人物造形などにややステレオタイプな感はあるものの
強靭な構成力が光る作品で、どことなく今風なチェーホフっぽい
雰囲気があったり、ONEOR8、ハイバイなどの作風に通じる
ところもあり、この作品のタイトルと観劇内容から、
「アンナ・カレーニナの原則」や「いいは悪いで悪いはいい」
「きれいは汚い、汚いはきれい」のセリフなどを想起した。
人はそれぞれが多かれ少なかれ不器用さ、弱さ、狡賢さ、
攻撃性、嫉妬、偏見、欺瞞、あさましさなどいろいろ
やっかいな面を抱え生きているそれ自体俗物的で
どうしようもない自己矛盾のかたまりかもしれないが、
それらすべてをひっくるめて人に向ける作者の眼差しが
鋭さだけでなく温かさ、優しさ、愛おしさにも溢れていた作品。