住み込みの女の観てきた!クチコミ一覧

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図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの

図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの

イキウメ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2018/05/15 (火) ~ 2018/06/03 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

イキウメの『図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの』を観劇。

今作は3つの短編で、時代設定が昔と未来ながら、僅かな箇所で繋がっている。

人はそれぞれが感じる感情や衝動、思い出を常にさらけ出す事はせず、時と場に応じてコントロールしている。
もしそれを抑制しないと社会では真っ当に生きていけないからである。しかし「その物が一体全体何処から来ているのか?」とその事を探求し始めると、己自身が制御出来なくなり、別な世界に入り込んでしまった可哀想な人と世間では思われてしまうのである。
そう今作は、誰でも現実的に簡単に行ける、異次元への入り口を教えてくれる芝居なのである。
ワレワレのモロモロ  ゴールド・シアター2018春

ワレワレのモロモロ ゴールド・シアター2018春

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場・NINAGAWA STUDIO(大稽古場)(埼玉県)

2018/05/10 (木) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★

ネタバレ

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岩井秀人の『ワレワレのモロモロ』を観劇。

ハイバイの岩井秀人の芝居はもう観ないと決めていたが、ゴールドシアターなので観劇を決意。

自分自身の体験を下に、私小説演劇として『て』『ヒッキー・シリーズ』などで新しい劇の流れを作り出した劇作家である。
今作は演じる人の人生経験の話しを下に、岩井秀人が構成して、人生経験者本人に自演させているシリーズである。
今作の興味深いところは、人生経験豊富なゴールドシアターの自作自演なので、何が出るか?と期待大ではあったが、どうやら何も出ず?という感じであったようだ。経験者の体験した出来事の掬い出している箇所がとても平凡で、それが本人が演じる事によって何か違う風に見えたり、違う視点で見えてくるというのがこのシリーズの狙いのようだが、素人が演じるか、上手い役者が演じるかのどちらかでないと、狙いは上手くいかないのではないか。特に中途半端に小慣れているゴールドシアターの俳優人には無理のようであった。いや俳優より演出の問題が多分にあると思う。

とても退屈な芝居であった。
紛れもなく、私が真ん中の日

紛れもなく、私が真ん中の日

月刊「根本宗子」

浅草九劇(東京都)

2018/04/30 (月) ~ 2018/05/13 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタバレ

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月刊・根本宗子の『紛れもなく、私が真ん中の日』を観劇。

中学生で、お金持ちの山中さんは、毎年誕生日会を行っている。何時もはお金持ちの4人の友人だけで行うのだが、今回はクラス全員(女子のみ)を呼んで行う事になった。だがいざ集まってみるとお金持ち、中級家庭、貧乏家庭と子供ながらでも階級の格差が生じてしまう。
そしてそんな最中、山中さんのお父さんが淫行事件を起こし、逮捕された事から、一気に子供達が階級を超えた、女性特有の感情の大爆破が起きてしまうのである……。

今作も前作同様、短な出来事を、物語らしい展開すらなく、台詞と俳優の熱量で一気に攻め立ててくる。俳優が上手い下手などは一切関係なく、キャラクターの持っている役柄を、俳優が組み取り、演じている様だ。まるでそれは唐十郎の「特権的肉体論」の基本である、舞台は戯曲からではなく、俳優の肉体のみよって作られるという論理を、作・演出の根本宗子が継承しているとも受け取れるが、作風からは唐十郎の影響は一切受けていない様であり、ただ演劇の論理が似ているだけであろう。
そして今作は、毎作ながらの感情の爆発の後に感じる、スカッとした気持ち良さで終わる事なく、後味の悪さを感じさせる終わり方に、新たなる根本宗子の作風を感じとる事が出来たのが大きな発見だ。

紛れもなく、今作も圧倒的に面白いのである。
革命日記【青年団・こまばアゴラ演劇学校“無隣館”】

革命日記【青年団・こまばアゴラ演劇学校“無隣館”】

こまばアゴラ演劇学校“無隣館”

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/04/14 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了

満足度★★★★

ネタバレ

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平田オリザの『革命日記』を観劇。

舞台は現代。
マンションの一室では、新左翼の革命家たちが、管制塔と国会議事堂を占拠する計画を練っている。そんな最中、隣人が町内会の役員になれとしつこく迫ってきて、作戦会議が邪魔されてしまうのだが、一般市民を装っている手前、無下に出来ずに対応してしまう。そしていざ会議が始まると革命についての熱い議論が交わされるが、またもや同じ隣人に邪魔されてしまう。そして再び作戦会議が始まりだすと、外で事件が起きてしまい、それどころではなくなっていくのである…….。

今作は、目的は違えども集団が出来上がる過程と既に出来上がってしまった集団の姿を描いている。
善意で地域に貢献しようとしている人達が、人を集めて、町内会を作り、何かを成し遂げようとしている姿と既に確立されている集団が、善意で、国家の為に正義を知らしめようとしている姿である。
そんな二つの異なった姿を見せられるからこそ、必ず起こる集団での狂気の原因が何なのか?を否が応でも垣間見ようとしてしまうのである。

何時も面白い平田オリザだが、今作は格別に面白い。

白い病気

白い病気

まつもと市民芸術館

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2018/03/07 (水) ~ 2018/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

串田和美の『白い病気』を観劇。
原作はカレル・チャペック

とある独裁国家で、働き盛りの50歳以上の人間が感染し、死に至る病気が発生する。
ワクチンが開発されずに困っているところに、ある医者がワクチンを作り出す。
だが医者は、独裁者にワクチンと引き換えに戦争中止という取引を持ち出すのだが……。

なんとまぁ〜、この時期にこの演劇を持ってくる串田和美には驚かされたが、こんな戯曲が過去に書かれていたのも更なる驚きである。昔も現在も世界は全く変わらず、一歩間違えれば世界は破滅するという現在の状況の方が更に恐ろしい。
今作は音楽劇にしていて、医者がピエロの様なキャラクターを演じているのが興味深い点でもあるが、そこにコメディーを見出そうとすると相反する効果が生じてきて、恐怖を感じてしまうのである。
そして最後に更なる絶望へと観客は叩き落とされてしまうのである。
とても観るに耐え難い芝居である事は間違いなく、演劇の社会での存在位置というのを改めて考えさせられる芝居でもあった。
勧進帳

勧進帳

木ノ下歌舞伎

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2018/03/01 (木) ~ 2018/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

木ノ下歌舞伎の『勧進帳』を観劇。

内容は変えずに、セリフは現代口語で、舞台セット、衣装、音楽などは大きく変えている。
武蔵坊弁慶は外人で、体格は大きく、関西弁を喋り、義経は男性の設定だが、女性が演じている。
義経と弁慶と家来達が関所をどのようにして超えて行くか?を弁慶たちと関所を守る冨樫左衛門の二つの視点で描きながら、関所を超える瞬間をクライマックスと思わせながら、難を逃れた後の弁慶と義経の愛の形を最高の形で見せてくれる。
だがそれも主従関係なので、手さえ握れず、側にも寄れず、見つ目合う事すら出来ず、言葉もない中で、二人は微動だにせず、その後ろで家来たちがラップの歌いながら、その歌詞が彼等の心情を表し、深くつき刺さるのである。
もう涙が出ない訳がない。
そしてこれこそが『勧進帳』いや歌舞伎の一番面白い所を一番面白くするのが、木ノ下歌舞伎の得意とするところである。
今作は再演で、既に傑作と言われているが、傑作ながら、一級品に仕上がっているのは間違いなのである。
そしてこれから一週間程、今作の感激が自身から離れずにいるのであろう…….。

お勧め。
バー公演じゃないです。

バー公演じゃないです。

月刊「根本宗子」

駅前劇場(東京都)

2018/01/06 (土) ~ 2018/01/14 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

月刊根本宗子の『バー公園じゃないです』を観劇。

毎回、笑いと興奮をさせてくれる劇団で、今作も全く期待を裏切らず『凄く面白い!』のである。特に『年間何本芝居を作ってんだ?』というくらいに、大小様々なタイプの公演をしているのも驚きである。
そしていつも描くのは、半径5m以内の物語ばかりながら、話の盛り方が上手く、女性の視点で、女性の感情の起伏を物語の焦点に持ってきているのが、一番の魅力である。
女性を描くのを上手いのは『ブス会』だと思っていたら、今や根本宗子と言っても過言ではない。
そしてその感情の起伏を物語に頼るのではなく、役者の熱量と演技力で見せてくれるのが、生で観て、興奮出来るという理由でもあろう。

面白すぎるので、お勧めである。
ハイサイせば

ハイサイせば

渡辺源四郎商店

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/01/06 (土) ~ 2018/01/08 (月)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

渡辺源四郎商店の『ハイサイせば』を観劇。

青森の劇団で、かなり良質な作品を作る劇団。

戦時中に敵国からの無線を傍受されない方法として、琉球語と津軽弁が採用される。
それは同じ日本人ですら内容が理解出来ない上に、敵国には更に理解出来ないという理由のようである。
そして沖縄から二人、青森から二人が選ばれ、作戦を遂行していき、見事に成功したようだが、
実はその裏には隠された本当の作戦があったのである……。

時代設定が戦時中になっているが、昔も今も変わらない沖縄問題、
失われつつある地方の方言、個人の尊厳などがテーマとして描きながら、
そんな状況に陥ってしまった瞬間の人間の苦悩を描いている。
戦況下の話だから、登場人物の卑劣な行為は仕方ないし、その状況に追い込まれないと分からない?
と言い訳をしながら観てしまいがちだが、もしそこで少しでも良いから立ち止まっていたら、
時代は大きく変わっていたのかも知れないとも感じてしまう。
重い内容ながら、方言芝居にコミカルさを感じつつも、戯曲と演出力がテーマを深く掘り下げているようだ。

傑作である。




熱海殺人事件 『売春捜査官』/『モンテカルロイリュージョン』

熱海殺人事件 『売春捜査官』/『モンテカルロイリュージョン』

★☆北区AKT STAGE

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタバレ

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AKT(元・北区つかこうへい劇団)の『熱海殺人事件・モンテカルロイリュージョン』を観劇。

五年前にも観たが、再度観劇。
阿部寛を世に知らしめた作品として有名で、熱海シリーズでは一番の傑作。

熱海で起きた山口アイ子殺人事件を調査している木村部長刑事、水野刑事。そして速水刑事も参戦して事件を解決しようとするのだが、同時に木村部長刑事がオリンピック選手時代に起こした殺人事件の容疑もかけられ、各々の秘められた過去が暴かれ始めていくのである。

今作の注目してすべき点は、速水刑事(兄がオリンピック選手)以外、全員がオリンピック選手だったという事だ。山口アイ子事件もオリンピックという栄光を目指した事が原因で、仕方なく起きてしまった事件だ。
熱海シリーズは、事件の解決を話しの中心として捉えていき、その中で容疑者の悲惨な過去が暴き出されていくのだが、今作だけはオリンピックの選手の光と陰を中心として描いていき、事件を解決していく事は二の次にしている。
それ故に、オリンピック選手の辛さや苦しみが痛いほど胸に突き刺さってき、観劇後はとても胸がいっぱいになってしまうのである。

何度観ても傑作は傑作である。
男女逆転版・痴人の愛

男女逆転版・痴人の愛

ブス会*

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/12/08 (金) ~ 2017/12/19 (火)公演終了

満足度★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

ブス会「男女逆転版・痴人の愛」を観劇。

女性劇作家が描く、女性の凡ゆる秘部を描く劇団。

40歳の独身女性の私が、飲み屋で知り合ったナオミという、年端もいかない少年と共に生活をし始める。
身の回りの世話から、将来の道筋まで描こうとするが、成長と共に彼の自我が現れ始め、理想像が崩れかけていく。
そして痴話喧嘩の果てに、彼を諦める代わりに、血の繋がるナオミを作ろうとするのである……..。

今作は、女性が男性を飼育するという過程が一番の興奮材料で、そこに何かを見出したいと期待して、観に行くのが本音であろう。
そしてそこは、男性が経験している女性像を思い出せてはくれるが、そこでげんなりするか?何かを発見するか?は男性自身の己の性歴に大きく影響しそうだ。
ただそんな状態で観ている男性をよそに、女性はあずかり知らぬという状態になり、男と女の視点を明らかに二分させてしまうのが、ブス会の特徴であり、罠にはまってしまう理由でもある。
そして女性の武器を使って、ナオミを征服してしまう姿を見せつけられた日には、「また次作も見に行こうぉ!」をナオミ同様、種を解き放った状態になってしまうのである。
「地獄谷温泉 無明ノ宿」横浜公演

「地獄谷温泉 無明ノ宿」横浜公演

庭劇団ペニノ

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2017/11/04 (土) ~ 2017/11/12 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

庭劇団ペニノの『地獄谷温泉 無明ノ宿』を観劇。

岸田戯曲賞作品。 

雪深い東北地方の地元の人しか通わない寂れた湯治宿に、人形公演の依頼を頼まれた小人の父と息子。
だがそこでは公演を披露する場所すらなく、依頼主は不在のようだ。
そして数人の客が、親子を奇異な目で見つつ、不思議な世界を体験していくのである。
誰もが感じた事のある不思議な体験や奇妙な経験。
しかしそれは多分に個人の想像力からきている事が多く、あえて望んでいる節もある。昔からの伝説が残っている場所は特にそうだ。
今作は、密かに望んでいる秘め事を我々から引き出し、劇場で体験出来るというのがミソで、伝説を求めて、わざわざ遠い田舎などに行かなくても良いのである。
こんな体験を出来るは芝居は他の劇団にはなく、とても貴重な作品である。
しかし、近いとはいえ劇場の神奈川KAATは遠い。
散歩する侵略者

散歩する侵略者

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2017/10/27 (金) ~ 2017/11/19 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

イキウメの『散歩する侵略者』を観劇。

地球侵略の為にやってきた宇宙人は、人間の言葉の概念を奪い取り、侵略を試みようとする。
そして全ての概念を奪い取り、「さぁ、侵略開始だ」という時の直前に奪った『愛』という言葉の概念に戸惑ってしまうのである。

宇宙人が地球を侵略するのに、領地の搾取、人間虐殺などをせずに、言葉の概念を奪ってから、侵略するという設定にリアリティを感じてしまうのは、この劇団の得意技である、現実の隙間から異世界に入りこませる手法に今回も嵌められしまったようである。
しかし出来の良い映画版を先に観てしまったからか、今作は感激度数は薄かったが、ラストシーンは、演劇的で、やはりオリジナル強し!という感じになっていたので満足である。
「表に出ろいっ!」English version”One Green Bottle”

「表に出ろいっ!」English version”One Green Bottle”

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2017/10/29 (日) ~ 2017/11/19 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

野田秀樹の『表に出ろいっ!』の英語版を観劇。

日本語版は、中村勘三郎と野田秀樹の共演で、『キャラクター』のスッピンオフ的な要素を含んでいた。
今作は設定、内容などは変わらず、セリフは英語で、イギリス人俳優、そしてタイトルが『One Green Bottle』に変わっている事だ。
実はそこが今作の大きな重要な点で、明らかに英語圏向けの人たちに見せる芝居になっていて、日本の小劇場ファン向けにはなっていないのである。
そして『表に出ろいっ!』と『One Green Bottle』
設定、内容が同じなのに何故、こんなにタイトルが違うのだろうか?
という疑問が今作を更に面白く見れるポイントでもある。
瞬間光年

瞬間光年

FUKAIPRODUCE羽衣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/08/18 (金) ~ 2017/09/05 (火)公演終了

満足度★★★

ネタバレ

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羽衣の『瞬間光年』を観劇。

変なミュージカルを作る劇団と言われていて、妙ジーカル劇団とも言われている。

今回は公演数が長期な割には、一日一回しか公演しないのは何故だ?とどうでもよい疑問を持ちつつ、観劇をする。

市井の人々をミュージカルナンバーで描き、人生の哀愁を漂わせてくれるのがこの劇団の特徴でもあるのだが、どうやら今作はあえてそれを封印していた様だ。
人物の描き方は変わらないのだが、背景音楽は歌ではなく、リフレインする音ので、ミュージカルを封印して、芝居をメインにしている。
キャラクター達が歌を唄い、踊りながら、人生を語り、そこで観客が哀愁を感じさせてくれるのがこの劇団の持ち味なのに「一体全体、どうしちまったんだ?」と叫ばずにはいられなかった。

が、しかし……、

最後にくるのである。
とんでもないことを彼らはやらかすのである。

そして観劇前の疑問を解消してくれるのである。

何時ものミュージカルナンバーが少ないので、初見の方は観るべきではないと思うが、常連は行くべき!
笑い話・別れ話・割り切れない話

笑い話・別れ話・割り切れない話

笠島企画

アトリエ春風舎(東京都)

2017/08/01 (火) ~ 2017/08/06 (日)公演終了

満足度★★★

ネタバレ

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税理士事務所での話。

特に大きな事が起きる訳ではなく、仕事とというより、恋愛事情で話は回っている。青年団の俳優が出演していて、見慣れた顔ぶればかりからか、狭い世界での出来事が更に狭く見えるのは良さか?悪さか?。
鄭亜美の存在が大きく、彼女がいなかったらどうなっていたの?という不安も拭えなくもないが、それほどまでにあっさりしすぎている芝居である。
観客としては刺激が欲しいのである。
ただ意外に心地良いのは確かである。
この様な作品を永遠作り続けるのであるならば、観客からそっぽを向かれるのは確かだが、次回作が気になる作家であるのは間違いない。
鳥の名前

鳥の名前

株式会社コムレイド

ザ・スズナリ(東京都)

2017/07/22 (土) ~ 2017/08/13 (日)公演終了

満足度★★

ネタばれ

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シャンプーハットの『鳥の名前』を観劇。

一度だけ観た事ある劇団で、巷ではそこそこ実力派と言われているが、どうも僕の中では引っかかってこなかったで、興味はなかったのだが…….。

東京の郊外の下町をやや感じられる昭和の風景の中で、生活している市井の話。
アパートの大家、自転車経営者、場末のスナックの雇われママ、独身美女の一人暮らし、力士になれなかったお相撲さん、中国人ヤクザなどが入り乱れている。
そこで描かれる世界は、身近な生活を垣間見る事が出来、何でもない日々が、ちょっとした隙間から変わっていく様を描いている。狂気と喜劇が常に回転していると言っても良いのであろうか。
だが今作は、リアリティの描き方の無さからか、観客自身が描く妄想が劇空間に無く、面白さを何処に持って行って良いのか分からず、迷走してしまったほどだ。
ただ迷走がこの劇団の面白さ?とも取れるかもしれないが、僕は、ただの迷子になってしまったようだ。
やはり長い期間、この劇団に引っかからなかったのはそこではないかと思う。
次回作は観るかどうかは迷うところだ。

大好きな遠藤瑠奈が出演していないのが残念でならないが、村岡希美の怪演は、何処の劇団で観ても惚れ惚れする。
預言者Q太郎の一生

預言者Q太郎の一生

(劇)ヤリナゲ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/07/14 (金) ~ 2017/07/23 (日)公演終了

満足度★★★

ネタバレ

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劇)ヤリナゲの『預言者Q太郎の一生』を観劇。

初見の劇団。

30年以上前に始まった小劇場ブームの勢いが、そのまま戻って来た感覚に陥ってしまった作品である。

物語は、神の子供と崇められたQ太郎とみちるとの成長の物語で、察する事に、Q太郎を軸に進んで行くと思いきや、みちるの波乱万丈の人生を軸に進んでいく。
タイトルと出だしから予想してた物語の展開に裏切られていくのだが、それ以上にみちるの人生にやきもきしながら見入ってしまうのである。
決してシリアスではなく、軽いタッチで、ドタバタで、派手な演技と熱量。
そして半径3メートル以内の身近な出来事から、少しづつ広げていき、社会情勢を物語に上手く乗せているからか、世界観を大きく感じさせ、終始飽きさせないのである。
そして75分の短さながら、それ以上に長く感じさせるのは密度の濃さの現れである。
これこそが小劇場ブームで沸いた面白さであるのだが、今では平田オリザの影響で、今作の様な面白さはなかなかないだろう。
とても貴重な作品である。
ただこのチラシから、今作の良さを感じられないのは大損である。
イヌの仇討

イヌの仇討

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2017/07/05 (水) ~ 2017/07/23 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

こまつ座の『イヌの仇討』を観劇。

江戸の上・松の廊下での刃傷事件後、浅野内匠頭の切腹、吉良上野介にはお咎めなし、という結果に、吉良家の評判は悪くなるばかりだ。そして世間では、いつ大石内蔵助らが吉良家への討ち入りを果たすのか?などの賭け事すら行われている有様である。
そして赤穂浪士らに屋敷に踏み込まれ、秘密の隠れ家にいる吉良上野介と家来たちの密室劇である。
今作では、吉良上野介の視点で描かれた忠臣蔵である。

この吉良の視点というのが重要で、隠れている最中「何故、大石が自分に復讐をするのか?」という疑問を解いていく中で、事件の顛末、お上のイヌとも言われている風評、世間での立ち位置、情報の独り歩き、そしてお上の策略などを鑑みていくうちに何かが分かり始めてくるのである。それによって彼は何を選択し、これからどんな人生を歩もうとするのか?
それが『イヌの仇討ち』というタイトルに引っかかってくるのだが、それ故に身を乗り出してしまうほど劇に没頭してしまい、まるで歴史上の真実であるかのように思えてしまうのである。もうこの面白さには唸るしかないのである。

演出、俳優の上手さは勿論だが、戯曲の素晴らしさには目を見張るばかりである。

とんでもなく面白く、兎に角お勧めである。
今が、オールタイムベスト

今が、オールタイムベスト

玉田企画

アトリエヘリコプター(東京都)

2017/06/27 (火) ~ 2017/07/04 (火)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

玉田企画の『今が、オールタイムベスト』を観劇。

人が生きて行く上での、他人との関係性に注目していくドラマ。

社会人になると誰もが世の中を上手に渡ろうと気遣いや、空気を読んだりして、事を進めていくのが世の常だろうが、今作はそんな世で生きる大人たちと、まだそんな社会を知らない、自我のみを通す少年の葛藤のドラマである。

新しい継母を迎え、明日には結婚式を迎える父と継母だが、それに反発してか、息子は意固地になっている。それを丸く収めようとする父や継母の友人、結婚式の司会者、プランナーなどが、それをきっかけに己の秘め事が暴露されそうになりてんやわんやである。
そこで描かれる己と他者との関係性の距離の取り方が毎回のテーマで、相手の懐に入れるけど入ろうとしない、普段の我々の生き方を垣間見る事が出来る。
玉田企画の作風は、「日本人論」と受け止めながら観てしまいそうだが、『そんな事を考えるのが観劇中は無駄だな?』と思ってしまうほど、作劇に夢中になってしまうのである、
これほどまでに、毎回毎回面白い劇団はなかなか無い。

お勧めである。
さよならだけが人生か

さよならだけが人生か

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2017/06/22 (木) ~ 2017/07/02 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

平田オリザの『さよならだけが人生か』を観劇。

とある住居建築現場の宿舎では、現場から遺跡が発掘された事で、工事発注者の責任者とその部下、現場作業員、その現場班長の娘とフィアンセ、お手伝いさん、警備員、考古学者、考古学を研究している大学生たち、国の偉い人などが集まっている。そこで何か特別な事が起こる訳ではなく、永遠とムダ話をし続けている人たちの話である。

今作も何時ものように話の起点も終点もなく、勿論、起承転結すらなく、話のどこかの部分を一部切り取っただけの展開になっている。
何時もなら、僅かながら背景は感じさせて、そこから面白さを掴んでいくのだが、その肝心の背景には触れない、いや背景はないのである。
それは平田オリザが西洋演劇を否定して生まれた独自の演劇で、これを面白いと見るかどうかは、個人の裁量次第だ。
演劇界のトップランナーの野田秀樹が表なら、平田オリザは裏のトップランナーである。
描き方は対極ながら、共通しているのは言葉をコントロールしている事だ。
そんな表と裏のどちらが好きで、どちらが刺激的かって?
そりゃ今は、平田オリザである。

お勧めである。

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