ひろさきのあゆみ~一人芝居版
渡辺源四郎商店
ザ・スズナリ(東京都)
2013/05/03 (金) ~ 2013/05/05 (日)公演終了
満足度★★★★
熱演
初めの一歩の延長として人生の歩みがある、という発見を通して綴られる一人の女、あゆみの歩みと弘前という街の歩みを当然重ねてタイトルがつけられているのかと思いきや、独り芝居で其処までの延長性を求めることは、酷だったようだ。あゆみ誕生から死までの誰にでも起こる典型的なエピソードを“歩く”という行為の受け渡しに纏めて書かれていた本来の脚本を、独り芝居の無援と孤立という形で舞台化し、其処に母からの視点を照射することでメタレベルの表現に昇華した。
グリーンミュージカル「LADYBIRD,LADYBIRD」
アリー・エンターテイメント
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2013/05/02 (木) ~ 2013/05/06 (月)公演終了
満足度★★★★
Good
よく出来ている。少女が出演者の大部分を占めるが、このようなキャストでここまで完成度が高いのは、立派である。少女達の柔らかい感性を活かしつつ、大人が、きちんとフォローし、演技の上でも脇を固めて過不足なくプロの舞台にしている。実際、キャスティング、少女達の歌や踊り、演技の上手さも、優れたシナリオ、演出に応えた内容であった。結果、死生という重いテーマを扱いながら、決して沈んだトーンにならず、本質的でありながら質の高い抒情性を易しい表現に織り込み、希望の火のともる温かで、爽やかな舞台になった。
からっぽの地球儀
9-States
OFF OFFシアター(東京都)
2013/05/01 (水) ~ 2013/05/05 (日)公演終了
満足度★★★★
フェアであること
最高裁など上級審へ行けば行くほど、この「国」の判断は歪む。これは、本来、下級に当たるはずの日米地位協定が、運用上、日本国憲法の上位に位置しているからである。情報公開法も笊。被植民国家、日本はヤプーの住む国であるというマゾヒスティックな茶番を見る時、この作品の提示したフェアであるか否かは重い問い掛けになり得る。
先輩弁護士、伊藤役の小池 首領の演技が特に気に入った。
「ブサイクな彼女(1月11日)」「金魚と踏切(ユニットhop)」
1月11日
6次元(東京都)
2013/04/29 (月) ~ 2013/04/29 (月)公演終了
満足度★★★★
ブサイクな彼女を拝見
青天の霹靂とは当にこのこと。いくら不況とはいえ、これはないでしょ。という内容の話である。社員2人が、出社すると“ごめんなさい”の張り紙(?)と社長の失踪が明らかになった。
こんな始まり方をする“ブサイクな彼女”リーディングを拝見。近いうちに舞台上演されるので、これ以上、内容については触れないでおくが、人情の細部に迄、配慮の行き届いた優れたシナリオを芸達者な役者陣が演じて見ごたえのあるリーディングであった。それにしても、大阪の劇団は、実力のある劇団が多いというのが、現在までの自分の認識である。殊に彼女役の山村 涼子が光った。
大体、‘6次元’での公演と言うこと自体、センスの良さを伺わせるではないか。この店は、知る人ぞ知る、隠れ家である。一応、誤解しないよう言っておくと、一番近い東京での舞台上演は、駒場、アゴラ劇場で5月初旬“筋肉少女”というタイトルなので、詳細は、自分でチェックして欲しい。
人狼 ザ・ライブプレイングシアター
セブンスキャッスル
上野ストアハウス(東京都)
2013/04/24 (水) ~ 2013/04/29 (月)公演終了
満足度★★★★
参加型ゲーム
キャストは、基本的に毎回違う役回りになるので、科白はアドリブである。即ち、瞬時に、自分の語るべき言葉を、役柄によって守らなければならないルールに拘束され乍ら、選択を迫られる。一方、観客も、推理結果をはんていするシートを渡され、書き込むようになっているので、ゲームの参加者である。この、推理の緊張感が楽しい。
感心させられたのは、役者たちのアドリブ脳の質である。基本的に非常に高いレベルにあるのだ。流石と言わなければなるまい。と同時に、この辺りが、アドリブの面白さなのだろうが、男女により、或いは、個々人の興味を持つジャンルや得意なジャンルの違いにより、表明される意見が、その人の極めて特殊且つ普遍的な社会的・文化的位置を晒してしまうのである。タイトな時間の中で、表現されるものの緊張感と共に、とても新鮮な発見であった。
suicide paradox
拘束ピエロ
シアターブラッツ(東京都)
2013/04/27 (土) ~ 2013/04/29 (月)公演終了
満足度★★★
作家は、もっと世界に自分を開いて
嫉妬やそれに纏わる所有を描くサスペンスということなのだろうが、テーマ自体に軽重の差が無い複数の要素が入っており、アウフヘーベンされていない点、場の転換がかなりあるにも関わらず、出捌けに関して工夫が無い点、関係性を自意識の中で組み上げている点等々で、物語として、第三者に見せる収束点を曖昧化してしまった。
これらの諸条件が、結果的に、サスペンスそのものの、成立を困難にしている。即ち、伏線が伏線としての機能を果たさず、物語を拡散させる方向に働いてしまった。もっと、シナリオの段階で登場人物たちの声を作家は聞くべきである。ナルシシズムは、この場合、最大の敵だ。詩と同じで、劇に於いて、その登場人物は、具体的なものとして生きていなければならない。それは、シナリオレベルで、そうあらねばならぬのは、当然のことである。そうでなければ、役者がイメージを掴めまい。
カルブ・ル・アクラブ
箱庭コラァル
鈴ん小屋(東京都)
2013/04/27 (土) ~ 2013/04/27 (土)公演終了
満足度★★★
甘え
独立し、アレンジされた三つの童話(赤ずきん、眠り姫、青髭)を、ヴァイオリンの生演奏、用意されたBGM、背景映像などと組み合わせたパフォーマンスだ。ヴァイオリンは、まずまず。だが、ソロコンサートで聴けるレベルではない。童話のアレンジ部分も、矛盾があったり、話の展開が、見えてしまうなど、まだまだ勉強が必要だ。更に、演者自身のポテンシャルが上がってくるまでに、開演からの時間が掛かり過ぎる。しょっぱなの朗読は、字面を唯、上手に読もうとしているだけであった。もっと、科白自体を練り、イマジネーションの発露が音声になるようなレベルで朗読に挑むべきであろう。
また、かむシーンも多くみられた。練習不足が明らかである。何れにせよ、まだ、プロとしての認識が甘い。怪我をした話をしていたが、プロである以上、客の前で言うべきことではあるまい。
アベンジャーズ
カプセル兵団
ワーサルシアター(東京都)
2013/04/25 (木) ~ 2013/04/29 (月)公演終了
満足度★★★★★
男ならでは
映画の「アベンジャーズ」は観ていないのだが、映画との引っ掛けとか。何れにせよ、アメリカのヒーローも登場し、日本のヒーローとの丁々発止が、よく出来ている。また、日本のヒーローたちも、活躍した時代毎に、往年の、中年の、若いの、と三世代の様々なタイプに分かれ、その時代の価値観、メンタリティー、行動様式迄浮き上がらせる見事なものだ。エンターテインメント形式の文明批評と言えるかも知れない。
くおんの空
劇団グスタフ
シアターグスタフ(東京都)
2013/04/25 (木) ~ 2013/04/28 (日)公演終了
満足度★★★★
まじめな作り
知覧特攻基地に満州から配属された朝倉少尉以下5名の搭乗機はオシャカ寸前、整備兵からも頗る評判が悪い。修理しようにもエンジン自体に相当ガタの来ている代物なのである。「一緒に散ろう」と誓った他の満州帰りも、機体の不良で合流できないまま、出撃の日を待っている状態である。人倫に篤く隊員からの信望もある少尉の計らいで、整備班も最大の努力はしてくれるのだが、いかんせん、整備がまともにできないような機体では、沖縄どころか、奄美までも飛べるかおづか危ぶまれるのである。更に、整備不良で帰還したとなれば、精神的ダメージも大きい。死を前にそんな精神の緊張と弛緩を繰り返さざるを得ない特攻隊員たちの唯一の慰めは、慰問に訪れる女学生たちの微笑みやほのかな恋である。(追記4.28)
トモダチ
演劇ユニットハイブリッド
阿佐ヶ谷TABASA(東京都)
2013/04/25 (木) ~ 2013/04/28 (日)公演終了
満足度★★★★
寓話
テーマが、ハッキリしており、シナリオも明解。役者陣の演技、演出も良い。結果、友情というものの極めてデリケートな性質を炙り出すことに成功していると同時に、人の情、命の論理、倫理に対するシステムの論理の優位性を提示して見せ、この「国」で、人倫に関わる総ての論理が、システムの論理によって排斥される様を描いた。同時に、システムの論理は、ヒエラルキー上位のものに対しては従属的である構造も示すことで、終にはシステムそのものの硬直性を示唆している。
ブルーノ・シュルツ『マネキン 人形論』
シアターX(カイ)
シアターX(東京都)
2013/04/25 (木) ~ 2013/04/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
彼我の差を越えて
ポーランド人の魂に焼きついた深い傷。それは、現代においても彼らの魂の奥底に滾るマグマである。独ソ不可侵条約後、東西を分割されたポーランドは、民族の土地を奪われ、喪失していたばかりではない。彼らは殲滅戦の対象だったのである。周知の通り、ナチ以降のドイツは、分轄領内でもユダヤ人を、ソ連は、矢張り分轄領内でポーランド人を殲滅しようとしたのだ。結果、この作品で描かれているように、人は存在し続ける為に、マネキンになった。即ち、人間が、マネキン化されたのである。言い換えれば、生きている人間は、人間としての所作を剥ぎ取られ、マネキンとして生きるしか無かったという状況を表しているように思われる。そこには、故失くして存在の根拠を奪われ、自らの土地に安住することも妨げられ、存在そのものが、アポリアと化した彼らの苦悩の歴史が読みとれよう。
然し乍ら、演出家は、俳優が単にマネキンをマネキンとして演じることを潔しとしていない。マネキン化は、演技の死を意味するだろうからである。かれは、俳優が演じるマネキンが、人格を持つことを要求する。ここが、この演出家の優れた点である。その為に俳優達に演出家が望んだのは個々の俳優自らの方法論である。再度言うが、人格を持たない存在が、人格を持つことを要求したのである。俳優達は、これに見事に応えた。
観ている自分は、始まる早々、役者が竹馬を履いているのではないか、と思うほど大きく見えて、彼らの力量を見せつけられた。(追記4.28)
で・あること
明治大学実験劇場
明治大学和泉キャンパス・第一校舎005教室(東京都)
2013/04/24 (水) ~ 2013/04/27 (土)公演終了
満足度★★★★
示唆的
所謂“人間らしさ”なるものが失われ、システムが、幅を利かせる時代になってかなりの時が経った。このような社会の激変に対し、人々が皆上手く対応しているとは言い難い。結果、多くの人々は、その存在感の喪失に悩み、自らの立ち位置を失くし、ただ、漂うのみである。そう言って過言ではあるまい。作品に語られている女子大生監禁事件は、実際に起きた事件だということだが、その背景に在るのは、存在感喪失の不如意ではないだろうか? その辺りの事情を若く鋭い感性が掬いあげているのではないだろうか。(追記完了4.25)
あ〜あ
泥棒対策ライト
多目的スペース・キチム(東京都)
2013/04/24 (水) ~ 2013/04/26 (金)公演終了
満足度★★★★
核拡散の時代
中心性を喪失した我々はいわばépaveの如きものである。集約点を持たないから意味を持たない。従って意味の無い時間・空間の央を彷徨う他に無い。その旅の徒然に我らは遊ぶのだ。恰もそれが、我々が人間であるということを証明する唯一の術であるかのように。人間が遊ぶ動物だと言ったのは、確かホイジンガだったと記憶するが、他にもたくさんの知識人が同じ意味のことを指摘しているだろう。日本でも、後白河法皇が編纂させた「梁塵秘抄」の一節に“遊びをせんとや生まれけむ”の有名な一行があるのは、周知の通りだ。
何れにしろ、今回、このパフォーマンスに採用されたタイトル“あ~あ”は、表現している者達が、この状況を存在の不如意と捉え、意識してのつぶやきと捉えることができよう。遊ぶ姿は、紙相撲、満員電車、だるまさんがころんだ、閉店間際のファーストフードショップで、一円が足りなくて財布をひっかきまわし、長蛇の列を作らせる男、男と女、憧れの投手にラブレターを渡そうとする女子の争い等々が、巧みな振付によって、パフォーマンス形式で演じられる。だが、核技術が制御不能、処理不能のまま、拡散し続けている以上、様々な形式で遊ぶ我々が辿りつく先は、No Mans Landかもしれない。“あ~あ”!
流れる雲よ2013 ~海~
演劇集団アトリエッジ
笹塚ファクトリー(東京都)
2013/04/19 (金) ~ 2013/04/28 (日)公演終了
満足度★★★★
戦争をどう見るか~風を拝見~
靖国で会おう、という言葉・表現は、戦記物でよく見掛ける。然し、第二次世界大戦で大敗した日本の総括を殆ど誰もやっていないのではないか? というより、総括しようとする動きすら少ないように思う。それこそ、この国が負けた根本的原因ではないか? 戦争は、無論、愚かなことだ。誰しもそれは言うだろう。平時であれば。然し、戦時にそれを言うとこの国ではパージに遭う。多様性や自由、それを言う権利が最初に死刑になるからだ。恰も、情に流され、共感した振りを上手にこなし、涙を垂れていればそれで、肝心なことは総て素通りしてくれるとでも言うように、いつも誰か任せの、鵺のようなこの国の正体。
無論、近現代戦争のような社会的、経済的、技術的、組織的、且つ、人心操作的な事象を演劇化するのは並大抵のことでは無い。それをしようとすれば、今回のように、理不尽な死を強制された若者と恋に収斂させて、戦争全体ではなく限定的な死生を描くか、全体を描くのであれば、象徴乃至はアレゴリーを用いて作劇するか、或いは、ワジディー・ムアワッドのような方法を採るしか無かろう。
全体を見ようとしていない今回の作劇法は、矢張り、メンタリティーに竿を刺すという限界を含んでいるのも事実である。だが、近・現代の戦争はメンタリティーなどでは動かない。システムによって動いているのである。多くの現代戦記を舞台化しているグループのようだ。是非、自分の挙げたような方法でも舞台化を試みて欲しい。
ウェルカム・ホーム
天才劇団バカバッカ
テアトルBONBON(東京都)
2013/04/18 (木) ~ 2013/04/29 (月)公演終了
満足度★★★★
アメリカナイズされてはいるがおもろい
藤田家は大家族、子供10人、父、母、祖母を加えて13人家族なのだ。13年前、この一家は、TV番組の取材を受けた。ディレクターは、敏腕な松村。(追記4.24)シナリオもしっかりしており、力のある劇団と見た。
La Vie en Rose エディット・ピアフと八人の男の話
川崎インキュベーター
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2013/04/19 (金) ~ 2013/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★
ピアフの実存
ピアフの生きざまに感激。だが、内容的にはピアフにおんぶにだっこであった。(追記4.22)星4つはあくまでピアフへの評価があってのこと。
マリー・ボドニック
ロデオ★座★ヘヴン
劇場MOMO(東京都)
2013/04/18 (木) ~ 2013/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★
魔都上海
時は1937年。上海の日本租界の一角。イエュイは、武勇の誉れ高い貴族の愛娘、男子に恵まれなかったこの家の長女である。年頃になったが顔にコンプレックスがあって何時もベールをつけている。彼女の身の回りを世話するのは下僕、ラン・ティエン。目は悪いが、忠実な下僕で彼女の為なら命も投げ出すほどである。
そんな彼女は、父の葬儀で出会った日本人外交官、甲斐に一目惚れしてしまうが、甲斐は、彼女のベールを剥いだ途端、悲鳴を上げて逃げ出してしまった。彼女は深く傷つき、その時以来、武器取引、暗殺などを生業とし黒世界で暗躍するウーの下で働くようになる。(ネタに追加4.22)
魔法使いとストレイシープ~Apology~
劇団ヒラガナ( )
アドリブ小劇場(東京都)
2013/04/19 (金) ~ 2013/04/21 (日)公演終了
満足度★★★
役者
舞台に上がったら、一番大切なことは演技だ。これは、言うまでもあるまい。この点で、残念ながら力不足が、目立った。歌にしても、音感レベルからきちんとしないといけない。絶対音感が無いなら、完全な音痴に徹すべきである。歌のうまさは、聴衆を沈黙させるが、極端な音痴は、大笑いさせる。舞台に上がる以上どちらかであろう。
シナリオも哲学的な浅さが、難点だ。観客にとって伝わらない言語を用いるなら、それが、作品の中で、何らかの痛烈なメッセージを持つべきである。一つだけ例をあげておく。「夕鶴」の与ひょうとつうの会話で、欲に目の眩んだ与ひょうの言葉に対し「分からない。あんたのいうことがなんいにもわからない。云々」という、つうの科白の何と言う痛烈。こういう言葉を目指すべきだろう。
おい、小島!
タッタタ探検組合
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2013/04/17 (水) ~ 2013/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★★
タッタタ探検組合流ミステリー
いつも質の高い喜劇作品を演じ続けてきたタッタタ探検組合が、今回挑むのは、ミステリー。無論、いつもの笑いは健在だ。而も泣かせ所、鋭い風刺、謎解き等々盛りだくさんの内容だ。
発端は3年前、ヤクザと黒い噂のあった町長が、鉄パイプで殴り殺された事件だった。容疑者として手配されたのは、小島という名の組員である。一度、警察は彼を追い詰めたことがあったが、すんでの所で逃げられてしまった。ところが、その小島が出頭してきた。3年間、何処に、どのように潜んでいたのか。若い署員が尋問するが、小島は、話をはぐらかして一向に答えない。退官間際の鬼刑事に尋問者が変わると、刑事の物語り意識に感応したかのように、小島は事件後の顛末について語りだす。その内容は、極めて特異なものだった。
(追記4.23)
一筆入魂~締切追う者、追われるもの~
劇団熱血天使
ワーサルシアター(東京都)
2013/04/17 (水) ~ 2013/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★
創造する者と享受する者
創作に纏わる者の遭遇する諸問題を挙げ、それに関わる人間達の関係や在り様、理想等を織り交ぜているので主張がハッキリしている。それもそのはず。「新思潮」に集った芥川、菊池、久米、松岡らを中心として描いた作品だからだ。劇中、創作者と普通の人々との関係をザックリ描いている点も良い。また、創作の源泉が、大方日常の中に在ることも、作品は創作者を本質に於いて越えるものだという基本認識も正しい。