無題
伏線とも不条理とも思える、何か幻影のような空気の中で重層的に展開するため、ほぼ最後まで夢見心地の観劇となった。集中力が途切れそうになる(というか途切れた)ことが何度かあったが、奇妙に心地よい観後感が得られた。
後でチラシをよく読んだら、初演は30年も前とのこと。これは意外だった。演出によってそうしたのかもしれないが、観ている時はそんな古さは全く感じることがなく、新作だとばかり思っていたのだ。
ここで描かれている消費社会とか物質文明というのは、多分この30年でますます強化されたのだと思う。ある意味、そこで提起された問題はもはや問題と感じられなくなる程度に根を張ってしまったのではなかろうか。だからこそ私はそこで安心してウトウトできたのだ。
作者が聞いたら嘆くだろうか。すでに他界されたとのこと、残念です。