カムヰヤッセン
採点【カムヰヤッセン】
★説得力が見出せず

人間の主人公がレドモンの妻を持っていることを、後ろめたいと思っているのか、本当は大切なのか、最後までわからなかった。後者だと信じたいと思って観ていたけれど、主人公のあらゆる言葉、行動に説得力がなくてわからなかった。

ヨーロッパでの移民排斥運動、日本での在日韓国人へのヘイトスピーチ問題などが白熱する中で、差別や隔離の問題はこれからもっともっと、私たちの暮らしに切実に迫ってくる問題のはずだ。でも、この作品を観て、そうした問題を一緒に考える気持ちにはなれなかった。「作家」は、観客に現実を教えて啓蒙してやる偉い人間などではなく、社会の矛盾や人間の薄汚さに敏感な弱い存在だと思うし、だからこそ、彼らの生み出す言葉は観客に響く。今作のような、底の浅い家族観と異人種への差別・隔離描写では、作品で描こうとした真の問題意識は伝わってこなかった。詳しくはネタバレBOXをご覧下さい。

★★★現代のSF

地球外知的生命体<レドモン>と地球人とその混血<マジリ>の物語に、人種差別やヘイト問題や難民問題が透けてくる……現代的なテーマ性ある壮大なSFを演劇で、という意欲を感じる舞台でした。とはいえ、肝になっている家族のドラマが薄く感じられ「これが散りじりになっていく家族だろうか?」という印象のまま終わってしまいました。座った席が寒く、途中で一番後ろに移動したのですが(スミマセン)、上から全体を見渡したほうが、地下まで使った舞台美術がよく見え、ロープで境界線をあらわしていく演出が面白く感じました。

★★★宇宙人との共生を描くSFに現代を映す

 地球にやってきた宇宙人“レドモン”と人間、そしてその混血(マジリ)との共生の可能性を、ホットかつウェットな人間ドラマで探っていく近未来ファンタジーでした。地球人の体制側がレドモンを母星へと強制送還させようとすることで、人々の暮らしに大きな亀裂が生まれます。初演は2007年ですが、今、まさに起こっているヘイトスピーチなどの人種差別や難民問題と、ヴィヴィッドに重なっていきました。

 ガランとした天井の高い空間に、鉄骨のような背の高い柱がそびえたつ舞台美術でした。柱と柱の間をつなぐ透明のホースが、目には見えない境界線を示すかのようで、俳優がホースを外したり、つなげたりして場面転換をするのも含意があって良かったです。

★★★★泣けるSF

ちゃんとテーマ性もありつつ設定が練られていて楽しめた。こういうSF的な世界観は舞台ならではの自由さがあっていい。

個人的には親子の物語に感動した。

★★★★★レドモン

好きです。とても良かったです。人を思いやるという気持ちの大切さを教えてくれる、重要な作品と思います。ありがとうございます。

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