陽炎 公演情報 劇団アルファー「陽炎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     幕の合間に10分の休憩を挟み、この間に大仕掛けの舞台転換を行う。一幕はホリゾントに焼け野が原になった東京の写真が壁面一杯に広がり、その手前には食料品、日用品を扱うただ腰の高さに板を設えただけの「店」が並び、店主は総て女性、上手には元蕎麦屋の瓦礫の梁に筵を下げて入口とした廃屋がその戸口を斜めに曝しているが、無論この家に纏わる女たちが住んでいる。所は銀座三丁目だが、皆焼け落ちて何処に何が在ったかも皆目分からないというのが一般であった。板を使った商いの女たちの背後にも瓦礫と化した柱等が林立し火事場の腐臭を放っている。敗戦1年後GHQが総てを支配する形が露骨だった時代だ。(追記2022.10.5)

    ネタバレBOX

     序盤、演技を創りすぎ不自然な印象を齎す役者が多かったのは残念。曜子役は噛みすぎ。演技で気に入ったのは桜役、たけし役、ちあき役、館野役。
     物語に関わる女たちの仕事も状態も様々である。例えば既婚者も戦死したハズの夫が生きて戻って来たり(その時既に戦死したとの知らせを受け妻は再婚していることも)、まともな仕事が無く、生き残る為にはGI相手の街娼をする他無かったり、違法であっても配給では飢え死にする他無い為闇市に店を構える等。こんな状況を居直り状態を示す歌詞の音曲とダンスで示したりするが、単に居直っているだけで負ける迄は‟欲しがりません勝つまでは!“ だの‟進め一億火の玉だ!“ だの言っていた割には誇りを失っていたのは情けない。ドイツでもララ物資が配給されたが、日本とは異なり、人間の食べ物を寄越せ! という叫びが上がった点で、未だに地位協定が行政協定と殆ど変らない日本とドイツの改善された独米地位協定の差は明白である。
     二幕では陽炎と名付けられた純喫茶の店内、筵の下がっていた場所は店内への入り口となり正面にはレースのカーテン付き硝子窓、椅子・テーブル等も戦災にあった劇場で使っていた物を修理したり塗り直してリサイクル、小じゃれた作りになっている。何と言ってもザギンである。出演者の中には極めてダンスの上手い女優、歌の上手い女優の他、カンフーをやっていそうな動きを見せる男性俳優等も居て(作曲家役で普段はヘテロとは思えない素振り)ヤクザ相手に大立ち回りを演じて恰好良い。ザギンもヤクザのシノギには極めて有効なエリアであったので闇市が立つのは自然の成り行き。実際に闇市を仕切っていたのはヤクザであったしマッポも治安対策を名目につるんでいたことは常識である。
     全体として情緒レベルに落とし込んだ脚本になっており、女性達の苦労・苦悩は在る程度表現されていたもののリアルであるよりはエンタメ要素の可成り入った作品という印象を持った。

    0

    2022/10/01 14:24

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大