kaguya 公演情報 まぼろしのくに「kaguya」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    物語はどのように結末に向かうのか

    ネタバレBOX

    “日本最古の物語”「竹取物語」をベースにしながら、母性の不在、家系への呪縛、自己神話化といったテーマを織り込み、登場人物それぞれの混乱を舞台上に並列的に提示していました。

    舞台は冒頭から疾走し、俳優たちは場面転換も息をつく間もないほどに駆け抜けていきます。台詞の応酬や身体表現、人形が人になる瞬間など、演出の仕掛けは豊富であり、思春期の少年の妄想と現実が立ち上がる世界観は、そのゴシック的な表出と相まって魅力的でした。

    膨大な台詞量、テンポの早さ、身体表現の過剰──いずれも「熱狂への階段」として好意的に受け取ることもできるのですが、反面、それぞれの場面やキャラクターの表現は少々形式的になっていたと思います。意図的な部分もあるとは思いながらも。
    また、近年の暗殺事件を下敷きにしたイメージに収斂していくラストも、月(ムーン)、母(マザー)、ムーンショットなど言葉のいわゆる縁語構成的な展開で物語を推進して行くには、意味と言葉の距離が果たして効果的であったのか疑問が残る部分です。

    それでも千年の昔、かぐや姫がこの世を去った物語が、今、母を求める一人の少年の物語として蘇るという仕掛けは面白く、かぐや姫が犯した「罪」を〈血族の原罪〉として再設定しようとした着想と合わせて、家系の妄執や家父長制的な構造、思春期の葛藤、過去と現代の衝突など、それらの交差点としてさらに踏み込める可能性もあったと思います。
    竹取物語という古典の失われない魔力を改めて思い出させてくれました。

    0

    2025/06/27 20:12

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大