土反の観てきた!クチコミ一覧

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トヨタ コレオグラフィーアワード2014"ネクステージ"(最終審査会)

トヨタ コレオグラフィーアワード2014"ネクステージ"(最終審査会)

トヨタコレオグラフィーアワード

世田谷パブリックシアター(東京都)

2014/08/03 (日) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★

多様な表現
最終選考に残った6人の振付家の上演会で、それぞれ異なる作風が現れていて、コンテンポラリーダンスの多様性を楽しめました。

捩子ぴじん『no Title』
男2人で4つ打ちビートに合わせたヒップホップ的な同じ振付で踊りながらも異なる質感が現れている様を見せ、後半では同じオノマトペや形容詞、名詞による振付がインド舞踊的に変容するという構成で、振付に対して批評的な意識が感じられました。

スズキ拓朗『〒〒〒〒〒〒〒〒〒〒』
以前に発表した『THE BELL』を制限時間に合わせてリメイクした作品で、ストーリー性を無くして歌とダンスの馬鹿馬鹿しくも精密なコンポジションとなっていましたが、エモーショナルな高まりがあまり感じられませんでした。

木村玲奈『どこかで生まれて、どこかで暮らす。』
男1女2のトリオ作品で、前半はバラバラに動き、中盤でユニゾンとなり、次第にまたバラバラな動きとなって最初のシーンに戻る構成で、音楽は用いずに電話の会話や具体音を流し、内省的なムードが印象的でした。もう少しベテランのダンサーが踊った方が合っていると思いました。

塚原悠也『訓練されていない素人のための振付けのコンセプト001/重さと動きについての習作』
仰向けに寝ている人の上に人が乗り、傍らに置かれた太鼓が鳴らされると照明が消えて、別の1人が出て来てカメラで写真を撮るというシークエンスが繰り返され、暴力性とユーモアがユニークに表現されていました。終演後に作品の仕様書が配布され、振付の定義について考えさせられました。

川村美紀子『インナーマミー』
女4人が爆音のノイズミュージックとストロボが点滅する中、カオティックに踊って始まり、ファミリーマートの入店アラーム、緊急地震アラーム、JRの発車ベル等、様々なアラーム音に合わせたソロが次第にダンスビートにミックスされ、終盤にはラジコンに乗せられたキューピー人形が何体も登場する構成で、ダイナミックな振付と派手な照明効果で引き込まれましたが、まとまり過ぎている様に感じました。

乗松薫『膜』
性的なイメージを喚起する作品で、赤と緑を基調にしたビジュアルが鮮やかで、上から吊り下げられたハンガーとフォークを組み合わせたオブジェや中盤で流される映像も印象的でしたが、構成やムーブメントにダンスとしての魅力があまり感じられず、美術パフォーマンスの様に見えました。

※川村美紀子さんが「次代を担う振付家賞」と「オーディエンス賞」を同時受賞しました。

ななめライン急行

ななめライン急行

ホナガヨウコ企画

Vacant(東京都)

2014/08/01 (金) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★

ポップな世界観
台詞と身体表現が対等のバランスで演じられる作品で、キュートでハッピーな雰囲気が魅力的でした。

悩みを抱えた人達が乗り込む「ななめライン急行」の乗客の4人のそれぞれのエピソードを短編集的に描いていて、それぞれ芝居のパートの後にさよならポニーテールの爽やかな楽曲に合わせて踊る構成で、シリーズ物の短編アニメの様な印象でした。

新谷真弓さんが演じる乗務員と各エピソード毎に替わる主人公は生声で台詞を話し、他の登場人物は録音された台詞に合わせて演技をするスタイルで、独特の浮遊感がありました。
台詞とダンスの両方で表現するので情報量が多過ぎに感じられて、もう少し台詞を少なくして観客の想像に任せても良いと思いました。
振付自体はとても可愛らしく感情もストレートに伝わって来て良かったです。新谷さんもメンバーの4人に劣らず対等に踊っていたのが印象的でした。

元々の楽曲のミックスがそうなのか会場の音響システムのせいなのか分かりませんが、音が薄っぺらく聞こえたのが残念でした。
照明をパフォーマーの真上から打つ場面が多く、陰の部分が多くて表情が見えにくかったのが勿体なかったです。

ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる

ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる

風姿花伝プロデュース

シアター風姿花伝(東京都)

2014/07/15 (火) ~ 2014/07/30 (水)公演終了

満足度★★★★

大人の演劇
崩壊する家族の1日の様子を描いたストレートプレイで、物語としては楽しくないものの、小細工を排した濃密な演技のやりとりが圧巻で楽しめました。

会社経営者の父、元女優の母、アルコール依存症の姉、心を病んでいる弟の4人が一緒に観劇して帰って来た所から始まり、前半はほとんど会話になっていない会話が続き、後半は酒に酔って行く姉の独白で途中から父との対話が中心となり、朝になって姉以外は別荘に出掛け、残った姉はある決断をする物語でした。
所々で同時多発的に会話や独白が行われるシーンがあり、バラバラな家族を印象付けていました。不思議なタイトルは弟の台詞として現れるのですが、話しの流れに沿わずに唐突に出て来てデノテーションとしては意味をなさないながらも、その意味の無さがお互いの思いがすれ違う家族を象徴するコノテーションとして強烈な印象がありました。

4人の演技が素晴らしく、台詞で何度も出て来る通りの「不愉快」なやりとりに引き込まれました。台詞が無い場面でも視線の方向で感情が伝わって来ました。後半でネグリジェ姿で酔い溺れて行く様子を演じる那須佐代子さんが強烈でした。

開演前に携帯電話や撮影等の諸注意のアナウンスをわざわざすることも無く静かに始まるのが、大人の雰囲気があって良かったです。

ダンスがみたい!16

ダンスがみたい!16

「ダンスがみたい!」実行委員会

d-倉庫(東京都)

2014/07/23 (水) ~ 2014/08/25 (月)公演終了

国枝昌人×古舘奈津子...s!
※衣装で関わったので、感想は記さずに公演内容だけ書きます。

今までずっとデュオで活動していた2人が初めて他の人を加えて踊る作品でした。

薄暗い中を舞台奥から横一列になって後ろ歩きでゆっくり手前に進み、1人が体を打つとその音に反応して残りのダンサー達が踊るシークエンスが繰り返される内に途中でセットしていたキッチンタイマーが鳴って暗転しました。
その後は、シリアスなものからコミカルものまで色々なタイプの動きをサンプリングして並列的に並べた様な、通して踊ると1分にも満たないフレーズをタイミングやダンサーを入れ替えながら断片的に繰り返すシーンと、ほとんど動かないか極めてゆっくり歩くシーンが交互に続きました。
終盤、舞台上の音がフィードバックする中で激しく壁にぶつかるシーンの後、一瞬おいて盆踊りの様な動きのユニゾンとなり、舞台奥のドアを開けて外へ出て行って終わりました。

ユニゾンもダンサー同士が接触することも無く、意図的な感情表現が無い、幾何学的でストイックな構成でした。
半分以上の時間が無音で、使われる音もキッチンタイマーのアラーム音とメトロノームの様な単調なクリック音のみと要素が切り詰められていました。

四人目の黒子

四人目の黒子

弘前劇場

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2014/07/25 (金) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★

忍び寄る戦争の予感
表面的には劇団の日常を描きながら、メタファーが散りばめられていて、考えさせられる作品でした。

日中韓共同製作公演のツアーを終えて地元で公演中の地方の劇団という実際の弘前劇場自体を思わせる設定で、スタッフ楽屋で交される程良くユーモアがある淡々とした会話のやりとりの内に、高齢化社会や中国・韓国との関係といった社会的な不安が浮かび上がる物語でした。

登場人物としての黒子とは別に、登場人物達には見えていない設定の黒子達が所々で現れて佇んだりうろついたりする姿が、政治的な諸問題を見えているのに見えなていない事として着々と戦争へ向けて事態が進んでいることを示唆している様で不気味でした。
小道具として用いられたギターに反戦運動のフォークギターのイメージと楽器→道具→武器のイメージが重ね合わされていたのが印象的でした。
終盤で引用されたアルチュール・ランボーが戦死した若者を描いた詩『谷間に眠る者』は、テーマには則していたものの、唐突な感じがありました。

リアルに作られた楽屋のセットの中で中央のテーブルだけがいびつな形でかつ縁が赤くて、そこだけ非現実的な表現となっていましたが、その意図が掴めず違和感のみが残りました。

考えさせられる内容で見応えがありましたが、公式サイトに書かれていたあらすじとは異なる話となっていたのが少々残念に思いました。

KARAS APPARATUS1周年記念公演『誕生日』

KARAS APPARATUS1周年記念公演『誕生日』

KARAS

KARAS APPARATUS(東京都)

2014/07/18 (金) ~ 2014/07/23 (水)公演終了

満足度★★★

1時間のソロダンス
勅使川原三郎さんのソロダンスで、劇場で上演される精密に構成された緊張感の高い作品とは異なる魅力がありました。

白のTシャツに膝下丈の黒いパンツと、いつもとは異なるラフな雰囲気の格好で、ムードミュージックで緩やかに踊って始まり、次のバッハの『マタイ受難曲』では舞台中央の床が円形に照らされた周りを祈りや嘆きを感じさせる雰囲気で流れる様に踊りました。
シャンソン数曲で踊った後、唐突に戸川純さんの『隣の印度人』が掛かり、勅使川原さんには珍しく音楽のビートに合わせた振付で、しかも歌詞の内容に即したコミカルな当て振りだったのが意外でした。同じく戸川純さんの『蛹化の女』では舞踏の様な痙攣的な動きが支配的で、前の曲との対比が鮮やかでした。
最後はモーツァルトの『クラリネット協奏曲』の第2楽章で、音楽の流れとは異なる抑揚を持った動きから静かながら情感が溢れていて印象的でした。

様々なタイプの曲に合わせて踊るレビューショウ的構成だったので作品全体としてのまとまりが無く感じましたが、長いフレーズ感が特徴的で空気の量感を意識させる振付がバリエーション豊かに展開されていて見応えがありました。

世界的に活躍するダンサーが小さな場所で試演会的な公演を毎月行うのも素晴らしいと思いました。

ちいさなひまわり

ちいさなひまわり

ぱぷりか

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2014/07/18 (金) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★

若々しさを感じるコンパクトな作品
登場人物は女性4人だけの60分間の短編で、ふんわりとした雰囲気が印象的でした。

片親の父に育てられた姉妹を中心にした物語で、冒頭で父が死に、その後に妹も治療法の確立されていない病で倒れてしまうというベタな展開ですが、泣かせようと無理に盛り上げたりする様なことはせず、お互いを思いながらも素直になれない姉妹のやりとりが淡々と描かれていました。

姉妹の現代的な台詞回しがナチュラルで良かったのですが、もう少し溜めがあった方が良いと感じる場面が所々にありました。

ちょっと妙な文体で話す浮いた雰囲気を持つ女性が妹と親しくなっていくものの、ストーリー上であまり意味が感じられず、最後に姉妹と共に暮らすことになる展開も不自然が感じられ、キャラクター優先で作った様に見えたのが残念でした。
何度か歌うシーンがあって何かの伏線になっているかと思ったのですが、そうではなかったみたいで、勿体なく思いました。

ペンダントライトのシェードに植物を入れて逆さまにした植木鉢の様にしていて、周りの壁に植物の影が映っていたのが美しかったです。

永遠の一瞬 -Time Stands Still-

永遠の一瞬 -Time Stands Still-

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2014/07/08 (火) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★

それぞれの生き方
登場人物が4人、場所も1つの部屋のみのストレートな会話劇で、様々な考えさせられるトピックが扱われていました。

結婚しないまま長年同棲しているカメラマンの女とジャーナリストの男、編集者とその恋人の2組のカップルの正義や仕事、人生についての価値観の相違が浮かび上がり、最後まで共通の結論には辿り着かないものの、それぞれの考え方を尊重する結幕に希望が感じられました。
斜めに振ったリアルな室内のセットの中、わずかな効果音と写真の映像だけしか用いず、演技に集中させる演出で、台詞の裏に込められた感情に引き込まれました。

戦争ものにありがちなお涙頂戴に対しての自省を込めたやりとりが途中である通り、声高にメッセージを押し付けず、またシリアスな内容の中にも程良くユーモアが感じられる充実した内容の作品でしたが、オーソドックスにまとまり過ぎていて、この脚本・演出ならではと思える要素があまり感じられず、少々物足りなさを感じました。

転換の際に上手奥に戦争の写真が映し出されていたのですが、写真の切り替わりにエフェクトを掛けていたのが芝居がかって見えて違和感を覚えました

平成26年7月歌舞伎鑑賞教室「傾城反魂香」

平成26年7月歌舞伎鑑賞教室「傾城反魂香」

国立劇場

国立劇場 大劇場(東京都)

2014/07/03 (木) ~ 2014/07/24 (木)公演終了

満足度★★

夫婦の愛情
学生を対象に行っている公演を社会人向けに夜に上演する公演で、上演時間もチケット料金も手頃で気楽に観ることが出来ました。

『歌舞伎のみかた』
澤村宗之助さんの進行で、回り舞台やセリ、黒見須等の説明の後、歌舞伎における効果音の解説があり、数分の短い物語を現代劇版と歌舞伎版で上演して演技スタイルや効果音の違いを分かり易く見せていたのが良かったです。

『傾城反魂香 土佐将監閑居の場』
どもりの絵描きとその妻の愛情を描いた作品で、前半は単調で退屈感を覚えましたが、後半はドラマ性があり、悔しさや嬉しさ等、様々な感情が伝わって来ました。
妻の打つ鼓に合わせて踊る、終盤のユーモラスなやりとりに夫婦の愛情が感じられ、印象に残りました。

役者の台詞と竹本の演奏ががスムーズに繋がっていて、歌舞伎の音楽劇としての側面が良く出ていて楽しめました。どもりである主役に合わせて竹本の語りもつっかえる様な節回しをしていたのが興味深かったです。

立ち回りや見得を切る場面が少なく、学生対象の演目にしては少々地味に思え、もう少しインパクトのある作品を上演した方が良いのではと思いました。

7月20日18時追加あり あゆみ

7月20日18時追加あり あゆみ

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2014/07/12 (土) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★

人生の重みが現れた『あゆみ』
既に様々な団体によって上演されている柴幸男さんの代表作が青年座の創立60周年に合わせたアレンジが加えられて演じられ、若い役者だけで演じるときとはまた異なる魅力が感じられました。

役者が一人ずつ何もない素舞台に現れ開演前の諸注意をアナウンスして始まり、次第に今回新たに付け加えられた前口上となってそのまま本編に突入し、最後も同様の後口上が加えられていました。

ままごとが2011年に上演したのを観たことがありますが、その公演では役のチェンジのタイミングが小刻みで、フォーメーションや照明によって幾何学性が強調された音楽性とダンス性の強い演出でしたが、青年座版はパフォーマンス色が控え目で、普通の芝居に寄った演出となっていて、より幅広い層の観客にアピールするものとなっていました。
20代から70代までの役者がその年齢のパートを演じるのではなく、生まれてから死ぬまでを平等に演じることによって、特別な事件も起きない普通の人生を描いた物語の普遍性が強められていたと思います。

いかにも「演技しています」感の強い新劇的な演技スタイルに冒頭は面食らいましたが、すぐに違和感がなくなり役者それぞれの個性を楽しむことが出来て、どの様な演出や演技でも形になる、この戯曲の懐の広さを感じました。

朝日を抱きしめてトゥナイト

朝日を抱きしめてトゥナイト

ロロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/07/11 (金) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★

夏祭り
混沌とした展開の中に文学的な叙情性とノスタルジーが感じられる、独特の魅力がある作品でした。

いつものロロの作品に比べて「ボーイ・ミーツ・ガール」テイストは控え目で、それより大きな家族、動物、非生物との繋がりが個人的なエピソードの中に浮かび上がって見える、不思議なスケール感を持った物語でした。

モノローグのシーンで話している本人が「モノローグではなくダイアローグ」だと言ったり、対話を1人で演じているところに他の人から「演劇ですか?」と声を掛けられたりと、演劇の形式性・虚構性を意識した台詞が盛り込まれていたり、古典戯曲の様な朗唱調の台詞や昭和中期のドラマや映画の様な台詞回し等、様々な文体が用いられたのが興味深かったです。
前半で流されたアニメーション映像のクオリティーが高く、作品と直接はリンクしないことによって逆に共通する世界観が引き立っていて効果的でした。
この劇団の特徴である小道具を用いた見立てが今回は少なめでしたが、2階建ての家を表すのに会議用テーブルを用いていたのが斬新で印象に残りました。
ベニヤ板で作られた可動式のセットが巧みに使われ、時間や空間を超越した場面転換がシームレスに繋がっていました。クライマックスの仕掛けもただ驚きを与えるだけでなく、物語の内容にマッチした趣向で印象的でした。

鎌塚氏、振り下ろす

鎌塚氏、振り下ろす

森崎事務所M&Oplays

本多劇場(東京都)

2014/07/04 (金) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★

ウェルメイドな喜劇
貴族と執事と女中のコミカルなやりとりの中に親子愛やラブロマンスも盛り込まれた、万人向けなコメディー作品でした。

その場限りのギャグに見えたエピソードが終盤に伏線として活かされていたり、思い違いが重なって騒ぎが大きくなったりと、しっかり組み立てられた脚本から生み出されるおかしさに安定感がありました。
素っ屯狂な言動や派手なアクションによる笑いも無理に入れ込んだ感じがなく良かったです。

キャラクターの立った登場人物ばかりで、各役者の個性が活かされていました。特にベンガルさんの独特の間合いの演技が楽しかったです。

回り舞台の見えていない側でセットを入れ替えて回る度に異なる部屋が現れ、限られた空間の中で広大な屋敷をイメージさせていたのが良かったです。紙吹雪は視覚的にも物語的にもあまり効果を感じませんでした。

音楽が吹奏楽や木管五重奏といった管楽器中心の選曲で統一されていて、独特の雰囲気を生み出していました。

TWINE PROJECTS presents『ENGI』

TWINE PROJECTS presents『ENGI』

スタジオアーキタンツ

studio ARCHITANZ(東京都)

2014/07/12 (土) ~ 2014/07/12 (土)公演終了

満足度★★

日豪共同製作
オーストラリアの振付家を中心に日本とオーストラリアのダンサーとスタッフの共同製作による、2015年9月の初演を目標にしたワーク・イン・プログレス公演で、まだ作品として形にはなっていないものの、本公演を期待させる内容でした。

下手から上手に放射状に配置されたロープを四つん這いでゆっくり辿って行くシーンから始まり、顔を相手の体をなぞる様に動かしたり、土着的な振付によるユニゾン、一列になって前の人の肘を掴んだまま動いたり、表情を変化させたりと、様々なタイプの動きが用いられていました。何度か用いられた、ロープを波打たせる手法がシンプルながらも美しくて印象に残りました。
所々に魅力的な瞬間はあったものの、まだ構成が練れてなくて作品として訴え掛けて来るものが感じられませんでした。

今回は、美術や照明は入ってない状態での上演でしたが、最終的には現代美術家の宮島達男さんのLEDカウンター作品を天井から吊り下げるとのことで、ダンスとどの様に絡むのか楽しみです。

ritmonia

ritmonia

ritmonia

大倉山記念館(神奈川県)

2014/07/05 (土) ~ 2014/07/05 (土)公演終了

満足度★★★

視覚と聴覚のリズム
高校で同級生だった2人よるダンスとパーカッションのデュオ公演で、リズムを軸にしたストイックな方法論ながらも息苦しさを感じない開放感がありました。

『ヴェロシティーズ』(ジョセフ・シュワントナー作曲)
細かい音形が一定のビートで続くマリンバ独奏曲に対してリズム的に厳密に対応した振付で、変拍子やシンコペーションが体の動きで表現されていて、直径1mにも満たないエリアの中でしか動かないもののスピード感とダイナミックさがありました。

『トゥ・ジ・アース』(フレデリック・ジェフスキ作曲)
植木鉢4つを叩きながら地球を讃える詩を語る曲ですが、詩の内容ではなく楽曲構成に沿った振付となっていて、大きく5つのブロックに分かれるのに合わせて同じシークエンスが5回繰り返されました。
会場全体を使って踊っていたのが『ヴェロシティーズ』と対比になっていて良かったです。

『リトモニア』(白井愛咲、牧野美沙)
いくつかのパートがスネアドラムのマーチ風テーマに挟まれたロンド的作品でした。1拍ずつ減っていく振付を2人でカノン風に踊ったり、ダンサーがアンティークシンバルを演奏したりとお互いの領域に踏み込んだ演出がユーモラスでした。
ひとつのパートでは1種類の楽器しか用いない様にしていましたが、多彩な音色を同時に出せるのが打楽器の魅力でもあるので、複数の楽器を体の各パーツに対応させる等、色々可能性があると思いました。
音と動きの関係は興味深かったものの、音楽的に単調に感じられたのが勿体なく思いました。

アンコールに『ゴルトベルク変奏曲』(J.S.バッハ)の演奏&踊りがあり、クラシックバレエ的な振付が軽やかで魅力的でした。

それぞれの曲で振付のテイストが異なり、ムーブメントのボキャブラリーの豊かさを感じました。
カールハインツ・シュトックハウゼンやブライアン・ファーニホウといった作曲家による、リズムが複雑な現代音楽でどの様なアプローチを取るのか観てみたく思いました。

モモンガ・コンプレックス⇄珍しいキノコ舞踊団『Togetherさ。』

モモンガ・コンプレックス⇄珍しいキノコ舞踊団『Togetherさ。』

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2014/06/27 (金) ~ 2014/06/29 (日)公演終了

満足度★★

振付家交換
かつて指導者と教え子の関係だった2人が、お互いが主宰するカンパニーに振り付けるという企画で、近い作風ながら異なっている部分も見えて興味深かったです。

『Free 草原に立つ。』(振付:白神ももこ、出演:珍しいキノコ舞踊団)
客席が明るい状態でダンサーが1人ずつ静かに入って来て始まり、明確なストーリーはないものの、気不味い人間関係をユーモラスに描いていて楽しかったです。伊藤千枝さんのソロが短くもインパクトがありました。

『健康的ピープル』(振付:伊藤千枝、出演:モモンガ・コンプレックス)
挨拶と自己紹介から始まり、伊藤さんの生演奏(電子パーカッションと声)に乗せて踊り、ダンサー4人がアカペラで他愛もない内容を歌うパートを経て、また冒頭の挨拶から伊藤さんの演奏で踊るシーンまでが繰り返される構成で、タイトル通りの健康的な雰囲気がありました。

『モモコン Works』(振付:白神ももこ、出演:モモンガ・コンプレックス)
旧作をミックスした内容で、ハエに扮した白神さんのソロに他のダンサーが全然脈絡の無い感じで絡む、突拍子の無い展開がコミカルでした。

『キノコ Works』(振付:伊藤千枝、出演:珍しいキノコ舞踊団)
旧作をミックスした内容で、伊藤さんのしっとりしたソロの後、他の5人のエネルギッシュなダンスが続く構成でした。『Rhythm of Life』で踊るパートは他の公演でも何度か観ていますが、相変わらず高揚感が素晴らしかったです。

両団体ともメンバーが女性だけで脱力的なユーモア感があり、動きのヴォキャブラリーも共通する所が多いながらも、4つの組み合わせから振付家、カンパニーそれぞれの特質が感じられましたが、お互いを振り付けたことによる意外性や面白みはあまり感じられませんでした。
伊藤さんも白神さんも笑い無しでも魅力的なダンスを作る人だと思うのですが、相手のカンパニーに気を使ってかウケ狙いを意識し過ぎている様に感じられたのが残念でした。

ほとんど色を用いず、複雑なこともしないで空間に変化を生み出していた照明が美しかったです。

魂の詩人ロルカとアンダルシア

魂の詩人ロルカとアンダルシア

日生劇場

日生劇場(東京都)

2014/06/28 (土) ~ 2014/06/29 (日)公演終了

満足度★★★

ロルカの半生を描いたフラメンココンサート
秋に日本初演されるオペラ『アイナダマール』の関連企画のコンサートで、フェデリコ・ガルシア・ロルカが収集したスペイン民謡やロルカ自身が作詞した歌が、踊りや朗読を交えたちょっとした音楽劇仕立ての構成で演奏され、アンダルシア情緒が感じられました。

舞台上に酒場のセット組まれていて、伊礼彼方さんが演じる白いスーツを着たロルカが酒場に訪れて歌と踊りが繰り広げられる合間に半生を語る形式で進行しました。演奏中もロルカがカウンターに佇んでいて、酒を飲んだりタバコを吸ったり新聞を読んだり詩を書いたりしていて、台詞が無くても仕種から感情の動きが伝わってきました。
スペイン語で朗読した『負傷と死(『イグナシオ・サンチェス・メヒーアスへの哀悼歌』より)』で何度も繰り返される「A las cinco de la tarde(午後の五時)」という言葉の響きが印象に残りました。
最後に『アイナダマール』から1曲を演奏しましたが、演技や演出なしで演奏のみだったので、実際の舞台ではこのドラマティックな曲がどの様に演じられるか興味深かったです。

ギターと歌を中心に、ピアノやヴァイオリンが入った演奏はヒターノ(ジプシー)的な雰囲気があって魅力的でした。アントニオ・アロンソさんの長いソロの踊りに物悲しさと力強さがあって良かったです。

ムシノホシ

ムシノホシ

大駱駝艦

世田谷パブリックシアター(東京都)

2014/06/26 (木) ~ 2014/06/29 (日)公演終了

満足度★★★★

虫(6・4)と人間(5)
ほぼ全裸に白塗りという舞踏のスタイルでありながら、あまり舞踏と結び付かないイメージがあるポップなエンターテインメント性もあって、美術と動きから様々なイメージが湧いてくる作品でした。

舞踏手が円形に並び踊るシーンで始まり、日常的な服装を着ているのが新鮮でした。続くシーンでは一気に異世界の様相となり、頭にブリキのヤカンを被った男性舞踏手達が虫の様に地面を移動したり、お玉を目に付けて昆虫の目の様にした格好で現れたり、松尾芭蕉に扮した舞踏手が「閑さや岩にしみ入る蝉の声」と詠んだり、白いワンピースに赤い靴の女性舞踏手達が虫取り網を持って可憐に踊ったりと虫にまつわる様々なイメージが幻想的かつユーモラスに繰り広げられました。
終盤、奥の壁に風になびく木の映像が写し出され能舞台を連想させ、次第に能の囃子が聞こえて来て、能の世界にイメージが繋がっていくのが印象的でした。
ラストのシーンでは前身を銀色に塗り、自分の顔写真(白塗りをしていない良い笑顔の写真)を背中に貼り付けた舞踏手達が青い光の中で輝きながら踊り、異次元的な美しさがありました。

5m程の金属パイプを沢山吊って舞台中央に四角形、四隅に円形の小さなエリアを作ってあり、虫篭あるいは牢獄の様でした。照明が当たった時の複雑な反射光が奇麗でした。

5つのエリアに対応して舞踏手のグルーピングも5人単位が中心となっていて、5という数字がム=6とシ=4の間の数字であると同時に、指の数や「五体満足」から人間を連想させて、虫と人間の世界が重ね合わさって見えてのが興味深かったです。

十九歳のジェイコブ

十九歳のジェイコブ

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2014/06/11 (水) ~ 2014/06/29 (日)公演終了

満足度★★

聖俗が重なり合う物語
新国立劇場の公演にしては物語的にも表現的にも尖った作品でしたが、その尖り具合いが中途半端で、全体としてぼやけた印象を持ちました。

ドラッグとセックスに溺れる青年ジェイコブとその周囲の人達の殺那的な生き方を通じて、呪われた血の繋がりや、若者の燥焦感が描かれていました。
原作を読んでいないので、戯曲化にあたって松井周さんがどこまで新たな要素を加えたのかは分かりませんが、ギリシャ神話や聖書の世界と性的・社会構造的に普通ではない人々の世界が重ね合わさる趣向が松井さんらしかったです。
暗転の後に突如現れる、ヤコブ(=ジェイコブ)の梯子を思わせる冒頭の光景が印象的で、普通ならラストに持って来そうな場面を最初に出しつつも、その場面を最後に繰り返す様な常套手段を用いなかったのが良かったです。しかし、その後の展開で冒頭シーン程に引き込まれる瞬間が無くて、物足りなく感じました。

維新派の特徴である変拍子のリズムに乗せた台詞や幾何学的な動きは用いられてなくて、比較的普通のスタイルで演じられていましたが、モノトーンが中心的な色彩構成や、時間や空間を飛び越えて人物を舞台上に配置する手法が松本雄吉さんらしく、独特の緊張感を生み出していました。

真っ黒な空間に十数台の傾いたベンチ状の木製のオブジェを様々な並びで配置して異なる場所を示していたのが演劇ならではの表現で良かったのですが、所々で奥の壁面に実写やCGのリアリスティックな映像が映し出されるのが逆に安っぽく感じられて、残念でした。
本水の使い方も冒頭は良かったものの、終盤のシーンでは床を濡らさない為にそれまでベンチだけで表現していた舞台に異物的に感じられる小さなステージをわざわざ出した割りにはあまり効果があるとも思えず、興醒めでした。

劇的舞踊『カルメン』

劇的舞踊『カルメン』

Noism

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2014/06/20 (金) ~ 2014/06/22 (日)公演終了

満足度★★★★

独創的な終盤の展開
有名なストーリーが分かり易く描かれているかと描かれていると思いきや、後半では独創的な展開となり、ダンスとしてだけでなく物語としても強く引き込まれました。

原作の小説とオペラ版の台本を混ぜた構成になっていて、カルメンとドン・ホセの物語が作家による報告という体裁を取って話が展開しました。
実際に幕の後ろで演じている様に演出された事前撮り(あるいはCGでしょうか?)の影絵劇による序幕に続いて、分かり易い表現で物語通りに進行しました。
しかし終盤になると、それまでに死んだ登場人物達が顔を白塗りにして幽霊として現れてカルメンとドン・ホセを責めるという、小説ともオペラとも異なる幻想的な場面になり、更にはカルメンがロングヘアーのウイッグを外して投げることによって物語の階層の外に飛び出し、冒頭から所々に現れていた大きなローブで体を隠していた老婆とラストで入れ替わり、全ての運命を操る存在としてカルメンが描かれていて、強烈なインパクトがありました。

闘牛士が牛の下敷きになる場面を能や歌舞伎の『道成寺』の様に落ちて来た牛のハリボテのオブジェの中にすっぽり入ったり、コミカルな振付があったりとユーモラスな表現が嫌味にならない程度に盛り込まれていて楽しかったです。
クラシックバレエ的な動きが多い振付でしたが、とてもスピード感と迫力があり魅力的でした。
ダンサーが数箇所で出す叫び声を際立たせていましたが、踊りだけで十分伝わって来るものがあったので、わざわざ声を用いなくても良いと思いました。

音楽はビゼー作曲のオリジナルのスコアの物は用いずに、オーケストラ用にアレンジされたいくつかの版をミックスして使用していて、歌声が現れてこない選曲となっていたのが良かったです。

テネシー・ウィリアムズ作「風変りなロマンス」「バーサより、よろしく」より 『居場所、そして存在、そして・・・。』

テネシー・ウィリアムズ作「風変りなロマンス」「バーサより、よろしく」より 『居場所、そして存在、そして・・・。』

ヒゴト

調布市せんがわ劇場(東京都)

2014/06/18 (水) ~ 2014/06/21 (土)公演終了

満足度

チグハグな印象
テネシー・ウィリアムズの短編戯曲2本を身体表現や生演奏を多く用いた演出で描いたパフォーマンス的作品でしたが、様々な点でチグハグな感じがあり、作品の世界に入り込めませんでした。

トランペットの独奏に続いて口琴の合奏にがあった後に戯曲に則った物語が始まり、『風変わりなロマンス』の間に『バーサより、よろしく』を挿入した構成となっていました。

ダンス(ポールダンスも)、人形劇、人形振りの演技、歌、映像と多様な手法を用いていたものの、各要素が噛み合わないままに展開し、それらの手法を通してこの戯曲から何を描きたいのかが伝わってこず、またそれぞれの手法単体で芸として楽しめるレベルに達しているものもあまり無い様に思いました。

大きな公演にも携わる実力のあるスタッフが集まっているのに、映像がセットの凹凸のある部分に映し出されて見辛かったり、映像が出演者の陰になったり、エフェクトを掛けている楽器用のマイクが役者の声を拾ったりと、仕事が雑に感じられて残念でした。

役者の演技は意図的なのかもしれませんが、平板な人と大袈裟な人がいて、まとまりが無く感じました。

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