ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

「Little night tales」マティア・ソルツェ 2021.8.14 15時5分

ネタバレBOX


 スロべニア人だが、多くの名人形操り士を排出している名門プラハ芸術大学人形劇学部に学び優れたアーティストが集まるこの大学でも学生時代からその高く特異な才能を評価されてきた逸材。人形操りのみならず、作曲、演出でも高い才能を示しスロベニアのリブラナ人形劇場でも演出を担当する。因みにこの人形劇場はオペラ劇場にも比肩される程立派な劇場であり、スロベニアの人形劇は人形劇大国・チェコと同系統の人形劇でありソルテ自らの高い能力によってチェコの一流人形操りに勝るとも劣らぬ。今回到着したフィルムは彼の大学を卒業する頃に創られた作品だが、現在も尚、彼のレパートリー作品として演じ続けられる作品である。才能の枯れかけた作家が、観客のアイデアを参考にしながら作劇に挑む話だが、様々な観客からのアイデアを借用する結果しっかりした柱の無い作品になりそうになるが、それを何とか完成作に仕上げようと奮闘する内容だ。豊かな才能を持つ者の自由な発想が随所に見られる。尚用いられているのは指人形である。

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

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プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

「人生」2021.8.11 16時
 スペイン出身のアーティスト・ハヴィエル・アランダ。

ネタバレBOX

彼は余り露出するのが好きではないタイプの人ということで、スペインでも余り知られてこなかったが、最近あちこちのフェスティバルで賞を数多く受賞し徐々に知名度を上げている。主に掌を用いてのパフォーマンスであるが、作劇も実にしっかりしている。笑いから入り7分ほど進んだ所から独自の世界観、本質に切り込んでくるあたり、当にシナリオ作法の王道を行っていると言って良い。
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プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「がんばれローラーくん」2021.8.11 10時 プーク人形劇場
 子供向けの作品だ。自動車ファンの子供が来ていて母親とローラーくんのことを話したり質問したりしているのが可愛い。

ネタバレBOX


 ローラーくんは、ロードローラーである。毎日、その重い体を工事現場に運び道路の補修等に活躍している。相棒はバイクさんである。バイクさんはその機動性を活かし中央指令室からの指示をローラーくんに伝え次のローラーくんを派遣する場所を実地にローラーくんに伝え、緊急時には先に現場に飛んで事前の準備を整える等の作業をしている。板上には観た目で直径2.2m 円周は2.2π程の丁度大人の腰の高さほどの可動式構造物が構築されており、その天井部には道路が走っている。但しこの路面は至る所障害物や路面の捲れ上がり等が見られ修理を待っている。朝一の工事現場から最終予定現場迄行程が組まれているが、現工事現場は無論、緊急現場が何らかの事情で出来した場合は渋滞必至。各予定現場や緊急現場に迅速にローラーくんが到着できなければ大変な混乱になってしまうのでバイクさんもローラーくんも一所懸命に働くが、朝一の現場から最も遠い場所で道路が陥没、至急向かわなければならないが車体の重いローラーくんのスピードは速くない。渋滞したダンプが進入禁止表示を跳ね飛ばし、乗用車が続いたが何れも無理な走行でエンジンが焼けたり、タイヤが外れたりでエンコしてしまった。漸く到着したローラーくんの御蔭で道路は復旧、外れたタイヤも持ち主に戻り、無茶な走行をローラーくん達に謝り感謝して渋滞していた車は去って行った。
 人形は車に目等が付いた人形、これをお姉さんたちが操る。工事現場には工事中の看板やコーンが置かれており、先に記したように路面の捲れ上がりが表現され障害物等も置かれている。こういった人形・障害物も総て柔らかい素材を用いて作られており、もし不測の事態が起こっても子供達に怪我が無いように配慮されている点、また総ての人に優しい運営方針、裏方さん、技術スタッフの方々総ての技量の高さと心遣いの素晴らしさ、チームワークの良さ等92年もの長い間続いてきた劇団の凄さと人間性の素晴らしさを感じる。珈琲ショップで飲んだ珈琲もおいしく値段も良心的だということも付け加えておきたい。

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

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プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

かわせみ座 2021.8.11 15時15分
 糸操り人形である。

ネタバレBOX

音響はシンセサイザー、タムタムその他の太鼓、木琴の原型と言われるアフリカの楽器・バラフォン等。顫音が出るのは用いられている瓢箪の内側に蜘蛛の巣が在る為だ。伝統的な楽器とシンセのコラボ、音響と人形操りのテクニックのマッチングもみものだ。人形操りのテクニックは頗る高い。恐らくテンと思われる動物の動きも実に良く動物の動きを研究して操っていることは明らかで感心させられた。また、ブランコに乗る子供は両側の綱を掴んで、本当に漕ぐのだ。
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

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プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「鼠の相撲」燕屋 2021.8.14 12時15分
 指操りの人形を用いるが、相撲の勝敗でお目当ての♀鼠をゲットするという約束が♂鼠同士で交わされる為、大技で投げ飛ばされると遠近法の発想で遠くに飛ばされた鼠の体は中型・小型へと変化しつつ宙を舞う。

ネタバレBOX


 今回のようないでたちは江戸時代、肩掛け人形芝居を生業としていた人々にならっている。演者は顔部分だけ黒い布で隠す。今回は長野から参加。内容は2匹の♂鼠による可愛い♀鼠の争奪戦だが、子供向け作品である為内容的にも可愛らしい。♀鼠が心を寄せる♂鼠に思いがけなく出会い「キャー鼠」と叫んで失神してしまうなどというジョークも入っているので子供たちもやんややんやの喝采!
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

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プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

伝統芸能をこととする荒馬座 (追記後送)

ネタバレBOX


 板橋に本拠を構えるグループ、創立55周年を迎えた老舗である。篠笛、大和太鼓、鉦、小締め太鼓。鉦の形状は円周に垂直に縁を付けた形で左手親指と小指で楽器を支え持ち他の3本の指で底部を押さえて響きを抑制、開放して響かせるという打ち方をする。無論縁を叩いても良い。曲想に合わせて演奏される。叩く器具は撥である。次に演じられたのは獅子舞。楽器は輪太鼓。締め太鼓、篠笛。これほど上手い獅子舞を観たのは初めてである。下半身が安定して居る為、動きに切れがあり決めるべき所で的確に決まる。而も演者は柔軟な身体をしているから腰から上を捩じるようにして獅子頭を支えたり開脚場面も見事に決める。耳、尾を動かしたりもする。子守歌が篠笛で奏されると眠りに就くがその際の呼吸の様子・体全体の脈動迄も微妙な動きで表現する。更に鬣の動きまで見事に再現、目覚める際には頭の角度を上手く用いて動くようには創られていない目の表情まで表してみせた。御見事! 
 
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

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プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ジュンマキ堂 2021.8.13 12時 チンドンミュージックショー

ネタバレBOX


 用いる楽器はエレキのベースギター、トランペット、アコーデオン、チンドン、洋太鼓のように見えるが和太鼓のゴロス、ゴロスの右上の縁には小型シンバル。チンドンとはチンドン屋さんの先頭に立って練り歩く楽器で楽器の上部には傘などが取り付けられていることが多い。チンドン屋さんというのは、かつて広告等をチンドンに取り付けて街角を練り歩き地元のパチンコ屋、スーパー等の宣伝をしていた職業に就いていた人々だ。メインの楽器はチンドンとゴロス2つの打楽器である。チンドンは肩に担いで演者に対して直角に張り出した木枠の上部の右側にチンと鳴る鉦、左側に小さな和太鼓、横木を上下枠の中程に渡しその下に和太鼓の中位の太鼓を取り付けた楽器で、この楽器の奏でるチン・ドンという音からこの名が付いた。本日の演奏曲名を演奏順に記しておくと、スワニー、ラックカラーチャ、千鳥、オソレミヨ、藁の中の七面鳥、美しき天然(この曲は日本最古のワルツと謂われ、どこか哀愁を帯びた名曲である)、ヘイヘイボギー、セントトーマス、アンコールで演奏されたのは四丁目(しちょうめ)の9曲。中にはジャズのノリを感じさせるアレンジもあり、この鬱屈の時代をも吹き飛ばすほどの活力を与えてくれるほど賑やかで楽しい。
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

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プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

みのむし 「岩見重太郎・狒々退治の段」

ネタバレBOX


 時は慶長年間某月某日、ここはある村の在・今年16になった庄屋の娘、糸が泣いている。その訳は村の社に祭られた神から白羽の矢が立てられたことである。糸は村一番の器量よし。娘を差し出さなければ村に禍が起こると矢文に警告されていた。偶々庄屋の家には有名な豪傑岩見重太郎が逗留していた。そこで指定された日、昼なお暗い社の森の奥社へ籠に載せて運ばれていった。やがて駕籠かきたちは、人魂や突如現れた大蛇に恐れをなしホウホウの体で逃げ帰ってしまった。暫くすると大きな狒々が籠を襲った。籠から出てきたのは岩見重多郎であった。重太郎と狒々の決闘が始まる。このシーンも中々見ものだ。というのもこの操り人形劇団は江戸時代の糸操り人形の技術を総て受け継いでいるという集団なのである。黒子は昼なお暗き森の暁闇に溶け殆ど目立たない。一方、人形の衣装は華やかで非常に鮮烈に観客の目に焼き付く。この辺りの計算も見事である。無論、人形操作も見事なものだ。おまけに痛快な作品である。
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

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プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

「小さな足の劇場」 
 ヴェロニカ・ゴンザレス。アルゼンチン出身の彼女だが、現在はイタリアに住んで活動している。

ネタバレBOX

その表現法は仰向けに寝転がり観客席に向けた足裏を顔に見立てて衣装をすっぽり被せ、両掌を衣装の袖に通して足裏即ち表情のサポートに用いショートコントを発表するスタイルをとる。足裏を顔らしく見せる為に鼻や目等を装着するが時に帽子様の物を被せたり取った時には足指が髪の毛として機能したりもする。足裏の代わりに膝を用いることもある。兎に角、足と掌のコラボレーションが素早く而も素晴らしいので引き込まれる。ショートストーリーの内容は開明的でユーロコミュニズムの追及した理想を描いたような作品が多いが、根底には無論人間という生き物に対する普遍性人間観が在る。日本人には欠けているものだ。
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

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プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

 Covid-19の影響で海外アーティストの作品は総て上演会場での映像鑑賞となっている。また有料だが今回の海外作品は1作千円、全作品は割引価格になって5千円で配信して貰える。(少しだけ追記)

ネタバレBOX

「ソロ」 
 チェコの偉大なマイマー3人の継承者、ラディム・ヴィヴァ―リの様々なパフォーマンスを描く。体の鍛え方が凄い。それは登場した瞬間に判断できるものだ。実地に映像を観ていて、パフォーマンスの最中に片足だけで腰を下ろして行き座り込む直前に浮いていた足を入れ替えてポーズを取るなどという離れ業は身体機能を鍛え抜かなければ出来ることではない。また、中性的な印象を齎すその身体は例えば片手をオーバーの片袖に通し反対の手で女を演じる等にも両性の差異が演技によってのみ如実に現れることで活きている。その所作たるやまさしくアート。ところどころにセクシュアルなくすぐりや笑いを入れている点でも大人の遊戯感覚が活かされている。
 ところで、今作の冒頭、ラディムはピエロの衣装で登場しているが、子の衣装は「Les enfants du Paradis(邦題・天井桟敷の人々)」でジャン・ルイ・バローが演じたアルレッティーが着ていたピエロ衣装に極めて良く似ている。これはラディムのジャンに対するオマージュなのではないか?
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

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プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

八王子車人形西川古柳座  人形浄瑠璃を基本とした車人形操りの劇団。

ネタバレBOX


 元々は説教節だったのだが、先代(4代目)が義太夫の方が音曲が優れているということで説教節の演じ方のノウハウを総て義太夫方式に改めたことから現在の形の基本が創られた。現在5代目が跡を継いでいるが若い頃に海外で公演を行ったりしていた関係で現在では世界とのコラボレーションをも視野に入れるが、基本は浄瑠璃なのでその基本はキチンと守っている。ただこの劇団は“八王子車人形西川古柳座”という劇団名から類推できるように箱馬の半分ほどの高さの台に車を取り付けて自由に動けるようにし、この台車に演者が載って人形を操る。人形の頭と手の動きの表現が肝要である。本日の演目は「二人三番叟」を筆頭に、鈴を打ち振る所作を旨とした演目が続き、「東海道中膝栗毛」からの抜粋、尚今作が浄瑠璃として世に出るには、原作者十返舎一九の死後50年を要したとされる。次に安珍・清姫伝説を基に書かれた人形浄瑠璃の脚本「日高川入相花王」、フラメンコ風洋舞で幕を閉じる。時間が限られているので殆どの作品が、最も面白そうな部分を抜き出して演じられた。因みに三番叟は大地を踏み固めて地下に居る悪霊を追い払う為の儀式として演じられる。また鈴を振る所作は種撒きを表象し衣食住のうち最も生き物にとって大切な食料生産・五穀豊穣等を祈る為にこのような形で演ぜられてきた。
Who’s it? 〜ニューヨークの日本人〜

Who’s it? 〜ニューヨークの日本人〜

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2021/08/05 (木) ~ 2021/08/10 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 面白く、格好良く、普遍的。華5つ星! ベシミル‼❕

ネタバレBOX

 板はその頂点Aを客席入口に最も近い点として時計回りにB,C,Dとすると客席はCD及びADに平行して設けられている。いつも通り、極めて合理的且つシンプルな舞台美術であるが、設定がNYの大学に留学中の極めて英語の良くできる女子留学生が友人女性とシェアしている部屋ということになっている。BCのCに近い部分に目隠しが設けられており、その奥はキッチンだが、この目隠しが小さな様々に色づけされた木片を組み合わせたモザイクのような文様を為している点がオシャレだ。また、登場するキャラの生き方の多様性や個性的な性格、各々の個性から滲み出る内実と暮らす社会との関係の描き方も極めて的確且つ本質的で、作品に自然で深みと広がりのある味わいを生んでいる。
 板上はACの対角線上に横長のテーブル、これに平行にB側にソファ、ABに沿った所に丸テーブルと椅子。
 尺は60分強と短めだが、全く尺の短さを感じさせない。フンダンなくすぐりと極めて普遍的なレベルに於ける日米社会或は日本人、米国人の差異を長所も短所もその特徴を見事に紡いだ台詞によって表現している。
 更に日米の裏社会の繋がりや組織が持つ組織内抗争の矛盾も示唆されるなど、この尺でよくぞここ迄深読みのできる、また広がりが極めて自然に展開する作品に仕上げたと感心することしきりである。また、この物語に登場する日本のヤクザが任侠映画のヒーローのような侠気を見せる点もオシャレであるのみならず「飛ぶ鳥跡を濁さず」の諺よろしくラストは爽快感さえ漂わせつつ解釈の多様性も内包する終わり方もグー。
 脚本、演出、演技、舞台美術、音響・照明の効果総てがキチンとバランスよく纏まって極めて質の高い作品に仕上がっている。
LAST&SEX~終焉と悦楽~【公演中止】

LAST&SEX~終焉と悦楽~【公演中止】

文化芸術教育支援センター

中目黒キンケロ・シアター(東京都)

2021/08/04 (水) ~ 2021/08/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

 Lチームを拝見。『白い夢』秋山了亮、『蝶をつまむ』なないろみほ、『ラストバトル』水野祐三子、『ラスト・ホーム』金井博文の4作を上演する予定であったが、出演者の一部に体調不良の者が出た為、急遽『白い夢』を割愛、3作品の上演となったことが、メールで通知された。無論割愛作品に対する対処も記されており、観客も納得できる内容であった。制作のこの対応はグー。(華3つ星)

ネタバレBOX


 然し乍ら舞台自体は、極めて辛口の批評にならざるを得ない。殊に上演された3作総てで演出の稚拙が目立った。3作のうち先に上演された2作の各々のラストが次作品のトップと明確に区別されていないからメリハリが効かない。始まりと終わりの演出でこれだから、作品の進行中が如何なるものであったか容易に想像がつこう。尺はそれぞれ30分強の短編であるからメリハリをキチンと付けて上演するのが王道だ。
脚本には各々、極め台詞と言い得るような表現が散見されたから猶更残念である。『蝶をつまむ』は50代男3つ股の”内実“暴露である。この女たらしの垂らし込んだ女性の数が3人であり、彼女たちの愛の誓いが表面的である点で、誰しもがシェイクスピアの「リア王」を想起するであろう脚本になっている点で短編でありながら作品の幅、奥行きを広げている点にこの脚本の工夫を見た。(「リア王」の場合末娘だけは、父に尽くそうとしたが。)まあ、オチは見えてしまうしネタバレになるから明かさない。
『ラストバトル』は、格差社会を表象したような作品で、いいようにあしらわれる惨めな男を演じた役者さんの演技が最も気に入ったが、イカンセン体力も気力も無いハズのこの敗残者がシーンによっては極めて強い体力・気力を発揮する矛盾については、もう少し脚本を練って欲しいとは思った。
 『ラスト・ホーム』は女性ばかりのホームレス集団の物語。時代を反映してかLGBTQ絡みのキャラも登場し、而も格差社会の厳しい現実と、彼女らのシノギ。弱者相互の助け合い等も描かれ、昏い世相に対する仄かな光明や安らぎも提起されている。
悪魔をやっつけろ ~COVIDモノローグ~

悪魔をやっつけろ ~COVIDモノローグ~

燐光群

座・高円寺2(東京都)

2021/07/31 (土) ~ 2021/08/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 原題はBEAT THE DEVIL英国のデヴィッド・ヘアの作品であるが、彼自身の闘病記と医学・生理学的知見と実際に行われていた政治的・社会的状況が描かれる。今回日本での上演は板上に会議用のテーブルを置き、テーブル上にはペットボトルとコップ、そして一脚の椅子という朗読に必要最低限の物だけを置いた。演者・演出共独りで担った坂手 洋二氏の朗読公演の形を取るが、開演直後前説代わりに演者本人がマスクを付けた状態で今作が2020年秋にロンドンのBridgeTheatreで世界初演を迎えたこと。その時の俳優名、900席程ある席でソーシャルディスタンスを取って大幅に観客を減らし演じられたこと等が説明された。朗読時は、PCR検査で陰性が証明されて居た為、マスクを外しての朗読。観客席最前列は、着席不可で1人も人は座っていない。今後の公演予定は劇団HPで詳細を当たって欲しい。先ず、第一稿を載せる。

ネタバレBOX


 因みに今作の原作者・David Hareは2020年の3月に実際に罹患しており、その時の体験が盛り込まれることにより、階級・階層間差別問題、科学(殊に医学・生理学・免疫学等)の真摯な研究と忠告/WHOによるパンデミック勧告軽視及び無視を為し初期対応を全く誤った。政治の誤りというより欺瞞性が、それを率いたジョンソン自身の罹患によって大きくメディア報道そのものを変えた。(ジョンソン罹患以前は敗者の病とされ下層階級を占める諸階層特有の病とされていたことが、ジョンソンの罹患によりミドルを含むアッパーを包含、白人それも男性「エリート」も罹る病として漸く事実認定され、社会化された)事実をアイロニカルに描いている点にも見られる。
 日本でも児玉龍彦氏が国会に招致され証言したが、意識的議員の招致にも関わらず、児玉氏の正鵠を射た指摘は悉く無視され、その後の爆発的感染を招いたこと、その責任が政治の無能そのものにあるにも関わらず、肝心な指摘や、野党の真っ当な質問にも一切キチンとした対応をせず、鵺そのものとして機能している日本政治の姿は民主主義そのものの否定を表していることが明らかである。現在、多用される緊急事態「宣言」が非常事態「宣言」に変わった時、日本政府が何を為し得るかが上演後指摘されたが、考えてみるが良い。優れた演劇もまた、社会を映す鏡である。今作の緊急上演が何を懸念しているか、念を馳せるべきであろう。
犇犇

犇犇

TAAC

駅前劇場(東京都)

2021/07/30 (金) ~ 2021/08/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 加害者家族の過ごした十三年間の内実を十二年の務めを終えた犯人(長兄)が戻ってきてからの約一年で描く。

ネタバレBOX


 最後迄、では長兄が誰を殺したのかについては一切触れられぬ為、消化不良を起こしたような煮え切らない感覚が残る。これは創作側の意図かも知れないが。
 またラストは可成り衝撃的ではあるが、この新たな犯罪を起こした者の動機はやや浅いように思われる。無論、キチンと心象を追うことはできるし犯行に至った原因も明らかに読み取れるのだが、この程度の理由でこのような結果を必然的に齎すとは自分には思えない。出演者の演技については、長兄を演じた役者さんの演技が最も気に入った。各登場人物の心理をキチンと追うと可成り内容的には深堀りできる作品ではあろう。余り細部迄書くとネタバレが過ぎようから、ここ迄とする。
廻る座椅子で夢を見る

廻る座椅子で夢を見る

演劇プロデュース『螺旋階段』

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2021/06/25 (金) ~ 2021/06/27 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

「廻る座椅子で夢を見る」螺旋階段第29回公演 online 2021.7.25
 矢張り配信は、実見と異なり臨場感には欠けるが、本が素晴らしい出来であり実見の際には前の席で拝見して居たのに対し、配信ではより俯瞰できるという利点があった。演技自体殆ど板上で行われそのサイズと撮影機材の写角がほぼ一致して居る為、殆ど見切れらしい見切れも無い。本質的なことは、既に実見した方の観て来たに書いた。お読みになりたい方はこちらもご覧頂きたい。

中年の歩み『侘しい星、寂しい星』

中年の歩み『侘しい星、寂しい星』

第0楽章

SPACE EDGE(東京都)

2021/07/21 (水) ~ 2021/07/24 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 板上ホリゾントには窓が各々設定されカーテンが引かれている。シンメトリックな部屋は核部屋、上手・下手に1つづつだ。ホリゾント手前にはシングルベッドが各1台。上手の最右翼にはノブ付きドア。

ネタバレBOX


手前には同じサイズのカーペットが敷かれているが、上手の部屋にだけ段ボール箱が1つデンと構えている。数人の登場人物を2人の役者が演ずる。主役は母と遺伝子的病を抱えた息子。
 何とも空しい憂き世を虚しさのまま、空虚のまま描いた、その意味で稀有な作品。人間が普通に社会で自立して生きるに当たり必要な最低限の要素は健康とライフライン確保であろう。息子によれば、遺伝子レベルで問題を抱える母子には、これら総てが欠如している、然し乍ら、生きて行く為には飲食、住居、睡眠、衣料、健康維持費用が必要であるが、前期の理由で全く積極的に生きる意欲もなく、オブローモフのような経済的ゆとりも無い。にも拘らずオブローモフ主義者のような生活にのめり込む息子と心配する母との日常が、周囲を巻き込みながら展開する、限界状況作品である。この状況を実に淡々と描いている点が、今作の真骨頂と言えよう。
明日の朝、いつものように

明日の朝、いつものように

LUCKUP

萬劇場(東京都)

2021/07/16 (金) ~ 2021/07/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 感染対策がゴイス! Cチームを拝見。追記あり2021.7.21 24時6分

ネタバレBOX

 曰くありげなタイトル通り、板の形そのものが、通常の長方形ではなく歪んでいる。下手手前にはサイドテーブルにソファ、対向する上手にはテーブルを挟んで左手に背凭れの無いベンチ様椅子、右手には通常の椅子2脚が据えられホリゾントへ向かう途中に背の高い電気スタンドや衝立様のものが置かれている。中央ホリゾントの手前にはバーカウンターと椅子が配置されている。板の位置そのものが高く作られて居る為、上手奥には階段が設けられ、ここから板上に上がれるよう出吐けが設けられている。
 物語は、Covid-19終息後の近未来という設定だ。男と女、そのカップルが暮らして行く社会の殆ど意識されることのない変容とその変容がカップルに与える間接的な影響を含め男と女の差異、その個性の差異、関連する人間関係の変化が齎す個々の認識の差異が結果的に齎した決定的な関係齟齬の裸形発見に至る。
 極めて巧みな物語の展開形式と演出が、解釈の多様性を生み、解釈の差異が生み出す登場人物相互の相関関係の解釈多様性を観客個々人がどのように納得できる解釈として採用するか、想像できる登場人物達のメンタリティーの微妙な綾を含め如何様な結論を出すか? は各々の観客に任された極めてスリリングな作品である。殊にラストシーンを観て同棲していた彼女が、どのようになったかは、各々の解釈の到達点として比較し合ったら興味深い答えが出てきそうだ。
  以下少しばかり追記をしておく。同棲カップルの結末に関してである。直接的にこれがこの結末に繋がるのだが、これとは即ち一緒に暮らし始めて5年、最近2年間2人の若い男女の間に1度も性の営みが無かったことである。女がそれなりに誘いを掛けていたのは劇中の動作で明らかだが、男は全くその意味を理解しないと解されて致し方ない対応しかしていない。
 人間の男と女に進化する前に単に哺乳類として系統樹に先祖が存在してからに限っても雌雄異体の生き物各々(♂・♀)の差異は本能的な差異として顕現したハズである。ましてそれが、知を持つヒトとなれば、本能と雖も単純な形で現れることは在り得ない。必ず各々のraison d’êtreと深く密接に結びついて機能する。仮にそれを当事者が意識していようと居まいとである。それが存在の根底に関わる事象だからだ。
 さてヒトに限らず雌雄異体である♂・♀は性行為によって生じる結果が異なる。当然の事ながら性差による肉体差・事実認識・体験・精神的傾向の差が存在する。ヒトレベルの高等生物になれば、種の性差についても、これを愛という精神性としてアウフヘーベンしようとする精神活動も現れ、一般的にそれは愛の対象としての互いの存在に対する自己投棄として顕現しよう。そのような精神性を含めた肉欲がヒトが人として求める性行為の理想に近いだろう。ヒトという種の女性の場合、殊にこの精神性を求める傾向が強いように思われる。そして仮に性行為があったとしても、この精神性が欠けていれば男性よりも多くの不安やストレスを抱え込むように思う。まして今作のケースでは、2年もの長きに亘り愛を確かめ合う性行為そのものが無かったのである。その精神的ストレスは大変なものであったハズで、その点が実にキチンと描かれ、その点に気配りできなかった男の情けなさが矢張り、終盤の暴力的な言動で表されている点でも、また妹夫婦の上手く回っている人間関係との対比によって、また同棲カップルの男VS第三者的女の男女関係対同棲カップルの女VS職場の男との情事が、各々、1人称・2人称・3人称という世界関係に対応していることによって世界全体に繋がっている点にも注意を喚起しておきたい。


♭1~役者への道~

♭1~役者への道~

ThreeQuarter

JOY JOY THEATRE(東京都)

2021/07/17 (土) ~ 2021/07/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 ThreeQuaarterの役者さん、そしてThreeQuaarterの公演に参加する役者さん達は、好みである。

ネタバレBOX

何となれば、一所懸命に役作りをし、役を生きようとする役者さんが圧倒的多数を占めるからだ。役者というのは大変な職業である。舞台とは基本的に比較にならないが、自分がガキの頃、加山雄三が主演の若大将シリーズというのが流行った。カッコいい若大将に対してカッコ悪さそのものとして青大将という役柄があり、演じていたのは田中邦衛さんだった。加山雄三は薄っぺらで大嫌いだが、田中邦衛さんの演技は味のある深いものであった。以来ずっと田中邦衛さんは好きな役者さんであり続けた。彼の演技の深さは、そのキャラクターにもあるだろうが、元々俳優座出身であるから、演技の基礎をキチンと学び、マスターしていたと言えよう。舞台役者の演技力は、映画俳優とは次元が異なることは、両方を観(見)ている人には明らかだろう。ここで自分が観と見を分けていることにも注意して欲しい。そのどちらが深いと判断するかは、読者の判断にお任せする。
 さて、話を本題に戻そう。最初に挙げた理由と田中邦衛さんに纏わる話題を入れて自分が何を言いたかったのかということである。短く言えば、ThreeQuaarterの役者さん、そしてThreeQuaarterの公演に参加する役者さん達は、皆さん爽やかなのである。一所懸命に役を生きようとしている点に於いてこの点が光る。そしてこれは役者という職業にとって最も大切なことの一つである。今回は、青チームを拝見した。出演していたのは、4人の役者さん、4人総てが、上記の要件を満たしていたが、自分が最も気に入ったのは、木村伝兵衛を演じた斉名高志さんと速水健作刑事を演じた吉田一番さんのお二人。斉名さんは若干噛むシーンもあったが、その存在感は抜群、吉田さんはスマートで演技力・記憶力の良さでもバランスの取れた完成度の高い演技をしていた。水野を演じた櫻井まりあさんは、もっと精神的に己を裸にすると化ける可能性はあろうが、もう少し精神的な深みを獲得して欲しい。若干噛んだシーンも先に挙げた点を改善すれば自ずと解決するような気がする。大山を演じた高田純也さんの体裁き、バランスの取れた演技も光ったがこのバージョン以外では、島の大関として登場する大山のイメージが自分は払拭できずファーストインプレッションで相撲の代表としては体が細いな、と感じてしまった点で大変失礼な観方をしてしまった。この点をお詫びしておきたい。基本的に皆さん良い芽だと思う、互いに切磋琢磨して更に先を目指して頂きたい。
 掛かる音楽のセンスや、照明もいい線イッテいる。スタッフの対応、前説もグー。気持ちの良い観劇体験が一つ増えた。お礼申し上げる。
何となれば、一所懸命に役作りをし、役を生きようとする役者さんが圧倒的多数を占めるからだ。役者というのは大変な職業である。舞台とは基本的に比較にならないが、自分がガキの頃、加山雄三が主演の若大将シリーズというのが流行った。カッコいい若大将に対してカッコ悪さそのものとして青大将という役柄があり、演じていたのは田中邦衛さんだった。加山雄三は薄っぺらで大嫌いだが、田中邦衛さんの演技は味のある深いものであった。以来ずっと田中邦衛さんは好きな役者さんであり続けた。彼の演技の深さは、そのキャラクターにもあるだろうが、元々俳優座出身であるから、演技の基礎をキチンと学び、マスターしていたと言えよう。舞台役者の演技力は、映画俳優とは次元が異なることは、両方を観(見)ている人には明らかだろう。ここで自分が観と見を分けていることにも注意して欲しい。そのどちらが深いと判断するかは、読者の判断にお任せする。
 さて、話を本題に戻そう。最初に挙げた理由と田中邦衛さんに纏わる話題を入れて自分が何を言いたかったのかということである。短く言えば、ThreeQuaarterの役者さん、そしてThreeQuaarterの公演に参加する役者さん達は、皆さん爽やかなのである。一所懸命に役を生きようとしている点に於いてこの点が光る。そしてこれは役者という職業にとって最も大切なことの一つである。今回は、青チームを拝見した。出演していたのは、4人の役者さん、4人総てが、上記の要件を満たしていたが、自分が最も気に入ったのは、木村伝兵衛を演じた斉名高志さんと速水健作刑事を演じた吉田一番さんのお二人。斉名さんは若干噛むシーンもあったが、その存在感は抜群、吉田さんはスマートで演技力・記憶力の良さでもバランスの取れた完成度の高い演技をしていた。水野を演じた櫻井まりあさんは、もっと精神的に己を裸にすると化ける可能性はあろうが、もう少し精神的な深みを獲得して欲しい。若干噛んだシーンも先に挙げた点を改善すれば自ずと解決するような気がする。大山を演じた高田純也さんの体裁き、バランスの取れた演技も光ったがこのバージョン以外では、島の大関として登場する大山のイメージが自分は払拭できずファーストインプレッションで相撲の代表としては体が細いな、と感じてしまった点で大変失礼な観方をしてしまった。この点をお詫びしておきたい。基本的に皆さん良い芽だと思う、互いに切磋琢磨して更に先を目指して頂きたい。
 掛かる音楽のセンスや、照明もいい線イッテいる。スタッフの対応、前説もグー。気持ちの良い観劇体験が一つ増えた。お礼申し上げる。
誰か決めて

誰か決めて

吉祥寺GORILLA

王子小劇場(東京都)

2021/07/07 (水) ~ 2021/07/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 この作家、嵌る人が多かろう。華5つ☆。ベシミル! 1回目追記2021.7.10:15:18 2回目(ラスト追記)7.11 23:48

ネタバレBOX

太宰 治に感性が似ているのだ。而もその感性で現在の日本を生きている。一般的かどうか知らぬが、自分が読んだ太宰評で彼は道化を演じたということになっていた。今作で作家が示したのは、もっと現代的な日本での精神の地獄である。現実社会と辛うじて接点を持っている場合には無論、神経症の診断はされてももっと踏み込んだ統合失調症と見做される訳ではあるまい。フーコーの極めて明快な定義によれば“狂気とは純粋な錯誤である”。純粋な錯誤である以上、そのように診断された個々人は総て絶対的な孤立・孤独に封じ込められている。
 ところで、今作の主人公の基本的症状はアパシーに近いのではないか? 自分は心理学については全くの素人だから詳しいことは分からないが総てに意欲を失ってしまった主人公の様子はそのように見える。今作の内容に沿う薬品がどのようなものであるか分からないが、ネットで調べた限りではアパシーに有効な薬は現在の所無いとの情報を得た。従って仮にも完全治癒と診断される為には己唯孤りで社会性迄獲得せねばならない。大抵の薬は一般人からみた発作(奇異な行動や突発的に見える奇矯行動・言説に至るような先鋭化を抑えることしか目指していまい。治療の効果等殆ど無いのではないか? そもそも現代心理学の根底にフロイトが位置付けられておりそれが正当化されているのであれば、それは数多くの実証を基としていなければならないが、果たしてそこに明証性が担保されているのか? 聴き取り等が主であれば、客観性はどのように担保されるのか? 以上挙げたたった2点すら客観的データとして仮に挙げられていないとすれば、フロイトが提唱した論理そのものが、家系的に多産系であった彼個人の悩みに起因する性の問題が抜本的な検証を受けていないことになりはすまいか? トウシロウである自分のこのような仮定に真実性があるようならば、そもそもフロイトの流れを汲む心理学自体を疑わねばなるまい。にも関わらずフロイト系心理学がベースになって現在の心理学が成り立っているとすれば、そこで精神的疾患があるとされ、投薬された患者の身体は如何なる影響を受けるのか? 因果関係に客観性がなく、而も根底にある理論が学会権威に支持され、社会に“信任”されていれば適当な薬を作って売れる製薬会社は濡れ手に粟は必定。最低限そこまで想像力は働いて当たり前である、真実は何処にあるだろう? 人間の物語というだけで優れた今作であり、その点に関する評価は、他の方もしてくれるであろうから、自分の想像力を含めて記しておいた。
 舞台美術も面白い。板上を四辺に区切り一番奥を他の三辺より更に高くし四辺で区切られた真ん中を奈落よろしく穿たれた空間にしてある。その下手、つまり最も高い段に設えられた中央に対して直角に延びた左辺中央から上手に突堤の如く延びた張り出しは人が載っても充分荷重に耐えられる作りになっていて、その下は恰も欧州の集合住宅建築によく見られる中庭の構造に似て、可視化された奈落の如くである。出吐けはこの四辺構造のホリゾント下手。劇の進行の殆どが高くなった空間で演じられるので何処に座っても非常に観易いのも有り難い。脚本・演出・演技・キャスティング・裏方さんの対応も自然で良く優れた舞台である。照明・音響も可成り芝居を拝見している自分ですら殆ど意識しなかった程自然に為されていた。これは特筆に値する。

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