松田さんの長崎三部作、マキノさんの『高き彼物』、
早船さんの『鳥瞰図』、蓬莱さんの『まほろば』などの
作品の流れを汲む、畳に座卓・ちゃぶ台の、茶の間を
舞台にした、家族の絆や葛藤を丁寧に描いている会話劇。
笑いの要素に加え、あまり多くが語られない台詞(ただ、
劇団俳優座が公演中の『心の嘘(A Lie of the Mind)』のレベルまで
脚本に書かれていないことが多くなってくると、観る側として
やっかいで手強い作品になってしまうが)だからこそ
大切になってくる時間の移ろい、季節感や繊細さの表現に
一段と磨きがかかり、6年前のステージ円での初演の時以上に
作品に輝きと洗練さが増している感あり。
姪の敦子との会話の中での、茂夫の台詞
「...触れちゃいけないことに触れねえとそれはそれで
大事なものは守れるのかもしれないけれど、それはそれで
人とのつながりが薄くなるんだなーなんて思ったんだ。
鈍感さってのは悪いことばっかりじゃないんだな。まあ、
時と場合によるんだけどな。ほらよ、俺たちは繊細だから。...」
が心に残る。