ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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Y

Y

Project ONE&ONLY

小劇場B1(東京都)

2014/04/18 (金) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★

中々深い と読める
 結婚を、間近に控えた娘が作家、鷲尾宅を訪ねた。用件は1971年に、矢張り作家であった祖父、田代 雄二の家で起きた事件について、単に推理オンリーの作家では無く、深い人間観察と、緻密な論理によって思いも掛けなかった関係の網目を炙り出して行く鷲尾の人間観に基づく深層解析を訊ねたいとのことであった。然し、彼女の持ち込んだ資料は、警察の調書のコピーだと言う。コピーであろうが無かろうが、公文書を無断で持ち出し、それを利用して何かをしたとあれば、法に触れる。鷲尾は即座に断る。
 だが、娘は粘る。持って来た資料は、祖母、裕美子の遺品を整理中に見付けたものだと言う。中を検めてみると、祖父の死が本当はどうであるのか、疑問を持った様子。近々、嫁ぐ自らの血に如何なる要素が含まれているのか、それを確かめ、納得できなければ、嫁に行くことに不安を抱かざるを得ないということのようであった。(追記後送)備考:かむ個所がもっと少なければ星の数を増やしたかも。

推定容疑者

推定容疑者

Cooch

テアトルBONBON(東京都)

2014/04/16 (水) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★

時代・畜人国の今
 テーマとしてネット苛めの問題を扱い、障害者、弱者の問題を取り上げている点に作者の意識の高さを感じる。何でもそこそこできてしまい、恵まれていることの有り難さを知らない者達の残虐性を表した幾つかの科白や、罪の無い者を痴漢犯罪者に仕立て上げる狡猾とエゴイスティックな発想などを舞台化している点でも評価できる。(追記2014.4.20)

ネタバレBOX

 人権後進国である日本の下司な為政者には発想すら無い視点である。先日、カナダでは、ネット苛めが犯罪として認定された、との報道があったばかりだが、日本でそのようなことが、法制化されることが殆ど絶望的なのは、無論、この「国」が、畜人の国であり、宗主、アメリカを神と崇めアメリカ人を神々としている阿保共のせいだが、常識的に考えて、このような為政者の下で完全に家畜化された愚民共が他の発想を実践できるとも思えない。即ち、内心はどうであれ、社会的に現れた意志としては、畜人のそれである。即ち奴隷以下だ。ヒトの形をしているが人として必要な誇りが無い為に、利害の為には共食い、同族争い、裏切り、売国何でもありである。
 因みにテロ撲滅が喧伝されて以来、この畜人の「国」では、まっぽとガードマンが矢鱈に目立つようになった。監視カメラは無論のこと、特定秘密保護法と命名された必要情報隠蔽法は既に成立。共謀罪も近々提出されるのは、去年段階で、畜人の「長」共が抜かしていた事実である。もう一つ、カナダとの比較であげておくならば、生体認証に関して、100万件に一件程の割合で生じる間違いについて、カナダでは、キチンと検討され、対応を一所懸命に考えた、という報道が為されたが、畜人の「国」にそんな発想が無いのは無論である。大体、自分達、民の権利を主張する人間が居ない。居るのは人間ではない。畜人という奴隷以下の存在である。その畜人が、偶に人間を見付けるとよってたかって排除する。その事実を描いた作品と捉えると実に面白い作品である。
 奥の木と赤澤の関係が良い。ラスト7名を殺害した奥の木が、赤澤に未来の一秒、一秒をプレゼントするシーンがあるが、血に汚れない天使のような存在である奥の木の純粋性と汚れを無化してしまう愚者の聖性が、逆に人間の哀しさ、優しさを表して秀でた表現になっている。
フライトNo.2037

フライトNo.2037

フランス演劇クレアシオン

シアターX(東京都)

2014/04/17 (木) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★

侵略国家、アメリカ
 イラク戦争にしてもベトナム戦争にしてもTPPのような経済侵略にしても、デッチあげのマッチポンプで戦争を仕掛けて自国産業を潤し、他国の人々を虫けらのように虐殺して恥じないアメリカの懲りない本質が描かれて面白い。9.11疑惑については自国民であるが、何れにせよ、緊迫感のある舞台に仕上がっている。

ネタバレBOX

ケネディー空港を飛び立つ2037便は、ジュネーブ行き。妻が凍った地面で足を滑らせ足指を骨折した為搭乗をキャンセルした老夫婦を除く、乗客141名、機長以下乗員11名のクルー計152名を載せてほぼ定刻に離陸した。
 離陸後1時間ほどでコクピットに機体の異常を知らせるサインが点った。貨物室の電気系統がショートを起こした模様だが、機長は、総ての回線は二重に敷設されている為、大した心配はいらないと判断を下すが、念の為、スチュワーデスだけには連絡、客の機内持ち込み手荷物が落下して怪我をしたりしないよう、それとなく注意を促すことや、出されていた飲料カップの回収、いざという時、通路を塞ぐことがないよう夕食の手配をずらすことなどを指示した。スチュワーデスは、無論、その辺りを上手にこなし、乱気流の発生地帯に入るのでシートベルトをお締め下さい、とアピール、緊急体制をとった。
 然し、事態は益々悪化。機は空港に引き返さざるを得なくなり、直ぐに管制塔に連絡。緊急体制を整えて貰う。操縦席には白煙が立ち込め、手動操縦も難しいが、頗る優秀な機長は、可能なあらゆる手段をとる。管制塔と機の間で交わされる緊迫した交信が緊迫感をいや増す。
 然し、電気系統の損壊は益々激しく、機は、機長、副操縦士の指示に一切、反応しない。終に交信も不能になった。数秒後、レーダーの視界からも機影は消えた。チーフ管制官は、緊急体制解除を通告。緊急事態に対応していた管制官は仕事を終えた。
 以上が、フライトNO.2037事故の顛末である。当然のことながら、事故後、救難体制が取られ、事故調査が進められたが、海中40mに没した機体から引き上げられたフライトレコーダー、ボイスレコーダーの綿密な解析によっても事故の原因は解明されぬまま、悲惨な航空機事故の1ページを増やしたに過ぎなかった。
 然し、こんな噂が立った。アメリカ航空会最大手ファストネット社によるヨーロッパの新興企業アビアトランス社追い落とし、だ。アビアトランス社がこのフライトに成功すれば、アメリカ国内だけで130機に及ぶ機体発注を受ける瀬戸際であった。ライバルであるファストネット社にとっては大打撃である。そこで、事故に見せ掛けてアビアトランス機を墜落させ、機体への信頼を失わせることによる契約解除を狙った。これが、噂が示唆したことだ。して、事実は、噂通りであった。実際、ファストネット社は、プロを雇いアビアトランス社の攻勢を封じる為に、この「事故」を仕組んだのである。貨物室に特殊な装置を仕掛け、ファストネット社会長の最終決定が下れば、装置を作動させることになっていたのだ。事故に見せかける為、管制塔に連絡を取り、墜落までの模様が証拠として残るよう綿密に機体破戒工作は仕組まれていた。無論、空港迄無事に戻れない算段もしてあった。賽は投げられ目論見は成功。機は墜落してアビアトランス社の名声は地に墜ちた。
 追い打ちを掛けるようにファストネット会長は、航空業界を代表して悔やみを述べる。その席で彼は、自社製品の売り込みを掛け、アビアトランス社に事故原因究明迄の営業自粛を要請、自社に不足分を補う用意があることを告げる。
 
ガチゲキ2(最優秀賞決定!公式HPへGO!!)

ガチゲキ2(最優秀賞決定!公式HPへGO!!)

『ガチゲキ!!』実行委員会

王子小劇場(東京都)

2014/04/09 (水) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★

ピャーVS鋼鉄村松
 シェイクスピア作品をアレンジしてのコンテストだ。比較的若い劇団が多いのではないか。今日拝見したのは、徒手空拳VS方法論と距離を持った者、即ち関係を観る側に立った者とのバトル・フィールドだ。(追記後送)

こんこんと、

こんこんと、

green flowers

シアター711(東京都)

2014/04/16 (水) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

何度でも観たい舞台
 シナリオ、演出、演技、舞台美術、音響、照明、どれをとっても参加者全員が己の仕事をきちんと果たしている。見事で気持ちが良い。(追記後送)

to U 

to U 

トウキョウ演劇倶楽部(活動終了)

あうるすぽっと(東京都)

2014/04/12 (土) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★

スマート
 大学で出会った社交的な男と内向的な男。一人は、真面目だが、内向的で女にもてず、一人は、スマートで、女好きのする顔をしている為、女の子の人気の的である。持てない男は名前をケイといい。もてる方は、名前をユウと言う。ケイは、ユウを神格化、彼の言動を信奉する余り、何気なく口にした彼の言葉を実現する為、偶々、彼に貰った宝くじが当たって軍資金が出来たのを幸い、起業し大きな事業に育て上げる。そして、(追記後送)

路地裏物語

路地裏物語

劇団暴創族

笹塚ファクトリー(東京都)

2014/04/16 (水) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★

晩飯はオムライスにした
 “路地裏”という名の洋食屋。名物はオムライス。マスターの栄吉が作る卵料理の逸品は、旨いと評判だ。向かいの藪蕎麦の親父、正吉とは、ウマが合う。
 早季子は、良く働く路地裏の従業員で離婚している為、子供の正志を店の終わる迄、路地裏で預かって貰いながら仕事をしている。従って正志は、栄吉にとっては子も同然だ。一方栄吉には出来の悪い息子、栄太郎がいる。
(追記後送)

スリーカードモンテ

スリーカードモンテ

projectDREAMER

小劇場 楽園(東京都)

2014/04/15 (火) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★

ブラックテイストを愉しむ
 各々のかードにふられた物語がオムニバス形式で独自に展開するが、各挿話は、最終話で1つに纏まる、という構造を持った作品。各々の挿話はほぼ同程度の時間で演じられ、シナリオ自体良く練られている上に内容的にも面白い。ダークファンタジーとでも名付けたいテイストを持った作品だ。

ネタバレBOX

  元アイドル、アカリが失踪した。ネット上では彼女はドラッグに嵌っていたと噂が立っている。おまけにホストクラブに通い詰めていたという。彼女のストーカーじみたファン、リクオが、彼女のマンションに張り付いて一週間目、終に彼女の住んでいる301号室に入り込む。指紋がつかないように手袋をし、室内の手紙などを物色し始めたが、先客がいた。若い女である。彼女は、あかりの妹だと言う。男は刑事だと言う。当然、警察手帳の呈示を求められたが、暫く躊躇した後これを呈示し、彼女が嘘をついていることを追求すると、彼女も本当の刑事ではない、と主張。住居不法侵入で訴えると負けていない。然し、男は銃を持ち出して脅し、女が妹ではないことを認めさせ、何故、彼女が此処に居るのかについても説明させる。
 彼女、アイは、12月25日、付き合っていた男に振られ落ち込んでやけ酒を飲んでいる時にヒトミに声を掛けられ、彼女の家で飲み直したのだった。ヒトミは、アイの愚痴を聞いてやり、幸せになる薬をくれた。結果、アイも、薬に嵌ってゆく。ヒトミに連絡がつかなくなって薬欲しさにヒトミの転居先を調べて、此処に来たのだった。リクオが調べた通りアカリ宛て、ヒトミ宛ての郵便物が届いていることから、彼女達が此処に住んでいたことは間違いないが、2日ほど前から、姿が見えず帰ってもいない。
 場面変わって、ホスト、ヤスの部屋。女が訪ねて来ている。噂話でクラブNO.1 には、BMBの新車がプレゼントされたという。プレゼントした女は50歳のおばさん、ヒトミ。金の為、NO.1 を維持する為ならホストはおばさんとも寝るのではないか、などという話をしている。そこへ、別の女が訪ねて来る。焦ったヤスは、何とか誤魔化そうと出まかせを言って切り抜けようとする。だが、話はこれで終わらなかった。三人目の女が登場したのである。三つ巴で女に迫られ乍ら、ヤスはまたしても出まかせで乗り切ろうとするが、始めの女、三番目の女は私立探偵であり、二番目の女の依頼を受けて内定を進めていたのである。この話の中で出た出まかせに絡ませて、二番目の女はホストを殺害、ミンチにして牛肉と混ぜ、ハンバーグを作る。
 再び話が変わって事件の背景、挿話の相互関係が明かされて行くが、ヒトミは、内面に問題を抱えて落ち込んでいる女をかもっては、彼女らの金を巻き上げ、終には、ヤクに溺れた犠牲者に殺害させて死体を解体させ、その解体作業を料理と称していたのである。殺された女達の霊が301号室には充満している。ホストも殺された後は、ここに来ていた。このホストに入れ込んでいたのが元アイドル、アカリ。そして、最初にストーカーと出会った女、アイは、ヒトミを殺害する。
Unreality・Bites-アンリアリティ・バイツ-

Unreality・Bites-アンリアリティ・バイツ-

岡本塾・ペーチカトライブ

ウッディシアター中目黒(東京都)

2014/04/11 (金) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★

やかさわ
 出演者が、未だ舞台に上がることに慣れていないので、ホントに一所懸命、滑舌や声のとおりを気にして採る位置や姿勢も好ましい。この状態だから、個々の志望者の評価を下すのは自分はまだ早いと思う。これは観客の立場でだ。願わくば、現在持っているナイーブな感覚を純粋性という鎧で覆って守り、徹底的に率直に物を見、関係もバイアスを排して見極め乍ら、傷つくことを恐れず、決して高慢の罠に嵌らず精進なさるよう。今日は、ひとまず、合格点の星3つを進呈する。

上手な想いの遺し方2014  〜彼岸ノ月を唄う君〜

上手な想いの遺し方2014 〜彼岸ノ月を唄う君〜

削除

北池袋 新生館シアター(東京都)

2014/04/11 (金) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★

演出は勘違いしちゃ駄目
 芝居は頭の数分で決まる。

ネタバレBOX

 本当はもっと短い。これが、自分が、年数百本を観て思うことだ。異化するにしても、同化するにしても、或いは天才的に第三の道を採り得るにしても、脚本と演出、演技は、総て計算された土壌に対する変数でなければならない。この際、定規は、微妙なバランスが取れてさえいればよい。京大の森 毅さん流の好い加減で丁度良いのだ。今回、演じた2人の男性は、表層に留まり続けて、そこで終わっている。これは、演技ではない。単なる軽薄のパフォーマンスである。
 また、演出が余りに酷い。演じられていることの向こう側が無い。かといってぴったり計算ずくで重なっているわけでもない。小屋のサイズも計算に入れていないとしか考えられない程、がなりたて、却って科白が聞き取りずらい。おまけにがなりたてている内容が空疎で、その空疎に対するシナリオ内でのコミットメントが無い。
 日舞の名門の跡取りであるはずの娘、ヒナコの和服の着こなし、歩き方、反発する時の態度に全くリアリティーが無いのは、所作にリアリティーが無いからである。手踊りのように見えがちな日舞も手足れのそれともなれば、腰から下全体を使って踊っているのは、ちょっと注意して観ていれば、誰にでもわかることだ。役者がそれに気付かずにどうするのだろう? まして日本の伝統芸能は基本的に幼児の時から仕込まれる。精神がどうのこうのより、形から入るのだ。従って、その所作は、いくら当人が反発したからといって根こそぎ変えられるものではない。その辺りの基本が出来ていないように思われた。歩き方も殊に和服を着ている時は、キチンと和服を着た歩き方で歩くべきであろう。こういう細部が全然なっていないので、言いたいことも総て嘘っぽく見えてしまう。芝居は無論、嘘なのだが、嘘を吐く者が、嘘の内実を良く分かって居ないと、それは単なる茶番である。安倍みたいな馬鹿と同義にならないように頑張って欲しい。三人のヒナコの中では、伊織版ヒナコが最もアイデンティファイされていたように思う。
 役者の頑張りに敬意を表して星は3つをつけるが、内容的には2つ。
「花や…蝶や…」

「花や…蝶や…」

演劇ユニットN.A.S.

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2014/04/09 (水) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★

artの意味する所
 江戸時代の吉原を舞台にした花魁、吉桜と飛龍一家の足を洗っていた次男坊、掟之心、鮫肌一家の跡取り金治の三角関係が、吉原を二分するヤクザ者同士飛龍一家と鮫肌一家の敵対関係の中で展開する悲恋物語。

ネタバレBOX

 左腕に蝶の痣がある花魁、吉桜(もと夜)は、父と居た所を暴漢に襲われ、父の気絶している間にかどわかされ女衒の手を通して吉原に売られてしまう。偶々、売られた店、白波楼は、中々人情の分かった店で、お上、亭主も、また実際に姉さんとして面倒を見、芸を仕込んでくれた花魁、睡蓮も目は不自由乍ら、極めて優しく情にも厚い女であった為、比較的恵まれた状態で暮らし始めた。然し、はぐれた父の様子も分からず翌年、桜の祭りには就き出しが決まった。睡蓮の仕込みが良く、吉桜自身、芸を磨いたからでもあった。
 然るに、女衒の所で一緒だった朝は、吉桜の為に自分は、苦労を背負いこまされ、日陰ばかりを歩かされてきたと誤解し、彼女の最も大切な者を奪って復讐しようと誓う。
 そこで、彼女の実父の経営する飲み屋へ行って、自分が、彼の娘だと嘘をつき、敵対関係にある飛龍一家と鮫肌一家との抗争に乗じて、吉桜には、掟之心が死んだと告げ、掟之心には吉桜が死んだと告げる。
 互いの事情を納得する迄、話さず早合点し合うことで、敵対関係を亢進させてきた両一家、抗争となって金治は、掟之心を殺害。目の前で恋する者の命を奪われた吉桜も後追いを望む。この心を汲んで金治は、彼女も一緒に冥途へ旅立たせてやるが。
 基本的にロミジュリの骨組みに廓のヤクザ組織を当て嵌め、踊りや殺陣をパッチワークした作品でオリジナリティーに乏しい。ユニット形式を取らざるを得ないのは、朝岡の性格にもよるのだろうが、全体をキチンと筋の通ったポリシーで見せることが出来ないのは、舞台監督という立場の弱さであろう。同じ職人技のパッチワークを作るにしても、キチンとした演出家が、筋を通して欲しかった。拝見した限りでは、何とかパッチワーク風に組み上げた出来の良くない織物という印象である。
 但し、廓言葉は、時代考証をキチンとしたもののように思われるし、朝岡の踊り、玄海 竜二の殺陣は、見事なものであった。だが、演劇は突出したスターだけで作るものではない。この点、アートという言葉の持つ二つの意味のうちの職人芸のみならず、芸術性を目指して欲しいのである。
ティファニーで晩酌を

ティファニーで晩酌を

順風男女

Geki地下Liberty(東京都)

2014/04/10 (木) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★

キュート
 視座や切り口、テーマを様々に変えながら各々独立したコントを紡いで、オムニバス形式で演じた作品だが、どの作品も出演者は総て女子。女性性を敢えて消す、突っ張りをして見せる作品もあるのだが、どの女優さんもキュートである。変にべたべたし過ぎない所が良い。それは、各自が自らを対象化する視点を持っているからである。実人生での様々な経験を芸の肥しにして益々活躍して欲しい。シナリオレベルでも話の腰を上手に折る、というか脱臼させる。これが楽しい。そして、全体の落ちが、矢張り、面白哀しく女性的である所も良い。

新任教師

新任教師

シアターノーチラス

シアター711(東京都)

2014/04/09 (水) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★

日常に隠れた非日常の不気味
 日常的安定という当たり前で空気のような状態が如何に脆く不安定かは、誰も気付こうとしない。無論、それが空気のようにありきたりだと思っているからだが、大地が安定しているように思えても、実は、マグマの上に乗った薄い皮膚のようなものでしかないという事実は火山の爆発が無い限り忘れられがちだ。(追記後送)

POLYMPIC TOKYO!

POLYMPIC TOKYO!

天才劇団バカバッカ

吉祥寺シアター(東京都)

2014/04/09 (水) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

普遍性に到達
 現代日本が抱える最も大きな自由への脅威、特定秘密保護法を俎上に挙げ、米日の支配・被支配関係を織り込みつつ、日本版NSCをも絡めながら、国家、人種、性、ジェンダー、階層、経済格差、機会格差等の諸差別と、これらのマイナスを跳ね返す為の人間同士の支え合いと理想を諦めない為の自己パロディ化や、バイアスをどんどん無化して率直に見、認め合うに至る過程、想像力を用いて普遍性に至る逞しさを表して見事だ。

「髄-zui-」

「髄-zui-」

護送撃団方式

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2014/04/09 (水) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★

志やよし
 テーマといい、内容といい、表現が可也難しい作品である。核暴発を扱っているからである。人類史上、未だ核処理は無論完璧に行われているわけではない。地下埋設で一応「安全性」を確保した国はあるものの、α・β・γ崩壊で放出される放射性核種に対して、その反応を止めるとか、生じる死の灰を無害化できるとかいうことではない。最終的に鉛になる迄、取り敢えず、最も影響を与えにくいと現在考えられている場所に遺棄しているに過ぎないのである。然し乍ら、シアル殻、シマ殻など我らの暮らす大地を地球全体の直径から見るなら、体表程度の厚みしか持たないという認識が、現代の地震学の常識であるが、日本の地震学者の多くは、未だこの立場を取らない。然し乍ら、大陸が移動することは、今や常識であり、現在、別れている大陸も三億年以内には再び一つの大陸になることが予測されている。そのような大地の大変動の中で何処に核廃棄物を埋めても安全だなどと言い得る根拠はどこにもないのが実情である。まして国などという体制がどれほど長持ちするものか歴史を振り返ってみるが良い。そんなものより民族の法が遥かに長く生き延びる。だが、民族が責任を負えたと仮定しても、核種によっては半減期が40億年以上に及ぶものをどのように管理できるというのだ?(ネタバレには後ほど追記)

ネタバレBOX

  一方、核物質の放出するエネルギーは膨大であるから、それが生物の傍で崩壊し続ける限り、或る程度進化した生命体の設計図であるDNAの弱い結び付きを保証している結合力を簡単に立ち切ってしまう。その結果、死んでしまう細胞もあれば、再結合された時に間違った結び付きをし、間違った遺伝子情報をになったDNAが転写され、それが繰り返されて、癌や遺伝子異常による様々な疾患を引き起こすことが考えられる。そして、この図式は、核種の出すエネルギーと生命体の結びつくエネルギーの値が桁違いな為、他のパターンは考えられない。即ち、DNAを持つ程度に進化した総ての生命体は、放射線を浴びれば何らかの悪影響を蒙るのであり、その危険が認識されている為に、医学的に用いられる場合でもなるべく被爆を減らすことが推奨されているのである。それを認めないのは、ヒポクラテスの倫理を自らに適用できないマッドサイエンティストと呼ぶべきであって、医者と呼ぶのは、キチンとした医療を行っている医者に対して失礼である。
 実際、福島第一原発事故後、福島県立医大に入って推進派の露骨な行動の尖兵になっている山下 俊一は、元々、ABCCに勤務して、アメリカに被曝者をモルモットとしたデータを垂れ流し、その後改名した放射線影響研究所でも指導的な立場に立って、放射線核種が生命に与える危険を隠蔽してきた張本人である重松 逸造の弟子にあたる。現在も、その立派な弟子として、福島にあって被爆の実態を隠蔽し続けているわけだ。
因みに2013年12月時点で福島県児童の悪性乃至悪性疑いの甲状腺異常者は75人。100万人換算すると394人になる。一方、国立がんセンターの「がん統計」によれば0~19歳の年齢総人口に於ける平常時甲状腺がん罹患率は2.2人/100万人だから179倍以上の罹患率なのである。而も、問題は更に深刻である。福島県下の18歳以下の甲状腺検査を福島医大が独占し、検査結果を受診者や父兄に説明しない、甲状腺にしこりや膿苞が認められてもカルテや超音波画像を本人に開示しない、他の医院での受診(セカンドオピニオン)を事実上禁止等々、数々の問題点が指摘されている。
キスしてほしい。

キスしてほしい。

劇団 浪漫狂

紀伊國屋ホール(東京都)

2014/04/10 (木) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★

今こういう芝居をやることにどれほどの意味があるのか
 結核病棟で巻き起こる恋愛喜劇が基本で、美空ひばりの曲の使い方がやけに上手い。無論、役者陣の演技もこなれている。然し、志の高さは感じない。ホームドラマの変形なので、マンネリをどう超えるかに関しては、最後の最後で納得のゆく展開をみせてくれる。
 然し、とんでもない政権が、首の皮一枚で残っていた法的根拠迄崩し、名実ともに完全なアメリカの植民地になろうとしている現在、訴求力の強い演劇という形を使ってまで訴えるべき主題だとは思わないし、この「国」が何故簡単に植民地化されているのかが、よく分かる内容ではあるかも知れない。アメリカにとっては、何よりのプレゼントだろう。自分の立ち位置が見えないアホな大衆というのは!

せんせい

せんせい

株式会社トキエンタテインメント

上野ストアハウス(東京都)

2014/04/09 (水) ~ 2014/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

先生に感謝
 退任する英語教師、真野を同僚、生徒達がサプライズ・イベントで送りだそうと企画した。だが、春休み中とあって同僚教師は、保険室の養護教諭を含めて6名。生徒はたった4人。何十年も勤めた先生を送り出すには余りにも寂しい有り様ではある。唯一の希望は、生徒達がフェイスブックにこの件をアップしているということであった。

ネタバレBOX

 無論、肝心の主役、真野が何時頃現れるか? は、送別会の折、何気に確認してある。一応、その予定で準備を進めている。シナリオは体育教師の長壁が書いた。ゲネに近いリハーサルが為され、最終確認をしている所に卒業生がやってきた。フェイスブックを見たという。現在は警察官になっている近藤であった。現在、真野の生徒に接する態度は、おとなしい、冷たくは無いが距離を置いた生徒に葉余りインパクトの無い教師である。近藤の覚えている真野は、1時間近く遅刻してきて何だ、君? Who are you? と問う先生であったが、その注意の仕方に風情を感じる先生ではあった。その後、矢張り、ファイスブックを見た猿丸がやってくる。彼女は現在看護師をしていて夜勤明けだったが、Who are you? の真野が退任するとのインフォを見てかけつけたのだ。その後、現在、教職に就いている瀬良が来る。真野は熱血教師だったという役者をやっている井出が来る。誰も覚えていると言えない舞踏家の三村が来るで、ゲネレベル迄仕上げたサプライズ・イベントは、崩壊寸前。そこへ、現在は、市内でスナックを経営するママとホステスの熊野、園田がやってくる。彼女達の証言では、真野は、寒いジョークの先生だった、と言う。卒業の時代によって真野は大きく変化していたようなのだ。イベントに参加する人間が膨らみ収集がつかなくなるのが確実視されるようになったこの期に及んで、それでも、何とか纏めようと、本来のシナリオを持ち出して、訴える長壁であったが、終に真打ち登場。スパルタ教師だった頃の問題児2人、吉森と田川である。現在は、ヤクザになった彼らは、偶々、友人から真野が退任することを聞き、やって来たのだったが、風体、態度、言葉つきどれをとってもヤクザ以外の何物でもない。それで、皆、ビビってしまった。が、卒業生だというのでむげに追い返す訳にはゆかない。
 一方、サプライズ・イベントの段取りは滅茶苦茶である。疑心暗鬼も起こる。ひょっとしたら、真野が借金をしていて、取り立てのヤクザが来たおではないか? といったようなことを心配したのである。女性教師が卒業名簿を調べると吉森も田川も名前が無い。借金取り立ての懸念がリアリティーを帯びて来た。そこで、長壁・保井は合同チームを組んで、何とか二人のヤクザを追い出そうとする。会場には現役警官もいる。いざとなれば対応する条件は整っている。問題は、ヤクザである彼らに問題を起こさせればいいわけだが、どんな問題をどのように起こさせるか、それが問題なのであった。唯、ヤクザでるというだけでは、逮捕などできないのは当然のことであるから。そこで、相談をした所、滅茶苦茶にマズイ飲み物を彼らに飲ませ、怒らせて暴力を揮ったら現行犯逮捕する、という案が出て、トライするが、他の卒業生が、飲み物の入ったカップを配る手伝いをして計画は潰れ、第2のミッション、に掛かった。例によって、長壁・保井がチームで彼らを侮辱し、怒らせようとしたのだが、彼らの法が一枚上手、総てジョークとして受け流してしまう。第3ミッションにとりかからざるを得なくなり、マズイ飲料を、今、手元に在る物と差し替えて飲ませ怒らせようとしたが、誤魔化し誤魔化しやっていた作業の終盤、椅子の下にもぐって差し替え作業をしていた近藤が不審を問われ、これも頓挫。グチャグチャになっている所へ主賓の真野が戻ってくるという見張りからの連絡が入り、兎に角、サプライズイベント優先で、皆、結束。段取りは、流れの中で自然にできたものに殆ど任せて、真野を迎える。
 ここから先、感動のシーンが続くが、上演中なので、詳細は書かない。是非、観て欲しい。特に、学生時代、問題児だった人には。
 とどのつまり、先生ってのは、信じられる人間が世の中には居るってことを教えてくれる人のことだ。幸い、今迄、自分にもこのような先生が居て下さった。お陰で、何とか人の道に背かずにやってこれた。有り難いことである。
彼はどこにいったのですか?~He's gone?~

彼はどこにいったのですか?~He's gone?~

劇団MAHOROBA+α

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2014/04/05 (土) ~ 2014/04/06 (日)公演終了

満足度★★★

表現したいこと持ってるのかな?
 一応「グズコーブドリの伝記」を下敷きにした作品と「誰がこまどりを殺したの?」を下敷きにした作品のオムニバスだが、どちらも、テーマをぼやけさせただけで、作者の念はどこね? と訊きたくなるほど薄められた内容になってしまっている。そのことに、どれほどの意味があるのか、ないのか、ということについても曖昧化が先んじているように思う。いっそ、表現することが無い、という危機感を書いた方が良い。

TRASH

TRASH

ファニーボーンズ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/04/04 (金) ~ 2014/04/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

大道芸の味
 trashは米語だと屑、英語だと我楽多。下らない奴、下らない話などを表す単語だが、俗語では他動詞として使う場合があって(公共施設などを)破戒する、とか人の評判を汚すなどという意味にもなる。

ネタバレBOX

  で、今作は、これがタイトルだから、クリスとけーぼーは、塵袋に包まって登場する。手品、パフォーマンス、曲芸、ジャグリング、パントマイム等々を組み合わせ、観客を強引に巻き込み乍ら一場の夢を見せてくれる。
 基本的には、大道芸だ。但し、大抵、大道芸人が、小屋のステージに上がって芸を披露すると、洗練された芸を目指してしまいがちなのだが、ファニーボーンズの上手さは、大道芸の持つペーソスのようなそこはかとない哀しみや、生きる不安の要素を残しつつ、少し泥臭く演じている点なのである。だから、観客が離れない。
 観客席も椅子ではない。階段状になった観客席には、小さな座布団が置いてあるだけである。これも、地べたに座ったり、階段に腰掛けたりしながら街中で大道芸を見るのと同じ状態だ。手品も種明かしを上手にやってのけるし、親しみやすさを感じさせるのだ。音楽の使い方も上手い。海外でもフェスティバルで優勝したりしているのは、この辺りの親近感のとり方が絶妙なせいだろう。
 軽業や、簡単な道具を使ったヨーロッパの祭りに出てくる巨人練り歩きとその伸び縮み、捻りを加えるパフォーマンス等々、本当に楽しめる。ラストの紙吹雪が銀なのも、彼らに相応しい。洒落たセンスを感じる。ユニットのメンバーが英国人、クリスと日本人、けーぼーと国際的なのも良い。塵袋から現れて、塵袋に消える迄の一場の夢、とくと楽しんだ
聖澤女学院物語ラストディーバ

聖澤女学院物語ラストディーバ

スタンダードソング

六行会ホール(東京都)

2014/04/03 (木) ~ 2014/04/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

工夫のこらされた良い舞台
 スミレ科を拝見。
 シナリオに現れる若い女子の感性の良さ、テーマに現代の大問題である苛めが真正面から扱われている点でも画期的。そして、その解決策が、逃げるでも戦うでもなく、理解出来る友を作って背負うということであるのも説得力があって良い。(追記後送)
 

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