舞台芸術集団 地下空港
採点【舞台芸術集団 地下空港】
★★★音楽劇としての意味、ウェールズとの交流の意義

主演の片足の少年(村田慶介)の演技、歌声ともにすばらしかった。貴種流離譚の一種かと思ったのだが、彼が片足であるということが、本編にそれほど影響していなかったのが残念だ。もっと、片足の設定に因果めいたものを持たせることができただろう。

台本の前半に歌が集中しており、後半の見所はぜんぶアクトでおこなわれていたので、音楽劇としては少し物足りなかった。音楽については、ラストのテーマソングをもっと雄大に聴かせるように盛り上げることはできたのではないか。
全編にわたり、物語はとても楽しめたのだが、村人たちの台詞、アクトがややのっぺりと、ありきたりだった。ありきたりというのは「台詞以上」のことを何も伝えられていないという意味である。台詞の言葉以上の深みがない。寓話が現実を越えていない。現実のその先を照射して、考えさせないと「寓話」として見せる意味がなく、遠い国のおとぎ話で終わってしまうのだ。そこに本作の限界を感じてしまった。そのためにはエンディングで主人公たちに「待つ」だけでなく積極的な選択をさせてもよかったかもしれない。体に穴があくという描写から、放射能汚染による差別を描くこともできたのではないか? 人々が窯の力を捨てられなかった強欲さ(核の利便性)と、原爆による殺戮(核兵器)を、もっと描きわけられたのではないか。死の恐怖と故郷をなくす悲しみは別物のはずで、そこがこの物語のさらなる発展の余地だと思う。

ウェールズ国立劇場との連携プロジェクトの意義は深く、すばらしい。このような海外との結びつき方もあるという例を知ることが出来て、私自身も大変勉強になった。作品については厳しいことを書いてしまったが、とても期待していて、舞台芸術集団 地下空港の創作への真摯さはじゅうぶん理解できたと感じているし、これからの作品もぜひ拝見したいと思っている。

★★★寓話的な現代の物語

日本とウェールズという全く違う風土を持った国をつなげ、世界の現状を映し出す手法に、深く考え抜かれた趣向を感じました。壮大な世界を広げていく表現の勇敢な手つきにも、他の劇団にはないオリジナリティーを感じています。と同時に、こういった遠い世界へ観客をさらう作風には、もっと技術力を高め、完璧に“ここではない異世界”を「信じさせてほしい」という気がしました。椅子を使って竜を表現した場面が実に面白かったのですが、このダイナミックさ、洗練された表現を随所に見たかった気がします。
 クラウドファンディングによってインターネット生放送を実現したりと、運営力/制作力も高く、発信力を持った集団という点にも、大いに期待します。

★★★★原発、難民問題などを力強いファンタジーに

 ある田舎の島に漂着した旅人が持っていた“釜”の不思議な、巨大な力が、人々の暮らしを一変させます。釜の力の由来や、それを利用しようとする勢力、やがて起こる大きな災害…。物語に日本の原子力政策や東京電力福島第一原発事故、そして事故後の世界を映していることは明らかです。

 そんな社会派と言い切っても問題ないお芝居ですが、オリジナルの楽曲とイスを使った表情豊かなステージング、工夫を凝らした身体表現によって、躍動感のある娯楽作に仕上がっていました。衣装とヘアメイクが凝っていて、役の区別もつきやすく、デザインも良かったです。

 ドローンを用いた予告編ミュージック・ビデオのクオリティーの高さに驚きました。クラウドファンデイングで資金を得て、3/12(土)19時の回は英語字幕付きで、Ustreamで無料中継されました。この作品が生まれるきっかけとなったイギリス・ウェールズ国立劇場のスタッフもご覧になったようで、国境を超えたアーティスト同士のつながりを維持する努力が素晴らしいと思いました。

 本番直前に病気降板になった俳優に代わって、奥田努さんがタンレ役で出演されていました。タンレはいわゆる悪者として物語を引っ張っていく主要人物です。奥田さんが所属されている劇団Studio Lifeは中劇場ツアーも行っている、数十年の歴史がある劇団です。奥田さんは大勢の俳優を抱える同劇団で主役も経験されています。中堅舞台俳優の底力を見せていただけたように思いました。

★★★★★これを見たら音楽劇にハマる

まず衣裳が素晴らしかった。そして竜の作り方、椅子の使い方など演出も面白かった。

難しいテーマに挑み、そしてなにより、「皆で唄う」ことで昇華されるものがあるのが素晴らしかった。

★★★★★赤い竜と土の旅人

作品の壮大さに度肝を抜かれました。時代的緊急性、構想力、緻密な設計、舞台装置の美しさ、セリフ、どれを取っても一流です。

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