奇燃 公演情報 カリフォルニアロール「奇燃」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     演技も学生さんの演技としてはかなり上手い。殊にリク役、閻魔役の殺陣での動きがグー。大人の役者が演じたら身体から滲むものが見えて更に深みが増すことは間違いない完成度の脚本でもある。

    ネタバレBOX

     タイトルはキメラと読む。無論ギリシャ神話に登場するライオンの頭、蛇の尾、山羊の胴を持ち口から炎を吐く怪物の名であることは誰もが知っていよう。然し今作、これだけに留まらずもう少し捻りがある。寧ろ未だ遺伝についての科学的認識が充分でなかった頃世界中の科学者が双生児について一所懸命研究していたことは御存知だろうか? まあ、そっちも寄り添った話である。
     物語は彼岸と此岸の間に在る時空で展開する。即ち閻魔大王等が天界行き、地獄行き等の判断を下す場所と考えて貰えば良い。無論、人間界での死が前提となるが、三途の川を渡ってしまうか否かはキチンと判定しなければならない。例えば昏睡状態は、死に似ているが生命は未だ此岸にある。心肺停止でも蘇生するケースがあるがこの状態にある者の死と生の判定は実に困難と言わねばならぬ。何れにせよ、今作では閻魔大王の居るこの時空に他にも九体の各部署の長がおり所管の事案を担当しているという設定だ。その内閻魔は最も力のある存在ということである。事件は、盆の法要も終わり大忙しが一段落し多忙を極める閻魔が休養を取るのはこの時期しかないという理由で閻魔は自慢の養子・利八(愛称=リク)を代理に立て休暇を取った間に起こる。只でさえ多忙で人出不足とあって合理的判断を下すリクは、自分の最も力を注がねばならぬ職域を最優先で担当し生死の判定等はしっかりしていると見込んだ獄卒らに任せた。ところがこの任務を任された獄卒が蝶狂いだった為、偶々現れた蝶を追い新たにここへ来た海未(ウミ)の意識不明状態を死と判断しここ迄寄越してしまったのである。この大失態を埋めることのできるのは閻魔のみ。然し彼は休養の為遠くに居て直ぐには戻れない。本来ウミの意識は一晩明ければ回復するハズだったが予定はずれ込む。この事件が切っ掛けとなって第七御殿を差配している、慈愛遍く諸般の事情から名の分からぬ者がここに来て永久に輪廻転生のサイクルに乗れないことに胸を痛めてきた長・京極は今回閻魔の代理を務めているリクについても名が分からぬ為に転生できないことを哀しく思っていた為もあり子飼いの者ら・喪揺&徒然を使い自身は謹慎中である為開錠できない神域の鍵をウミに渡して開錠し閉じ込められていた名の無い者達総てを開放し反乱を起こした。無論、リク自身もこの問題に悩んでいて担当部署の第五御殿で働く百目鬼に精査を依頼している最中であった。百目鬼から誕生の秘密を知らされたリクと開錠したウミは反乱の最中に出会い互いの宿命を知ることになったが、喪揺、徒然及び反乱軍と戦うことになった。このことは休養中の閻魔にも知らされ閻魔は休暇を早めに切り上げ戻ることとなった。最後にどうなるか? ウミとリクの知った秘密とは何か? 二人の関係は? 事件はどう展開し、収束するのか? 等々は観てのお楽しみだが、舞台美術は一見シンプルだが、良く考えられ合理的な作りだし、音響、照明もグー。殺陣の動きも良い。脚本は論理的整合的であり、全体のバランスも良い。演出も賢い演出だ。ダンスシーンが一部にあるが、大抵の芝居でそのダンスに必然性が感じられないので嫌いな自分にもすんなり素直に受け入れられる必然性があって驚かされた。お勧めである。

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    2022/10/16 00:29

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