ksdの観てきた!クチコミ一覧

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花樟の女

花樟の女

Pカンパニー

座・高円寺1(東京都)

2021/03/03 (水) ~ 2021/03/07 (日)公演終了

 上演時間は2時間30分(10分休憩含)。

 当日パンフに入っている『花樟の女』関連
台湾の歴史解説の資料は、前もって目を通しておくと
台湾の歴史をあまり知らない者にも観劇中の助けに
なるよう、よくまとめられている。ただ、細かいことだが、
資料は事件等が西暦で表記され、舞台では各場の時代が
元号(年号)で映されるので、その対応付けが少し面倒かも。

鶏

TinT!

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2020/12/09 (水) ~ 2020/12/13 (日)公演終了

上演時間は、約1時間45分(休憩無)。

エーリヒ・ケストナー〜消された名前〜

エーリヒ・ケストナー〜消された名前〜

劇団印象-indian elephant-

駅前劇場(東京都)

2020/12/09 (水) ~ 2020/12/13 (日)公演終了

 少ないが歌もあり、人間を明るい面から描こうとする
作者の温かい眼差しと人物愛に溢れた評伝劇。

 ただ、ケストナーは焚書や発禁処分にあっても
なぜあそこまで亡命を拒み国内に留まり続けたのか
といったことなどを含め、社会の矛盾や混沌の中で
生きる人間の内面、その奥深くに沈んでいるものの
描写やあぶりだしが弱い印象もあり。

ミセス・クライン Mrs KLEIN

ミセス・クライン Mrs KLEIN

風姿花伝プロデュース

シアター風姿花伝(東京都)

2020/12/04 (金) ~ 2020/12/20 (日)公演終了

 精神分析がらみの海外戯曲の作品は、
DULL-COLORED POP プロデュースの
『Freud's Last Session』(公演名
『最後の精神分析-フロイトvsルイス-』)以来久々。

 夢とはレム睡眠中に脳が活動するためにおこる
一種の幻覚に過ぎず、夢の内容、ストーリーの
分析自体には神経科学的、生理学的にあまり意味はない
といってしまうと身も蓋もないけれども、それでも、
岡目八目ではないが、腕利きでも、自分で自分自身や
その家族を対象として冷徹に客観的に徹底して
分析し尽くすことの、なんとハードルの高い
やっかいなことか。
一流は、報酬も一流。

 ちなみに、細かいことで聴き間違いなら大変申し訳ないが、
ハンガリーの首都は、
ブタペストorブダペスト?

その男、ピッグテイル

その男、ピッグテイル

あうるすぽっと

あうるすぽっと(東京都)

2020/11/22 (日) ~ 2020/11/29 (日)公演終了

実演鑑賞

 上演時間は約2時間(休憩無)。

 パブリックシアターが主催ということで、
細かいところでいろいろあるかもしれないが、
劇団☆新感線のいのうえ歌舞伎、2.5次元系の時代物、
劇団そとばこまちのエンターテインメント時代劇
シリーズといったあたりの作風に近いところもあり、
意外と抵抗感少なく観劇できる作品。

 プロジェクションマッピングや高さのある多面的な
廻り舞台セットを駆使した疾走感、躍動感溢れる演出が
特徴的。ただ、補助情報として舞台最奥のスクリーンに
たびたび映し出される字幕の流れが、位置的に
この中央の舞台セットに遮られて、特に前方席からは、
非常に観づらいというかかなり見えなくなっているのは
マイナス。
 また、高さのある多面的な廻り舞台を駆使した
演出手法は、つい先日まで明治座で上演されていた
『恋、燃ゆる。』のそれと相通ずるものがある。

 平家落人末裔のウツギが大久保利通に語る、
先祖から伝承されている言葉
「こんまことん刀は護身刀。
こんまことん刀持てるは武士(もののふ)なれど、
武士は心魂で戦うがすべて。
強き武士なるは民を殺めず、
強き武士なるは民を慈しむべし。」
が心に残る。

 『その男、ピッグテイル』という公演名は、
時代背景からみて池波正太郎の小説『その男』をかなり
意識しているような気も。ちなみに、『その男』は
最近では、2009年に芸劇で鈴木聡 脚本 ラサール石井 演出、
上川隆也主演で舞台化上演されている。

真夏の夜の夢

真夏の夜の夢

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2020/10/15 (木) ~ 2020/11/01 (日)公演終了

 定時開演。上演時間は約1時間55分(休憩無)。

 野田作品の持ち味である、小気味よい台詞のやり取り、
疾走感、躍動感といったものはやや抑制気味にして、
スケール感を操り舞台空間全体を活用する演出が特徴的。
ただ、(白塗りも含め)演出者の好みなのか座り芝居が
多用されており、石畳模様の座席配置とはいえ、
特に傾斜のほとんどない前方席の方は観づらいシーンが
多少あるかもしれない。

 知られざる森や妖精たちの衣装がビニール系素材?で
作られているのもユニーク(SPAC版では確か新聞紙で
作られていた)。

 今井さん扮する悪魔メフィストの存在感が際立つ。
発することなく飲み込んだコトバにこそ、その人間の
本心が隠れている。

All My Sons

All My Sons

serial number(風琴工房改め)

シアタートラム(東京都)

2020/10/01 (木) ~ 2020/10/11 (日)公演終了

 上演時間は約2時間30分(10分休憩含む)。

 『野鴨』の影響が色濃く出ている、リアリズム劇作品。
最近では、2020年2月に、同作品が俳優座劇場プロデュースで、
『彼らもまた、わが息子』の公演名で新訳上演されている。

 つい先日まで赤坂レッドシアターで、
PLAY/GROUND Creationが上演していた
『BETRAYAL 背信』とは好対照。

初萩ノ花

初萩ノ花

演劇集団円

北とぴあ つつじホール(東京都)

2020/09/19 (土) ~ 2020/09/20 (日)公演終了

 松田さんの長崎三部作、マキノさんの『高き彼物』、
早船さんの『鳥瞰図』、蓬莱さんの『まほろば』などの
作品の流れを汲む、畳に座卓・ちゃぶ台の、茶の間を
舞台にした、家族の絆や葛藤を丁寧に描いている会話劇。

 笑いの要素に加え、あまり多くが語られない台詞(ただ、
劇団俳優座が公演中の『心の嘘(A Lie of the Mind)』のレベルまで
脚本に書かれていないことが多くなってくると、観る側として
やっかいで手強い作品になってしまうが)だからこそ
大切になってくる時間の移ろい、季節感や繊細さの表現に
一段と磨きがかかり、6年前のステージ円での初演の時以上に
作品に輝きと洗練さが増している感あり。

 姪の敦子との会話の中での、茂夫の台詞
「...触れちゃいけないことに触れねえとそれはそれで
大事なものは守れるのかもしれないけれど、それはそれで
人とのつながりが薄くなるんだなーなんて思ったんだ。
鈍感さってのは悪いことばっかりじゃないんだな。まあ、
時と場合によるんだけどな。ほらよ、俺たちは繊細だから。...」
が心に残る。

無畏

無畏

劇団チョコレートケーキ

駅前劇場(東京都)

2020/07/31 (金) ~ 2020/08/10 (月)公演終了

 人の心の闇に潜む本性にぐっと迫り、
その複雑な多面性を深く鋭く突いている作品。

 松井石根と上室弁護士との間で行われる、南京戦での
軍紀崩壊による惨劇についての最後の検証問答の場面
は圧巻。

 ただ、主人公の松井石根へ焦点を合わせ過ぎた分、
まわりの人物像がぼやけ平板的になっていたような。
人物造形描写の点では共焦点多焦点というより単焦点の感あり。

愛する母、マリの肖像

愛する母、マリの肖像

T-works

赤坂RED/THEATER(東京都)

2020/03/11 (水) ~ 2020/03/15 (日)公演終了

 上演時間は休憩無しで約1時間50分。

 ジェンダーや国籍による差別や偏見に毅然と
立ち向かい科学の真理を真摯に探究した女性科学者を核に
その周りにいた者たちも含めた姿を、彼らの回想を通して、
観客との適度な距離感で、活写している評伝劇。
 『コペンハーゲン』、『フォトグラフ51』、
『インコグニート』などの海外戯曲にみられる、専門性に
ぐっと踏み込むことで生まれてくる深みや説得力という点では
やや弱く、また、すでにしっかりした伝記などの資料を読み
造詣が深い方には内容的に多少物足りないかもしれないが、
ラジウム研究所(キュリー研究所)に留学した最初の日本人科学者
であり、放射線研究での被爆障害で亡くなった山田延男さんを
登場させていたのは好印象。

 趣きはやや異なるが、科学者の有り様や科学の光と影も
描かれていた作品ということで、東京国際フォーラムの
こけら落とし公演の1つとして上演された『東京原子核クラブ』が
なんとなく思い出された。

 ちなみに、量子力学が完成するのが1920年代後半、
ハーン、シュトラスマン、マイトナー、フリッシュによる
(特にウラン235)原子核での核分裂反応の存在の発見が1938年、
フランスのジョリオ=キュリー、アメリカでのフェルミ、
シラードらのグループの研究で、それが連鎖反応を可能
とすること、その際に多大なエネルギーが解放されることが
見出されたのが1939年(第二次世界大戦勃発)。

燦々

燦々

てがみ座

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2020/02/07 (金) ~ 2020/02/16 (日)公演終了

 額縁舞台での公演ということもあり、全体として
視覚というか「観る」ことを強く意識したつくりの
舞台作品。
 絵師ならぬ演劇人達の覚悟、心意気、気概、
飽くなき探求心、進取の精神などどこまで観取できるか、
チコちゃんの決めゼリフ
「ボーっと生きてんじゃねーよ!」
ではないが、
「ボーっと見てんじゃねーよ!」
と、観る側の器量、鑑賞眼が試されているような気も。

 ステージのスケールダウンに伴い以前の躍動感は
やや薄れてはいるものの、コンパクトになったことで
人々の何かに懸ける溢れんばかりの思いや人の営みの
もつ熱量のようなものがぎゅっと集約され煌きを
放ちながら伝わってくる。
 江戸のレンブラントとも称される応為を扱っていることも
あって、場面ごとの構図や照明は緻密で繊細。より丹念な
人物造形と内面描写の掘り下げで、お栄(応為)の描画に懸ける
一途さや背負った宿命と懸命に向き合い格闘する姿などを
ぐっと浮かび上がらせていたのも好印象。

エブリ・ブリリアント・シング 【高知公演中止(2月29日(土)・3月 1日(日))】

エブリ・ブリリアント・シング 【高知公演中止(2月29日(土)・3月 1日(日))】

東京芸術劇場/新潟市民芸術文化会館

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2020/01/25 (土) ~ 2020/02/05 (水)公演終了

 正味の上演時間約1時間10分(上演スタイルから
エブリ・ブリリアント・ステージ?ごとに上演時間は
多少変動する可能性あり)。

 ほぼタイトル通りというか、途中いろいろあっても、
人生や人の営みを前向きに肯定的に捉え、観る者を鼓舞、
encourageしてくれる作品。
 緻密で丁寧な指示誘導フォロー付きだが観客参加の舞台
ということで、時折劇の一部に織り込まれる、出演者と
(腕に覚えのあるとか素直なとかいろいろな)観客達との
やり取りやその反応が醸し出す場の雰囲気を交えた展開を
観る側、観られる側の垣根を超えて享受してもらう、
単に鑑賞するだけにとどまらず演劇を身近なものとして
より能動的に体感実感してもらうことがやはり大きな売りの一つか。
 今公演はステージごとにやや異なった様相を見せるはず?で、
まさに生き物である舞台の、いつも段取り通りに運ぶとは
限らない意外性や一回性の面がいくらか際立ってみられる
かもしれない。

 観客参加型でプレビュー公演の初日でもあり、内容的にも
最初のセッティングにやや時間がかかることはわかる。
おそらく入念にリハーサルやゲネプロを行い、ある程度感触は
つかんでいるはずだが、それでも何の説明もなく開始時刻10分遅れは
押し過ぎで、プレビューといえども定刻に来ているお客さんに
対して失礼。内容以前に、制作や演出担当者はこのあたりを
もう少し考慮反省すべきで、インフルエンザ等感染症対策も含め
今後の対応に期待。

雉はじめて鳴く

雉はじめて鳴く

劇団俳優座

俳優座劇場(東京都)

2020/01/10 (金) ~ 2020/01/19 (日)公演終了

 ハグで始まり時を隔ててハグで終わる、
オープニングとエンディングの整った形式美と
その両シーンで流れる同じマックス・リヒター?の
郷愁を誘う曲の旋律との相性抜群の作品。

 舞台セットのムーブメントの諸相が、舞台上の
人物たちの振舞いと連動してその内面や人間関係の
繋がりのデリケートな揺れ動きの表出に寄与している
だけでなく、その揺れを増幅して後方の観客にも
伝えようとするアンプ的な役割を果たしている感もあり。
また、ほとんど間を置かず連続接続する場面転換など
『インコグニート』で魅せてくれたスタイリッシュな
演出術の片鱗がうかがえるのも好印象。

マクベス

マクベス

DULL-COLORED POP

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2019/12/12 (木) ~ 2019/12/22 (日)公演終了

 マクベスの世界を借りた、似非マクベス作品?
単なる勧善懲悪の否定を超えた枠組みで再構築された
贋作・マクベスか。
このままでいいのか、いけないのか、
悲劇なのか、喜劇なのか、
それが問題。

 『蝶の力学 警視庁殺人分析班』に出てくる
バタフライ効果ではないが、ほんの些細にみえる
(設定も含めた)改変(改ざん、misdirection)がそれを
取り繕うためにさらなる改変を呼び、本来の道筋
(筋書き、公文書)から外れ、やがて(オリジナルとは
かけ離れた)想定外のカタストロフィ?が出現する。
ある人物が妄想の中で紡ぎ出している物語とみれば、
いいも悪いも等価(同値)、ボーダレス状態ということで、
成り立たないわけでもない(もっとも今回は、
バタフライ効果というよりは「風が吹けば桶屋が儲かる」
かもしれないが)。

 劇構造的には、パルコ・プロデュースで何年か前に
佐々木蔵之介主演で上演されたNTS版『マクベス』に
なにかしら近いものを覚える。

 どんな人であれ、些細なきっかけで心に魔が差す瞬間があり、
特に価値の混沌化された世界にあっては、風向き一つで
どう人生転がるかわからないといったあたりを
物語の在り様自体が転変する様になぞらえて反語的に
アイロニカルに提示した作品、趣向を凝らした書替狂言としては
悪くないのかもしれない。ただ、演出面にムラがあり
既視感のあるものが多く、求めすぎは承知の上でいうと、
例えば、魔女たち登場のシーンでも、『朧の森に棲む鬼』の
オボロたち登場の場面ほどの趣向がないと、魔女たちの
仕掛けた世界に入り込んだということがぐっと伝わってこない。
これなら、訳が分からないところは多いが、同じ松岡さんの
翻訳をもとにしたadaptation『メタルマクベス』の方がまだよいか。
マクベス斬り!... 残念!!

インコグニート

インコグニート

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2019/11/12 (火) ~ 2019/11/24 (日)公演終了

 記憶のプロセス
  記銘 encoding
  保持 storing
  想起 retrieving
になぞらえて物語が展開する、a really intriguing and electrifying productionで、
発散と収束、その重ね合わせの狭間を絶妙なタイミングで揺れ動く
バランス感が抜群。

 舞台天井付近の美術は、多数のニューロン、グリアなどから構成される、
また、"創発(emergence)"の一例でもある、脳の複雑な神経回路
ネットワーク、コネクトームを連想させる。場面ごとの照明の色調に応じて
美術のきらめきが変化する様は、ニューロンが至る所で発火し
状態が時々刻々変化している今まさに活動中の脳のイメージに重なる。
その下で、脳が次々とつくり出している内面世界をあたかも
左右の外からリアルタイムに覗き見ているかのような幻覚さえ
抱かせる舞台空間による雰囲気づくりも好印象。

 David Eagleman『Incognito The Secret Lives of the Brain』
(デイヴィッド・イーグルマン著『意識は傍観者である』
で早川書房から邦訳が出ている)
 養老孟司 著 『唯脳論』(ちくま書房)
などが観劇前でも後でも参考になるかもしれない。

 ついでながら、serendipityもやや意識してか、劇中で何度か出てくる
「幸運は備えある者を贔屓する」
は、ルイ・パスツールのものとされる言葉のことか。

スリーウインターズ

スリーウインターズ

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2019/09/03 (火) ~ 2019/09/15 (日)公演終了

 3つの時代が非時系列的に展開しても混乱させない
確かな構成力に加えなんらかの思想や押しつけがましい
メッセージ色の希薄さもあり、素直に各時代の息吹を
感じ取ることができる、ある女系ファミリーのいわば
紀伝スタイルの物語。
 また、ローズの出自がらみの場面などによく表れているが、
1から10まで説明せず、観る側の想像力や洞察力に期待する
手法が特徴的な作品でもあり(現在シアターコクーンで上演中の、
蜷川張りの演出が際立つ『アジアの女』もミニマムのセリフで
展開させるあたりは近いものがある)、この点では、劇中で
丁寧に説明謎解きをしてくれる、現在世田谷で公演中の
『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』とは好対照
(いささかふがいないダメ男たちと食えないしたたかな女たち
との取り合わせというところは似ているが)。

 もちろん、人物造形の巧さも含め作劇の妙で普通に鑑賞しても
味わいのある作りの作品になってはいるが、ただ、舞台がなじみの
薄いクロアチアということで、クロアチアを含め旧ユーゴスラヴィアの
地理や歴史的背景を(ネットでもあるいは例えば、柴宜弘さんの
『図説 バルカンの歴史』といった書籍でも目を通して)前もって
確認しておけば、作品のみえ方が格段に違ってくるはず。
 歴史を知る上でノンフィクションも含め歴史小説や映画などを
参考にするのは好ましいとはいえないが、入り口としてなら今の場合、
坂口尚さんの、第二次世界大戦下のユーゴスラヴィアを舞台にした作品
『石の花』
もある(1980年にヨシップ・ブロズ・チトーがなくなり、
1989年の「ベルリンの壁」崩壊、1991年にユーゴスラヴィア内戦が
はじまる間の、1983年から1986年まで連載されたが、
この時代にすでに、多民族国家ユーゴスラヴィアに世界の縮図を
みてとり『石の花』を描いていた作者の慧眼には驚嘆)。
 旧ユーゴ関連の演劇作品では、この4月に上演された、演劇ユニット
OVa9 第1回公演で、ユーゴスラヴィア崩壊後、1995年頃のボスニアの
難民キャンプを舞台に傷を負った女性たちを描いた、アメリカの
女性劇作家イヴ・エンスラーの
『Necessary Targets ~ボスニアに咲く花~』
が記憶に新しい。

骨と十字架

骨と十字架

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2019/07/06 (土) ~ 2019/07/28 (日)公演終了

 プレビュー公演を観劇。

 作品としては、丁寧な展開の分やや冗長に流れエンディングも
時間切れで尻切れトンボの感は否めないが、神と人との関係性の逆転や
将来のオメガ点の萌芽などにまで触れられていたのは好印象。

 ただ、進化をめぐる学問と信仰、科学と宗教(神学)とのあり方を
あそこまで取り上げるのであれば、一方向直進的な進化のイメージだけでなく、
求めすぎは承知の上で、より現代的な広い観点から仮想的にでも例えば、
ウィルソン、ドーキンス、グールド、スミスらの思想(宗教観、進化観など)
をも取り込みさらに踏み込んだ劇論が繰り広げられるのを観てみたかった。

ビューティフルワールド

ビューティフルワールド

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/06/07 (金) ~ 2019/06/23 (日)公演終了

 人物造形などにややステレオタイプな感はあるものの
強靭な構成力が光る作品で、どことなく今風なチェーホフっぽい
雰囲気があったり、ONEOR8、ハイバイなどの作風に通じる
ところもあり、この作品のタイトルと観劇内容から、
「アンナ・カレーニナの原則」や「いいは悪いで悪いはいい」
「きれいは汚い、汚いはきれい」のセリフなどを想起した。

 人はそれぞれが多かれ少なかれ不器用さ、弱さ、狡賢さ、
攻撃性、嫉妬、偏見、欺瞞、あさましさなどいろいろ
やっかいな面を抱え生きているそれ自体俗物的で
どうしようもない自己矛盾のかたまりかもしれないが、
それらすべてをひっくるめて人に向ける作者の眼差しが
鋭さだけでなく温かさ、優しさ、愛おしさにも溢れていた作品。

ネタバレBOX

 特に、ドロドロの人間関係が次々と露呈し、座長の西條さん
扮する、日頃はglobeを愛聴し寡黙に男は覚悟などと渋く
決めていた高倉健ならぬ高倉健太が、こと女性関係にかけては
不器用どころか実はめちゃくちゃ器用だったという覚悟が足りぬ
とんでもない事実が発覚する第二幕は、衝撃的!
ヘンリー五世

ヘンリー五世

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2019/02/08 (金) ~ 2019/02/24 (日)公演終了

 取っつきにくいシェイクスピアの史劇を多くの観客にできる限り
わかりやすく伝えようと苦心惨憺されたあとが随所に窺われ、
上演場所がさいたまということもあってか大衆演劇張りのご当地愛
にも溢れていた舞台作品。

 ただ、ヘンリーがアジンコートでの戦いに臨む前に行う演説
(聖クリスピンの祭日の演説)の件などはほとんど...。ある意味、
清々しいといえなくもないが、それでもやはり、3時間を超える
上演時間に対して原戯曲の取捨選択というか上演台本の構成バランス
がどうも...。

ウィルを待ちながら

ウィルを待ちながら

Kawai Project

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/07/04 (水) ~ 2018/07/18 (水)公演終了

 タカアンドハルのお二人が深みのある演技で魅せていた分、
作兼演出者が自らの(本公演のサブタイトル自体が次回公演とのつながりを
示しているがその次回公演などの宣伝も含め)博識、趣味趣向、遊び心など
あれもこれもと盛り込み欲張りすぎたことでかえって、作り手側と観る側との
乖離が際立つつくりになってしまった作品という印象。
 ただ、最後の、本棚崩しの演出は、既視感はあるとはいえ、見応えあり
(裏方さんのご苦労に感謝)。

 このプロジェクトも、こちらが観慣れてきたということもあり、
回を重ねる度にどこかdecliningの感は否めず。次回公演『お気に召すまま』
での巻き返しに期待。

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