満足度★★★★★
初京劇
生で京劇を観たのは初めてかもしれません。
ネタバレBOX
この子は父親を殺して母親を娶ると預言者に言われてコリントス国を追放された王子オイディプスは、テーバイ国で先王の後継者に推されて王になったものの、テーバイに来たときに揉めて殺した相手が先王で、さらに先王こそが実父であることが分かると、先王の妻を妻にした自分は正に預言通りに父親を殺して母親を娶ったことを知り、疫病の蔓延など国の荒廃の原因は自分にあると悟り、天や民に謝罪するため死よりも重い罰として自らの目を潰し暗闇の中で生きることとしたのでした。
皮肉な悲劇、分かり易く、新作とはいえ初めての京劇には丁度良かったかなと思います。
ほとんど後ろに下がらない驚異の連続バク転、袖の長い衣装による新体操のリボンのような演技、歌舞伎の連獅子のように振り回す髪の毛、もちろん隈取も、京劇の特徴を知ることができました。
胸につけたピンマイクで声を拾うのが正式かどうかは分かりません。音楽も正式にはやはり生なんでしょうね。
字幕のタイミングはちょっと悪かったような気がします。真夏の炭の上を歩くような苦痛みたいな字幕が出ましたが、炭の上を歩いても別に熱くはないし、火のついた炭なら真冬でも熱いし、あれは真夏の砂の上を歩くでしょうと思いました。
満足度★★★★★
面白かった!
流れにすんなり入り込め、壮大なドラマに浸り切ることができました。
ネタバレBOX
若い爆弾魔を追い掛けるうちに、16年前の孤児院保育士殺人事件の真相が明らかになっていくサスペンス・ドラマ。
中国系マフィアや警察内部の闇といった非日常が描かれていましたが、ヤクザ物に見られがちな荒唐無稽さにしらけたりすることもなく、素直に受け入れることができました。
場面転換がスムーズで、ストレスは全くありませんでした。演出面が秀逸でした。
過去の真犯人に関してはちょっと引っ掛けもあって、最後までもしかしたらとヒヤヒヤさせられました。
5時に夢中!のMCをしていた逸見太郎さんも出演されていて、職が得られたようで何よりでした。
満足度★★★★
今と将来
今を生きる類人猿と将来を考える人間みたいな。
ネタバレBOX
隣国にミサイルをぶち込まれ、都市は壊滅、原発もやられた日本。その隣国は日米安保のおかげか、アメリカの攻撃によって即座に壊滅させられたものの、とは言っても放射能濃度が高まり、資産家は海外に逃れ、復興させるだけの資金がなく復興を諦めた日本において、薬を飲んで安楽死するか、薬を打ってゴキブリの遺伝子を組み入れゴキブリになるか、あるいはゴキブリに身体を乗っ取られ、人間としての意思は無くなっても肉体が生き延びるのを良しとするか、選択を迫られるような話。
ゴキブリのように個々の死は無視され常に全体で今だけを生きていれば、人間のように将来を悲観することはありません。でもなぜゴキブリかと思ってしまいます。
虫への変身は『変身』のようでもあり、来未(らいみ)という女性の名前を聞いたときには、未来を言葉遊びでおちょくってくれた『ロープ』を思い出しました。さらには死んだ方が楽と説く新興宗教の話を持ち出すなど、色々な話の寄せ集めのように感じました。
満足度★★★★★
【F:久住小春×プー・ルイ】観劇
バトル強烈!
ネタバレBOX
プロダクションが管理しているマンションに暮らしている25歳(実年齢29歳)の先輩女優と、これからオーディションを受けようとする19歳の大学生で女優の卵がマジ喧嘩する話。
それぞれにトラウマがあって、今一つ身が入らないというか、これまで成果が表れていなかったという二人でした。
今回のオーディションは社長の力もあってどちらかがヒロインに選ばれるということでお互いを意識し、意地悪や嫉妬心などが次第にエスカーレートしていきバトルにまで発展してしまいました。
大量の納豆をぶっかけるのも凄いですが、お好み焼きにかけるようにマヨネーズを体中にぶちまけるのは見た目強烈でした。凶器まで持ち出してのバトルは壮絶でしたが、顔に傷がついても、何があっても女優は次の日には女優の顔に戻るもの的な台詞は素敵でした。
本当の殺人事件になったかとも思いましたが、二人とも無事で何よりでした。ヒロインの両面を描くということで二人とも合格しました。おめでとうですが、とは言ってもその後の活躍が保証されたわけではありません。合格を知ったときの先輩の言葉、また生き延びてしまったはとても印象的でした。
満足度★★★
ホッと安心
そのような日常が大切です。
ネタバレBOX
沙悟浄の話というか、中島敦の話ぃー。
彼のなぜなぜ病は何かのきっかけがあって治りかけ、妻の寝顔を見てホッとして完治したように思えましたが、何がきっかけだったのか良く分かりませんでした。
大事なことでしたから二度言いましたよじゃないですが、難解な言葉で語られるお芝居では大切なメッセージは別な形でどこかでもう一度繰り返してくれるくらいの親切心があってもいいのではないかと思いました。
いずれにせよ、心安らぐ日常が大切で、前頭葉を働かせるのは良いのですが、前頭葉が働き過ぎるのは病気のようです。
ところで、英知をH(え・い・ち)と発音していたのは如何なものかと思いました。平仮名には横棒が無いからえいちと書きますが、発音はえーちに近いんですよね。
全てを病室とストレッチャーで表現した手法はトーキョー・リングの『ワルキューレ』のようでもありました。
満足度★★★★★
実に面白い!
実物のアンドロイドやロボットを見る楽しさ以前に、ストーリーが実に面白かったです。
ネタバレBOX
ロボットが家事を行い、アンドロイドが家族の代用品となっているような時代。日本は落ちぶれ、地方都市に住んでいる三人姉妹にとっては東京も大都会ですが、今やアジアではシンガポールがロボット研究の中心地といったところでしょうか。
亡き父の下で働いていた若いロボット研究者がシンガポールに転勤することが決まり、現在も長女たちが暮らしている父の残した家で送別会が開かれることになり、そこに集まった関係者や三女のアンドロイドがちょっと本音を出したりしたことで様々な人間模様が見え隠れし、過去や現在の秘密が明らかになっていくというストーリー。
アンドロイドはキンチョーのCMに出ているようなタイプで、車椅子に乗っていて、この時代ではまだ歩けないようです。生前の人間と同期しておくことでその人が亡くなった後もその人の代わりを務めることができ、恐らく全く別の人格を組み入れたタイプであれば友人や恋人のような話し相手として機能するのでしょう。
父の一番弟子的存在の穏やかそうな大学教授が実はロリコンで、子どもだった頃の三女にちょっとキスをして、それが三女が引きこもりになった遠因だったのではないかと責められた辺りからの教授の変貌振りは見応えがありました。
死んだとされていた三女が生きていたことや、教授が父の特許をいいように利用して、それを手土産に外資企業へ転身する目論見が明らかにされるなどサスペンス的要素もあり、実に面白かったです。
チェーホフ版では三人姉妹に兄がいて、頼りないなりにも兄が家長としての立場を継承しているという前提がありましたが、アンドロイド版では弟になっていて、線の細い弟を長女たちが守るという感じで、三人の姉妹の立ち位置が根本的に異なっていました。長女が高校教師をしていたり、町に火事があったことが描かれていたりしても全く別物であり、比較はできないと思いました。
人間は年を経る毎に考え方が変わるように、アンドロイドも年々思考経験を積むことで思考回路が成長します。そして、人間の最新情報を同期させれば同じになるのでしょうが、それを怠ると微妙に考え方が異なっていくのが興味深いところでした。
満足度★★★★
【Bチーム】観劇
深華さんは国分佐智子さんに似てらっしゃいました。
ネタバレBOX
女子寮の明日華の部屋に闖入してきた家族に恵まれなかった人たちが団欒を体験して大団円という話。ブリキの卓袱台とは、子供の頃10歳の弟からもらってドールハウスに飾っていたおもちゃの卓袱台のことでした。
ここまで書くといい話のようですが、電気屋は変態、管理人は勝手に部屋に入り込む下心ありありのつきまといストーカーで、全体に下品でした。弟にしたって目付きが変だし、あれじゃ下着泥棒かストーカーです。
そんな中、明日華役の深華さんは可憐、警官役の柴小聖さんは細くて可愛かったです。下品が感染らなければと切に願います。
後半、ヤクザの兄貴が喋りだした頃から急に説教臭くなり、古臭い人情コメディの様相を呈しました。ご飯を食べる団欒シーンも、一緒にテーブルを囲んだら家族だなんて、ちょっと白々しかったです。
おもちゃ会社の女子寮に正社員じゃ無い派遣社員の社員が住んでいるのは謎でした。
満足度★★★★
火星放浪記
エリーさんは有森也実さんに似てらっしゃいました。
ネタバレBOX
火星からの中継が嘘という内部告発発言は音声が途切れたりする手法でごまかせましたが、最終的にはハーレーダビッドソンのツーリングが映り込んだことでバレてしまいました。しかし、先ずは話題になったことで政府からの追求を免れ、次に検証番組でもう一度盛り上げ、さらにこれからも毎年追跡検証番組を作ることで移住喚起を図るという移民局のしたたかさはお見事でした。
移民局が最初に打ち上げたロケットは不備があって飛行士を降ろしてとりあえず飛ばすだけ飛ばして失敗したということでしたが、その後のロケットで移住希望者は火星に行っているわけですから、火星における何がしかの日常生活の情報が例えばドットマルスのドメインを持つ移住者からインターネットを通して地球の人にあまねく届いていても良さそうなものなのに、その気配が全く感じられなかったのは腑に落ちませんでした。もし政府が火星からの情報発信を統制しているとしたら、その事自体が移住を躊躇させる要因になり、宣伝番組を作る以前の問題のように思えます。
この番組に携わっていた人たちは皆ストレスを抱えていました。その中でも目一杯働いて休日を南の島で過ごすのが生き甲斐の女性が、本件の騒動で南の島に左遷させられることになった途端、秘密を守ることで溜まっていたストレスが一気に無くなり、南の島へ行く必要が無くなったというオチは素晴らしかったです。
満足度★★★★
とても幻想的
夢か現か。
ネタバレBOX
基本韓国語上演。字幕が読みづらく、意味はあまり分からずに観ました。
座ったまま歩くような歩き方は能の様式を取り入れたような感じ、ラーメンの匂いは夜9時の脳には刺激的でした。
大家さんがいたり、医者がいたり、実際にラーメンを作ってみんなで食べたりするのですから、最初老婆は現実の人で、時々妄想の世界に陥りながら若い頃を懐かしがっているのかと思っていましたが、ラストで洋服を着てスーツケースを引きながらこれから旅行に行ってきます的な様子を見ると、やはり時空を超えて次の時代に移動するような存在なのかなと直感しました。
背中に黒っぽい薄い布が貼ってあったのは妄想の世界の人たちなのでしょか。貼っていない人は現実の人なのでしょうか。そうだとすると、運動会は現実で、若い頃の人たちは妄想の世界の人であることは当然として、大家さんや医者も妄想の世界の人ということになってしまいます。
全ては幻想の世界の妄想、小町ちゃんはチョコっと今の現実で運動会で騎馬戦をしたりして楽しんだのでしょうか。
満足度★★★★★
ブラボー!!
楽曲が素晴らしく、客演のミュージカル俳優が素晴らしく、笑って泣けて、前向きな最高のミュージカルでした。
ネタバレBOX
中学でミュージカルに目覚め、今もプロとしてステージに立つことを夢見ている現在35歳ぐらいの久保園チエの半生記というと大袈裟ですがやはり半生記。
バイトとバックレに明け暮れているってどんなものかと思っていましたが、バイトは生きるため、バックレは様々な事情でうっとうしくなり自分からバックレることもあれば、相手が去っていくこともあります。多少の迷惑は掛けるかもしれませんが、新しい生活環境と新しい人間関係の構築は精神衛生上必要なことです。彼女はきちんとした目標を持ち続けていて、決してブレてはいませんでした。
そしてラスト、縫製工場で働きながら最近の5年程シンガーとして歌っていたライブハウスDOORSを堂々と宣言してのバックレ。エッと驚きましたが、大物歌手のバックコーラス兼バックダンサーの20ヶ月の契約が決まったのでした。初めてステージだけの収入で飯が食えるプロになれました。とりあえず20ヶ月、この先も厳しい現実は続きますが彼女は前向きに生きています。
ドブさらいしながら役者をする、収入のある方が職業だという商業演劇の演出家の言葉は強烈でした。役者を名乗っている人の大半は役者では無いことになりますが、それが現実なのでしょう。その一方、ブロードウェイで賞を取る前に亡くなった脚本家の妹さんの受賞時の言葉として、多くの人が今は厨房で働き、床を磨いているかもしれないが、そうした努力を経て兄のようにメジャーになっていくという台詞もあり泣けました。
本作品は成功と挫折の二極を示しながらも、温かく前向きなところが素晴らしい点です。
一手間を掛けるという言葉も印象に残りました。松竹衣装から紋付袴を借りる一手間を惜しまない芝居作りが大切と説いた扉座は生き残り、一手間を省くと言った劇中の劇団唯我独尊は主宰が金を持ち逃げしてポシャりました。ミュージカル俳優を客演に呼ぶ一手間も大事なことでした。
満足度★★★★
いきものがかり
ネット社会の功罪を織り交ぜながらの話でしたが、あっち方面の話でもありました。
ネタバレBOX
大学の同じ学年、同じサークルに一色健治という同姓同名がいたら、誰だってその時点でお互いの存在に気付きます。誰が俺の名を騙ってインターネットにアップしているんだと怒るのならともかく、今頃になって同姓同名がいるなどと驚くのは辻褄が合わず、全くもって腑に落ちませんでした。
それでも、微妙に違う経歴の謎が解明されると、そこには辛い過去があったことが明らかになりました。同僚の広瀬が好きなのは実は一色だったということに気付いていたらまた別の展開になっていたでしょうにと悔やまれ、そしてそれはそれで困ったことにもなりますが。
冒頭部分の彼女は小説の中の存在でしたが、あとは幽霊としての存在でした。結局は幽霊物、そして一番嫌いな幽霊の言葉を復唱して伝える者がいるという、この場合はキジムナーという妖怪もしくは妖精でしたが、心情を伝える工夫のかけらもない一番安直な方法が取られていてがっかりしました。
生きている人の記憶から消えたときに人は消滅するという考え方が幽霊にも当てはまるという説は面白く聞きました。
結婚詐欺師になった広瀬に引っ掛かった女性が自ら風俗で働いて貢ぎ、最後まで詐欺師と気付かないなどという描き方も女性蔑視的で嫌いでした。
ただ、ゆずに憧れて始めたフォークデュオ「骨なしチキン」にこの女性がファン第一号となってついて回り、見た目いきものがかりのようになったのには笑ってしまいました。
それにしても、いったんネットに流出したら二度と消せない過去となる一方で、逆にネットをコントロールして就職に有利なように自分を良く見せることもできるというのは、どちらも怖い話でした。
満足度★★★★
中国人らしく、韓国人らしく
日本語学校の雰囲気が出ていました。
ネタバレBOX
今は日本語学校の先生をしている元小学校教諭の女性が、13年前に児童を体罰で死なせたとされる事件の真相やその背景が明らかになる話。
日本語学校でお世話になった先生のために蒸し返された事件の真相を探ろうとしたチャンですが、子供が生まれるのを前にして、彼自身の育った家庭環境から父子関係に自信の持てないこともあって調査を通じて親子関係について学んでいく話でもありました。
10月に水泳の練習を強要して死なせたと裁判では認定されましたが、新たに調査していくと、少年が自ら要望書を書いて練習したんだとか、その書面は他の先生による捏造だったとか紆余曲折があって、最終的には少年がいじめ側にいじめの辛さを味合わせるために生贄と呼ばれるいじめの対象を交代させる制度を作って運営していたものの破綻し、最後の生贄として先生を選んだ上で母親の狭心症の薬を大量摂取して自殺したことが明らかになりました。
当時もマスコミで取り上げられていた事件という割にはおざなりな裁判でした。
仲間外れを作り手を差し伸べる人たらし方式で自分が常に優位に立つ制度は一巡するとダメになってしまうものなのか、少し不思議でした。
そもそも13年前の事件をほじくり返したのが上級クラスに昇級できなかった韓国人女性の逆恨みによるものだったことも明らかになりましたが、バイトに明け暮れていた本人のせいであったとしても本人にとっては切実な問題で、そんな他人から見ると何でもないようなことが引鉄になるという意外性には衝撃を受けました。
ただ、少年が実は元教諭が産んだ子供だったという事実には、衝撃を通り越して何でもありかと思ってしまいました。
満足度★★★
フンに学べば良い
オリジナルではやはり古いのかなあと思います。
ネタバレBOX
1975年の作品。ブンとフン自体は1969年のラジオ放送に続き、1970年に小説化されたということですから、その頃の世相や世界情勢が反映されているのでしょう。
自首したブンたちを収容する刑務所の暮らし振りが快適なため、貧しい庶民の多くが事件を起こして刑務所に入ろうとするモラルハザードが起きてしまいました。ワーキングプアや少額の年金暮らしよりも生活保護の方が恵まれている現代にも通じるものがあります。
ソ連と韓国は独裁国家で、翻訳するときに小説の内容を都合良く変えてしまうことから、多くのフンは一枚岩ではありませんでした。因みにソ連はブレジネフ、韓国は朴正熙の時代です。
そして、ソ連や韓国のブンの攻撃からオリジナルブンを助けるために、フンが牢屋の壁に自らの血で新しいブンの小説を書き始めたところで終演となりました。
新妻聖子さんの、仰向けになって顔をこちらに向けて、それでいて声量のある歌声には驚かされました。
言葉遊び的な歌は面白くありませんでした。
歴史的なものならいざ知らず、フンがオリジナルブンを生かすために新しい本を書き始めたように、井上ひさしさんの今を扱った戯曲を活かすにはオリジナルそのものではなく、新しい脚色が必要なのではないかと痛感しました。
満足度★★★★
60分一本勝負、第一戦、第二戦
形式は面白いと思いましたが、気持ちはあまり伝わって来ませんでした。
ネタバレBOX
広いスタジオ、まるで白井選手が出てきて床運動でもするかのような白い床。そこに男と女が登場し、初めの約一時間は男が攻撃、児童合唱団がコンクールの練習しなきゃと言いながら入ってきて一曲歌って次の約一時間は女が逆襲するという形式でした。男が女を呼び出した場所は見た通りの公共施設のスタジオだったわけです。
攻撃側は下手奥、攻撃される側は上手手前に位置し、攻撃側が斜めの動線上を相手に近づいたり離れたりしながらぶっ続けで喋り倒すという方式でバトルは行われました。
一時間喋り倒す役者さんは本当に素晴らしいと思います。
バトルの内容は男女の別れ話で、恐らく売れ出した役者が売れなかった時代に世話になった女が邪魔になったといったところだろうと推察します。
バトルは男が女に飽きて別れようと切り出したところからスタートしましたが、飽きた理由を一時間もあげつらうことは所詮無理な話です。女の逆襲のラスト近くでようやくアツアツだった頃の生々しい性描写が語られ、二人の関係の具体的な一面が見えましたが、大半は抽象的な内容で二人の生活振りや日常は見えて来ませんでした。
ただ、想像力ってせいぜいこうあったらいいなあと思う程度のことという女の言葉は強く印象に残りました。もしも僕がイラク人だったらと思ってイラク人のことを想像してみてもせいぜい自分の経験を踏まえた弟像を想像する程度のものであり、科学者が宇宙に棲む生物を想像してみても地球上の生物に良く似たものしか想像できないのと同じで、凡人の想像力には限界があります。
別れる二人がフィナーレで手を繋ぐのは違和感を覚えました。
満足度★★★
光井愛佳さん
お元気そうで何よりでした。
ネタバレBOX
モー娘。に入った頃の光井愛佳さんはおばちゃん風のクシャ顔でしたが、今ではトリンドル玲奈さん風のクシャ顔になっていて可愛い感じがしました。彼女は骨が弱いと聞いていたので骨折しないかと心配しましたが、ダンスも無事にこなし本当に良かったです。
今回はリゾート開発真っ盛りの1988年当時の話。
身近にいると麻痺してしまう…、池綿島のサンゴ礁も、同僚も、見慣れているとその素晴らしさに気が付かなくなってしまうものですね。
プロポーズの言葉として、味噌汁を作ってくださいはダメ、毎朝味噌汁を作ってくださいが正解、友情溢れる素晴らしいアドバイスでした。
満足度★★★★★
適材適所
捨てる神あれば拾う神あり
ネタバレBOX
バーの常連で便利なセカンドガールを自称する女性たちの間で何となく自然発生した女子会でしたが、お互い本音では気に入らないところがあったり、やはり仲間に寝取られたりするのは我慢ならないものです。イケメンらの男性客も混じえて楽しいはずの女子会が相手をなじったりすることで険悪になり、その場の雰囲気が、バイトで働く吉郎の大好きだった父親が愛人の存在を巡って祖母や母親や小姑から陰口を叩かれていた幼少期の家族構成や家庭環境と同じようになったとき、突然吉郎はワカコに豹変し、イケメンを刺し、女性たちの中から一人殺される者を選べと命令するなど思わぬ展開へと発展する多重人格者の話でした。
実はサイコスリラーだったという大きなオチでしたが、女子会部分だけでも見応えがありました。リカのローラ風お喋りはとても可愛くて良かったです。
頭が大きいのか身体が小さいのか、バランスの悪い先輩でしたが、適材適所、色んな役者さんがいてお芝居は成立するのだと改めて感心しました。
そんな先輩ををかばったイケメンが女子に文句を言ったとき、いったんギャフンとなったはずなのに、それどういう意味ですかぁーと白目を大目に見せながら斜めから睨み返すセツコの逆襲の様子に、それそれ、そんな女子がいて、いったんわだかまりができるとその後ずーっとそんな目で見られてしまうんだよねと背筋が凍る思いでした。
時々シャーッという雑音が流れ、吉郎の心の中に何かが起こりつつあるということを暗示していました。このことは後半の展開のために必要だったと思いますが、あくまでも楽しい女子会として始まるべきです、冒頭のフミエと吉郎が闇の中で見つめ合うシーンは変な雑念を植え付けてしまう観点から不要だと思いました。
余談ですが、地デジ化が進み、シャーッという音が一瞬空白になった状態を示す表現だということをいつまで理解できるのかと思ってしまいます。
フミエにワカコらしき誰かが感染ったような終わり方はドキッとさせられ素敵でした。
満足度★★★★
体を張った割には
なるほど11でした。
ネタバレBOX
女の子の話、女の子の日の話、不妊治療を受けている女性の話、そして妹を出産したときに母親を亡くした男性とその恋人の話。登場人物は女性10人と男性1人、合わせてあんかけフラミンゴ11(イレブン)という訳なのでしょう。
子供がほしくて何にでもすがる女性がいて、そんな心情につけ込んで金儲けする女性がいる、でもってその女性もまた子供をほしがっている、複雑な心理状況が良く描かれていました。
男性は母親を死なせた妹を憎み殺害、それでいてロリコン。恋人に対しては、女の子が生まれることを極端に恐れ、妊娠を恐れ、セックスそのものを拒絶していました。
男性は全裸になったり、恋人役も下着姿になったり、妊娠を企てた恋人が精子を入手する手段を実行したり、女の子の日を強調するシーンなどもあったりと体を張った演技が多数見られましたが、さほどドキドキ感はありませんでした。
LINEに集まる女性は切実な者、利用する者、揶揄する者などがいて複雑で良かったのですが、男性に関わるシーンは彼の精神状態が終始変わらないため、結局はチック的愛情表現など同じことの繰り返しばかりになりとても退屈でした。
満足度★★★★
キウ ヴィ エスタス?
1980年初演の作品。
ある一部分に結構思い切って突っ込んだ意欲作だと思いました。
ネタバレBOX
イーハトーボとはあまり聞き慣れないと思っていましたが、名詞の語尾に「o」が付く言語、宮沢賢治が日本の農民と世界の農民が語り合うための言葉として推奨したエスペラント語的発音でした。
前半は浄土真宗と日蓮宗の奥深い教義の話とまでは至っていませんでしたが、ある程度の教義を巡る論争、後半は日蓮の性格をどう捉えるかで起こった宮沢賢治のでくのぼう的考え方と満州進出を企てる石原莞爾らの声高派の対立の話で、宗教を題材に取り上げた少ししつこいマニアックで意欲的な作品でした。
あまり宗教に拘ると面白くなくなるかもしれないので、世の中は稀なことと良くあることで満ちていると捉えたり、田舎を捨てて独立しようとした人間が見世物の興行主に拾われてしか生きる術がないとか、ちょっと危ない兄妹の関係、未練を残して死んだ人々の思いなどの話も混じえましたという感じでした。
キウ ヴィ エスタス?、エスペラント語であなたは何者ですかの答は、私は子供ですでした。
親よりも優位に立とうと宗旨変えを勧めたり、金融や商社的労働ではなく額に汗する労働の大切さを主張したりしたものの、農民にもなれず、結局は親掛かりで終わった賢治のでくのぼう振りを描いた話でした。
満足度★★★
個の話なのだけど
進行の仕方はとても新鮮でした。
ネタバレBOX
恋人を交通事故で亡くした青年、陸上800m走で転んでしまった女子高生、登山中の事故で車椅子生活になった大学生、借金が返しきれず荒っぽい取り立て屋に追われるサラリーマンなど、人生で傷ついた人たちがもう一度立ち直る話。
複数の人物が登場し、それぞれが独白する形で進行。例えば舞台に二人いたとして、脈略上は二人は全く関係無いのですが、共通する単語が出てきたり、面と向かって交互にしゃべったりするので、まるで二人が会話をしているような錯覚に陥ってしまいます。
青年は恋人の死を受け入れ、女子高生は今後も走り続ける決心をし、大学生は相棒の車椅子にエベレストと名付け、サラリーマンは歌手を目指し、それぞれは立ち直りました。
形式はとても新鮮でしたが、内容的には奥行きのない陳腐なものでした。また、亡くなった恋人、女子高生が憧れた先輩、ニセ毒薬の売人なども登場しましたがかえって邪魔で、四人だけの方が想像力が働いてもっと良くなったのではないかと思いました。
満足度★★★
薄暗い青
良く分かりませんでした。
ネタバレBOX
いきなりの、子供の頃幽霊が見えました発言で、がっかりしました。一番嫌いなパターンです。見えないものが見えたら病気で、見えないものを見えたと言うのは嘘つきです。
こんな三姉妹の、あるいは一人の女性の様々な面のようにも感じられましたが、回想や思いのままをメルヘンチックに語り、女装趣味の男性がチャチャを入れるお話かと思っていたら、その後の流れからどうもこの男性がメインのようでした。
この男性はイジメに遭って自殺でもした人だったのでしょうか、それとも自殺までは行かずとも引きこもりでもしているのでしょうか、可哀想な境遇のようでいて、ズケズケ物を言っていました。立ち位置が分かりませんでした。
少なくとも尻取りを聞かされても嬉しくも何ともありませんでした。
青いユートピア、薄暗い青さは陰気ですね。
音楽担当の北村さんは、ひみつのアッコちゃんの秘密を探る女の子のような雰囲気のある不思議なキャラクターでした。