
パンデミック・パニック
Nakatsuru Boulevard Tokyo
APOCシアター(東京都)
2020/07/04 (土) ~ 2020/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
ライブ配信だが久々にガッツリ2時間の濃い芝居を観た。
中津留氏らしい本と演技(役者への演出)。本は新型コロナを題材に、小さな商社とそこで働く人々が登場する話であったが、重要な問題を掴まえドラマ化する筆力にやはり感心。ただ、幾つかある笑わせどころで、さすがに観客不在はきついが、それでも書いてしまうのは作者の願望なのに違いない。(画面のこちらで視聴者は反応した事だろうが、通常なら必ず起こっただろう「ざわ」という笑いが欠けている・・私はスタッフが笑っても良いと思う・・しかし作者はそういう場面を書かずにおれないのだろう。)
上演は劇場を使い、配信はリアルタイム、従って役者全員が全ステージ通常公演のように出演する。映像は複数のカメラで場面の風景・役者を追う。その分、正面から見てわかる立ち位置などは判りにくくなるが、カメラの寄り方やスイッチのタイミング等は日によって異なるとか(今回はカメラというスタッフワークが加わった訳だ)。
12日夜の千秋楽を観たが、翌日から一週間アーカイブ配信(上演順に各ステージを1日ずつ)を行うとの事。

「キズツクキカイ」「お湯で流して」
たすいち
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2020/07/11 (土) ~ 2020/07/19 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/07/12 (日) 20:00
価格4,800円
『キズツクキカイ』12日20時開演回(108分)を拝見。

天神さまのほそみち
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2020/07/03 (金) ~ 2020/07/19 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/07/11 (土) 14:00
燐光群が別役不条理劇にチャレンジだが、意外にすんなりと「落ちる」芝居になっていた。75分。
不思議な対応をする人々と出会った「普通の」人が、争いを避けようとして逆に争いを起こしてしまう、というのは分かりやすい。勿論、不思議な人々の反応の理由は分からないし、「普通の」人であるはずの姉弟にも不可解な部分は残るが、こういう「巻き込まれ」型のトラブルは現実でもありそうだと感じる。そして、それが暴力的に解決されるという不条理も現実ではありそうな気がした。
燐光群の役者陣も歳を取ったが若手が育ってきているのは分かり、良い脚本に出会えば面白い舞台を作れるのだと改めて認識した。

「☆ TRYすこしずつ☆」
あみゅーず・とらいあんぐる
天満天六・音太小屋(大阪府)
2020/07/04 (土) ~ 2020/07/04 (土)公演終了
満足度★★★★★
音太小屋 T-6で、この小屋があみゅーず・とらいあんぐるの空気で一杯になりました。
面白かった。
殺意のレシピ 荻原 浩
夫婦がお互いに抱く お見通しよ 食べ合わせで有毒に お見通しよ
笑い合う 笑い続ける
知らずの食べてた笑いダケ 似た者夫婦 現実にありそうだ。
佇む人 筒井 康隆
犬柱 枤(ケン)の 木苗 朲 邪魔になってきた 書き物をする人 妻 会ってはいけない
だんだん木になっていく 感じなくなっていく 今の世の中 言えない国
なってはいけない世界。

第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020
シアターX(カイ)
シアターX(東京都)
2020/06/13 (土) ~ 2020/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
第14回シアターX国際舞台芸術祭2020 ⒓日目 2020.7.9 19時
本日も出演は3組、総ての演目がソロである。(追記後送、全体評価華5つ☆)

アレルギー2020
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2020/06/27 (土) ~ 2020/06/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
4ヶ月半ぶりの観劇は新宿シアターミラクルで「アレルギー2020」
ある意味時宜を得たテーマの濃密な二人芝居
ふたりの間に立てられたアクリル板の衝立が象徴的
久しぶりに「演技」らしい演技を観た
観客10人の贅沢な空間
途中換気休憩もいれての上演だった

BLUE RAIN
株式会社atlas
博品館劇場(東京都)
2020/07/02 (木) ~ 2020/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
約100日ぶりの劇場観劇。この作品で良かった。舞台上のアクリル板もミステリアスに拍車をかけてほどよい距離感。6人の紡ぐ空間に涙してしまいました。
若手、木内くんが更に楽しみです。

天神さまのほそみち
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2020/07/03 (金) ~ 2020/07/19 (日)公演終了
満足度★★★★
こわごわ劇場へ行ったというのが本音である。コロナ感染を恐れてではない。劇場の過度の規制でしらじらしい空気の中で、規制した上演側だけがやってます、みたいな空気になったらいやだな、と思っていた。入場前の諸手続きで、やはりそうなるのか、とかなりがっかりしていたが、劇場に入ると、そこはやはりスズナリで別役実の世界である。
例によっての、別役劇で、市民生活の中で、てきやの広場の場所取りの不条理劇が面白おかしく展開する。文学座や新劇系を見慣れていると、燐光群はやはり言葉の訓練が足りず、最初は意識的にやっているいわゆる現代語セリフ調が浮いていたが、次第に動きとセリフが同調してきて舞台の上の人数が多くなると演出のさばきもよく楽しめてくる。経験豊富の男優陣の健闘に比べると女優陣はやや手薄な感じ。それにしても、どうしても社会派的な正邪を求めやすい坂手演出が、不条理劇でまとめてしまったのは意外でもあった。
最初の「あなたの家の前を通ったトラを見ましたか?」という問いかけを結局解決していないのもよく辛抱したと思う。それで面白いのだから成熟と言っていいだろう。席を間引いて70席ほど。これくらいだとほとんどスカスカの感じはしなかったが劇団としては赤字だろう。劇場の客席で同一方向を向いている客席でクラスターなど起きるはずはないのだから、間抜けな官僚のいう事なんか馬耳東風で、どの小屋もフルシートで客を迎えればいいのに。この頃の演劇人はおとなしいなぁ。

天神さまのほそみち
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2020/07/03 (金) ~ 2020/07/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
難解と言われることの多い別役戯曲だが、この舞台は素直に楽しめた。場所取りをめぐる、悲しく可笑しいコメディだった。難しいことを考えると、迷路にはまる。役者の困惑とその場しのぎ、意地の張り合い、ばかしあいを、「アホだなあ」と素直に見ることができた。客席も笑いが多い。坂手洋二氏の演出家としてのうまさを非常に感じた。

人間合格
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2020/07/06 (月) ~ 2020/07/23 (木)公演終了
満足度★★★★★
観劇再開第一弾。
一つずつ開いた席で、どうなるかと思ったが、すぐにいつもの笑いが客席から自然に沸いて、すごく楽しめた。
益城さんの中北番頭の津軽弁に聞き惚れた。
久しぶりの人間合格だが、非常に内容の濃い台本で、3時間の長さを感じなかった。井上戯曲の傑作の一つ。こんなにたくさんのネタが盛り込まれていたかと改めてびっくり。無駄のない芝居だった

晴れがわ【東京公演延期→中止】【伊丹公演終了】【金沢公演終了】
コトリ会議
AI・HALL(兵庫県)
2020/07/10 (金) ~ 2020/07/13 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/07/10 (金) 19:30
相変わらず評価のしづらい芝居をやっていますな。
好みは分かれると思うが、僕は好きです。水が合う合わないとかがあるけど、僕には水に合います。SFで特殊な設定だけど、ゆるい人間ドラマで良かった。
上演時間が70分くらいでした。個人的には良い感じでした。
コロナ後の初めての観劇だったので、心配したところもあったが、どこ行ってもやらなきゃいけないことをやるので、身構えなくても良いです。

天神さまのほそみち
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2020/07/03 (金) ~ 2020/07/19 (日)公演終了
満足度★★★★
期待通りなかなか刺激的な作品。ある若者がどんどん膨らみ複雑になるトラブルに巻き込まれてもがくストーリーに「虎」の男の無意味な掛け合いが唐突に割り込んでくる。観ていて混乱させられるのになぜか愉快で心地よい。ところで、客席の座席数を減らして椅子間のスペースがあのぐらい余裕があるとゆったりできて良いが、主催者側にとっては収入減になるので大変か。

第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020
シアターX(カイ)
シアターX(東京都)
2020/06/13 (土) ~ 2020/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
X主催「国際芸術祭」鑑賞2回目。3演目の内訳はダンス・ダンス・演劇。
先陣は女性2人組、天然素材感ある薄褐色のドレスで舞う。チベットのティンシャ他の鈴を使い、水音や優しげな音楽が流れる中、自然讃美の特命で地上に遣わされた者の如く。一人は力量十分で曲線を描き、一人は音や補助的に立ち回る役割分担であったが、「二者の差をもっと明瞭に出してよかったのでは・・」との客席からの意見に首肯した。やや予定調和な作り。
二つめの踊りは女性ソロ。勅使川原氏を思わせる素早く鋭い動きと、生じた波動が部位を伝って連続し展開する視覚的快さがあり、想定される何らかの「身体言語」が、何を語ろうとするのか?という関心へ引き込まれる。舞踊は抽象次元の遊びだが、何らかの一貫性を保ちつつドラマ性を演出するという意味では演劇に似ている。今回のは前半保たれていた強く太い幹が、後半やや細まり、勿体なく感じた。前半で自分の中に膨らんだ「当て」が外れただけに過ぎないのだが。
演劇は企画のテーマである「蟲愛づる姫」を主人公とし、彼女の前に生物進化の各段階をユーモラスに擬人化して登場させ、生物多様性を教える教材のような出し物。バクテリア、ミドリムシ、ボルボックス、海綿、クラゲ・・等々。明治座シニアクラス出身者で作ったグループで、高齢者劇団の趣きだが、キャラの立つ役者揃い。憾みは(恐らく)稽古量の少なさ、内容も相まって余興を見るノリで見てしまった。本来なら相当の時間をかけて作られる演劇という芸術が、今置かれている状況を思う所であった。

『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊
KAAT神奈川芸術劇場
KAATyoutubeチャンネル(神奈川県)
2020/06/27 (土) ~ 2020/06/28 (日)公演終了
満足度★★★★
生エンゲキではないが、意外に味わいある「作品」に遭遇できた。
今夏の目玉の一つになるはずであった公演だが、作演出・岡田氏からの申し出で実現した"何らかのクリエイト"。夏に未練を残して現れたこの「上演の幽霊」という作品は風変わりで、不思議にある完成形を成していた。
感触はラジオドラマに近い。映像は、画面の端に暮れなずむ街路がガラス越しに見える小さなカフェ風の空間で、真ん中のテーブルの上にスマホが置かれている。時おり通行人の影が通過するので「ライブ」が目指されていると分かる。
カメラは固定。場面の変り目(人物の登退場)には沈黙が訪れ、人影が現れてスマホが出はけされる。そこでよく見ると、画面には人物が映っており、演者がスマホ画面の中に「存在」しているのだと気付いた。もちろん表情は見えず、殆ど独白(手記の朗読風)であるので動きもあまり無い。したがって視覚情報から「物語」の手掛かりをもらう努力は不要と知れ、耳での鑑賞を意識した演出だろう、ゆったりした台詞の間合い、声のトーンで、深夜ラジオの声に身を委ねるあの感覚に誘われる。最近コロナの巣籠り効果でラジオ聴取率は上がり、ラジオ番組動画がyoutubeにも上がるようになって、好きな番組も出来た。映像メディアが「目」をくらます術を使うのと違い、聴覚メディアは「耳」をくすぐる。耳が聞き分けるのは「そこの本当があるか」であり、「実は・・」と内緒話を始める媒体としてラジオは(不特定多数を対象にしながら)最適なメディアであるのも、「聴覚だけ」が関係してそうだ。そんな事を感じていた頃合、その特性をとらえた「作品」にラジオ的に没入した。
独白が続き、「能だ」と思う。宣伝に「能」と謳っていたっけ? 『挫波』・・建設中の新国立競技場に、一度はそのデザインが採用になった今は故人であるザハの影がしばしば過る。霊の予感。と、彼の前に不審な人物(競技場の生霊?)が現われ、ザハの霊が憑依した体験でもあるかのようにその物語を語る。能のワキに当たる主人公の目も、いつしか問題の人物を見、彼を置き去りにして五輪の喧噪に沸く社会を、見る。
長い独白自体、岡田氏らしいテキストでもある。二話目の「敦賀」は廃炉が決まった高速増殖炉もんじゅが擬人化されていた。
上演後のリモートトークに拠れば、稽古もリモートで行い、独白シーンが多いテキストでも個別稽古でなく役者は揃ってやり取りをした。上演は録画された映像を使って行う。スマホに映ったように見えた映像はスマホ型の板面にプロジェクターで映したものだという。ただし録画+録音はやはり上演の時間通り、演者たちは相手役が喋っている間も自分の姿を存在させ続ける、という「上演」と同じ条件で為されたものだという。リモートのタイムラグが障害になるような丁々発止の台詞交換は無いのでテンポ感の問題は生じない、にしても、画面上フィギュア人形がテーブル上に踊る程度のサイズであれ、同時に登場している者同士のやり取りは、為されている。その意味でこれは「演劇」と呼べそうだ(同時進行で相手に即応して存在しあう関係がそこにあるので)。ただその苦労話として、モニターとしてのスマホの画面は小さいため相手の姿は殆ど見えず、聞こえる台詞をリアクションの手掛かりにするしかなかった、というようなこと。
聴覚をくすぐられたもの・・言葉と言葉の間の十分な間に聞こえて来る波の音、ギターをメインの風景描写的な音(楽)、そしてエネルギー量的には圧倒的だった七尾旅人の歌も、「作品」と調和していた。
五輪開催を前提に企画されていた作品だが、五輪中止の状況では「五輪」鎮魂歌とも解せる。場違い感は全くなかった。
2021年の東京五輪中止を「考えられない」多くの都民により小池都知事続投が決められたが、もし舞台の上演が来年実現したとして、さて五輪の方は果たして・・。

天神さまのほそみち
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2020/07/03 (金) ~ 2020/07/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/07/08 (水) 19:00
座席1階
たまたまのタイミングということだが、別役実追悼舞台となったこの演目。別役不条理劇の中でも「最も不条理」といわれているそうだが、その面白さは抜群だ。「あなたの家の前を虎が通りましたか」を軸に進む壮絶な会話劇が展開され、恐ろしい結末へと突き進む。思わず食い入るように見てしまった。
シンプルな舞台装置。交錯する会話でも役者同士の方向性を崩さない演出が、分かりやすさを助けている。坂手演出の妙なのだろう。
何を言ってもオウム返しという、問答無用の「問答」は、何か反論を許さず決定事項には従えというような時代の空気を反映しているような気もする。
劇場は下北沢スズナリ。ギチギチの座席配置が当たり前だったのに、今回は左右に空間があり、足も伸ばせる。お客にはぜいたくともいえるゆったりの配置だが、こうなってみると、ギチギチで熱気むんむんのスズナリが懐かしい。

人間合格
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2020/07/06 (月) ~ 2020/07/23 (木)公演終了

第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020
シアターX(カイ)
シアターX(東京都)
2020/06/13 (土) ~ 2020/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
第14回シアターX国際舞台芸術祭2020 ⒒日目 2020.7.7 19時
(追記7月8日02時39分、七夕公演 全体評価5つ☆)7月9日は19時からの公演

人間合格
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2020/07/06 (月) ~ 2020/07/23 (木)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/07/08 (水) 13:00
座席1階
久しぶりに、舞台芸術の鑑賞。その皮切りがこまつ座だ。井上ひさしが描いた太宰治だが、太宰を通じて井上が客席に訴えかけているように感じる。
自分を追い込まないと書けない、という太宰。精神病院に入れられてしまうところなどがユーモアたっぷりに描かれる。1人何役もこなす脇役たちの演技が秀逸だ。見どころの一つである。
サザンシアターの座席を1人おきにゆったりとったコロナ対策の客席。見ている方は快適だが、劇団の興行としては苦しいはずだ。満席の客席が一体感を醸し出す。そんな演劇の日常が早く戻ってほしい。

MASKED HEROES
藤原たまえプロデュース
小劇場B1(東京都)
2020/06/30 (火) ~ 2020/07/05 (日)公演終了

大地【6/20から初日延期】
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2020/07/01 (水) ~ 2020/08/08 (土)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/07/05 (日) 12:00
三谷幸喜らしい演劇愛に溢れた作品だった。
映画や演劇などの文化的な価値が認められていない体制の国で、役者達が収容所に集められ苦しい生活を送る。そこでのさまざまな立場の役者(と管理者)による群像劇。エンディングは切ないが、それこそが三谷の演劇論なのだろうと思った。
2幕休憩25分込み2時間55分の長丁場だが、それを飽きさせない展開は三谷の職人芸が発揮されている。三谷作品初出演の辻萬長を始めとして、個々の役者の見せ場を作るあたりも三谷の役者へのリスペクトからだろうか。個人的には、浅野和之のパントマイムが2本も観られたのは大収穫である。
改装なったPARCO劇場の柿落とし企画だが、コロナの影響で初日が遅れた。客席も市松模様の着席で少し寂しいが、取り合えずこのサイズの劇場で生の舞台が観られることを喜ぶべきだろう。