はなよめのまち【ご来場誠にありがとうございました!】
キコ qui-co.
インディペンデントシアターOji(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/29 (月)公演終了
qui-co現る。
『特産物として花嫁を他の土地に売る事で貧困や支配から逃れている町。花嫁は、人ではない扱いで育てられる。しかし花嫁の一人が禁じられながら恋をしてしまい…』みたいな話だと事前に予想して行きました。合ってたし外れてた。
まず最初に詩的な印象を受けて、それから。始めは物語を追うつもりでいたらどうやら違うと気が付いて、次に人を見たけどそれも違かった。込められていたのは音・風・匂い・温度。それらが生む風土とそこに生きる姿。見るよりも感じるもの。もう一度行けるなら、目を瞑ってあの空間に混じりたい。
役者の声質が重要視されているのは明らかで、ベースの様な芯のある深い音が聞こえていました。劇中にジャズが出てきます(著しいネタバレではありません)。何よりこの作品自体がジャズ。コードだけ決められたセッションの様でもあり。先述した「何を追うか」について改めて述べると、正直見ていて分かりにくい箇所が多々あります。それは小栗さんが役者に対する指揮者である演出家としてまだ万能ではないという事と、今回が旗揚げでやりたいものが積載量ギリギリまで詰まれているから。ギリギリっていうか、ちょっと零れてたかもしれない。慣れない作曲で在り来たりな部分と妙に難解な部分が混在したかの状態。惜しくもあり、今後どうなっていくかの期待もあります。
個人的には小栗版「ロミオとジュリエット」かな、と思ったりも。
ネタバレBOX
登場人物にもういくつかのポジションがあると広がりと深みが増した気がします。花嫁の家族みたいな存在とか。「あっちでは幸せになれるから。あんたの為なんだよ」と迷いなく送り出そうとしてたのに寸前で行かないでと懇願してしまう母親とか、逆にそれまでは冷たく接していたけど本心では誰よりも花嫁を心配していた父親とか。ベタですが。この作品の世界には家族が存在しません。あの花嫁達は子どもの頃に別の所から連れ去られてきたんではないかと思っています。劇中で言ってたかな?失念しました。あぁ、ダメだ。ここまで記して気が付いた。あの世界には愛がないのだった。とはいえ、家族「らしき」絆が出てくればそれぞれの思いが分かりやすくなったかと。うーん、それでも愛になっちゃうかなぁ。しかし男女の愛でなければ汚れないのか。個人的には処女性に近いものかと捉えていましたが。看護婦を束ねる立場の人間が出て来ないのも、あえて関係性を明確にしない為だったか。
神が現れない点は邦画「大怪獣東京に現る」に通ずるかも。この映画、怪獣が現れて慌てふためく人々の姿がメインで怪獣が一度も映像に出ません。怪獣が来てるのを重く受け止めずのんびり暮らす輩がいたり、「あれは神だ」と言い出して宗教を立ち上げたり、実はそれが詐欺で行き詰まった浪人生が騙されたり、双子の間で揺れる女の子がどっちにしようか決めたりする。綺麗だったりきったない本心が露わになるのが、ね。「きったないけどそれが本心だよ」って言い切ったらそれも綺麗。
直接聞いたから記せる話ですが、ビニール袋のマクガフィンは流石に演劇では意味が有りすぎた。映像ならそのまま次のコマに行けば済む。しかし舞台では回収するまでは存在してしまう。映像なら「出た事」で終わっても、舞台だと「出た事・在る事・消えた事」それぞれに意味を求めてしまう。が、旗揚げ。まずはやりたい事をやればいいです。是非の反応を受けてから更に質を上げれば。
スイングバイ
ままごと
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/03/15 (月) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
なんだろう・・・
知人にオススメされて当日券で観劇しました。
ネタバレBOX
チケットがタイムカードになっていたりおもしろい仕掛けは色々ありました。
細かい場面が多いわりに混乱することなくみられたのはホンとテンポがいいからでしょうか。
ただ、ひっかる部分がなーんにもなくて駒場東大前駅を出た頃には、その日芝居をみたことすら忘れるくらいでした。
休憩は必要なのかな。そもそもあれは休憩?
完全な真空×BLACK BOX
演劇ユニットG.com
テアトルBONBON(東京都)
2010/03/24 (水) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★
不思議の国の誰?
2つの話の登場人物は一人、私のみ?非現実的でありながら現実的な物語。でも、ひとりよがりにはなっていないので、好感が持てる。一つだけ苦言。「完全な真空」の女優さんの手の動きが不自然。気になって仕方がなかったので。
Dear My ANGEL
こちらKGB
相鉄本多劇場(神奈川県)
2010/03/18 (木) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★
もったいない
単純に完成度が低かった。出来る人と素人っぽい人の差を感じた。
相対的浮世絵
キューブ
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2010/03/18 (木) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★
切ない後味
あの世とこの世、相対する世界の人たち。「相対的浮世絵」。奇妙なタイトルで「浮世絵」が目をひいたが、作者の解説によれば、海外から帰国した直後だったので日本語にこだわりがあり、自分から見た世の中を活写する=浮世絵となったらしい。
出演者の一人である安田顕が公演プログラムの一文に、子供のころ、仲の良い友達にしてしまった心無い行為への悔いについて語り、人は誰でも心に蓋をして生きている部分がある、だからこそ、人の真摯な姿を見たとき、心が動くのだと書いている。これを読む直前に、新聞のエッセーで、ある作家が似たような子供のころの体験を書いていたのを読んだばかりなので、自分だけでなく、そういう思い出というのはあるものなんだなぁと共感した。決して悪気はないのに、なぜか親しい、しかも非のない人の心を傷つけるようなことをしてしまったら、いつまでも覚えているものなのだ。
まあ、この話は子供時代の小さな意地悪とは次元が違う話だが、「心に蓋」という共通点はある。
土田英生という作家の深さに心打たれた作品です。
ネタバレBOX
高校時代、卓球部の部室の火事がもとで智朗の弟達朗と智朗の同級生の遠山は亡くなってしまう。出火の原因は智朗が窓から投げ捨てたタバコだった。弟は兄が中に取り残されたと思い、部室に戻って煙に巻かれてしまった。遠山は、倒れてきたロッカーに足を敷かれて身動きがとれずに亡くなった。生き残った智朗と同級生の関。最近になって達朗と遠山が二人の前に現れるようになる。待ち合わせ場所はいつも夜で、墓地のある公園の東屋。彼らは「お化けではない」と言い、この世に出てくるには、「生前のことを決して恨んでいないこと」が条件らしい。二人にはお目付け役の野村という初老の男が付いてくるが、死者三人の姿は智朗と関にしか見えない。
会社員の智朗は経理の女子事務員と不倫関係にあり、会社の金を使い込み、600万円も帳簿に穴を開けている。一方、高校教師の関は、女子高生好きで教え子と次々関係を結び、父兄にばれそうになっている。
姿が見えないことを利用し、遠山は智朗の600万円を補填し、達朗は関の教え子の一件の証拠の揉み消し工作をはかる。
いったんはうまく行って智朗と関は喜ぶが、死んだ二人はこの世のことに関わってはいけないという掟を破ると、二度とこの世に出てくることができない、今後智朗たちとも会えない。だから、金も揉み消し工作も元に戻させてほしいと言う。生きている二人は、いまの生活が大切だからそれはできないと断る。これでいいんだ、会えなくたってかまうもんか、だって俺たちは生きているんだから、と智朗と関は笑い合う。このときの「だよなー」「まあなー」という高校時代の二人の口癖による掛け合いがいい。
しかし、結局智朗と関は二人の頼みを承諾し、智朗は女子事務員の口から使い込みがばれ、高校時代のマドンナだった妻にも去られ、会社をクビになり、会社からも提訴されるかもしれず、関は智朗に520万円の金を用立ててやるが、学校をクビになる。元通りになったところで、遠山と達朗は、「スッキリした。これであの世に帰り、もう出てこない。」と言って、明るく消えていってしまう。
やはり、生者と死者の間には、越えられぬ壁があり、互いの領分を侵して付き合ったりしてはいけないのだろう。
終わり方の後味が悪く、本当に死んだ二人はあれでスッキリできたのか。何もかも失った生きている二人のこれからの人生を思うと身から出た錆、元に戻っただけとは言え、気の毒になる。
しかし、生き残った二人は、何と愚かな生き方をしてきてしまったことか。終幕、お目付け役の野村の姿が智朗と関には見えなくなることで、四人の気持ちの決着を暗示する。亡くなった二人に対して心の中でずっとうしろめたさを持ち続けていたであろう生き残った二人の思いに引き寄せられ、達朗たちは現れたのかもしれない。切ない幕切れだ。
関の安田顕の髪型がマッシュルームカットなので、出てきたとき誰なのか一瞬わからなかったが、達者な演技で笑わせる。達朗の平岡祐太は初舞台ながら自然な演技に好感が持てるが、二度ほど相手と台詞がぶつかり、不自然な箇所があった。会話の「間」の問題だと思う。
内田滋の遠山は関の「おれは悪くない。関係ないもん。ちゃんと消防署に電話かけたし、火を消そうとバケツに水を汲みに行った」という言い訳に怒る場面に説得力があった。智朗の袴田吉彦は、遠山の内田との「ドスコイ、ドスコイ、ドスコイ」「ノコッタ、ノコッタ、ノコッタ」という高校時代のギャグ遊びのときの照れた表情がいい。死んだ二人のあの世でのお目付け役の西岡徳馬が面白い。自分の話をしようとしていつも「面白くないからいいです。聞きたくないです」と達朗と遠山にさえぎられてしまうが、彼の話は面白そうで聞きたかった(笑)。
既に亡くなった大切な人ともし再び会うことができたら、と人は夢見ることもある。しかし、実際にあの世から来た死者が生きているときのように現在の自分たちの生活に介入してきたら困惑してしまうだろう。
人は悲しみの中にも、どこかで区切りをつけて生きているのだから。
六角堂を思わせる東屋を中心に、能の橋掛かりを意識したという道のついた舞台装置のアイディアが良かった。この世とあの世が交叉することを視覚的に表す見事な舞台空間となっている。
舞踏会へ向かう三人の農夫の妻
かもねぎショット
ウッディシアター中目黒(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/31 (水)公演終了
満足度★★★
観てきました!
個性的な夫たち(三兄弟)と個性的な妻たちを中心とした話、シュールで面白かったです。
ネタバレBOX
「舞踏会へ向かう三人の農夫」という本があったとは知りませんでした。
最初に出かけたのは農夫でした。妻の方だったら、「農婦」でいいのですから。
町って何だろう、無知ってなんだろう、知識ってなんだろう。
ラストの衝撃的な「武闘会」シーンは特にシュールでした!
完全な真空×BLACK BOX
演劇ユニットG.com
テアトルBONBON(東京都)
2010/03/24 (水) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★
二つで一つ!
作品のメッセージがしっかり伝わってきました。
ネタバレBOX
二つの作品は別々のものですが、趣旨は同じで、うまく繋がるように構成されていました。
今の自分に自信を持って前向きに生きようと思いました。
今日もマチ・ソワです!
ところで、後半の主人公は仕事で空回りしてちょっと疲れた女性です。もしかしたら夜の散歩でなく白日夢だったのかもしれません。白のブラウスにブルーのスカート姿も有りかなとは思いますが、もし職場で自己主張して受け入れられないキャリアウーマンという設定であれば、女性の戦闘服・勝負服といった色合いの上下のスーツ姿でも良いのかなと思いました。
農業少女
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2010/03/01 (月) ~ 2010/03/31 (水)公演終了
満足度★★★
多部ちゃん可愛い!!
ずばり多部未華子さん目当てで観た作品。
少しふっくらされましたか!?
ネタバレBOX
多部さんの髪型、後が膨らんでいて、ちょっと不思議少女で可愛かったです。
「乳触るなーッ!」って頑張っていました。
トラとか猫とかがシャーッって威嚇するときの手のポーズは、彼女の指の表現が特に秀逸で、山崎一さんの同じポーズよりも遥かに恐怖感がありました。
東京と農業の語呂が似ているなんて強引。
食べて体臭だかウンコだかの臭いを消すお米、そんなに体臭臭いのか、誰とは言いませんが。
気分に流され飽きっぽい人間ということで、ナチスを取り上げ、そのお米「農業少女」も売れなくなったとか。
内容的にはダジャレと反戦が入っていて、いつもと一緒かって感じでした。
農業少女
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2010/03/01 (月) ~ 2010/03/31 (水)公演終了
満足度★★★★
見てる方が押される勢い
多部さん、初舞台とは思えない舞台上での存在と動き
毛皮族(最近は社会派ですが)で踊っている江本さより動きが早いしなやか
他3人も含め、中央のセットをクルクル廻しながら前半は休む間もなく
スピードのある芝居・ギャグのを見舞ってきて、勢いに押されてしまいました
チョット嫌な部分もありますが。見てよかったです。
詳細はTBで、もう仕方なく★4つです。松尾さん演出は初演知らないので
比較出来ないから解りません。天井の巨大な釜はなんだったか・・・
止まらずの国
ガレキの太鼓
サンモールスタジオ(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/30 (火)公演終了
満足度★★★★★
会話もいいし物語も面白い、素晴らしい舞台
まず舞台にライトが点き、セットを目にして、とてもわくわくした。
サンモールスタジオで、これだけの本格的なセットは見たことなかったような気がする。
そして、そのセットで、わくわく感をまったく裏切らない物語と役者さんたちの演技と演出で、とても素晴らしい舞台が繰り広げられたのだ。
わずか100分なのに、この満足感。
ネタバレBOX
セットを見たときから、青年団の『冒険王』を彷彿とさせたのだが、その影かちらついたのは、ほんの最初のところだけだった。
あちらが、あるラインを越えてしまった人(大人というか)たちの普通の話であるとすれば、こちらは、ごくごく普通の人たちの話だ。
つまり、この物語に登場する旅人としての軸足が、なんとなく故郷の日本にある(正確には1人の日本人を除いて)ような、ふらつきのあるような、普通の人たちなのだ。迷いがあり、それが出てしまうところが普通なのだ。共感できるというか。
もちろんあちらの話の登場人物にも、心のふらつきはあるのだが。
あちらには達観したような、あきらめにも似た様子が、「うらやましさ」さえ醸し出していたが、こちらにはそれがない。もし自分がそういう旅に出たら、こっちの人たちのようになるのだろうなぁという共感がある。私はこんな旅に出ない人間なのだというような、とでも言うか、そんな共感。
ま、2つを比べてもしょうがないけど、ほら、設定が似てるから。
この物語は、どこかイスラム圏にある王国の安宿が舞台。
この安宿を出て学校に寝泊まりする女のために、最近旅を始めた男がお別れパーティをしようと考えている。
同じ部屋には、旅慣れた2人の男がいる。1人は、もはや日本を帰る場所とは思わない、旅行者の間で伝説となっている、すべてを達観したような男で、もう1人は、籍は入れてないものの、かつて旅行仲間だった女性が日本に出産のため帰国していて、そこへ自分も帰ろうとしている。
そんな中に、男女が案内されて来る。女は韓国人で、男は日本人。ふたりはカップルなのだが、男は、旅行に出たものの、自分には最後まで合わず、自分だけで何かを成し遂げられなかったことを悔やみ、結婚式に出席するという理由で帰国しようとしていて、もう旅には出ないだろうと思っている。
さらに、初めての海外旅行に来て、お金をだまし取られてしまい、困って安宿に転がり込んできた女がそこに加わる。
彼らの会話から、それぞれの状況が明らかになっていく。
そんな中、外の様子が急変する。戦車や兵士が現れ、宿の持ち主たちや2階の旅行者の姿が見えなくなる。さらに銃声、爆発音らしき音が聞こえ始め、それが近づいてくるのだ。彼らの不安と焦りが高まっていく・・・。
とにかく、物語の展開と、その語り口が巧妙だ、旅行初心者が2人というところがうまい。初心者という設定は、ともすると観客に舞台上の設定を説明するためだけの役割を与えられるのだが、その役割もありつつの、設定の違う男女2人なので、切り口が異なるのだ。
さらに彼らの呑気さと、不安が見事に他の登場人物を揺さぶっていく。
また、各登場人物の設定も巧みで、確かにちょっとできすぎのメンバー構成だけど、うまいと思う。そけぞれが物語を内包していて、それが会話でうまく表現されていく様もうまいと思うのだ。
驚いたのは、現地の男女の登場や韓国人の女性の登場だ。
カタコトの英語という設定もあるし、なにより、物語に広がりを与えていたような気がする。
彼らとの民族や国籍の違いによるギャップまで表現できていれば、最高だったのだが、そこまで盛り込むと逆に全体がぼけてしまったのかもしれない。
とにかく、どの登場人物のキャラクターがくっきりしていてわかりやすい。
しかも、どの役者もそのキャラクターをぶれずにきちんと表現していて、その人になりきっているように感じた。
特に、かおさん(鈴木智香子)の醸し出すベテランぶりのうまさには絶品であったし、見ているこちらがイライラしてしまうような、海外旅行が初めてのともか(通地優子)の存在は見事だと思った。
鈴木智香子さんはほかの舞台でも拝見したことがあったが、うま人だなあと改めて思った。
セットも小道具も凝っていて、言うことないし、スムーズに役者が動き(出入りし)、舞台を広く使い、奥行きや幅までも想像させるような演出も巧みだと思った。
さらに、物語が急展開していく中で、全員が一気に不安に陥るのではなく、それが徐々に伝播していき、その度合いの違いが表現されていく様は素晴らしい。
一体どうなるのか、と興味を引っ張っていく物語の展開と、それが行き着く先のラストもよかった。
・・・ちよっとした矛盾というかご都合主義はあるのだが、それには目をつぶろう(笑)。
本当に素晴らしい舞台だったと思う。
「ガレキの太鼓」は、私にとって、これから要チェックの劇団になった。
ちなみに私の『冒険王』の「観てきた」です。
http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=30362
完全な真空×BLACK BOX
演劇ユニットG.com
テアトルBONBON(東京都)
2010/03/24 (水) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★
よくできているのだが、ちょっと残念
自分で自分自身のことをきちんと考える。さらにそれを、あえて声に出して言う。そんなことが大切なのだということがテーマになっていた。
これは、とてもシンプルでわかりやすい。
しかし、フライヤーに「SF」であると銘打っているが、残念ながら、それに大切なセンス・オブ・ワンダー的な要素をほとんど感じなかった。
ま、それはどうでもいいことだけど、とても良い役者と演出であっただけに、内容に関して逆に厳しい評価をしてしまう。
間違いなく、劇団の持つレベルは高いのだが。
ネタバレBOX
短編ならば、凝縮された味わいがほしいのだが、物語の芯(テーマ)に凝縮されていくようなエピソードもなく、物語のための物語が舞台の上で行われていたように感じてしまった。
■完全な真空
いわゆるメビウスの輪のように前と後ろとがねじれて続いているような物語。
ただし、そのオチがあることが前提のストーリーに感じてしまった。
物語のための物語というか。
地下世界に行ってしまった女は、そこにいるホームレスのような男に強い執着をもたれているということと、女が後から来る男と出会うということが、この物語の前提としてあるのだが、それを理解した上でも、どうも基本的なところでの違和感が起こってしまった。
それは、つまり、後から来る会社員の男に、ホームレス風の男が「自分がなぜもとの世界に戻りたのか」つまり「自分はどう生きたいのか」を繰り返し問うのだ。
それに会社員の男が答えること、つまり自分の存在意義というか、人生の目標のようなものを、強く考えることで、もとの世界に戻れるのだ。
しかし、ホームレスの男は、先に来ていた女にはそれを問わずに、単に会社員の男に付いて行け、とだけ言うのみ。
これはどういうことなのか。つまり、女の人生は、自分で考えるのではなく、男の人生に従うだけでいいという思想が根底にあるのだろうか。
あるいは、男が自分の人生を真剣に考えたときに、生涯の伴侶を手にできるということなのだろうか。
この展開はなんだかな~と思ってしまった。
てっきりこの先に何かがあるのかと思えば、蛇足的にファーストシーンの繰り返しのみで、単に説明台詞で、彼らのこれからのエピソードと、この世界のネタバラシをするだけ。
短編なのだから確かにワンアイデアで十分だとは思うが、中間部分の3人の登場人物のやりとり(台詞)が活きてこない。伏線も何もないし、会社員の男(ホームレスの男)の深みにも行かない。
なぜ、会社員の男が自分のこれからを真剣に考えなくてはならなかったのかが、見えてこない。具体的な理由ではなく、何かがほしかったのだ。主張と言うか、何かが。
タイトルの「完全な真空」も台詞で繰り返されるのだが、それと主人公の関係も思わせぶりなだけな印象。
役者3人は熱演だっただけに、もったいないと感じた。
■BLACK BOX
夢を見ていると言いはる男、研究者と名乗る2人組。
いずれも、主人公の女性の内面とは絡んでこない。
主人公の女性は、いろいろなことに悩み疲れている。そこに先の3人が現れて騒動らしきものが起こるのだが、彼らが主人公と絡むのは「夢」「ブラックボックス」というキーワードのみで、彼女の内面を照らすわけでもなく、抉るわけでもなく、彼女の中の何かのきっかけになるわけでもない。
不思議だ。単にちよっとした笑いのためのドタバタを見せるだけ。
笑ってじんわりとするわけでもなく。
短編でわずか4人しか登場人物が出てこないのに。どうしてなのかと思う。
ラストで、主人公の女性が、自分の望みは「お金」「愛」と悩むところは、妙にリアルだったし、ブラックボックスを開けたときの効果も面白いと思った。
しかし、それは唐突すぎて、もったいない。
もっと丁寧に彼女の気持ちの変化や状況を、彼女に絡む3人とのやりとりで見せてほしかった。
彼女の気持ちが、具体的に示されるのでもなく、さりげなく観客に伝わるわけでもない。単に自分の口で「大変なのよ」と説明させるだけ。しかも、中間部分のドタバタが特に活きてくるわけでもなく、単なるドタバタにしか見えず、残念。
変な登場人物たちで、不思議の国のアリスのような、ちょっとシュールな展開を狙ったのかもしれないが、シュールとまでは行かずに単に変な人たちであり、彼女のいらだちが、彼女に変化をもたらしはしない。結局自分で考えるるのだが。もちろん、自分で考えることが大切なことはわかるが、せっかくの舞台なんだから、変化か何かを、こちらにも感じさせてほしかったのだ。
彼女がわずかに変わったとすれば、自分の本当にほしいモノを真剣に考えたということがあるが、そこに行き着くまでのプロセスが乏しい気がした。
そして、2つの短編が終わった後に、2つの物語の主人公たちが、電車ですれ違うシーンがこの舞台のラストになるのだが、これは何だろうか。
単に2つの短編をつなげるだけのためのシーンであり、あまりにも凡庸というか、普通すぎるし、意味も感じない(無理に意味を考えれば、考えられる程度のこと)。
本当にこのシーンは必要だったのだろうか。疑問だけが残った。
2つの物語は、どちらも、今回のエピソードを通じて、「自らのことを真剣に考え」さらにそれを「自らの口で言う」ということで、とても面白いと思ったし、いいテーマだと感じた。
しかし、それが中心にきちんと据えられているにもかかわらず、そこまでが直線的に示されるだけで(唐突とも言う)、物語としての膨らみのようなものが感じられなかった。
演出の手際や役者の存在感など、なかなか見るべきところがあったのだが、肝心の物語に今一歩魅力が感じられず、ちょっと残念。
フライヤーもカッコいいと思ったのに。
はなよめのまち【ご来場誠にありがとうございました!】
キコ qui-co.
インディペンデントシアターOji(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/29 (月)公演終了
満足度★★★
これからが楽しみな旗揚げ公演!
旗揚げ公演だそうだが、小劇場の人気役者を揃え、大いに注目を集めての本公演だ。詩的な言葉とビジュアルなシーンで彩られた幻想的な物語。特に映像の使い方がうまい。
また演劇的な実験を随所で行い、そこら辺も面白かった。まずまずのスタートを切れたのではないだろうか?
役者では、楓役の木下祐子の安定した演技に魅せられた。声が非常に聞きやすく、他の役者とは一線を画していた。ナギ役の堀奈津美は出だしのシーンとラストシーンがとても素敵だった。男性陣ではまつばら役の千葉淳に魅力を感じた。
ネタバレBOX
初日ゆえの台詞のとちり、役者間の連携ミスのような箇所が何カ所か感じられた。それが残念。そのためにせっかくの物語がいまひとつ盛り上がっていかなかった。ただ、その点はこれからどんどんよくなるだろう。
舞台の床に直接あてられる照明、映像、この美しさは際だっていた。その他にも印象的な素敵なシーンがたくさんあった。その逆にワンパターンな部分、意味不明の部分もあり、若干のちぐはぐさはあったものの、演出家の才能を感じるには十分なステージだった。
遭難、
おちないリンゴ
小劇場 楽園(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★
小劇場の醍醐味
初見でしたが、くせのある本谷有希子の作品をリアルに人間臭く表現していて、ところどころクスリと笑わせながらも先の読めない展開にゾクゾクしました!
初日だし、セリフに勢いがあるので少々カンでしまったのはご愛嬌ですが、個々のキャラクターもしっかりとしていて、どこにでもいそうな、ともすると自分もこの中の誰かになってしまうのでは・・・なんてコワい想像までしてしまいました。
着る服(結構着替える!)はもちろん、足元や小道具にまでキャラクターが出ているのでさらにリアリティを感じたりして、細部の演出と細やかな表情の動きを楽しめるのは小劇場の醍醐味ですね。
やはり初日ということで関係者らしき人も多く、意外にも年齢層高めな客層でしたが、ほぼ満席。上演時間は2時間10分ほど。結構みなさん楽しんでいるご様子でした。
ネタバレじゃないけど、気になった点を以下にちろっと。
ネタバレBOX
おそらく演出の方だと思うのですが、客席で一緒に観ており、クスクス笑っているのが気になったかな。もちろん笑うのは構わないけど、観客の笑うポイントではなく、「練習よりも良くなった」的なちょっと違うポイントで笑うんですよねー。
あと、やはりマナーの悪い観客!上演中に感想言い合うなよー。ビデオ鑑賞じゃないんだから。
さらに!あんだけ事前にお願いしているのに、クライマックスで携帯チェックしてる年配女性!!!ホント興ざめでしたー。
ま、本筋には一切関係のない戯言です。舞台はホントに鑑賞できてよかったです。満足度は☆4.5って気分。
謝罪の罪
ペンギンプルペイルパイルズ
ザ・スズナリ(東京都)
2010/03/19 (金) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★★
上手いなぁ…
客演無しの5人芝居。シュールな笑いで、会話は進んでいく。5人とも皆さんにマッチしたキャラで、やっぱり上手い。
ネタバレBOX
まぁ、怒っていくところの展開に分かりにくいところもありますが、上手い演技で助けられてます。それに、エンディングまで結果よく分からない部分もあり、何か中途半端な感じ。んー、悪いわけじゃないけど、もう少し深みがあってもいいような感じに思います。
恋人/コレクション
ハーフムーン・シアター・カンパニー
シアター711(東京都)
2010/03/16 (火) ~ 2010/03/21 (日)公演終了
-
疲れていて夢うつつで観てしまったので観たという記録だけ・・・
7ストーリーズ
劇団青年座
青年座劇場(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/31 (水)公演終了
新進育成公演なら…
初日観劇。
一人の男とアパートの住人たちとの会話劇。
カナダの戯作らしいが、翻訳に失敗?していて、
必要以上な長台詞に、役者も苦闘していた。
若手とベテランの実力差も目に付いた。
アパートのセットは、趣向としては面白かったが、
前列からは、見難かった。
「現実は厳しく私たちは若いけれど要求は唐突で思い切るという手もあるかもしれない」
三匹の犬
pit北/区域(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/29 (月)公演終了
満足度★★★
胸キュン企画。
こんな素敵な企画がpit北で催されるとは。サックスの生演奏あり、お洒落な大人なお芝居でした。
ネタバレBOX
別れ際の男女のお話ですが、30代っていう年齢もありかなり深い。思いが一筋縄に行かない切なさとお互いの言い分が、冷静でもありきゅんきゅんに気持ちがあふれてもいて。
初日だけに台詞に振り回されてるような感じもありましたが、この思いがじわじわとくれば。。。
双六“演”『レンジ』
トゥインクル・コーポレーション
駅前劇場(東京都)
2010/03/24 (水) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★
観劇
後半の展開が楽しめるかどうかがカギかも。
私は楽しめました。
小ネタも面白かったし。
が、前回の方が好きなので☆は3つで。
今回も相澤さんがかなり良いところをもっていっていました。
登場した瞬間から面白い。
安定感もあるような。
これからにものすごく期待しています。
ネタバレBOX
レンジの会とは、練炭自殺の会のことなのね。
前回も今回もテーマは少し重めですね。
お寺での修行経験のある鬼頭さんが、神父役なのが個人的に面白かった。
イケメン君が死にたくなる理由がなんだか薄い気がする。
もう少し決定的な何かが合ってもいいかなと。
自殺する人に必ず決定的な理由があるわけじゃないとも思う。
小さな嫌なことがつもってそうなる場合が多いと思う。
でも、今一つ見えてこなかったな、と。
「そうやってる自分が好きなんでしょ?」
の場面はよかった。
あんな感じでもう少し色んな事を深く掘り下げてほしかったな。
ハトノ(だっけ)は笑いました。
あとリスの話。
相澤さんは出てきただけで面白いんだもんなー。
さすが。
次回も楽しみにしております。
止まらずの国
ガレキの太鼓
サンモールスタジオ(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/30 (火)公演終了
そこに存在している
ここの劇団には、なぜか高いプロ意識を感じる。他の劇団と何が違うのかはわからないんだけど。
轟然~GO-ZEN~
ACTOR’S TRASH ASSH
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/30 (火)公演終了
満足度★★
稚拙
BIG TREE で当日4000円もする舞台にしては、恐ろしく稚拙な舞台だった。
脚本が特に。話が破綻しかかっている。もう少し何とかしてほしい。
役者の演技も初日だからか、不自然でぎこちない。
殺陣も格好良くない。