しのぶの観てきた!クチコミ一覧

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朗読劇 少年口伝隊一九四五

朗読劇 少年口伝隊一九四五

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2009/09/18 (金) ~ 2009/09/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

4回目
初演から数えて4度目の鑑賞。4度目でも中盤までボロ泣き。傑作朗読劇だと思います。今年は二期生から三期生へとバトンタッチされ、来年は四期生に。

別役実 ―その創作の源―

別役実 ―その創作の源―

桜美林大学パフォーミングアーツプログラム<OPAP>

PRUNUS HALL(桜美林大学内)(神奈川県)

2009/09/13 (日) ~ 2009/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしい講演でした。
別役さんご本人が、ご自身のエッセイを朗読されるだけで鳥肌。お話してくださった内容も素晴らしく、勇気をもらいました。桜美林大学の学生さん、お疲れ様でした。ありがとうございました。公演がんばってください。

吾妻橋ダンスクロッシング

吾妻橋ダンスクロッシング

吾妻橋ダンスクロッシング実行委員会

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2009/09/11 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了

9.11に。
飴屋法水さんのが凄くて、しばらく放心状態。康本さんのダンスもきれいだった。前売り完売みたいです。こんな豪華メンバーですものね。ステージ数を多くすると、それはそれで実現が難しいのかしら。

ザ・ダイバー 日本バージョン【9/20千秋楽】

ザ・ダイバー 日本バージョン【9/20千秋楽】

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2009/08/20 (木) ~ 2009/09/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

超充実!幸せ!
大人のための上質のストレート・プレイ。超充実!幸せ!全席完売ですが当日券は出ています(全ステージ開演の1時間前より販売)。

3人いる!

3人いる!

リトルモア地下

リトルモア地下(東京都)

2009/07/31 (金) ~ 2009/08/12 (水)公演終了

満足度★★★★★

8/7(金)昼を鑑賞
複数バージョン観たかったけど完売(涙)。当然ですよね。飴屋法水さんは凄い。

新宿ジャカジャカ

新宿ジャカジャカ

椿組

花園神社(東京都)

2009/07/11 (土) ~ 2009/07/21 (火)公演終了

楽日前にやっと
夏の風物詩、毎年の恒例です。歌がもりだくさんで楽しかった。何度か見た人によると、今日の夜はかなり良かったらしいです。昼間にライブもあったからかしら。

ネタバレBOX

特別ゲストの山崎ハコさんのソロが素晴らしかった。

電車に乗っていく大勢の人々と、乗れずにたった1人残る人と。苦味を残したエンディングが良かった。
シド・アンドウ・ナンシー【CoRich舞台芸術まつり2009春 グランプリ受賞作】

シド・アンドウ・ナンシー【CoRich舞台芸術まつり2009春 グランプリ受賞作】

MCR

駅前劇場(東京都)

2009/04/22 (水) ~ 2009/04/26 (日)公演終了

満足度★★★★

生きることへの切ない思いが、汗と爆笑の中にひたひた満ちる
 MCRの作品を観るのは、プロデュース公演などを含めておよそ8作目となりました。『シド・アンドウ・ナンシー』は、私が観た中で一番完成度が高かったように思います。昨年の「CoRich舞台芸術まつり!2008春」参加作品『シナトラと猫』で気にかかった舞台美術や転換時の演出についても、今作ではライブ感・手作り感が生きており、いわばスタイリッシュな見どころにもなっていました。

 生きることも死ぬこともどうでもいいと思っているヤクザの安藤(中川智明)。急激に太り続けて死に至るという不治の病に冒されたたっちゃん(辰巳智秋)。2人が親友同士だった高校時代の回想シーンを交えながら、状況は違えども互いに死を目前にした2人の男が、命に、人生に、どう決着をつけるのか(決着など訪れず死が彼らをさらっていくのか、それとも…)が描かれます。あらすじだけだと深刻な悲劇のようにも思われますが、実際は爆笑・失笑づくしで、ロマンティックな恋愛のエピソードもありったけ盛り込まれた娯楽作品でした。

 作・演出・出演される櫻井智也さんが書かれるセリフは、小劇場ファンの間で“櫻井節”と呼ばれることがあります。笑いすぎてお腹が苦しくなるほどのギャグに、世間に対する主張がしっかりと織り込まれていたり、粗野で乱暴に聞こえる言葉に、恋のときめきや切ない思いがしたためられていたり。

 組み体操をしたり、本気で(?)叩いたりなど、生々しいハプニングを盛り込んだ見世物の要素も、大いに生かされていました。客席が2方向からはさむ対面式のステージなので、役者と観客との距離がとても近いのです。しかもコントではなく、演劇的な魅力に昇華させているのが素晴らしいと思います。

 ポスト・パフォーマンス・トークは制作の方が司会進行して、観客から事前に質問を受けつけるシステムを採用。赤裸々な劇団内トークを見せるスタイルがお好きなお客様もいらっしゃるかもしれませんが、私は『シナトラと猫』の時よりも濃い内容になって、改善されたように感じました。

 劇中で使用された缶ジュース型のおしるこが、ロビーでバラ売りされていましたので、1本購入。寒い季節になったら飲みます(笑)。また安藤たちのことを思い出して、しみじみ笑いたいと思います。

ネタバレBOX

 ヤクザの組長(北島広貴)とその子分・小川(おがわじゅんや)のあきれるほどバカなやりとりに爆笑。

 「先に俺行くわ」と言って家族で夜逃げしたナベちゃん(渡辺裕樹)は、大人になって、借金返済のために女(伊達香苗)に臓器を売らせようとしていました。安藤はそれが「自分の先(未来)」なのだと気づきます。過去と現在を描きつつ、実はそこに未来をも見せたように感じ、タイムスリップした気分を味わいました。
愛のルーシー

愛のルーシー

北京蝶々

OFF OFFシアター(東京都)

2009/05/20 (水) ~ 2009/05/26 (火)公演終了

満足度★★★

隔離空間のリアルを俳優の身体から感じたい
 擬似地球“バイオスフィア2”にて自給自足生活を送る8人の男女と、彼らを外部から観察する研究者たち。OFF OFFシアターの舞台上にある柱を活用して、上手側に研究室、柱を挟んで中央および下手にバイオスフィア内部を対置させた具象美術でした。茂った木々に実る作物も丁寧に作りこまれた美術は見ごたえあり。文字映像で上手壁に居住者たちの日記を表示し、人物の背景を伝えていました。

 スフィア内は農作物の収穫が少なく、海洋地区が汚染されて魚が取れないなどの食糧危機にあり、居住者は常に飢えていているはずなのですが、役者さんの演技は状態を説明する型どおりのもので、私には切迫感や恐怖、狂気、そして殺気などが感じられず。残念ながら、物語の起承転結が体を素通りしていくようでした。例えばシミュレーションゲーム「シムシティ」(古いですね)や冒険もののロール・プレイング・ゲーム等で、画面上の架空の街を攻略していくような手軽さに似てる気がしました。お好きな方もいらっしゃると思います。

 敢えてリアリティを求めない演出だったのだとすれば、一観客の個人的でわがままな願いではありますが、隔離された空間でのサバイバル以上に、意外だったりわくわくするものが欲しかったですね。
 北京蝶々の作品を観るのは初めてでした。作・演出の方は慎重に考えた末に題材や視点を選択されているようなので、また違った作品も観てみたいと思います。

ネタバレBOX

 居住者たちは飢え続けて、身体的にも精神面でも限界に近づいていきますが、ある問題が解決したことで食べ物に困らなくなり、突然あっけなく平安が訪れます。でもそれまでにひっ迫した空気がなかったため、舞台上の人物と一緒にホっとしたり嬉しくなったりできませんでした。外部から白衣の研究員が入ってきた時は空間がゆがんだように感じて面白かったですが、その後にドラマが起こらなかったのも残念。

 噂話を広めて恋愛のドロ沼をよりひどいものにした女の「だって退屈だったんだもの」というセリフが痛快。
 酒と一緒に食すると毒になるきのこを、皆に食べさせた男のセリフに納得。
 「自分が食べるものなのに、他人の言うことを鵜呑みにして、勉強もしないで」
 それが私たち日本人ですよね。
玉ノ井家のエンゲル係数(公演終了しました!)

玉ノ井家のエンゲル係数(公演終了しました!)

劇団ぎゃ。

ColaboCafe(東京都)

2009/05/23 (土) ~ 2009/05/24 (日)公演終了

満足度★★★

謎に引き込む女優2人の腕力
 会場は地下の小さなカフェで、舞台は小さなダイニングと併設されたキッチン。実際に料理をして食べるシーンもあります。東京、大阪、福岡の3都市を2人芝居でまわるカフェ・ツアーなんて、いいアイデアだと思いました。

 両親が死んでから7年間2人きりで生活してきた姉妹が、キューピー人形の姿をした“神様”に導かれて過去を回想していきます。登場人物は“美しい女(三坂恵美)と不細工な女(中村雪絵)”(←当日パンフレットではっきりと役名紹介。どちらが姉でどちらが妹かは明記なし)。片方が人間ではないかもしれないという意外な展開から、さらにそれをも覆す事実が現れます。

 チラシの第一印象からきっとコメディなのだろうと思っていたら、全くそうではなく・・・これは残念でした。でも、予想外の出来事が次々に起こって、目の前の人物が誰なのかがわからなくなり、小さな食卓に漂う空気がドラスティックに変わっていく感覚は、とても演劇的で面白かったです。
 女優さんも堂々とした演技を見せてくださいました。歌うシーンでは、お2人ともお腹からしっかり声が出ていてお上手でした。

 チケットが飛行機の切符のデザインになっており、開演前におしぼりを手渡しでもらったり。これからフライトをする気分を素敵に演出してくださいました。

ネタバレBOX

 ※人物名はセリフから聞き取ったので、正確ではないかもしれません。ストーリーも誤読の可能性あり。

 最初はたしか、中村さんが姉で三坂さんが妹の演技をしていたように思います。神様と自称するキューピーが出てきたところから、中村さんは“人形がしゃべる夢”を見てるのだと自分に言い聞かせます。夢の中で三坂さんは人間ではなく、“父が隠し持っていたダッチワイフ”ということになっていました。でも本当は、殺された“姉”だったんですね。

 両親が事故であっけなく死んだ後、美しい姉(三坂)は仕事に出て、不細工な妹(中村)は美大に進みます。姉は四条畷アキラという作家の小説「裏庭」の熱狂的ファンなのですが、姉が四条畷氏のテープリライター(口述筆記をする人)になったと聞き、姉を刺し殺してしまいます。そして姉の名前をかたって姉に成り代わるのです。

 小説「裏庭」に若貴兄弟(?)のようなシャム双生児が登場し、片方が片方に吸収されてしまうエピソードがあると妹が語っていました。妹は吸収されることを恐れて、姉に殺意を抱いた可能性もあります。嫉妬に狂っただけではないことがうかがえました。

 5年前を思い出すシーンで、妹は肉をサランラップにくるんで冷蔵庫に入れていたのですが、あれは人間(姉)の肉だったんですね。だから舞台にあるテーブルの上の料理にも、もしかしたら姉の肉が入ってるのかもしれない・・・スプラッター・ホラー度が急にアップ(笑)。

 妹がビールで錠剤を山ほど飲み込む演技があったように記憶しています。つまりこの物語は、妹が死ぬ前に見た夢・・・だったのかしら。
 最後には、二人ばおりの体勢になり、姉が料理を手でつかんで妹にむりやり食べさせます。グロテスクで正視に耐えませんでした。迫真の演技だけで充分に汚なさも恐ろしさも伝わりますので、具象にするのはやりすぎな気がしました。小さな空間で客席とも至近距離ですしね。そういえば中村さんのメイクも“不細工”にしすぎの感あり。
CASSIS

CASSIS

INUTOKUSHI

早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ(東京都)

2009/05/21 (木) ~ 2009/05/27 (水)公演終了

満足度★★★

明るく発散させる若いパワーを、内側にも向けて欲しい
 早稲田大学内で上演される学生演劇を観ると、作品の内容はともかく、公演自体がとても立派だなぁと思います。装置、照明などのスタッフワークが充実していて、観客は満員に近いほど入っており、チケット収入を見込んだ演劇公演としてきちんと成立させていることが多いからです。
 でも今作は「CoRich舞台芸術まつり!2009春」最終選考作品ですので、“学生演劇なので”と甘めに観ることはせず、他公演と同じ視点からクチコミを書かせていただきます。

 コント風のオープニングを経て黒幕が開くと、巨大なプリン・アラモードといちごケーキで出来た豪華な舞台美術が現れました。こってり広がった乙女ワールドで、美味しいケーキ屋、優しい草食系男子の国、処女と童貞の妖精だけの編集部という3つのコミュニティーが、徐々に崩壊していく様子を描きます。 

 残念ながら、役者さんはセリフを一方的に吐き出すようにしゃべる方が多かったです。型にはまった動きでがむしゃらにつっ走られても、私にはあまり魅力が感じられませんでした。元気なのは素敵ですが、放出するだけでは退屈してしまいます。
 男子が上半身裸になるシーンが多く、少々戸惑いましたが、皆さんしっかり鍛えてらっしゃるので不快感はゼロ。作品全体としては、もっとハチャメチャで弾けた演出があってもいいんじゃないかと思いました。

ネタバレBOX

 偽善があばかれたり、暗黙のルールを破られたり、欲望のたがをはずされたりして、3つの世界が壊れていきます。そのプロセスに疑問はありませんでしたが、3つともを丁寧に描きすぎていたように思います。「気軽な優しさは本物か?」「“永遠”なんて成り立つのか?」といった重たいテーマが後から出てきましたが、深まることなく終わった印象でした。“ハゲおやじ”の頭から赤い水が吹き出るコントから始まり、エンディングもよく似た感じのコントだったのは、物足りない幕切れでした。

 見どころは終盤でした。吐き気がしそうなほど甘ったるい、パステルカラーのメルヘンの世界が、黒い紙ふぶきで汚されていき、ケーキ屋の看板娘が朱色のカシスの泉に飛び込みます。ずぶ濡れになった女優さんの、飾らない表情がきれいでした。最後に劇場全体を白く染める照明も良かったですね。学内のアトリエで、動く照明がこんなに観られるとは思いませんでした。

 制作・運営面について気になったことを少し書かせていただきます。学内のアトリエ公演であるから仕方ないことですが、暑すぎました・・・。私が学生演劇をやっていた頃は観客に団扇を配っていましたので、扇風機があるだけでもずっと恵まれていると思うべきなのですが、暑さには勝てず(涙)。お芝居の途中で朦朧としてしまいました。

 私は夜の公演を観に行ったので、なにやら明かりのついているテントに行って「ここは犬と串さんでしょうか?」と聞かなくてはなりませんでした。また、受付を済ませた後も、劇場がどこにあるのかわからなくて(かなりの方向音痴なのです)、近くにいた関係者らしき人に「劇場はどちらですか?」と聞きました。
 初めての人は右も左もわからないものです。“早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ”に行き慣れている人だけでなく、アトリエ初心者、演劇初心者のことを、もうちょっと考えていただけたら嬉しく思います。

 銀紙に包まれたチョコレートにチケットの半券が貼り付けられており、開演前に「劇場内が暑くなったら溶けてしまうので、なるべくお早めにお召し上がりください」と言われました。私はチョコレートは大好きなんですが・・・芝居の前にはあまり口に入れたくなくて・・・ちょっと困りました(苦笑)。鞄の中で溶けたら本当に困るので、開演前にいただきました。幸運な観客には、銀紙の中に金のチケット・銀のチケットという特典が入っていたそうですが、できれば他の抽選方法にしていただきたかったですね。でもチョコレートは美味しかったです。ごちそうさまでした。
朝霞と夕霞と夜のおやすみ(ご来場ありがとうございました)

朝霞と夕霞と夜のおやすみ(ご来場ありがとうございました)

FUKAIPRODUCE羽衣

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/05/09 (土) ~ 2009/05/20 (水)公演終了

満足度★★★★

灼熱の純粋性愛・妙ージカル!
 男女の性愛をおおらかに歌い、叫び、踊る、体当たりのパフォーマンスです。役者さんのはっちゃけて、振り切れて、限界を超える(?)動きっぷりに圧倒されます。そして、とにかく暑苦しい!ばかばかしい!でも感動しちゃう!(笑)

 休みなしで踊りすぎて卒倒しないのか、暴れすぎて怪我しないのか、音域の広い歌を叫んでのどを潰さないのか、劇団内恋愛禁止だけど胸焦がす恋に落ちちゃうんじゃないのか!?・・・等々、いらない心配が何度も頭をよぎりました(笑)。

 作・演出・音楽・振付・美術を手がける糸井幸之介さんの才能がまぶしいです。いつかぜひ歌手やバンドに楽曲提供していただきたいですね。

 歌詞を当日パンフレットと一緒に配布していただけるのが嬉しいです。公演前半は“ささやかなプレゼント”付き(終演後のドリンク・サービス)で、私はポカリスエットをいただきました。のどがすごく渇いていたので助かりました。

 チラシの写真・デザインがきれいで、とっても私好みです。このチラシに一目ぼれして観に来るお客様も、いらっしゃったのではないかしら。でも、セックスにまつわる表現が具体的で激しい作品であることが、このビジュアルからは伝わらないように思います。FUKAIPRODUCE羽衣の表現においては、歌も踊りもセックスも同じ位置づけなのかもしれませんが、過激な性描写にアレルギーがある観客も少なくはないので、そのあたりの配慮はしても良いのではないかと思います。

ネタバレBOX

 巨大な白いシーツにくるまって、下手奥の床下から役者さん全員が登場します。シーツは丸くふくらみ、大きな生き物のようにうごめいて、やがてしぼんで床に平たく広がります。横たわった男女が顔だけをポコっと出して、一夜を過ごした恋人たちのベッドに変身します。

 糸井さんが奏でるセリフ・歌詞には、いつもうっとりとさせられます。※セリフはうろおぼえです。
 「頭脳は使わないで。頭脳は人類最大の思いあがりだから。心は使わないで。心は人類最大の思い違いだから。」
 羽衣のテーマ曲の「脱いじゃおっかな羽衣♪」も素敵。

 山登りをするエピソードで、男が女をいろんな体勢で抱きかかえながら、大勢で舞台をぐるぐる歩くシーンで涙がこぼれました。山登りという大自然の中の健康的な行為が、無理なくセックスと重なる、奇跡。「生=性」なんて書くのはこっぱずかしいですが、それを納得させてくれます。命の賛美ですよね。

 シーサイドホテル(?)の短編はとても面白かったですが、既に『EKKKYO-!』で観た者にとっては2度目になります。新作公演だと思っていましたので、始まった時はほんの少しだけがっかりしました。わがままですみません。
 “小劇場俳優”が眠気と戦いながらギターを弾く(?)シーンは、私には長すぎましたね。劇場内が暑過ぎたのも原因だと思います。
天気のいい日はボラを釣る

天気のいい日はボラを釣る

studio salt

王子小劇場(東京都)

2009/05/20 (水) ~ 2009/05/24 (日)公演終了

満足度★★★

ささやかな幸せを愛でる繊細さ
せちがらい現代日本で最低限の生活を獲得するために、川辺で人知れず戦っているホームレスの人々を、とことん優しい視線で描いていたように思います。小さき者を慈しみ、ささやかな幸せを愛でる繊細さが伝わってきました。

ただ、なにげない日常が淡々と続くお芝居は、大事件でなくとも何らかの出来事が起きた時に、空気がぐっと変化するような、劇的な仕掛けが必要だと思います。照明・音響・衣裳・舞台転換などの目に見える(耳に聞こえる)演出でもいいですし、役者さんの演技の密度でもいいのですが。そういったところに物足りなさを感じました。また、具象と抽象のバランスがあまり良くなかったように思います。

終演後は一般客も参加OKの2日目カンパイ(劇場内で開催)に参加させていただきました。自己申告のカンパ制で、炊き出しの料理食べ放題・缶ビールなど飲み放題という大盤振る舞い!赤字が出るんじゃないかと勝手に心配になりましたが、お客様は皆さんとても楽しそうでした。私は缶チューハイをいただいたので150円カンパしました。

ネタバレBOX

役所や教会の人、そしてホームレスに暴力を振るう若者らの言動・行動に、致命的な想像力の欠如と愚かさを感じられたのは、川辺で鍋を囲むホームレスの人々の、ほんの数時間(数分間?)のささやかな幸せが、リアルに描かれていたからだと思います。

作品の中にぐっと入りこめたのは、開幕してから約40分後だったと思います。お笑い芸人“ぺん”(木下智巳)の川辺からの登場が、もっとドラマチックだったらな~。余命が少ないと告白するテント少年(高野ユウジ)が、ニコニコ顔の奥にある本音を表す(ケンカする)ところが良かったです。

具象・抽象のバランスについては、例えば、拾い集める缶もシールも本物だし、テントも本物。食事も本物で役者さんが実際に舞台で召し上がっていました。でも、川から這い出てきた“ぺん”が全身びしょ濡れではなかったんですよね。濡れた服を脱がせてから新しい上着を渡すはずが、濡れた(はずの)シャツの上に新たにシャツを着せていました。細かいことですが気になってしまいました。

老人シゲさん(小川がこう)が天井から紐に吊られて宙に浮くシーンが挿入されており、そのシーン自体はスリリングで面白かったのですが、なぜなのかがわかりませんでした。嵐がやってきて川でおぼれていたところ、警察(?)のヘリコプターによって助けられたんですね。翌朝になってジョージ(東亨司)が「(住処が飛ばされたので、今度は)川じゃないところにする」と言ったところで、初めてわかりました。

シゲさんが1人で釣りをするシーンは、劇的な空気の厚みが出ていたと思います。かつてジョージがやっていたように、壁に缶ビールのシールを張っていくのも効果的でした。冒頭のシーンとのつながりがもっとわかりやすければ、さらに良かったんじゃないかと思いました。
ブラインド・タッチ

ブラインド・タッチ

一般社団法人 日本演出者協会

あうるすぽっと(東京都)

2009/06/04 (木) ~ 2009/06/06 (土)公演終了

6月はあうるすぽっとに何回行けるかな
「日韓演劇フェスティバル」が1ヶ月間も開催されているのが凄い!最初の演目を見ることができました。戯曲も俳優も良かったです。

ネタバレBOX

最後の、ピアノ2台の不協和音のハーモニーが素晴らしかった。
花のゆりかご、星の雨

花のゆりかご、星の雨

時間堂

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/06/02 (火) ~ 2009/06/14 (日)公演終了

満足度★★★★

“深呼吸できる演劇”そのものを、もっと味わいたい
 プロデュース団体だった時間堂が劇団化して初めての公演です。時間堂堂主の黒澤世莉さんが5年ぶりに新作戯曲を発表することもあり、自ずと期待が高まっていました。出演者5人全員が劇団員であることからも、新生・時間堂のお披露目公演という位置づけになるのでしょう。

 舞台は、地味ではあるが品揃えは良い骨董品店。木彫り細工のソムリエナイフをめぐって、現代人の素朴な喜び、悲しみがふんわりと、でも鮮やかに描かれます。心温まるストーリーの口語劇でした。
 ギャラリーLE DECOの4階をほぼそのままに使い、主だった小道具はマイム(という表現がふさわしいかどうかは疑問ですが)で表現します。演技スペースは舞台前方。後方は登場しない役者の待機場所であると同時に、楽器の生演奏ブースでもあります。

 黒澤さんの演出作品といえば一番の見どころは、舞台上で自らが演じる役柄として伸び伸びと生きる俳優たちだと思います。今作でも、舞台上で相手役とコミュニケーションを取り、その場で感じたままを発露させる、心理的リアリズムの手法にのっとった素晴らしい演技を見せてくださいました。

 ただ、俳優指導者としての黒澤さんのご活躍や、過去の上質なストレート・プレイ(コロブチカ『proof』)を観たことがある者としては、マイムや生演奏に気を取られて、肝心の俳優同士の演技のぶつかり、調和、そこから生まれる劇空間のうねりを存分に味わえなかったのが残念。

 劇場内で飲み物やグッズが販売されていました。オリジナル・ドリンクも豊富で、私は劇中に登場した紅茶(正露丸の匂いがする・笑)をいただきました。美味しかったです。

ネタバレBOX

 リストラされたミキ(花合咲)は、母が手術を受けると知って実家に帰ることにした。上京した時に母の骨董品を盗んで売り払ったため、せめて少しでも買い戻して、手土産にしようと思いつく。母が最も大事にしていたソムリエナイフを見つけ、取り置いてもらっていたのだが、骨董品屋の店長ら(菅野貴夫&星野奈穂子)の不手際で、近所のフレンチ・レストランのシェフ(鈴木浩司)の手に渡ってしまい…。

 “モノの記憶をたどること”を特技とする店長の誘導で、ソムリエナイフが経験した過去が劇中劇の形で表現されました。1つ目は、ミキの母(雨森スウ)が父(鈴木浩司)と駆け落ちし、2人で富山に開店した花屋に、祖母(星野奈穂子)が訪れるシーン。母と祖母の間に確執があったことがわかります。2つ目は終戦直後の焼け野原の東京で、娼婦となっていた祖母(星野奈穂子)と、戦場から帰還した祖父(菅野貴夫)が出会います。祖父は、祖父の兄つまり祖母の許婚が戦死したことを告げ、彼女にプロポーズするのです。
 どん底の悲しみと、それを乗り越えて得た幸せがソムリエナイフに刻まれているように感じ、それまでは誰かの噂話のようだった物語の中に、やっと入ることができました。

 オリジナル曲を全員で歌うエンディングは、物語の結末としては少々ハッピーが過ぎて冷静に眺めざるを得なかったものの、6人の混声合唱の美しさには聴きほれました。ミキがナイフをシェフに譲ることに決めた時の、花合さんの笑顔がとても良かったです。

 店長の妻役の雨森スウさんは実際に妊婦さんなんですね。雨森さんがトランペットを演奏された時は、なぜかドキドキしてお腹をじっと眺めてしまいました。妊婦がリアルに妊婦を演じているのって、実は凄いことなんじゃないでしょうか。

 終演後のトークのゲストは演劇ライターの徳永京子さん。「骨董店の店員キリコの存り方に、時間堂が目指す演劇が象徴されている」という鋭い指摘に、劇団員の皆さんは驚愕のご様子でした。
 扇子を使って物体を表現する演出は、落語から来ているとのこと。アイデアは面白いし、そのこと自体を楽しめたお客様もいらしたことと思います。俳優の心の演技によって物語を伝えて欲しかった私には、必要性が感じられませんでした。
ユーリンタウン-URINETOWN The Musical-

ユーリンタウン-URINETOWN The Musical-

流山児★事務所

座・高円寺1(東京都)

2009/05/29 (金) ~ 2009/06/28 (日)公演終了

満足度★★★★

大人数の合唱・群舞が楽しい!
日生劇場で見た時は意味がよくわからなかったんだけど、作品の面白さがしっかり伝わってきて満足です。前売り4500円は安すぎ!の“貧乏”ミュージカル。2階席(?)だったので生バンドが見えなかったのは残念。そう、生演奏つきっていうのも豪華です。

ネタバレBOX

「ユーリンタウンに連行」=「死刑」というネタが早い目にバレてるのが良かった。1幕最後が素晴らしい。テーマ曲も耳に残りました。
関数ドミノ

関数ドミノ

イキウメ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/05/08 (金) ~ 2009/05/24 (日)公演終了

満足度★★★★

面白くて、手放しに楽しんでしまった
これからどうなるのかな、と、素直に引き込まれて超エンジョイしちゃいました。小さい劇場なので、気になる方は早めに予約した方がいいかも。

ネタバレBOX

人物を舞台に残して、次につなげる演出がクール!
雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた

雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2009/05/06 (水) ~ 2009/05/30 (土)公演終了

満足度★★★★★

囚われ人の思い出の中で号泣
三田和代さんの鬼気迫る演技を観られるだけでも、10,000円の価値はあると思います。鳳蘭さんも凄い迫力。女優とは、こういう生き物のことを言うんだな、と。

ネタバレBOX

ぼっろぼろに泣かされて、カーテンコールでダメ押し。
賛否は分かれるだろうけど、私にはド真ん中の正解。
ロックですね!
ショート7

ショート7

DULL-COLORED POP

pit北/区域(東京都)

2009/04/29 (水) ~ 2009/05/06 (水)公演終了

満足度★★★★

知的にバカをやる脚本の、ギリギリ感が魅力
 谷賢一さんの作品は豊かな知性と、パンクの精神を感じさせるテキストが大きな魅力だと思います。今公演でも、言葉に対する尋常ならぬこだわりが感じられ、充実の観劇になりました。

 DULL-COLORED POPでは、役者さんは決して読みやすいとは言えない長いセリフ(詩情たっぷりの状況説明や、難しい専門用語が散りばめられた感情の吐露など)を、読みこなすことが求められます。作・演出家が当然のように役者に負荷をかけ、役者もそれに全力で応えるという、演劇に対するひたむきさが伝わってくる作品群でした。

 ただ、その高くかかげた目標にたどりつけていたかというと、まだもう一歩足りなかったのではないか、というのが全体についての感想です。また、この3年間に上演された短編戯曲7本の中では、やはり最近書かれたものほど面白いことは否めず。時代の流れは早いですね。

 あくまでも個別の短編を7つ集めた公演だということで、作品終了ごとに装置変更の休憩が挟まれていたのは潔いと思いました。観客も遠慮なく頭の切り替えができます。
 装置を動かす舞台監督さん(?)が黒装束だけど金髪で、とても目立っていました。演出意図なのかしら(笑)。
 終演後のトークイベントでは、演劇についてのディープな話が聞けて面白かったです。“キャバクラ”のぐだぐだ感は好みが分かれそう。様式は毎日変化していきそうですね。

 Aプロは心の暗部を深くえぐるような題材が多く、休憩があったおかげで気持ちを楽にして拝見できました。Bプロの飲尿ミュージカル「エリクシールの味わい」は出色。バカ笑いしながら考えさせられました。生演奏が素晴らしいです。オススメです。これから予約される方は、A、Bの順番でご覧になるのが良いのでは、と思います。

ネタバレBOX

 Aプロは女優さんの体の露出がかなり大胆です。美しいので純粋に眼福ではありますが、そちらにばかり集中させてしまうのはもったいない気もしました。Bプロはとにかく「エリクシールの味わい」が突出しています。
 A、B両方とも最後に1人芝居を持ってきていますが、Aプロは「15分しかないの」、Bプロは「エリクシールの味わい」で終わってほしかったですね。

■Aプログラム
・『ソヴァージュばあさん』
 演出、出演者違いで数回拝見した戯曲です。3人の敵国兵士と仏頂面のソヴァージュはあさん(堀川炎)が、数ヶ月の同居生活を経た末に・・・。

 言葉が通じない人々(しかも敵同士)が食事を通じて心を通わせていくお話なので、ダイニングテーブルと料理のセットが効いています。フランス語とドイツ語の通訳をしていた兵士(和知龍範)が、冒頭のセリフを手帳を読むように語っていたのが良かったです。

・『Bloody Sauce Sandwich』
 姉(佐々木なふみ)の部屋に転がり込んだ妹(ハマカワフミエ)。彼女はある妄想に取り付かれていて・・・。

 子供を堕胎してしまった若い女性の苦しみ。水子が堕胎医(千葉淳)の姿で登場するのが空恐ろしい。
 私が座った席のせいもあると思いますが、姉役の佐々木なふみさんの美しい胸元ばかりに目が行ってしまいました(笑)。ここまで来るとやりすぎなんじゃないかと思いますね。ブラウスのボタンが数個はだけてるぐらいのチラリズムを希望。

・『15分しかないの』
 大手商社で働く27歳の女性サラリーマン。深夜に1人暮らしの家に帰宅して、寝る準備をするまでの15分だけが、自分の自由時間なのだ。

 サラリーマン本人(堀奈津美)と、彼女の中にある相反する2つの感情(桑島亜希、境宏子)の合計3人で、1人の人物を演じます。モト彼(千葉淳)からの電話への反応がそれぞれバラバラだったり、重なったりする演出がとても面白いです。ほぼ正方形のステージを立体的に使ったステージングも見ごたえがありました。

・『アムカと長い鳥』
 田舎に嫁いで暇をしている若い主婦の独白30分。キャミソール姿での清水那保さんの1人芝居です。

 初演の方がもっと引き込まれたように思います。演技はまだまだ上を目指せる感あり。あやうさが足りなかったのかも。
 白いベビードール風キャミソールが似合う若い女優さんっていいですね。ショーツはお尻にぴったりフィットするタイプの方が私好みです。

【アフタートークイベント】
 4/29(水)出演:谷賢一 中屋敷法仁(柿喰う客・代表)

 「演劇は21世紀に生き残れるか」という壮大なテーマを掲げ、谷さんと中屋敷さんが本気で話されているように感じ、しかもお2人のご意見は対立するものでもあったので、非常に面白かったです。
 初日ということもあってか、キャバクラ嬢に扮した女優さんたちが所在無さげでお気の毒でした。どうせなら本気で議論に参加して欲しかったです。改善を希望。


■Bプログラム
・『息をひそめて』
 同姓しているカップル(堀奈津美&佐野功)が暮すアパート。男は女が浮気をしているのではないかと疑心暗鬼になり、床下に隠れて女とその友人(田中のり子)との会話を盗み聞きする。

 畳がパカっと開いて男が出てくるのが面白いです。わざわざこのためにセットを作られたんですね。ビーフシチューを食べるのか食べないのか・・・で終わる最後の空気には、岸田國士作品のような情緒が感じられました。ただ、女2人の会話はいやに早口で、感情表現がはしょられているようで残念。

・『エリクシールの味わい』
 さまざまな女の子の“尿”を用意しているバー。飲尿フリークの男(小林タクシー)が1杯ずつ味見をしていく。

 絶品でした(笑)。始まる前のセットチェンジの時に、スポットライトが客席に2灯も用意されたところから、ものすごく可笑しかった。キーボードの生演奏&ボーカル(伊藤靖浩)もノリノリで素晴らしいです。
 男が心奪われたエリクシール(万能薬・不老不死の薬)と呼ばれる尿は、精神を病んだ女(岡田あがさ)のものでした。テーマが飲尿なのに、変態のダメ男と薄幸の美少女の純愛物語にまで昇華しました。「50cmだけ離れて。ずっと一緒に。」にうっとり。

・『藪の中』
 芥川龍之介原作『藪の中』の翻案・舞台化。

 たった1人で30分間、7役を演じ分けていくのは大変なことだと思います。堀越涼さんは花組芝居の役者さんなので、歌舞伎っぽい演技がポイントにもなっていました。原作の持ち味そのままに上演したようですが、構成に変更を加えても良かったのではないかと思います。


【アフタートークイベント】
 4/30(木)出演:谷賢一 船岩祐太(演劇集団 砂地・演出)

 初日とは違って、キャバクラ嬢(?)の皆さんは床に座ってお話に参加。「ポストモダンって何ですか?」という質問が良かった。
すご、くない。♥KR-14【白神ももこ】

すご、くない。♥KR-14【白神ももこ】

キレなかった14才♥りたーんず

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/04/18 (土) ~ 2009/05/06 (水)公演終了

満足度★★★★★

笑って、気持ちがゆるゆるして、泣いた
可笑しくて、楽しくて、優しい。それって幸せですよね。生きててラッキー。りたーんずはこれで5本目。今のところダントツ1番です。

ネタバレBOX

最後のミラーボールでダメ押し。涙だだもれでしばらく席から動けなかった。
男の60分 -東京場所-

男の60分 -東京場所-

ゲキバカ

【閉館】江古田ストアハウス(東京都)

2009/04/22 (水) ~ 2009/04/29 (水)公演終了

満足度★★★★

客席を巻き込んでいく、明るい見世物魂!
 「舞台はライブ。観客を楽しませてナンボ!」という姿勢が貫かれた“王道エンターテイメント”でした。もう1つの劇団キャッチコピー“分かりやすいのに奥深い”も、しっかり織り込まれていたと思います。

 『男の60分』は愛知公演のために作られたツアー向けの短編なので、舞台美術はダンボール箱のみというミニマムなもの。その分、役者さんが全身を使って魅せてくれました。私は上手通路際の席だったので、全力で走る役者さんが起こす風が体に伝わってきました。スリリングで、思い切りの良さも感じて爽快でした。

 出演者7人全員が劇団員。男優ばかりの劇団なんですね。登場するのは、自然がいっぱいの昔の田舎町を舞台に、川や空き地などで暴れまわる少年たち。ギャグは堂々とやりきってくれるし、ダンス(組体操)も肉体を鍛えていることがわかるキレの良さ。モノマネや客いじりなど、観客を意識した前向きなエンターティナー精神にも好感を持ちました。
 自らが見世物であることを自覚して、堂々と自分をさらすことができている役者さんを見られるのは、観客としてとても幸せなことです。 

 初日は終演後に、劇場4階の稽古場にて打ち上げの飲み会がありました。一般客も参加可能なものだったので少しお邪魔したところ、カッパ役の石黒圭一郎さんと作・演出の柿ノ木タケヲさんとお話ができました。ありがとうございました。

ネタバレBOX

 母親の通夜(葬式?)に始まり、少年の頃のやんちゃな思い出の数々を経て、最後は母への思いを伝えて終幕。「あぁ、男って永遠のマザコンだよね!(笑)」とハッピーに感じつつ、これもまた『男の60分』というタイトルにぴったりだと思いました。

 大男(もじゃお:伊藤今人)が街の人々を踏み潰すネタの連発は、ベタだろうがなんだろうが笑えました。笑いに落とすタイミング(間や呼吸など)に技術を感じます。劇団員がエチュード(即興劇)で作っていったのであろうことが伺えました。劇団コーヒー牛乳の役者さんは、外部に単独で出て行っても活躍されることと思います。

 思い出話の最後は、少年たちそれぞれの将来の職業がわかる衣裳(ドレス、作業着など)に着替えながら、踊り狂うシーンで昇華。直後の暗転で拍手が起こりました。多くの観客がそこで終幕すると思ったからでしょうね。なので、エピローグの夏の日のシーンが始まった時は少々違和感あり。ネタが面白かったので、私もあそこで終わっても満足だったんですよね~(笑)。でも、この作品の大事なテーマの1つが“母への想い”であるならば、全体のバランスを練った方がいいかもしれないと思いました。

 スー(鈴木ハルニ)が名前をはっきりと言わないのは、彼が将来イチローになる男だったから(笑)。オツムの弱そうなスーが、ごくたまに大人な発言をするのが可笑しいです。笑いを生むギャップの作り方に、余裕が感じられました。
 カッパ(石黒圭一郎)が川に溺れるシーンのダンスが良かったです。石黒さんは踊り暴れながら、劇場の壁を登ったりするのも凄い(笑)。モノマネのレベルアップにも期待します。
 在日韓国人コチュジャン役(のちにクッパ)の中山貴裕さんは、内から湧いてくる怒りが、まるで体から湯気がたつほどに、のぼり出ていました(もしかすると汗のせい?)。韓国人の熱さがよく出ていて素敵でした。

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