「5…」 公演情報 四分乃参企画「「5…」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     ThreeQuarterのカウントダウン公演「5・・・」である。華4つ☆(少し追記10.17)

    ネタバレBOX

     池田屋の階段落ちシーンで余りにも有名な作品から、大部屋のヤスが受け取る差出人不明(ミモザという名は冠してあるが筆跡も分からぬよう活字の切り貼りで記された)のファンレターを梃にしつつ、実行すれば死、良くても半身不随か植物人間という階段落ちに戦きつつも、銀ちゃんの為なら死をも厭わず、銀ちゃんの子を孕んだ小夏との結婚も呑んだヤスの一種の漢気と、照れ症そのものが人格化したような銀ちゃんの優しさと愛情表現の形、銀ちゃんを愛し乍ら、数々のリスクや不利を承知でいつも一緒に居て気遣ってくれるヤスにどんどん惹かれてゆく小夏の、逆子で臍の緒が首に絡まって辛いのにお腹を蹴る胎児を帝王切開や出血死の危険を顧みずに産もうと決意する女性の姿は例えようも無いほど美しい。
     つか自身の裸形が最も良く顕れた作品の一つであろう、今作の核を今作で表現した。スリクオのカウントダウンというのが寂しい。
     つかの裸形が最も良く顕れた作品の一つだと書いた。それには無論根拠がある。「銀ちゃんが逝く」で描かれた世界は今作と重なる台詞も多いが、在日朝鮮人や部落を含め実は差別が可成り色濃く反映された作品であった。衆知の如くつか自身在日出身である。実家が可成り豊かだったこともあり大学迄進んだものの在日であることに因って差別の経験を味わった友人・知人・親戚・縁者等も居たであろうことは想像に難くない。今作でも差別構造は端的に示されている。スターと大部屋役者との関係の中にである。そして今作のラストでミモザが誰だったかも明かされるのであるが、スターと大部屋俳優の逆転がここで為されていることの意味を考えるならば、つかの希いは明らかだ。死地に赴くヤスの小夏に対する告白内容のアンヴィヴァレントが小夏に対する止むに止まれぬ愛情の深まりと死によってしか差別構造に抗えないことの理不尽をいやが上にも表している。小夏もヤスの抱える難題に深く関わり更に愛をも育ててきたが故に、自らの命を賭けた出産に真っ向対峙し果たしたのだ。その覚悟をした女性の透明感を漂わせる美しさを、筆者は今作の白眉と観た。アンビヴァレンツな状況を演じたシーンでのヤスの引き締まった表情も見逃せない。

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    2022/10/16 01:03

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