グンナイ 公演情報 万能グローブ ガラパゴスダイナモス「グンナイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「グンナイ」で済ませられない人生
     初日の1ステージ目に伺ったところ、観客のわくわく度がハンパない!10代と思われる若い男女が団体で観に来ていたり、ロビー開場中から観客の熱気にあてられ、客席についてからは300席以上を満席にする劇団力を見せつけられました。「前回はあんな役だった役者さんが、今回はこんな役だ」と見守るような、固定客と劇団との幸せな関係も築かれており、いわゆる“大人気の若手劇団”に久しぶりに触れたように思います。

     舞台は日本から離れたある島の、南国ムードいっぱいのホテルのロビー兼バー。高校野球部の同窓生が数年ぶりに集まり旧交を深めますが、それぞれが抱える問題が徐々にあらわになっていきます。
     今年2月の東京公演同様によく練られたコメディーでしたが、意外にテーマが重くてメッセージ性も強く、終演後しばらく客席にとどまり、受け取った意味を咀嚼しながら余韻を味わいました。

     今までになかった方向性を打ち出したようですね。笑いに特化した作品も良いですが、私としては今作で劇団の将来への期待がますます高まりました。

    ネタバレBOX

     ともに青春時代を過ごしたさわやか高校球児たちも、卒業後は別々の道へ。父の仕事を継ぎ婚約者も得て幸せの絶頂にいる者もあれば、野球賭博で行き詰まり国外逃亡をもくろんでいたり、ホストになって次々と女性客にたかっていたり、新興宗教にはまっていたりする者もあり。

     プロ野球選手だった弟の交通事故死に疑問を抱く姉が、旅行記事ライターとしてホテルに潜入していました。弟は野球部で一緒だった面々と、野球賭博および薬物によるドーピングに手を染めていたのです。薬物は舞台となる島に咲く植物から抽出されたもので、新興宗教団体が販売しているものでした。
     「死」のムードがひっそりと舞台を侵食しますが、深刻なエピソードを大げさに謡いあげることなく、笑いのスパイスを細かく効かせてコメディーの体裁に整える手腕に信用がおけました。

     野球の試合を再現する場面が素晴らしかったです。あの時の輝きは皆の心に刻まれ、いつまでも美しい思い出であり続けるけれど、その後歩んだ日々も消えることはありません。
     グンナイの意味は「Good Night(おやすみなさい)」。つまり目をつぶっていた、あえて気づかない振りをして見逃していた、何かを盲信して思考停止していたということ。その結果、しっぺ返しをくらうことになります。思い出の試合を何度繰り返しても、最後の一球を打たれて負けるのです。

     作者の川口大樹さんがどう考えていたかはわかりませんが、この度の震災および原発事故の下で生きる私たちをあらわしているように受け取りました。

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    2011/06/07 14:45

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