満足度★★★★
大人の演劇
崩壊する家族の1日の様子を描いたストレートプレイで、物語としては楽しくないものの、小細工を排した濃密な演技のやりとりが圧巻で楽しめました。
会社経営者の父、元女優の母、アルコール依存症の姉、心を病んでいる弟の4人が一緒に観劇して帰って来た所から始まり、前半はほとんど会話になっていない会話が続き、後半は酒に酔って行く姉の独白で途中から父との対話が中心となり、朝になって姉以外は別荘に出掛け、残った姉はある決断をする物語でした。
所々で同時多発的に会話や独白が行われるシーンがあり、バラバラな家族を印象付けていました。不思議なタイトルは弟の台詞として現れるのですが、話しの流れに沿わずに唐突に出て来てデノテーションとしては意味をなさないながらも、その意味の無さがお互いの思いがすれ違う家族を象徴するコノテーションとして強烈な印象がありました。
4人の演技が素晴らしく、台詞で何度も出て来る通りの「不愉快」なやりとりに引き込まれました。台詞が無い場面でも視線の方向で感情が伝わって来ました。後半でネグリジェ姿で酔い溺れて行く様子を演じる那須佐代子さんが強烈でした。
開演前に携帯電話や撮影等の諸注意のアナウンスをわざわざすることも無く静かに始まるのが、大人の雰囲気があって良かったです。