曲がれ!スプーン
ヨーロッパ企画
紀伊國屋ホール(東京都)
2009/12/10 (木) ~ 2009/12/22 (火)公演終了
満足度★★★★★
ずっとニコニコ観てられるってシアワセ
こんなに終始安心しきって、客席に身を委ねて笑顔で観ていられる舞台は久しぶりでした。
言葉で説明するには、かなり他愛ない取り留めのない内容なのに、こんなに面白い芝居に仕上げてしまえる、ヨーロッパ企画って、スゴイ!
それに、皆、まるで、アドリブかのような、自然な会話をしているのに、全員の台詞がきちんと聞き取れるなんて!
これって、かなり高等技術な気がするのに、そんなところを微塵も感じさせない自然体がまたスゴイ!
これでエンディングかと思いきや、もう1シーンあって、その最後の台詞が気がきいている。最後をきちっと納得させられて、スキッとした気持ちで席を立てたのも久々でした。
二ール・サイモンの芝居のような、心地良いエンディング。
観客の理解力を信頼した脚本にも、大変好感が持てました。
こういう、作者のご都合主義が全く露見しない舞台は、大歓迎。すっかり、ヨーロッパ企画の信奉者になってしまいそうです。
東京月光魔曲
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2009/12/15 (火) ~ 2010/01/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
ケラ流耽美主義的サスペンスコメデイ
かなり登場人物が多いし、正直あまり期待してはいなかったのですが、すっかり、ケラさんの策にはまった感がありました。
相変わらず、長いし、中盤になるまで、入り組んだ人物関係がジグソーパズルのように、なかなか一つの形を成さないにも関わらず、全く厭きることがありませんでした。
谷崎や永井荷風や、江戸川乱歩的、耽美的なエログロに傾斜し過ぎることなく、折々にうまく笑いを散りばめ、たくさんの出演者の持ち味を思う存分発揮させる、脚本の巧みさは、現代の戯作者の第一人者だと、ケラさんの才気に感嘆しつつ、終幕まで、一瞬も舞台から気持ちが離れることがありませんでした。
山崎一さんの出る舞台に外れなしの、私のジンクスは今度も破られませんでした。
映像畑の役者陣も、全員、素晴らしく、本当に、予想外の好舞台でした。
勘三郎さん、次は是非ケラさんに、歌舞伎台本依頼してはと思ってしまいました。
もしかしたら、二度見たら、どこかに辻褄の合わない箇所もありそうにも思うけれど、一度の観劇では、すっかり、ケラさんの妖術に操られて、完全に魅了されっぱなしでした。
渋々
親族代表
新宿シアターモリエール(東京都)
2009/12/12 (土) ~ 2009/12/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
芸達者揃いのコントは楽しい
ずっと気になっていた親族代表、やっと観られました。
最初から、楽しくて、コントって、やっぱり芸達者な役者さんがやるとこんなにも愉快なんだと、幸せ気分。
観終わるまで、作者がわからないのもおつな演出でした。
池田鉄洋さんの作品はイマイチでしたが、後はどれも面白かった!
ケラさんの作品は、途中から変化球になるところがさすが。
川尻恵太さんの作品はどれも好きでした。
「息子」は、他の芸人さんとかだったら、笑えない気もしましたが、あの3人だと、絶妙な掛け合いで、文句なく受けてしまいました。一番笑ったのは「kusakari」、下らないのにこんなに可笑しいなんて!
一番のお気に入りは、「We Are The World]。コントなのに、ノスタルジックで、ちょっとほろっとしそうになりました。衣装を変えるわけでもないのに、瞬時にいろいろな役に替わる3人の役者さんの演技力に、衣装までが変わって見える程で、親族代表の力量が感じられ、一度でファンになりました。
最後の演目は、その前の「We Are~」が良かっただけに、ちょっと冗長気味な気がしました。カーテンコールにもう少し早く転じた方がよかったかも。
親族代表に、10年も、出会わずにいたことが悔やまれます。
西から昇る太陽のように
タテヨコ企画
吉祥寺シアター(東京都)
2009/12/10 (木) ~ 2009/12/13 (日)公演終了
満足度★★
登場人物が多すぎでは?
タテヨコ企画初見でした。
始まりから、良くも悪くも、青年団テイスト。
セットもいいし、役者さん達も、自然体で、好演されてはいるものの、如何せん登場人物が多すぎる気がしました。
その上、登場しない人物名まで、会話に頻繁に出てくるため、人物関係の整理に、頭が忙しくなりました。
それに、多くのキャストを一場で描くため、どうしても、人間の自然な行動と矛盾するリアクションがあったり、キャストの出はけに、作者の無茶振りを感じたりしてしまい、芝居の世界にどっぷり浸かることができず、残念でした。
相変わらず、巧い椿さん、ミュージカル畑からの参加で違和感を感じさせなかった、阿部よしつぐさんの、役者としての進化が嬉しく感じました。
jam 【活動休止公演】
グリング
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2009/12/09 (水) ~ 2009/12/23 (水)公演終了
満足度★★★
舞台設置と作品が合わなかったかも
よく蜷川芝居で観るような、真ん中の舞台を客席が挟む形の舞台で、始まる前はワクワクしたのですが、始まってみると、やや内容にそぐわない舞台構造だという気がしました。
群像劇なので、観客がどこに視点を定めればいいかに苦慮して、物語に集中できないきらいがありました。
途中まで、登場人物の紹介的シーンがやや冗長だし、これは、再演とのことなので、たぶん、青木さんは、この何年かで劇作家として、かなり腕を上げられたのだろうなと思いながら、観ていました。
でも、前2作と違って、心が重くなる内容ではなかったので、私の観たグリング作品では、これが一番好みかもしれません。
暗く神経質な役しか存じ上げなかった、中野さんが、静かな好人物を好演されていて、素敵でした。
シェルブールの雨傘
東宝
日生劇場(東京都)
2009/12/05 (土) ~ 2009/12/28 (月)公演終了
満足度★★★★
おしゃれなダンス付き動く絵本のようでした
幼少時何度か観た映画は、勝手な女性だなあという印象でしたが、この年齢になって観ると、違う感慨がありました。
起伏に富まない物語を、よくぞここまで、おしゃれで、情感豊かな舞台に仕上げられたと感心しました。
謝さんの、宝塚テイストな粋な振り付けのダンス、クルクル動くセットと映像を」見るような美しい照明が、とにかくハイセンスでした。
歌詞に、「おふくろさん」を想起させる部分があり、一人受けてしまいましたが、とにかく謝さんの演出が小粋で、全体としては、心豊かな観劇ができて、満足でした。
ただ一つ、指揮者の拍手強要は、雰囲気をそぐので、やめてほしいですが。
東京のSM
今夜はシンクロ
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2009/12/02 (水) ~ 2009/12/06 (日)公演終了
何を見せたいのだろう?
何もかも中途半端な印象でした。
本谷有希子程、突き抜けてもいないし、ブラックユーモアに徹するのとも違うし、人間の性をデフォルメ仕切れてもいなくて、かと言って、一部コアなファン向きサービスに徹している風でもなさそう。
どこにでもこういう人いるねとか、あー、こういうケースありそうとか、少しでも、共感できる何かを求めて観ていたけれど、不発に終わり、笑い倒せる程のインパクトもないので、結局この芝居で何を見せたいのか、制作側の目論見が図りかねる舞台でした。
狭い空間を三箇所に分けて見せる工夫と、BGM のセンスには、感心しました。
それに、生理的に不愉快になる演技をする役者さんが皆無だったのも、ありがたかったです。
お名前はわかりませんが、二面性をうまく演じられた役者さんの演技、なかなか秀逸でした。
フロスト/ニクソン
シーエイティプロデュース
天王洲 銀河劇場(東京都)
2009/11/18 (水) ~ 2009/12/05 (土)公演終了
満足度★★★★
ニクソンが好きになってしまいそう
いろいろ、改善点はある舞台でしたが、とにかく北大路さんが、最高で、全ての難点を払拭する舞台でした。
スズカツさん演出は、絶対小劇場向きで、中劇場、大劇場には不向きな演出家だと今回も違和感を感じました。
役者はこうあるべきのお手本のような北大路さんの演技力に、見合う共演者が少なかったのが残念でしたが、ニクソンの首席補佐官役の谷田歩さんは、今後楽しみな俳優さんだなと印象に残りました。
インタビュー収録シーンに入るまでがやや冗長で、退屈しました。
最後の場面は気が利いて、私としては、好きな終わり方でした。
大嫌いなニクソンに好感を抱いてしまったのは、ひとえに北大路さんの功績によるところ大です。
見えざるモノの生き残り
イキウメ
紀伊國屋ホール(東京都)
2009/12/02 (水) ~ 2009/12/07 (月)公演終了
満足度★★★
イキウメファンとしては
やや残念な仕上がりだった気がします。
いつも、目立たない役の多い森下さんが、今回は重要な役どころで、いい味を出されていたし、若い窪田さんが、とても好演されていて、先々楽しみになりましたが、イキウメらしからぬ、緊張感が足りない舞台に、ちょっと不満が残りました。板垣さんの台詞が聞き取りにくいのも、舞台への集中への邪魔をしました。
でも、相変わらず、前川さんの作り出す世界感は素敵だし、伊勢さんが、益々魅力的な女優さんになって、イキウメには欠かせない存在になられたなあと感じ入りました。
「狭き門より~」の時も好演されていた有川さんが、今回も自然な演技で、感動を与えて下さいました。また、イキウメの舞台で、拝見したい役者さんです。
最後の種明かしシーンは、ちょっと蛇足な気がしました。もし、あのシーンを見せるなら、もう少し前にしてもよかったかなと、ややスッキリしない感じがしました。あくまで、個人的好みとして、最後は、座敷童子達が、じゃあね、又みたいな、ほっこり余韻の残る終わり方で行ってほしかったもので。
モスラを待って
あうるすぽっと
あうるすぽっと(東京都)
2009/11/27 (金) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
アタシ帰ります
劇中、エキストラ役者が連発するこの台詞を何度叫んで退場したかったことか!
たぶん、後1ヶ月あるけれど、私の今年度ワースト1舞台だろうと予測できます。
せっかく、キラ星のように気のきいた台詞を散りばめながら、これでもかという蛇足台詞の追い討ちで、作者自らそれを台無しにしてしまう稚拙な脚本に、心底がっかりしました。
これが、初演で文化庁の芸術祭優秀賞を受賞したなんて!私には、その審査基準が理解できません。
こんな場所でそんな会話しないでしょうという、あまりにもリアリティのない情況設定にも辟易。
上質なハートウオーミングコメディになりそうな要素をたくさん持っているのに、人物造型の甘さが全てをぶち壊し。1秒も感情移入できない舞台に唖然でした。
昨年の賞を総なめにした「焼肉ドラゴン」を見逃したので、この作家の作品を非常に楽しみにしていたのに、期待を踏みにじられた思いです。
ただ、舞台セットはとても洒落ていたし、使い走りのスタッフ役の役者さんがとても、好演されていたので、それで、救われた気がします。
最後の、父親からの電話内容が私の予想的中で、一度だけ苦笑はしましたが、他の観客のように、笑い声を立てるなんて、あり得ない状況でした。
本当に、残念無念!
ハシムラ東郷
燐光群
座・高円寺1(東京都)
2009/11/20 (金) ~ 2009/11/30 (月)公演終了
満足度★
情報台詞の多さに疲れました
坂手さんの作品と燐光群のファンでしたが、最近の坂手さんの作風には、ちょっと違和感を感じています。
情報台詞があまりにも多すぎて、頭が付いて行けませんでした。
役者さんも、演じるというより、坂手さんが書いた資料的な、膨大にして、早口の語りを、自分の中で消化できずにいる様子が見えて、お気の毒な気がしました。
そもそも、あまり一般に知られていない題材を取り上げているのだから、もっと観客に親切な作劇にすべきだと感じました。
久しぶりに、途中退席する観客を何人か目撃しました。
「屋根裏」や、「だるまさんがころんだ」等、斬新な燐光群舞台が大好きだっただけに、最近の坂手さんの作風や劇作家としての姿勢に、少なからず悲嘆にくれています。
シャーロット・ギルマンと娘の会話には、ちょっと心を動かされはしましたが…。
どんなに主義主張に優れた戯曲でも、読み物ではなく、観客に支えられている演劇である以上、もう少し、観客に寄り添った作劇を心がけて頂けたらと思いました。
アフタートーク付きなら、そのあたりのフォローになったのでしょうけれど。
大人の時間
演劇企画集団THE・ガジラ
吉祥寺シアター(東京都)
2009/11/19 (木) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
さすが鐘下さん、脱帽です
映像を使用した幕開けに、鐘下さんらしからぬと当惑気味に見始めましたが、どんどん舞台に引き込まれ、あー、やっぱり、鐘下さんは凄い作家だと、感心、驚嘆しつつ、見終えました。
こんな難しい題材を、絵空事にしない筆力と観察眼に、圧倒されっぱなしでした。心の闇が原因で、事件を起こしてしまう、人間のトラウマや幼児体験なども、かなり研究され、それを自分の作品に見事昇華させていて、こういう系統の作家の中で、一番実力があるのではと思いました。
風間さんも、素晴らしい作品に出会うと、実力をいかんなく発揮して下さるので、内容は心を抉るのに、どこかで、喝采してしまう、観劇の醍醐味を味わえる稀有な舞台でした。
「大人の時間」という、タイトルながら、結局は、子供じみた男達ばかり。最後のシーンに、「原始、女性は太陽だった」という言葉を思い出したりしました。いつもは、あまり好きな演技をなさる印象のなかった梅沢さんの好演に、涙腺が緩んでしまう自分がいて、驚きました。
それにしても、内容以上に、こんなところでよく笑えると思える観客の理解しがたい反応に、ぞっとしてしまいました。
こういう人が、子育てをすると、こういう世界にどんどんなって行くような気がして…。役場の流すアナウンス同様、非常に怖い思いになりました。
海に浮かぶメトロポリス
とくお組
新宿シアターモリエール(東京都)
2009/11/18 (水) ~ 2009/11/23 (月)公演終了
満足度★
冒頭シーンのごった煮鍋風芝居
とくお組初体験でした。
テレビ視聴者にも知名度の高い人気劇団のエッセンスを混ぜこぜにブレンドして、結局、素材の味がわからず仕舞いの鍋料理を食べた気分でした。
劇団のコアな固定ファンがいるようでしたが、それが、余計、私の中に部外者意識を強めた気がします。
アンケートの、「よく見る劇団を教えて」欄に例示されていた人気劇団の二番煎じどころか、五番煎じぐらいの印象でした。
でも、気になる役者さんは何人かいて、特に、柴田さんがどこかに客演される時は是非観に行きたいと思いました。
青春事情の本折さんも、素敵な演技をされていたので、今度は、青春事情さんの公演を観たくなりました。
いつも思いますが、脚本・演出の方が主要な役で出演もされる舞台、一部例外を除いて、あまり成功作に出会った経験がありません。
とくおさんご自身の登場がもう少し少ない方が、よい舞台になった気がしてしまいました。
ヘンリー六世 第三部 薔薇戦争
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2009/10/29 (木) ~ 2009/11/23 (月)公演終了
満足度★★★
演出に遊びがあり過ぎたかも
さすがに、3部通しはきついので、3部だけ、今日観たのですが、何だか、1部2部より、舞台に重厚さがないように感じました。
立ち回りが、歌舞伎風だったり、戦いのやり取りがコメディぽかったり、BGMが、現代の曲だったり…
同じ雰囲気が続くと、役者も観客も厭きるからという、鵜山さんの計算なのかな?とも思い、それはそれで、創意工夫に感心はしたのですが、1部2部の空気感で通してほしかった気もしました。
ソニンさん、ジャンヌダルクより、王子エドワードの方が、魅力的でした。
3部では、中嶋朋子さん、岡本健一さん、ソニンさんの好演が印象的でした。岡本さんで、「リチャード3世」、観てみたい気がします。
3部だけ、浦井さんの台詞が聞き取りにくかったのが、残念。
東京裁判
パラドックス定数
pit北/区域(東京都)
2009/11/13 (金) ~ 2009/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
リアルな気迫に気圧されました
長年、ありとあらゆる芝居を観て来ましたが、劇場も、作劇も、私には、初体験の実にリアリティある舞台で、何だかカルチャーショックでした。
野木さんて、平成の秋元松代? いや、それ以上かも?
5人の描き方、台詞が、もう本当にリアル過ぎて、これが、生身の人間が目の前で演技しているなんて思えないような劇構成で、演劇の可能性を再認識させられました。
脚本、演出も素晴らしい上、それを見事に体現できる役者さんが、こんなにも揃っていることにも、感動しました。
東京裁判には、結構興味があり、いろいろドキュメンタリーも見ましたが、ある意味、ドキュメンタリー以上の現実味があり、びっくりでした。
たぶん、この作品、そういう知識がなくても、見応えある舞台だろうと思います。
惜しむらくは、台詞や人物造型があまりにもリアルな故に、衣装や眼鏡等、風体が当時らしからぬ点が目に付いたところでしょうか?
でも、とにかく、人生で、ベスト10には入る傑作でした。
今後も、注目したい劇団と作家さんが、また増えてしまったようです。
高き彼物
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2009/11/18 (水) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
作品、演出、出演者、全て好し
期待以上に良かったです。
海宝君、ありがとう!
あなたのお陰で、素敵な舞台を見逃さずに済みました。
高橋長英さん主演の舞台もよかったけれど、あの時は、俳優さん全員、計算で演技をされるタイプだったせいか、かなり舞台が重い印象でした。
でも、今回のカトケン版は、皆さん、ナチュラルな演技で、だから、最後の告白シーンも、変に過剰に生々しくならず、気付いたら、涙を誘われていました。
久しぶりに、占部さんの素敵な演技を観られたし、物心ついた時から活躍されている滝田さんが、いいお爺さんぶりで、和ませて下さったし、期待の海宝君が、実年齢に近い等身大の好青年を好演していたし、本当に心がほっこりする舞台でした。それに、小泉今日子さん、「楽屋」の時も思いましたが、本当に素敵な、得がたい女優さんになられたなあと同性ながら、惚れ惚れしました。
観客の満足に満ちた温かい拍手が、観客である私にも嬉しく響いた、超一級舞台です。
ヘンリー六世 第二部 敗北と混乱
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2009/10/28 (水) ~ 2009/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
面白く、儚い、人間の業
第二部は、燻っていた権力抗争や策略が一挙に表面化。物語に弾みがついて、俄然面白くなりました。
第一部に続く中嶋さんの好演、策略家を演じさせたら超一級の村井さん、気弱で心優しいヘンリー6世の苦悩を体現した浦井君、ケントの紳士の城全さんが、特に印象に残りました。
ヘンリー6世が、グロスター公への想いを告白する場面では、浦井君の名演に涙が誘われました。
最後に、ちょこっと登場する、岡本リチャードも、存在感があって、三部がとても楽しみになりました。
ヘンリー六世 第一部 百年戦争
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2009/10/27 (火) ~ 2009/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★
照明とセットが簡素なのに、素敵
第一部は、やはり多くの登場人物を把握することに神経を削がれ、物語としては、俄然第二部の方が、楽しめたけれど、ほとんど裸舞台に近いステージが、瞬時に、その場面の風景を想起させる演出と美術、照明の技に、感服してしまいました。
照明で、王家の紋章を舞台に映す手法の何と美しく、無言の秀演出であることか!
期待通り、鵜山演出は、一瞬たりとも、観客を厭きさせることなく、3時間、息を呑ませたまま、一気に見せてしまいました。
役者さん、全員好演、熱演ですが、中でも、中嶋しゅうさんには、涙を誘われました。
拝啓、絶望殿
ペテカン
駅前劇場(東京都)
2009/11/06 (金) ~ 2009/11/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
好きな劇団になりそう
シアタートップスさよなら公演で、ペテカンを知り、本公演を楽しみにしていました。
先日の青年座公演の本田さんの戯曲がイマイチだったので、心配していましたが、やはり、日頃から熟知している、劇団員の方々に当てて書いた戯曲は秀逸でした。
笑いあり、涙あり、だいたい予想のつく展開ながら、説明もくどくないので、物語の世界に、抵抗なく身を置くことができました。
主人公土屋役の斎田さんは、ほぼモノローグの台詞で、難しそうでしたが、ちゃんと感情に裏打ちされた語りなので、こちらも、情景や情感をなぞりながら、集中して、聴くことができました。
役者さん、皆さん、力量のある方ばかりで、存在感もあり、初見で、お気に入り劇団になってしまった気がします。
院長の歌、胸に沁みました。ただ、望月さんのエピソードは、劇作家の常套手段的な印象もあり、あの場面は、感動する人と、白ける人に分かれるかなという気はしました。
台詞の中に、実質的に不可能だよとツッコミ入れたいところもありましたが、
さすが、ご自身の経験に根ざした脚本は、少々の矛盾も帳消しにする説得力がありました。本田さん、男性なのに、女性心理がよく描けていて、感心しました。
次回公演も、絶対観ます。
15 Minutes Made Volume7
Mrs.fictions
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2009/11/12 (木) ~ 2009/11/15 (日)公演終了
満足度★★★★
6団体、実に多様で面白い
「コーヒー牛乳」時代から、気になっていた「ゲキバカ」、一目でファンになりました。コント仕立ての身体表現が面白くて、ずっと笑ってしまいました。いいなあ、こういう劇団!毒がなくて好き!
こゆび侍は、やはり成島さんの才が光る佳品!詩的で、情感に溢れ、笑いはなくても、劇世界を堪能できる素敵な劇団ですね。
モエプロ、とにかく単純に受けました。この劇団、12ヶ月連続公演してるとか?ある意味、稀有な劇団で、感嘆します。
国分寺大人倶楽部、会話が自然で、最初は面白かったけど、生理的に無理でした。
夜ふかしの会、どのコントも秀逸で面白かったけれど、もう少しコント数が少ない方が印象に残ったかも。
Mrs.fictions、最後のこの芝居が、演技も話も、一番苦手なタイプで、何度もウトウトしてしまったけれど、ここが、この企画運営をしている団体だと
後で気付いた。この企画自体は、大変面白いと思うので、その点は、高く評価したいと思いました。
成島さんの最後のトーク、「小劇場のスピッツになりたい」発言に納得!そうだ、まさに草野さんの雰囲気だわ、こゆび侍って。