ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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果てしの花園 【ROSE】 【JASMINE】

果てしの花園 【ROSE】 【JASMINE】

室生春カンパニー 劇団 風の森

荻窪小劇場(東京都)

2012/06/21 (木) ~ 2012/07/01 (日)公演終了

満足度★★

若書き
 とはいえ、もう少し完成度の高いものを期待していた。特に、導入部とメインプロットの繋がりが弱い。もう少し論理的に運ぶべきだろう。それに英語の発音が悪い。歌、踊り共に、修練を積むべきであろう。現在では、素人でさえ、ブレイクダンスなどの踊りを街中で結構上手に踊る。プロを目指すのであれば、身体性をキチンと考慮し体も絞るべきである。振付も冗漫に感じた。
 演技に関しては、若い俳優たちの間の取り方にタメが無いのが気になった。それが無いため、表現が表面で上滑りしてしまう。
 総じて技術レベル、思考レベル、身体性に対する哲学的考察レベル、論理徹底性のレベルなどに大きな問題を抱えているように思った。好感を「もったのは一所懸命であったことである。ますますの精進を望む。

ミュージカル 湖の白鳥

ミュージカル 湖の白鳥

劇団あおきりみかん

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2012/06/22 (金) ~ 2012/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★

遊び心となんちゃって精神
固くなりがちな頭を柔らかくほぐすようなギャグが、隋所で、炸裂する。夢を追い小演劇に関わる者の本音と現実対スターダムにのし上がった者の相克に男女の相克が交差する。本音と表向きが「夢うつつの波間」に対立し、それは男女間のジェンダーの差を際立たせる。このような情況の中、白鳥号は海に見まごう湖の中心部へ航行している。
歌う気になるとも思えぬシチュエイション設定は、所謂ミュージカルへのパロディーともとれる。そのようなつくりであるのは、流石に中京地区演劇の女王ならではの才覚ばかりでない。このような芸当をやってのけられるのは、無論、この劇団のたゆまぬ努力とチャレンジ精神の賜物だ。実際、歌も上手いし、ダンスも上手い。そればかりか、ミュージカルと敢えてタイトリングしている以上、各出演者が、新たな芸を仕込んでいる。座長がベースギターを弾いたり、演劇部の先輩を演じている女優がバイオリンを弾いたり、箱をパーカッションとして叩くリズム、タンバリンのリズムの正確さも中々のものと各々役者陣が新たな事に挑み、舞台に掛けられる所まで修練を積んでいるのだ。その一方、作・演出そして女優迄こなす座長も自らを振り返るということをしているようにも思った。楽しい舞台であると同時に、日本で小劇場の演劇に関わる人間個々人にとっては身に積まされる内容を多く含んだ舞台である。無論、舞台関係者のみならず、そうでない方にも楽しめる舞台になっている。

水無月の云々

水無月の云々

中津留章仁Lovers

タイニイアリス(東京都)

2012/06/21 (木) ~ 2012/07/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしいという以外になし
 初見の舞台であった。劇場はタイニイアリス。良い劇場だが、ホントに小さい。そして、最近、改善されたものの、長時間の公演はお尻が痛くなる、という小劇場特有の事情もある。2時間半の上演とアナウンスで聞いて、珍しいな、と思う。この劇場は随分通っているが、休憩を5分挟むとは言え、2時間半の公演に出会うのは、自分がこの劇場に通って初だ。但し、舞台上のセットを見ると、これも、凄い。世界的な演出家である、李 潤澤氏が引き連れて来た“コリペ”の“屋根裏の床を掻き毟る男達”の舞台セットの素晴らしさに拮抗する物を感じたのは自分だけではあるまい。
 この感覚は裏切られなかった。舞台は、実に他愛ない引っ越しシーンから始まる。と言っても、普通の引っ越しとは若干違う所が味噌だ。段々、この家族が、とても良い雰囲気なのによそと違うことが明らかにされてゆく。

人斬り海峡

人斬り海峡

タイガー

OFF OFFシアター(東京都)

2012/06/20 (水) ~ 2012/06/24 (日)公演終了

満足度★★★

肩の凝らない笑い
 ギャグの質はイマイチという気がしないでもないが、とにかく、肩の凝らない馬鹿馬鹿しさには笑える。上手い点は2点。最後の最後まで、「例のブツ」が何なのかを明かさない点と、土壇場のドンデンだ。

落ちる紫陽花

落ちる紫陽花

張ち切れパンダ

サンモールスタジオ(東京都)

2012/06/13 (水) ~ 2012/06/18 (月)公演終了

満足度★★★★

実力あり
  飲食物も本物を使うなど、演劇的にはちょっと珍しい、本物・リアリティーに対する拘りが見られることからも分かるように、シナリオ構成、演技、演出についてもかなりリアルな作りだ。また、女性作家の作・演出ということもあるのだろうが、小物や花のあしらいにもセンスの良さを感じさせる。このことが近頃は珍しい一歩引いた女性像に、リアルな空気を纏わせている。メインプロットでは、男女関係に在りがちな浮気と嫉妬を中心に展開し無理が無い。またこのメインプロットにサブプロットを上手に配置して飽きさせない所など見事である。在り得べき男女の機微を描いて堅実な作品に仕上がっている。

TRUTH

TRUTH

劇団fool

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2012/06/16 (土) ~ 2012/06/17 (日)公演終了

満足度★★★

TRUTH
 安直なギャグの多用が目立ち、主張したいことの浅さが露見してしまった。実際、この国の歴史上、最も下らない時代を生きているであろう我々にとってtruthという言葉が単にポジティブな方向性をしか示さないのであれば、それを態々幕末に設定する必要はあるまい。実際、描きたいものの一番の眼目が裏切りだとすれば、不信をもっと突っ込んだ形で描くべきだろう。或いは、喜劇に仕立てるつもりなら、ギャグにもっとセンスを持たせるべきである。洒落のレベルに到達していない。

so complex semi-normal

so complex semi-normal

拘束ピエロ

プロト・シアター(東京都)

2012/06/16 (土) ~ 2012/06/17 (日)公演終了

満足度★★★★


 完全な裸舞台。床はコンクリート剥き出し、位置確認用の文様が描いてあるだけでシンプルそのものだ。観客は舞台空間を挟むようにシンンメトリカルに位置する。無論、これにはメッセージが込められていよう。プロトシアターという劇場名からもそれは推して知れる。
これだけで劇場が出来するということだ。つまり劇団は、劇場とは、役者と観客が存在し、其処で身体表現が行われる場と規定しているのである。役者の表現と観客の想像力との真っ向勝負だ。余分な物は無い。
さて、現代を一言で言い表すとしたら”不信の時代”だろう。大分前に、本のタイトルにもなった表現ではあるが。実際、再稼働の決まった大飯原発と言い、原子力村やこの国の政府といい、多くの企業といい、全幅の信頼を置かれるような存在がこの国に今あるか? と問われたら多くの人が、口ごもってしまうだろう。そもそも、そんな問い自体がナンセンスだと失笑を買うのがおちか。
 いずれにせよ、この様な状況が、日常の隅々にまで蔓延している場所で、対自存在である我々が、自己認識するというのは、大変なことに違いない。今回、拘束ピエロは、「So complex semi-normal」でこの問題に果敢にチャレンジした。用いられるのは、出演者らの実体験をも含む思い出と真っ直ぐ向き合うことによる、或いは、関わりのあった人々との関係を問い直すことによる、~ごっこという形態のidentifyである。様々なごっこが表現される。虐待、性、虐め、生・死。これらに対置されるのは傷と痛みである。この構造は終始一貫している。彼らがこれらを提示したことには、無論、深い意味がある。虐待について言えば、虐待する者とされる者が居るわけであるが、そのどちらもが他者を必要としている。役者たちはそのことを知っていて、互いを互いの鏡として提示しているのである。因みにこの作品の構造が、これら様々な鏡像を提起し、同時に割れた鏡面によって傷つく自らの存在を辛うじて認識しているとすれば、これらのフラグメンツは不信社会の正に鏡。
そして、この歪んだ世界観を若者に強いる社会こそ日本だという痛ましいメッセージである。

汚れた世界

汚れた世界

無頼組合

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2012/06/15 (金) ~ 2012/06/18 (月)公演終了

満足度★★★★

詩的シナリオ
 タイトルといい、劇団名といい、ちょっとダーティーな感じの作風なのかと思っていたが、詩的で純度の高いシナリオで、無頼派の純粋性を思わせるものがある。きちっとしたメッセージ性を持ちながら、それを内在的に捉え、我々皆が、日常感じていることの延長に提示して見せることによって押しつけがましさや嫌味がなく、俳優たちの演技するものが、素直に伝わって好感を持った。舞台もシンプルで役者たちの演技力で勝負している点も良い。
 目も耳も塞いだまま、生活の為だ、と自らを誤魔化して生きている多くの人々の心のうちのもやもやを舞台化して見せた点でも評価できる。個人的には5点を差し上げたい舞台であったが、他との兼ね合いで敢えて4点にしたが、お勧め。

NOVEL lie’s

NOVEL lie’s

super Actors team The funny face of a pirate ship 快賊船

ブディストホール(東京都)

2012/06/06 (水) ~ 2012/06/11 (月)公演終了

満足度★★★

謎解きと間
 2時間10分と、かなり長い作品で、登場人物名にそれぞれ、意味を担わせる感じもあり、更に、それらが交錯した人間関係を乱反射させる中で、貴族という社会的遺制が絡まってかなり複雑な内容であるにも関わらず、観客を巻き込む為の工夫が足りないと感じられた。実際には、間の取り方に問題があるように思われる。推理劇なのだから、特に、推理を展開する場面では、役者が一方的に科白を述べるのではなく、ちょっと間をおいて、観客自身が考える暇を与えれば、もっと観客を巻き込むことができたはずである。これができなかったゆえに、演劇的なインパクトが薄弱になった。演出に難があるというべきだろう。それでも無理が生じるのであれば、シナリオをもう少し明快にすべきである。何と言っても、話し言葉だけで、演劇は進行してゆくのだ。瞬時に観客に届く言葉が必要である。

【全日程終了!】鬼畜ビューティー【ありがとうございました!】

【全日程終了!】鬼畜ビューティー【ありがとうございました!】

ロ字ック

サンモールスタジオ(東京都)

2012/06/06 (水) ~ 2012/06/10 (日)公演終了

満足度★★★


 思春期の女の子、男の子と社会の中の建前と本音。それらを繋ぐものが、性であったとして、何の不思議があろう。そして、うぶな人格が、性を隠蔽する者とそれに傷つきながらも必死に生きる者の間で歪むとしたら。
 こんな設定で展開される舞台だったが、荒い所や場面転換の未熟などの欠点を抱えつつ、きらりと光る科白も混じる。好感を持ったのは、役者たちが一所懸命なことである。内容の陰惨も、必死の役者たちに救われて爽やかさすら感じさせた。

カサ・ノワール

カサ・ノワール

ZIPANGU Stage

萬劇場(東京都)

2012/06/07 (木) ~ 2012/06/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

素直に見てよかったと思わせる舞台
 舞台美術、装置、その使い方にも多くの工夫が凝らされ、笑いをふんだんに盛り込みながら、推理の展開もしっかり見せる。シナリオ、演技、演出。見てよかった、そう素直に思える舞台であった。テンポの良さも極めつきで、推理部分では、観客にも自分で考えさせるだけの間を取りつつ、絶妙の間合いで演技をこなしてゆく。推理物に必須の要素である、思い掛けない展開もバッチリだ。安定感を持ちつつ絶えず惹きつけるバランス感覚の確かさに、この劇団の底力を見たように思う。

鈴木の行方

鈴木の行方

タテヨコ企画

駅前劇場(東京都)

2012/06/06 (水) ~ 2012/06/12 (火)公演終了

満足度★★

何を描きたいの
 よほど深刻な精神の病でも抱えていない限り、内容的に芝居にならない。もし、深刻な疾患を抱えているならば、せめてそれを匂わす演出が舞台上であっていい。鬩ぎ合いは表面的で訴えかけてこず、笑いにも工夫が感じられない。良く言えば、お茶漬けのようにさっぱりしているのかもしれないが、それは、脂っこい物を食べた上での話だ。茶漬けばかりでは、よほどの工夫がない限り高い評価は望めまい。
 話がうわっ滑りなのは、頭だけで辻褄合わせをしているからではないか? 演劇をやっているならもっと身体性への思慮が必要である。

『まちづくりproject』6月

『まちづくりproject』6月

THE TRICKTOPS

ワーサルシアター(東京都)

2012/06/01 (金) ~ 2012/06/04 (月)公演終了

満足度★★★

作家性
 今回はオムニバス形式の作品が4本。作家は4人であった。かなり長期に亘って展開される、一種のプロジェクトのような作品群なので、未だ、評価するには早いかも知れないが、今回の4人の作家は若い人が多く、その分、燻し銀のような艶を出すには至らないし軽い作品が多かった。今後、作品数も増えると聞く。それらの作品も含めて相互に響き合い、深め合いながら、ある種のハーモニーのようなものが奏でられればと願う。また、良い意味で作家相互の競い合いの中でそれぞれの個性を伸ばしてほしい。

原始力~ゲシュタルト~ン・バボ!

原始力~ゲシュタルト~ン・バボ!

劇団わらく

中野スタジオあくとれ(東京都)

2012/05/30 (水) ~ 2012/06/03 (日)公演終了

満足度★★★★

恐るべき喜劇
 祈りの言葉は「元気ですか、元気ですか、元気ですか? はん!」の不気味。グロテスク、アイロニーが、パロディーと巧みなシナリオ構成にユニソンされ心地よいテンポで進む。舞台は24000年後。元気石が信仰の対象になっている時代。鬼っ子が生まれると10日以内に集落の男のうち一人が犠牲として捧げられる。元気石に元気が無くなったからだ、という理屈が成り立つ世界の話だ。

ネタバレBOX

そこに現れる稀人(原始人なのだが、考古学、民俗学、社会学などの研究者でもあり、旅人として、異界の世界観を持ち込む。折口 信夫の民俗学を想起させる概念だ)は、長老と住人達、その信仰と風習、住人が有り難がる元気石の謎、そして崇拝構造を解明するが、彼は更なる探求の果てに死んでしまう。その後現れたのは商人。商売の何たるかを人々に告げ、その利便性を人々に理解させ、支配欲、権力欲、金銭欲などを煽り立てる。
喜劇的な体裁を保ったまま、単に笑いだけでなく、本質的な部分で、有り得べき我々の未来像の一つを提示し得た。そのことが、まぎれもない喜劇でありながら恐怖を感じさせるという稀有な効果を生んでいる。
 基本的に喜劇なのだが、この喜劇は怖い。その理由を挙げておこう。肝心な所で、物理的事実をベースにするような細かい配慮を払っている。例えば、何故24000年後の設定なのかは、プルトニウム239の半減期だからである。周知の如く、プルトニウムはこの地球上の自然界には存在しない。核融合を通じて初めて生じる核物質である。即ち、人工的な物質なのである。そして住民達が崇拝する元気石とは即ちプルトニウムであり、彼らの間や生活環境に生体異常が多々見られるのも無論、放射性核種の出す放射線に因る被曝の結果である。3.11以降、この国でも多くの人が核について詳しくなったので、この程度の知識は当然前提であろう。幕開きでロケットが発射される時のような轟音が轟くが、あれはこの舞台で話が展開する24000年前の核爆発である。そして、原始人とは、核爆発後に生き残った我々、ヒトの未来の姿だ。舞台上でも彼らの歴史、DNAについての話が出てくるが、長老の脱毛と喀血も無論、原爆症だ。(但し、この症状そのものは、γ線被曝の症状とも重なる。通常プルトニウムによる被曝はα線被曝である)
作家は、この物語で描かれたような情況を、現在の我々の生活に見ている訳だ。その上で発狂せずに、知的で冷静に振る舞おうとすれば、飽くまで喜劇として成立させるしかなかろう。この作品が高いメッセージ性を持つ所以である。
作品の中からいくつか最後に拾い上げておこうか。我々が今、この国で生きている本当の姿の一端を。長老に付き従う人物が明らかに防護服スタイルであること、本尊の入っている祠が90度傾いでしまような大地震が僅か1~2万年の間に起こっていること、一種の実験が行われているらしいことへの示唆等々、この深くグロテスクな事共が、実際、今、この国で行われている原子力村のあれやこれやであることなどは容易に察しがつく。

【満員御礼・次回は11月です!】インストォル

【満員御礼・次回は11月です!】インストォル

ソテツトンネル

神楽坂die pratze(ディ・プラッツ)(東京都)

2012/05/31 (木) ~ 2012/06/03 (日)公演終了

評価
 分かれるだろう。作・演出が意図的にこのような作りにしたと解釈すれば、ある程度、高い評価をつけるだろうし、そうでなければ酷評されても仕方がない。その理由は明かである。通常の演劇作法を無視して作られているからである。終演後、作家を話した限りでは意図的に作ったわけではなさそうだ。むしろ、自分の好みに合わせて創ったらしい。いわば、アメーバが自分の捕食する対象を緩慢に包み込んで消化してゆくように。そしてそれだけであるように。作家の心の網目に偶々引っ掛かったイメージなのである。従ってこの作品には本質的に演劇性はない。所謂、演劇的なものに対する強烈なアンチテーゼやアイロニーもない。ただ、生理的な好みによってチョイスされた断片をコラージュするために利用されたストーリーの如きものが存在しただけだ。それが何を意味するのか、作家も意図していないようであるし、その曖昧な姿勢が作品に方向性と焦点w与えない、というよりぼかしてしまう。その結果良く言えば、一風変わったテイストを感じさせる作品になっている、ということが可能である。但し、演劇作法に則るならば、極めて評価は低くなるであろうことは、先ほども述べた通りである。もう一つの可能性は、将来、全く新しい世界の見方が提示されたときに、大化けする可能性は皆無ではない。

憧れと衝動

憧れと衝動

小松台東

高田馬場ラビネスト(東京都)

2012/05/30 (水) ~ 2012/06/03 (日)公演終了

満足度★★★

アラサー乙女の「青春」グラフィティー
 世話物である。高校時代からのはみ出しトリオも今やアラサー。各々が事情を抱え、失敗経験も積んで故郷の宮崎に会した。各々が、自ら犯した失敗を繰り返すまい、と一所懸命に生きてゆくが、現実は、中々厳しい。
 その有様を、当に現代の地方に生きる等身大のキャラクターで描いた。劇団員もスタッフも、世話物を演ずるにはまだ若いが、良く頑張っている。更なる鍛錬を続けて欲しい。そうすれば更に伸びるであろう。

HOLE(ご来場まことにありがとうございました)

HOLE(ご来場まことにありがとうございました)

田中明子・梶野春菜

Gallery + Cafe : tayuta(東京都)

2012/05/29 (火) ~ 2012/06/03 (日)公演終了

満足度★★★★

熱演
 ギャラリーカフェでの公演なので、女優二人は、目の前で演じている。舞台は殆どフラットで、テーブルと椅子が2脚。小さなカラーボックスが、上手壁際にいくつか置いてあり、小道具が其処に置いてある。
 振られそうになった女の、自己解体、孤独が増殖してゆく様を通して、彼女の至りついた地点を、女性の宿命に重ねて昇華した。女優2人の熱演が見ものだ。バックに流れる音楽の殆どはサティーだ。その選曲のセンスの良さと、この作品とのマッチングにも注目したい。
 無論、いくつかの仕掛けがある。そして、その仕掛けは、劇中に鏤められたいくつものヒントを用いれば、容易に解くことができる。だが、女優の迫真の演技は観客に否応も無く解釈を迫り、久々に観客としても作品との対決を迫られた。

幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい

幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい

アマヤドリ

STスポット(神奈川県)

2012/05/24 (木) ~ 2012/05/28 (月)公演終了

満足度★★★★★

監禁と窓
 ストーリーとして展開してゆくものと、描かれている世界の間にある深い淵が、個々人と世界の断絶を表現して興味深い。面白い表現方法だ。ストーリーとしては「監禁事件」である。但し、本当に犯罪としての監禁が行われているか否かは、劇中でも謎である。なぜなら、監禁されていた場所から逃げ出してきた、と言う少女の証言があるだけだからだ。彼女が逃げ込んだ先は、男二人、女一人がシェアする一軒家。この少女が転がり込んでくるまで、三人の関係は良好であったが。
 シェアメンバーのうちに一人が、彼女を守ると約束したことから、それぞれの人間関係は罅割れてゆく。その展開の中で見えてくるものは、各々の幻想領域の不一致、世界との共存不可能性、個々の絶対的孤独、寄る辺なさ、これら諸事情故の根本的不安から誰一人自由ではないという事実。それを各々が知っているが故の、自己監禁。生存の与件を得る為の自己監禁部屋での窓の必要と疎外。これらが、ラストで象徴的なシーンを創る。

Polar Night

Polar Night

YP

アトリエフォンテーヌ(東京都)

2012/05/25 (金) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

満足度★★★

洗練
 幕開は駅の雑踏を思わせる、ウォーキングを、時にストップモーションで、またスローモーションで展開。これから乗車する夜行列車”ポーラーナイト”への道行きとして洗練された導入部だ。
 作家が女性ということもあり、視座が女性的で細やかだ。案外、女性の本音も語られていそうな気がする。但し、その男性批評に目新しい所は無い。印象批評の域を出ず、既に言われていることばかりなのは矢張り陳腐の域を出まい。本当に勝負を掛けるなら自分自身の頭で更に深く広く独自の視点を持つべきであろう。
 そうはいっても、日常の些事に関しては、女性的な見方が目立ち、男の自分から見ると、細やかで繊細な印象を持った。更に、役者陣それぞれが新たなことに取り組んでいて、ダンス、音楽、歌、などのレベルは高い。

EgofiLterの授業

EgofiLterの授業

EgofiLter

MAREBITO(東京都)

2012/05/25 (金) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

理科室
 「授業」は、演出の実験場だ。それが、分かっているから、演出家は様々な実験を試みる。今回、客は5Fまで徒歩で上がる。エレベーターの無いビルなのだ。入ると、そこは普通の部屋を舞台に改造してある。置いてある道具類は、理科室的な雰囲気である。無論、教授は、文系、理系の博士号を総て取得しているので、それに相応しい雰囲気である。今回の演出の特徴は、教授、生徒共に、影の役者が居て、科白をダブらせたり、演技を視覚的にも重層化させた所だろう。これはこれで、なかなか面白いアイデアであったが、教授役、生徒役がそれぞれ2人ずつ居ることによって、教授はジキル&ハイドに生徒は恐怖する生の状態と社会的慣習に縛られ従属させられるような二元論的人物に受け取られかねない危険性をも孕んでいるように思われた。
 だが、結論からいえば、この戯曲に正解はあるまい。様々な解釈をこのような形にして演じたことに意味がある。楽しめる舞台であった。

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