赤い薬
MONO
HEP HALL(大阪府)
2010/02/19 (金) ~ 2010/02/28 (日)公演終了
無題
それぞれ身寄りもなく、生活費にも事欠くありさまの情けない男たちが、高額報酬目当てで薬の実験台になるため、山奥の施設で共同生活している。しかし今回の薬はなにかおかしい。このままでは自分たちはどうなってしまうのか……?
現実にそういう施設があるのかどうか知りませんが(多分ない)、シリアスにしようと思えばできる危ない設定で上質なコメディになっていました。単にゲラゲラ笑わせるだけでなく少々の涙も含ませるところがMONO の得意なスタイルでしょう。
今回も、登場人物達の背景は笑えない要素がたくさんありました。けれどそんなものを吹き飛ばす勢いで笑いに変えてしまっているところが頼もしい。上っ面じゃないコメディです。
医者役を演じた金替さんの演技がまた素晴らしい。あれを観ただけでも価値があったと思います。
葬送の教室
風琴工房
ザ・スズナリ(東京都)
2010/10/06 (水) ~ 2010/10/13 (水)公演終了
無題
不覚にも号泣した。この作品は実際の事故を題材にしているけれどフィクションだという。しかし下手なドキュメンタリーよりずっと伝わってくるものがあったと思う。
私も理系でかつて研究職にあった人間だから、この作品の主人公に感情移入するのは容易だ。いつまでもクヨクヨしていても仕方ないし、死んだ者は帰ってこないのだから、事故の原因究明や生存率向上を図るための努力をしていくべきだと考える。そして、ヒステリックに泣きわめき続けるような人を愚かだと見下してしまう。この作品を観るまでは、そんな自分は冷静で正しいと思っていた。
しかしこの作品を観て初めて、泣き続ける人の気持が理解できた気がする。合理的に割り切ることができない心情が“見えた”気がする。共感できるかどうかはわからないが、合理的に割り切ることだけが正しい姿勢ではないということはわかった。
嗚咽が漏れるほど泣いた芝居は初めてだ。なぜそんなに涙が溢れたのかわからないが、多分、凄まじい悲劇が語られているのに悪者が一人も登場しないからだと思う。
家、世の果ての・・・・・・
極東退屈道場
AI・HALL(兵庫県)
2010/02/26 (金) ~ 2010/02/28 (日)公演終了
無題
伏線とも不条理とも思える、何か幻影のような空気の中で重層的に展開するため、ほぼ最後まで夢見心地の観劇となった。集中力が途切れそうになる(というか途切れた)ことが何度かあったが、奇妙に心地よい観後感が得られた。
後でチラシをよく読んだら、初演は30年も前とのこと。これは意外だった。演出によってそうしたのかもしれないが、観ている時はそんな古さは全く感じることがなく、新作だとばかり思っていたのだ。
ここで描かれている消費社会とか物質文明というのは、多分この30年でますます強化されたのだと思う。ある意味、そこで提起された問題はもはや問題と感じられなくなる程度に根を張ってしまったのではなかろうか。だからこそ私はそこで安心してウトウトできたのだ。
作者が聞いたら嘆くだろうか。すでに他界されたとのこと、残念です。
UBUROI
マレビトの会
ART COMPLEX 1928(京都府)
2010/03/26 (金) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
無題
物語の内容は問題ではなく、演出が圧倒的だった。こんなヘタウマな芝居で、基本的に無表情で棒立ち、セリフ棒読み。多少動きがあるところでも操り人形のようにギクシャクした身振りだけ。本当に下手な役者たちがこれをやったら金返せレベルになるだろう。それでちゃんと観客を魅了する舞台ができているのだからたいしたものだ。
しかし残念ながらこれは一発ネタだろう。同じことを別の戯曲や役者がやっても面白くはない。本作を知らなければ楽しめるだろうが、基本的に二度使える手ではない。そういう意味で、本作を観られたのは幸運だったと思う。
熊
ルドルフ
アトリエ劇研(京都府)
2010/01/22 (金) ~ 2010/01/25 (月)公演終了
演出の力
夫を戦争で亡くしてただ嘆くばかりの日々を暮らす未亡人の元へ、夫の同僚だったという男が尋ねてくる。彼は夫に貸した金を返してほしい、明日までに銀行へ利子を払わなくてはならないと言う。しかし未亡人は、今は手元に金がないから明後日まで待てと応える。承知できない男はそのまま居座ろうとするが‥‥。
約40分の短編で、基本的に喜劇だ。ルドルフは普通の舞台セットで最初から割と喜劇的な雰囲気を出す演出だったのに対し、このしたやみは極めてシンプルだが何か象徴的な舞台セットで、演出も喜劇的要素は控え目だった。
どちらが優れているか決めるようなものではないので両方それなりの楽しみ方が出来たが、何より演出次第で同じ戯曲がこれほど違うものになることを見せつけられたのが心地よかった。同様な試みは昨年2月にも「人は死んだら木になるの」でも実施されて、その時もこのしたやみは参加している。今後もこういうスタイルの上演は観てみたい。
10人写楽
劇創ト社deネクタルグン
浄土宗應典院 本堂(大阪府)
2010/01/29 (金) ~ 2010/01/31 (日)公演終了
初心者にも勧められる小劇場演劇
上手に造り込まれた戯曲と、動きの良い役者陣、適度なアドリブ。小劇場の芝居として実に正統派な演出で、観劇経験の少ない人にも安心して勧められる良作でした。
舞台装置がシンプルなのに、江戸時代の場面の衣装が豪華なおかげか、貧相な感じはまったくありません。10人という役数は実際は江戸時代と現代があるので20人ですが、覚えきれなくならない適度な数で観やすかったと思います。
ただ、江戸時代と現代で物語に何か繋がりがあるのかと思って観ていましたが、そういうわけではなかったのが少し残念でした。ラストはちょっとだけ繋がる感じもしますが‥‥。
教育
夕暮れ社 弱男ユニット
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
無題
物語の内容はどうあれ、この作品のチャレンジは舞台配置に尽きる。スペースの中央に客先が四方を向いて組まれ、役者はその周囲をぐるぐる回りながら演技し続ける。
ひたすら回り続けているので役者は体力勝負だろう。しかし細かい演技はほとんどなく、セリフだけで語られているに等しい。いや、細かく演技していたのかもしれないが、全体の三分の一くらいしか視界に入らないので、よくわからない。
この舞台配置をとることで何が得られたのか。当人達は色々狙ったことがあったのだろうが、本作について言えばアイデア倒れな感が否めない。物語としては“客席を中央にしてぐるぐる回る”というスタイルで見せる必然性もないし、観客としてはどのみち全体が見えないのだから眼前の役者も見る必要を感じなくなり、むしろ全体の「音」を聴くために目を閉じてしまった。
とは言え、このアイデアは一発ネタではない。上手に発展させれば色々なことができるのではないか。偏った視界になるのは円形劇場だって同じことなのだ。どうせならぐるぐる回ったりせず、本当に一部しか見えない作品にしても良かったのではないか。
しかも全体を見ることができないと言ってもこのスタイルなら、振り返れば真後ろ以外は見える。客が能動的に動かなければ見えないし動けば見える舞台というのは、今までなかったように思う。せいぜい花道くらいだろう。
せっかく面白いスタイルなのに戯曲はさほど練り込まれている感じがしなかった。だから本作自体が成功していたとは言えないが、次はもっと上手に工夫して挑戦してもらいたいと思う舞台だった。
NMS_3『幸福論』
石原正一ショー
ACT cafe(大阪府)
2010/09/18 (土) ~ 2010/09/18 (土)公演終了
無題
ここに出てくる二人はどちらも悶々とした生活を送り、時々爆発しそうになっている。どうしたらそこから抜け出せるかも判らない。そんな状態を解決するというより折り合いをつけるような手段に出る。
気分としてはなんとなく共感できるけど、今の自分と重ねられるわけではない。その微妙な距離感を噛み締めながら観劇しました。
八月、鳩は還るか
烏丸ストロークロック
アトリエ劇研(京都府)
2010/03/05 (金) ~ 2010/03/14 (日)公演終了
無題
烏丸ストロークロックが5年かけて描いた「漂泊の家」シリーズ総集編。残念ながら私が観るのはこれが初めてですが、これまでの作品も織り込まれた形で構成されているため、単独で観劇しても問題はないとのことでした。
語られる内容は悲惨というか切ないというか、そして何か不気味さを伴うエピソードの集成で、泣くべきか笑うべきか考え込むべきか難しいものです。口に入れたモノが食物なのか薬なのか毒なのかわからないまま噛み砕いているような気分になりました。
ほどよく緩急のある展開は飽きることがなく、途中休憩を挟んで2時間半余りという長い上演時間にも関わらず、終わった時は「もう終わり?」と感じました。ただこれは、幕切れが唐突な印象だったことも原因でしょう。あのラストシーンはどう解釈すればいいのか、まだちょっと飲み込めていません。
前作も観てみたかった。観なかったことが悔やまれます。
急襲キルフィールド
芝居流通センターデス電所
ABCホール (大阪府)
2010/01/08 (金) ~ 2010/01/10 (日)公演終了
俗悪の痛快さ
温泉街を舞台に、商売と恋愛と犯罪が入り交じったドロドロの話。登場人物がみんな自分のことしか考えてない身勝手な人格でありつつ、堂々と欲望を追求してはばからない。タブーも何もありゃしない痛快さはデス電所の作品として正統でしょう。
その独特の世界は嫌いではないのだけど、感情移入できる「まともな人間」が出てくる方がむしろ狂気が引き立つのではないだろうか。あまり行き過ぎるとただ滑稽なだけの描写になりかねない。
乳水
鳥公園
d-倉庫(東京都)
2010/09/23 (木) ~ 2010/09/26 (日)公演終了
無題
サイトとチラシで印象の異なる文章が書かれている。舞台から受ける印象はまたさらに違う。『藪の中』のように各自の視点から描かれる構成を取っているが、実際の描き方はむしろどれも客観的だ。とはいえ真相らしき視点が無いまま終わるのはやはり『藪の中』だ。
鳥公園は、乞局で役者をしていた西尾佳織が独立して作った団体とのことで、その演出は乞局に似た印象を受けた。ただ、乞局のように嫌な登場人物ばかりというわけではなく、むしろ弱くて流されてしまった人たちのようであり、断片的には感情移入できなくもない。
家族とか親子を題材にした作品は個人的に痛いのだが、特にこの作品は子供のいない夫婦が発端になっているため、なんとも切ない。そして物語としての味はとても苦い。嫌いじゃないが。苦い。
おやすみ、おじさん
劇団桃唄309
ザ・ポケット(東京都)
2006/09/06 (水) ~ 2006/09/10 (日)公演終了
ほどよいファンタジー
山奥ではなく東京の下町を舞台にした妖怪とまじない師の物語。東京という街は日本で一番先進的な都市であるがゆえに、こういった超常現象を絡めるのも絵になる。極端なところでは『帝都大戦』などが有名だろう。元々はミスマッチを狙ったのかもしれないが、むしろファンタジー色がほどよく中和されている。
「ISIS(自立不能舞台装置システム)」と名付けられた“俳優が支えていないと倒れてしまう舞台装置”は、不安定だからこその躍動感があって好印象だった。おじさんを演じた坂本和彦の風貌はとても役に合っていたが、対立するまじない師を演じたバビィはもうちょっと冷たい雰囲気があると良かったように思う。
ハラダマークⅡ
ザ・パンタロンズ
OVAL THEATER & GALLERY (旧・ロクソドンタブラック)(大阪府)
2010/01/13 (水) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
若手劇団の頑張りと空回りと
出演者がAチームとBチームに別れて、10人中6人がダブルキャストという公演。どういう経緯でこうなったのかは分かりませんが、私はAチームを観劇しました。
チラシにかなり細かく粗筋が書かれていましたがあまりよく見ていなかったので事前情報なしで観劇しましたが、特に問題はありませんでした。かなり忠実な粗筋なので内容には触れないが、なんとなく映画「トータル・リコール」を思いだす設定です。舞台での回想シーンなどはややこしくなりがちですが、そこそこ上手に作られていました。
全体になんとなく若手劇団特有の未熟さと空回り具体が感じられました。盛り込みたいものが多いのはわかりますが、もっと洗練されると良いのではないかと思います。
ただ、公演全体をお祭りのようなイベントに仕立て上げる努力と成果には感心しました。舞台は単に観賞するだけの作品ではなく、公演全体を含めた“ハレの場”なのですね。
残念ながら客演でしたが、店長役の人が抜きん出て面白かったです。役柄もあるんでしょうが、風体がぴったり。
泥と蓮
企画集団DOA
紀伊國屋ホール(東京都)
2010/09/03 (金) ~ 2010/09/05 (日)公演終了
無題
父親の形見の箱を探して廃坑になった炭鉱の奥に歩みいった青年が、タイムスリップ?して新選組と出会い、様々な事件に巻き込まれていく物語。原作と脚本のどちらの問題かわかりませんが、観終えて正直なところ「???」という印象でした。
新撰組を題材にした芝居は駄作になりがちと言うジンクスを昔どこかで聞いた気がしますが、本作もその轍を踏んでいるようです。役者の演技や個々のシーンの演出は決して悪くないのに、全体としてまとまっていない。張った伏線も回収できてないし、展開が残念すぎる。
雰囲気的にかっこいいシーンばかりを無理矢理つなげたような印象を受けました。その割に人物背景の描き方が浅いので感動も軽い。説明が省けるから新撰組という有名人を使ったのではないかとすら思えます。
そして一番残念なのは、主人公の存在意義が見当たらないこと。こういう話では普通、主人公が徐々に成長してくものだと思うのですが、それがちっとも感じられない。また、新選組の人々が彼をなんで受け入れるのかも不明なままで、消化不良でした。
殺陣は悪くなかったと思いますが、普通の殺陣よりラスト近く、ダンスのような振り付けで戦闘シーンが描かれた場面があり、個人的にはこれが一番良かったと思います。
Sea on a Spoon
こゆび侍
王子小劇場(東京都)
2010/09/01 (水) ~ 2010/09/05 (日)公演終了
無題
これこれ、こういうのが観たくて小劇場に通ってるんだよと納得した。最初は穏やかで優しそうに見えた人々の、ドス黒い本性が次第に明らかになっていく緊張感。誰が誰と結託して誰を裏切っているのか。さらに悪いヤツがいるかもしれないという不安。正しい者が最後に勝つなんて保証のないシリアスさ。
原子力発電所のある町が舞台で、一見社会的メッセージ性のある作品のように見えなくもないけれど、原発はあくまでもモチーフであり、描いているのは人間の怖い姿。ぞくぞくする作品でした。
マイ・フェイバリット・バ――――――ジン
メガトン・ロマンチッカー
千種文化小劇場(愛知県)
2006/11/09 (木) ~ 2006/11/12 (日)公演終了
ワクワクさせられるブルーな芝居
リーディング公演や少年ライブラリィなどの企画公演は都合がつかずに観劇できなかったメガチカですが、久しぶりの本公演でちょうどスケジュールが合いました。
観終わってまず思ったのは、この劇団とこの作家の持ち味が存分に発揮された作品だったということ。ものすごくメガチカらしい舞台であり、ものすごく刈馬カオスらしい脚本で、ワクワクさせられるブルーな芝居だ。
身体障害者専用デリバリーヘルスの事務所として借りたマンションの一室を舞台とするワンシチュエーションドラマで、風俗店ではあるがその場に客が来るわけではない。それでもR-15指定が妥当な程度にきわどい台詞が飛び交い、露骨にセックスが語られる。
とはいえ舞台で女優が脱ぐわけでもなく、痴話喧嘩さえ真水のようにサラサラな雰囲気で展開する。身障者用のデリヘルは実在するそうだし、劇中で語られる若者の集団レイプ事件なども似たような実例が記憶に浮かぶ。様々な形でそれらに関わる人々の苦悩や割り切りもリアルな印象を受ける。
しかしこの作品は決して社会派ドラマとか問題提起とかではなく、若者たちの姿を素直に描いた青春群像劇なのだと思う。全体を通じて主張したいメッセージのようなものは感じられず、善人も悪人もいない、ただそれぞれの人物がそれぞれの想いをぶつけたり溜め込んだり怒鳴ったり逃げたりしている様子を淡々と俯瞰している。
物語としての起承転結すらも曖昧で、存在意義のわからない台詞や演出も多い。だがそういった要素もまた、落ち着かない若者の情動を語っているように思えるのだ。メガチカの舞台はいつも絵になる構図が多く、今回もそうだった。視覚的には決して崩れないスタイルを維持しながら、構成として何かを崩そうとしたのではなかろうか。
なんか難しい言葉を並べてしまったが、要するに観て良かったと思うのです。
スーパースター
劇団鹿殺し
AI・HALL(兵庫県)
2010/02/04 (木) ~ 2010/02/07 (日)公演終了
マンネリ感?
劇団鹿殺しの10周年記念公演第一弾。私がこの劇団の公演を観るのは「僕を愛ちて。」「ベルゼブブ兄弟」に次いで3回目。
結論から言うと前2回に比べてインパクトは薄かった。期待が強すぎたのかもしれない。もちろん、ほとんどの他劇団に比べたらパワフルさは極めて高い。相変わらずの “アツさ”だ。舞台装置もすごかった。三階建てのアパートに見立てたセットを使った演出は客席を圧倒していた。
ただ、描かれているテーマは兄弟と家族の確執みたいなもので、前に観た二作品と非常によく似ている。それがこの劇団あるいは作家の得意分野なのかもしれないが、私の中ではマンネリ感が生まれはじめているのだ。たまたま私が観た作品がそうだっただけかもしれないが、この劇団のパワーが発揮できるテーマは決して限定されるものではないはずなので、もっと違った手法も観てみたい。
むかしここは沼だった。しろく
劇団八時半
ウイングフィールド(大阪府)
2007/02/16 (金) ~ 2007/02/25 (日)公演終了
救いがないのに救われるような
劇団八時半の舞台は三度目の観劇になる。これまでに観た「私の音符は武装している」「完璧な冬の日」と同様、高学歴な人々を描いている。今回は化石発掘現場でひたすら採掘を続ける、私設研究所メンバーの話だ。
人里離れた山奥に隔離されたような現場で毎日毎日単調な作業を繰り返すメンバー。色々な問題が発生するなかで、だんだん精神的にもおかしくなってくる。普通の人がそうじゃなかったり、普通だった人がそうじゃなくなったり、ジワリジワリと事態が進行していく描写が実に秀逸。
人格と状況と事態が絶妙なハーモニーを奏でるような作品。何も救いはないけれど、救いがなくても救われるような、妙な安堵が感じられた。
THE SCOOL OF THE RINGS
笑の内閣
ART COMPLEX 1928(京都府)
2010/03/12 (金) ~ 2010/03/14 (日)公演終了
無題
10回目で5周年という今回は、「全道大会進出を目指す北海道の高校演劇部。部長が突然プロレス芝居をしようと言い出し、たまたま団体をクビになったばかりの人気レスラーの指導を受け、大会に挑む」‥‥という内容。
なかば強引にプロレス芝居に繋げていくわけですが、プロレス芝居の劇中劇でまたプロレス芝居をやっているので、入り乱れて大変なことになっています。でも意外と破綻していませんでした。
本物のプロレスを生で見たことはないのでリアリティは分かりません。ただ、こう言うとプロレスファンには怒られるかもしれませんが、元々プロレスというのはスポーツとショーの混合みたいな側面もあるので、芝居との親和性は高いのだと思われます。例えば「テニスの王子様」も舞台化されていますが、本当に舞台上でテニスをするのは無理でしょう。
チラシ等を読むと劇中のプロレスが本格的であることのアピールが多いのですが、観ていて思ったのは逆に、演劇部分が稚拙で学芸会的だということです。しかし、ひょっとするとこれは意図的だったのかもしれません。演劇部分があまり本格的すぎると、プロレス部分が嘘くさくなってしまうと考えられるからです。演劇部分が学芸会的だからこそ、プロレス部分が本格的に見える。そこまで計算しているとしたら、たいしたものです。‥‥計算じゃない可能性も高いですが。
演劇としてもプロレスとしても明らかにイロモノなので、正直それほど期待はしていませんでしたが、劇場から出てきた自分は多分、ものすごい満面の笑みだったと思います。完全に、してやられました。
猿の惑星は地球
クロムモリブデン
ザ・ポケット(東京都)
2006/09/12 (火) ~ 2006/09/17 (日)公演終了
オチは無理矢理っぽい
進化して不老不死を得たSARUは護身のための刀を振り回し、驚異であるNINGENはナイフを持っている未来社会。死ぬ方法を書いた本が森の中にあると聞いた一人のSARUが、それを探す旅にでる。
あいかわらずあらすじを書くことに意味がないクロムモリブデンの芝居。今回は全席指定のためやや後ろの席になってしまったせいか、以前に比べて舞台から圧倒されるような印象は受けられなかった。セットや音響の派手さも前回より控えめだったような気がしたが、距離のせいかもしれない。
もともとストーリーはあまり意味を持たない作風なのでどんな展開でも問題ないのだが、今回のラストは無理矢理オチをつけた感じがしていただけない。その場面の演出自体は悪くなかったので、やや残念だった。