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牧神の星
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劇団UZ「
牧神の星
」の観てきた!クチコミとコメント
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松岡大貴(29)
実演鑑賞
満足度
★★★
未来を作る場所から、過去が立ちあがるか
ネタバレBOX
アトリエhacoという新たな拠点のこけら落としとして、地域に根差した劇団が新たな一歩を踏み出したこと、その決断と行動力には大いなる敬意を抱いています。都市部とは異なる環境で、観客とともに場を育てていこうとする姿勢は、演劇の根源的な価値と向き合う行為でもあり、まずはその一点に拍手を送りたいと思います。
物語の中核をなすのは、敗戦を受け入れられず通信所を占拠しようとする将校と、それに巻き込まれる女子挺身隊員たち。だがこの「物語」は、現代を生きる俳優たちが稽古を通じて演じることで立ち現れる仕組みになっており、登場人物の多くが本人と同じ名前を与えられている点や、演出家への不満を語る場面を含め、フィクションとノンフィクションの裂け目を俳優たちが自らの身体で渡り歩いていく様は、近年の演劇の傾向を意識しつつも、十分機能していました。
その上で、今回劇中で描かれる「稽古場でのやりとり」や「劇団運営上の内輪的な関係性」がどこまで必要だったのかについて、疑問が残りました。虚構と現実を交錯させる構造は古くから用いられてきた技法であり、それ自体が悪いわけではないのですが、どうしも話の軸が複数になるため、一つ一つの場面は映像作品のように断片的になりがちです。
また、作品の主軸となる戦争と現在の接続についても、いくつかの描写がその切実さを削いでしまっていたように感じました。黒電話や軍服といった記号的なガジェットが登場する場面では、どこかで「これは演劇の中の戦争」であるという演出上の距離が生まれてしまい、現代との断絶を埋めるどころか、むしろ際立たせてしまっていた印象すらあります。現実と虚構を地続きに描こうとするならば、その“演出上の嘘”をどこまで突き詰めるか、あるいはどこまで意識的に裏切るか、演出の選択がもう一段あってもよかったかもしれません。
作品が歴史と向き合いながら「今ここ」を描こうとする意志は伝わっています。
ただし、その意志が形になるためには、劇団という共同体の物語や、あるいは記号的な演出ではなく、表現したいことに相応しい新たな表現方法があるはずです。アトリエhacoが、その創作と様々な試作の大切な場所となることを願っています。
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2025/06/27 20:47
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