上演時間は休憩無しで約1時間50分。
ジェンダーや国籍による差別や偏見に毅然と
立ち向かい科学の真理を真摯に探究した女性科学者を核に
その周りにいた者たちも含めた姿を、彼らの回想を通して、
観客との適度な距離感で、活写している評伝劇。
『コペンハーゲン』、『フォトグラフ51』、
『インコグニート』などの海外戯曲にみられる、専門性に
ぐっと踏み込むことで生まれてくる深みや説得力という点では
やや弱く、また、すでにしっかりした伝記などの資料を読み
造詣が深い方には内容的に多少物足りないかもしれないが、
ラジウム研究所(キュリー研究所)に留学した最初の日本人科学者
であり、放射線研究での被爆障害で亡くなった山田延男さんを
登場させていたのは好印象。
趣きはやや異なるが、科学者の有り様や科学の光と影も
描かれていた作品ということで、東京国際フォーラムの
こけら落とし公演の1つとして上演された『東京原子核クラブ』が
なんとなく思い出された。
ちなみに、量子力学が完成するのが1920年代後半、
ハーン、シュトラスマン、マイトナー、フリッシュによる
(特にウラン235)原子核での核分裂反応の存在の発見が1938年、
フランスのジョリオ=キュリー、アメリカでのフェルミ、
シラードらのグループの研究で、それが連鎖反応を可能
とすること、その際に多大なエネルギーが解放されることが
見出されたのが1939年(第二次世界大戦勃発)。