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はぐらかしたり、もてなしたり

はぐらかしたり、もてなしたり

iaku

シアタートラム(東京都)

2025/06/27 (金) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

村上春樹の短編、『レーダーホーゼン』を思い出した。

舞台美術の柴田隆弘氏が構築したエッシャーのだまし絵のようなセット。至る所に増設された階段は今は失き九龍城の違法建築のよう。東急ハンズ渋谷店、ドン・キホーテやヴィレッジヴァンガードなどのスラムの迷宮感。増築を重ねた神経症的な高台建築。(関係ないが終わりが見えず延々続く渋谷駅の工事にはガウディのサグラダ・ファミリア感)。

高校教師の瓜生和成氏は教え子だった竹田モモコさんと結婚、授かった娘は高橋紗良さん。瓜生和成氏の好物はオムライス。竹田モモコさんの作るオムライスは鳥肉の代わりにソーセージを何本も入れるレシピ。ある日、お弁当のオムライスに楽しみにしていたソーセージが一本も入っていなかった。帰ってそのことを妻に告げると「確かに入れた」と不機嫌に。その後、失踪してしまう。

MVPは近藤フク氏か。東京03の飯塚のようでいてプロレスラーの西村修みたいな独特の空気。座間事件の死刑囚のような妙なヤバさも。
彼の上司、小林さやかさんのキャラも愉しい。
高橋紗良さんと井上拓哉氏のストーリーは清々しい。
キャスティングが絶妙で横山拓也氏の人を見る目が超一流。

短編『夜のオシノビ』が挿入されていたり、短編連作集を一つに繋いだ印象。何か無理にまとめた感もあった。だが非常に高度な文学性も感じさせる。妻の帰宅時、家族会議のMCを担当する異儀田夏葉さん、その奮闘ぶりが最高だった。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

タイトルは横山拓也氏の今作を観に来る観客に対してのスタンスだろう。

『レーダーホーゼン』は単身ドイツ旅行をすることになった55歳の女性が夫に頼まれて肩紐付き革製半ズボン、レーダーホーゼンを購入。オーダーメイド専門店の為、体型のよく似た現地のドイツ人に試着して貰い、サイズを合わせる。その折に何かの心境の変化があり、突然離婚を決意する。一方的に一緒に捨てられてショックを受ける大学生の娘。三年後、親族の葬式で顔を合わせた母娘。自分を捨てた理由を問い質し、レーダーホーゼンの話を聞いて何故か納得、母を許すこととなる。この母親に離婚を決意させた“何か”が謎で文学としての余韻となる。

自分も当時この小説を読んで深く共感を覚えたことを思い出す。論理的に人間の思考行動は構築されている訳ではない。それは後付けのアリバイ作りみたいなもので所詮は嘘だ。本当は言語化出来ないある種の“気付き”みたいなものの方が生きていく上では大きい。そのキッカケになるレーダーホーゼンが人によってはオムライスだったりする。

ラストはオムライスを皆で食うしかないだろうと思っていたら成程。
火山島

火山島

劇団演奏舞台

キーノートシアター(東京都)

2025/06/27 (金) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 淡々と紡がれる今作のテーマは深い。改めてゆっくり、世の中のこと。自分のことを振り返ってみたい。(追記予定)

ネタバレBOX

 十日に一度、欠航でなければ内地からの船が港に入る人口千人程の小島には四十年来稼働し電気を起してきた風車が在る。物語は島の崖に立つこの風車が強い風に立ち向かい人々に恩恵を施してきた音、目には見えないほどゆっくり、而も着実に移動し島の若者たちが何度も戦争に獲られ亡くなってきた墓を耳にできる音もなく、心の琴線を響かせて埋め尽くして行く“音”、そして周囲を囲むさざ波の聲が続いてきた。然し心臓音のように当たり前の風車の音は搔き消されることになる。この風車を四十年間護り続けてきた老人が語る島の歴史が今作で描かれる三つの音の内実と共に展開する。
 冒頭に挙げた入港の日の賑わいを想像して欲しい。人々は欠航でなかったことにホッとし、待ち侘びた新鮮な食料や便り、注文していた物が漸く無事に手に入る喜びや幸運に胸をなでおろしひと時の安らぎを覚える。だが、何度となく起こっては村の若者を徴兵し死や身体の欠損を強制する戦争に抗する手立ては無念にも見付からない。今迄の戦争で敗戦の憂き目もみて来た。その時に受けた魂の傷は時の経過も癒すことが出来ない重い軛である。母が愛する嬰児が泣く声を防空壕の皆から咎められ止む無く殺した、その痛みは! 嬰児を水に沈めた時、水中から上がって来た小さなあぶくの数々が、一つ一つ彼女の魂を抉るのである。今も、明日も、永久とは言わぬまでも少なくとも死ぬまでは。付き添う夫もどうしてやることもできない。愛する妻を庇ってやれない苦悩は筆舌に尽くし難い。戦争は若者達にも大きな重い圧を加え、未来は鈍色である。徴兵される男子ばかりではなく、恋こそ命の乙女も無論、この宿命からは逃れられぬ。砂丘は古い兵士の墓から順に覆い尽くしてゆく。だが今後も墓が消えることは無さそうである。それは、この国の為政者が民の命を何とも思っていないからである。
パトリオット

パトリオット

劇団チャリT企画

新宿シアタートップス(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

理解不能の危機で地下倉庫に避難してきた人達
スマホがリアルタイムに繋がらないと、個々が持ち寄った情報だけで事態が独自に創りあがっていく様子が面白い
現実とSFエッセンスの素敵な融合
シアタートップスの特性を活かした参加的、視覚的要素も加わり、ちょっとした異空間に迷い込んだ感覚になりました

煙が目にしみる【Mura.画】

煙が目にしみる【Mura.画】

Mura.画

劇場MOMO(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ウミネコチーム観ました。色んな劇団で何度も観ている作品ですが、年を取ったり、家人を亡くしたりすると、増々感慨深くなってきますね。今回も大いに感銘を受けました。

ケチャドバ!Bottle1「フルハウス」

ケチャドバ!Bottle1「フルハウス」

プラチナ・ペーパーズ

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

team.ナポを観劇。
スペースゼロの中に、ロマン座っていうキャパ100弱の小劇場をほぼ再現。
客は、ステージの後ろの壁になって、裏からバックステージの芝居を観るっていうアイデア。
故に、目の前に客席が広がっています。
テンポ良いコメディで、それぞれのキャラも濃いなか、幕が上がるまでを見守ることになります。

なので演劇自体に興味があまり無い人には、どうかはわからないですが。
目の前に展開される群像劇に、自分の価値観を重ねたり、自分との相違も考えたりしながら。
演劇あるあるも楽しみながら、きっと面白く2時間過ごせる快作。

煙が目にしみる【Mura.画】

煙が目にしみる【Mura.画】

Mura.画

劇場MOMO(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

モテない保険2

モテない保険2

TOP BANANA

ブディストホール(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/06/27 (金) 14:00

コメディーであるのと同時に、世の中の変化や人間の生き方を考えさせる奥の深い社会派の作品でした。登場人物ひとりひとりの描き方もグー。

徒然なるままに…  NOT TO BE, OR NOT TO BE…

徒然なるままに… NOT TO BE, OR NOT TO BE…

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2025/06/18 (水) ~ 2025/06/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/06/19 (木) 14:00

「時代考証その他大幅にデタラメです(大意)」と開き直っていた(笑)ドラマ「浮浪雲(1978年)」のような意図的時代錯誤部分がシリアスな本筋とあまりにもそぐわなくて「どうしてそうしてしまったの?」という疑問に終始……。
「浮浪雲」の場合は基本的にコメディで、そこに当時の世相への皮肉・揶揄を練り込んでいたのでその手法にさほど違和感がなかったが、特攻隊員を描いた本作でそれをやってしまうと、そのおちゃらけた感が主題に対する意気込みを否定するようにも感じてしまうんだな。いったいどうした?
という不満もありつつ「終わり良ければ総て良し」的に終盤の秋山の出撃を見送る面々の見せ方(映像的でもある)と最終場の切なさはやはり秋葉演出。
また、「急に出現する日本間」の舞台美術も見事。
あと、「フレッシュな星組/熟練(初演準拠)の月組」なダブルキャストも両方見るとそれぞれの良さがあり、これも舞台演劇の特色だな、と思ったりも。

「軽い重箱」

「軽い重箱」

殿様ランチ

駅前劇場(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初殿様ランチでしたが、とても楽しくて大満足!
大笑いというよりクスっと笑える場面がちりばめられていて終わりまで楽しめた作品でした。
6編の作品でしたが、リンクしているところがあるのでそれに気づいた時の気持ちよさが!

ミュージカル「梨泰院クラス」

ミュージカル「梨泰院クラス」

東宝

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2025/06/09 (月) ~ 2025/06/30 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

このドラマが大好きで、そのミュージカル?と興味津々で観劇しました。
かなりのスピードで纏めた感はありましたが(これは仕方ない気はする)とても良かったです。
斬新な演出や歌、ダンス共に観応えがあり、エンタメ性の高さを感じました。
主演の小瀧さんは、元々の声が良く声量があり、演技の上では感情表現が素晴らしく、小瀧さんのセロイを演じていました。
面白くてあっという間の時間でした。
大満足でした!

KYOTO

KYOTO

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2025/06/27 (金) ~ 2025/07/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
地球温暖化を巡る国際会議、それを1990年前後からタイトルにもなっている1997年の京都会議(COP3)迄を描いた記録劇であり、主人公ドン・パールマンの記憶劇。観客は、その国際会議を傍聴するといったスタイル。事実を追った感は拭えないが、観せる演出としては巧い。

公演の面白いところは、人間は今しか生きていない、それも国や地域、アイデンティティを背負ってである。それを傍聴という俯瞰した立場から観るという面白さ。しかも、会議ごとに漂流するような議論が どこで決着するのか分からない。圧巻は、京都議定書を採択するまでの様子を分刻みの中継のように早口で喋り臨場感を煽る。

もう一つは、実証なき科学は政治の道具にされるという危険性を孕んでいること。世の中には多くの正義があり、特に国際会議では国や地域ごとの利害関係や思惑が複雑に絡み合い、理論的な正義を導き出すためには確固たる科学的な裏付けが必要になる。時に 政治的判断を求めたがるが、その曖昧さは将来に禍根を残す といったことを訴えている。

気候変動問題という人類にとって重大な課題、一方 合意に係る些細な文書の修正論争という、滑稽な様相が浮き彫りになる。観劇(傍観)者としては面白いが、未来を生きる人にとっては 堪ったものではない。多くの人は、目前の現実の中で考え行動する。公演を観たとしても、地球温暖化の問題と今の自分たちの暮らしが 具体的にどう関わるのかピンとこないところが悔しい。
(上演時間2時間40分 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は、変形ロ字型で 奥が一段高くなった会議場を連想させる。国連気候変動枠組条約締約国会議(=COP)の開催年と場所によって、議長と参加国が座る位置が変わる。観客は狂言回し的な役割であり主人公のドン・パールマンの案内でCOPを傍聴しているといった感覚。

物語は、COPの開催概要を順々に展開し、参加国の利害を多面・多角的に描き、タイトルにあるCOP3へ。環境問題そのもの、同時に採決が全会一致を要することが肝。合意形成が議長の強権のような印象だが…。

史実に準えた舞台に どれだけのリアリティを求めるか、その度合いは観客によって各々。そして先進国の排出する温室効果ガスの削減について、初めて法的拘束力を持つ削減目標と達成期限が設定された「京都議定書」が採択。温室効果ガスの削減の必要性については漫然と分かった気になっているが、その真意を どれほど身近(切実)な問題として捉えているだろうか。国や地域によって排出量が違い、その影響を受ける度合いが異なる。それも今いる人間ではなく、未来を生きる人々の暮らしを想定してのことである。

地政学的な状況・立場と国家的な利害、さらに個人(政治)的な思惑を絡めることによって、新聞や情報誌・週刊誌といった紙面上の情報だけではなく、生身の役者が演じる虚構の世界で問題の所在を知る。これこそ舞台の醍醐味であろう。実際のCOPに立ち会うことなど不可、恣意的(視点の置き方で違った印象)になるのは止むを得ないが、それでも考える材料にはなる。

物語は、グループ別に 先進国で構成される経済協力開発機構諸国の第1グループ、経済移行国の第2グループ、途上国と中国、小島嶼国連合の第3グループ と利害の対立を巧みに際立たせる。特にキリバスなどの島嶼国は水没の危機に瀕している。対立した議論が出来ているのは同時通訳した言語、しかし 深夜に及ぶ会議に抗議した通訳者のストライキによって更に紛糾した事態へ。意思の疎通が図れない、多国言語が飛び交う滑稽さは舞台ならではの表現。

パールマンが傍聴している観客に向かって話しかけるような説明スタイル、その台詞は歯切れがよい。それによって複雑な国際会議が分り易く テンポよく展開していく。時にテーブルの上を歩き回り、会議の転戦を見守るかのよう。モノクロのような味気ない舞台にスポットライト、そこに1人の人間の思いを見るようだ。
ちなみに ドン・パールマン役を円城寺あや さんが演じており、1人(本人)だけならまだしも、後々 夫婦として並ぶ場面がある。その時は少し違和感が…。
次回公演も楽しみにしております。
パトリオット

パトリオット

劇団チャリT企画

新宿シアタートップス(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

6/27観劇

バサラオ

バサラオ

劇団☆新感線

明治座(東京都)

2024/08/12 (月) ~ 2024/09/26 (木)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

2025年6月27日12時50分 ブルク13 ゲキシネ
え!ここで終わるの!!としか言いようがないラストだった。中島さんでもいのうえさんでもいいから聞きたいです。

劇場では見えない細かい表情も見る事ができて良かったけど、やっぱり劇場で見た狂い桜の見事さにはかなわない。

あまりゲキシネっぽい加工はしていないと思って見ていたのでしたが「え?ここで矢が飛ばせたっけ?」と思っていたら舞台挨拶のトークでMCさんが「CGで矢を飛ばしたり・・・」とか言っていたので、そうなのか???

ネタバレBOX

舞台挨拶ゲストの三人への事前アンケート。あなたは何の王だと思いますか?
生田斗真さん「のびしろの王」化粧の技術を向上させたそうです。
中村倫也さん「雑炊の王」本も出しているとか、知らなかったです。
古田新太さん「ハラスメントの王」右手にセクハラ、左手にパワハラ、真ん中にモラハラ。と言って「真ん中がセクハラじゃないんですか」と突っ込まれていました。
こちらを見てしまうと先日の「紅鬼物語」が地味に思えてしまう。
舞台表現プロジェクトSTEP WS公演

舞台表現プロジェクトSTEP WS公演

STEP

追手門学院大学 総持寺キャンパス アカデミックアーク 4階 A473教室(大阪府)

2025/06/26 (木) ~ 2025/06/27 (金)公演終了

実演鑑賞

4本のオムニバスを60分で上演
大学は凄くて、まずは建物に圧巻
授業をやるであろう教室を舞台に転換しては…
できは、学生演劇デモかなり…
4本には繋がりもなく、終了
残念ながら、楽しめず

コラボレーターズ

コラボレーターズ

劇団青年座

吉祥寺シアター(東京都)

2025/06/19 (木) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ブルガーコフは劇団印象が二年前に上演した『犬と独裁者』でも採り上げていた。たまたま「ロシア・ソビエトSF傑作集」に収録された作品を読んでいて、この人はソ連のSF作家だと思っていたから、『犬と独裁者』のときは舞台のブルガーコフと自分の中のブルガーコフ像が重なるまで時間がかかったが、その体験があったからか、本作は素直に楽しめた。

「軽い重箱」

「軽い重箱」

殿様ランチ

駅前劇場(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

もう最高!久しぶりに腹の底から笑いました。私の笑いのツボにどツボでした。東京03に近い笑いもありほんとずっと笑いっぱなしでした。いやー、これほどのハイクオリティの笑いを舞台で見たのは久しぶりです。これはマジで見て損はないですね。6つのショートコント的な話が絶妙に有機的につながっているし。最高のパフォーマンスでした。

湿ったインテリア

湿ったインテリア

ウンゲツィーファ

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2025/05/19 (月) ~ 2025/05/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

賞賛はグランプリ評において行ったので、ここでは『湿ったインテリア』について考える中で連想したものを

ネタバレBOX

本作において「母」は、ある種の役割を超えて、舞台空間に強く立ち現れる存在でした。それは、制度や役割としての「母」ではなく、「この子を抱く」と自ら名乗り出る実存としての母。まるで、ひとつの関係を取り戻すようにして、あるいは、それが一度でもあったことを手放さないようにして、母たちは赤ん坊(=スピーカー)に手を伸ばす。誰の子でもないようでいて、それでも「私の子」であると抱きしめようとする。

また、その、赤ん坊=スピーカーの存在。
その「赤ん坊」は、誰の子でもありうるし、誰の子でもない。しかしその前で、人は無意識に声をやさしくし、目線を下げ、抱えるようにして関係を持とうとする。スピーカーに宿るのは、生物的な子どもではなく、「ケアの対象」としての抽象的な存在であり、それゆえにこそ、ケアする主体を観客は観る。見立ては、その表現において作品そのものを象徴しうるのだと興味深く思いました。

父たち(あるいは“家族”たち)は疑われ、混同され、すり替えられる。しかし母だけは、たとえ赤ん坊がスピーカーに過ぎないとしても、揺らがない。それはもしかすると、母性の絶対性などと言う前近代的なことでは無く、私たちの社会や感情が「ケアの起点」として母を記憶しているからかもしれない。
『湿ったインテリア』は、その記憶に触れながら、それでもなお「誰かに応答することのかけがえなさ」を残していく。その呼びかけは、観客に届いていたように思います。
牧神の星

牧神の星

劇団UZ

アトリエhaco(愛媛県)

2025/05/10 (土) ~ 2025/05/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

未来を作る場所から、過去が立ちあがるか

ネタバレBOX

アトリエhacoという新たな拠点のこけら落としとして、地域に根差した劇団が新たな一歩を踏み出したこと、その決断と行動力には大いなる敬意を抱いています。都市部とは異なる環境で、観客とともに場を育てていこうとする姿勢は、演劇の根源的な価値と向き合う行為でもあり、まずはその一点に拍手を送りたいと思います。

物語の中核をなすのは、敗戦を受け入れられず通信所を占拠しようとする将校と、それに巻き込まれる女子挺身隊員たち。だがこの「物語」は、現代を生きる俳優たちが稽古を通じて演じることで立ち現れる仕組みになっており、登場人物の多くが本人と同じ名前を与えられている点や、演出家への不満を語る場面を含め、フィクションとノンフィクションの裂け目を俳優たちが自らの身体で渡り歩いていく様は、近年の演劇の傾向を意識しつつも、十分機能していました。

その上で、今回劇中で描かれる「稽古場でのやりとり」や「劇団運営上の内輪的な関係性」がどこまで必要だったのかについて、疑問が残りました。虚構と現実を交錯させる構造は古くから用いられてきた技法であり、それ自体が悪いわけではないのですが、どうしも話の軸が複数になるため、一つ一つの場面は映像作品のように断片的になりがちです。
また、作品の主軸となる戦争と現在の接続についても、いくつかの描写がその切実さを削いでしまっていたように感じました。黒電話や軍服といった記号的なガジェットが登場する場面では、どこかで「これは演劇の中の戦争」であるという演出上の距離が生まれてしまい、現代との断絶を埋めるどころか、むしろ際立たせてしまっていた印象すらあります。現実と虚構を地続きに描こうとするならば、その“演出上の嘘”をどこまで突き詰めるか、あるいはどこまで意識的に裏切るか、演出の選択がもう一段あってもよかったかもしれません。

作品が歴史と向き合いながら「今ここ」を描こうとする意志は伝わっています。
ただし、その意志が形になるためには、劇団という共同体の物語や、あるいは記号的な演出ではなく、表現したいことに相応しい新たな表現方法があるはずです。アトリエhacoが、その創作と様々な試作の大切な場所となることを願っています。
若者は退屈している

若者は退屈している

人文借景

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2025/06/27 (金) ~ 2025/06/30 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/06/27 (金) 18:30

105分。休憩なし。

kaguya

kaguya

まぼろしのくに

ザ・ポケット(東京都)

2025/04/03 (木) ~ 2025/04/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

物語はどのように結末に向かうのか

ネタバレBOX

“日本最古の物語”「竹取物語」をベースにしながら、母性の不在、家系への呪縛、自己神話化といったテーマを織り込み、登場人物それぞれの混乱を舞台上に並列的に提示していました。

舞台は冒頭から疾走し、俳優たちは場面転換も息をつく間もないほどに駆け抜けていきます。台詞の応酬や身体表現、人形が人になる瞬間など、演出の仕掛けは豊富であり、思春期の少年の妄想と現実が立ち上がる世界観は、そのゴシック的な表出と相まって魅力的でした。

膨大な台詞量、テンポの早さ、身体表現の過剰──いずれも「熱狂への階段」として好意的に受け取ることもできるのですが、反面、それぞれの場面やキャラクターの表現は少々形式的になっていたと思います。意図的な部分もあるとは思いながらも。
また、近年の暗殺事件を下敷きにしたイメージに収斂していくラストも、月(ムーン)、母(マザー)、ムーンショットなど言葉のいわゆる縁語構成的な展開で物語を推進して行くには、意味と言葉の距離が果たして効果的であったのか疑問が残る部分です。

それでも千年の昔、かぐや姫がこの世を去った物語が、今、母を求める一人の少年の物語として蘇るという仕掛けは面白く、かぐや姫が犯した「罪」を〈血族の原罪〉として再設定しようとした着想と合わせて、家系の妄執や家父長制的な構造、思春期の葛藤、過去と現代の衝突など、それらの交差点としてさらに踏み込める可能性もあったと思います。
竹取物語という古典の失われない魔力を改めて思い出させてくれました。

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