とりあえず、ボレロ 公演情報 ニトロキュー「とりあえず、ボレロ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    真面目で丁寧な作り だが、世界認識が狭い
    余りに有名なシナリオだから、内容解説はしない。ただ、矢張り、清水 邦夫の戯曲を演じる難しさは確実に存在する。役者のポテンシャルが高くないと、完全に外してしまうのだ。

    ネタバレBOX

     今作でも、女性にダンディズムを求めかねないような、頗るつきの難しさが、科白の行間を埋め尽している。それを越え得たにせよ、次の難題は、実際には田舎者の集合に過ぎない東京という街が持つ歪を、都会人として生きる田舎者が、内的矛盾を糊塗しつつ、他の田舎出身者に対して判で押したような軽蔑的態度を向ける、そのどうしようもない複合意識としてのコンプレックスを如何に身体化するか。それも極端に高いポテンシャルを保ちながら。存在感と反射神経、適確なアプローチなど、剃刀の刃の上を歩くような注意力と緊張を強いられるのだ。
     大前提として以上のような状況があり、結局は、東京なんぞ、大したことは無い、と見切りをつけるだけの突出部を持つ者は、海外へ雄飛した。名を沢田と言う。無論、このネーミングは、ベトナム戦争の報道でピューリッツア賞を受賞し、戦場で命を落とした沢田 教一への清水 邦夫からのオマージュである。米軍は、カンボジア、ラオスへも猛攻を掛けていた。一応、今作では、カンボジアでトバッチリを受けた時に、頭に爆弾片を受け、記憶障害を起こしたという設定になっている。が、実際、多くの報道カメラマンが、現代世界最悪のテロ国家、アメリカの特意とするマッチポンプ方式のトンキン湾事件を発端とする攻撃によって命を落とした。安倍という馬鹿は、このようなテロ国家と集団的自衛権で恩を売り、自国民の命を餌に、自らの植民地で有利なポジションを得ようとしているに過ぎない。清水 邦夫が認知症になっていなければ、この程度の認識は持つハズである。
     芝居は、時代を呼吸する。今作初演時には、未だ、ベトナム戦争や、カンボジア問題もヴィヴィッドであった。だからこそ、ふーことしーこ二人の魅力的な女性から沢田は愛され、同じ男を愛した女同士が、様々な葛藤を経ながら、尚、三人一緒に暮らしたり、旅をしたりという幻影を見ることが出来たのである。この異様な美しさと幻影にこそ、ボレロが似合う。

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    2014/10/05 03:24

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