ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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平和な時代に生まれて-終わりなき道の標たち-

平和な時代に生まれて-終わりなき道の標たち-

九十九ジャンクション

小劇場 楽園(東京都)

2016/06/15 (水) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★

なんだにゃ~~~~~~~~~~~っ
(追記後送)

ネタバレBOX

  いい年をして引用ばかりしている馬鹿、その上で重箱の隅をつつくことで得意になるのもこれらイマジネーションの根本を認識する術を根本的に欠いた馬鹿共の得意とする所であり、この馬鹿に追随する更なる馬鹿共が、嘘を蔓延らせる温床なのである。彼らは、燃え盛る炎に喜んで飛び込む虫の如く、本能はあっても知性を残酷なまでに欠如させたヒトの形をした愚物である。現在、この植民地に蔓延るのはこのような愚物であり、エセである。
今作は、このような呆れ果てた世の中に、活を入れるべく立ち上がってきた作品とすることができよう。Noblesse obligeという表現が今作に一度だけ登場する。植民地に欠けている最も大切で普遍的な概念である。主人公たちが結成する政党の初代党首を務めた佐久間 修造の言葉の中に在った訳だが、佐久間は象山をベースにしているのは明らかだろう。(佐久間 象山と聞いて分からないヒトは勉強が足りない、もっと勉強もすべし。ところで、勉強って遊ぶことだよにゃんちって)
令嬢ジュリー

令嬢ジュリー

劇団螺船企画公演

演劇スタジオB(明治大学駿河台校舎14号館プレハブ棟) (東京都)

2016/06/15 (水) ~ 2016/06/18 (土)公演終了

満足度★★

う~む
 今作を今、掛ける意味が分からない。時代設定も場所も曖昧で、ジュリーが本当にエキセントリックなのかどうか、作品に描かれたレベルでは客観化できない。これは大変な問題である。自他の区別をつけることが、演出家にできていないことが明らかだからである。
 役者陣の演技も、これが明治大学の演劇か!? と思わせるレベルのものであった。残念至極である。これは何も本編に限ったことではなく、ネット上での案内の内容でも、現場のインフォメーションのあり方にしても、とても被差別者として生きることで表現の鋭さ、温かさ、人間味、社会の諸制度が持つ問題の本質を抉ってこれた人々の位置に立てるレベルではない。猛省を促したい。明大の演劇関係で初の星2つ。残念至極である。
 いずれにせよ、自分の力で勝負することなしに権威に頼るなどと情けないことを表現する者は決してしてはならない。これが、表現する者の最低限守るべきモラルであり、美学であろう。下らない生き方なんぞ、下種共に任せておけば良いのだ。表現する者は総て、精神の貴族をこそ目指すべきではないのか?

ギンノキヲク2

ギンノキヲク2

演劇制作体V-NET

TACCS1179(東京都)

2016/06/15 (水) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★

Bちーむ初日を拝見 花四つ星
 こなれたシナリオ、流石である!

ネタバレBOX

 特別養護老人ホーム紀陽の里は、芸能プロダクションに買収されて以来、現在は飛べない芸人や、スキャンダルに塗れて謹慎している芸人、アイドルなどの禊の場として用いられている。芸人は人気商売だから、事務所は、所属芸人たちが健気に反省したり、地道な活動で困っている方や社会的弱者である認知症の老人などのケアをしている姿を社会に見せる。業界復帰を狙わせる為である。無論、飛べなくなった者、駆け出し芸人たちが取り敢えずの生活費を稼ぎだす為もあれば、アトラクションなどで芸を見せることで事務所として当人たちの可能性を両立させる。こんなエクスキューズを巧みに使い分けつつチャレンジできる者はチャレンジする道を閉ざさない。無論、ここでは芸能プロダクション自体のイメージアップと実績作りを狙っている訳だ。アイドルなどは年齢を誤魔化したり、事務所のプロデュースのノウハウによる犠牲を蒙らされ傷つく者もいる。それが、心理的な機制となって周囲との人間関係を壊したりもする。結果、表現する者にとって最も大切な、徹底的に率直であること、というスタンスを狂わせてゆくのだ。
 今作の優れている点は、以上のような様々な問題を、徘徊するキャラクターやおもらしをするキャラクター、認識に問題を抱えるキャラクター、疑心暗鬼に取り憑かれたキャラクターなど認知症の諸段階を一人一人の登場人物担わせて明確に表現している点。対してケアする側の実際問題である人手不足や過重な時間外労働問題、在宅ケア及び入居者ケアのスケジュール調整問題など実際に起こっている問題群を織り込みつつも、単に対比に終わらせず、そこに生起する恋愛や様々な人間感情のもつれをも、スタッフのたゆまざる努力と人間を肯定する力強さや優しさ温かさで乗り越えてゆく姿勢をキチンと打ち出している点、またこれらの処方で傷ついた者が己の姿に気付き変わって行く点を描いている点にある。
 奇妙な仕掛けとして、徘徊癖のある入居者が一種の狂言回しをしていることが挙げられよう。だがこのキャラクターが認知症患者でもあることが肝要なのである。何故ならかつて狂人が一種の神の使いとして人々から扱われたような、我らヒトの古い記憶と歴史を踏まえて造形されているからであり、機織り機のㇶのように縦糸に横糸を通し、関係を紡いでゆくことによって、今まではなかった有用で新たな形を築いてゆくからでもある。多くの人にその役割を気付かれないままに。
タイトルの「ギンノキヲク」もシルバーエイジと神器として使われた金銀などのレアメタル、神々しさという言葉に含まれる重みと気高さをもその原初の意味を重ねていると考えられる。
序盤Bチーム初日の硬さが見られたが、まもなくこなれてきた。この序盤の硬さを取り払えば増々良くなる。
 
雨夜の月に 石に花咲く

雨夜の月に 石に花咲く

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2016/06/15 (水) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★

詩人の魂 花四つ星(カンダのが残念)
 シャンソンの名曲にL'âme Des Poètesという曲がある。(追記後送)

ネタバレBOX


Longtemps, longtemps, longtemps après que les poètes ont disparu leurs chansons courent encore dans les rues…という、あれである。試みに私訳を記すと、詩人たちが亡くなってずっと、ずっと後になっても、彼らの創った歌が、幾多の道を流れる・・・。(興味のある方は、自分で歌詞を見付けて仏語辞書を引いて訳すと良い。簡単なフランス語だからちょっとフランス語に興味があれば、訳すことができよう。但しネット上で見つかる資料には間違っているものもあるから注意!)
 前置きが長くなった。今作は、地方で金物屋を営む男が、人生の備忘録にと書き、出版社に送った小説の原稿が高い評価を得、権威ある文学賞の最終候補に残ったのだが、今日は、結果発表の当日。何となく落ち着かない新米作家の下には、地元紙、全国紙、スポーツ紙の記者、地場TVのレポーターらが、受賞関連の取材に押し掛けた。4人残っていた最終候補者のうち2名が抜けた。そのうち1名は盗作疑惑、1名は、ノンフィクション賞を目指していてプライドが許さない為の辞退であった。残り2名だから一騎打ちである。
 初日が終わったばかりだから、ネタバレはこの程度にしておく。何れにせよ、緻密な作りで、地方の日常のゆったりした時空に緊張感と慌ただしさ、降って湧いたような状況下であれこれ惑う人間という生き物のチグハグな可笑しさが、各々の役者たちの佇まいと醸し出す陰影に彩られて実にしっとり描き出されている点は、流石にSpiral Moonの芝居と観客を唸らせる。おまけに、実力者揃いだからできる、途轍もない可笑しみが演じられる。それは、全員無言で同じ方向を向いて、恵方巻きの代わりに巻き寿司をもぐもぐ食べるシーンなのだが。何故こんなに可笑しいかと言えば、演出以外の部分で、恐らく個々の役者が己の想像力や悪戯心を解き放ち、自ら工夫したことをし始めると、最初に何かを始めた役者に呼応する感じで、他の役者達がアドリブで合わせていっているからではないか? 自分にはそんな気がした。ホントに途轍もなく可笑しいのだ。
 「詩人の魂」に関することは、後に追記する。お楽しみに。
 
COLORS

COLORS

天才劇団バカバッカ

吉祥寺シアター(東京都)

2016/06/10 (金) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★

制度と差別 花四つ星
を日々生きるその地・人とのせめぎあいの中で見つめる目を感じる。 (追記後送)

ネタバレBOX

 2020年東京オリンピック・パラリンピック大会を背景に巻き起こる小自治体の特別企画を、この劇団特有の制度・慣習観察をベースに時にはやんわりとした皮肉と自嘲の痛烈ギャグで茶化しながら、劇団メンバーにハーフが多いという特性を活かして、欧米と日本人ハーフの典型的な願い、複数祖国の架け橋になりたいという個人的でありながら普遍性を持つ強く熱い念に裏打ちされたヒューマンドラマ。様々な特技を持ったキャラクターが、所謂ヒーロー者をベースにした作品で訴えたのは、彼らが如何に社会を見、参加しているかである。とくと楽しんでもらいたい。
ミュージカル「A Midsummer Night’s Dream」

ミュージカル「A Midsummer Night’s Dream」

ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ

あうるすぽっと(東京都)

2016/06/10 (金) ~ 2016/06/14 (火)公演終了

満足度★★★★★

スタンディングオベーション 花5つ星

 曲、生演奏、歌唱力、演技力、舞台装置、音響、照明、脚本、振付、演出どれも素晴らしい。スタンディングオベーションがしたくなるほどであった。無論、花5つ★。

ネタバレBOX


 ファーストシーンでスポットライトを浴びた領主が右手を天に突き上げ登場するのと同時に、大きな旗を掲げ客席から登場する妖精たち。大きくて真っ赤なクロスの4つの角を一人ずつが持ち、クロスを跳ね上げるとクロスの左右に居た者達が旗を掲げて各々反対側へ移動する様が2度描かれ、戦いを象徴するような若干の緊張感を伴った動きが実に美しい。演出家のセンスの素晴らしさが、これらの布の使い方に良く表れていて、しょっぱなから驚かされる。無論、これは最上の導入方法の一つである。びっくりさせるということが、表現にとって如何に大切なことであるのかは今更言うまでもあるまい。作家・表現者の世界に引きずり込む最も巧みで良質な方法である。まして今作はファンタジーである。妖精という人間の目には見えないハズの者達が主役とも言える今作にあっては最上の導入法であろう。
 この後すぐに妖精達の踊りが披露されるのだが、この飛び跳ねるような踊りはスモークの掛かった中で行われる為、幻想的な美しさが際立つ。更に妖精達の笑い声や、猫の鳴き声に似た叫び声なども実に効果的であり、更に舞台奥の薄暗がりでは、ジャングルジムのように組まれた鋼製の枠に蝙蝠のようにぶら下がったパックが、蠢いている様が対比されていて、妖精達の白い頭髪や衣装とパックのモスグリーンの衣装は明暗差の中で白・黒の対比となって現れ見事な対称を為している。また、妖精の女王、タイテーニアの背中に付けられた襞のあるクロスは天使の羽に見紛う作りになっていて、これを広げたり、そのままの状態にしたりで、彼女の動きに更なる奥ゆかしさと異形の者の王族の神々しさを加えている。
 更に、後半ループ状になった幅の狭いクロスを妖精達が二人一組になって操るシーンがあるが、呼応するパックの動きと共に実にあでやかで軽快感に富む美しいシーンである。
今作の原作は無論、シェイクピアであるが、イッツフォーリーズ版では妖精の王オーベロンの最後の科白から、障害を特定するような単語を除き、人の目に見えない妖精達(自然の化身)が人間を祝福し、支え原作同様の人間賛歌を提示してくれているように思われる。
振り返って、現実を見れば、中国は原子力大国を目指し、国内原発のみならず、原発輸出にも力を入れて核汚染の拡散に「貢献する」道を選んでいる。習は軍部を掌握しているのをいいことに、国内での思想・表現・情報の自由化弾圧と少数派弾圧に余念がない。無論、対アメリカを睨んでの新冷戦構築である。一帯一路路線や金融政策等で、もう一つの選択肢を広げるのは構うまいが、鎧は着込んでも見せないのがお洒落。見せるなら香を焚き込む程度の風流は欲しい。まあ、余り頭は良くないから望むだけ愚かというものではあろうが。パナマ文書で証拠が出たように、所詮下司野郎でしかないことも明らかなのだし(それでも安倍晋三に比べればマシだが)同じシュウでも周恩来とは雲泥の差である。馬鹿が国家のトップに立つことになれば、愈々、鈍感な連中にも第三次世界大戦が危機感を持って迎えられるようになろう。そうならないことを望むばかりである。
 
 
アイバノ☆シナリオ

アイバノ☆シナリオ

BuzzFestTheater

ザ・ポケット(東京都)

2016/06/08 (水) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★

意味の意味
 世の中には極めて論評し難い作品というものがある。

ネタバレBOX

今作もそういう系列に属するのではないかと思う。どういうことかと言うと、芝居という形でしか表現できないもの・ことを描いているように思われるのだ。即ち今作を過不無く論じようとすれば、このシナリオと同じになり兼ねないのである。粗筋は、リーフレットに載っているから割愛するが、ここで描かれていることの意味する所は、現実世界に多々在って、その蟻地獄に囚われて呻吟している人々、殊に女性はたくさん居るだろうからである。最後の最後で、一応、多少の光は見えるもののこれは無論、観客を穏やかな気持ちで送り出すための配慮に過ぎまい。
 かなり重い作品ではあるが、至る所に現実のかけらが割れたガラスそのもののように散乱していて、観る者をその鋭い反射光と鋭利な切断面で問い詰める。
時代絵巻AsH 其ノ八 『臙陣~えんじん~』

時代絵巻AsH 其ノ八 『臙陣~えんじん~』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2016/06/09 (木) ~ 2016/06/13 (月)公演終了

満足度★★★★

大坂夏の陣 花四つ星
 真田のほか歴戦の勇士たちの姿を彷彿とさせる。

ネタバレBOX

大坂夏の陣での真田 信繁の活躍を中心に信繁を人質として預かった上杉 景勝やその家老、直江 兼続らの名将、長曽我部 盛親、後藤 又兵衛、信繁側近・作兵衛。関ヶ原では東軍に参加したものの、その後豊臣家に仕え大坂夏の陣では浪人衆を集め、敗戦後は秀頼の助命嘆願を願い出た大野 治長、豊臣軍の主力として奮戦した木村 重成、槍の名手、渡辺 糺など歴戦の勇士、名将が登場する。
 興味深いのは、真田が徳川軍の防御を突破、家康を追い詰め、首級を上げるかに思われたシーンでの信繁・家康のやり取りの中で、今作は、史実と反対に信繁が家康を“日の本一の兵”と評し、天下布武に掛ける。即ち生命を立てたのである。核の脅威に宇宙船地球丸に存在する総ての生命が危機に晒される現在、この判断が正しいか否かは、ヒトの持つ矜持に掛けて吟味せねばなるまい。
海底

海底

演劇研究会(慶應義塾大学公認学生団体)

慶應義塾大学日吉キャンパス塾生会館(神奈川県)

2016/06/09 (木) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★

ディストピア 花四つ星
 人々は、既に海底に住んでいた。日本の話だ。

ネタバレBOX

時代設定はいつとも知れぬ。或いは妄想の類ということでも構わない。だが、自分には、若者がしっかり目を開き、見たもの、聞こえてくるものに静かに耳を澄まし、情報の氾濫の中で見るべきものをキチンと見つけた上で自ら思考し辿り着いた、実態のあるもののように感じられた。
 自分の解釈を述べれば人々が海底に移り住んだのは核汚染から逃れる為である。水は有効な核フィルターでもあるのだから。ところで、海底に巨大な居住空間を作り、更に維持し続けて行く為には莫大な費用が掛かる。また、大きいとはいえ限られた空間内で子が生まれ、若者は老人になってゆけば、人口ピラミッドは、発展の形態から外れてゆき、生産性の落ちた老人たちの生命を維持し続ける意味も希薄にならざるを得まい。そのような状態のまま人口密度だけ増えていったら? 政治は何をするか? その答えの一つが今作で描かれている。描き方もちゃんと個人レベルを敷衍化する形を取っており、納得できるものだ。狭いスペースで余りにも声を張り上げ気味なシーンは何か所かあったが、この点にグラデーションを付けられれば、表現力は更に上がろう。極めて適確なシナリオで今後が楽しみである。
リアル爆弾処理ゲーム『爆弾紳士の挑戦状』

リアル爆弾処理ゲーム『爆弾紳士の挑戦状』

円盤ライダー

円盤ライダーRPG特設アジト(池袋)(東京都)

2016/06/04 (土) ~ 2016/08/31 (水)公演終了

満足度★★★★★

RPG
 緻密で幾重にも撓められた謎を60分で解いてゆく快感が堪らない。

ネタバレBOX

所謂RPG(ロールプレイングゲーム)なのだが、役者が適宜その役割に則った演技でサジェッションを与えたりはするものの、制限時間内に総ての謎を解かねばならないので、どちらかというと純粋に謎解きを楽しめる。企画力の勝利と言えよう。出題の具体的内容は出せないが、純粋に楽しめる。
点滅 second

点滅 second

アロック・DD・C

アロック新宿アトリエ(東京都)

2016/06/07 (火) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★

花四つ星
 舞台は素舞台。ダンス公演だから当然である。舞台奥に出捌け口、これは大きな額縁のような作りになっていて黒っぽい色、昆布でも上辺からぶら下がるような感じで矢張り同じ色の布が垂れ下がっている。

ネタバレBOX


 開演時、一人の男を客席側を除く三方から取り囲むように鏡を持った女たちが取り囲む。音響、適度な昏さ、三方から己の姿を映し込むように囲まれた男の慄きに満ちた表情などからいきなり能の世界に迷い込んだよういな気がする。というのも直後、死神と思しき者が入ってくると女たちから鏡を1枚、また1枚と受け取って奈落へでも受け渡すかのようにどこかへ受け渡してゆくのだが、男は小刀で頸動脈を切り自殺を図るからだ。能は霊界とこの世のコレスポンダンスを描くことの多い芸能である。今作の舞台も正しく冥界。即ち死んだハズの者が最終的に黄泉へ旅立つ前に滞在する場所である。男は、この霊界で三途の川で石を積む子供と子供の積み上げた石をその度崩す鬼の姿を見たり、祖母だと言う者に孝養を尽くしたりするのだが、祖母は、孫を生者の国に帰す為に仲間と語らって自分を刺させ、因果の鎖を解いて冥界から生者の国へ帰す。こ謀は成功し男は息を吹き返す。と其処には自死直前に与えられていたパンがあり、それを取り上げて食べる。無論、これは明喩である。死んだ奴は放っておけ、生きる者は先ず飯だ! くらいの意味と取れよう。
 あらすじは大体述べたとおりであるが、ダンスパフォーマンスなので、科白は、祖母が孫の名を呼んだあと若干、祖母の仲間たちがしゃべる位で殆ど無い。従って以上のストーリー展開は自分の解釈である。唯、このような解釈に至った理由は説明することができる。小道具に使われている短刀は、男が頸動脈を切る為に用いた物であり、祖母を刺したもこの短刀なら、何度か出てくる死と裏腹のシーンに出てくる刃物も総てこの短刀であるから、このアイテムは、冥界と現世を繋ぐ謂わば機織り機のㇶのような物と考えてよかろう。
 また、一種の夢と解釈することもできる内容であることから、その根拠を否定し、現実に冥界と現世の行き来をしたという物語の設定を補完する役割も兼ねていると思われる。
 これらの設定い奥行を加える為に、更に幾つもの仕掛けが工夫されている。例えば冥界で祖母の仲間が男に襲い掛かるシーンでは、死神と思しき者も登場する中、1人が出吐け口に使われている大きな額縁内に残り蠢いているのだ。目立たないが、殆ど科白零の物語に奥行を加える方法として効果的である。更に、開園後15分程もほぼ全員によるダンスパフォーマンスがあるのだが、暗転した時に死神役だけが、出捌けの額縁内に残っており、その後の再登場ではタイミングぴったりに出てくる。こういう細かい配慮が物語に奥行と深みを与え立体的で分かり易いと同時に広がり・深みを与えている。
コメディカルナイト

コメディカルナイト

劇団クロックガールズ

新宿シアターモリエール(東京都)

2016/06/08 (水) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★

設定に難あり
 経営難で備品(薬品、包帯、ガーゼ等々)迄不足し、CTなどの医療用機械も故障して使えないという救急指定病院の一夜を描いたコメディーだが、

ネタバレBOX

シナリオが荒く、終盤まで適確な集約点を見いだせるような構成を取っていないので、終盤部以外は、頑張っている役者の演技も活きてこない。シナリオ・演出をもう一度キチンと練り直す必要があろう。
 病院の問題は、実際多々ある。これは事実である。救急車が急患を搬送しても盥回しにされて、結果患者が亡くなるということも報道される通りであろう。然しながら、日本の現在の病院で今作に描かれているほど機器が機能しなかったり、包帯や三角巾迄無いというのは、コメディーとしての細部を創れない設定で、リアリティーに欠け笑う前に呆れてしまう。シナリオライターは状況設定にもっと頭を使うべきであった。
なだぎ武・山田菜々主演「ドヴォルザークの新世界」

なだぎ武・山田菜々主演「ドヴォルザークの新世界」

劇団東京イボンヌ

スクエア荏原・ひらつかホール(東京都)

2016/06/07 (火) ~ 2016/06/10 (金)公演終了

満足度★★★★★

WASP VS ネイティブ

 ローンレンジャーというTV番組があった。無論アメリカ製である。ローンレンジャーはWASPで連れにトントという名のネイティブアメリカンが出てくるのだがトントとはスペイン語で馬鹿・間抜けという意味である。(追記後送)

ネタバレBOX

ところで日本でも名を知られるNYのメトロポリタン美術館には、アメリカ開拓史(ネイティブアメリカンに対するジェノサイド史というのが正しかろうが)に纏わる展示がある。これを具に見るとアメリカに植民した所謂ピルグリムファーザーズが如何にレベルの低い文化しか持っていなかったかが本当に良く分かる。それに比してネイティブアメリカンの文化のレベルの際立つ高さが目を惹くのだ。実際、現在の日本にもうようよ居る、史実を述べられるとその史実をプロパガンダと名付けて排斥したがる愚か者たちと同様、反知性主義に毒され洗脳されていることにすら気付けないアホそのものであるアメリカの愚衆共が盲信している、頭の皮を剥ぐからインディアンは残虐だというレッテル貼りなどはとんでもない事実誤認である。
最悪な大人

最悪な大人

劇団献身

OFF OFFシアター(東京都)

2016/06/03 (金) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★

この植民地終わってる
今作も一種のディストピアという印象を持った。

ネタバレBOX

 3.11以降のこの「国」の為政者共の対応を見て、まともな神経を持ち、まともな感性と思考力を持つ者なら総てが、終わっていると判断するだろう。ハッキリと狂っているのが分かるのが、この植民地の奴隷共だ。
 以上のような状況で暮らす若者達の絶望の詰まった作品ということができる。但し、彼らもまた年を取る。そのことを充分に知った者が書いたシナリオであるから、屈折している。ヒーローは自分の親父でフードファイターとして新チャンピオンになりかかるものの、この熱狂をTVで見ていた子供たちが真似て死亡事故が起きたことからブームはあっという間に萎み、父はヒーローらしさを失って運送会社の所長に収まった。だが、部下の殆どは使えない連中ばかり、そこへヤクザ紛いのクレーマーがどうやらシャブを密送したらしい。その荷物にクレームがついて大変なことになった顛末。内実は観てのお楽しみ。
どりょく

どりょく

かわいいコンビニ店員 飯田さん

北池袋 新生館シアター(東京都)

2016/06/02 (木) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

バイアスを排して
 今回は、新作3本の回、再演3本の回があるので、日・時はキチンと確認して欲しい。自分は新作の回を拝見した。

ネタバレBOX

上演順にタイトルを挙げておくと①「果実」②「軋むほど君を抱きしめて」③「美の生産者たち」何れの作品も、シナリオが良いので見損じはない。
 ところで、分かり切ったことを念の為に書いておく。今回3作品に共通する視座でもある。言わでもがなではあるが、大方の人には、第2、第3の本能とも言えることであるので敢えて書かせて頂く。即ちバイアスを排除することから始めなければならない、ということである。少なくとも革新的表現者は例外なくそうであるし、そうであった。これは、表現が革新に至る為の緒である。これなしに新たなことなど生まれようが無いのだ。その分、一般の人には奇異に映るであろう。何故なら一般の人が一般であるのは、慣習と常識に囚われ、その範疇で総てを判断しようと図るからである。革新的表現をする者・目指す者は、先ずこの箍を外すことから始めるのだ。ここが才能の分岐点である。
 その意味で今作は①~③迄総てバイアスを取り除いた地平から見えてきたもの・ことの意味する所、またそのように見える所のもの・ことの証言である。心して観劇されるがよろしい。この作品を観る観客が、世界に対してどれだけ開かれているかを計る物差しにもなっているからである。
 無論、役者陣の演技も、演出もグー。また、実にチープな舞台美術にも重大な意味が込められている。一見チープに見える必要がある内容なのである。何故なら、ここに登場するキャラクターは総てマイノリティーだからである。ハッキリ言おうか! 総て被差別者なのである。だから、一見、チープに見られる必要があるのだ。この舞台美術は作品が要請する必然なのである。選曲も良い。一例を上げれば、In the year 2525。この歌詞は、完全にディストピアであろう(アイロニーに満ちた)。今のまま、ヒトが無責任に地球と其処に生きる生命、様々な資源を収奪するだけなら、残るのはディストピアだけなのは余りにも明らかだ。それは、ヒトという種の滅亡をも示唆している。一部は宇宙に逃れ、宇宙の放浪者になるかも知れないが。宇宙の他の知的生命体にとっては、凶暴で残忍な敵でしかあるまい。生き残ったヒトという生き物は。今作、少なくともこの程度のことを考えさせる射程を持つ。
ORPHANS / 希望荘にて

ORPHANS / 希望荘にて

GROUP THEATRE

劇場MOMO(東京都)

2016/06/01 (水) ~ 2016/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★

希望荘にてを拝見
 戦場カメラマンの小松と山本は、自分達が撮っている戦場の悲惨な写真現場の余りの悲劇に心を痛めいつか被害に遭った子供達が、何とか傷を癒し明日に向かって旅立てるような施設か、笑い合って共同生活を送れるような生活空間を立ち上げたいと思っている

ネタバレBOX

。そんな戦場撮影の中で、親を殺された子供を銃撃をかい潜った山本は助けた。
 結局、小松はその後社会で行き場を失った若者達を集めて集団生活を送れるような空間を創設した。1年間に限り家賃は無料。但し週5日間は共同農場での野良仕事を皆でやり各々の自立の道を探すという訳である。
 作り方で面白いのは戦場撮影の場面の後、話はこの共同空間に直ぐ移っているのだが、此処には小松と山本が居て、この施設は二人で立ち上げた、という内容になっているのだが、この話は二幕では小松の妄想という具合に転化されて、小松がこの施設にやって来た理由が述べられる。それは、この日本社会への非難でもある。匿名性を武器に何の根拠も事実の確認作業もなく、実際の出来事は何一つ知らず、事情や背景も知らぬまま、唯面白おかしく白眼視して見せることで、真実とそれを知る者を社会的に抹殺してゆく。この頭を欠いた百足のような、鵺のような、異端者を徹底的に排除する村社会の論理に対する批判は正鵠を突いて見事。この時の迫真の演技も良い。
 元カレのDVに耐えかねてここに逃れて来た希美を巡り元カレが舎弟を引き連れて取り返しに来る訳だが、ここで新たに芽生えた恋に対して小松も他のメンバーも、外界へ新たに目を向けるきっかけになり自立への萌芽として描かれている点、ナイフを抜いて向かって来る元カレに対して、如何にも元戦場カメラマンらしい度胸の据わった対応、何も分かっていない癖に甘ったれたガキに対する紛争地経験者としての怒りの正当性をその背景に匂わせている点でもグーである。
正しい時間

正しい時間

遊劇社ねこ印工務店

小劇場 楽園(東京都)

2016/06/01 (水) ~ 2016/06/05 (日)公演終了

満足度★★★

前説はにゃんとにゃくにゃこ顔にょ、にゃんごとにゃき方にゃ。

 はじまり、はじまり~~~~~にゃ! (あとでにゃ~~~~)

ネタバレBOX

にゃきいしチャリンコ!? ハンドル中央にゃ、ガラ系携帯みたいにゃグッズが付けてあって、これ全体でタイムまし~~~~~んニャ! で、ガラ系で行く先の時代設定をするんだにゃ! ふにゃ~~~~~~~ッ津!! で、飛んだ先にゃ。おじさんのおじさんより年下の父さん母さん他がいるにゃ=~~~~~。
初日だし、またにゃ~~~~~~。お父さん若い頃、内気で礼儀正しくて、お母さんを愛しているにょに、にゃかにゃか言えにゃくて、きゃわいいにゃ~~~! この礼儀正しさにハンダラは好感を持ったんだってにゃ~~~~。
くさらくご 第5回

くさらくご 第5回

劇団だるま座

アトリエだるま座(東京都)

2016/05/27 (金) ~ 2016/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★

役者の落語、咄家の落語
 役者が落語を演ずるパターンはそれなりにあるのだが、役者の演じる場合は大抵独り芝居が基本コンセプトになっているようである。今回は、三味線も若干入り寄席の雰囲気が醸し出される。

ネタバレBOX

第5回公演では、毎回プロの咄家である古今亭志ん彌師匠も噺をしてくれるので、役者のやる落語と咄家の落語の差が比較できて面白い。咄家の場合、矢張り言葉というものに対する姿勢が異なる。落語を関係の芸として磨いているのだ。無論、言葉そのものが関係であり、落語の場合は、言語関係を秤に懸けた上で按配し直すという感じがする。これが、実に面白い。人間関係そのものが、間なり、調子なり、或いは所作や表情の手助けなりで、言葉として物化してゆく。これが咄家の落語である。一方、役者の落語は、言葉が物化するというより、人間化してゆく。そこに現れるのは言葉そのものの物化であるより言葉と身体を通しての人間化なのである。言い換えれば咄家の芸が言葉を物化するのに奉仕しているのに対し、役者の芸は言葉(台詞)を含む身体表現が人間に向かって収斂してゆく。どちらが良いという訳ではないが、何れも深く楽しい芸である。
奇妙なり――岡本一平とかの子の数奇な航海ー

奇妙なり――岡本一平とかの子の数奇な航海ー

オフィスワンダーランド・(一社)演劇集団ワンダーランド

紀伊國屋ホール(東京都)

2016/05/26 (木) ~ 2016/05/29 (日)公演終了

満足度★★★★

かの子
今生きていても素敵な女性だろう。

ネタバレBOX

 瀬戸内寂聴の「かの子繚乱」によっても、また岡本 太郎の母としても、今では父、一平より名を知られるかの子であるが、彼女が夫公認の愛人を持ち、而も息子の太郎がそれを気に病んでぐれることもなく生活し得たということは、近年で言えば赤塚 不二夫と初婚夫人、再婚夫人同士がとても仲の良い間柄であり、娘さんも道を逸れなかったことに近いかも知れない。が、時代が時代であり、尚且つ今作で描かれるのは当時珍しかった外遊に、一平は、妻のみならず、妻の愛人二人と太郎迄一緒に船旅をさせたのであった。神戸からマルセイユ迄である。船の名は箱根丸、ロンドンで開かれた海軍軍縮会議取材旅行が一平のミッションであった。今作ではこの長い船旅の道程を描いている。無論、この間に何故、一平とかな子がこのような関係を持つにいたったか、現在の東京芸術大学の前身であった東京美術学校に父同様入学していた太郎は18歳を機に本場パリで絵の武者修行に入る為、父の取材に同行。母、母の愛人二人も同様であった。だが、源 五郎が指摘するように一平には、1929年当時の、遅れた日本と言う村社会にバイアスを排した人間関係構築をプロデュースする意図があったのかも知れない。まあ、役人なんぞの硬い頭より、日本の民衆は開けた性意識を持ってはいたハズだが。それが体制を前にすると萎縮するのは未だに変わらない日本人のダブルスタンダードである。国家を代表しこの会議に出席する為に乗り合わせた海軍少将と、その二回りも年下の妻に絡むエピソードや、アルゼンチン・タンゴを取り入れた楽しめる舞台で、かの子役がキュートである。
グランメゾン・アカシア

グランメゾン・アカシア

the pillow talk

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2016/05/27 (金) ~ 2016/05/30 (月)公演終了

満足度★★★★

劇団名とタイトルの関係 花4つ星

 から、何となく日本のチンケな家屋やメゾネットについている大仰な名称に対する揶揄が浮かんで面白い。

ネタバレBOX

グランメゾンとフランス人が聞いたら先ずシャトーのような豪邸を頭に思い浮かべる。当然、日本のメゾネットなんぞでは話にならない。自分の住んでいたモンペリエにもメゾンがあって、その塀の1辺を歩くだけで15~20分かかったから、周囲は6㎞~8㎞はあっただろう。(自分は歩くのが早いので)まあ、メゾンというのはこういう規模である。現在は公園になっている有栖川の都立図書館辺りに屋敷を建てて他の部分を庭にした程度であれば、メゾンと認めて貰えようがまだ狭い感じは否めない。
 ところで物語が進行するのは、居間になった一角を中心である。他は、居間を中心に演じない役者が控える為の椅子席になっており、そのエリアを暗くして、再婚予定のバツイチ新婦と父との寝室(上手客席側)因みに上手奥は玄関とそれに続く廊下エリアということになろうか。元長男の部屋(現在は再婚予定の新婦の連れ子の娘に使われているは下手手前)、長女の部屋(下手奥)等が科白で示される。これがタイトルとの対比で実にアイロニカルで滑稽だ。だって実際そうだろう。有栖川公園は場所柄も含めて都内有数の公園だがそれが漸くメゾンとして認めて貰える程度だとすれば、こんなチンケな「家」にグランメゾンなどと冠されていれば、臍が茶を沸かす。という感覚で当然だろう。
 その上で如何にもチンケなこの国の自意識同士がpillow talkを繰り広げるようにぶち当たり鬩ぎ合っている。実に日本的ではないか? 世界状況などまるで何の関わりもないかのように。チンケそのものの日本!

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