運の強さを買ってマリに解除の選択をまかせているので、そこで一捻りしたもう一段のオチが欲しかった。
かのような私

かのような私

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2018/09/07 (金) ~ 2018/09/21 (金)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/09/08 (土) 14:00

座席1階D列26番

説明書きを読んだら、何か花登筐の「どてらい奴」のようなイメージで臨んだのだけれど、全く違いましたね。「熱狂」や「則天の君」などのようなテイストでもなく、それでいてかなり古川健テイスト。うん、そうだよね。っと納得のお芝居。

ネタバレBOX

ここまで、安心して人の声を聞けるってよいなあ。そんなお芝居。
シティ・オブ・エンジェルズ

シティ・オブ・エンジェルズ

ホリプロ

新国立劇場 中劇場(東京都)

2018/09/01 (土) ~ 2018/09/17 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/09/06 (木) 18:30

座席2階3列56番

いやあ、面白かった。
小ネタ満載で、大変楽しめました。
正直、そこのところのセンスは福田雄一感満載で感服です。
ミュージカルとしてはちょっとどうかな(歌唱力、ダンス)、という点もありましたが、柿澤勇人さん、瀬奈じゅんさんの手慣れた、そして巧みなミュージカルセンス、それと脇の皆さんの堅実なダンスと歌に支えられ及第点。そこに先の小ネタ+αと上質な演奏で、十分優良です。
山田孝之さん、山田優さんが、ミュージカルをこれほどこなせるとは感心至極。(失礼)佐藤二郎さんの自由人ぶりは、全く別の意味で感心至極です。( ´艸`)
確かにリクエストしたい芝居です。毎回の変化に気づく楽しみは、リクエストした人の特権。そうできる人がうらやましい。

さて、これはこれとして高く評価して、一方、全く純粋に(本来の形という意味)このミュージカルを適性重視の配役で観てみたいとも思います。やあ、よくできた作品です。小ネタをはずすと正味2時間20分くらいでしょうか。ミュージカルのノウハウとなるとやはり東宝かな、是非、上演お願いします。



At sea ~生きることのゆらぎ~

At sea ~生きることのゆらぎ~

シアターX(カイ)

シアターX(東京都)

2018/08/30 (木) ~ 2018/09/01 (土)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/08/31 (金) 14:00

前回、ルティ・カネル演出のヴィトカッツィ作「母」を観て、感動。今回も期待。

かなり脚本を解題した舞台を作る人だけれど、今回の舞台を観ても、空間の使い方に抜群のセンスを感じる。大きなものは大きく、広いところは広く、そして収縮させる場合は一塊にしてしまう。だから、驚くような舞台装置がないわけではないけれど(「母」のラストはちょっと驚き)、シンプルでかつダイナミック。それでいて、深淵。人間の想像力をいかようにも開放してくれる自由さがある。

今回は2部構成の舞台で、1部は恋人同士の話、2部は海を泳ぐ人の話、それを5人の男女で描きあげる。1部はヘブライ語のみ、2部はヘブライ語と英語。字幕なしなのでストーリーは正確には追えないのだけれど、不思議と不自由に感じない。むしろ、字幕を追わないので煩わしきないし、演技と音声(言葉が判らないので)だけで、十分に舞台を楽しめる。

これもかなり解題されているのだろうなあ、本来はどんな脚本なのだろう。
1部のラストは、少女の初恋の気持ちを昇華していてとても美しい。

1時間半ほどの長さ(途中休憩有)でも、1日1公演というのも、潔いなあ。
(これが普通なのかな)
こういう舞台に接することができるのが、シアターXの楽しみの1つ。
アフターミーティングも楽しみです。
ビールでも飲みながら、といきたいのですが、無理かしら。

錬金術師-The Alchemist-

錬金術師-The Alchemist-

ファーベルとルーデンス

北池袋 新生館シアター(東京都)

2018/08/25 (土) ~ 2018/08/29 (水)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/08/26 (日) 18:00

ベン・ジョンソン作の芝居など初めてなので、せっかくの機会なので観てみようと思いました。
まずは、そのことに感謝。どうして、この戯曲を選んだのか、劇団に英国文学専攻をした方でもいないと、ちょっとやそっとでは上演をしないと思います。
「満を持して」とあるだけに、意気込みは素晴らしい。
フライヤーの決めポーズも美しいし、劇場で配られたパンフもかなりしっかりした作りで、デザインも申し分ない。
台本は先行発売までしていて、200頁にも及ぶようだ。

さて、芝居はというと、ペストの流行で主人が逃げた屋敷は、いかにも荒廃したようにゴミで散らかっており、実はこのごちゃごちゃ感が最後まで払しょくしきれない。長くて難しいセリフに奮闘して、役者さん達の衣装もどんどん乱れ、活発な演技は汗で頭髪を乱す。それは褒められてよい。ただ、新生館シアターという手狭さが、一層慌ただしさと乱雑感を増す。せめて東京芸術劇場イーストくらいの広さがあればなあ。
ある意味、衣裳もシンプルにストレートプレイに徹した方がよかったのではないかな。

さて、舞台の内容なのだけれど、どうもこの時代の喜劇というものが、何が面白いのかよくわからない。
(シェイクスピアしか知らないが)フランスだともう少し、喜劇喜劇しているように感じる。
もちろん、してやったりな部分はあるから、否定しているわけではないのだが。
できうる限り、原作に忠実にしようとしたのかな、原作読んだことないけれど。
でも、他の方もおっしゃっているように、せっかく台本の先行販売を企画してくれるほどなので、こちらの勉強不足も否めないと思います。

ネタバレBOX

ちなみに、フライヤーのように「鋼・・・」みたいなカッコ良い場面はありません。
これ、どうしても、そっちを想像させちゃう画だよね。
白雪姫 ■東京公演■

白雪姫 ■東京公演■

体現帝国

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2018/08/24 (金) ~ 2018/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/08/26 (日) 15:00

説明書きをみる限り、かなり抽象化されている舞台のように思えますが、セクションを細かく分けて多少の改変を(ってオリジナルを読んだことがなくて、通り一遍のストーリーしか知らないのだけれど)なしている以外は、私たちの知っている白雪姫の物語です。

ただ、ここが体現帝国の凄さなのですが、セクションへの解体をし、個々のイメージの多様化を図ることによって、舞台をコラージュと化してしています。そこから立ち現れる数々の陰影は、時として観客を突き放し、時として飲み込み、舞台そのものを地下に蠢く一体の生物と化してしまいます。そこには「白雪姫」という物語の底知れぬ悪意と闇が投影されています。
瀕死でありそうで、けして呼吸を止めない有機体としての生命力が、私たち観客を白雪姫という漆黒の見世物小屋を引きずり回すのです。

あー、疲れた。これ、面白いって言っていいのかな。
観る側を選ぶ舞台ですね。

『川辺市子のために』『川辺月子のために』

『川辺市子のために』『川辺月子のために』

チーズtheater

サンモールスタジオ(東京都)

2018/08/22 (水) ~ 2018/09/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/08/24 (金) 19:30

座席1階1列

『川辺月子のために』
ストーリーは、前述の方の書いた通りですので触れません。
でも、前作「川辺市子のために」から、ここまでよく捻り上げたものだと感心至極。
一昨日に前作を観たものからすると、この作品で川辺月子が出てくるというだけ(配られた配役表が兼用だったので前作観劇時に確認済)で、パラレルワールドの話なのかと勝手に推測したのだけれど、全くの続編だったので驚き。

確かに開幕後は、何が起きているのか、混乱するのだけれど。(→ネタバレ)
ある程度整理できた時点からも、驚愕の嵐。

この作品、「川辺市子のために」を観てからでないと、話が全く見えないだろうし、順番逆に観たら、「川辺市子のために」は楽しめなかったろうなあ。やはり、観る順番を示唆するとか、順に観れるようなプログラムにするとかは必要だったと思う。

ネタバレBOX

冒頭、月子が出てきて、小泉ツキ子を殺す場面でまず混乱。すると、海で車中、死体で見つかった女性が市子か月子か判らず混乱。で、男性の死体は誰かも混乱(これ最後まで判らないし)。2人の別の月子があかしに訪れたと知らされてまた混乱。

前作でたっぷりと市子に感情移入した私としては、犯罪に手を染めて、それでも戸籍を得て逃げおおせることに腐心する市子を見て驚愕。月子がツキ子を殺したことを、自らの罪として背負った市子が、次第にそのことをもって月子に無理難題をかけるようになっていくように見えるのも驚愕。

不思議なのは、小泉ツキ子と小泉正雄との親子関係のあまりの薄弱さ。いくら娘が重度の病気を患ったとしても、実の娘の戸籍を奪った挙句、殺されてしまった娘を、埋めに行くか!!!
こうなると、小泉正雄の妻のことがとても気にかかり、離婚したのかどうしたのか。それに、いくら娘の介護が大変だと言っても、戸籍交換みたいな唐突な話に、小泉正雄がそんな安易には乗らないだろう。
このあたりの経緯は続編(?)「川辺むつみのために」で明かしてくれないとね。

なぜ、川辺むつみは自殺する必要があったの?(良心の呵責なんて言っても、あそこまでやる女なんだからそれはなし!)そして、インタビューの夜には熊田百子が来なかったのはなぜ?連絡も取れないようだし。北の小泉正雄の死体運びの謎も解けていないし。やはり続編決定なようですね。
戦い

戦い

サルメカンパニー

アトリエファンファーレ東池袋(東京都)

2018/09/01 (土) ~ 2018/09/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/09/02 (日) 14:00

座席1階1列

ハイナ・ミュラーというと、この春に「ハムレットマシーン」フェスティバルが開催されたばかり。とはいえ、「ハムレットマシーン」でさえも、近年、日本の劇団で演じられるのを聞いたことがなく、この劇団が初演に、この作品を選んだ理由は何だったのだろう。でも、英断。

5つのエピソードが、ピアノの演奏を挟みながら、ナチスカギ十字を模した舞台設定の上で繰り広げられる。全編で1時間。ピアノ演奏は、転換のためのアクセントだと思うけれど、毎回座席後ろから出てきて、舞台奥まで移動しての演奏はどうだっかな。狭い通路をドレスで出てくるのは、ちょっと興覚め感もあった。
沈黙の暗転でも十分くらいに、1つ1つの作品にエッジが立っており、けして前の作品の余韻を引きずることもなかっただろうから。

次回作も期待なのだけれど、ここで1つ問題が。若い役者のみでの劇団なので、どうしても年配者役が出てくると無理がある。「肉屋とその女房」「シーツまたは処女懐胎」は、20代が60代を演じることで、前の3作品と比べると作り物感が出てしまい、ちょっと緊張感が削がれたのは残念。

当日は満席。半数以上が若い女性というところにも、この劇団の持つポテンシャルの高さを感じる。ただ席が詰め詰めで、姿勢は苦しいし、尻は痛いし。1時間でも十分に拷問だった。

ゼンイとギゼンの間で呼吸する世界。

ゼンイとギゼンの間で呼吸する世界。

神保町花月

神保町花月(東京都)

2018/08/31 (金) ~ 2018/09/02 (日)公演終了

満足度★★

鑑賞日2018/08/31 (金) 19:00

チケットが安く手に入ったこと、フライヤーやタイトルがとても洒落ていて興味をもったことから、ダブルヘッダー観劇を厭わず拝見いたしました。説明書きを読んでも、芝居の内容は判りようもなく、本当に期待値だけで観にいったのですが、オープニングからはちょっとずつテンションは下がり気味。

神保町花月が吉本興業の劇場であることは、重々承知しておったのですが、どうにもはや、芸人さんたちのノリが(ご本人達は真摯に演劇として取り組まれているのでしょうけれど)、微妙ににじみ出てくる感じがしててくる感じがして、舞台に集中できません。

やはり、環境というものは重要で、普段使いの場所から離れてやるべきではなかったかなあ。
芸人さんが芝居をしているのではなく、芝居に芸人さんが出ているという前提で。
吉本が主催している映画祭みたいな感じが拭えなくて、集中できない。

インタビュー動画でも、語られていますけれど、どうしても役者さんとの差別化を図ろうとして、笑いの部分への引きがある感じがする。初演の方が、むしろ真摯な舞台だったと想像する。

作品内容は、親族や周辺の人々が親切と誤解と覗き見趣味とええかっこっしいとで、微妙なズレが生じるシチュェーションコメディ風人情劇。当日配られた人物関係図も、役に立ったし、もう少し笑いを押えたら、もっと笑えたような気がする。

『川辺市子のために』『川辺月子のために』

『川辺市子のために』『川辺月子のために』

チーズtheater

サンモールスタジオ(東京都)

2018/08/22 (水) ~ 2018/09/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/08/22 (水) 19:00

『川辺市子のために』
舞台は、白骨死体の由来と殺人ないし死体遺棄の犯人を突き止めようとする刑事後藤が、関係者を集めて話を聞くという展開。
集められたのは、幼馴染、学生時代の親友、ストーカーになった元同級生、学生時代の元カレ、パテェシエを目指す友人、結婚を誓った現恋人など。
彼らの証言から、川辺市子の過去が再現され、一方で市子の母親の過去などの描写が挟まれます。

刑事は、失踪した市子を追っています。しかし、同時にこれは月子を追うことでもあります。なぜなら、市子この世に存在しないはずですから。

この作品、無戸籍児(300日問題)を題材にしたミステリーです。
松本清張の「砂の器」のように、そこに示されている問題が、犯行動機や川辺親子の行動要因に深く関わっています。しかし、この作品の特徴は無戸籍であることが招いた状況が、証言者たちの認識や証言に大きなバイアスをかけ、市子像をかなり多面化あるいは虚像化しているというということにあります。

そうした点でこの物語は面白く、むしろ無戸籍や300日問題がどうかといったテーマ性よりも、設定として犯行動機にうまく生きている点の方に比重が高いように思われます。

ネタバレBOX

この作品には、現在の市子は出てきません。
しかし、市子のアイデンティティ獲得の物語です。

ラストの市子の慟哭は、長谷川との生活を通じ、やっとアイデンティティを獲得できたにも関わらず、重い罪業を背負ってしまっている自身をどう処してよいか判らないといった表出なのでしょう。

この作品は、謎めいたことが放置してありますが、皆さんはどうお考えなのでしょう。
・小島の死体を300mも白昼布団に巻いて、人目に付かずどうして運べたのか。
 そして、誰にも見つからず踏切で線路に置けたのか。
・長谷川は、事故死した恋人川辺市子の携帯番号に電話をして、なぜ同姓同名の本作の 市子に通じたのか。
・母・川辺なつみはどこに行ったのか。
そして、川辺市子はどこに消えたのか?
蒼いラフレシアの鼓動〜The beat of blue Rafflesia〜

蒼いラフレシアの鼓動〜The beat of blue Rafflesia〜

東京ジャンクZ

王子小劇場(東京都)

2018/08/15 (水) ~ 2018/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/08/23 (木) 19:30

全16回公演の休演日翌日、1日2回公演のソワレ。
ちょうど、よいタイミングの回かな。かなり高いテンションを要求される2時間超の舞台ですから、疲労も蓄積するでしょうから。

フライヤーを見て、あのオープニングのおバカなノリと統制の取れたダンスを見れば、この舞台は
本当にラフレシア探しに行く、コメディータッチな一夏の物語、と勘繰るのはいたしかたない。
休憩時間があるのは、きっと南アジアの舞台設定に変えるために設けてあるのだなあ(そんな気配が全くないのに)、なんて脳天気に思っていた私、本当にラフレシア探しに行くんだよなあ、と信じるように観ていた私、最初は視界が遮られていた舞台上のちらかった廃屋を見るにおいても、そう信じようとしていました。
それでも、入場時に配られる配役表裏のオープニングの歌詞を読むことをしていれば、そうした錯覚もなかったのかな。(この歌詞、歌になるとやたら明るいので、その歌詞の意味まで考えないのだよ)

19:30開演で終演は22:20、休憩除き正味2時間40分だったのだけれど、他の方々がおっしゃる通り、全く長く感じなかった。重い話でありながら、観客に直線的な緊張を強いるのではなく、緩急の波を大きくして、観客を適度に弛緩させながら、山場をいくつも作っていたからだろう。

終演後に「本番後記」を配って、ちょっと混乱している頭をすっきりさせてくれる心遣いには感謝します。

ネタバレBOX

「ラフレシア」は、存在することは間違いないし、それを見つけることで自らの存在証明となるような存在。しかし、それを見つけることは、限りなく不可能に近い存在。そして、画像を通した視覚的には大きな感動をもたらすが、実のところひどい悪臭を放つ、直接に見た者にとっては、ただただ不快な存在。
「蒼い」は、やはり少年という若さの表象なのかな。

少年たちは、画像を通して自らの存在証明をしようと図り、しかしレンズの裏側では自らを失い続け、どんどん醜悪な存在へと変異していく。同情する気は全くないけれどね。

おっかけの古市さんの立場がよく判らないのですが、彼と会話するように内面を吐露する、少年1人1人の表情が初々しくもあり清々しい。少年たちの心情描写と、現実の言動との乖離が極端で、かなり自己を確立できない少年たちの孤独を際立たせていたように思う。それでも、同情する気はないけれど。

奥田努氏の三島の演技が秀逸。監禁・暴行といった時間軸の長い物語を、散漫にせずに一人でちょこちょこと締めていくユーモアとバイオレンスは、演技というより個人技が効いているといった方がよい。

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