最新の観てきた!クチコミ一覧

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夢も希望もなく。

夢も希望もなく。

月刊「根本宗子」

駅前劇場(東京都)

2014/01/10 (金) ~ 2014/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

聞く耳持ちましょう!
現代にありがちな若者の心情表現に親近感を覚えました。
非常に自然な芝居でとても見やすかったです。
自分には才能があると思いこみ、どこからくるのか根拠のない自信で平気で他人を非難する。そして、やがて自分にはそんなものがないと気づいた時には何もやらずの腑抜けになる。夢だけしか見てない人、夢を捨てても今を大事にしたい人が対照関係であるように、登場人物は皆そんな関係であった。
おそらく根本さんの近くにそんな人間がたくさんいたのでしょう見事でした。
恋は盲目と言いますが、15年来の幼馴染の助言に耳を貸さなかった結果がどんなものか。
ラストで失敗にもへこたれずに・・・と演じてますが、本当の所はこの芝居を観て失敗しないように近しい人の話は聞きましょうということだと思います。

ネタバレBOX

舞台には、同じ間取りのアパートの部屋がふたつあります。
10年前の部屋と現在の部屋が並んでいます。並んでいる家庭電化製品も10年前と今のものと変えて時の流れを感じました。
ひとつ引っかかっていることは、ちひろが映画のオーデション最終選考に残ったにも拘らず、最終選考を受けなかったことです。ふつうは受けて落ちたら役者やめるというのが自然じゃないのかなあと思いますが・・・
絵津子の台詞2つ ”嫌いになってもいいから言うことを聞いてよ!”と”本当に思っていたら好きな人が夢に向かうのを応援するよ” いいですね!
そして、ラスト間近の10年前にちひろを説得できずに肩を落として歩く絵津子を今の絵津子が抱きしめたシーンはとても印象的でした。
【公演終了】ステロタイプテスト/パス

【公演終了】ステロタイプテスト/パス

The end of company ジエン社

d-倉庫(東京都)

2014/01/10 (金) ~ 2014/01/14 (火)公演終了

劇後解説に感謝
ネタバレかもしれませんので、箱に入れます

ネタバレBOX

開演前から うねうねと微妙に演技している俳優たち、でもその感じはいささか徹夜明けの雰囲気、だりぃ感じでありまして(たぶん演出上)ひょっとしたらこれはまっすぐ真面目に観たら足元をすくわれる芝居なのかもしれない、観客を嘲笑うたぐいの芝居なのかもしれないと警戒(笑)しました。でもなぜ木戸銭まで払って嘲笑われる?否!腐っても観客なら登場人物の解説やらコンセプトのようなものが書いてある(会場で配られたパンフレット)を一切読まずに観てやろうじゃないか…

腑に落ちないことだらけで これを観てどう感じたらいいのか、という言い方は変だが こちらで手前にミットを構えているのに急に後ろ向きにボールを放られる感じ、とでも言おうか。居心地悪い。時計がないのが残念。だが、ひとを食った…と不快感はぬぐえないが、その台詞の生真面目さにしばしば立ち止まらざるを得ない。

私の木戸銭、できれば返してほしい…とつぶやきたくなるのを押さえながら元をとらねばという思いで終演後の劇後解説まで居座る。

枡野浩一氏(歌人、芸人)の解説を聞いて はたと膝を打つ。

そう、私はこれを言いたかったのかも。言いたくても言えずそれが昇華せずに未消化となりこのむかつきに似た症状になったのだ。

しかしこのひとの眼はすごいと思う。批評ではなく、まんま見る眼がすごい。


枡野氏が言ったように私もまず惹かれたのが、このチラシの文章。このチラシなくばたぶん未消化どころか初見で行く気持ちもなかった。このチラシの持つぞくぞく感が舞台ではまっすぐに来なかったのは私の観客としてのちから不足かも、である。
うん

うん

泥棒対策ライト

サラヴァ東京(東京都)

2014/01/09 (木) ~ 2014/01/10 (金)公演終了

満足度★★★★

軽妙で愉快
上演時間70分。みせる精神が詰まった公演。煎餅には笑った。

曲がるカーブ

曲がるカーブ

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2014/01/09 (木) ~ 2014/01/23 (木)公演終了

満足度★★★★

甲子園
面白い。

ネタバレBOX

夏の高校野球。地方大会決勝で敗れた西高に繰り上げで甲子園出場の可能性が出てくるが、エース・楢崎(花戸祐介)がナイフで刺されたり、セカンド・久留米(武子太郎)が暴力事件を起こしたり、ファースト・相場(板倉チヒロ)が婦女暴行事件を起こしたりと、千載一遇のチャンスを逃しかねず混乱する監督(久保貫太郎)、マネージャー・樹里(渡邉とかげ)たち。廃病院でフェイクダクメンタリー映画を撮ろうとしている林田監督(森下亮)は、彼らを使ってバイオレンス映画を撮り上げ、見事受賞する。しかし、その映画を見た人間が殺人を犯し、受賞取りやめとなる。落胆する監督を励まし、ハチャメチャな映画撮影が始まる…。

暴力の連鎖とか人間の暴力性の克服とかの話と、日本人をひれ伏させるチカラを持つ「甲子園」を絡めた舞台。甲子園という聖なるものと、暴力事件+出場停止という暗部との対比、その美しい部分と醜い部分を、素晴らしい舞台演出力で見せ付けてくれる。甲子園にも人間にも明暗あるよと。そして暗の部分をどうするのかってと。

甲子園大道具の使用法もさることながら、音響照明パフォーマンス一体となった構成は、相変わらず熱い。なぜにダーツなのかと思ったが。

受賞作品(映画)の連続する暴力シーンの見せ方が上手い。暴力行為だけど美しいと思った。あと、葛木英の堅物乙女とかっこいい着物姿が気に入った。当日パンフの表紙も好き。90分。
見た目、偏見、そりゃあ大変!

見た目、偏見、そりゃあ大変!

劇団おおたけ産業

北池袋 新生館シアター(東京都)

2014/01/10 (金) ~ 2014/01/13 (月)公演終了

妄想が膨らみました


大作ではないが、観客の足取りを軽くしたことは間違いない。 素朴であり、好感は持てる。


最近、数年ぶりの実家帰郷を果たす長男を描く舞台だと、なぜか、「女に なってた!」変貌が占めないか。それも、続きは「ねえ、どうなってるの?」だ。
しかし、本舞台は、長男が友人だか彼女だか解らない「ギャルを連れてくる」設定である。新鮮だ…。


『おおたけ産業』は、旗揚げしたばかりの劇団だが、方向性はみえてきたように思う。つまり、「多くの観客の足を軽くする」万人受けるする作風。
そうしたなか、社会派が あったとすれば、地方ー都市関係だろう。キーワードは「ギャル農」
髪を金色に染め、ピンクのジャージを着て、ネイル柄はスヌーピーである。このような女性達が田に潜り、稲を収穫する姿は、さながら新しい観光名所だ。
ただ、日本の平均的な農家を思い浮かべても結局、ヨボヨボお爺さん である。農林水産省によると、2013年段階で平均年齢は65歳を超えており、こちらも国際感覚からすれば 医系の教授が訪れるべき田園地帯だろう。
仮に、この共同体を守ることが村の民意なら、汚ギャルだろうが、農林業に貢献してくれるなら招き入れるしかない。その社会派で捉えると、保守的な母親を除き「歓迎ムードが拡がった」実家も、これからの時代を一歩先ゆく反応であった。

ネタバレBOX


私は「音響、音響、音響を大切にしろ!」と述べたい。クライマックスへ向けた躍動感が足りなかった原因が、音響だろう。あれは致命的ミス演出だ。
「はーい、お母さん」で終わるのはよい。しかし、どうも、爽やかな感覚が来ない。「何もしなかったこと」こそ、ミス演出である。小鳥のさえずり でも鳴かせてくれれば…。
人狼 ザ・ライブプレイングシアター #09:VILLAGE V 冬霧に冴ゆる村

人狼 ザ・ライブプレイングシアター #09:VILLAGE V 冬霧に冴ゆる村

セブンスキャッスル

上野ストアハウス(東京都)

2014/01/04 (土) ~ 2014/01/13 (月)公演終了

満足度★★★★

人間勝利
今年初の人間勝利の舞台を拝見しました。

「人狼」の舞台は初体験です。
出演された役者さんたちの個性が光っていて「人狼」を当てることは出来ませんでした。
楽しかったので「人狼」勝利の舞台も見てみたいです。

見た目、偏見、そりゃあ大変!

見た目、偏見、そりゃあ大変!

劇団おおたけ産業

北池袋 新生館シアター(東京都)

2014/01/10 (金) ~ 2014/01/13 (月)公演終了

満足度★★★

(^o^)
まさしくホームドラマだった。ただ、説明文などから想像していた「東京の女」とはえらく違っていて、裏切られた感じでした(笑)。 初舞台という、息子役の方がとてもよかったです。

ネタバレBOX

開演前、舞台上の照明がちょっとおどろおどろっぽくて、「ホラーか?」っていう感じでしたが、そうじゃありませんでした(笑)。
台詞の「間」が、何とももどかしい感じの箇所が何回もも有りましたが、あれは狙いですか?照明も、明るさ加減の小細工がちょっと変な感じがしました。
火消哀歌~冬空の木遣り唄~

火消哀歌~冬空の木遣り唄~

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2014/01/04 (土) ~ 2014/01/13 (月)公演終了

満足度★★★★★

楽しかった!
典型的な大衆演劇で、安心して観ていられる。時代劇にしては、テンポよく飽きさせないし、2時間という時間も感じさせない。人情劇だけに泣き笑いのオンパレードで、久し振りに昭和の芝居を観たようだ。演劇論的な難しいことは抜き!とにかく楽しめる、と自分は思います。

音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』

音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』

ショウビズ

草月ホール(東京都)

2014/01/09 (木) ~ 2014/01/11 (土)公演終了

満足度★★★★★

作者不詳のイフ
瀧廉太郎が嫌いでも興味がなくても好きでも、とにかくなんでもいいから観に行ったらいいと思う。
これは音楽を愛した人たちの話を装って、それだけじゃない、誰にでも共通した心の底の熱い気持ちを思い起こさせるものが語られている。
不遇の晩年を送る瀧廉太郎ではあるが、なんとも羨ましい限りであった。

『花鋏』『指先から少し血が流れ始めた』

『花鋏』『指先から少し血が流れ始めた』

三角フラスコ

せんだい演劇工房10-BOX(宮城県)

2013/11/15 (金) ~ 2013/11/16 (土)公演終了

満足度★★★★

完成度高い
プレビュー公演とは思えないくらいの、しっかりした骨太の作品2本に仕上がってました。戯曲も演出も俳優も魅力的でした。今日から始まる仙台公演が楽しみです。

WWW

WWW

劇団お座敷コブラ

カフェレストランメルヘン(神奈川県)

2014/01/08 (水) ~ 2014/01/13 (月)公演終了

満足度★★★★★

期待を大きく上回る楽しさ!
 初日に行ってきましたが、本当に楽しかった!
 見切れを心配していましたが、逆に見えない分カフェで「あそこの席何話してるんだろ…」のリアル感が有ります。なのでストレスはあまり感じず。あまりに楽しかったのですぐに買い増ししました。
 ストーリーは独立したものがそれぞれで進行。しつつ同じ場所で進行するので絶妙にリンク。つながりが面白いです。
 カフェならではの注文の演出も。開演前から役者いるということだったのでなんとなく芝居がはじまるのかと思ったら、割とココ!ってところで始まる感じが意外でした。でないと客側の見る体制できないからかもですが。
 オープニングのダンスも狭いながらよく動く。一つ一つの動きが内容と繋がっているので一度見た後に、もう一度ダンスを見ると腑に落ちる感じ。
 全体通して見終わったあとほっこりできる安心。万人にすすめられる芝居だと思います。それぞれの役者のコネタの効かせ具合も◎。一度でも楽しいけれど、何度も見るとさらに面白い芝居かも。

Eternal Malice ~英雄の作り方~

Eternal Malice ~英雄の作り方~

劇団C2

萬劇場(東京都)

2013/12/04 (水) ~ 2013/12/08 (日)公演終了

面白かった!
投稿が遅くなりました!


すごく面白かったです!
少しごちゃごちゃっとしている気もしましたが、見ごたえのある作品でした。

しっかりとメッセージ性もあって、楽しませていただきました。
次回作も期待しています。

黎明浪漫譚-れいめいロマンティック-

黎明浪漫譚-れいめいロマンティック-

エムキチビート

吉祥寺シアター(東京都)

2014/01/07 (火) ~ 2014/01/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

未だ、その時間に
今年初の観劇は、大好きなエムキチビートさんの公開ゲネプロから。今回の舞台は、特に思い入れが深くて…。上演前後の音楽に目を閉じ、心を整える。舞台が始まるとともに、役者さんたちは駆け巡る、物と同じく。引き繋がれていく父と息子の関係や思い。早くに父を亡くし伝えられなかった言葉を主人公である息子が代弁してくれた。

『回雪ノスタルジア』

『回雪ノスタルジア』

ラチェットレンチF

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2013/12/05 (木) ~ 2013/12/08 (日)公演終了

満足度

杜撰さに呆れる
報道記者時代に事件絡みで妹を喪ったライターの物語。

テンポ良い演出と各役者の演技は良いが、序盤と中盤に荒唐無稽(と言うより杜撰?)な部分がある他、要素を詰め込み過ぎて迷走した(まるで増築に増築を重ねた末に迷路のようになった温泉旅館の如し)末にかなり無茶な結末を迎えるストーリーに呆れる。

更に映像の使用も舞台表現の放棄であり感心しない。

ネタバレBOX

渡されたガセのビデオテープを事前にチェックすることなしに放映するとか、デスクから記者、ビデオクルーに担当アナウンサーにいたるまで報道番組のチーム勢揃いで警察内に乗り込むとか、フィクションであるにしても酷過ぎる。
その挙げ句、主人公が唐突に時を超えて過去を改変するとは苦し紛れ?
女王の盲景

女王の盲景

空想組曲

シアター風姿花伝(東京都)

2014/01/08 (水) ~ 2014/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

長い そして静かな余韻
強烈なコメディエンヌとしての小玉さんしか知らなかった自分を恥じた作品でした。


小玉さんに限らず、五人の役者のエネルギーのぶつかりあいを堪能しました。

空想組曲というのは初めてです。しかし劇団、世代の枠を越えたこんなコラボは、わくわくします。

最初は舞台背景が説明不足と思いましたが、今はその語らなかった部分は、観る側のイマジネーションに委ねてくれてい
るのだと感じさせます。

次の日の今も、まだ心地好い余韻が私を満たしてくれています。

ネタバレBOX

物語の最後、暗闇の中で和田琢磨さん演じる神谷ハイジの静かなモノローグがとても良かった。

おはなしがおわるのは…

の結びの言葉は忘れがたく、急いで書き留めました。
Eternal Malice ~英雄の作り方~

Eternal Malice ~英雄の作り方~

劇団C2

萬劇場(東京都)

2013/12/04 (水) ~ 2013/12/08 (日)公演終了

満足度★★★★

反戦・非戦をメインテーマに
かつての戦いを経て住み分けにより共存していた人間と魔物があるキッカケから再び戦闘状態に…というアクションファンタジー。
反戦・非戦をメインテーマにしているのは好みだし、「三英雄」のキャラ・諸設定をキチンと分けて役割分担させたのが巧い。

一方、テーマがテーマだけに人死にをもう少し減らせなかったかとも思う。一般無名兵士がかなり殺される(←敢えての表現)のがやや気になる。
また、「キーン!」「ビュッ!」「シュ!」「バキ!」などサンプラーの音量が大きく興醒めすることもしばしば。音量を上げれば殺陣・擬闘の迫力が増すというものではなかろう。

とはいえ、ストーリーもよく練られていたし大方満足。次回作にも期待。

なお、争いのキッカケが主人公側にあることに「銀河漂流バイファム」を、また、主人公側のエース級が敵方と恋に落ちることや敵の命を奪わない戦い方をすることに「超時空要塞マクロス」を想起。

黎明浪漫譚-れいめいロマンティック-

黎明浪漫譚-れいめいロマンティック-

エムキチビート

吉祥寺シアター(東京都)

2014/01/07 (火) ~ 2014/01/12 (日)公演終了

満足度★★★

今年初観劇
タイトルに惹かれたのと、気になっていた役者さんがいたので観劇。
こちらの劇団さんの公演は初めて拝見しました。

所々引っ掛かる部分はあったものの面白く観られました。
お話が素敵で、ちらほらすすり泣く声もありました。
ただ、ラストに向けてテンポよく盛り上がっていったのに、これで終わり?という終わり方でちょっと拍子抜けです。

ストーリーを知ってからもう一度観るとまた違って見えて楽しめそうと思いました。

ネタバレBOX

木魚の音を役者さんが口に手を当てて出していたのには驚きました!
30才になった少年A

30才になった少年A

Sun-mallstudio produce

サンモールスタジオ(東京都)

2014/01/09 (木) ~ 2014/01/14 (火)公演終了

満足度★★★★

世間
昨年9月に新宿ゴールデン街劇場でアフリカン寺越企画によって上演された脚本を
リニューアルしてスケールを大きくしたというもの。
主演のアフリカン寺越は相変わらずの熱量で隙のないなりきりぶり。
新聞店に住込みで働く男の部屋を舞台にした前回の閉鎖的な設定から
一階店舗部分と二階居室部分に分かれた舞台、
登場人物も5人から11人に増え、確かに規模は大きくなった。
増えたのは“世間”の人数である。

個人的な好みと、前回公演を観ているという事情もあるのだが、
あの極小空間での濃密な“行き場の無さ”が拡散してしまったように感じた。
例えるなら、前回公演は岸を削るような急流だったが
今回は川幅が広くなった分流れが緩やかになった印象。
しかしこの重いテーマを、直球ストレートでど真ん中めがけて来る感じが素晴らしい。

ネタバレBOX

中学生の時、自分が描いた漫画をめぐる喧嘩から
同級生を橋の上から突き落として死なせた32才の男(アフリカン寺越)は
3年ぶりにその町に戻り、新聞店の住込み従業員として働いている。
ワケありの従業員を雇う新聞販売店の店長、
やはり犯罪歴のある同僚とその彼女、
橋の上で起こったあの事件を目撃しながら何も出来なかった教師、
彼を救うという名目で強引に通ってくる新興宗教の女、
それらが入れ替わり立ち替わり訪れる部屋で、男は漫画を描き続ける。
そしてついにここでも、男の過去が商店街で噂になり始める。
店の存続さえ危うくなり、追い詰められた店長は
「お前を橋の上から突き落としてやる」と迫る…。

広くなった空間と増えた人数で描かれるのは、いわゆる“世間”というやつだ。
彼を拒否し、あの小さな、漫画の本棚しかない部屋へ彼を追いやった“世間”である。
その中に、前回は無かった「宗教」を取り入れたのは
“もしかしたら救われるかもしれない”という一瞬の希望を与えて面白かった。
だが辞めていく事務員とか、通信制高校の先生・生徒、商店街の人等
前回登場しなかった人物が出て来ることの効果はそれほど感じられなかった。
それら“世間一般”を一切省いた前回の方が、
まさに“世間を狭く”生きている男の人生がくっきりと浮かび上がった気がする。
男の現在は、世間の仕打ちの結果だからだ。

人殺しを雇っている店などもう駄目だ、と絶望した店長が
「お前を橋の上から突き落としてやる」と迫るところでは
相変わらずアフリカン寺越の表情に見ごたえがあった。
今回の方が、本当に突き落とされるような気がして暗澹とした。
店長が「商店街の人に過去を正直に話せ、それでまたこのまま店を続けよう」と言い、
男が「それは今までの経験からうまくいかない」と答えるやりとりが挿入されているである。
何度も希望を持って、その都度潰された悲痛な思いがにじむ台詞だ。
考えられるたったひとつの方法がボツになあった後の「突き落としてやる」だから
なおさら選択の無さが胸に迫って、観ている私ももうダメなんだという気がした。

罪を償ってやり直せばいい、ときれい事のように言うが
実際過去に罪を犯した人と身近に接して心からそう言えるか、
ということを鋭く問いかけて来て、舞台の“世間”を批判しつつ痛みを感じる。
同僚のカップルには「過去は過去、今やってないなら問題ないじゃない?」と言いながら
自分はその言葉に全く救われていないという矛盾。

事件の現場となったこの町に、何でわざわざ男が帰ってきたのかと思うが
それはたったひとり、彼を受け入れてくれた新聞販売店の店長がいたからなのだ。
あちこち流れて、行く先々で過去がばれると拒否されて来た男が
過去を知りながら「一緒に働こう」と言ってくれたことにどれほど救われたか
その切なる思いが、危険区域での暮らしを決断させたのだと思う。

オーバーアクト気味ながら緊張感のある役者陣が良かった。
男の罪と一緒に自分の人生も壊れていった元教師役の吉水恭子さん、
後悔ともどかしさに満ちたキツイ物言いが上手い。
全編を通してギリギリの“長い間”が今回も効いている。
シリアスな状況で時折笑いを誘うペーソスも効果的。

前回の公演を観たのでつい比較してしまうのだが、
何と言ってもアフリカン寺越あっての作品である事に変わりは無く、
それがこの作品の力であると思う。
この人、この風貌で他にどんなキャラを演じるのかなあと思った。

曲がるカーブ

曲がるカーブ

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2014/01/09 (木) ~ 2014/01/23 (木)公演終了

満足度★★★★★

無茶苦茶を装う精密さに感嘆!
何度観ても、その度、驚きを禁じ得ない劇団です。

それこそ、変化球の目白押し!

いつもながら、感心するのは、デフォルメされた社会現象の羅列が、一見すると、かなりハチャメチャに見えるのに、よくよく考えると、実に現実を直視した視点での計算し尽した名脚本に昇華されている点。

そういう緻密な脚本、頭脳的な演出、演技、爆発力、身体能力の3拍子が揃った役者力…と、ここまで全てが兼ね備わった団体は滅多にないと、畏敬の念でいっぱいになります。

劇団員ばかりでなく、客演陣も、すっかりクロム色になるところが、これまたあっぱれです。

観る度、思うのは、青木さんの頭脳明晰さと、抜群の芸術センス。ラジオ番組の構成をしている頃だったら、是非とも、ゲストにお呼びして、お話を聞いてみたかったと思う方です。

クロムの芝居、何が好きかって、絶対、観ていない人を観た気にできないところ。幾ら、説明上手な人が、言葉を駆使したところで、クロムのエキサイティングな舞台を疑似体験させることは不可能です。

だから、劇場に足を運んだ観た者勝ちなのが、ひとえに嬉しくもあり、観てない人に説明できないもどかしさもあり…。とにかく、心をざわつかせる、稀有な劇団!

新年第一弾の、観劇、大満足でした。(でも、欲を言えば、奥田ワレタさんの今回の役は、ちょっと彼女の魅力を存分に出す役柄ではなかったようで、
ファンとしては、やや心残りでしたが)

ネタバレBOX

確かに、「甲子園」という単語は、何かを目指す人にとっての、目標地点、聖地といった印象で、心にインプットされていますね。

その、誰もが目指す「甲子園」の真実を問い直し、暴くような、想像を絶するストーリー進行に、ワクワクしっぱなしでした。(尚、これを観た数日後、NHKの「クローズアップ現代」で、居酒屋甲子園なる気味悪いイベントを知って、絶句しました。青木さんの観察眼、凄すぎる!)

一見、力技に見える、映画撮影シーンの暴力の連打が、実に、人間社会の現実を痛烈に皮肉って、痛快でした。

クロムの芝居では、いつも終盤になって登場する小道具のセンスの良さに、喝采してしまいますが、今回のは、とりわけ、アイデアグッズで、受けまくりました。
ある程度の教育【フリーカンパ制につき無料公演】

ある程度の教育【フリーカンパ制につき無料公演】

ポーラは嘘をついた―Paralyzed Paula―

B201 [早稲田大学学生会館](東京都)

2014/01/09 (木) ~ 2014/01/12 (日)公演終了

満足度★★★★

究極のこじらせ女子
いや、こじらせてるのはパパの方か?大沢樹生さんと喜多嶋舞さんと長男さんにお薦めします!

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