しのぶの観てきた!クチコミ一覧

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再/生

再/生

東京デスロック

STスポット(神奈川県)

2011/07/16 (土) ~ 2011/07/24 (日)公演終了

満足度★★★★

タダフラ版は追加公演あり。
デスロック版・タダフラ版ともに鑑賞。デスロック版コンセプチュアル・アートだと思って観てもいいかも。タダフラ版は追加公演あり。

文学盲者たち

文学盲者たち

東京ドイツ文化センター(ゲーテ・インスティトゥート)

ドイツ文化会館ホール(OAGホール)(東京都)

2011/07/17 (日) ~ 2011/07/17 (日)公演終了

観客が移動(笑)
最初はついていけなかったけれど、中盤からなんとか。やはり私は平凡な観客だなと。伊東沙保さんがすごくセクシーで、彼女ばかり観てしまいました。

荒野に立つ

荒野に立つ

阿佐ヶ谷スパイダース

シアタートラム(東京都)

2011/07/14 (木) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★

プレビュー初日鑑賞
不条理劇的な難解さゆえ、物語と意図を知りたくて終始没頭。時空が交錯し現実・妄想の境がない。誰が何役なのかが曖昧で各俳優から目が離せない。
果たして私の目は見えているのかいないのか。観客の私も夕闇をさまよったが、最後に題名の意味が明らかになり感動!
「代行」は演劇そのものだし人間の営為。セリフを削って無言の場が増えてもいいと思う(難解歓迎)。最初からもっとコミカルでもいいな。
安藤聖さん奮闘!平栗あつみさんに見入った。中村まことさんのある場面で落涙。

愛情爆心地はボクのココ

愛情爆心地はボクのココ

ぬいぐるみハンター

王子小劇場(東京都)

2011/07/07 (木) ~ 2011/07/18 (月)公演終了

満足度★★★

初ぬいぐるみハンター
ストーリーは好みじゃなかったですが、劇場の使い方が素敵

ゲヘナにて

ゲヘナにて

サンプル

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2011/07/01 (金) ~ 2011/07/10 (日)公演終了

満足度★★★★

本当にゲヘナ(地獄)だった…
最後の五分は何もかも開ききって裏返しになるほど剥き出しのセカイ?サンプルと松井周さんに興味がある人、例えばオーディションとWSを受けるつもりの人は必見。

ネタバレBOX

ニジンスキーが…
○○トアル風景

○○トアル風景

はえぎわ

ザ・スズナリ(東京都)

2011/07/06 (水) ~ 2011/07/11 (月)公演終了

満足度★★★★

男と女の…
演劇的演出がとても面白かった。抽象の装置の広がり。循環する世界。個々の俳優の魅力も。

ヒロシマ・モナムール

ヒロシマ・モナムール

SPAC・静岡県舞台芸術センター

舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」(静岡県)

2011/07/02 (土) ~ 2011/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

イロシ・マ
演技も演出も言葉もあまりに素晴らしくて、上演時間の半分以上は涙流れっぱなしだったかも。

標本

標本

乞局

リトルモア地下(東京都)

2011/06/22 (水) ~ 2011/06/30 (木)公演終了

満足度★★★★

プレビュー拝見
面白かった~。虫がテーマの短編集は乞局らしい粘着質な不気味さ。意味不明な設定の男女の物語は唐突かつエロティックで刺激的。毎度ながら役者さんは妙技合戦。私は「蜻蛉」が一番好きです。

PHANTOM THE UNTOLD STORY

PHANTOM THE UNTOLD STORY

Studio Life(スタジオライフ)

シアターサンモール(東京都)

2011/06/09 (木) ~ 2011/06/27 (月)公演終了

満足度★★★★

destinチーム拝見
ストーリー・テリングに徹したストイックな演出で成功。面白いです。林勇輔さんは久しぶりのど真ん中主役で当たり役。幼少期から青春時代までを演じられるのは小柄で声が高いから、そして演技力があるから(言っちゃうよ)。照明良かったな~。上演時間は休憩1回含む約3時間。英国スタッフ会見:tinyurl.com/3ggffwx 絶対続編あると思われ。

雨

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2011/06/09 (木) ~ 2011/06/29 (水)公演終了

満足度★★★★

新国立劇場「雨」。
はああ~…凄かった…。お祭りでサスペンスで社会派で歴史物な娯楽大作。美術の、あの大パノラマは何なんだ。さすがの栗山民也演出。中劇場バッチリ。井上ひさしさんが42歳の時の戯曲なのか…。平日夜は日によって空席あり。

ネタバレBOX

装置は漢字の「雨」に見えるようになっています。
ドリルチョコレート×キコ qui-co.「世田谷童貞機構」

ドリルチョコレート×キコ qui-co.「世田谷童貞機構」

MCR

駅前劇場(東京都)

2011/06/13 (月) ~ 2011/06/14 (火)公演終了

満足度★★★★

楽しかったです。でもR18かと(笑)
櫻井さんと小栗さんは相性が良いんじゃないかと思いました。

ネタバレBOX

名前だけの「童貞」か、中身も「童貞」か。形骸化していく運動を描いたり。
モリー・スウィーニー

モリー・スウィーニー

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2011/06/10 (金) ~ 2011/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★

ストレートプレイがお好きな方なら必見。
盲目の女性の目が見えるようになったら…ってだけの話じゃない。三人の独白で進むのは確かだけど、一人語りとは感じさせない演出。スタッフワークも緻密で上品。そして小林顕作さんに驚くでしょう!(笑)

ネタバレBOX

映画「パンズ・ラビリンス」、小説「アルジャーノンに花束を」に似たところがあるかも。
ローヤの休日

ローヤの休日

ゲキバカ

王子小劇場(東京都)

2011/03/16 (水) ~ 2011/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★

鍛えられた身体の迫力!エンタメに徹した人間ドラマ
 四方を客席が囲むほぼ何もない抽象舞台で、文字通り俳優の身体で見せていきます。やり手の窃盗団が見事に宝石を盗み出したものの、逃げる途中で警察に捕まり全員監獄へ。窃盗場面を躍動的なダンスで表すのは見ごたえ抜群です。

 女囚バージョン、男囚バージョンの順に鑑賞しました。女囚バージョンは健康的なお色気ムンムンで、たとえば所長役の三枝奈都紀さんの美脚に目が釘付け!(アタシ女なんですが!)男囚バージョンは高い身体能力ならではのダンスとステージングにチームワークの妙、舞台上での即興的な遊びなど、ライブ・パフォーマンスの魅力、迫力が詰まっていました。劇団員の役者さんは粒ぞろいだと思います。

 どちらかというと私は男囚バージョンの方が面白かったですね。女囚バージョンばダンスも演技も、女優さんが必死で理想に追いつこうともがいている状態で、まだ自分たちのものにはなっていない印象でした。公演後半に観たら違っていたかもしれません。

 所長(副所長)と看守とのアドリブ場面では大いに笑わせていただきました。女囚バージョンでの看守(岡田一輝)、男囚バージョンの副所長(渡辺毅)は1人で全空間を担う大役で、観客の反応に合わせる自由自在さも爽快。

ネタバレBOX

 どちらのバージョンにも独房に入っている主人公がおり、彼(彼女)は窃盗事件現場を回想して、さらには仲間との出会いとそれ以前の半生も振り返ります。

 死刑囚の独房に窃盗団仲間が訪れる時点で、今起こっていることが夢であることは自明。どこで、どのようにタネを明かすのかと探りながら観ることになりました。でも主人公の生い立ちが徐々にわかっていくため、サスペンスのムードが持続し、繰り返されるダンス場面もかっこいいので、最後まで集中して物語を追うことができました。

 仲間全員を裏切って宝石を自分のものにし、1人で逃げようとした主人公。心の奥に潜む弱さゆえ、保身に走らざるを得ないのです。彼(彼女)が人を信じられないのは、無条件に自分を愛し、見守ってくれる家族を幼い頃に失ったからでした。
 女囚バージョンと男囚バージョンでは主人公の家庭のエピソードが違っていて、男女の差をよくあらわせていたと思います。
テノヒラサイズの致命的誤謬

テノヒラサイズの致命的誤謬

テノヒラサイズ

HEP HALL(大阪府)

2011/04/01 (金) ~ 2011/04/03 (日)公演終了

満足度★★★

地震で東京公演6ステージを中止。大阪公演に伺いました。
 東京公演の3月11日昼公演を観ている時に地震が起きました。制作さんの冷静かつ適切な誘導により、観客は全員無事に劇場の外に避難することができました。外に出てからも出演者の皆さんが気さくに声をかけてくださったおかげで、落ち着いて行動できました。チケットの日時変更や払い戻しについての連絡方法もその場で説明してくださったので、小劇場公演の主催者への信用が増したと思います。本当にありがとうございました。

 3月11日からほぼ20日後の大阪公演では、劇団のファンらしいお客様も多数いらしてアットホームな雰囲気。東京公演よりも役者さんの演技が洗練されていて見やすかったです。

 大がかりな装置はほぼなく、主な小道具はパイプイスとテーブルぐらい。登場人物は同一色のつなぎルックにビジュアルを統一し、セリフと動きでストーリーを進めていきます。
 レタスだけを栽培する工場のレクリエーション部という設定には、閉鎖的で奇妙なイメージがあり、“新入り”の不審な行動が謎を呼ぶのも面白いと思いましたが、その後の荒唐無稽な展開にはついていけず。

ネタバレBOX

 退職するマスゾーさんなる人物の送別会の準備を進める内に、実は部員全員がスパイだった、この世界自体が宇宙船の中だった、マスゾーさん以外は巨大化した新人類だった、など・・・。行き当たりばったりで無理がある脚本だと思いました。

 パイプイスを振り回してレタスのベルトコンベアを思わせる動きが良かったです。ああいう身体表現をもっと観たかったですね。
グンナイ

グンナイ

万能グローブ ガラパゴスダイナモス

イムズホール(福岡県)

2011/05/28 (土) ~ 2011/05/29 (日)公演終了

満足度★★★★

「グンナイ」で済ませられない人生
 初日の1ステージ目に伺ったところ、観客のわくわく度がハンパない!10代と思われる若い男女が団体で観に来ていたり、ロビー開場中から観客の熱気にあてられ、客席についてからは300席以上を満席にする劇団力を見せつけられました。「前回はあんな役だった役者さんが、今回はこんな役だ」と見守るような、固定客と劇団との幸せな関係も築かれており、いわゆる“大人気の若手劇団”に久しぶりに触れたように思います。

 舞台は日本から離れたある島の、南国ムードいっぱいのホテルのロビー兼バー。高校野球部の同窓生が数年ぶりに集まり旧交を深めますが、それぞれが抱える問題が徐々にあらわになっていきます。
 今年2月の東京公演同様によく練られたコメディーでしたが、意外にテーマが重くてメッセージ性も強く、終演後しばらく客席にとどまり、受け取った意味を咀嚼しながら余韻を味わいました。

 今までになかった方向性を打ち出したようですね。笑いに特化した作品も良いですが、私としては今作で劇団の将来への期待がますます高まりました。

ネタバレBOX

 ともに青春時代を過ごしたさわやか高校球児たちも、卒業後は別々の道へ。父の仕事を継ぎ婚約者も得て幸せの絶頂にいる者もあれば、野球賭博で行き詰まり国外逃亡をもくろんでいたり、ホストになって次々と女性客にたかっていたり、新興宗教にはまっていたりする者もあり。

 プロ野球選手だった弟の交通事故死に疑問を抱く姉が、旅行記事ライターとしてホテルに潜入していました。弟は野球部で一緒だった面々と、野球賭博および薬物によるドーピングに手を染めていたのです。薬物は舞台となる島に咲く植物から抽出されたもので、新興宗教団体が販売しているものでした。
 「死」のムードがひっそりと舞台を侵食しますが、深刻なエピソードを大げさに謡いあげることなく、笑いのスパイスを細かく効かせてコメディーの体裁に整える手腕に信用がおけました。

 野球の試合を再現する場面が素晴らしかったです。あの時の輝きは皆の心に刻まれ、いつまでも美しい思い出であり続けるけれど、その後歩んだ日々も消えることはありません。
 グンナイの意味は「Good Night(おやすみなさい)」。つまり目をつぶっていた、あえて気づかない振りをして見逃していた、何かを盲信して思考停止していたということ。その結果、しっぺ返しをくらうことになります。思い出の試合を何度繰り返しても、最後の一球を打たれて負けるのです。

 作者の川口大樹さんがどう考えていたかはわかりませんが、この度の震災および原発事故の下で生きる私たちをあらわしているように受け取りました。
メガネ夫妻のイスタンブール旅行記

メガネ夫妻のイスタンブール旅行記

城山羊の会

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/05/21 (土) ~ 2011/05/31 (火)公演終了

満足度★★★★

大人向けのコメディー
トンデモなことが起こりまくった後に見えた景色が、ストンと何かを教えてくれた。大切なものを失った人間はどうするかってことも。

【ご来場ありがとうございました】解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話」

【ご来場ありがとうございました】解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話」

趣向

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2011/05/21 (土) ~ 2011/05/23 (月)公演終了

青春を、歴史を駆け抜ける少女たち
4ステしかなかったので再演希望。

グラデーションの夜 《群青の夜》 《黒の夜》 《桃色の夜》

グラデーションの夜 《群青の夜》 《黒の夜》 《桃色の夜》

KAKUTA

アトリエヘリコプター(東京都)

2011/04/13 (水) ~ 2011/05/01 (日)公演終了

満足度★★★★

小説の言葉を誠実に、まごころ込めて立体化。
 短編小説を演劇にする企画です。3週間連続で新作3本を発表する底力は、長年活動を継続している劇団ならではなのでしょう。ゆるやかにつながる3公演のうち、《群青の夜》と《黒の夜》を拝見。《桃色の夜》は残念ながら観られませんでした。

 各短編小説を古書店店主のオリジナルのエピソードでつないでいきます。くるくると頻繁に場面転換するのがスムーズで手堅いです。少なくない出演者が息を合わせて作品を成立させる、その一体感も見どころでした。

 役者さんは登場人物の思いを素直に表現されていましたし、演出も誠実で、物語の進行に安心して身を任せられました。でも、演技が文章を追いかけて説明しているように見えて、退屈することもありました。俳優の身体と感情が言葉よりやや先行する(ように見せる)方が、劇の進行を停滞させないのではないでしょうか。朗読とセリフ、所作とのコンビネーションは、タイミングやバランスが難しいところですね。

 役者さんの中では「ピエロ男」でタイトルロールを演じた若狭勝也さんと、「ネオン」でヤクザ志望の若者、「ささやく鏡」で主人公の幼なじみを演じた尾﨑宇内さんが特に印象に残りました。

 終演後の客席で上演短編を収録した文庫本を販売し、劇場ロビーの物販は、劇団の15周年記念パンフレットや過去公演DVDなどが充実していました。小説と演劇が出会う期間限定イベントの魅力を温かくアピールし、毎週五反田に通いたい気持ちにさせてくれました。

ネタバレBOX

 《群青の夜》では「ネオン」が面白かったです。不穏な空気を地道に積み上げ、最後にストンとがっかりさせる(笑)。壁に映写される写真が最後の種明かしの役割を果たす演出も良かったと思います。「ピエロ男」ではパノラマ写真との組み合わせも楽しかったです。

 《黒の夜》はホラーを3作紹介してくれましたが、最後は漫画家の再生という光を見せて終幕。個人的には救いなしのエンデイングを観てみたかったです。真っ黒なKAKUTAモトム(笑)。
裸の女を持つ男

裸の女を持つ男

クロムモリブデン

シアタートラム(東京都)

2011/04/16 (土) ~ 2011/04/24 (日)公演終了

満足度★★★★

加速、爆走する妄想世界
 独創的な抽象美術に足元からズシンと響くハイテンポな音楽。派手な衣装の登場人物は誰もが油断ならない空気を漂わせ、日常から完全に逸脱した世界が広がります。劇場がつくりだす架空の旅に飛び込む準備は、冒頭から万全に整いました。

 薬物を大量使用した女性が倒れた、とあるモーテルの一室。同室していた小説家は事件をもみ消そうとしますが、闇の世界の何でも屋の詰めの甘さのせいで危険な部外者が侵入。薬物事件を起こした女優が同じモーテルに隠れていたせいで、事態は混乱を極めて行きます。

 ぶっ飛んだ物語とはいえ日本で実際にあった事件をもとにしているので、パロディーとしての親しみやすさがあり、社会風刺にもつながっています。思い切ったブラックユーモア尽くしの展開に、ニヤリとすることしばしば。

 登場人物全員が濃いキャラクターで、達者な役者さんが揃いも揃って百花繚乱の贅沢さ。ただ、画一的な動作やセリフまわしがずっと続くことには少々単調さも感じました。
 役者さんの中では、死体処理をまかせられた不気味な男を演じた森下亮さんがもっとも強烈。動かずじっと立っているだけで狂気を匂い立たせるオーラがありました。

ネタバレBOX

 シートベルトをしめてレバーを引いてという車内ならではの動作をすることで、ハンドルと紐しかない小道具で車を堂々と表現。かっこいい!てかすっごい悪者ばかりなのに、全員がシートベルトを真顔で締めるのが可笑しい!(笑)

 どうにもこうにも逃げ場がなくなった人々は、最後に無実の弱者にすべての罪を負わせて責任をなすりつけ、逃亡を図ります。ストーリー的には問題を起こすだけ起こして棚上げし、解決も収束もさせずに放り出したと言えますが、車に乗って暴走するエンディングに興奮。
ネズミ狩り

ネズミ狩り

劇団チャリT企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/03/03 (木) ~ 2011/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

繰り返し再演されて欲しい上質の社会派喜劇
 死刑について、犯罪者・被害者について、そしてそのどれとも無縁ではない私たちについて。批判精神を前面に出しつつ“茶番劇”に仕立てた、笑いの絶えないコメディーでした。繰り返し再演され、できれば色んな地域でツアーが行われて欲しいと思いました。

 盛り込まれたたくさんのテーマはどれも重いものばかり。密室の取調、裁判、死刑、冤罪、犯罪者の更生、犯罪被害者の苦労、貧富・社会的地位の差、顔の美醜、家族内の確執、世代交代、巷の噂、マスコミの暴力・・・。ここまで詰め込んだことに感心するばかりです。それでいて爆笑できる場面もいっぱいあるんですから、作・演出の楢原拓さんの手腕にうなります。

 しっかり作りこまれたそば屋の具象美術は、役者さんの確かな演技のおかげもあって、気持ちのいい臨場感。暗転中の音楽も効果音もいいな~と思ったら、オリジナル(音楽:YODA Kenichi)なんですね。

 終演後のトーク(ゲスト:保坂展人さん)では貴重なお話を伺うことができ、観客からも賛否両方の意見が飛び出しました。劇場で実施されたことが喜ばしい、非常に有意義な双方向の企画だったと思います。

ネタバレBOX

 舞台は刑期を終えた人を雇用するそば屋「南海亭」。ある日、店主がナイフで惨殺された。同時に17歳の少年ノブオも刺殺され、ノブオの母親はその犯人の死刑を求める署名活動をしている。でもそば屋店主の長女で現在その店の女将となったナツキは、死刑には反対だ。なぜなら犯人の少年は親からの虐待を受けており、殺意はなかったと言うし、裁判で彼の弁護人が、店主を殺したのはノブオだと言ったからだ。

 最終的には殺人犯とされていた少年の死刑が確定。季節は夏から冬へと移り変わり、平穏さを取り戻した南海亭では、そば打ち職人のトモゾウとナツキが結婚して子供もできています。真面目に働いていたハジメ(=神戸連続児童殺傷事件の犯人)の姿はありません。

 時代は変わり、古いものは新しいものに否応なしに塗り替えられていきます。でも天井裏の目に見えないネズミの足音が消えることはなく、冬なのに冒頭の夏の場面のセミの声が響き渡る中、終幕。
 駆除してもいなくならない、そもそも姿が見えない「ネズミ」は「犯罪者」でもあるし、彼らを一方的に例外扱いし、迫害する「私たち」でもあるのでしょう。また、たとえ目に見えなくなっても、時が経って人が忘れてしまっても、起こった事実が消えることはありません。さまざまな解釈ができ観客への自問も促す、深い余韻のある幕切れでした。

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