UN-TAN
流世☆ロケット
北池袋 新生館シアター(東京都)
2015/10/07 (水) ~ 2015/10/12 (月)公演終了
満足度★★★
今後が楽しみ
虚構という世界の中に描いた重厚な話、その場面ごとに緊密な繋がりを持っているようであるが、それが上手く結びついているのか、そして観客に伝えきれているかは疑問。しかし、面白い設定であり、演出にも工夫を凝らしている。
ネタバレBOX
優れた作家であるが少し変わり者、そして有名でもない...その筆は、第一次世界大戦から世界大恐慌までのアメリカ1920年代の混沌とした時代と、某富豪屋敷にある或る書(手帳?)を入手する、という多重構成で物語が展開する。登場人物は大勢いるが、基本的には会話劇(作家と編集者)のようである。前段の話は、米ソ冷戦時代からソビエト連邦崩壊までという後日談も描かれる。時代に翻弄される人間と、時代に関係なく人から人に手交されてきた書、その存在(記載内容)は何か、20世紀における闇に関わる謎が書かれているのか、この推理小説を読み解くようなミステリー、サスペンスの雰囲気は良かった。
一方、小説なのか、空想話なのか、その複雑に絡み合う現実との切り結び(書の奪取までの「挿話」との関係)が不明確である。それゆえ公演全体が難しく感じられた。
この舞台セットは、少し高い段差を設け床一面に英字新聞のようなものが敷かれている。上手にはモザイク柄の木椅子6脚、中央には机/タイプライター。薄暗い照明の下、重厚な空間は激動の時代をよく反映しているようであった。
なお、この時代は現代または次時代にどう繋がっていくのだろう。この続きが観たいと思わせるような...
次回公演も楽しみにしております。
暗闇演劇 「The Light of Darkness」
大川興業
ザ・スズナリ(東京都)
2015/10/10 (土) ~ 2015/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★
気配を楽しむ!
前回本公演(第38回)は完全な暗闇劇であったが、今回は薄光で舞台の様子が何となく観える。芝居は観るもの…確かにそうだが暗闇劇も素晴らしい。観えないがゆえに、神経を研ぎ澄まし集中する。その緊張感が心地良い。
ネタバレBOX
3つの話がしだいに修練し、最後には心温まるような大輪を咲かせるような物語。そして観えないがゆえに、台詞の一言一言が印象に残る。たとえば「楽しいことは拡散し(印象)薄まるが、悲しみは集中し暗闇に引き込まれるようだ」は正鵠を射るようだ。なにより素晴らしく感じることは、公演底流にある観客(目の不自由な方も含め)に感じて貰いたいというサービス精神に溢れているところ。その対応力の高さと同時に作品固有が持つ物語の魅力であろう。その個々の味わいを掬い取る繊細さも見逃せない。これをDVD化にしても面白味は伝わらない。実際劇場で体験するしかないのが残念であるが...。
さて、3つの話と全体としてまとまる梗概
第一話。バブル期にあった温泉付マンションは、売れ残り住居者も疎ら。そのゴーストタウンのようなマンションにいる売れない芸人の不安と焦燥。
第二話。学校でイジメられ、屋上から自殺しようとしている学生と担任教師。校長は、学校はもちろん担任教師にも問題はなかったと(管理)責任回避。
第三話。既婚男性の妻と愛人との間で心が揺れ動く、というよりは優柔不断な態度が招く悲劇。愛人が癌になり妻が身を引くことにしたが、実は妻も末期癌で他界...その心情を知った男の号泣。
これらの3つの話は交錯し一つの話を紡いでいく。途中に男全裸の電光映像が紗幕(暗くてわかりにくいが)に映し出されるなど、大川興業らしい笑いも挿入されるが、全体を通じたテーマは「命と人の優しさ」といったことが感じられる。
次回公演も楽しみにしております。
reflection of 灰色天使
劇団芝居屋かいとうらんま
OFF OFFシアター(東京都)
2015/10/10 (土) ~ 2015/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
観応えがあった
衝撃な冒頭シーン。
謎の男の謎の事務所に来る人々。なぜ男のところに来るのか。底知れない知性を秘めているのか、穏和な人柄に癒やされたいのか。
多少癖はあるが、普通の人たちが曖昧な会話や行為を通じ、次第に心が病んでいく様が怖い。この男の正体は…。
ネタバレBOX
紳士然とした振るまい、穏やかな口調…その外見から予想出来ない真実。
圧巻の冒頭シーン。
そのシーンは、一人の女性が血が付いたナイフを持ち、白いブラウスは返り血で染まる。そして母、父、友人、そして周りの人々を次々と殺害した、と衝撃の告白をする。
暗転後は、ほのぼのとした雰囲気の某事務所。この事務所は何を行うところか分からないが、相談事で人の出入りが多い。
大金を手に入れ幸福感に浸るところであるが、そこに不安も感じる。完全な姿の中に不完全な幻影を求める。人は満足の中にある不安という感情よりは、不満の中に安心と求める夢を見るのかもしれない。
この事務所の男との会話は、穏やかで安心感を与えるようであるが、その応答に解はない。しだいにイライラが生じ、歪な関係になって行く。男の深奥に閉じ込めた思い...。無関心、不作為という一見人に迷惑をかけないような態度・行動は、時として自分に跳ね返る。深奥の扉がジワジワと開き、心を解き放った先に娘との邂逅が...。人に翼(肩甲骨は翼の退化?)があって空を飛べるの?という娘の問いに「飛べない」と現実的な答え。しかし、心の中では空よりも広いところを飛んでいる、と思う。
脚本・演出はもちろん、役者の演技力も素晴らしく、そのバランスも良かった。
次回公演も楽しみにしております。
芸祭
WATARoom
ザ・ポケット(東京都)
2015/10/07 (水) ~ 2015/10/12 (月)公演終了
満足度★★★
教訓のような…
座席指定であったが、受付に手間取っていたので対応に工夫が必要だと思う。
公演は、大学・学園祭までのサークル活動に絡む問題等を乗り越えて…そんな青春群像劇といったところ。色々な問題が生じるが、大学職員が大人の対応をし解決またはまとめるが、それが教訓臭いと感じる。学生自身または学生間の課題として観せてほしかった。
ネタバレBOX
公演を敢えて芝居とパフォーマンス(ダンスと剣舞)に分けた場合、芝居は説教じみており、山場のある内容ではなかった。そして完全な予定調和である。
梗概は、大学学園祭に向けて、それぞれの立場で活動しているが、その行動によって衝突するが、課題・問題を一つずつ解決し乗り越えて成功裡に導く青春ドラマ。そこに同級生の就職活動に焦燥を感じる留年確定学生、学園祭実行委員の学生、学園際というイベントの楽しさが忘れられない(現実社会からの逃避)卒業生、そして大学(学生課)職員の調整型人間が現れ...いろいろな場面で、一見正論のような理屈を述べるが、まとも過ぎて教訓のようだ。
一方、パフォーマンスは2団体の各々の演技は観せ場があった。ダンスは女性だけで、キレのあるフォーメイションが良かった。剣舞は、その太刀裁きが力強く優雅でもあった。そして、両団体合同パフォーマンス が一番の見所であったと思う。この劇中のパフォーマンスを活かしきれていないのが残念であった。
次回公演を楽しみにしております。
光を浴びたい者たち
劇団SwanLake
シアター風姿花伝(東京都)
2015/09/17 (木) ~ 2015/09/23 (水)公演終了
満足度★★★★
心の深淵
クラシックバレエにおいて、多くの女性がプリマを夢見るだろう。その選考を1971年 スタンフォード大学にて行われた監獄実験を参考に行う。その過程で浮かび上がる人間の醜悪な面の本性。実際の実験に沿うような展開...単に看守と囚人に分類し 2週間生活をさせるだけだったが...。
ネタバレBOX
人間の心の奥底には誰にも見せたことがない、また見せたくもない闇の部分がある。その閉じ込められた心の扉がジワジワと開かれ、閉じ込めていた醜悪な部分が露悪していく。語りたくない言葉が溢れ出し、もはや「常識」や「理性」という箍(たが)は外ずれ、嫉妬、羨望、陥穽などの感情が芽吹く。しかし、その醜悪な面も含め人間であり、歪んでいるがそこにも生の源泉があると思う。
この深奥をスタンフォード大学監獄実験事件」をモチーフにして抉り出すように描く。そのドロドロとした人間模様は人の闇をクローズアップすると同時に、「人」と「人」との関係の重要性も浮き彫りにするような二面性を持たせている。人間が持っている表裏の感情を上手く表現しており観応えがあった。
その演出は、エキセントリックな光と音の中で、体は踊り、心は狂い、その先にある魂には祈りを捧げているようだ。クラシックバレエという優美な世界に渦巻く人間ドラマは、強烈なパンチとして印象に残った。
演技は冒頭ダンスシーンがあるが、そのダンス経験の差が歴然として現れる。ここで演技力(ダンス)の差を印象付てしまったのが残念である。
次回公演を楽しみにしております。
The Last Snow~雪女物語
劇団暴創族
笹塚ファクトリー(東京都)
2015/10/07 (水) ~ 2015/10/12 (月)公演終了
満足度★★★★
丁寧な公演
場内に入ると幻想的で美しい照明。その奥にある舞台セットもしっかり作っており、楽しめそうな雰囲気を感じさせる。説明にある「雪女伝説」にまつわるファンタスティックコミカルホラー...確かに面白かったが、ドタバタが多く、そのシーンごとの笑いの余韻のようなものがない。もう少し観せるという感じがほしいところ。
ネタバレBOX
物語の梗概は、小泉八雲の「雪女」...人間を凍らせ、命をうばう雪女、に似ている。各地に伝わる雪女の話もあろうが...。
本公演では、雪の降る夜、雪女が人間を凍らせ殺してしまう所をみた老人とその息子(青年=三保田権蔵 黒岩徹サン)は、青年の命だけ助けた。今夜の事を決して他人に漏らさないという事を条件にして。青年はその後、ユキナ(塩山みさこサン)という女性と知り合い、幸せな家庭を築きいた。しかし青年は誓いを忘れて雪女の事を妻に話してしまった。その途端に妻はあの夜の雪女になり、家族をおいて自分の世界へ...。もっとも子供が一人前にならなければ何度でも現れるらしい。
現実(日常生活)の世界と思っていたが、次第にファンタジックな世界も入り始め、いつの間にはその境がなくなり、雪の世界に溶け込むようだ。
この舞台は、津々良山温泉のペンションでのこと。青年はこのペンションのオーナーであり、2人の子供(男女)がいる。この二人はユキナとの間に出来た子であり、子供にはユキナが25年目に死んだことにしてある。
この親子とペンション宿泊客のドタバタを描いたファンタスティックコミカルホラーという謳い文句であるが、ホラーとしての怖さはない。
この舞台セットが素晴らしい。上手には小スペースに本棚、蒲団(大きいクッションか)、中央奥に暖炉、客席側にリビング・食堂のテーブルと椅子、下手は受付と二階への階段がある。そこに雪の結晶をイメージする照明が...幻想的で美しい。
宿泊客は漫画家(原作者と絵画者)とその編集者、オカマバーの慰安旅行、大学のスキーサークル、家族旅行である。その客達が偶然にも知り合いであったり、不倫騒動、サークル内恋愛など色々な絡みが笑い笑いを誘う。
そのコミカルなシーンの連続であるが、しっかり観せる前に次のシ-ンが被ってくるようで、流されている印象である。テンポよく感じるが、もう少しシーンを大切にしてもよいと思う。
当日パンフによれば、2015年度(来春)で笹塚ファクトリーが閉館するらしい。他にも閉館の噂を聞いており、残念な思いをしている。
劇団暴創族と改名し、3回目の公演だという。
ぜひ次回公演も楽しみにしております。
落語でショー改め「座布団劇場七枚目ッ」
占子の兎
阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)
2015/10/01 (木) ~ 2015/10/05 (月)公演終了
満足度★★★
新しい試みに感じたが...【C観劇】
落語の根多...それを登場人物の数だけ登場、といっても横長の舞台に座布団が人数分あり、時に寝たりしているが、大方は客席に向かって座っている。落語のように一人語りではなく、掛け合いのように進む。朗読劇、動きのある芝居でもない。新しい試みなのだろうか、自分も今まで観たことも聴いたこともなかった。それは新鮮であったが、少し物足りないような...。
ネタバレBOX
落語は、一人で登場人物の何役も語り分けるが、時に季節、情景、心の機微なども織り込む。だから語りでも観客は自分の中で人物像やその時の状況を想像する。そして楽しみ、悲しみが分かり、笑ったり、泣いたりの感情が湧き上がるのだと思う。
本公演では、登場人物が見えており、その人物像の視覚的な楽しみはすでに失せている。またその人物を演じるため、そのほかの状況、情景を語る人物がいない。掛け合いの台詞芝居としては面白いが、その周りの描きがないと思う。古典落語、新作落語のどちらにしても情緒が感じられなかった。
また自分は、今回の演目は聴くいたことがあり、その時のイメージと比較しており、落語は落語”噺”としての醍醐味を持っていることを改めて感じた。
特に最後の演目である「らーめん屋」...自分が聴いた時は寒い時期、それも夜中という設定。今回も夜中であることは分かるが、寒いという状況と追い詰められた若者の心情が浮かび上がってこない。また、オチでは、若者はいままで老夫婦からもらっていた小銭すべてを返して(渡して)、自分の名前を呼んでほしい、と懇願する。そこに老夫婦、若者の双方の思いが現われ、人情話の傑作となっていたと思う。そしてその若者は20代前半というものであったが、今回見えている人物は...。
次回公演も楽しみにしております。
【追記 2015.10.14】
自分の想像した人物像や情景・状況が心に思い描けるか否かが大切だと思う。観せる効果は、自分のイメージに合致した時、その印象は深く刻み込まれるだろう。自分勝手な解釈であるが、たとえば「「たちぎれ線香」...。
大店の若旦那と番頭、置屋の女将と芸者が主な登場人物。自分のイメージは、若旦那は色香に惑ったが、根は真面目。番頭は丁稚上がりの謹厳実直な苦労人、女将は強かな商売人だが、情に厚い。その印象に齟齬があった。芸者は...森下知香さんの役イメージは近いかも。それから芸者の死を知った時の悔悟、惜別の情感が弱いから感情移入ができない。だから線香の「たちぎれ」の悲哀のあるオチにキレが感じられなかった。
落語は、一人で何役も行うから情感を現すため噺にメリハリがある。今公演は役者が演じるという芝居であり、台詞の応酬であった。自分の未熟さもあろうが、噺を「聴く」という集中力が働かず、演じ観る方に神経が行ってしまった。
WORKING
一般社団法人映画演劇文化協会
新宿村LIVE(東京都)
2015/10/01 (木) ~ 2015/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
新鮮な感動
1970年代のアメリカにおける労働事情をドキュメンタリー風に描いた秀作。その描き方は労働者へのインタビューで集めた「声」を役者が答えるかたちで語る。その切り取り方...舞台は上・下手に衣装ハンガーが並び、職業によって舞台袖で着替える。舞台奥一面に幾何学模様かと思ったが、暗転・照明照射でその縁取りに電球が照らし出されるのが街の夜景、それも高層ビルが逆さまに見える。舞台前方(客席側)には幅10cm程の板が上下・左右に不規則に動き、額縁またはモニターのような枠を作る。その大きさはレンズのズームのように遠近の大きさに変化する。そこに人物の顔、上半身、全身など場面によって切取(枠)の大きさが違う。そして その枠にも照明が...クローズアップした中で語られる働く者の「生きがい・夢」「立場・見栄」「不安・恐怖」など、働くという行為は単に財貨を得るのではなく、そこには人間の営みのすべてがある。それ故、その言葉に重みがあり、観客の心に響くのだと思う。
この素晴らしい公演が無料ということにも驚いた。
鳥取イヴサンローラン
ロ字ック
シアター711(東京都)
2015/09/26 (土) ~ 2015/10/11 (日)公演終了
満足度★★★★
女、女、女を感じる
第一印象は面白かった!
話はありそうな内容で新鮮味がある訳ではないが、その観せ方が凄い。小説であれば、その言葉や文章から読者が想像力を発揮しその世界を広げるが、芝居は視覚に訴えるので、その印象は言葉や文章にし易いと思っていた。しかし、この公演ではどう表現しようか難しい。表層的には、”女”の身の下話であるが、それをどう書くか...媚、嫌、妬、姦など、女の付く漢字が入り乱れたような感じである。そこに描かれた女は、多少デフォルメしているが類型化される。その内面の表現し難いところをしっかり伝(観)えるところに驚かされた。そして紛れもなく体現しているのが役者陣(女優はみな愛らしい)である。この汗の迸りと女臭が、だんだんと慣れて熟れて雰囲気を醸し出す。それは匂いに変化して来るようだ。
ちなみに、女の又(股)に心が絡むと 怒 になるが...そう言えば 股 のシーンもあったような。
ネタバレBOX
舞台は、下北沢にあるスナック・イヴサンローラン...その店内セットが素晴らしい。上手にソファー席、下手はカウンターとスツール。中央は玄関に通じる通路、トイレ等があるという設定である。カウンター後ろには酒棚が見える。
ここで働く女が客を取った取られた...要は枕営業なのか真剣恋愛はあるにしても身の下の痴話喧嘩。その騒動、物語としては目新しくはない。しかし、その情痴の果てが凄い。
さて、この鳥取からの女性...父親はこのスナックのママと愛人関係にあるという。父親、ママはもちろん、母親も登場しない。よく母・娘の関係は同性という中で葛藤もあると聞く。では、娘にとって父親の愛人が経営する店で働く、そして会ってみたいという感情とは...。男の自分には気になるところ。
自分は鳥取県に3度行ったことがあり、そのうち2回は砂丘見学もした。
その鳥取のタイトルに因み、その砂丘の特産である ラッキョウ の話がでてくる。鳥取から来て働いている女は この地元特産が嫌いだという。臭いがその理由。しかし、ラッキョウ は体に良いらしい。血液をサラサラにするらしい。あぁ、ロ字ックはドロドロが売りの芝居、だからラッキョウは嫌いなのかも。
また、「砂の美術館」もある。砂で作られた彫刻「砂像」を展示している。砂は長期保存ができない。数ヶ月後には後世に伝えることなく作品は壊される。
本公演もライブ...同じ公演は見ることができない。今しか観れない、その意味で今回観ることができて良かった。
次回公演も楽しみにしております。
このために生きている
PAPALUWA
インディペンデントシアターOji(東京都)
2015/10/03 (土) ~ 2015/10/07 (水)公演終了
満足度★★★
地元愛がいっぱい
地方に伝わる伝承と地域活性化との狭間に揺れる人々の姿を、古の伝統行事を中心に生き活きと描く青春群像劇。しかし、その行事には持ち込んではならない掟があったが…。
純粋な思いがすれ違い、純粋がゆえに掟を破らざるを得なくなる。少し懐かしいような情景であり、身近な問題提起としても面白い。
ネタバレBOX
伝承イメージのため、冒頭に昔語りというスタイルを取り入れる。語り部は若い女性、普段は爺さんが話すが今日は不在のようだ。近所の子供たちは夕方になっても家路につかない。そして昔話をせがむ。
舞台セットは、中央に祭り櫓、上手は民宿玄関、下手はウツギ村地域集会所の玄関である。さらに道祖神。この劇場(地下にある)の中二階に相当する場所も民宿二階として使用する。
この地域では喧嘩祭で、勝者は花嫁を迎えることが出来るとの言い伝えがある。その昔、男衆ばかりになった時、お告げでこの行事(喧嘩祭)が始まったという。そして勝者の所には女性が...。そして掟は3か条...①喧嘩祭の練習 ②私情は入れない ③結果に文句を言わない とのこと。
しかし、この三か条はことごとく反故にしてしまった。無関係な人間の祭への参加、伝統の継承か地域活性か、祭の勝敗への不決断は、それぞれに理由があり、個々の対立が分かり易く描かれる。そして、未来を意識するような事象が...。あぁハッピーエンドなんだ。
子供たちへの語りは、お話と現実の世界の境界が崩れ、いつの間にか冒頭の場面へ引き戻される。
できれば、伝承と現実(現社会)は地域的な繋がりがあるので、台詞に方言を取り入れ、血の通った会話が聞かれると更に親しみが持てたと思う。
次回公演も楽しみにしております。
4時44分、せつなに青く。【ご来場ありがとうございました!】
劇団えのぐ
上野ストアハウス(東京都)
2015/10/01 (木) ~ 2015/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★
観応えあり
描いたテーマが重く、また現代にも続いている内容だけに理屈の世界に入りそうであるが、あくまで芝居。それも学校における七不思議を題材にしたちょっと切ないホラーコメディ…。そして4時44分とは...ミステリー・サスペンスの要素もあり観応え十分であった。
さて、描いた先に希望、未来が見出せたのだろうか。雨が上がり、空が青く晴れわたった先に虹が見えることを望む。
ネタバレBOX
イジメにあっていた少女が友達を刺す、その犯行の原因・理由を探すため心療行為を通して明らかになる凄惨で悲しい話。犯行後に錯乱し記憶を無く(忘却)した。それを探るために登場する七不思議。
イジメをテーマとした作品で、ある面から捉えようとしていた。その描き方は、学校というシチュエーションの中で起こり得る辛い場面をしっかり観せていた。もっともイジメの問題はその家族にも影響を及ぼすものであり、その年頃の子供を持つ親であれば、子供の様子に注意を払っているだろう。それでも無くならない問題ではあるが...。脚本の内容はやや教科書的またはHow To本の域かもしれない(イジメの具体的手段は世間に知られていること)。
もう一つ気になること...冒頭は「トイレの花子」のリードで説明しているが、これはどちらかというと都市伝説、地域伝説のような架空話のようであったが、イジメは現実問題として重く存在している。この虚実が物語を展開する上で効果的であったか。七不思議をイジメに関係した人物として登場させているが、その関連性は観せるため、と割り切る必要があろう。そしてイジメの直接的な人物は七不思議にも入らない、その無視・切捨が応報的のように思える。
演出は素晴らしかった。舞台は奥に2階部を設け、客席側の上・下手の両方に2~3段高くした演壇のような小舞台。場面によっては、可動式の扉(2枚)がセットされる。
七不思議が次々と登場するが、その時には縦横に動き回る。2階部ではそれを見守る、もしくは俯瞰するような静止姿。この動静の対比は立ち位置によって決まる。さらに小舞台に上り下りという上下運動は躍動感とともに見下しの立ち位置のようでもあった。この動きや場所が実に上手く連動し、観やすくしてくれる。
そして役者陣は熱演...学校内というシチュエーションであることから、友達関係を構築するため、総じて若い役者が集まっている。教師役には適材の客演を配し、その演技バランスはよく感情移入させてくれる。
イジメという問題をしっかり描こうとしており、その観せ方にも工夫をしている。このような公演、自分は好感を持っている。
次回公演も期待しております。
三十と十五の私
張ち切れパンダ
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2015/09/30 (水) ~ 2015/10/05 (月)公演終了
満足度★★★★
深奥にある優しさ
タイトルとおりの30歳と15歳の私が、時を交差させその年齢の心情を女性という視点でしっかり観せてくれる秀作。自由奔放で夢見る15歳の少女、焦燥・苛立つ感情があらわになる30歳女性。それまでの15年間の経過を語ることなく、思春期と自立期が鮮明に観える時期の対比である。そして15歳のある事をきっかけに物語は進展する。
ネタバレBOX
主人公・エナ(薩川朋子サン)は15歳で妊娠、その処置をめぐる女友達の言動。また、その事実を知った彼氏・時夫の態度・行動が表層的に描かれる。女友達は親身のようで、他人事のようである。彼氏は中絶前提の行動。現実的なものの考え方なのだろうか。
時を経て、30歳のエナ。会社をクビになり実家に帰ってきているところに同窓会の案内が...。過去の出来事と現在の心境が混じり苛立つ。髪の毛を掻き毟る、物(ダンボール)を投げる、椅子を蹴るなど、その激しい行為(表現)に胸が痛む。友達関係も上辺だけなのか、あまり会いたくないと思う気持ちも垣間見える。観たら感じられる表現も文章にするのが難しい。そんな女性の心の内を描くのは上手いなぁ。
人生に「もし、あの時に戻れたら」という思いも描く。中絶した現在の在り様、子供を生んだ人生がどうだったのか...こちらも幸せそうに描いている。15年の時を隔てた自分との邂逅、別の選択をした場合の夢想...その両方の描きはハッピーエンド。そこは作・演出の梨澤慧以子女史の優しさの現れであろう。
テンポ良く、スピード感もあり、暗転も多用せず観せることに工夫しているところが好ましい。一方、その流れるように観えることが、インパクトある出来事の割りには印象が薄い。やはり登場人物が皆善人なんだろうか。30歳という若さに少し翳りの見えた年齢...15歳の時からすれば30歳女性は大人だと...しかし、そこには未経験という錯覚がある。これはこの先40歳、50歳も同様かも。
次回公演も楽しみにしております。
森のふるふり
TEAM ゆうびんホスト
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2015/09/09 (水) ~ 2015/09/13 (日)公演終了
満足度★★★
不思議な感覚の物語
ファンタジーコメディという感じであり、主人公を守る地域の人々の心遣いは、この公演全体を包む優しさのようなものになっている。その雰囲気作りは舞台セットや演出に現れていた。
一方、物語の展開では分かり難かった。その理由は、話のキーワードになっている”ふるふり”の意味合いが最後まで理解出来なかったことである。
ネタバレBOX
舞台セットは、中央通路、上手スペース、下手奥は紗幕で囲まれた別空間のようである。また人が宙に浮く(テレビのCGじゃない、舞台だ!)。舞台後ろから梃子または滑車原理を用いて吊り上げる。その浮遊は幻の世界への誘いのようである。もっとも、この幻の世界は六道の辻のようである。
冒頭、天上か地獄へ行くか、その分岐に立たされた人々(すでに瀕死)が、生前の善行・悪行の数々を勘案して、天上界か人間界より下へ...。今一度のチャンスとして動物に姿を変え、その成り行きを見守る。
一方、人間の世界では主人公・モコ(高柳沙彩サン)を見守る地域の人々。その触れ合いに動物に姿を変えたものたちが触発されて、心温まる交流をする。
そこに、「歌って踊るファンタジーコメディ!」がしっかり観える。
しかし、この物語の核になっている”ふるふり”とは?それは、パンフレットによれば、「森では妖精や不思議な生き物が飛んでいる!空中で闘いも?」あるらしい。この知りたい部分が曖昧で...残念に思った。
超高速大回転ロミオ&ジュリエット
イチニノ
pit北/区域(東京都)
2015/09/22 (火) ~ 2015/09/23 (水)公演終了
満足度★★★
確かに高速回転ではあったが...
シェイクスピアの有名な戯曲「ロミオとジュリエット」をベースに、その物語を今日的にわかり易く観せた公演である。タイトルにある高速回転(上演時間90分)の名のとおり、役者陣は舞台を駆けずり回る。また面白さを増すためであろうか、場面転換(暗転なし)ごとに、次シーンの役柄を決めるクジ引きを行う。インプロの要素を取り入れ、その機転も回転として捉え笑いを誘う。しかし、この試みについて気になるところが...。
ネタバレBOX
目先が変わるので新鮮という良き面はあるが、演じるという顔つきから素(普段)に戻るという瞬間も散見された。pit北/区域というあまり広くない劇場に、顔なじみ(コアファン)が多く観にきているようで、その観客向けの素顔が出ていたと思う。
上演前に舞台上(早着替えのため、衣装・小物具備)にほとんどの役者がおり、観客と談笑している。その客席作りは、通常の最前列(ベンチ)席と舞台の間の通路(幅30cm程度)に座布団を敷いて舞台縁に足をのせる。この劇場は地下2階に相当するところに舞台があるが、その上階(地下1階部分)でも演技をするため、客席最後列は見切りになる。通常の最前列と2列目の境をなくし、2列目の観客は前列席の客と客の間に足を入れる。あまり気持ちよくない。
さて、有名な戯曲であるが、一応梗概は次のとおり。
モンタギュー家のロミオは敵対するキャピュレット家のパーティでジュリエットに出会う。恋に落ちた2人は密かに結婚するが、ロミオは街でのいさかいでジュリエットの従兄弟のティボルトを殺し、追放の命を受ける。親同士が決めた結婚に苦悩するジュリエットは仮死の秘薬を口にし...。
その主筋に小説「走れメロス」、アニメ「風の谷のナウシカ」「もののけ姫」などのジブリ作品を取り込み面白く観せている。
全体としては、有名戯曲をテンポよく今風にアレンジして面白いが、一見客としては馴染めない雰囲気があった。
硝子の途
劇団ヨロタミ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/09/25 (金) ~ 2015/09/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
重いテーマだが...
苛めという負の連鎖、それが原因で罪を犯してしまった17歳の青年。心に傷を負った青年が、17年の歳月をかけて心が緩やかに癒され力強く再生する様を家族や周りの人々との関わりを通じて描いた秀作。劇団ヨロタミ第22回公演、第27回池袋演劇祭参加作品。自分が過去に観たヨロタミ公演の中で一番観応えがあった。
この公演は音楽劇を謳っているが、クラシックの発声でもミュージカルのように、それを主眼に地声で歌ったものでもない。ここでの音楽は市井、日常における喜びや悲しみの感情を歌ったものである。この場面の地声は、個性的で感情表現の幅を広げているが、さらに訴えたい内容をラップで強調する。クラシック発声、ミュージカル発声など、その公演に適した選択が大切であろう。その意味でこの音楽(ラップ含む)の取り入れは、重いテーマの描きとあわせ、前向きに生きるというメッセージを伝えるのに効果的であったと思う。
ネタバレBOX
舞台となるのは”喫茶あけみ”であり、その店内は上手に一段高いカウンター、中央奥が出入り口、観客席側にテーブルセット、下手奥にもテーブルセットと本棚(マンガのみか)。他にマガジンラック、テーブルの上にも小物。ほぼ正面にカレンダーがあり、上手壁にはメニューボードが吊るされている。この2つの小道具が暗転するごとに時間の経過を示す。1998年(主人公・沢田卓弥 役 河嶋健太サン 17歳)、2000年(20歳)、2004年(23歳)、2015年(34歳)と...回想シーンはあるが、実に丁寧に状況説明をしている。
この店内は変わることなく、少し昭和の香りがし、ホッとするような場所。そこでの痛ましい事件(事故)を引き金に、過ちを起こした自分自身のみならず、周囲の人々までも巻き込んでしまう愚かしく怖いこと。被害者、加害者、それに関わった人々の苦しい心情が胸を締め付ける。また苛め、オレオレ詐欺なども絡め、社会性も盛り込む(盛り込み過ぎかも)。
考えたところは、少年法という法制(年齢)のこと。14歳であれば人を殺しても法が守ってくれる、逆に罰があれば抑止力になるという矛盾の思い込み。当時の少年法に一石を投じる場面であろう。
心的面として、主人公は罪と向き合い、それを背負いつつ自分の進むべき途を探した。遠洋漁業を経て心的変化...硝子を磨き、透明にして先を見たい、といった台詞は輝く一言であった。2011年の東日本大震災の復興に自身の生きがいを見つけるというラストシーン。その感動シーンは単に感涙させるだけではなく、重苦しい雰囲気を歌で緩衝させ、明日の希望が見えるようだ(27日のラップは韻〔ライム〕が踏めていたようだ)。
次回公演も楽しみにしております。
公演は9/25、9/27の2回拝見。2回目は最前列で観させていただいたが、帰り際、坂本直季 氏(主人公の父親 沢田康 役 作・演出も担当)から、冒頭シーン(新聞を逆さにして読んでいる)から緊張したと...自分は見巧者ではありません、悪しからず。
落伍者、改。
ラチェットレンチF
南大塚ホール(東京都)
2015/09/26 (土) ~ 2015/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
芸の道...観応え十分
2014年の公演は、劇場_てあとるらぽう であったが、今回は第26回池袋演劇祭優秀賞受賞を祝し南大塚ホールでの上演であった。舞台スペースが広くなったことで、動きも多く取り入れ、躍動感が増したようでもあった。同時に人物像がより鮮明で落伍から落語へ成長する姿...相楽亭爽雲(山口太郎サン)と相楽亭爽太(大春ハルオ サン)の2人に迫力があった。
落語の世界に生きるとは、その芸を全うすることの難しさ、そのためには命をも懸ける厳しさを描く。落語会に名を残したい、極めの演目が古典落語「死神」である。表層的には古典落語と新作落語の対比の中で、その芸に邁進する過程を描いているが、その姿を通して人間の生き様を見るようである。
ネタバレBOX
舞台セットは、舞台奥を4~5段高い2層にし、上手は客席に、下手は袖口に向けてそれぞれ階段が設けられている。そしてそこには落語の演目を書いた半紙が重ねるように貼ってある。舞台中央には高座を設けている。
物語は、咽頭がんで噺家としての命、声を失うとしている。さらには自身の命を懸けて芸を極めようとする相楽亭爽雲。その生き様は落語界では鼻つまみもので、残った弟子も2人のみ。余命幾ばくもないが、後世に名を残したい。その噺は不思議と力強く、魅力に満ちている。
そのライバルとして新作落語の鉢巻家ろく紋(山﨑巌サン)である。この現在の2人の相克を横糸、若い時に愛した女・小百合(南口奈々絵サン)... 親友との鞘当で、図らずも身を引くことになり、その後小百合と親友との間に生まれた娘を引き取り面倒をみる。こちらを時代軸とした縦糸とし、糸が織り成す見事な着物(物語)が出来ている。そこに落語に因んだ「品川心中」をイメージするような話を紋様として織り込まれ、濃密で重厚な物語が展開する。観客は弟子の相楽亭爽太の寄席を通して師匠の心を聞くことになる。
古典落語、新作落語の違い...犬猿の仲といわれた噺家2人が互いに認め合うが、決して妥協しない芸筋。息苦しくなるような台詞の応酬、一方色恋に見せる艶やかさと寂寥に心打たれる場面も秀逸である。
桎梏に捉われそうな世界を自由に泳ぐ大魚を大舞台で観た。
次回公演も楽しみにしております。
回転木馬は歓びの夢をみる ~未解決事件の終幕~
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パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)
2015/09/25 (金) ~ 2015/09/29 (火)公演終了
満足度★★★
テンポよく飽きない
それほど広くない絵空箱の空間が、ベートーヴェンの交響曲(第九番)を演奏している音楽ホールのように感じた。もちろん、その音楽を聴かせているという効果もあろうが、舞台・客席の組み方がよかった。このBarに併設されたスペースで行っている芝居を何回も観にきているが、その客席作りは、囲む又は一方向側かにしても、多くは雛壇であった。今回は段差をなくして、客席はフラットである。逆に演じる舞台は、高低差のある階段状になっており、その一段高くなった所で指揮を行う。それは憑依している人物であるが...。この実在指揮者と憑依の幻覚(厳格)指揮者の投影から同化へ、その鬼気迫る姿が印象的である。しかし...
(上演70分)
ネタバレBOX
この人物・松山コウスケ(町屋圭祐サン)の表裏一体と化している、その原因・要因が理解し難い。一応、同一人物における二面性(二重人格)として捉えたが、ラストは清浄されたような姿...どのようにして自己変革を成し得たのか、それまでの自信に溢れていた人格が簡単に変わるのかという疑問も残った。
この物語で松本清張の推理小説「砂の器」(1974年、野村芳太郎監督で映画化)を思い出した。15年前の一家惨殺事件...その犯行の隠蔽、富豪令嬢との婚約、栄誉と欲望など人が内包している醜悪な面を描く。本作では、人格形成される過程が、過度な期待、裏切り、誤解などの要因が散りばめられており、納得性も十分ある。疑問もあるが、ラストの心情は悔悟であろうか。
気になったのは、この物語を担う役者陣である。演技は皆熱演であり観応えがあったが、特に松山コウスケ、アイツ(蛸谷歩美サン)の2人が目立つ。演技のバランスが悪いというほどではないが。回転木馬の如く心地良い(酔い)テンポは、最後まで飽きさせない。
次回公演も期待しております。
人魚姫
Project Nyx
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2015/09/18 (金) ~ 2015/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
ファンタジーな世界...見事
寺山修司の世界観をしっかり観せているが、その耽美・幻惑という雰囲気は少し抑えられているようだ。もちろんデフォルメオブジェや象徴する小物は登場する。しかし、他の寺山作品で観られるような、比喩的な表現やその置物自体にあまり意味が感じられなかった。
逆に、舞台は華麗にしてファンタジー色の濃い、そして誰にもわかり易い”愛と悲しみの世界”を描いていた。
冒頭、舞台上手の壁が回転し、口上を述べる人物が「人魚姫」の台本を見せ、これからの物語は劇中創作を示す。
この舞台の最大の魅力は、脚本の面白いさはもちろん、その雰囲気であろう。それを形成しているのが、衣装、照明・音楽という技術。特に音楽は生演奏であり、その音色は東京芸術劇場(シアターウエスト)内に心地良く響く。
また、役者陣...特に人魚姫の新星シンガー青野沙穂、その恋焦がれる相手、元宝塚歌劇団男役スター・悠未ひろ の二人は抜群の存在感を示す(情緒纏綿)。
その物語は...。
ネタバレBOX
梗概は、人魚の姫は15歳の誕生日に海上で、船にいる人間の王子を目にする。嵐に遭い難破した船から溺死寸前の王子を救い出した人魚姫は、王子に恋心を抱く。人魚姫は海の魔女の家を訪れ、声と引き換えに尻尾を人間の足に変える飲み薬を貰う。その時に、「もし王子が他の娘と結婚すれば、姫は海の泡となって消えてしまう」と警告を受ける。王子と一緒に御殿で暮らせるようになった人魚姫であったが、声を失い王子を救った出来事を話せず、王子は人魚姫が命の恩人だと気付かない。
王子は親の決めた許婚との結婚が決まり、姫の姉たちが、髪と引き換えに海の魔女に貰った短剣を差し出し、王子の流した血で人魚の姿に戻れるという魔女の伝言を伝える。人魚姫は愛する王子を殺せずに死を選び、海に身を投げて泡に姿を変えた。
物語は知られた内容通りであるが、その観せ方がファンタジックで美しく浮遊するような演出が印象深い。本筋の表層に観える”一途な(悲)恋”を超越して、普遍的な”真心の尊さ”に感動する。そこには「人魚姫」という空想上の生き物を通して、生きているもの全てに向けてのメッセージが込められているようだ。
次回公演も楽しみにしております。
OZ♀4♂3
チームジャックちゃん
ザ・ポケット(東京都)
2015/09/23 (水) ~ 2015/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
ドロシー旅立まで 【道チーム】
「オズの魔法使い」という有名な童話...ドロシーが旅立つ13年前に遡る物語である。
大胆な発想と豊かな感受性で紡ぎだす、ファンタジーの世界観は観応えがあった。しかし、そのファンタジーという語感からイメージする浮揚感とは大きく違い、どちらかと言えば重厚な人間ドラマのようであった。
また舞台美術が素晴らしく、この物語をわかり易く観せる最大の効果を発揮していたと思う。
上演時間2時間15分(途中休憩なし)。
ネタバレBOX
舞台セットは、中央に2階相当の高さまで2並行(繋ぎ)の階段があり、場面によってそれが斜め左右に開く。舞台中央にも出入り口があり、2階部・1階部から役者が出入りする。さらに中央客席側にも舞台の一部を張り出(盆のよう)させ、占い(祈祷)祭壇をイメージさせる。スモークなど幻術・幻想場面の演出を魅せる。
さて、「オズの魔法使い」原話は、アメリカ・カンザス州に暮らす少女ドロシー(Dorothy)は竜巻に家ごと巻き込まれて、飼い犬のトトと共に不思議な「オズの国」へと飛ばされてしまう。途中で脳の無いカカシ・心の無いブリキの木こり・臆病なライオンと出会い、それぞれの願いを叶えてもらうため「エメラルドの都」にいるという大魔法使いの「オズ」に会いに行く。
それに先立つ話であり、原話にどう結びつけるか、その物語の構成とそれをしっかり印象付ける演出は見事。さらには、それを体現する役者の演技力も感情移入してしまうほどである。物語の展開はそれほど難しくないが、当日パンフは見開きオールカラーで、人物相関図もあるので、上演前に観ておくのもよいだろう。そして本作でオズは、東の国エメラルドの宰相、同じく宰相(のち南の魔女)、そして東の国の王妃の3人を中心に物語はエメラルド国における権力闘争というファンタジーとはかけ離れた人間臭いドラマになっている。しかしその演出・雰囲気は夢...そのギャップも面白い。
この団体「チームジャックちゃん」は、多くの人に親しまれてきた童話をベースに大胆な構想と演出で「誰もが知っている物語の見たこともない姿」を描き出す、ことを目指しているという。本公演は本当に原話と連動してループしている、そんな楽しめる作品になっている。
その描く本質は、壮大なロマン(政治的思惑)の中に、しっかり人間の本質を描き込んでいる。それは綺麗事だけではなく、嫉妬・裏切・羨望などの醜悪な面も見える。それでもその根底にあるのは人間愛である。その結晶として生まれたのがドロシー...彼女の冒険の旅の始まりは、この公演・団体の飛躍の始まりでもあろう。
次回公演も楽しみにしております。
MAMORU
モーレツカンパニー
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2015/09/16 (水) ~ 2015/09/22 (火)公演終了
満足度★★★★
笑い!
劇団としては、身近な題材…自虐ネタのようであった。しかし、それでもしっかり観させる力のあるコメディであり、笑いとホロッとさせる常道の芝居は素晴らしかった。
何となく、映画「ロボジー」(2012年・矢口史靖監督)を想起した。
そのMAMORUとは...。
ネタバレBOX
主人公の名前という単純なもの。もっとも物語もわかり易いが、その笑いの連続の中に人間...家庭人としての哀しさも描く秀作。素晴らしい公演の中には光る...印象に残る台詞がある。物事は”真剣に本気でやっていないから続けるか辞めるか判断が出来ない。納得するところまで自分を奮い立たせ、その結果判断が出来ると思う”そんな趣旨の言葉は心に響いた。
梗概(説明から)は、主人公・久留島守、職業は役者。 仕事は無いが、配偶者有り。 ひょんな事からスターとなる。 しかし、役者・久留島守は無名のままだった。 何故ならスターになったのは彼の外側。 〝ゆるキャラ〟ならぬ〝ゆるロボ〟のMAMORU君として第二の人生を送る事となるが...。
その言葉を体現するような疾走 ユルロボ・コメディは観応えがあった。ストーリー展開は予定調和...安心感があるものであるが、けっして飽きさせない。表層的、平面的な描き方であるが、芝居を多くの観客に観て楽しんでもらいたいという思いが伝わる。その姿勢の表れがこの展開になっている。
また、キャストの演技はしっかりキャラを立ち上げ、軽妙なセリフのやり取りは見事。そしてキャスト陣の演技力もバランスが良く楽しめた。
少し気になったのが、冒頭の映像シーンである。キャスト紹介はわかるが長い。もう少しコンパクトにしたほうが良い。もう1点はラストへの収束シーン...映像フリップで説明し、劇中劇にしていた。しかし、それまでの芝居の雰囲気で出していた好感と余韻を失なってしまう。出来れば冒頭の映像シーンのカットとあわせてラストシーンの充実を図って欲しいところである。
次回公演を楽しみにしております。